説明

軽油留分の製造方法

【課題】重油基材を重油以外の用途に有効活用できるとともに、水素化精製処理に用いる水素化精製触媒の劣化を抑制でき、水素の消費量を低減できる軽油留分の製造方法を提供する。
【解決手段】直留軽油に、窒素分が30〜500質量ppm以下で且つ塩基性窒素分が20〜200質量ppmである直接脱硫軽油を5〜50容量%混合した原料油を、水素化精製触媒を用いて、水素分圧1〜10MPa、LHSV0.1〜5h−1、水素オイル比30〜500NL/L及び反応温度250〜420℃の条件下で、水素化精製処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油留分の製造方法、特に、重油基材を有効に活用できるとともに、水素化精製処理に用いる水素化精製触媒の劣化を抑制でき、水素消費量を低減できる軽油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重油の基材としては、例えば、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき残油、直留軽油、分解軽油などをそれぞれ必要に応じて水素化精製処理して得られたものが挙げられる。また前記分解軽油は、流動接触分解装置(FCC装置)から得られる芳香族炭化水素の含有量が高い接触分解軽油(LCO:Light Cycle Oil)や、熱分解装置から得られる熱分解軽油などが挙げられる。
【0003】
近年、石油製品の需要は軽質化傾向にあり、重油の需要が低迷している。それに伴って、前記熱分解軽油についても、近年は余剰傾向にある。
そのため特許文献1では、LCOを有効活用するべく、直留軽油及びLCOを混合して脱硫処理を行い、さらにLCOを配合してなるディ−ゼル軽油組成物が開示されている。
【0004】
しかし、上述のような直留軽油に、LCOを混合した原料油を水素化精製して軽油留分を製造する場合、非特許文献1に開示されているように、直留軽油単独での水素化精製処理に比べて、前記水素化精製処理に用いられる水素化精製触媒の劣化速度が速くなる結果、触媒寿命が短くなるという問題や、消費する水素の量が多くなる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−259966号公報
【非特許文献1】小出他、「第15回技術開発成果発表会要旨集」、石油産業活性化センタ−、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、石油製品の需要が軽質化の傾向にあり、重油の需要が低迷している状況を鑑み、重油の基材を重油以外の用途に有効活用し、さらに、水素化精製処理に伴う水素化精製触媒の劣化を抑制でき、水素の消費量を低減できる軽油の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、接触分解軽油(LCO)を用いず、例えば重油の基材の一つである常圧蒸留残油を主として脱硫する直接脱硫装置から得られる直接脱硫軽油(RDS−GO)を、直留軽油(R−LGO)に特定の割合で混合してなる原料油を用い、この原料油について特定の水素化精製処理を行うことによって、重油基材を有効活用できるとともに、水素化精製処理に伴う水素化精製触媒の劣化を抑制でき、水素の消費量を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の軽油留分の製造方法は、次のとおりのものである。
(1)直留軽油に、窒素分が30〜500質量ppm以下で且つ塩基性窒素分が20〜200質量ppmである直接脱硫軽油を5〜50容量%混合した原料油を、水素化精製触媒を用いて、水素分圧1〜10MPa、LHSV0.1〜5h−1、水素オイル比30〜500NL/L及び反応温度250〜420℃の条件下で、水素化精製処理することを特徴とする軽油留分の製造方法。
(2)前記直接脱硫軽油は、全芳香族分に占める2環芳香族分及び3環芳香族分の割合が2〜20%であることを特徴とする(1)に記載の軽油留分の製造方法。
(3)前記直接脱硫軽油は、全芳香族分に占める2環芳香族分及び3環芳香族分の割合が2〜20%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の軽油留分の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重油基材を重油以外の用途に有効活用できるとともに、水素化精製処理に用いる水素化精製触媒の劣化を抑制でき、水素の消費量を低減できる軽油留分の製造方法が提供できる。加えて、触媒交換頻度を低減できるため、経済的に有利となるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
