説明

軽量気泡コンクリート及びその製造方法

【課題】十分な気泡の維持・安定性を有し、建築材料として、乾燥速度をある程度大きくすると共に強度を高くすることにより、軽量気泡コンクリートの諸物性や諸性能が所望のものとなる、低比重の軽量気泡コンクリート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行い、その後半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することにより得られる軽量気泡コンクリートにおいて、嵩比重が0.20以上0.45未満であり、且つ気体透過率が0.01cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以上3.0cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以下の空隙構造を有する、軽量気泡コンクリートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡コンクリート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軽量気泡コンクリートは、嵩比重が0.45〜0.55と軽量でありながら、建築材料として必要な強度を有し、長期の耐候性、耐火性及び耐不朽性に優れる。また、軽量であって加工性に優れるため、施工が容易であり、建築物の外壁材、床材、屋根材や内壁材などとして広く利用されている。しかし、近年、断熱性能の向上、建築物の軽量化、現場作業時の安全性向上や作業者への負担低減などの観点から、さらに嵩比重の小さな軽量気泡コンクリートが求められている。
【0003】
通常、軽量気泡コンクリートは、セメント及び珪石粉を主原料とし、必要により生石灰粉や石膏などを加え、水を添加してスラリー状とし、大気圧下でアルミニウム粉末などの気泡剤を加え、補強筋を配した型枠に注入して成型し、発泡・予備硬化(予備養生)後、半硬化状の軽量気泡コンクリートブロックを切断したものをオートクレーブ養生することにより、製造されている。ここで、成型水分は、原料を均一に混練する役割、発泡開始から半硬化状態になるまで気泡を保持する役割、及び石灰質原料の水和反応や結晶性トバモライト生成反応における反応物としての役割があることから、通常60〜80質量%求められる。
【0004】
軽量気泡コンクリートには、トバモライト結晶などの固形分と、主に成型水分量に起因する細孔と、主に発泡剤に起因する気泡とが存在し、軽量気泡コンクリートの嵩比重は、空隙である細孔及び気泡の総量によって決まる。そのため、軽量気泡コンクリートの嵩比重をさらに下げる代表的な方法として、成型水分量を多くして細孔量を増加させる方法、及びアルミニウム粉末等の発泡剤を多くして気泡量を増加させる方法などが挙げられる。ここで、成型水分はセメントや生石灰の水和及びトバモライト結晶などを形成する過程で消費されるため、同一水分量で成型した場合でも原料組成などに応じて細孔量が異なる場合がある。
【0005】
嵩比重の小さな軽量気泡コンクリートを成型する際、上記の成型水分量を多くして細孔量を増加させる方法では、成型水分量の増加(嵩比重の低減)に伴い原料スラリーの粘性が低下するため、固液分離、気泡の合一や浮力による脱泡を起こし得る。また、嵩比重の小さな軽量気泡コンクリートを成型する際、上記の発泡剤を多くして気泡量を増加させる方法では、発泡剤の増加(嵩比重の低減)に伴い気泡量が増大する。そのため、原料スラリー中での気泡の合一や、浮力による脱泡を起こし、粗泡による外観性の低下や、気泡を形成するガスが大量に抜け出すことによる収縮(陥没)が発生しやすいという問題がある。
【0006】
また、軽量気泡コンクリートの諸物性は、軽量気泡コンクリートに存在する各要素、即ち固形分、細孔及び気泡の量や状態(構造)に影響される。ここで、存在する各要素の状態(構造)とは、例えば、固形分では固形分を構成している成分比など(具体的にはトバモライト結晶量の比率など)、細孔では細孔径やその分布など、及び気泡では気泡径やその分布などである。
【0007】
特許文献1〜3が開示しているように、軽量気泡コンクリートは、嵩比重だけではなく、存在する固形分、細孔及び気泡の量や状態(構造)も制御することにより、所望の物性や特性を発現させることが可能となる。特許文献1には、細孔量を増加させた低比重の軽量気泡コンクリートが開示されており、特許文献2及び3には、気泡量を増加させた低比重の軽量気泡コンクリートの製造方法が開示されている。以下、特許文献1〜3についてより詳細に説明する。
【0008】
