説明

軽量充填補修材

【課題】軽量で塗布しやすく、適度な速度で硬化するため作業性に優れ、強靱性、耐水性、耐温水性、及び耐候性に優れる充填補修材を提供する。
【解決手段】本発明の軽量充填補修材は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有し、比重が1未満であることを特徴とする。
(A)アニオン性基非含有、且つ、複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー
(B)水
(C)無機中空粉体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量充填補修材に関し、更に詳しくは、石膏ボード、軽量気泡コンクリート、モルタル、合板等の継ぎ目や欠陥部にヘラ等で塗布して平滑な表面を得ることに用いられる軽量充填補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量充填補修材としては、バインダーとしてのアクリル樹脂エマルジョンと充填剤としての中空バルーン(例えば、有機質マイクロバルーン、無機質マイクロバルーンなど)及び無機微粉末(例えば、炭酸カルシウムなど)を水と混合して得られるパテが知られている(特許文献1、2)。しかしながら、これらのパテは水が蒸発するに伴い肉ヤセし易く、また、乾燥による収縮に追随することができずひび割れが生じることが多いなど耐候性に問題があり、完全に平滑な塗布面を形成するためには、複数回繰り返して施工する必要があった。また、炭酸カルシウム等の無機微粉末を多量に含有するため、軽量といえども比重が1を超えることが多く、ヘラ伸びが悪く、塗りにくい点が問題であった。
【0003】
充填剤としての無機微粉末(例えば、炭酸カルシウムなど)を含有しない例としては、特許文献3に記載の発明が知られているが、流動性が高すぎるため、乾燥に時間がかかりすぎ、作業性が低いことが問題であった。更に、耐水性、耐温水性が低く、浴室や洗面所等の割れや隙間などの水回りの補修には使用しづらい点が問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−212481号公報
【特許文献2】特開昭48−32127号公報
【特許文献3】特公昭61−29388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、軽量で塗布しやすく、適度な速度で硬化するため作業性に優れ、強靱性、耐水性、耐温水性及び耐候性に優れる充填補修材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、バインダーとしてアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーを使用し、該バインダーと充填剤としての無機中空粉体を水と混合することにより得られる軽量充填補修材は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーのシリル基が水と反応することによりシラノール基を形成し、被補修面に塗布すると、水分の蒸発に伴いシラノール基同士が脱水縮合して3次元架橋構造を形成して硬化すると同時に、該シラノール基が無機中空粉体表面に存在するヒドロキシル基と強固に結合するためか、優れた硬度、耐水性、及び耐温水性を有する硬化物を形成することができること、及び、含有する水分が蒸発乾燥しても無機中空粉体間の空間を維持することができるため、硬化物が肉ヤセすることを防止できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有し、比重が1未満であることを特徴とする軽量充填補修材を提供する。
(A)アニオン性基非含有、且つ、複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー
(B)水
(C)無機中空粉体
【0008】
アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーとしては、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーであることが好ましく、アニオン性基がカルボキシル基であることが好ましい。
【0009】
また、(C)無機中空粉体の真比重が0.10〜0.60であることが好ましく、不揮発分が20〜60質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る軽量充填補修材は、バインダーとしてのアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーと、充填剤としての無機中空粉体と水とを構成要素とする。そして、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーのシリル基が水と反応することによりシラノール基を形成し、被補修面に塗布すると、水分の蒸発に伴いシラノール基同士が脱水縮合して硬化すると同時に、該シラノール基が無機中空粉体表面に存在するヒドロキシル基と強固に結合して3次元架橋構造を形成するためか、優れた硬度、耐水性、及び耐温水性を有する硬化物を形成することができる。そのため、浴室や洗面所等の水回りの補修に好適に使用することができる。また、有機溶媒を使用する必要がないため、シックハウス症候群などの問題を引き起こすことがなく、人体や環境に対して安全性が高い。さらに、水分の蒸発に伴って硬化が進むため、適度な速度で硬化が進み、塗布作業等を慌てずに行うことができる。そして、水分が蒸発しても肉ヤセしにくく、ひび割れの発生を抑制することができるため、何度も繰り返して施工する必要がない。更にまた、充填剤として無機中空粉体を使用するため、軽量充填補修材の比重を1未満にすることができ、運搬が容易であり、ヘラさばきが軽く、作業性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)]
本発明に係るアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)は、アニオン性基非含有、且つ、複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られる。なお、アニオン性基は塩の形態を有していてもよい。
【0012】
[アニオン性基非含有、且つ、複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1)]
アニオン性基非含有、且つ、複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1)」と称する場合がある)は、分子内にアニオン性基を有しておらず、且つ、分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。該イソシアネート反応性基(A1)としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されることなく、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などを挙げることができる。従って、イソシアネート反応性化合物(A1)としては、例えば、アニオン性基非含有ポリオール化合物、アニオン性基非含有ポリアミン化合物、アニオン性基非含有ポリチオール化合物などを挙げることができる。
【0013】
本発明におけるイソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基(特にヒドロキシル基)が好ましく、イソシアネート反応性化合物(A1)としては、アニオン性基非含有ポリオール化合物やアニオン性基非含有ポリアミン化合物(特にアニオン性基非含有ポリオール化合物)が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0014】
