説明

軽量壁修理用混合物

本明細書では、少なくとも1以上のポリマー結合剤ラテックスエマルション、1以上の無機充填剤を含み、更に、その全重量に対して約0.1重量%未満の所定量の有機ポリマー増粘剤を含む壁修理用混合物を開示する。特定の実施形態では、壁修理用混合物は、使用される無機充填剤のほぼ100%が合成無機充填剤によって構成されるように選択された無機充填剤系を含む。特定の実施形態では、壁修理用混合物は1以上の有機エーテル平滑剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
建物の内壁は、しばしば石膏製のウォールボードパネル(ドライウォールと呼ばれる場合もある)を使用して構成されている。空洞、窪み、穴などが存在しうる場所(欠陥又は破損により)には、壁修理用混合物(しばしば「スパックリング」と呼ばれる)を用いてこうした空洞を充填することが一般的に行われている。従来の壁修理用混合物はしばしば、1以上の無機充填剤、1以上のポリマー樹脂結合剤、並びに各種の増粘剤及び他の添加剤を含んでいる。詳細には、他の無機充填剤の中でも、ガラス気泡、中空のシリカ、又は膨張させたパーライトなどの比較的低密度の充填剤をしばしば含有する軽量の壁修理用混合物が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
壁修理用混合物はしばしば多量の水分を含んでいるため(例えば、約20重量%よりも多い)、壁修理用混合物が壁に塗布された後、一定の期間にわたって水分が蒸発して乾燥、固化した材料が形成され、これをサンドペーパーで磨いたり塗料を塗ったりする場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、少なくとも1以上のポリマー結合剤ラテックスエマルション及び無機充填剤とを含み、更に、調合された壁修復用混合物の約0.1重量%未満の所定量の有機ポリマー増粘剤を含む、軽量の壁修理用混合物を開示する。
【0004】
異なる実施形態において、本明細書で開示する軽量の壁修理用混合物は、壁修理用混合物中の無機充填剤の少なくとも95、99又はほぼ100重量%が合成無機充填剤(本明細書中で定義する)によって構成されるように選択された無機充填剤系を含む。これらの実施形態の少なくとも一部のものの1つの利点として、合成無機充填剤が、天然の無機鉱物充填剤よりも(例えば、エンドユーザーにとって)好ましい外観を有しうる点がある。
【0005】
特定の実施形態では、本明細書で開示する軽量の壁修理用混合物は、混合物が容易に塗布できる(例えば、垂直な壁に塗布された際に、流れたり、垂れさがったり、落ち込んだりはしないが、容易に塗り広げることができる)ように、混合物の粘稠度に有利な影響を及ぼすことが示されている1以上の有機エーテル平滑剤を含む。本発明者らは、こうした有機エーテル平滑剤を少量(例えば、約0.025〜約2.5重量%)添加することで、有利かつ予想外の技術的効果が得られることを見出した。
【0006】
本発明者らは、本明細書で開示する組成物の少なくとも特定のものは、その有利な点として、塗布された混合物の乾燥時の収縮率が極めて低くなっており、そのためひび割れ、変形などを生じさせることなく混合物を乾燥させることができる。本明細書で開示する少なくとも特定の実施形態の更なる利点の1つとして、壁修理用混合物が、凍結防止混合物などの成分を添加する必要なく使用可能な形態で凍結/融解サイクルを通じて維持される点がある。本明細書で開示する少なくとも特定の実施形態の更なる利点の1つとして、壁修理用混合物が、誤って少量の水分を蒸発により失ってしまった場合(例えば、保存容器の蓋がしっかりと密封されていなかったことにより)、混合物に少量の水を混合することによって混合物をほぼ最初の形態に戻すことができる点がある。
【0007】
したがって、本明細書の一態様では、約20重量%〜約80重量%の水性ラテックス結合剤エマルションと、そのほぼ100重量%が合成無機充填剤によって構成される約20重量%〜約70重量%の無機充填剤系と、少なくとも1個のエーテル結合を有し、かつ1個以下の水酸基を有する約0.025重量%〜約2.5重量%の少なくとも1種類の有機エーテル平滑剤と、約0.1重量%未満の有機ポリマー増粘剤とを含む壁修理用混合物を開示する。
【0008】
本明細書の別の態様では、約20重量%〜約70重量%の無機充填剤系を含み、合成無機充填剤がほぼ球形の合成粒子を含み、粒子が比較的大径のガラス気泡と比較的小径のセラミックマイクロスフェアとを含み、セラミックマイクロスフェアの中央粒径に対するガラス気泡の中央粒径の比が、約5:1〜約40:1の範囲内であるような壁修理用混合物を開示する。
【0009】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」から明らかになるであろう。しかし、上記の要約は、請求される発明の主題に対する限定として決して解釈されるべきではなく、本発明の主題は、手続の際に補正される場合もある特許請求の範囲によってのみ定義されるものである。
【0010】
「第1」及び「第2」、並びに「大きい」及び「小さい」といった用語を本開示で使用する場合があるが、これらの用語はあくまでその相対的な意味において使用される点は理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、壁面(石膏ウォールボード面など)の空洞、ひび割れ、穴、又は他の欠陥を充填及び修理するのに適した混合物を開示する。こうした混合物は、少なくとも1以上のポリマー結合剤ラテックスエマルション及び1以上の無機充填剤を含み、更に、調合された壁修理用混合物の全重量に対して約0.1重量%未満の量の有機ポリマー増粘剤を含んだものである。
【0012】
本明細書で開示する壁修理用混合物は、1種類以上の無機充填剤からなる無機充填剤系を含む。異なる実施形態において、この無機充填剤系は、壁修理用混合物の少なくとも20、30、又は40重量%を構成する(これらの重量比率及び本明細書で開示する他のすべての重量比率は、特に断らないかぎり壁修理用混合物の全調合重量(水を含む)に対するものである)。更なる実施形態では、無機充填剤系は、調合された壁修理用混合物の最大で約70、60又は50重量%を構成する。
【0013】
無機充填剤は、しばしば、土中から採掘される天然に存在する鉱物である。この意味において、天然無機充填剤とは、土中からその天然に存在する態で抽出された鉱物として定義され、場合に応じて濾過、スクリーニング、砂塵除去(degretting)、ブリーチ、選鉱、遠心分離などの精製及び/又は改変プロセスを行うことが可能であるが、それでもなおほぼ天然に存在する形態で使用される(場合により、より精製又は濃縮された形態であってもよい)。こうした天然無機充填剤はしばしば実質的に結晶構造を有し、実質的に非球形で、かつ/又は、ある程度不規則若しくは不均一、又は極めて不規則若しくは不均一な形状の粒子からしばしば実質的に構成される。この意味において、水和した水分をとばすだけの充分な(ただし、材料を溶融させ、材料の構造を結晶質から非晶質に変化させるには不充分な)温度に曝露することによって、か焼した鉱物もやはり天然無機充填剤であると考えられる。この意味において、無機充填剤という用語には、有機表面基、コーティングなどを有するように改質された充填剤が含まれる。
【0014】
天然無機充填剤としては、例えば、方解石、毒重石、ルチル、アナターゼ、イルメナイト、雲母、セリサイト、パーライト、タルク、石灰岩、シリカ、バライト、石膏、焼き石膏、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、イライト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スチーブンサイト、海泡石、ベントナイト、葉蝋石、珪藻土などが挙げられる。
【0015】
特定の実施形態では、本発明で使用する無機充填剤系は、その少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、又はほぼ100重量%が合成無機充填剤で構成される。この意味において、ほぼ100重量%の合成無機充填剤とは、壁修理用混合物の調合物中に用いるために選択された無機充填剤のすべてが合成物であり、当業者にはこうした合成無機充填剤の標準的な製造プロセスにおいて内在する、又は不可避であることが知られているように、ごく微量(場合により検出不能な量)の天然に存在する採掘された鉱物充填剤が含まれることを意味する。
【0016】
合成無機充填剤という用語には、最初の状態(天然に存在する採掘された状態でありうる)から現在の状態に、化学合成プロセス(例えば、溶液からの沈殿、火炎加水分解による生成など)によって、又は物理的合成プロセス(例えば、気相からの析出、ゾルゲル法による固化など)によって変化、再生、再結晶、再構成などの処理がなされたあらゆる充填剤が含まれる。合成無機充填剤という呼称には、更に、最初の状態(天然に存在する採掘された状態でありうる)から現在の状態に、少なくとも部分的に軟化又は溶融した状態とした後、冷却によって固化させるという物理的合成プロセスによって実質的に変化させられることにより、天然状態で存在しえたすべての実質的な結晶構造が実質的に消失することにより、材料が現状では実質的に非晶質の形態となっている(例えば、結晶質が約0.5%重量未満である)ようなあらゆる充填剤も含まれる。このようなプロセスとしては、例えば、溶融加圧成形、火炎融合などが挙げられる。