本発明は、直留軽油に、窒素分が30〜500質量ppm以下かつ塩基性窒素分が20〜200質量ppmである直接脱硫軽油を5〜50容量%混合した原料油を、水素化精製触媒を用いて、水素分圧1〜10MPa、LHSV0.1〜5h−1、水素オイル比30〜500NL/L及び反応温度250〜420℃の条件下で、水素化精製処理することを特徴とする。
【0011】
上記構成を採用することで、原料油の一部として用いられる直接脱硫軽油が、重油基材の一種である常圧蒸留残油を直接脱硫して得られるものであるため、重油基材の有効活用が可能となる。さらに、前記原料油の水素化精製処理に伴って、従来の技術では、水素化精製触媒の劣化が促進され、水素の消費が大きくなるという問題があったが、本発明では、前記直接脱硫軽油中の窒素分及び塩基性窒素分の適正化を図り、特定の処理条件によって水素化精製処理を行うことで、それらの問題についても解決できる。
【0012】
(原料油)
本発明に用いられる原料油は、直留軽油に、直接脱硫軽油を5〜50容量%、好ましくは5〜50容量%混合したものである。ここで、前記直接脱硫軽油の混合量を5〜50容量%としたのは、前記直接脱硫軽油の混合量が5容量%未満の場合、前記重質基材の有効活用を十分に行えないからであり、一方、50容量%を超えると、水素化精製装置の建設コストや運転コストが高騰し、経済性の観点から好ましくないからである。
【0013】
なお、前記原料油は、直留軽油及び直接脱硫軽油の他にも、必要に応じて他の油を含有しても良い。例えば、熱分解油、接触分解油、間接脱硫軽油等であり、これらは1種でも2種以上混合して用いることもできる。
【0014】
本発明による原料油に含まれる直留軽油については、原油を常圧蒸留することで得られる軽油留分のことである。
前記直留軽油の15℃における密度は、0.83〜0.88g/cmであることが好ましく、さらに好ましくは0.84〜0.87g/cmである。
【0015】
また、前記直留軽油の50%留出温度は280〜310℃であることが好ましく、さらに好ましくは290〜305℃である。90%留出温度は330〜360℃であることが好ましく、さらに好ましくは340〜355℃である。さらに、水素化精製処理における経済性の観点から、95%留出温度は、340〜370℃であることが好ましく、さらに好ましくは、345〜365℃である。
【0016】
また、前記直留軽油中の硫黄分については、30000質量ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは15000質量ppm以下である。前記硫黄分が30000質量ppmを超えると、脱硫に必要な温度が高くなり、触媒が急激に劣化するおそれがある。
なお、下限値については特に限定はされないが、経済的な観点や、技術的な困難性を考慮すると、5000質量ppm以上であることが好ましい。
【0017】
さらに、前記直留軽油中の窒素分については、300質量ppm以下であることが好ましく、200質量ppm以下であることがより好ましい。前記窒素分が300質量ppmを超えると、触媒の活性点を被毒し、脱硫に必要な温度が高くなり、触媒が急激に劣化するおそれがある。
なお、下限値については特に限定はされないが、経済的な観点や、技術的な困難性を考慮すると、10質量ppm以上であることが好ましい。
【0018】
また、前記直留軽油は、製品軽油セタン価や水素化精製処理における水素消費量の点から、その芳香族分が20〜50容量%、好ましくは25〜35容量%である。
さらに前記芳香族分のうち、1環芳香族分が10〜30容量%であることが好ましく、15〜25容量%であることがさらに好ましく、2環芳香族分が5〜20容量%であることが好ましく、10〜15容量%であることがさらに好ましく、3環芳香族分が1〜10容量%であることが好ましく、1〜5容量%であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明による原料油に含まれる直接脱硫軽油は、原油を常圧蒸留してガス、ガソリン留分、灯油留分、軽油留分等を留出させた後に残った常圧蒸留残油を、直接脱硫することで得られる軽油留分のことである。
【0020】
前記直接脱硫軽油の15℃における密度は、0.83〜0.88g/cmが好ましく、さらに好ましくは0.84〜0.87g/cmである。
【0021】
また、前記直接脱硫軽油の50%留出温度は260〜300℃であることが好ましく、さらに好ましくは280〜300℃である。90%留出温度は320〜350℃であることが好ましく、さらに好ましくは330〜340℃である。さらに、水素化精製処理における経済性の観点から、95%留出温度は、330〜370℃であることが好ましく、さらに好ましくは、335〜365℃である。