イソシアネート反応性化合物(A1)におけるアニオン性基非含有ポリオール化合物(A1)(以下、「ポリオール(A1)」と称する場合がある)としては、例えば、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油などを挙げることができる。本発明においては、なかでも、製造時の取り扱いが比較的容易なことから、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール(特に、ポリエーテルポリオール)が好ましい。
【0015】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などを挙げることができる。一方、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などを挙げることができる。また、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどを挙げることができる。
【0017】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステルの開環重合物などを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。多価アルコールとホスゲンとの反応に使用する多価アルコールとしては、前記多価アルコールの例と同様の例を挙げることができる。また、前記環状炭酸エステルとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートなどを挙げることができる。なお、本発明においてポリカーボネートポリオールとは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0018】
また、上記イソシアネート反応性化合物(A1)におけるアニオン性基非含有ポリアミン化合物(以下「ポリアミン(A1)」と称する場合がある)としては、例えば、前記ポリオール(A1)に対応する化合物を挙げることができる。
【0019】
本発明におけるイソシアネート反応性化合物(A1)の数平均分子量としては、例えば、500〜5000程度が好ましく、なかでも1000〜3000程度が好ましい。数平均分子量が500を下回ると、被塗布体に対する密着性が低下する傾向がある。一方、数平均分子量が5000を上回ると、水に分散させることが困難となる傾向がある。また、硬化物の耐熱性、耐水性、耐温水性、耐溶剤性が低下する傾向がある。
【0020】
更に本発明におけるイソシアネート反応性化合物(A1)としては、数平均分子量が500以上の上記イソシアネート反応性化合物と、数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物とを組み合わせて用いてもよい。このように高分子量のイソシアネート反応性化合物と、低分子量のイソシアネート反応性化合物とを組み合わせて用いることにより、より一層強靱性を高めることができる。
【0021】
また、数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物の数平均分子量としては、500未満であれば下限は特に制限されないが、例えば48以上500未満の範囲(なかでも62〜300の範囲)であることが好ましい。
【0022】
数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物としては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン(N−メチルジエタノールアミン)(分子量:119.16)、N−エチルジエタノールアミン等を挙げることができる。
【0023】
数平均分子量が500以上のイソシアネート反応性化合物と数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物との混合割合としては、例えば、[数平均分子量が500以上のイソシアネート反応性化合物のイソシアネート反応性基(ヒドロキシル基など)]/[数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物のイソシアネート反応性基(ヒドロキシル基など)](モル比)=0.05〜4程度の範囲から適宜選択することができる。
【0024】
[アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A2)]
アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A2)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A2)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも1つのアニオン性基を有しており、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。
【0025】
イソシアネート反応性化合物(A2)におけるアニオン性基としては、例えばカルボキシル基、スルホ基を挙げることができ、なかでも製造時の取り扱いが比較的容易なことからカルボキシル基が好ましい。
【0026】
また、イソシアネート反応性化合物(A2)におけるイソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基、メルカプト基などを挙げることができる。本発明においては、なかでもヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好ましい。
【0027】
従って、本発明におけるイソシアネート反応性化合物(A2)としては、例えば、カルボキシル基含有ポリオール化合物、カルボキシル基含有ポリアミン化合物、カルボキシル基含有ポリチオール化合物、スルホ基含有ポリオール化合物、スルホ基含有ポリアミン化合物、スルホ基含有ポリチオール化合物を挙げることができ、なかでも、カルボキシル基含有ポリオール化合物、カルボキシル基含有ポリアミン化合物が好ましく、特にカルボキシル基含有ポリオール化合物が好ましい。これらのイソシアネート反応性化合物(A2)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明におけるカルボキシル基含有ポリオール化合物としては、下記式(1)で表されるポリヒドロキシカルボン酸を使用することが好ましい。
(HO)XL(COOH)Y (1)
(式中、Lは炭素数1〜12の炭化水素部位を示す。Xは2以上の整数であり、Yは1以上の整数である)
【0029】
前記式(1)において、Lで示される炭化水素部位としては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素部位を挙げることができる。Xは2以上の整数であり、Yは1以上の整数である。X、Yは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、2つ以上のヒドロキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。さらに、Yが2以上である場合、2つ以上のカルボキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。本発明においては、Xは2であることが好ましく、Yは1であることが好ましい。
【0030】
このようなポリヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ジメチロールアルカン酸等を挙げることができ、なかでも、2,2−ジメチロールアルカン酸が好ましい。2,2−ジメチロールアルカン酸としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸などを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