【0017】
この意味において、合成無機充填剤には例えば、いわゆるガラス気泡(ミネソタ州セントポール所在のスリー・エム社(3M Company)より3M Glass Bubblesの商品名で販売されるものなど)、セラミックマイクロスフェア(スリー・エム社より3M Ceramic Microspheresの商品名で販売されるものなど)、合成粘土(例えば、テキサス州ゴンザレス所在のサザン・クレイ・プロダクツ社(Southern Clay Products)よりLaponiteの商品名で販売されるものなどの合成ケイ酸塩粘土、沈殿シリカ、フュームドシリカ、ガラス状シリカ、合成二酸化チタン(例えば、硫酸塩プロセス又は塩素プロセスによって製造される)、合成(沈殿)炭酸カルシウム(例えば、二酸化炭素を水酸化カルシウムの溶液に通過させることによって製造される)などが挙げられる。
【0018】
この意味において、合成無機充填剤という用語には、有機表面基、コーティングなどを有するように改質された合成無機充填剤が含まれる。
【0019】
異なる実施形態において、合成無機充填剤は、充填剤のバルク試料をX線回折法によって試験した場合に、0.5、0.1、又は0.05重量%未満の結晶性材料を含む。
【0020】
特定の実施形態では、本発明で使用する合成無機充填剤は、より大径の合成無機充填剤粒子と、より小径の合成無機充填剤粒子との二峰性の粒径混合物からなる。異なる特定の実施形態では、本発明で使用する合成無機充填剤は、より小径の充填剤に対するより大径の充填剤の粒径比(2つの充填剤集団の中央粒径の比をとることによって得られる)が、少なくとも約5:1、10:1又は15:1であるような合成無機充填剤粒子の二峰性の粒径混合物からなる。異なる特定の実施形態では、粒径比は最大で約40:1、30:1又は20:1である。
【0021】
異なる実施形態では、より大きな粒径の合成無機充填剤粒子は、中央粒径が少なくとも約15、30、又は40ミクロンであり、かつ最大で約80、65、又は55ミクロンである。異なる実施形態では、より小さな粒径の合成無機充填剤粒子は、中央粒径が少なくとも約1、2、又は3ミクロンであり、かつ最大で約15、10、又は5ミクロンである。
【0022】
特定の一実施形態では、こうした合成無機充填剤はほぼ球形の粒子からなる。この意味において、ほぼ球形とは、粒子のほぼ大半が、粒子の製造に用いられる製造プロセスで時折見られるものとして当業者に認知されているような偶発的な偏差、形成異常といった場合(例えば、幾分歪んだ粒子が時折生成されたり、2個以上の粒子が互いに凝集又は接着したりする)を除けば球形であることを意味する。
【0023】
本明細書で定義するような好適なほぼ球形の合成無機充填剤としては、いわゆるガラス気泡(ミネソタ州セントポール所在のスリー・エム社(3M Company)より3M Glass Bubblesの商品名で販売されるものなど)、及びセラミックマイクロスフェア(スリー・エム社より3M Ceramic Microspheresの商品名で販売されるものなど)が挙げられる。このようなガラス気泡は、例えば米国特許第3,365,315号及び同第4,391,646号に述べられるようなプロセスによって合成することができる。このようなセラミックマイクロスフェアは、例えば米国特許第3,709,706号及び同第4,166,147号に述べられるようなゾルゲルプロセスによって例えば合成することができる。セラミック粒子及び/又はマイクロスフェアを製造するうえで潜在的に有用な他の方法について、例えば米国特許第6,027,799号に述べられている。
【0024】
特定の実施形態では、本発明で使用する合成無機充填剤は、より大径のほぼ球形の合成無機充填剤粒子と、より小径のほぼ球形の合成無機充填剤粒子との二峰性の粒径混合物からなる。異なる特定の実施形態では、本発明で使用する合成無機充填剤は、ほぼ球形のより小径の充填剤に対するほぼ球形のより大径の充填剤の粒径比(2つの充填剤集団の中央粒径の比をとることによって得られる)が、少なくとも約5:1、10:1又は15:1であるようなほぼ球形の合成無機充填剤粒子の二峰性の粒径混合物からなる。異なる特定の実施形態では、粒径比は最大で約40:1、30:1又は20:1である。
【0025】
特定の実施形態では、より大きな粒径の合成無機充填剤はガラス気泡からなり、より小さな粒径の合成無機充填剤はセラミックマイクロスフェアからなる。異なる実施形態では、ガラス気泡は、中央粒径が少なくとも約15、30、又は40ミクロンであり、かつ最大で約80、65、又は55ミクロンである。異なる実施形態では、セラミックマイクロスフェアは、中央粒径が少なくとも約1、2、又は3ミクロンであり、かつ最大で約15、10、又は5ミクロンである。
【0026】
このような混合物では、ガラス気泡の真密度はセラミックマイクロスフェアの真密度よりも一般に小さい。すなわち、異なる実施形態において、セラミックマイクロスフェアの真密度は少なくとも約2.0又は2.2g/ccであり、かつ最大で約2.6又は2.4g/ccである。異なる実施形態において、ガラス気泡の真密度は少なくとも約0.1、0.15、又は0.2g/ccであり、かつ最大で約0.6、0.4、又は0.3g/ccである。
【0027】
こうした混合物では、ガラス気泡は一般に、セラミックマイクロスフェアの量に等しいか又はそれよりも多い量で存在する。すなわち、異なる実施形態において、ガラス気泡及びセラミックマイクロスフェアは、少なくとも約1:1(ガラス気泡/セラミックマイクロスフェア)、又は少なくとも約1.5:1(ガラス気泡/セラミックマイクロスフェア)の重量比で存在する。異なる実施形態において、ガラス気泡及びセラミックマイクロスフェアは、最大で約3:1(ガラス気泡/セラミックマイクロスフェア)、又は最大で約2:1(ガラス気泡/セラミックマイクロスフェア)の重量比で存在する。
【0028】
本発明者は、上記に述べたようなほぼ球形の充填剤の使用、特にこうした充填剤の二峰性混合物の使用により、極めて容易に塗り広げることができる一方で、垂直な壁に塗布された際に過度に垂れさがったり、流れたり、落ち込んだりすることのない壁修理用混合物を与えることができることを確認した。
【0029】
本明細書で開示する壁修理用混合物は、少なくとも1種類のポリマー樹脂結合剤を含む。こうした結合剤は、しばしば水性ラテックスエマルション(例えば、水中、40〜60%のポリマー樹脂結合剤の固形分)として供給される。本願における結合剤として潜在的に適当なポリマー樹脂としては、例えば、よく知られたアクリルポリマー及びコポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー及びコポリマー、エチレン酢酸ビニルポリマー及びコポリマー、スチレン−ブタジエンポリマー及びコポリマー、ポリアクリルアミドポリマー及びコポリマー、天然ゴムラテックス、天然及び合成デンプン、カゼインなどが挙げられる。こうした結合剤は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができる。
【0030】
異なる実施形態において、結合剤ラテックスエマルションは、壁修理用混合物の少なくとも約20、30、又は40重量%を構成しうる。更なる実施形態では、結合剤ラテックスエマルションは、壁修理用混合物の最大で約80、70、又は60重量%を構成しうる。
【0031】
特定の実施形態では、ポリマー樹脂結合剤は、ビニルアクリルポリマー、コポリマー、又は配合物からなる。こうした材料は、例えば、アクリレート及び/又はメタクリレート基を有するエチレン性不飽和モノマーの重合によって製造される各種のポリマー及び/又はコポリマーのいずれをも含みうる。こうしたビニルアクリルポリマー結合剤樹脂は、例えば塗料業界において広く知られている。他のモノマー、ポリマー、添加剤などを様々な目的で加えてもよい。こうしたビニルアクリル結合剤は、多くの一般的な塗料が同様の結合剤を含んでいることから、乾燥した壁修理用混合物を含む壁を塗装する際にバリや逆バリ(reverse-flashing)などの一般的な問題を回避するために乾燥した壁修理用混合物をプライミングする必要がないという特定の利点を有する。
【0032】
異なる実施形態において、ポリマー樹脂結合剤は、室温の周囲(例えば約15℃〜約35℃、又は約20℃〜約30℃)のガラス転移温度(T)を有する。「ガラス転移温度」という用語は、無論、当該技術分野では周知の用語であり、一般にポリマー分子の長範囲の転移挙動の開始を示す軟化温度に関する。上記の温度範囲にTがある場合、結合剤は、壁修理用混合物が塗布され、乾燥させられた後に、周囲条件下で融合及び結着させるのによく適合したものとなる。更に、室温よりもTが過度に高い場合、乾燥した混合物中で結合剤がそのTを下回って比較的脆い状態となる場合があり、そのため乾燥した混合物が過度にひび割れしやすくなるという点で不利になる場合がある。逆に、室温よりもTが過度に低い場合には、乾燥した壁修理用混合物が極めて軟らかくなったりゴム状となってサンディングなどの処理を行いにくくなるために不利となる場合がある。結合剤は、周囲温度が変化する際に物性が比較的急激な変化を示さないように広いT(例えば、少なくとも約5〜10℃の範囲のやや広いTピーク)を有することが有利となる場合もある。
