説明

軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス及び壁構造

【課題】ALCパネルを下地材に強固で、且つ安定的に取り付けることが可能になる軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビスを提供することを目的とする。
【解決手段】スチールハウスの枠材3にALCパネル2を取り付けるための専用ビス1であって、ALCパネル2及び枠材3を貫通する軸部5と、軸部5の基端に設けられ、ALCパネル2に当接してALCパネル2を枠材3側に押圧する頭部7と、を備え、軸部5の先端側には、螺旋状のねじ山15が形成された雄ねじ部13が設けられ、雄ねじ部13は、ねじ山15のピッチPが枠材3の板厚Tよりも大きく、ねじ山15の形成によって生じる谷領域17で枠材3を挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板軽量形鋼造建築物の枠材となる軽量形鋼などの下地材に軽量気泡コンクリートパネルを取り付けるためのビス、及びそのビスによって軽量気泡コンクリートパネルが下地材に取り付けられた壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造ツー・バイ・フォー(2×4)工法に代えて薄板軽量形鋼造建築物(スチールハウス)工法が注目されている。スチールハウス工法では、枠材となる下地材として木材ではなく、剛性に勝る軽量形鋼またはリップ溝形鋼を使用し、さらに、木造で使用する釘よりも結合部の強度を高めるためにビスを使用する。このビスは、ALCパネルを貫通し、さらに、枠材にねじ立てするようにねじ込まれて枠材に螺合する。従って、一般的には、ねじ山のピッチが小さければ小さいほど、螺合結合部の強度が高まって有利であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スチールハウス工法で使用される下地材は、板厚が、例えば0.8mm〜1.6mm程度の非常に薄い形鋼であり、下地材を貫通するビスと下地材との接触領域は非常に狭く、従って、下地材に切られたねじ(雌ねじ)とビスとの間での螺合結合では限界があり、ビスが下地材から抜け易くなってALCパネルの取り付けが不安定になる虞があった。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、ALCパネルを下地材に強固で、且つ安定的に取り付けることが可能になる軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス、及び下地材にALCパネルが強固で、且つ安定的に取り付けられた壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属製の薄板からなる下地材に軽量気泡コンクリートパネルを取り付けるためのビスであって、軽量気泡コンクリートパネル及び下地材を貫通する軸部と、軸部の基端に設けられ、軽量気泡コンクリートパネルに当接して軽量気泡コンクリートパネルを下地材側に押圧する頭部と、を備え、軸部の先端側には、螺旋状のねじ山が形成された雄ねじ部が設けられ、雄ねじ部は、ねじ山のピッチが下地材の板厚よりも大きく、ねじ山の形成によって生じる谷領域で下地材を挟持することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビスでは、軽量気泡コンクリートパネル及び下地材を貫通する軸部の先端側に雄ねじ部が形成されている。軸部の回転に伴って進行する雄ねじ部は、ねじ山のピッチが下地材の板厚よりも大きいため、下地材に形成する雌ねじとの螺合結合ではなく、谷領域で下地材を挟持することで下地材に結合される。従って、下地材が薄い場合であっても、雄ねじ部は下地材から抜けにくくなり、強固で、安定した係合状態を形成できる。さらに、軸部の基端には、軽量気泡コンクリートパネルを下地材側に押圧する頭部が設けられており、軸部の進行に伴って、下地材と頭部とは相対的に軽量気泡コンクリートパネルを挟み付ける方向に移動する。その結果として、軽量気泡コンクリートパネルは、下地材に対して強固で、且つ安定して取り付けられた状態になる。
【0007】