[ポリイソシアネート化合物(A3)]
ポリイソシアネート化合物(A3)は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリイソシアネート化合物(A3)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネ−ト、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシネ−ト、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
本発明におけるポリイソシアネート化合物(A3)としては、なかでも、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンを好適に用いることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。また、ポリイソシアネート化合物(A3)として、脂肪族ポリイソシアネートや芳香脂肪族ポリイソシアネートを用いると、変色の少ない樹脂を得ることができる。
【0037】
なお、本発明では、ポリイソシアネート化合物(A3)として、前記例示の脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環式ポリイソシアネ−ト、芳香族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。
【0038】
[イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)]
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有しており、且つ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
【0039】
イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対して反応性を有している基であれば特に制限されず、例えば、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基、ヒドロキシル基等を挙げることができる、本発明においては、なかでも第1級又は第2級アミノ基、メルカプト基が反応性が高く、高い収率で目的化合物を得ることができる点で好ましい。従って、本発明におけるイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)としては、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A4-2)が好ましい。
【0040】
前記第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)としては、分子内に少なくとも1つの第1級又は第2級アミノ基を有しており、且つ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)は、第3級アミノ基を含有していてもよい。
【0041】
さらに、第1級又は第2級アミノ基はケイ素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などを挙げることができる。
【0042】
本発明における第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)としては、下記式(2a)、(2b)、(2c)で表される化合物を使用することが好ましい。
【化1】

(式中、R1、R2は、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキル基を示し、R3、R4は、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、R5は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を示す。また、mは1〜3の整数である。mが1である場合、2個のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。mが2以上の整数である場合、2個以上のR1O−基は同一であってもよく、異なっていてもよい)
【0043】
上記式(2a)、(2b)、(2c)中のR1、R2、R5におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基等を挙げることができる。R3、R4におけるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3程度のアルキレン基等を挙げることができる。R5におけるアリール基としては、例えば、フェニル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0044】
また、R1〜R5が有していてもよい置換基としては、例えば、フェニル基などのアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などを挙げることができる。また、該炭化水素基は、さらに他の置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基、アミノ基など)を有していてもよい。
【0045】
式(2a)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するアミノアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどを挙げることができる。
【0046】
式(2b)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン;N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシランなどを挙げることができる。
【0047】
式(2c)で表されるイソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニル−β−アミノエチルトリエトキシシラン等のN−フェニル−β−アミノエチルトリアルコキシシラン;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリアルコキシシランや、これらに対応するN−フェニルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシラン;N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノメチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシランなど)や、N−アルキルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランなどのN−アルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0048】
前記メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A4-2)としては、分子内に少なくとも1つのメルカプト基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
【0049】
さらに、メルカプト基はケイ素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などを挙げることができる。
【0050】
本発明におけるメルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A4-2)としては、特に、下記式(2d)で表される化合物を好適に用いることができる。