特許文献1には、実質的に成型水分量を多くして細孔量を増加させた、嵩比重0.2〜0.45である低比重の軽量気泡コンクリートが開示されており、細孔径及びその分布を制御することで、強度を向上させることが記載されている。併せて、例えば細孔量増加に伴う吸水量の増大に対して吸水速度が大きくなる等、周辺の環境変化に対する追随性が向上することも記載されている。特許文献2には、嵩比重0.45以下である低比重の軽量気泡コンクリートの製造方法が記載されている。具体的には、原料スラリーに発泡剤としてアルミニウム粉末を加えたものを減圧状態で発泡・硬化させることにより、気泡径を大きくし、気泡量を増大させると共に、独立気泡を均一に分布させて圧縮強度を向上させたものである。特許文献3には、嵩比重0.45以下の低比重の軽量気泡コンクリートの製造方法が記載されている。具体的には、石灰質原料として生石灰とセメントとの質量比を1対0.1〜0.5とし、水和反応が速く進む生石灰を多く使用することにより、原料スラリーの凝結を早め、スラリー中に存在する気泡を早い時期に安定化させ、気泡の合一化及び脱泡の増大を防止したものである。
【0009】
また、特許文献4には、嵩比重0.2〜0.5のケイ酸カルシウム水和物からなる吸音材の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−31270号公報
【特許文献2】特公平1−52356号公報
【特許文献3】特許第3887463号明細書
【特許文献4】特開平9−52778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示の発明は、細孔を増量させる低比重の軽量気泡コンクリートに関するものであるため、気泡を増量させる低比重の軽量気泡コンクリートと比べると、細孔量や気泡量などに起因する空隙構造が異なる。のみならず、細孔や気泡の状態(構造)に由来する軽量気泡コンクリートの諸物性や諸性能も異なるという問題があった。即ち、諸物性や諸性能が所望の軽量気泡コンクリートを得ることが困難となる。
【0012】
特許文献2及び3に開示の発明は、気泡量を増大させる低比重の軽量気泡コンクリートの製造方法に関するものである。ところが、これらの発明は気泡やモルタルそのものを安定化させる手段を講じることなく、特許文献2では減圧下での発泡・硬化、特許文献3では生石灰の水和発熱を利用した温度上昇を伴う状況下での発泡・硬化と、いずれも発泡・硬化時に圧力又は温度の大きな変化(状態変化)が生じる。そのため、同じ嵩比重0.45以下という低比重の軽量気泡コンクリートであっても、気泡の膨張などの状態変化を伴う発泡・硬化は、そのような状態変化を起こさない発泡・硬化と比べて、軽量気泡コンクリートに存在する細孔及び気泡の量や状態(構造)が異なる。のみならず、それに由来する軽量気泡コンクリートの諸物性や諸性能も異なるという問題があった。即ち、諸物性や諸性能が所望の軽量気泡コンクリートを得ることが困難となる。
【0013】
また、特許文献2及び3では、気泡を安定化させる手段に関して何らの開示もなされていないため、気泡が大きくなりやすい傾向にあるといえる。加えて、気泡が膨張するという状態変化が生じるため、気泡径は一層大きくなりやすく、軽量気泡コンクリートの外観性の低下を引き起こすという問題があった。さらに、モルタルスラリーの陥没や発泡・硬化の途中停止などを引き起こさないように、発泡及び硬化のバランスを保つために、減圧度や温度を極めて厳密且つ慎重に制御しなければならず、困難であると共に作業者にとって大きな負担となる。なお、特許文献2では減圧下での発泡・硬化を行うと開示されているが、そもそも減圧状態では気泡が非常に脱泡しやすいため、所望の気泡を維持させることは非常に困難である。
【0014】
特許文献4には、細孔量や気泡量に関して何らの開示もない。しかし、「ほぼ球状をなす気孔を多数包含する嵩比重0.2〜0.5のケイ酸カルシウム水和物からなり、気孔のうち相隣接する複数個の気孔が、部分的に合体して、それらの間にできた連通孔を介して連続的に繋がる連続気孔になっているとともに、多数個の連続気孔がほぼ同一の方向に配列している吸音材である。」と開示されている通り、吸音材としての性能を発現させる必要があることから、本発明の対象とする軽量気泡コンクリートに比べて、気泡同士の連通度(連通割合)が極端に高くなるといえる。そして、気泡同士の連通度が極端に高くなると、強度が低下するだけでなく水が浸透しやすくなる場合がある等、強度がほとんど要求されない吸音材として使用する分には問題ないとしても、ある程度の強度が要求される壁、屋根や床などの建築材料に使用することは難しいという問題があった。即ち、このような極端に高い連通度に起因して、そもそも諸物性や諸性能が所望の軽量気泡コンクリートを得ることはできない。
【0015】
このように、上記特許文献1〜4では、細孔量や気泡量に起因した所望の空隙構造を得ることができない。特に、上記特許文献2〜3では、製造時に気泡及びモルタルの維持・安定性が満足のいくものとはいえないため、製造上問題である。また、特許文献1〜3では軽量気泡コンクリートの乾燥速度の向上が見込めないため、軽量気泡コンクリートの内部に侵入した水を除去し難くなる。その結果、耐凍害性能や調湿性能だけでなく、熱伝導率増大による断熱性能の低下、重量増加による比強度の低下、さらには施工時にパネルが重くなり作業効率が低下する等、諸物性や諸性能が建築材料として所望の軽量気泡コンクリートを得ることはできない。また、特許文献4では、強度が非常に低いため、建築材料として、汎用的に使用することができない。