さらに、軸部には、雄ねじ部よりも頭部寄りに配置されると共に、軸部の軸線に交差する方向に突き出したパネル浮上規制部が更に設けられていると好適である。雄ねじ部が形成された軸部は、軽量気泡コンクリートパネルにねじ込まれて貫通した後、下地材に孔を形成して貫通する。下地材に孔を形成する際、軸部は回転するものの、下地材の抵抗を受けて軸部の進行が一時的に停止する可能性がある。この場合、雄ねじ部に螺合している軽量気泡コンクリートパネルが軸部の進行方向とは逆方向である後退側に送り返され、結果的に、下地材に対して軽量気泡コンクリートパネルが浮き上がり易い。しかしながら、上記構成ではパネル浮上規制部が設けられているため、パネル浮上規制部が軽量気泡コンクリートパネルに形成されている雌ねじに干渉して浮き上がりを抑止でき、下地材への軽量気泡コンクリートパネルの確実な取り付けが可能になる。
【0008】
さらに、軸部には、雄ねじ部よりも先端側に配置されると共に、下地材にパイロット孔を形成するドリル部が設けられていると好適である。下地材にパイロット孔が形成され、そのパイロット孔に雄ねじ部が進行して下地材に結合されるので、雄ねじ部の進行がスムーズになり、下地材への軽量気泡コンクリートパネルの確実な取り付けを可能にする。
【0009】
さらに、雄ねじ部は、先端から基端側にかけて外径が漸次拡大するガイド部と、ガイド部よりも基端側に配置されると共に、下地材に結合される挟持部と、を有すると好適である。雄ねじ部にガイド部に設けることで、下地材に対する雄ねじ部の進行がスムーズになり、下地材への軽量気泡コンクリートパネルの確実な取り付けを可能にする。
【0010】
さらに、雄ねじ部は、下地材に結合される挟持部と、挟持部よりも浮上規制部寄りに配置されると共に、挟持部から浮上規制部に近づくにしたがって外径が漸次縮小する離間部と、を有すると好適である。挟持部と離間部とを設けた場合と、離間部を設けることなく全て挟持部とした場合とを比較すると、後者の方が、軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビスと軽量気泡コンクリートパネルとの接触面が大きくなる分、軽量気泡コンクリートパネルが浮き上がり易くなる。すなわち、離間部を設けることによって、浮上規制部による浮き上がり抑止効果を更に高めることができる。
【0011】
また、本発明は、金属製の薄板からなる下地材に、ビスによって軽量気泡コンクリートパネルが取り付けられた壁構造において、このビスは、軽量気泡コンクリートパネル及び前記下地材を貫通する軸部と、軸部の基端に設けられ、軽量気泡コンクリートパネルに当接して軽量気泡コンクリートパネルを下地材側に押圧する頭部と、を備え、軸部の先端側には、螺旋状のねじ山が形成された雄ねじ部が設けられ、雄ねじ部は、ねじ山のピッチが下地材の板厚よりも大きく、ねじ山の形成によって生じる谷領域で下地材を挟持することを特徴とする。本発明によれば、軽量気泡コンクリートパネルを、下地材に対して強固で、且つ安定的に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軽量気泡コンクリートパネルを下地材に強固で、且つ安定的に取り付けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビスの側面図である。
【図2】雄ねじ部を拡大して示す側面図である。
【図3】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図4】スチールハウス工法によって構築された壁構造の断面図である。
【図5】図4に示す壁構造の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビスによって軽量気泡コンクリートパネルを枠材に取り付けている状態を示し、(a)は、ドリル部が枠材に到達してパイロット孔を形成している状態を示す図であり、(b)は雄ねじ部が枠材に結合されている状態を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る壁構造の一部を拡大して示す断面図である。
【図8】第3実施形態に係る壁構造の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビスの側面図であり、図2は、雄ねじ部を拡大して示す側面図であり、図3は、図1のII−II線に沿った断面図である。また、図4は、スチールハウス工法によって構築された壁構造の断面図であり、図5は、図4に示す壁構造の一部を拡大して示す断面図である。