【0051】
【化2】

(式中、R1、R2は、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキル基を示し、R3は置換基を有していてもよいアルキレン基を示す。また、mは1〜3の整数である。mが1である場合、2個のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。mが2以上の整数である場合、2個以上のR1O−基は同一であってもよく、異なっていてもよい)
【0052】
上記式(2d)中のR1、R2、R3としては、上記式(2a)、(2b)、(2c)中のR1、R2、R3と同様の例を挙げることができる。また、R1、R2、R3が有していてもよい置換基としても、上記式(2a)、(2b)、(2c)中のR1、R2、R3が有していてもよい置換基と同様の例を挙げることができる。
【0053】
式(2d)で表されるイソシアネート反応性基としてメルカプト基含有アルコキシシランとしては、例えば、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジプロポキシシラン等の(メルカプトアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するメルカプトアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどを挙げることができる。
【0054】
本発明におけるイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)としては、反応のし易さ、広く市販され入手がし易いなどの点から、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)が好ましい。
【0055】
第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)としては、商品名「KBM602」、「KBM6063」、同「X−12−896」、同「KBM576」、同「X−12−565」、同「X−12−580」、同「X−12−5263」、同「X−12−666」、同「KBM6123」、同「X−12−575」、同「X−12−577」、同「X−12−563B」、同「X−12−730」、同「X−12−562」、同「X−12−5202」、同「X−12−5204」、同「KBE9703」(以上、信越化学工業社製)などの市販品を好適に使用することができる。
【0056】
さらにまた、本発明においては、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)として、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A4-1)に、不飽和カルボン酸エステル(A5)を反応させて得られる、少なくともイソシアネート反応性基として第2級アミノ基を含有するエステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)を使用してもよい。
【0057】
前記不飽和カルボン酸エステル(A5)としては、不飽和カルボン酸のカルボン酸基(カルボキシル基)のうち少なくとも1つ(好ましくはすべて)がエステルの形態となっている化合物であれば特に制限されることがなく、不飽和1価カルボン酸エステルであってもよく、不飽和多価カルボン酸エステル(例えば、不飽和2価カルボン酸エステルなど)であってもよい。
【0058】
不飽和カルボン酸エステル(A5)としては、炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子に直接カルボキシル基又はそのエステル(例えば、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)が結合している化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、2−ブテン酸エステル、3−メチル−2−ブテン酸エステル、2−ペンテン酸エステル、2−オクテン酸エステル等の他、桂皮酸エステル等の不飽和1価カルボン酸エステル;マレイン酸エステル(モノ又はジエステル)、フマル酸エステル(モノ又はジエステル)、イタコン酸エステル(モノ又はジエステル)等の不飽和2価カルボン酸のエステルなどを挙げることができる。本発明においては、なかでもアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(以下、これらを「(メタ)アクリル酸エステル」と総称する場合がある)、マレイン酸ジエステルが好ましい。
【0059】
不飽和カルボン酸エステル(A5)にけるエステル部位としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル等の脂肪族炭化水素によるエステル(アルキルエステルなど);シクロヘキシルエステル、イソボルニルエステル、ボルニルエステル、ジシクロペンタジエニルエステル、ジシクロペンタニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、トリシクロデカニルエステル等の脂環式炭化水素によるエステル(シクロアルキルエステルなど);フェニルエステル、ベンジルエステル等の芳香族炭化水素によるエステル(アリールエステルなど)などを挙げることができる。なお、エステル部位を複数有する場合、それぞれのエステル部位は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどを挙げることができる。また、マレイン酸ジエステルとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジオクタデシル等のマレイン酸ジアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0061】
エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル(A5)の炭素−炭素二重結合におけるβ位の炭素原子が、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子に結合した化合物等を挙げることができる。すなわち、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)は、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子が、不飽和カルボン酸エステル(A5)の不飽和結合(炭素−炭素二重結合)に対してマイケル付加反応を行うことにより得られる化合物であることが好ましい。該反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。また、反応に際しては加熱や加圧を行ってもよい。
【0062】
具体的には、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)は、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(2a)で表される化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A5)が下記式(3)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、下記式(4)で表すことができる。
【0063】
【化3】

(式中、R6、R8は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R7はアルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。R9は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基から選択された基を示す)