【0022】
また、前記直接脱硫軽油の硫黄分については、1000質量ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは500質量ppm以下である。前記硫黄分が1000質量ppmを超えると、脱硫に必要な温度が高くなり、触媒が急激に劣化するおそれがある。
なお、下限値については特に限定はされないが、経済的な観点や、技術的な困難性を考慮すると、50質量ppm以上であることが好ましい。
【0023】
さらに、前記直接脱硫軽油の窒素分については、30〜500質量ppmであることを要し、好ましくは、100〜300質量ppmである。前記窒素分が500質量ppmを超えると、触媒の活性点を被毒し脱硫に必要な温度が高くなり、触媒が急激に劣化するおそれがある。また、30質量ppm以下まで低減するためには、直接脱硫装置の運転条件を過酷にしなければならず、直接脱硫装置の処理コスト増加や触媒寿命を短縮してしまうおそれがある。
【0024】
さらに、前記直接脱硫軽油の塩基性窒素分については、20〜200質量ppmであることを要し、好ましくは、50〜100質量ppmである。前記塩基性窒素分が200質量ppmを超えると、触媒の活性点を被毒し脱硫に必要な温度が高くなり、触媒が急激に劣化するおそれがある。また、20質量ppm以下まで低減するためには、直接脱硫装置の運転条件を過酷にしなければならず、直接脱硫装置の処理コスト増加や触媒寿命を短縮してしまうおそれがある。
【0025】
また、前記直接脱硫軽油は、製品軽油セタン価や水素化精製処理における水素消費量の点から、その芳香族分が20〜50容量%であり、好ましくは35〜38容量%である。
さらに前記芳香族分のうち、1環芳香族分が10〜40容量%であることが好ましく、20〜35容量%であることがさらに好ましく、2環芳香族分が1〜10容量%であることが好ましく、2〜5容量%であることがさらに好ましく、3環以上芳香族分が0〜3容量%であることが好ましく、0〜1容量%であることがさらに好ましい。
さらにまた、1環芳香族分が多く、2環芳香族分及び3環芳香族分が少ないことが好ましい。具体的には、全芳香族分に占める2環芳香族分及び3環芳香族分の割合が、2〜20%であることが好ましく、5〜15%であることがさらに好ましい。全芳香族分に占める2環芳香族分及び3環芳香族分の割合が20%を超えると、触媒上に堆積するコ−クが増加し、触媒の劣化を促進する。一方、2%未満とするためには、直接脱硫装置の処理量を低減する等、直接脱硫装置の処理コストが増大するため、好ましくない。
【0026】
なお、前記直接脱硫軽油の原料となる常圧蒸留残油については、特に限定はされないものの、50%留出温度が500℃以下、90%留出温度が600℃以下のものを用いることが好ましい。各留出温度が高くなりすぎると、直接脱硫に要するコストが高騰するおそれがあるからである。
【0027】
また、前記常圧蒸留残油は、硫黄分が40000質量ppm以下であることが好ましい。前記硫黄分が、40000質量ppmを超えると、不純物が多くなりすぎるため、直接脱硫に要するコストが高騰するおそれがあるである。
【0028】
(水素化精製処理)
本発明の水素化精製処理は、水素化精製触媒を用いて、水素分圧1〜10MPa、LHSV0.1〜5h−1、水素オイル比30〜500NL/L及び反応温度250〜420℃の条件下で行われる。ここで、水素化精製処理とは、水素を利用して石油留分を精製し、高温・高圧下で、前記石油留分を、水素と共にアルミナを担体とするモリブデンと、金属硫化物とを含む触媒に通すことで、硫黄、窒素、酸素、金属などの不純物を含む化合物などを分解する処理のことである。
【0029】
本発明の水素化精製処理に用いられる触媒は、通常用いられている触媒であれば、特に支障はない。例えば、前記活性金属元素として、Co及びNiのうちの少なくとも1種類から選ばれる元素、及び、Mo及びWのうちの少なくとも1種類から選ばれる元素を含む多孔質体からなるものを用いることができる。また、Co及びNiの合計含有量が1〜10質量%、Mo及びWの合計含有量が2〜30質量%のものが好ましい。MoやWに、CoやNiを添加することによって、水素化精製処理における脱硫活性や脱窒素活性が飛躍的に向上するからである。
【0030】