【0033】
特定の実施形態では、ラテックス結合剤エマルションは、ミシガン州ミッドランド所在のダウ・ケミカル社(Dow Chemical)よりUCAR 626の商品名で(固形分50%のラテックスエマルションとして)販売されるアクリル結合剤ラテックスエマルションからなる。
【0034】
従来の壁修理用混合物は、しばしば有機ポリマー増粘剤を含んでいる。こうした有機ポリマー増粘剤は、混合物が(例えば、垂直な壁に塗布された場合に)過度に垂れさがったり、落ち込んだり、流れたりすることがないように、例えば壁修理用混合物の高い粘度を与えるためにしばしば用いられる。このような有機ポリマー増粘剤は、壁修理用混合物中に存在する水分と相互作用することによって増粘効果を示すようにしばしば設計されている。したがって、一般的に使用されている有機ポリマー増粘剤は、しばしば水溶性又は水膨潤性(例えば22℃周辺で)である。(こうした物質は当該技術分野では、ゲル化剤、増粘剤(bodying agents)、水分保持剤などと呼ばれることもしばしばある)。しばしば、このような物質は、少なくとも2個、しばしば10個、20個、又はそれよりも多い水酸基を有するポリヒドロキシ混合物である。
【0035】
こうした有機ポリマー増粘剤は、天然の生成物でもよく、かつ/又は天然の生成物から得られるか又は誘導されるものでもよい。このような増粘剤としては、例えば多糖類又はその誘導体、例えばよく知られたセルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム)が挙げられる。このような増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド(及び/又はポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー)、ポリビニルアルコール、アクリル酸及びアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸及びその誘導体のポリマー又はコポリマー、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸塩、トラガカントガム、ペクチン、アミロペクチン、デキストラン、ポリデキストロースなども挙げられる。
【0036】
このような有機ポリマー増粘剤は、例えば500g/モルよりも大きい、又は5000g/モルよりも大きい比較的高い分子量をしばしば有している。
【0037】
このような有機ポリマー増粘剤は、例えば、水に加えた際に水の粘度を高める、しばしば大幅に高めるその性質によって当業者にも認識されうるものである。
【0038】
本発明者らは、特定の実施形態において、こうした有機ポリマー増粘剤の濃度を(調合された壁修理用混合物の)所定量以下に維持することが有利であることを見出した。このことは、乾燥時の混合物の所望の低い収縮率を実現するうえで効果的であることが本発明者らによって観察された。すなわち、本明細書で開示する発見は、このように低濃度の増粘剤の存在下(又は非存在下)であっても垂れさがり、流れ、又は落ち込みに対して予想外に有利な耐性を更に有する低収縮率の壁修理用混合物の調合を可能にするものである。すなわち、異なる実施形態において、本明細書で開示する壁修理用混合物は、0.1、0.05、又は0.02重量%未満の有機ポリマー増粘剤を含む。このような少量では、こうした有機ポリマー増粘剤は、当該技術分野におけるその従来の目的(すなわち、垂直な壁に塗布される際に流れたり、垂れさがったり、落ち込んだりすることがないように混合物の粘度を高める)を果たすのではなく、処理助剤(例えば、水性混合物中への有機充填剤の分散を助ける)としてのみ主に機能しうる。
【0039】
特定の実施形態において、本発明者らは、このように有機ポリマー増粘剤の濃度を0.1、0.05、又は0.02重量%よりも低い濃度に維持するという手法を、上記に述べたようなほぼ球形の合成無機充填剤の二峰性混合物を含む壁修理用混合物で行うことによって、平滑性、塗り広げやすさ、及び乾燥時の耐収縮性の特定の有利な組み合わせを有する混合物が得られることを見出した。
【0040】
本発明者らは、特定の天然又は合成無機充填剤(例えば、アタパルジャイト、ベントナイト、モンモリロナイト、イライト、カオリナイト、海泡石、サザン・クレイ・プロダクツ社(Southern Clay Products)よりLaponiteの商品名で販売される合成粘度などの粘土)は、必ずしも水溶性ではないものの、水に分散されると増粘効果(例えば、粘度の増大)を示すことが知られている。このような材料(特に水分を吸収し、かつ/又は水分と接触すると膨潤するもの)は、壁修理用混合物において増粘剤として一般的に使用されており(これらは当該技術分野では、レオロジー改質剤、非レベリング剤などともしばしば呼ばれる)、当該技術分野においては、乾燥時の収縮に寄与することが知られている(例えば、米国特許第4,824,879号に述べられている)。したがって、特定の実施形態では、本明細書で開示する壁修理用混合物は、0.1、0.05、又は0.02重量%未満の(天然又は合成の)無機増粘充填剤粘土を含む。特定の実施形態では、本明細書で開示する壁修理用混合物は、約0.1重量%未満の無機増粘充填剤粘土を含み、更に約0.1重量%未満の有機ポリマー増粘剤を含む。
【0041】
特定の実施形態では、本明細書で開示する軽量の壁修理用混合物は、混合物の粘稠度に有利な影響を与えることが分かっている1以上の有機エーテル平滑剤を含む。詳細には、本発明者らはこうした有機エーテル平滑剤を本明細書で開示する濃度で使用することにより、混合物に滑らかな粘稠度が与えられ(平滑剤がない場合、混合物はより脆い外観を呈しうる)、例えば、垂直な壁に塗布された場合に混合物をより容易に塗り広げることができるが、混合物が流れたり、垂れさがったり、落ち込んだり、細かく砕けたりすることはない。上記に述べた増粘剤と異なり、こうした平滑剤は、壁修理用混合物の見かけ粘度を増大させるのではなく(ただし、やはり許容できない垂れさがり又は落ち込みは生じずに)、低下させるように機能するようである。
【0042】
本発明者らは、こうした有機エーテル平滑剤の存在により、誤って混合物が水分を失ってしまった場合に(例えば、容器が長時間開いたままであったような場合)、少量の水を加えることによって上記に述べたような滑らかな粘稠度に戻る性質が高められることも見出した。本発明者らは、こうした平滑剤の非存在下で水を加えると混合物の粘度を低下させるだけであり、許容できない垂れさがり又は落ち込みが生ずることを見出した。
【0043】
特定の実施形態において、本発明者らはこのような有機エーテル平滑剤を、上記に述べたようなほぼ球形の合成無機充填剤の二峰性混合物を含む壁修理用混合物に用いることによって、平滑性、塗り広げやすさ、及び流れたり、落ち込んだり、垂れさがったりすることに対する耐性の特定の有利な組み合わせを有する混合物が得られることを見出した。
【0044】
更なる特定の実施形態では、本発明者らはこのような平滑剤を、上記に述べたようなほぼ球形の合成無機充填剤の二峰性混合物を含み、かつ有機ポリマー増粘剤の濃度が0.1、0.05、又は0.02重量%未満であるような壁修理用混合物に用いることによって、平滑性、塗り広げやすさ、乾燥時の耐収縮性、及び流れたり、落ち込んだり、垂れさがったりすることに対する耐性の特定の有利な組み合わせを有する混合物が得られることを見出した。
【0045】
本明細書で定義するような有機エーテル平滑剤は、1個以下の水酸基(−OH)を有し、更に少なくとも1個のエーテル結合(C−O−C)を有し、分子量が約250g/モルであるような炭化水素分子を含む。いくつかの実施形態では、有機エーテル平滑剤は、当該技術分野において一般にグリコールエーテルとして知られる混合物であって、主鎖に1以上のエーテル結合を含む炭化水素鎖を有し、1個の水酸基を有するような混合物を1以上含む。水酸基は、例えば、主鎖の末端の炭素に結合していてもよく、主鎖の末端の炭素の隣の炭素に結合していてもよく、あるいは分子の他の特定の炭素に結合していてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、有機エーテル平滑剤は、炭化水素鎖中に1個以上のエーテル結合を含みかつ水酸基を有さない1以上の炭化水素分子を含む。特定の実施形態では、有機エーテル平滑剤は、主鎖中に1個以上のエーテル結合を含みかつアセテート基を有する1以上の混合物を含む。
【0047】
上記の場合のいずれにおいても、直鎖は、その鎖の炭素の少なくとも一部に1個以上のメチル基又は他のアルキル基が結合していてよく、例えばフェニル基などの他の基を有してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、こうした有機エーテル平滑剤は、約90g/モル〜約250g/モルの分子量を有する。いくつかの実施形態では、こうした有機エーテル平滑剤は、室温(例えば22℃)で液体である。いくつかの実施形態では、こうした有機エーテル平滑剤は、水との部分的又は完全な混和性を有する一方で、水に加えた際に水の粘度を実質的に増大させない。