【0064】
【化4】

(式中、R1〜R3、R6〜R9及びmは前記に同じ)
【0065】
また、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(2b)で表される化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A5)が前記式(3)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)は、下記式(5a)又は下記式(5b)で表すことができる。
【0066】
【化5】

(式(5a)及び(5b)中、R1〜R4、R6〜R9及びmは前記に同じ)
【0067】
また、R6におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などを挙げることができる。R7におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基を挙げることができる。また、R7におけるアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられ、R7におけるシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基などを挙げることができる。R8におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基を挙げることができる。R9におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などを挙げることができ、アリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができ、また、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基のアルキル基部位、アリール基部位、シクロアルキル基部位としては、前記R7で例示のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基と同様の例を挙げることができる。
【0068】
[アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)]
本発明におけるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)は、上記イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られる反応生成物であり、分子内にイソシアネート反応性化合物(A2)に由来するアニオン性基と、主鎖の末端にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)に由来するアルコキシシリル基とを有するポリマーである。
【0069】
本発明におけるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)としては、なかでもイソシアネート反応性化合物(A1)(特にポリオール(A1))、イソシアネート反応性化合物(A2)(特にポリオール(A2))及びポリイソシアネート化合物(A3)の反応生成物であるアニオン性基含有ポリマー(特に、アニオン性基含有ウレタンプレポリマー)と、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)との反応により得られる末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーであることが好ましい。
【0070】
該アニオン性基含有ポリマーの末端イソシアネート基含有量としては、例えば、0.3〜7.0重量%程度が好ましい。末端イソシアネート基含有量が7.0重量%を上回ると、水分散が困難となる傾向がある。一方、末端イソシアネート基含有量が0.3重量%を下回ると、合成時の粘度が高くなりすぎて、合成が困難となる傾向がある。
【0071】
イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)の混合に際しては、各成分の混合順序は問わず、各成分の種類に応じて適宜混合の順序を選択することができる。本発明においては、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)の混合物に、ポリイソシアネート化合物(A3)を加えて反応させ、アニオン性基含有ポリマーを調製した後に、該反応混合液にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を加えて反応させることにより、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製することが、収率の点で好ましい。
【0072】
イソシアネート反応性化合物(A1)としてポリオール(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)としてポリオール(A2)を使用する場合、アニオン性基含有ポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを調製する公知乃至慣用の方法に準じて反応させることにより得ることができる。本発明におけるアニオン性基含有ポリマーとしては、末端がイソシアネート基となっているものが好ましい。
【0073】
なお、ポリオール(A1)、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート化合物(A3)を反応させる際には、反応促進のために重合触媒を用いてもよい。また、反応は溶媒中で行うことができる。
【0074】
前記重合触媒としては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応の際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができ、例えば、有機錫化合物、金属錯体、アミン化合物などの塩基性化合物、有機燐酸化合物などを挙げることができる。有機錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫メトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテートなどを挙げることができる。また、金属錯体としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体などを挙げることができる。さらに、アミン化合物等の塩基性化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製の商品名「DABCO」シリーズや「DABCO BL」シリーズ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の複数の窒素原子を含む直鎖或いは環状の第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などを挙げることができる。さらにまた、前記有機燐酸化合物としては、例えば、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸、燐酸トリフェニル等を挙げることができる。
【0075】
続いて行われるアニオン性基含有ポリマーとイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。該反応により、前記アニオン性基含有ポリマーの末端のイソシアネート基がアルコキシシリル化されて、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)が得られる。反応に際しては、必要に応じて重合触媒を使用してもよい。また、反応は、溶媒中で行うことができる。
【0076】