【0016】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するために、ある程度大きな乾燥速度、及び良好な強度物性を有し、諸物性や諸性能に優れた低比重の軽量気泡コンクリート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、低比重軽量気泡コンクリートにおいて、乾燥速度(乾燥質量減少率が指標となる。)と気体透過率との間に相関性があることを見出した。即ち、所望の乾燥速度を得るには、気体透過率を所定範囲に制御することが、極めて肝要であることを見出した。
【0018】
ここで、所定範囲の気体透過率にするためには、軽量気泡コンクリートの気泡や細孔を含む空隙構造を制御する必要があり、その手段として細孔量を増大させることなく、気泡量を増大させることが肝要であることを見出したと共に、この空隙構造を有する軽量気泡コンクリートの強度物性が良好であることも見出した。
【0019】
また、低比重の軽量気泡コンクリートを製造する際、細孔量を増大させることなく気泡量を増大させることは、気泡及びモルタルの安定性を著しく低下させる原因となるが、特定の添加剤を添加することにより、発泡・硬化時に温度や圧力の大きな変化(状態変化)が生じることなく、気泡やモルタルを安定化させることができることを見出した。
【0020】
ここで、軽量気泡コンクリートの低比重化は必然的に強度低下を伴い、場合によっては想定以上の強度低下を伴うが、気泡やモルタルの安定化は、気泡や細孔を含む構造体としての安定化に繋がり、低比重化に伴う過度の強度低下が抑えられ、これまでに比べ強度物性が良好になると推察される。
【0021】
このように、軽量気泡コンクリートにおいて、製造する際に気泡及びモルタルを安定化させることにより、これまでにない空隙構造を有する低比重の軽量気泡コンクリートを得ることが可能となり、嵩比重及び気体透過率という2つの要素を所定範囲に制御することにより、軽量気泡コンクリートの諸物性や諸性能が所望のものとなることを見出した。
【0022】
そこで、かかる観点より、上記した従来技術の軽量気泡コンクリートが、本発明の軽量気泡コンクリートの空隙構造及び諸物性と異なる理由を検討した。まず、特許文献1においては、細孔量を増大させた低比重の軽量気泡コンクリートの場合、空隙構造が異なるだけでなく、気体の透過しやすい気泡の量が相対的に減少するため、気体透過率が上昇することはない。次に、特許文献2においては、「発生気泡は何れも独立気泡を呈することが認められた」と開示されており、少なくとも一部の気泡が連通している本発明の空隙構造とは明らかに異なると共に、公知の事実として、軽量気泡コンクリートにおいて気体透過の妨げとなる独立気泡では気体透過率が極端に低下してしまう。次に、特許文献3において、気泡の状態を示す開示はないが、気泡の連通状態に大きく影響を与える界面活性剤などを添加する旨の開示がないため、気泡量が増大する以外に気体透過率を向上させる要素はなく、気体透過率の大きな上昇は見込めない。そして、特許文献4においては、上述のように、吸音材としての性能を発現させる必要があることから、通常の軽量気泡コンクリートに比べて、気泡同士の連通度が極端に高い。そのため、かかる吸音材は非常に高い気体透過率を有していると考えられる。しかし、上述のように、気泡同士の連通度が極端に高くなる場合に固有な問題がある。
【0023】
以上の観点から、低比重であり、且つ特定範囲の気体透過率を示す空隙構造を有する軽量気泡コンクリート及びその製造方法によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行い、その後半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することにより得られる軽量気泡コンクリートにおいて、嵩比重が0.20以上0.45未満であり、且つ気体透過率が0.01cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以上3.0cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以下の空隙構造を有する、軽量気泡コンクリート。
【0025】
[2]
気泡の量が、固形分の単位質量当たり、1.00cm3/g以上5.00cm3/g以下であり、細孔の量が、固形分の単位質量当たり、0.55cm3/g以上0.90cm3/g以下である、[1]に記載の軽量気泡コンクリート。
【0026】
[3]
前記固形分に対する前記細孔の体積比が1.25以上2.25以下である、[2]に記載の軽量気泡コンクリート。
【0027】
[4]
乾燥質量減少率が40〜95質量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の軽量気泡コンクリート。
