説明

軽量カーペットタイル

【課題】カーペットタイルの軽量化を図りながら、施工性を改良し、かつ2−エチルヘキサノールの放散を抑制したカーペットタイルの提供。
【解決手段】タフテッドカーペット(1)、非発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(2)、ガラス繊維不織布(3)、及び発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(4)が順に積層されたカーペットタイルであって、最下層の裏打ち層(4)は、熱膨張マイクロカプセルにより発泡され、発泡倍率が1.3〜2.0倍であり、かつ発泡塩ビペースト中の可塑剤〔フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)〕の添加量が180〜350g/mの範囲にあることを特徴とするカーペットタイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量カーペットタイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーペットタイルを軽量化する手段としては、塩ビペーストをケミカル発泡やメカニカル発泡によって発泡させ、裏打ち層とすることが知られている(特許文献1参照)。
しかし、ケミカル発泡を行う際には、発泡剤の発泡温度に制約があるため、数度以内の温度変動で制御できる高価なオーブンを使用しないと安定した発泡層を得ることは極めて困難である。
また、メカニカル発泡を行う場合、ペースト粘度の調整が必要であり、ペースト塗布性と発泡性のバランスを取ることが難しいという問題があった。
こうした背景から近年、熱膨張マイクロカプセルを利用することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献2には、熱膨張マイクロカプセルを利用したカーペットタイルが開示されている。このカーペットタイルは、ガラス繊維不織布の上下の層が共に、熱膨張マイクロカプセルで発泡されたカーペットタイルである。
しかし、この熱膨張マイクロカプセルの使用は、カーペットタイルの軽量化には有効であるが、ガラス繊維不織布の上層が発泡されているカーペットタイルはパイルの保持力が低下する。即ち、カーペットタイルを施工する際には、施工場所でカーペットタイルをカッターナイフで裁断する作業が必要であるが、ガラス繊維不織布の上層が発泡層であると、裁断時にパイルの一部が引き抜かれ、裁断できずに毛羽立つという不具合が生じる。
また、従来型のカーペットタイルや軽量カーペットタイルでは、最下層に添加される可塑剤が、コンクリート下地から出るアルカリ水により加水分解を受けて、臭気物質の2−エチルヘキサノールが発生するという問題を抱えていた。可塑剤の添加量を減らせば2−エチルヘキサノールの発生も低下するが、柔軟性を失って施工性が悪くなる。この為、施工性を犠牲にせず2−エチルヘキサノールの放散を低下させる手法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−24948号公報
【特許文献2】特許第3581662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、カーペットタイルの軽量化を図りながら、施工性を改良し、かつ2−エチルヘキサノールの放散を抑制したカーペットタイルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、熱膨張マイクロカプセルを用いた発泡層を裏打ち層の最下層部に設け、また、最下層部の可塑剤量を低減させることにより、上記課題が解決出来ることを見出し、本発明に到達した。
即ち、上記課題は、次の発明によって解決される。
「タフテッドカーペット(1)、非発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(2)、ガラス繊維不織布(3)、及び発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(4)が順に積層されたカーペットタイルであって、最下層の裏打ち層(4)は、熱膨張マイクロカプセルにより発泡され、発泡倍率が1.3〜2.0倍であり、かつ発泡塩ビペースト中の可塑剤〔フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)〕の添加量が、180〜350g/mの範囲にあることを特徴とするカーペットタイル。」
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量で施工性が良く、2−エチルヘキサノールの発生が少ないカーペットタイルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のカーペットタイルの層構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明のカーペットタイルは、図1に示すように、タフテッドカーペット(1)に対して、非発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(2)、ガラス繊維不織布(3)、及び発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(4)の3層を積層したものである。そして、最下層の裏打ち層(4)は、熱膨張マイクロカプセルにより発泡され、発泡倍率が1.3〜2.0倍であり、かつ発泡塩ビペースト中の可塑剤〔フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)〕の添加量が180〜350g/mの範囲にあることを特徴とする。
本発明で使用できる熱膨張マイクロカプセルとしては、100〜150℃程度、好ましくは120〜130℃で発泡するものを用いる。その例としては、日本フィライト社製のエクスパンセル909−80UD、930−120UD、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェアーFシリーズ等が挙げられる。
熱膨張マイクロカプセルの添加量は、裏打ち層(4)の発泡倍率が1.3〜2.0倍の範囲となるように調整する必要があるが、通常の場合、塩ビペースト樹脂100部に対して0.5〜4.0部程度である。
【0010】
フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)=DOPは周知の可塑剤であり市販されている。
タフテッドカーペット(1)、ガラス繊維不織布(3)、裏打ち層(2)(4)を構成する塩ビぺースト樹脂は特に限定されず、公知の種々のものを使用できる。
裏打ち層(2)(4)を構成する塩ビぺーストには、上記材料の他に、必要に応じて、無機充填剤、着色剤、加工助剤など公知の種々の添加剤を配合してもよい。無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。着色剤としては通常、所望の色に対応する顔料を用いる。顔料は公知のものの中から適宜選択すればよい。加工助剤としては、例えば粘度調整剤などが挙げられる。
【0011】
裏打ち層(4)の塩ビペースト組成の一例を次に示す。
<塩ビペースト組成>
・PVCペーストレジン100部 カネカビニールペーストPSM−176(カネカ)
・炭酸カルシウム 230部 N−800(日本砕石鉱業)
・可塑剤 55部 DOP(ジェイプラス)
・二次可塑剤 20部 アデカサイザーO130P(アデカ)
・加工助剤 1.3部 VISCO BYK−5125
・熱膨張マイクロカプセル0.4〜5.0部 エクスパンセル909−80UD
(日本フィライト)
・着色剤 0.1部 No.1クロ〔日弘ビックス(登録商標)〕