以上、イソシアネート反応性化合物(A1)としてポリオール(A1)を用い、イソシアネート反応性化合物(A2)としてポリオール(A2)を用いた場合のアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製する方法について述べたが、イソシアネート反応性化合物(A1)やイソシアネート反応性化合物(A2)として、ポリアミン化合物やポリチオール化合物などを用いた場合も同様の方法により、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製することができる。
【0077】
また、イソシアネート反応性化合物(A1)として数平均分子量が500以上のイソシアネート反応性化合物と、数平均分子量が500未満のイソシアネート反応性化合物とを組み合わせて用いる場合であって、数平均分子量が500未満のポリアミン(A1)を使用する場合は、該数平均分子量が500未満のポリアミン(A1)以外のイソシアネート反応性化合物(A1)とイソシアネート反応性化合物(A2)とポリイソシアネート化合物(A3)とを混合して反応させてアニオン性基含有ポリマーとし、その後、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応させて末端が部分的にアルコキシシリル化されたアニオン性基含有ポリマーを得、そこに、数平均分子量が500未満のポリアミン(A1)を添加してアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)を調製してもよい。
【0078】
本発明において、イソシアネート反応性化合物(A1)、イソシアネート反応性化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)の各成分の割合は特に制限されることがなく適宜調整することができ、例えば、ポリイソシアネート化合物(A3)と、イソシアネート反応性化合物(A1)及びイソシアネート反応性化合物(A2)との割合としては、ポリイソシアネート化合物(A3)におけるイソシアネート基/イソシアネート反応性化合物(A1)及びイソシアネート反応性化合物(A2)におけるイソシアネート反応性基(NCO/NCO反応性基)(当量比)が、1より大きく1.5以下(好ましくは1より大きく1.3以下、さらに好ましくは1より大きく1.2以下)となるような範囲である。該NCO/NCO反応性基の比が大きすぎると(例えば、1.5(当量比)を越えると)、軽量充填補修材の保存安定性が低下する傾向がある。一方、該NCO/NCO反応性基の比が小さすぎると(例えば、1以下(当量比)であると)、シリル基を導入することが困難となり、強靱性、耐温水性、耐水性が低下する傾向がある。
【0079】
また、ポリイソシアネート化合物(A3)は、アニオン性基含有ポリマー中のイソシアネート基の含有量が、0.3〜7.0質量%(好ましくは0.3〜5.0質量%、さらに好ましくは1.0〜3.0質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。イソシアネート基の含有量が前記範囲内となるように調整することにより、強靱性、耐温水性、耐水性を向上させることができる。
【0080】
さらに、イソシアネート反応性化合物(A2)は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)中のアニオン性基の含有量が、0.2〜5.0質量%(好ましくは0.5〜4.0質量%、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。該アニオン性基の含有量が多すぎると(例えば、5.0質量%を越えると)、軽量充填補修材の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、硬化後の耐温水性及び耐水性も低下する傾向がある。一方、該アニオン性基の含有量が少なすぎると(例えば、0.2質量%未満であると)、軽量充填補修材中のバインダー成分の分散安定性が低下する傾向がある。
【0081】
さらにまた、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)中のケイ素原子の含有量が、0.05〜1.0質量%(好ましくは0.1〜0.8質量%、さらに好ましくは0.2〜0.6質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。該ケイ素含有量が多すぎると(例えば、1.0質量%を越えると)、軽量充填補修材の保存安定性が低下し、一方、少なすぎると(例えば、0.05質量%未満であると)、軽量充填補修材の強靱性、耐温水性、耐水性が低下する傾向がある。
【0082】
不飽和カルボン酸エステル(A5)を使用する場合、その使用量としては、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A4-5)が、少なくとも第2級アミノ基を1つ残す量であることが望ましい。例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおける第1級アミノ基及び第2級アミノ基1モルに対して0.8〜2モル程度の範囲から選択することができる。なお、不飽和カルボン酸エステルは、少なくとも第2級アミノ基が残存するような条件で反応させて用いることができる。
【0083】
[水(B)]
本発明では、水(B)として、例えば水道水、イオン交換水、純水などを用いることができる。そして、水の使用量を調整することで、軽量充填補修材の硬化速度を調整することができる。本発明においては、軽量充填補修材中の不揮発分を、例えば20〜60質量%(好ましくは、30〜55質量%)となるように水を使用することが好ましい。それにより、適度な流動性、及び適度な硬化速度を実現することができるため、ヘラさばきが軽く、慌てずに塗布作業等を行うことができ作業性に優れる軽量充填補修材を得ることができる。
【0084】
[無機中空粉体(C)]
本発明では、充填剤として無機中空粉体を含有する。無機中空粉体の表面に有するヒドロキシル基は、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)のシリル基と反応して強固に結合することができる。そのため、強固な3次元架橋構造を形成することができ、強靱性、耐候性、耐温水性、及び耐水性に優れる硬化物を得ることができる。該無機中空粉体としては、真比重が、例えば0.10〜0.60、好ましくは0.15〜0.40、特に好ましくは0.20〜0.40のものを使用することが好ましい。それにより、軽量充填補修材の比重を低減することができ、作業性を向上させることができる。
【0085】
また、無機中空粉体の平均粒径(電子顕微鏡観察による)としては、用途に応じて適宜選択して使用することができ、例えば、10〜150μm程度、好ましくは20〜70μm程度である。無機中空粉体の平均粒径が上記範囲を上回ると、軽量充填補修材の流動性が低下し、ヘラを使用して補修部へしごき込むことが困難となる傾向がある。一方、無機中空粉体の平均粒径が上記範囲を下回ると、水分の蒸発に伴い3次元架橋構造を保持することが困難となり、肉ヤセの原因となる傾向がある。
【0086】
本発明における無機中空粉体としては、例えば、シリカバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、パーライト発泡体等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、耐熱性、強度に優れ、低誘電率、低熱伝導率を有するガラスバルーンを使用することが好ましい。
【0087】
本発明においては、例えば、商品名「グラスバブルズ」(住友スリーエム(株)製)、商品名「フジバルーン」(富士シリシア化学(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0088】
[軽量充填補修材]