(第1実施形態)
【0015】
図1〜図3に示されるように、軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス(以下、「専用ビス」という)1は、軽量気泡コンクリートパネル(以下、「ALCパネル」という)2を薄板軽量形鋼造建築物(スチールハウス)の軽量形鋼やリップ溝形鋼からなる枠材(下地材)3に取り付けるために使用される。
【0016】
専用ビス1は、少なくともALCパネル2及び枠材3を貫通する軸部5と、軸部5の基端に設けられた頭部7とを備えている。頭部7には、例えば、電動ドリル用の四角ビットが嵌合する四角穴や六角棒レンチが嵌合する六角穴が形成されており、さらに、軸部5に対して外径がテーパ状に拡大している側面部7aを有する。側面部7aには、回転に伴ってALCパネル2の気泡を押し潰し、頭部7を収容する穴2a(図5参照)を形成する直線状の切刃7bが複数形成されている。
【0017】
軸部5の基端側には、ALCパネル2などの厚さに対応する寸法長さを確保するための丸棒部9が設けられ、先端側にはドリル部11と雄ねじ部13が設けられている。ドリル部11は、枠材3にパイロット孔Hを形成する部分であり、雄ねじ部13よりも先端側に配置されている。ドリル部11は、先端で孔を穿つ尖形部11aと、リーマ部11bとを有する。リーマ部11bは、尖形部11aから基端側にかけて直線状に形成された二本の刃11cを有し、尖形部11aで形成された下孔を拡大して雄ねじ部13が進入するパイロット孔Hを形成する。
【0018】
図2に示されるように、雄ねじ部13には、螺旋状のねじ山15が形成されている。ねじ山15のピッチPは、ALCパネル2が取り付けられる枠材3の板厚Tに対応して決められており、枠材3の板厚Tよりも大きくなっている。雄ねじ部13には、ねじ山15の形成によって谷領域17が形成されている。谷領域17は、軸部5の軸線Lに沿って平坦な谷底領域17aと、谷底領域17aに対して所定の勾配で直線状または湾曲して立ち上がっている傾斜面領域17b,17cとを有する。傾斜面領域17b,17cの頂上は、ねじ山15の頂となる。枠材3は、傾斜面領域17b,17cに挟まれるようにして雄ねじ部13に挟持され、その結果、雄ねじ部13は枠材3に結合される。
【0019】
さらに、雄ねじ部13は、先端側のガイド部19と、ガイド部19よりも基端側に配置された挟持部21と、挟持部21よりも基端側に配置された離間部23と、に区分される。挟持部21は、螺旋状のねじ山15の高さが略同一であり、ねじ山15の頂に接する仮想的な面M1が円筒状になる領域、すなわち、軸部5の軸線L方向に沿って外径が略同じ(略同径)に設けられた領域である。枠材3は、挟持部21で挟持された状態になり、その結果、雄ねじ部1は枠材3に結合した状態で保持される。
【0020】
ガイド部19は、ねじ山15の先端側の端部から挟持部21に繋がるまでの領域である。螺旋状のねじ山15は、先端側の端部から基端側の挟持部21に到るまで、漸次高さが高くなるように形成されている。その結果、ガイド部19でのねじ山15の頂に接する仮想的な面M2は略円錐状、すなわちテーパ状になり、先端から基端側にかけて外径が漸次拡大する領域を形成する。ガイド部19を形成することで、ドリル部11で形成されたパイロット孔Hへの進入がスムーズになる。
【0021】
離間部23は、挟持部21からねじ山15の基端側の端部までの領域である。螺旋状のねじ山15は、挟持部21から基端側の端部に到るまで、漸次高さが低くなるように形成されている。その結果、離間部23でのねじ山15の頂に接する仮想的な面M3は、ガイド部19とは逆のテーパ状になり、挟持部21から離れるに従って外径が漸次縮小する領域となる。
【0022】
図1及び図3に示されるように、軸部5には、雄ねじ部13よりも頭部7寄りに丸棒部9が配置されており、丸棒部9には、雄ねじ部13の離間部23に近接して浮上規制羽根(浮上規制部)25が設けられている。浮上規制羽根25は、軸部5の軸線Lに対して直交する方向に突き出しており、雄ねじ部13と一緒に回転しながら進行し、雄ねじ部13が形成するALCパネル2の雌ねじに干渉する。
【0023】