【0028】
[5]
予め前記型枠中に補強筋を埋設する、[1]〜[4]のいずれかに記載の軽量気泡コンクリート。
【0029】
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の軽量気泡コンクリートの製造方法であって、珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤と、アルケニル又はアルキルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とを少なくとも添加すること、さらに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行うこと、及び半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することを含む、軽量気泡コンクリートの製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、特異的で優れた気体透過率を有する空隙構造、小さな平均気泡径、ある程度大きな乾燥速度、及び良好な強度物性を有し、諸物性や諸性能に優れた低比重の軽量気泡コンクリート及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0032】
[軽量気泡コンクリート]
本実施の形態に係る軽量気泡コンクリートは、珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行い、その後半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することにより得ることができ、当該軽量気泡コンクリートは、嵩比重が0.20以上0.45未満であり、且つ気体透過率が0.01cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以上3.0cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以下の空隙構造を有する。
【0033】
本実施の形態に係る軽量気泡コンクリート(以下、「低比重軽量気泡コンクリート」ともいう)のような、新規な特定の構成を取ることにより、優れた性能(軽量且つ高い断熱性)を損なうことなく、外観性及び気体透過率に優れた低比重軽量気泡コンクリートを提供できる。ここで、気体透過率に優れた低比重軽量気泡コンクリートは、乾燥速度(乾燥質量減少率)が大きくなり、軽量気泡コンクリート内部(中心部)と外部(表面)との含水率の差が低減し、且つ調湿性能や耐凍害性能の向上も期待できる。
【0034】
本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートは、珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行い、その後半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することにより得られ、固形分、気泡及び細孔が存在する。換言すれば、本明細書における「固形分」とは、低比重軽量気泡コンクリートのうち気泡及び細孔を除いた部分をいう。ここで、低比重軽量気泡コンクリートの比重が同一の場合、単位体積あたりの固形分量が一定であるため、単位体積あたりの気泡量が増大すると、単位体積あたりの細孔量が減少することとなる。かかる低比重軽量気泡コンクリートの製造方法については後述する。
【0035】
本実施の形態において、嵩比重の下限は、建築材料として好適な強度を得るという観点から、0.20以上であり、0.23以上が好ましく、嵩比重の上限は、軽量性の観点から、0.45未満であり、0.40以下が好ましく、0.35以下がより好ましい。なお、本明細書における嵩比重の測定は、後述する実施例で挙げた方法を採用することとする。
【0036】
また、本実施の形態における気体透過率は、乾燥速度(乾燥質量減少率)、調湿性能や耐凍害性能の向上が期待できることに加えて、発泡・硬化を容易にする等の生産安定性を向上させ、外観性や強度を向上させる観点から、0.01cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以上3.0cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以下であり、0.05cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以上2.0cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以下が好ましく、0.1cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以上1.5cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以下がより好ましい。