本発明に係る軽量充填補修材は、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有し、比重が1未満(例えば0.3以上、1未満、好ましくは0.3〜0.7、特に好ましくは0.3〜0.5)であることを特徴とする。
【0089】
本発明に係る軽量充填補修材の調製方法としては、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を混合することにより調製することができ、その混合の順序は特に制限されることがないが、なかでも(A)成分に、(B)成分及び(C)成分を配合し、激しい攪拌等を行うことにより、加水分解反応等の反応を促進させることが好ましい。
【0090】
軽量充填補修材中の(A)成分の含有量としては、例えば、1.0〜20.0質量%程度、好ましくは3.0〜15.0質量%、特に4.0〜15.0質量%が好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲を下回ると、硬化に時間がかかりすぎ、作業性が低下する傾向があり、また、肉ヤセやひび割れの発生を防止することが困難となり、耐候性が低下する傾向がある。一方、(A)成分の含有量が上記範囲を上回ると、流動性が低下して作業性が低下する傾向があり、硬化物の耐水性、耐温水性が低下する傾向がある。
【0091】
軽量充填補修材中の(B)成分の含有量としては、例えば、30.0〜70.0質量%程度、好ましくは40.0〜70.0質量%、特に45.0〜65.0質量%が好ましい。(B)成分の含有量が上記範囲を下回ると、流動性が低くなりすぎ、ヘラを使用して塗布することが困難となる。また、硬化が早く進みすぎるため、作業可能な時間が少なくなりすぎる傾向がある。一方、(B)成分の含有量が上記範囲を上回ると、流動性が高くなりすぎ、ヘラを使用して塗布することが困難となる。また、硬化速度が遅くなり、硬化するまでの時間がかかりすぎるため、作業性が低下する傾向がある。
【0092】
軽量充填補修材中の(C)成分の含有量としては、例えば、20.0〜50.0質量%程度、好ましくは25.0〜50.0質量%が好ましい。(C)成分の含有量が上記範囲を下回ると、流動性が低下して作業性が低下する傾向があり、硬化物の耐水性、耐温水性が低下する傾向がある。一方、(C)成分の含有量が上記範囲を上回ると、硬化に時間がかかりすぎ、作業性が低下する傾向があり、また、肉ヤセやひび割れの発生を防止することが困難となり、耐候性が低下する傾向がある。
【0093】
本発明に係る軽量充填補修材には、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分以外にも、必要に応じて他の添加剤を使用してもよい。他の添加剤としては、例えば、上記無機中空粉体以外の充填材、増粘剤、消泡剤、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤(顔料や染料など)、防かび剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料、各種タッキファイヤー(エマルジョンタッキファイヤーなど)、カップリング剤(チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤など)、光硬化触媒、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、架橋剤などの各種添加剤又は成分、有機溶剤などを挙げることができる。
【0094】
無機中空粉体以外の充填材としては、例えば、炭酸カルシウムや各種処理が施された炭酸カルシウム、フュームドシリカ、クレー、タルク、各種バルーン、ノイブルシリカ、カオリン、ケイ酸アルミニウムなど(特に、炭酸カルシウムが好ましい)を挙げられる。これらは、軽量充填補修材の比重が1未満となる範囲内において、使用することができ、例えば、軽量充填補修材中の20質量%以下、なかでも15質量%以下が好ましく、特に5〜15質量%が好ましい。前記範囲内において、無機中空粉体と共に炭酸カルシウム等を併用すると、軽量充填補修材の比重を1未満に維持することができるため、優れた作業性を維持しつつ、強靱性を増強することができ、硬度および耐温水性を向上することができる。
【0095】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。増粘剤を添加することにより、軽量充填補修材の濡れをよくし、被補修部へのしごき込みを容易にし、ヘラさばきを軽くすることができ、作業性を向上させることができる。
【0096】
また、可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル等を挙げることができる。
【0097】
タッキファイヤーとしては、例えば、安定化ロジンエステル、重合ロジンエステル、テルペンフェノール、石油系樹脂等のエマルジョンタッキファイヤーなどを挙げることができる。
【0098】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリエチレンイミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、コロイダルシリカなどを用いることができる。
【0099】
本発明に係る軽量充填補修材は、有機溶剤を全く含まない完全に水性であってもよいが、粘度調整等のために、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分などと相溶性がいい親水性の有機溶剤(水溶性有機溶剤)が含まれていてもよい。
【0100】
本発明に係る軽量充填補修材は、バインダーとしてのアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)、水(B)、及び充填剤としての無機中空粉体(C)を含有するため、被補修部に塗布するまでは、アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)中のシリル基が水と反応して反応性の高いシラノール基を形成するにもかかわらず、安定に存在している。その理由は定かではないが、シラノール基が、系中に多量に存在する水分子により保護されて、シラノール基間の縮合反応が抑制又は防止されているため、及び/又は、シラノール基が、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)としての第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン(A4-1)に由来する第1級アミノ基や第2級アミノ基の窒素原子に結合している置換基(例えば、不飽和カルボン酸エステル(A5)に由来する長鎖の置換基又はそのエステル部位など)により保護され、シラノール基間の縮合反応が抑制又は防止されているためであると思われる。
【0101】
そして、被補修部に塗布することにより水分が蒸発し、シラノール基同士が脱水縮合反応を行うと同時に、該シラノール基と無機中空粉体表面に存在するヒドロキシル基が強固に結合するため、強固な3次元網目状架橋構造を形成して硬化することができる。そのため、得られる硬化物は、水分が蒸発・乾燥しても肉ヤセやひび割れが発生することがなく、強靱性に優れる。また、優れた耐水性、耐温水性を発揮することができる。そのため、本発明に係る軽量充填補修材は、浴室などの水回りの補修材として好適に使用することができる。その上、充填剤として無機中空粉体を使用するため、比重を1未満とすることができる。そのため、ヘラ伸びが軽く、容易に塗布することができるため、作業性に優れる。さらにまた、水性タイプであるので(特に、有機溶剤を全く含まない完全な水性であってもよいので)、取り扱い性や作業性が優れており、人体や環境に対して安全性が高い。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0103】