【0049】
この点で、これらの有機エーテル平滑剤は、上記に述べたような多数の(少なくとも2個の)水酸基を有する比較的高分子量のポリヒドロキシ物質などの有機ポリマー増粘剤とは区別される。この点で、これらの有機エーテル平滑剤は、多数の水酸基を持たない場合もあるが、分子を比較的親水性とする多数の(例えば4個よりも多い)エーテル結合を有する(これらの一方又は両方により、有機エーテル平滑剤は周知の性能で水性増粘剤として機能しうる)ようなポリ(エチレンオキシド)及び/又はポリエチレングリコール並びにそれらの誘導体などの有機ポリマー増粘剤とも区別される。
【0050】
したがって以上をまとめると、本明細書で開示する有機エーテル平滑剤は、その化学式及び/又は化学構造に基づき、かつ/又は、壁修理用混合物に使用される場合に平滑剤の見かけ粘度の低下効果によって、かつ/又は、従来の増粘剤でしばしばみられるような乾燥時の比較的高い収縮率が見られないことによって、従来の増粘剤とは区別することができる。
【0051】
本明細書で開示する有機エーテル平滑剤は、多数の水酸基を有する比較的小さな低分子量(例えば、約250g/モル未満)の分子とも区別することができる。本発明者らによって、こうした低分子量のポリヒドロキシ分子は、本明細書で開示する平滑剤の有利な効果を有さないことが示された。本発明者らは、例えば、グリセリン(分子量=92g/モル、3個の水酸基を有する)を含む壁修理用調合物を調合したところ、上記に述べた組成物の特定の有利な性質を欠く、より粘り気のある粘稠度を示すことが分かった。こうした低分子量のポリヒドロキシ分子は、壁修理用混合物中にしばしば見られる(例えば、米国特許第4,629,751号に特定の壁修理用混合物のゲル化を阻害する目的で使用することができるものとして述べられている)。したがって、特定の実施形態では、本明細書で開示する壁修理用混合物は、0.1、0.05、又は0.02重量%未満の低分子量のポリヒドロキシ分子を含む。
【0052】
したがって以上をまとめると、本発明者らは、理論又は機構によって限定されることを望まずに言えば、ポリヒドロキシ増粘剤、ポリエーテル増粘剤(ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキシドなど)、及び更にはポリヒドロキシ小分子(グリセリンなど)といった物質は、水酸基及び/又はエーテル基などの親水基を充分な数で有することにより、壁修理用混合物中の水分、及び/又は、混合物中の無機充填剤の表面と相互作用することによって、少なくともシステムの粘度を増大させ、場合によりネットワーク状の構造を形成するものと考える。これに対して、本明細書で述べる有機エーテル平滑剤は、こうしたネットワーク構造を形成する性質はそれほど高くないことが考えられ(このことは、有機エーテル平滑剤が大幅に粘度を高めないことを説明しうる)、更に本発明者らが本明細書で述べたような有利な効果(例えば、過度の垂れさがり又は落ち込みなどを生ずることなく粘度を見かけ上低下させ、塗り広げやすさを高める)を与える他の何らかの相互作用を行いうるものと考えられる。
【0053】
本発明者らが認識するところによると、特定のグリコールエーテル及びこれに類する混合物がラテックス塗料及びコーティング産業において使用されており、当業者によれば、しばしばその用途は、ラテックスの乾燥時にポリマー樹脂結合剤の結着を促進することであるとされている。これに対して、本発明における使用では、こうした平滑剤の最も明らかな有利な効果は、混合物の乾燥時に生ずるいずれの明らかな効果でもなく、調合された混合物に滑らかな粘稠度を与えることであると考えられる。このことと関連が考えられることとして、こうした平滑剤の有益な効果は、例えば塗料業界においてグリコールエーテルが一般的に使用されているよりも(これに関しては、例えば米国特許第4,283,320号を参照)はるかに低い濃度で生ずることが本発明者らによって見出されている。
【0054】
したがって、異なる実施形態において、本明細書で開示する壁修理用混合物は、全体で(調合された全壁修理用混合物の)最大約2.5重量%、最大約1.5重量%、又は最大約0.5重量%の量で存在する1以上の有機エーテル平滑剤を含む。異なる更なる実施形態において、1以上の有機エーテル平滑剤は、全体で少なくとも約0.025重量%、少なくとも約0.05重量%、又は少なくとも約0.15重量%の量で存在する。
【0055】
好適な有機エーテル平滑剤は、例えば、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)(ミシガン州ミッドランド)よりDOW P−シリーズグリコールエーテル及びDOW E−シリーズグリコールエーテル(例えば、DOWANOL、CARBITOL及びCELLOSOLVEの商品名で販売される各種製品を含む)の商品名で販売される製品、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、有機エーテル平滑剤は、ちょうど1個の水酸基とちょうど1個のエーテル基を有する有機エーテルから選択される。このグループには、例えば、プロピレングリコールブチルエーテル(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)よりDOWANOL PnBの商品名で販売される)、プロピレングリコールメチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL PMの商品名で販売される)、プロピレングリコールプロピルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL PnPの商品名で販売される)、プロピレングリコールフェニルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL PPhの商品名で販売される)、エチレングリコールブチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりButyl CELLOSOLVEの商品名で販売される)、エチレングリコールプロピルエーテル(ダウ・ケミカル社よりPropyl CELLOSOLVEの商品名で販売される)、エチレングリコールヘキシルエーテル(ダウ・ケミカル社よりHexyl CELLOSOLVEの商品名で販売される)、エチレングリコールフェニルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL Ephの商品名で販売される)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0057】
いくつかの実施形態では、平滑剤は、ちょうど1個の水酸基とちょうど2個のエーテル基を有する有機エーテルから選択される。このグループには、例えば、ジプロピレングリコールブチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL DPnBの商品名で販売される)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL DPMの商品名で販売される)、ジプロピレングリコールプロピルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL DPnPの商品名で販売される)、ジエチレングリコールブチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりButyl CARBITOLの商品名で販売される)、ジエチレングリコールメチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりMethyl CARBITOLの商品名で販売される)、ジエチレングリコールヘキシルエーテル(ダウ・ケミカル社よりHexyl CARBITOLの商品名で販売される)、ジエチレングリコールエチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりCARBITOLの商品名で販売される)、これらの混合物、及び/又は、ちょうど1個のエーテル基を有する上記に列記した有機エーテルとの混合物が含まれる。
【0058】
いくつかの実施形態では、平滑剤は、ちょうど1個の水酸基とちょうど3個のエーテル基を有する有機エーテルから選択される。このグループには、例えば、トリプロピレングリコールメチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL TPMの商品名で販売される)、トリエチレングリコールブチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりButoxytriglycolの商品名で販売される)、トリエチレングリコールエチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりEthoxytriglycolの商品名で販売される)、及びトリエチレングリコールメチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりMethoxytriglycolの商品名で販売される)、これらの混合物、及び/又は、ちょうど1個又はちょうど2個のエーテル基を有する上記に列記した有機エーテルとの混合物が含まれる。