【0037】
ここで、前記気体透過率は、乾燥速度(乾燥質量減少率)、調湿性能や耐凍害性能などの性能を示す指標であるが、軽量気泡コンクリート内に分布する気泡や気泡壁厚さ、細孔や気泡の分布状態、及び気泡同士の連通度など、固形分によって形成される構造の空間部分である気泡や細孔といった空隙の状態に大きく影響される。そのため、複雑であって定性的・定量的な表現が困難な軽量気泡コンクリート内に分布する気泡や細孔の状態(固形分によって形成される構造)を規定する指標として利用することもできる。なお、本明細書における気体透過率の測定は、後述する実施例で挙げた方法を採用することとする。
【0038】
前記細孔量は、成型水分量の変化にともない、水和反応等に消費されていない水分量が変化すると、ほぼ比例的に変化する。当該軽量気泡コンクリートの低比重化に伴って成型水分が増量しないようにする観点より、前記細孔量は、前記固形分の単位質量(1g)当たり、0.55cm3/g以上0.90cm3/g以下が好ましく、0.60cm3/g以上0.85cm3/g以下がより好ましく、0.65cm3/g以上0.80cm3/g以下がさらに好ましい。
【0039】
また、本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートにおいては、独立気泡と連通気泡とが混在している。そして、気泡量は発泡剤の使用量に比例して変化する。本実施の形態は、主にこの気泡量及び気泡のネットワーク(連通度)を気体透過率という指標を用いて調節することを特徴とする。しかし、独立気泡と連通気泡とを定量的に分離評価することは困難である。そのため、前記気泡量は独立気泡及び連通気泡の総量とする。ここで、連通気泡は気泡と気泡とがより小さな連通孔で連結されてなるものであり、独立気泡は上記の連通孔で連結されていない気泡を意味する。なお、連通気泡には幾つかの気泡が一の連通孔で結ばれた状態のものも含まれる。
【0040】
本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートのように、低比重化と共に発泡剤を増量させる場合、気泡量の増大に伴って平均気泡径が増大し、外観性の低下を招くだけでなく、成型時に陥没を発生しやすくなる等、成型性が低下する虞がある。そのため、かかる外観性や成型性の低下を防止する観点から、上記気泡量は、固形分の単位質量当たり、1.00cm3/g以上5.00cm3/g以下が好ましく、1.20cm3/g以上4.50cm3/g以下がより好ましく、1.50cm3/g以上4.00cm3/g以下がさらに好ましい。また、上記平均気泡径は、上述のように外観性や成型性の低下を防止する観点より、0.3mm以上2.5mm以下が好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がより好ましく、0.7mm以上1.5mm以下がさらに好ましく、0.9mm以上1.5mm以下がさらにより好ましい。なお、本明細書における平均気泡径の測定は、後述する実施例で挙げた方法を採用することとする。
【0041】
本実施の形態において、上記固形分は、軽量気泡コンクリートを構成する固形分の総量であり、トバモライト結晶など固形原料分の水和生成物や未反応固形原料分などが含まれ、その真密度を2.5g/cm3とする。また、上記細孔量は、水銀圧入法により測定される細孔直径0.008〜20μmの範囲の細孔体積(細孔総量)である。ここで、水銀圧入法とは、軽量気泡コンクリートのような多孔質材料の内部に、水銀を圧入した際の侵入圧力と侵入量との関係から細孔径分布を測定するものであり、細孔の形状が円筒形であると仮定して計算される。また、細孔径の測定可能範囲は0.008〜500μmであるが、測定値は実際の細孔の直径を表すものではなく、構成物質間に存在する隙間の大きさを表す指標として使用され、軽量気泡コンクリート等の多孔質材料の細孔構造を示す上で非常に有効な解析手段である。なお、本明細書における水銀圧入法による細孔径分布及び細孔量、並びに気泡量の測定は、後述する実施例で挙げた方法を採用することとする。
【0042】
また、本実施の形態に係る、固形分、細孔及び気泡が存在する低比重軽量気泡コンクリートは、固形分に対する細孔の体積比が小さくなると、その分だけ相対的に気泡量が多くなる。そのため、発泡・硬化が難しくなるなど生産安定性が低下する一方で、気体透過率は高くなり、乾燥速度(乾燥質量減少率)、吸音性能、調湿性能や耐凍害性能の向上が期待できる。このような観点から、前記固形分に対する前記細孔の体積比は、1.25以上2.25以下が好ましく、1.37以上2.12以下がより好ましく、1.50以上2.00未満がさらに好ましい。また、同様の観点より、前記固形分に対する前記気泡の体積比は、2.2以上10.3以下が好ましく、2.5以上10.0以下がより好ましく、3.2以上10.0以下がさらに好ましい。なお、本明細書における固形分に対する細孔の体積比の算出は、後述する実施例で挙げた方法を採用することとする。一方、上記した固形分に対する気泡の体積比の算出は、後述する実施例で挙げた方法で求めた気泡量を、固形分の真密度(2.5)の逆数で除した値として求める。