次に、図4及び図5を参照して、上述の専用ビス1を用いた壁構造30Aについて説明する。スチールハウス工法は、木造ツー・バイ・フォー工法での木製の枠材に代えて亜鉛めっきされたリップ溝形鋼(「C形鋼」ともいう)を枠材(下地材)3として用いている。枠材3は板厚Tが0.8mm〜1.6mm程度と非常に薄く、一方の端部側には、石膏ボード26が固定されている。枠材3の他方の端部側には、フェノールフォーム等の断熱材からなる断熱プレート27とALCパネル2とが二層構造を形成して取り付けられている。本実施形態に係る壁構造30Aは、石膏ボード26が固定された複数の枠材3、断熱プレート27、ALCパネル2、断熱プレート27とALCパネル2とを枠材3に取り付ける専用ビス1を備えて構成される。
【0024】
専用ビス1は、頭部7の外径が10〜12mm、雄ねじ部13の最大外径が7.5mm程度、丸棒部9の軸径が4.0mm程度、全長が70mm〜130mm程度である。専用ビス1は、ALCパネル2及び断熱プレート27にねじ込まれて貫通し、さらに、枠材3を貫通している。専用ビス1の軸部5に形成された雄ねじ部13は、ねじ山15のピッチPが枠材3の板厚Tよりも大きくなっており、ねじ山15によって形成される谷領域17において枠材3を挟持した状態を形成し、その結果として、専用ビス1は、枠材3に強固に結合されている。
【0025】
また、専用ビス1は、頭部7がALCパネル2内に潜り込むまでねじ込まれており、その状態で頭部7はALCパネル2に当接してALCパネル2及び断熱プレート27を枠材3側に押圧している。その結果、ALCパネル2及び断熱プレート27は、専用ビス1の頭部7と枠材3とによって挟み付けられ、枠材3の所定位置に強固に固定され、安定的に枠材3に取り付けられている。
【0026】
次に、専用ビス1によってALCパネル2及び断熱プレート27を枠材3に取り付ける工程について説明する。図6(a)に示されるように、断熱プレート27及びALCパネル2を枠材3の所定位置に位置決めした後、枠材3を狙って専用ビス1をねじ込む。ここで、専用ビス1の軸部5の回転に伴って雄ねじ部13が進行し、断熱プレート27及びALCパネル2には雌ねじが形成される。雄ねじ部13は、この雌ねじと螺合結合した状態を形成しながら進行し、軸部5の先端に設けたドリル部11が枠材3まで到達する。
【0027】
枠材3に当接したドリル部11は、回転によって枠材3を削り、パイロット孔Hを形成する。ここで、軸部5は、枠材3からの抵抗を受けて進行が一時的に停止する。軸部5の進行が停止している状態であっても、軸部5の雄ねじ部13は回転しており、さらに、断熱プレート27及びALCパネル2の少なくとも一方と雄ねじ部13とは螺合しているため、断熱プレート27またはALCパネル2には、枠材3に対して浮き上がろうとする力Fが働く。この力Fは枠材3と断熱プレート27との間または断熱プレート27とALCパネル2との間に隙間を生じさせる力である。さらに、枠材3は、非常に薄いために僅かな撓みが生じる可能性もあり、枠材3と断熱プレート27との間には隙間が生じ易い状態でもある。
【0028】
しかしながら、本実施形態に係る専用ビス1では、浮上規制羽根25が設けられているので、浮上規制羽根25が断熱プレート27またはALCパネル2に形成された雌ねじに干渉し、断熱プレート27またはALCパネル2の浮き上がりを抑止し、枠材3と断熱プレート27との間または断熱プレート27とALCパネル2との間の隙間の発生を効果的に抑えることができる。その結果として、枠材3へのALCパネル2の確実な取り付けが可能になる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る雄ねじ部13には、挟持部21から浮上規制羽根25に近づくにしたがって外径が漸次縮小する離間部23が設けられている。雄ねじ部13に挟持部21と離間部23とを設けた場合と、離間部23を設けることなく全て挟持部21とした場合とを比較すると、後者の方が、専用ビス1と断熱プレート27またはALCパネル2との接触面が大きくなる分、断熱プレート27やALCパネル2が浮き上がり易くなると想定できる。従って、本実施形態の如く、離間部23を設けることによって、浮上規制羽根25による浮き上がり抑止効果を更に高めることができる。
【0030】
図6(b)に示されるように、パイロット孔Hが形成された後、雄ねじ部13のガイド部19がパイロット孔Hに進入する。雄ねじ部13は、ねじ山15のピッチPが枠材3の板厚Tよりも大きいため、谷領域17で枠材3を挟持することで枠材3に結合される。さらに、雄ねじ部13が進行すると、枠材3は谷領域17で挟持されたまま、雄ねじ部13の進行方向とは逆になる後退方向に相対的に送り返され、雄ねじ部13の挟持部21まで到達する。専用ビス1は、枠材3での雌ねじと雄ねじ部13との螺合結合ではなく、雄ねじ部13の谷領域17で枠材3を挟持するような状態で枠材3に結合されている。従って、枠材3が薄い場合であっても、雄ねじ部13は枠材3から抜けにくくなり、強固で、安定した係合状態を形成できる。