前記触媒については、Co又はNi、及び、Mo又はWを含有するものであれば特に限定はされないが、これらの水素化精製触媒は、リン、ホウ素、フッ素等の元素を含んでもよいし、さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸、ニトリロ三酢酸、クエン酸等のキレ−ト性の有機化合物などを含んだものも好適である。水素化精製触媒は、メソポアの中央細孔直径が4〜20nmのものが好ましく、4〜15nmのものがさらに好ましい。また、比表面積は30〜800m/gのものが好ましく、50〜600m/gのものがさらに好ましい。
【0031】
また、前記水素化精製触媒については、粉体ではなく、成形体であることが好ましい。成形体の形状や成形方法に特に制限はないが、球状や柱状の形状が好ましい。また、球状の場合には、直径が0.5〜20mmのものが好ましく、柱状の場合の断面形状は、特に制限はされないが、円型、三つ葉型、四つ葉型であることが好ましい。前記柱状の成形体の寸法は、断面積が0.25〜400mm、長さ0.5〜20mm程度であることが好ましい。
【0032】
前記水素化精製触媒の製造方法については、特に制限はされないが、多孔質無機酸化物担体に上述の活性金属元素やリン等の添加元素を含ませることで製造することが好ましい。多孔質無機酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア等の酸化物、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ−チタニア、シリカ−アルミナ−ジルコニア等の複合酸化物、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライト及びMCM−22等のゼオライトから選ばれる1種又は2種以上からなるものが好ましい。
【0033】
前記水素化精製装置の運転条件としては、水素分圧が1〜10 MPa、好ましくは3〜8MPaの範囲である。水素圧力が1MPaより低いと、軽油中の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、また、水素圧力が10MPaを超えると軽油留分の単位体積あたりの発熱量が小さくなり、好ましくない。
【0034】
また、前記水素化精製装置のLHSVは、0.1〜5h−1、好ましくは1〜3h−1の範囲である。LHSVが0.1h−1未満の場合には、軽油を製造するための反応装置が大きくなり過ぎるおそれがあり、LHSVが5h−1を超えると、軽油の硫黄分を10質量ppm以下にするために反応温度が高くなりすぎて触媒の劣化が促進されるおそれがある。
【0035】
また、前記水素化精製装置の水素オイル比は、30〜500NL/L、好ましくは100〜300NL/Lである。水素/オイル比が30NL/L未満では、軽油の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難であり、また、500NL/Lを超えると、水素供給のためのコストが嵩み、経済的な軽油の製造ができ難くなる。
【0036】
また、前記水素化精製装置の反応温度は、250〜420℃、好ましくは250〜400℃である。前記反応温度が250℃より低いと、軽油中の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、一方、反応温度が420℃を超えると触媒の劣化が促進されるため、好ましくない。
(軽油留分)
【0037】
本発明の製造方法によって軽油留分が得られる。
ここで、本発明の軽油留分とは、ディ−ゼルエンジンの燃料に供することが可能な炭化水素を含む留分であって、密度0.8600g/cm以下、セタン価(セタン指数)45以上、90%蒸留温度360℃以下のものをいう。
【0038】
本発明の軽油留分の水素化精製方法によれば、得られた軽油留分をそのまま軽油製品として用いることができ、あるいは他の基材と混合して軽油製品を調製するための軽油基材として用いることもできる。この軽油基材と混合される他の軽油基材としては、例えば、原油を精製して生産される灯油、フィッシャ−・トロプシュ法等で誘導される合成軽油、水素化分解軽油、あるいはそれらの半製品、中間製品等の配合用基材が挙げられる。また、植物油メチルエステル、エ−テル類等も他の軽油基材として配合することが可能である。本発明で得られる軽油基材と他の軽油基材とを配合して、製品軽油を調製する場合、所望の品質の軽油となるように適宜配合割合を選定することができるが、他の軽油基材の配合割合は、20質量%以下、特には15質量%にすることが好ましい。
【0039】
また、前記軽油留分の硫黄分は、10質量ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは8質量ppm以下である。前記硫黄分が10質量ppmを超えると、ディ−ゼルエンジン燃焼により生成する硫黄酸化物が高濃度となり、排ガス用触媒の劣化を促進したり、当該触媒の再生に要する燃料コストが増加して燃費が悪化したりする恐れがある。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