【0043】
また、本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートは、予め前記型枠中に補強筋を埋設することが好ましい。この点については後述する。
【0044】
[低比重軽量気泡コンクリートの製造方法]
本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートの製造方法は、上記した低比重軽量気泡コンクリートを製造するための方法であって、珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤と、アルケニル又はアルキルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とを少なくとも添加すること、さらに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行うこと、及び半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することを含む。
【0045】
かかる製造方法により、発泡・硬化時に温度や圧力などの大きな変化(状態変化)を生じることなく、気泡及びモルタルを十分に維持・安定化させることにより、気体透過率及び外観性に優れた低比重軽量気泡コンクリートを簡便に提供することができる。
【0046】
本実施の形態においては、水性スラリー(原料スラリー)に、混和剤として、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤とアルケニル又はアルキルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とが少なくとも含まれる。このような構成により、成型水分を増量させずに発泡剤の使用によって気泡量を増大させるにも関わらず、発泡・硬化時に温度や圧力などの点で大きな変化(状態変化)を生じずに、気泡及びモルタルを安定化させて、外観性及び気体透過率に優れた構造を有する軽量気泡コンクリートが得られる。なお、発泡時の圧力は、大気圧に調節することが好ましい。
【0047】
上記ポリカルボン酸EOエステル系混和剤とは、不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体とアクリル酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体及びアリルスルホン酸系単量体よりなる群から選択される1種以上の単量体との共重合体を必須成分とするコンクリート混和剤である。かかるポリカルボン酸EOエステル系混和剤の製品として、ポリカルボン酸EOエステル系高性能減水剤、例えば、花王株式会社製のTK−500、TK−1000、TK−2000、及びTK−3000等が挙げられる。
【0048】
上記のアルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩として、以下に制限されないが、例えば、マレイン酸やマレイン酸無水物などのα,β−不飽和二塩基酸又はその無水物とオレフィンとの反応生成物に、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を反応させたものが挙げられる。上記の一価の脂肪酸の金属塩として、以下に制限されないが、例えばラウリン酸、パルチミン酸やステアリン酸などの一価の飽和脂肪酸、及びオレイン酸やリノール酸などの一価の不飽和脂肪酸を、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物と反応させたものが挙げられる。上記のメチルセルロースとして、以下に制限されないが、例えば、セルロースの水酸基の水素原子の一部をメチル基、ヒドロキシプロピル基やヒドロキシエチル基などで置換してなるセルロース誘導体、及び水への分散性を向上させるために当該セルロース誘導体を表面処理したものが挙げられる。
【0049】
ポリカルボン酸EOエステル系混和剤、アルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩、及びメチルセルロースは、いずれも水溶性であることが好ましい。
【0050】
ポリカルボン酸EOエステル系混和剤とアルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とは、発泡・硬化中の気泡及びモルタルを安定化させる作用機構を構成し、且つ気体透過率に優れた空隙構造を形成する。その理由は、本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートを製造する工程において、原料の混練から半硬化状態に至るまでの過程で、幾つかの役割を担うと共に、互いに相乗的な効果を発現するためであると推察される。
【0051】