【0031】
一方で、軸部5の基端には、断熱プレート27及びALCパネル2を枠材3側に押圧する頭部7が設けられており、軸部5の進行に伴って、枠材3と頭部7とは相対的に断熱プレート27及びALCパネル2を挟み付ける方向に移動する。その結果として、断熱プレート27及びALCパネル2は、枠材3に対して強固で、且つ安定して取り付けられた状態になる。
【0032】
本実施形態に係る専用ビス1及び壁構造30Aによれば、ALCパネル2及び断熱プレート27を枠材3に強固で、且つ安定的に取り付けることが可能になる。
(第2実施形態)
【0033】
次に、図7を参照して第2実施形態に係る壁構造30Bについて説明する。本実施形態に係る壁構造30Bについて、第1実施形態と同様の要素や部材については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお、図7は、本実施形態に係る壁構造30Bの一部を拡大して示す断面図である。
【0034】
本実施形態に係る壁構造30Bでは、断熱プレート27は設けられておらず、専用ビス1によってALCパネル2が直接的に枠材3に取り付けられている。専用ビス(軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス)1は、第1実施形態に係る専用ビス1と同様に、軸部5及び頭部7を備えており、軸部5の先端側には、ドリル部11及び雄ねじ部13が設けられ、基端側には、丸棒部9が設けられている。なお、本実施形態では、断熱プレート27が設けられていない分だけ、丸棒部9の寸法が第1実施形態に係る丸棒部9の寸法よりも短くなっている。
【0035】
本実施形態に係る専用ビス1及び壁構造30Bによれば、ALCパネル2を枠材3に強固で、且つ安定的に取り付けることが可能になる。
(第3実施形態)
【0036】
次に、図8を参照して第3実施形態に係る壁構造30Cについて説明する。本実施形態に係る壁構造30Cについて、第1実施形態と同様の要素や部材については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお、図8は、本実施形態に係る壁構造30Cの一部を拡大して示す断面図である。
【0037】
本実施形態に係る壁構造30Cでは、第2実施形態に係る壁構造30Bと同様に断熱プレート27は設けられておらず、専用ビス1によってALCパネル2が直接的に下地材31に取り付けられている。また、下地材31は、二枚の枠材33,35が重ねられて構成されており、この二枚の枠材33,35に対し、ALCパネル2が専用ビス1によって取り付けられている。専用ビス(軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス)1は、第1実施形態に係る専用ビス1と同様に、軸部5及び頭部7を備えており、軸部5の先端側には、ドリル部11及び雄ねじ部13が設けられ、基端側には、丸棒部9が設けられている。
【0038】
本実施形態では、二枚に重なる枠材33,35によって下地材31が構成され、専用ビス1の雄ねじ部13のピッチP(図2参照)は、二枚重ねの枠材33,35からなる下地材31の板厚Tよりも大きくなっている。従って、専用ビス1の雄ねじ部13を下地材31にねじ込むと、ねじ山15の形成によって生じる谷領域17で下地材31が挟持され、雄ねじ部13は下地材31に結合される。
【0039】
下地材31が二枚以上の複数枚の枠材33,35からなる場合、各枠材33,35での雌ねじそれぞれと雄ねじ部13とを螺合結合させようとすると、どうしても、枠材33,35同士の間に隙間が形成され易くなってしまう。しかしながら、本実施形態では、雄ねじ部13の谷領域17で下地材31を挟持するように雄ねじ部13が下地材31に結合されるため、枠材33,35同士の間に隙間が生じることなく、より、強固で確実な係合状態を形成できる。なお、本実施形態では、下地材31が二枚の枠材33,35からなる場合を例示したが、3枚以上の枠材が重なり合って下地材を形成する態様であっても良く、この態様の場合には、複数枚の枠材全ての厚みが下地材の板厚Tとなり、専用ビス1の雄ねじ部13のピッチPは、この板厚Tよりも大きいものとなる。