なお、各実施例及び比較例において、蒸留性状、密度、硫黄分、窒素分、動粘度、芳香族分、ナフテン分は、以下のように得られる。
・蒸留性状:JISK2254に規定する「石油製品−蒸留試験方法」によって得られるものである。
・密度:15℃における密度は、JIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定されるものである。
・硫黄分:JIS K 2541−1992に規定する「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定されるものである。
・窒素分:JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定されるものである。
・塩基性窒素分:UOP試験法No.269−90に準拠して測定されるものである。
・芳香族分:芳香族分とは全芳香族分のことである。全芳香族分、1環芳香族分、2環芳香族分、及び3環以上芳香族分は、石油学会法JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ」で測定されるものである。
【0042】
(実施例、参考例、比較例)
実施例、参考例及び比較例において、原料油に含まれる各基材(直留軽油(R−LGO)、接触分解油(LCO)、直接脱硫軽油(RDS−GO))の性状を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表2に示す条件(原料油、水素化精製処理条件)によって、各原料油から軽油留分の製造を行った。水素化精製触媒については、Co(2.4質量%)及びMo(15質量%)をアルミナ担体に担持して調製した触媒を用いた。
【表2】

【0045】
(評価)
各例について、軽油留分中の硫黄分6質量ppmを得るために必要な反応温度(通油後10日目及び28日目に測定)、水素化精製触媒の劣化速度(℃/日)、及び、水素消費量(相対値)について評価した。評価結果を表3に示す。
なお、水素化精製触媒の劣化速度については、10日目の必要反応温度と28日目の必要反応温度の差から算出した。また、水素消費量については、導入した水素量から生成ガス中に含まれる水素量の差から算出し、参考例における水素消費量を100としたときの相対値で示した。数値が小さいほど消費量が少なく良好な結果であることを示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3の結果から、本発明による実施例では、目標とする硫黄分にするための反応温度が参考例に比べて高いものの、劣化速度は同等であり、水素消費量については実施例の方が少ないことがわかる。一方、比較例との対比では、目標とする硫黄分にするための反応温度は同等だが、水素化精製触媒の劣化速度が低減できていることに加えて、水素消費量が少ないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、重油基材を重油以外の用途に有効活用できるとともに、水素化精製処理に用いる水素化精製触媒の劣化を抑制でき、水素消費量を低減できる軽油留分の製造方法を提供することが可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直留軽油に、窒素分が30〜500質量ppm以下で且つ塩基性窒素分が20〜200質量ppmである直接脱硫軽油を5〜50容量%混合した原料油を、水素化精製触媒を用いて、水素分圧1〜10MPa、LHSV0.1〜5h−1、水素オイル比30〜500NL/L及び反応温度250〜420℃の条件下で、水素化精製処理することを特徴とする軽油留分の製造方法。
【請求項2】
前記直接脱硫軽油は、全芳香族分に占める2環芳香族分及び3環芳香族分の割合が2〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の軽油留分の製造方法。
【請求項3】
得られた軽油留分の硫黄分が、10質量ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軽油留分の製造方法。


【公開番号】特開2012−251091(P2012−251091A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125803(P2011−125803)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】