【0059】
いくつかの実施形態では、平滑剤は、少なくとも1個のエーテル基を有するが水酸基は有さない有機エーテルから選択される。こうした分子は例えば、1個、2個、又は3個のエーテル基を有し、その例としては例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(ダウ・ケミカル社よりPROGLYDE DMMの商品名で販売される)が含まれる。特定の実施形態では、こうした円滑剤は、少なくとも1個のエーテル基とアセテート基を有してよく、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL PMAの商品名で販売される)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(ダウ・ケミカル社よりDOWANOL DPMAの商品名で販売される)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(ダウ・ケミカル社よりButyl CELLOSOLVE Acetateの商品名で販売される)、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(ダウ・ケミカル社よりButyl CARBITOL Acetateの商品名で販売される)、これらの混合物、及び/又は1個の水酸基を有する上記に列記した有機エーテルとの混合物が含まれる。
【0060】
上記に述べた成分以外に、他の成分を壁修理用混合物に加えることもできる。これらの他の成分としては、例えば水があり、例えば粘度の最終的な調整のために製造プロセスの最後に加えることができる。したがって、特定の実施形態では、水(水性ラテックス結合剤エマルション中に存在する水以外に)を調合物に加えることができる。添加することができる他の添加剤としては、保存時に壁修理用混合物に有益な効果をもたらしうるばかりでなく、乾燥した壁修理用混合物上にカビや真菌類が増殖する可能性を最小に抑える働きをする防腐剤がある。すなわち、特定の実施形態では、本明細書で開示する壁修理用混合物は、少なくとも約0.1、0.2又は0.3重量%の防腐剤を含んでよい。更なる実施形態では、本明細書で開示する壁修理用混合物は、最大で約0.8重量%、0.6又は0.4重量%の防腐剤を含んでよい。好適な防腐剤としては、例えば、ニュージャージー州フローハムパーク所在のトロイ社(Troy Corporation)よりMergal 192及びPolyphase P20Tの商品名で販売されるものが挙げられる。
【0061】
本明細書で開示する壁修理用混合物は、特定の場合に乾燥、硬化した壁修理用混合物をサンディングする際に発生する空気中の塵芥粒子の量を更に低減する働きをする塵芥低減剤を更に含んでもよい。例示的な添加剤としては、オイル(鉱物油、植物油、及び動物油)、ワックス(天然及び合成ワックスなど)などが挙げられる。
【0062】
凍結防止剤、界面活性剤、消泡剤、可塑剤(例えば、使用されるポリマー結合剤に対する)、強化繊維など(ただしこれらに限定されない)の他の成分を様々な目的で添加することもできる。こうした添加剤は、壁修理用混合物の上記に述べた壁修理用混合物の性質を損なわないかぎりにおいて添加することができる。
【0063】
以下の実施例は、あくまで説明を目的としたものであって、いかなる意味においても発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない点は理解されるべきである。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわちCowlesブレードを備えた高剪断ミキサー及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。UCAR Latex 626(結合剤エマルション)は、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)より入手した。K−20ガラス気泡は、スリー・エム社(3M Company)より入手した。W210セラミックマイクロスフェアは、スリー・エム社より入手した。Polyphase P20T及びMergal 192殺菌剤は、トロイ社(Troy Corporation)より入手した。プロピレングリコールブチルエーテル(CAS番号5131−66−8)は、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号484415のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりDowanol PnBの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びプロピレングリコールブチルエーテルを順次加えた。この後、ミキサーを最初に低速に設定してW210セラミックマイクロスフェアをゆっくりと加えた。セラミックマイクロスフェアの添加により混合物の粘度が増すに従って、ミキサーの速度を増大させた。添加の終了後、このプレミックスの混合を約5分継続した。次いで、直ちにプレミックスを以下の工程に用いた。すなわち、ガラス気泡充填剤の最終的な全体量の約30%を低剪断ミキサーの混合用ボールに加えた。次に、プレミックスをゴムベラを使ってミキサーに加え、ミキサーを低速で始動させた。ガラス気泡の残部を低剪断混合用ボールにゆっくりと加えた。ガラス気泡の添加が終了した後、ミキサーの速度を約1分間、中速に、次いで約2分間高速に増大させた。次いでミキサーを停止させ、そのバッチを視察した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0065】
実施例1について表1に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(UCAR 626は、本明細書で上記に述べたように全固形分が50%である水性エマルションである)。バッチサイズは約2kgであった。本実施例及び他の実施例において記載される比率は、使用した装置及び測定値の精度及び許容誤差を反映したものであることは理解されるべきである。
【0066】
【表1】

【0067】
(実施例2)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー、及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。UCAR Latex 626(結合剤エマルション)は、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)より入手した。K−20ガラス気泡は、スリー・エム社(3M Company)より入手した。W210セラミックマイクロスフェアは、スリー・エム(3M Company)社より入手した。Polyphase P20T及びMergal 192殺菌剤は、トロイ社(Troy Corporation)より入手した。プロピレングリコールブチルエーテル(CAS番号5131−66−8)は、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号484415のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりDowanol PnBの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びプロピレングリコールブチルエーテルを順次加えた。この後、ミキサーを最初に低速に設定してW210セラミックマイクロスフェアをゆっくりと加えた。セラミックマイクロスフェアの添加により混合物の粘度が増すに従って、ミキサーの速度を増大させた。添加の終了後、このプレミックスの混合を約5分継続した。次いで、直ちにプレミックスを以下の工程に用いた。すなわち、ガラス気泡充填剤の最終的な全体量の約30%を低剪断ミキサーの混合用ボールに加えた。次に、プレミックスをゴムベラを使ってミキサーに加え、ミキサーを低速で始動させた。ガラス気泡の残部を低剪断混合用ボールにゆっくりと加えた。ガラス気泡の添加が終了した後、ミキサーの速度を約1分間、中速に、次いで約2分間高速に増大させた。次いでミキサーを停止させ、そのバッチを視察した。次いで構成成分としての水を加えて粘度を所望の粘度に調整し、再びミキサーを高速で短時間、バッチが均一に見えるようになるまで運転した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0068】
実施例2について表2に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(構成成分としての水について記載した重量%は、上記に述べたように粘度の調整のために加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約1.8kgであった。
【0069】
【表2】

【0070】