【0040】
本発明は、以上の実施形態のみに限定されず、例えば、下地材と軽量気泡コンクリートパネルとの間に、断熱プレート以外に他のプレート体を介在させてもよい。さらに、上記の実施形態では、雄ねじ部にガイド部、挟持部及び離間部を全て設けた態様にて説明したが、挟持部のみ、ガイド部と挟持部のみ、または、挟持部と離間部のみを設けた態様であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…専用ビス(軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス)、3…枠材(下地材)、2…ALC(軽量気泡コンクリートパネル)、5…軸部、7…頭部、11…ドリル部、13…雄ねじ部、15…ねじ山、17…谷領域、19…ガイド部、21…挟持部、23…離間部、25…浮上規制羽根(浮上規制部)、30A,30B,30C…壁構造、31…下地材、H…パイロット孔、P…ピッチ、T…板厚。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の薄板からなる下地材に軽量気泡コンクリートパネルを取り付けるためのビスであって、
前記軽量気泡コンクリートパネル及び前記下地材を貫通する軸部と、
前記軸部の基端に設けられ、前記軽量気泡コンクリートパネルに当接して前記軽量気泡コンクリートパネルを前記下地材側に押圧する頭部と、を備え、
前記軸部の先端側には、螺旋状のねじ山が形成された雄ねじ部が設けられ、
前記雄ねじ部は、前記ねじ山のピッチが前記下地材の板厚よりも大きく、前記ねじ山の形成によって生じる谷領域で前記下地材を挟持することを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス。
【請求項2】
前記軸部には、前記雄ねじ部よりも前記頭部寄りに配置されると共に、前記軸部の軸線に交差する方向に突き出した浮上規制部が更に設けられていることを特徴とする請求項1記載の軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス。
【請求項3】
前記軸部には、前記雄ねじ部よりも先端側に配置されると共に、前記下地材にパイロット孔を形成するドリル部が更に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス。
【請求項4】
前記雄ねじ部は、先端から基端側にかけて外径が漸次拡大するガイド部と、前記ガイド部よりも前記基端側に配置されると共に、前記下地材に結合される挟持部と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス。
【請求項5】
前記雄ねじ部は、前記下地材に結合される挟持部と、前記挟持部よりも前記浮上規制部寄りに配置されると共に、前記挟持部から前記浮上規制部に近づくにしたがって外径が漸次縮小する離間部と、を有することを特徴とする請求項2記載の軽量気泡コンクリートパネル取り付け用ビス。
【請求項6】
金属製の薄板からなる下地材に、ビスによって軽量気泡コンクリートパネルが取り付けられた壁構造において、
前記ビスは、
前記軽量気泡コンクリートパネル及び前記下地材を貫通する軸部と、
前記軸部の基端に設けられ、前記軽量気泡コンクリートパネルに当接して前記軽量気泡コンクリートパネルを前記下地材側に押圧する頭部と、を備え、
前記軸部の先端側には、螺旋状のねじ山が形成された雄ねじ部が設けられ、
前記雄ねじ部は、前記ねじ山のピッチが前記下地材の板厚よりも大きく、前記ねじ山の形成によって生じる谷領域で前記下地材を挟持することを特徴とする壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−222941(P2010−222941A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74406(P2009−74406)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(000110789)日本パワーファスニング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】