【0012】
上記組成の塩ビペーストにおける熱膨張マイクロカプセルの添加量と裏打ち層(4)の発泡倍率の関係は、下記表1に示す通りであるが、発泡倍率が2.0倍を超えるとタイル切断時の切り口が悪くなり好ましくない。従って、軽量化を図り且つ不具合を解消する為に、裏打ち層(4)の発泡倍率は1.3〜2.0倍が好適である。
【表1】

【0013】
塩ビペーストにおけるDOP添加量と、裏打ち層(4)からの2−エチルヘキサノール(2EH)放散量、及び施工性の関係を、下記表2に示す。
DOP添加量[g/m]は、添加部数[部]と発泡倍率により変化するが、例えば、上記組成において、発泡倍率を1.4倍とした場合のDOP添加量は276[g/m]となる。
DOP添加量が少ない程、2−エチルヘキサノールの放散量は低減されるが、逆に柔軟性が悪化し施工性も悪くなる。従って、好適な範囲は180〜350g/mである。なお、施工性は、後述する表3、表4の場合と同じ基準で評価した。
【表2】

【実施例】
【0014】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0015】
<実施例1〜13>
前述した<塩ビペースト組成>の塩ビペーストを調製し、テフロン(登録商標)ベルトに塗布した後、120〜130℃のオーブンに入れ、発泡倍率1.3〜2.0倍、且つDOP添加量が180〜350g/mの範囲にある発泡塩ビペーストの裏打ち層(4)を得た。
この裏打ち層(4)に対し、ガラス繊維不織布(3)、非発泡塩ビペーストの裏打ち層(2)、タフテッドカーペット(1)を順次積層し、表3に示す実施例1〜6のカーペットタイルを作製した。
タフテッドカーペット(1)には、タジマ社製のナイロンタフテッドカーペットを使用し、ガラス繊維不織布(3)には、オリベスト社製のFPB−025を使用した。また、裏打ち層(2)の非発泡塩ビペースト組成は次の通りである。
<非発泡塩ビペースト組成>
・PVCペーストレジン100部 カネカビニールペーストPSM−176(カネカ)
・炭酸カルシウム 230部 N−800(日本砕石鉱業)
・可塑剤 75部 DOP(ジェイプラス)
・加工助剤 1.3部 VISCO BYK−5110
・着色剤 0.1部 No.1クロ〔日弘ビックス(登録商標)〕

【0016】
<比較例1〜5>
一部の条件を変えた点以外は、実施例と同様にして、表4に示す比較例1〜5のカーペットタイルを作製した。
比較例1は、非発泡塩ビペーストの裏打ち層(2)の材料を、発泡塩ビペーストの裏打ち層(4)の材料と同一にした場合であり、比較例2、3は、裏打ち層(4)の発泡倍率が1.3〜2.0倍の範囲を外れた場合であり、比較例4、5は、裏打ち層(4)のDOP添加量が180〜350g/mの範囲を外れた場合である。
【0017】
実施例及び比較例のカーペットタイルについて、以下のようにして各特性を評価した。
<軽量化率>は、全く発泡層が無いカーペットタイルの重量(1200g/枚)を基準として、次の式により算出した。
軽量化率(%)=〔製品質量(g)/1200(g)〕×100

<2−エチルヘキサノール(2EH)放散量>は、JIS A 1901に規定する方法で24時間後の放散速度(μg/m・hr)を測定した。

<施工性(ハンドリング)><切り込み易さ><裁断部の毛羽>は、実際に施工を行い感覚的に次の3段階で評価した。
○:良好
△:並
×:難点あり

【0018】
【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タフテッドカーペット(1)、非発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(2)、ガラス繊維不織布(3)、及び発泡塩ビペーストからなる裏打ち層(4)が順に積層されたカーペットタイルであって、最下層の裏打ち層(4)は、熱膨張マイクロカプセルにより発泡され、発泡倍率が1.3〜2.0倍であり、かつ発泡塩ビペースト中の可塑剤〔フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)〕の添加量が、180〜350g/mの範囲にあることを特徴とするカーペットタイル。

【図1】
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【公開番号】特開2013−111828(P2013−111828A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259444(P2011−259444)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000133076)株式会社タジマ (34)
【Fターム(参考)】