製造例1(末端アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの調製)
攪拌装置、窒素導入管、温度計及びコンデンサーを付けた4つ口セパラブルフラスコに、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名「KBM602」、信越化学工業社製) 1モルに対して、アクリル酸2−エチルヘキシル 2モルの割合で混合し、50℃で7日間反応させてエステル変性アミノ基含有アルコキシシラン化合物を得た。
上記とは別の同様の4つ口セパラブルフラスコに、ポリオキシテトラメチレングリコール(商品名「PTMG2000」、三菱化学社製、数平均分子量:2000、水酸基価:56.1mg−KOH/g) 150質量部、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン(N−メチルジエタノールアミン)(商品名「アミノアルコールMDA」、日本乳化剤社製、分子量:119.16、水酸基価:941.6mg−KOH/g) 12質量部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:758.1mg−KOH/g) 25質量部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%] 91質量部、トリエチルアミン 17質量部、及びメチルエチルケトン 100質量部を配合し、80〜85℃の温度で窒素気流下5時間反応を行い、カルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(残存イソシアネート基含有量:2.0質量%)を含む反応混合物(1)を得た。
上記反応混合物(1)全量に、先に得られたエステル変性アミノ基含有アルコキシシラン化合物 15質量部を配合して混合した後、窒素気流下、75〜80℃の温度で1時間反応を行い、さらに、脱イオン水 540質量部を加えて分散させた。その後、分散液を減圧下、45〜50℃でメチルエチルケトンを留去させて、末端アルコキシシリル化カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを含むバインダー(カルボキシル基含有量:2.41質量%、ケイ素原子の含有量:0.27質量%、「SU」と称する場合がある)を得た。
【0104】
製造例2(アニオン性基含有アクリルエマルジョンの調製)
アクリル酸ブチル 31質量部、メタクリル酸メチル 26質量部、アクリル酸 1質量部、アニオン系乳化剤(商品名「ペレックスSSH」、花王(株)製)2質量部、ノニオン系乳化剤(商品名「エマルゲン930」、花王(株)製)2質量部、過硫酸アンモニウム 0.1質量部、及び水 38質量部を配合し、これを常法により乳化重合してアクリル系ポリマーエマルジョン(固形分:60%、pH:4、「アクリルEm」と称する場合がある)を得た。
【0105】
実施例及び比較例で使用した材料は下記の通りである。
[充填剤]
無機中空粉体
商品名「グラスバブルズ S22」(ガラスバルーン、平均粒径:30μm、真比重:0.22)、住友スリーエム(株)製
商品名「フジバルーン S35」(ガラスバルーン、平均粒径:40μm、真比重:0.35)、富士シリシア化学(株)製
炭酸カルシウム
商品名「白艶華CCR−B」、白石カルシウム(株)製
【0106】
[バインダー]
商品名「シーラスPC−751」(末端アルコキシシリル化アニオン性基含有アクリルエマルジョン)、東亞合成(株)製
【0107】
[比較例に使用した市販の充填補修材]
商品名「ONE TIME」(アクリルエマルジョン)、Red Devil社製
商品名「スーパーパテ」(アクリルエマルジョン)、(株)アサヒペン製
商品名「フラットワン」(アクリルエマルジョン)、関西パテ化工(株)製
商品名「シールパテ」(アクリルエマルジョン)、ヤヨイ化学工業(株)製
【0108】
実施例1〜3、比較例1〜6
下記表1に示す組成(質量%)で混合し、充填補修材を得た。得られた充填補修剤について、下記方法により評価した。
【0109】
評価方法
[製造直後の状態]
実施例及び比較例で得られた充填補修材について目視で観察し、下記基準に従って評価した。
評価基準
○:均一でなめらかな状態
×:ぱさついた状態、又は、水分が浮いた状態
【0110】
[充填作業性]
実施例及び比較例で得られた充填補修材を、石膏ボードに開けた穴(直径:1cm)に充填施工した際の作業性について、下記基準に従って評価した。
評価基準
○:容器から容易に取り出せ、穴にスムーズに塗れ、充填後崩れない
×:粘り、又はぱさつきによって、容器から取り出しにくい、穴に入りにくい、若しくは充填後に崩れが生じる
【0111】
[ヘラさばき]
実施例及び比較例で得られた充填補修材について、石膏ボードに開けた穴(直径:1cm)に充填施工した際のヘラさばきについて、下記基準に従って評価した。
評価基準
○:軽くてムラがない
×:重い、又はヘラでしごくとムラが出る
【0112】
[肉ヤセ]
実施例及び比較例で得られた充填補修材について、直径3cm、深さ6mmのポリエチレン製容器に充填し、23℃、50%RHで24時間放置した後、目視で観察し、下記基準に従って評価した。
評価基準
○:肉ヤセ、ひび割れが見られない
×:肉ヤセ又はひび割れが見られる
【0113】
[硬度]
実施例及び比較例で得られた充填補修材について、直径3cm、深さ6mmのポリエチレン製容器に充填し、23℃、50%RHで24時間放置した後、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータを使用して硬度を測定した。
【0114】
[耐水性、耐温水性]
実施例及び比較例で得られた充填補修材を、スレート板上に幅20mm×長さ30mm×厚さ3mm程度となるように塗布し、23℃、50%RHで24時間放置して硬化させた後、スレート板ごと23℃水中、又は50℃温水中に24時間浸漬し、水中から取り出した後の硬化物の状態を目視及び指蝕で観察し、下記基準により耐熱性、耐水性を評価した。
評価基準
◎:水を含んでおらず、全く変化がない
○:ほぼ変化がない
△:やや水を含んでいる、又は一部崩れている
×:かなり水を含んでいる、又は半分以上崩れている
【0115】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有し、比重が1未満であることを特徴とする軽量充填補修材。
(A)アニオン性基非含有、且つ、複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A2)、ポリイソシアネート化合物(A3)、及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A4)を反応して得られるアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー
(B)水
(C)無機中空粉体
【請求項2】
アニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマーがアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーである請求項1に記載の軽量充填補修材。
【請求項3】
アニオン性基がカルボキシル基である請求項1又は2に記載の軽量充填補修材。
【請求項4】
(C)無機中空粉体の真比重が0.10〜0.60である請求項1〜3の何れかの項に記載の軽量充填補修材。
【請求項5】
不揮発分が20〜60質量%である請求項1〜4の何れかの項に記載の軽量充填補修材。

【公開番号】特開2011−173978(P2011−173978A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38236(P2010−38236)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】