上記のポリカルボン酸EOエステル系混和剤は、主に気泡を安定化させるために必要な水を供給する役割を果たすものと考えられる。より詳細にいえば、本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートは、水分不足による水性スラリー(原料スラリー)の粘度上昇に起因した混練不良は発生しないものの、発泡剤の使用によって気泡が増量するため、気泡を安定化させるための水分が不足すると考えられる。しかし、優れた減水効果を有する前記ポリカルボン酸EOエステル系混和剤を添加することにより、従来よりもはるかに少ない水分量で水性スラリー(原料スラリー)の粘度を下げることができ、結果的に混練が可能となる。この時発生した余剰水分が、気泡の安定化に必要な水として利用されると考えられる。
より具体的にいえば、気泡の表面に余剰水が存在することにより気泡壁を強化できるため、気泡を維持・安定化することができると考えられる。また、前記ポリカルボン酸EOエステル系混和剤は、その減水(減粘)作用の失活時間が早く、混練から発泡剤による体積膨張までの過程ではかかる作用(効果)は持続する。ところが、半硬化状態に至る過程で急速に失活することによりモルタル粘度が上昇するため、気泡及びモルタルの安定化に寄与する効果も有すると考えられる。
【0052】
上記のアルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩は、表面張力低下作用により微細な気泡を生成することができる。のみならず、気泡表面に配列して、その一部は原料中に含まれるカルシウムと置換して不溶性のカルシウム塩となり、気泡壁を強化するため、気泡同士の合一を抑制して気泡を安定化すると考えられる。ここで、気泡の微細化によって、気泡の表面積が著しく増大するため、気泡を安定化させるための水がより多く必要となり、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤がもたらす効果、即ち、余剰水分を発生させることと相乗的に作用していると考えられる。さらに、前記アルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩は、原料粒子に対して架橋的な凝集作用を及ぼし、原料粒子の沈降を抑制することで、モルタル全体の安定性を向上するものと考えられる。
【0053】
上記の一価の脂肪酸の金属塩、中でもステアリン酸やオレイン酸のカリウム塩やナトリウム塩などは、優れた界面活性剤であり、アルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩と同様に、表面張力低下作用により微細な気泡を生成することができる。のみならず、気泡表面に配列して、気泡壁を強化するため、気泡同士の合一を抑制して気泡を安定化すると考えられる。
【0054】
上記のメチルセルロースも同様に、界面活性作用を有するため、微細な気泡を生成することができるだけでなく、増粘による気泡の合一を抑制することもできると考えられる。しかし、必要以上の増粘は、混練の際により多くの水が必要となるため、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤の存在下であっても、気泡を安定化させるための水を確保することが困難となり得る。そのため、増粘が好ましい効果をもたらす範囲は限定的となり、必要以上の増粘は気泡及びモルタルの安定性の低下を招くと考えられる。
【0055】
本実施の形態に係る、気泡を増量した低比重軽量気泡コンクリートにおいて、少なくともポリカルボン酸EOエステル系混和剤とアルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩、メチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とを水性スラリー(原料スラリー)に添加する。これにより、それぞれが単独に独立して、気泡を微細化する効果、気泡を安定化させる効果、及びモルタルを安定化させる効果などを有するものと推察される。さらに、互いが単独ではなく相乗的に作用することにより、さらなる気泡及びモルタルの安定化を実現すると同時に、気泡の分布や状態及び気泡同士の連通度(ネットワークの程度)にも影響を及ぼし、特異的な気体透過率を有する空隙構造を形成するために寄与するものと推察される。
前記ポリカルボン酸EOエステル系混和剤、アルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースがもたらす上記効果の程度は、乾燥質量減少率(上記乾燥速度の指標となる。)を測定することにより把握することができる。前記ポリカルボン酸EOエステル系混和剤、アルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースに上記の効果を十分発揮させる観点から、前記乾燥質量減少率は、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上95質量%以下がより好ましく、60質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。なお、本明細書における乾燥質量減少率の測定は、後述する実施例で挙げた方法を採用することとする。