(実施例3)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー、及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。UCAR Latex 626(結合剤エマルション)は、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)より入手した。K−20ガラス気泡は、スリー・エム社(3M Company)より入手した。W210セラミックマイクロスフェアは、スリー・エム社より入手した。Polyphase P20T及びMergal 192殺菌剤は、トロイ社(Troy Corporation)より入手した。プロピレングリコールブチルエーテル(CAS番号5131−66−8)は、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号484415のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりDowanol PnBの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びプロピレングリコールブチルエーテルを順次加えた。この後、ミキサーを最初に低速に設定してW210セラミックマイクロスフェアをゆっくりと加えた。セラミックマイクロスフェアの添加により混合物の粘度が増すに従って、ミキサーの速度を増大させた。添加の終了後、このプレミックスの混合を約5分継続した。次いで、直ちにプレミックスを以下の工程に用いた。すなわち、ガラス気泡充填剤の最終的な全体量の約30%を低剪断ミキサーの混合用ボールに加えた。次に、プレミックスをゴムベラを使ってミキサーに加え、ミキサーを低速で始動させた。ガラス気泡の残部を低剪断混合用ボールにゆっくりと加えた。ガラス気泡の添加が終了した後、ミキサーの速度を約1分間、中速に、次いで約2分間高速に増大させた。次いでミキサーを停止させ、そのバッチを視察した。次いで構成成分としての水を加えて粘度を所望の粘度に調整し、再びミキサーを高速で短時間、バッチが均一に見えるようになるまで運転した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0071】
実施例3について表3に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(構成成分としての水について記載した重量%は、上記に述べたように粘度の調整のために加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約1.8kgであった。
【0072】
【表3】

【0073】
(実施例4)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー、及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。UCAR Latex 626(結合剤エマルション)は、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)より入手した。K−20ガラス気泡は、スリー・エム社(3M Company)より入手した。炭酸カルシウムは、イー・エム・ディー・ケミカル社(EMD Chemicals)より商品名CX01105のものを入手した。Polyphase P20T及びMergal 192殺菌剤は、トロイ社(Troy Corporation)より入手した。プロピレングリコールブチルエーテル(CAS番号5131−66−8)は、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号484415のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりDowanol PnBの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。所望量の水を適当なサイズのビーカーに加えた後、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌した。次いで、キサンタンガムをゆっくりと加えた。ガムが水に溶解するに従って粘度が増大したため、ミキサーの速度を増大させた。次いで、攪拌を継続しながらプロピレングリコールブチルエーテル及びMergal 192を加えた。この後、高速で攪拌しながら炭酸カルシウムを加えた。次いで、このプレミックスを以下のようにして加えた。
【0074】
低剪断ミキサーのボールにUCAR 626及びPolyphase P20Tを入れた。次いで上記のプレミックスを加え、混合物を比較的均質となるまで低速で攪拌した。次に、低速で攪拌を継続しながらK−20ガラス気泡をゆっくりと加えた。ガラス気泡の添加が終了した後、ミキサーを高速で約1分間運転した。次いで混合用ボールを下げて、ボールの壁をヘラで掻いて空洞やポケットが残っていないようにした。次いで混合用ボールを定位置に再び戻し、ミキサーを高速で更に約1分間運転した。次いでミキサーを停止させ、そのバッチを視察した。次に、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移した。実施例4について表4に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(水について記載した重量%は、上記に述べたように最初に加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約1kgであった。
【0075】
【表4】

【0076】
(実施例5)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。UCAR Latex 626(結合剤エマルション)は、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical)より入手した。K−20ガラス気泡は、スリー・エム社(3M Company)より入手した。炭酸カルシウムは、イー・エム・ディー・ケミカル社(EMD Chemicals)より商品名CX01105のものを入手した。Polyphase P20T及びMergal 192殺菌剤は、トロイ社(Troy Corporation)より入手した。エチレングリコールブチルエーテル(CAS番号111−76−2)は、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号48、428−8のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりButyl CELLOSOLVEの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。所望量の水を適当なサイズのビーカーに加えた後、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌した。次いで、攪拌を継続しながらエチレングリコールブチルエーテル及びMergal 192を加えた。この後、高速で攪拌しながら炭酸カルシウムを加えた。次いで、このプレミックスを以下のようにして加えた。
【0077】
低剪断ミキサーのボールにUCAR 626及びPolyphase P20Tを入れた。次いで上記のプレミックスを加え、混合物を比較的均質となるまで低速で攪拌した。次に、低速で攪拌を継続しながらK−20ガラス気泡をゆっくりと加えた。ガラス気泡の添加が終了した後、ミキサーを高速で約1分間運転した。次いで混合用ボールを下げて、ボールの壁をヘラで掻いて空洞やポケットが残っていないようにした。次いで混合用ボールを定位置に再び戻し、ミキサーを高速で更に約1分間運転した。次いでミキサーを停止させ、そのバッチを視察した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0078】
実施例5について表5に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(水について記載した重量%は、上記に述べたように最初に加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約0.3kgであった。
【0079】
【表5】

【0080】
(実施例6)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー、及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。ジプロピレングリコールプロピルエーテルは、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号484210のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりDowanol PnPの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。他の材料は、実施例3で述べたのと同様にして入手した。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びジプロピレングリコールプロピルエーテルを加えた後、実施例3で述べたのと同様にしてW210セラミックマイクロスフェアを加えて混合し、プレミックスを形成した。次いで、プレミックスをガラス気泡充填剤が入った混合用ボールに加え、実施例3で述べたのと同様にしてプレミックスとガラス気泡とを低剪断力で互いに混合した。次いで構成成分としての水を加えて粘度を所望の粘度に調整し、低剪断ミキサーを短時間、バッチが均一に見えるようになるまで再び運転した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0081】
実施例6について表6に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(構成成分としての水について記載した重量%は、上記に述べたように粘度の調整のために加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約0.43kgであった。
【0082】
【表6】

【0083】
(実施例7)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー、及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、マサチューセッツ州ワードヒル所在のアルファ・エイサー社(Alfa-Aesar)より製品番号A16063のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりMethyl Carbitolの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。他の材料は、実施例3で述べたのと同様にして入手した。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びジエチレングリコールモノメチルエーテルを加えた後、実施例3で述べたのと同様にしてW210セラミックマイクロスフェアを加えて混合し、プレミックスを形成した。次いで、プレミックスをガラス気泡充填剤が入った混合用ボールに加え、実施例3で述べたのと同様にしてプレミックスとガラス気泡とを低剪断力で互いに混合した。次いで構成成分としての水を加えて粘度を所望の粘度に調整し、低剪断ミキサーを短時間、バッチが均一に見えるようになるまで再び運転した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0084】
実施例7について表7に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(構成成分としての水について記載した重量%は、上記に述べたように粘度の調整のために加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約0.43kgであった。
【0085】
【表7】

【0086】
(実施例8)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー、及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。トリプロピレングリコールメチルエーテルは、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号30286−4のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりDowanol TPMの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。他の材料は、実施例3で述べたのと同様にして入手した。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びトリプロピレングリコールメチルエーテルを加えた後、実施例3で述べたのと同様にしてW210セラミックマイクロスフェアを加えて混合し、プレミックスを形成した。次いで、プレミックスをガラス気泡充填剤が入った混合用ボールに加え、実施例3で述べたのと同様にしてプレミックスとガラス気泡とを低剪断力で互いに混合した。次いで構成成分としての水を加えて粘度を所望の粘度に調整し、低剪断ミキサーを短時間、バッチが均一に見えるようになるまで再び運転した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0087】
実施例8について表8に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(構成成分としての水について記載した重量%は、上記に述べたように粘度の調整のために加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約0.43kgであった。
【0088】
【表8】

【0089】
(実施例9)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー、及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルは、日本の東京所在の東京化成工業株式会社より製品番号T0915のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりButoxytriglycolの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。他の材料は、実施例3で述べたのと同様にして入手した。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルを加えた後、実施例3で述べたのと同様にしてW210セラミックマイクロスフェアを加えて混合し、プレミックスを形成した。次いで、プレミックスをガラス気泡充填剤が入った混合用ボールに加え、実施例3で述べたのと同様にしてプレミックスとガラス気泡とを低剪断力で互いに混合した。次いで構成成分としての水を加えて粘度を所望の粘度に調整し、低剪断ミキサーを短時間、バッチが均一に見えるようになるまで再び運転した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0090】
実施例9について表9に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(構成成分としての水について記載した重量%は、上記に述べたように粘度の調整のために加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約0.43kgであった。
【0091】
【表9】

【0092】
(実施例10)
以下の一般的な方法によって壁修理用混合物のバッチを合成した。以下の装置、すなわち、Cowlesブレードを備えた高剪断ミキサー及び低剪断(Hobart)ミキサーを用いた。ジプロピレングリコールジメチルエーテルは、ミズーリ州セントルイス所在のシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)より製品番号520462のものを入手した(ダウ・ケミカル社よりProglyde DMMの商品名で入手される製品とほぼ同等のものと考えられる)。他の材料は、実施例3で述べたのと同様にして入手した。UCAR 626水性結合剤エマルションを、低速に設定したオーバーヘッド駆動式のCowles混合ブレードで攪拌されている適当なサイズのビーカーに加えた。次いで、低速で攪拌しながらP20T、192、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルを加えた後、実施例3で述べたのと同様にしてW210セラミックマイクロスフェアを加えて混合し、プレミックスを形成した。次いで、プレミックスをガラス気泡充填剤が入った混合用ボールに加え、実施例3で述べたのと同様にしてプレミックスとガラス気泡とを低剪断力で互いに混合した。次いで構成成分としての水を加えて粘度を所望の粘度に調整し、低剪断ミキサーを短時間、バッチが均一に見えるようになるまで再び運転した。次いで、混合物をフタ付きのプラスチック製バケットに移して保存した。
【0093】
実施例10について表10に列記したすべての成分は、調合された壁修理用混合物に対する重量%である(構成成分としての水について記載した重量%は、上記に述べたように粘度の調整のために加えた水にUCARエマルション中に存在する水分を加えたものである)。バッチサイズは約0.43kgであった。
【0094】
【表10】

【0095】
物理的特性
本発明者らは、実施例1〜10の組成及び方法に従って調製した試料が、有利に滑らかな粘稠度、塗り広げやすさ、及び垂直な壁に塗布される際に垂れさがったり、流れたり、落ち込んだりしないような耐性を示すことを見出した。
【0096】
収縮率の測定
本明細書で述べる壁修理用混合物は、水並びに一般的なオイル及び液体よりも密度(比重)が低いため、置き換えられる液体の量を測定することに基づいた従来の収縮率の測定法によって混合物の特性評価を行うことは容易ではなかった。このため、収縮率を求めるための簡単な半定量的方法が開発された。直径約8.9cm(3.5インチ)、深さ約1.0cm(0.4インチ)のフタ(3.8L(1ガロン)のガラスジャーのもの)を壁修理用混合物の試料で完全に満たした。試料の露出した面(上面)を、幅広のパテナイフで試料の表面上をなでることによってフタの上縁部と同じ高さとなるようにならした。次いで、試料を周囲(室内)条件下で3日間乾燥させた。
【0097】
3日間の乾燥の終了後、試料にひび割れがないか調べた。試料を収縮についても調べた(乾燥した壁修理用混合物の露出面がフタの上縁部よりも下に凹むかたちで現れる)。こうした凹みを測定して試料中の材料の体積と組み合わせて用いることによって、乾燥時に生ずる収縮の半定量的な推定値を得ることができる。
【0098】
実施例1〜10の組成及び方法に従って調製した試料では、ひび割れはまったく観察されなかった。これらの試料では、フタの周縁部に対する露出面の凹みは肉眼で観察される量以下であった。肉眼で観察することが可能なこうした凹みの最小量は、本発明者らによれば千分の数インチと推定されることから、これらの試料は控えめに見積もって乾燥時の収縮率が約2.5%未満であると推定された(例えば、0.025cm(0.010インチ)(一万分の2.54cm(1インチ)/1.0cm(0.4インチ)))。
【0099】
上記に述べた試験及び試験結果は予測ではなくあくまで説明を目的としたものであって、試験方法が変われば異なる結果が得られることが予想される。実施例の項における定量的な値はすべて、用いられる方法にともなう一般的に知られた許容誤差を考慮した近似的な値であるものと理解される。上記の詳細な説明及び実施例はあくまで理解を助けるために示したものである。これらから不要な限定をするべきではない。
【0100】
以上、本発明の多くの実施形態について述べた。しかしながら、本発明から逸脱することなく様々な改変を行いうることが理解されるであろう。本明細書に示した指標の範囲内で、特定の目的で望まれるように壁修理用混合物の組成を変えることが可能である。例えば、本発明者らは、調合物中のガラス気泡の量をセラミックマイクロスフェアの量に対して増やすことによって、サンディングが容易な乾燥した混合物が得られることを見出した。更なる実施例では、本発明者らは、調合物中のセラミックマイクロスフェアの量をガラス気泡の量に対して増やすことによって、より硬度の高い乾燥した混合物が得られることを見出した。こうした調整を行ううえで、又は一般的に、混合物の粘度は、水性結合剤ラテックスの量及び/又は添加する水の量を増やすかあるいは減らすことによって望みどおりに変化させることができる。本発明者は、こうした変更及び組み合わせはすべて、考案された発明の範囲に含まれるものと考える。したがって、これらの実施形態はすべて、以下の特許請求の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁修理用混合物であって、
約20重量%〜約80重量%の水性ラテックス結合剤エマルションと、
そのほぼ100重量%が合成無機充填剤によって構成される約20重量%〜約70重量%の無機充填剤系と、
少なくとも1個のエーテル結合を有し、かつ1個以下の水酸基を有する約0.025重量%〜約2.5重量%の少なくとも1種類の有機エーテル平滑剤と、
約0.1重量%未満の有機ポリマー増粘剤と、
を含む、壁修理用混合物。
【請求項2】
前記合成無機充填剤がほぼ球形の合成粒子を含み、前記粒子が比較的大径のガラス気泡と比較的小径のセラミックマイクロスフェアとを含み、前記セラミックマイクロスフェアの中央粒径に対する前記ガラス気泡の中央粒径の比が約5:1〜約40:1の範囲内である、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記セラミックマイクロスフェアの中央粒径に対する前記ガラス気泡の中央粒径の比が約10:1〜約30:1の範囲内である、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
前記ガラス気泡の中央粒径の比が約30ミクロン〜約65ミクロンの範囲内であり、前記セラミックマイクロスフェアの中央粒径が約2ミクロン〜約10ミクロンの範囲内である、請求項2に記載の混合物。
【請求項5】
前記セラミックマイクロスフェアに対する前記ガラス気泡の重量比が約1:1〜約3:1である、請求項2に記載の混合物。
【請求項6】
前記合成無機充填剤が約0.5重量%未満の結晶性物質を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項7】
前記無機充填剤系が前記混合物の約30重量%〜約60重量%を構成する、請求項1に記載の混合物。
【請求項8】
前記無機充填剤系が前記混合物の約40重量%〜約50重量%を構成する、請求項7に記載の混合物。
【請求項9】
前記有機エーテル平滑剤が前記混合物の約0.05重量%〜約1.5重量%で存在する、請求項1に記載の混合物。
【請求項10】
前記有機エーテル平滑剤が前記混合物の約0.15重量%〜約0.5重量%で存在する、請求項9に記載の混合物。
【請求項11】
前記少なくとも1種類の有機エーテル平滑剤がちょうど1個の水酸基とちょうど1個のエーテル結合とを有し、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、及びエチレングリコールフェニルエーテル、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項12】
前記少なくとも1種類の有機エーテル平滑剤がちょうど1個の水酸基とちょうど2個のエーテル結合とを有し、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、及びジエチレングリコールエチルエーテル、並びにこれらの混合物、並びにこれらとちょうど1個のエーテル結合を有する有機エーテルとの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項13】
前記少なくとも1種類の有機エーテル平滑剤がちょうど1個の水酸基とちょうど3個のエーテル基とを有し、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、並びにこれらの混合物、並びにこれらと1個又は2個のエーテル結合を有する有機エーテルとの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項14】
前記少なくとも1種類の有機エーテル平滑剤が水酸基を有さず、かつ少なくとも1個のエーテル結合を有し、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、並びにこれらの混合物、並びにこれらとちょうど1個の水酸基を有する有機エーテルとの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項15】
約0.05重量%未満の有機ポリマー増粘剤を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項16】
約0.02重量%未満の有機ポリマー増粘剤を含む、請求項15に記載の混合物。
【請求項17】
約0.1重量%未満の無機増粘充填剤粘土を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項18】
約0.1重量%未満の低分子量ポリヒドロキシ添加剤を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項19】
前記水性ラテックス結合剤エマルションが、15℃〜35℃のガラス転移温度を有する結合剤を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項20】
前記水性ラテックス結合剤エマルションが、20℃〜30℃のガラス転移温度を有する結合剤を含む、請求項19に記載の混合物。
【請求項21】
前記水性ラテックス結合剤エマルションが、混合物の約30重量%〜約70重量%を構成する、請求項1に記載の混合物。
【請求項22】
前記水性ラテックス結合剤エマルションが、混合物の約40重量%〜約60重量%を構成する、請求項21に記載の混合物。
【請求項23】
前記水性ラテックス結合剤エマルションがアクリル結合剤を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項24】
約0.1重量%〜約0.8重量%の防腐剤を更に含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項25】
オイル、ワックス、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の塵芥低減剤を更に含む、請求項1に記載の混合物。

【公表番号】特表2011−523974(P2011−523974A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513556(P2011−513556)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/045778
【国際公開番号】WO2009/151988
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】