【0056】
本実施の形態における、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤とアルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とは、いずれも発泡剤投入前の水性スラリー(原料スラリー)中に添加されていればよい。そして、添加する手順や方法は、特に制限されない。また、製造コストの上昇を抑える観点、並びに微細化させた気泡及びモルタルを安定化させる観点から、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤は、原料の固形分量に対して、0.03質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.3質量%以下がより好ましく、0.08質量%以上0.2質量%以下がさらに好ましい。
上記と同様の観点から、原料の固形分量に対して、アルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩は、0.005質量%以上0.1質量%以下が好ましく、0.008質量%以上0.08質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.05質量%以下がさらに好ましい。上記と同様の観点から、原料の固形分量に対して、一価の脂肪酸の金属塩は、0.005質量%以上0.1質量%以下が好ましく、0.008質量%以上0.08質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.05質量%以下がさらに好ましい。上記と同様の観点から、原料の固形分量に対して、メチルセルロースは、0.0005質量%以上0.05質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.01質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上0.01質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
本実施の形態においては、軽量気泡コンクリートを補強するための補強筋を、予め型枠中に埋設することが好ましい。ここで、前記補強筋とは補強鉄筋又は補強金網である。補強鉄筋は鉄筋を所望の形状に配列し交叉接点を溶接加工したものであり、補強金網は鉄を網状に加工したものであって、例えばメタルラス等がその代表的な例である。補強鉄筋や補強金網の形状、寸法、鉄筋の太さ、金網の目の大きさ、さらには軽量コンクリート中に埋設する際の位置など、配筋の仕方については特に制限されることはなく、パネルの大きさや用途などによって適宜選択される。さらには、耐久性向上の観点から、合成樹脂系など、公知のもので防錆処理が施されているのも好ましい態様である。
【0058】
ここで、予め補強筋を埋設した型枠に水性スラリー(原料スラリー)を注入する場合、発泡過程において補強筋は発泡を阻害する抵抗物となるため、気泡の安定性が低下し得る。かかる低下は、通常の嵩比重0.45〜0.55の軽量気泡コンクリートでは大きな問題とならないが、本実施の形態のように気泡量を増大させつつ嵩比重を下げる場合には問題となり得る。具体的にいえば、気泡の増量に伴い気泡の安定性が著しく低下し、気泡が合一して脱泡が起こりやすくなる。すると、安定的な半硬化状モルタルとなる前に、発泡過程で気泡を形成するガスが大量に抜け出し、モルタルの収縮(陥没)が発生しやすくなる。
また、モルタルの収縮(陥没)は、発泡高さが上昇するに従って起こりやすくなる。そのため、同じ配筋の補強筋を有する軽量気泡コンクリートパネルを製造する場合でも、補強筋を型枠の底板に対して水平に配置するならば、発泡高さは最低でもパネル厚み分、即ち、パネル厚みに応じて35〜150mm程度あればよい。ところが、上記の場合でも、補強筋を型枠の底板に対して垂直に配置するならば、発泡高さは最低でもパネル幅分、即ち、パネル幅に応じて300〜800mm程度必要となり、モルタルの収縮(陥没)が極めて発生しやすくなる。しかし、本実施の形態における、少なくともポリカルボン酸EOエステル系混和剤とアルキル又はアルケニルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とを添加した水性スラリー(原料スラリー)は、気泡及びモルタルを安定化させる効果が極めて大きい。且つ、補強筋を型枠の底板に対して垂直に配置して埋設した場合でもモルタルの収縮(陥没)は発生しない。なお、本実施の形態において、発泡高さは1,000mm以下が好ましく、800mm以下がより好ましく、700mm以下がさらに好ましい。
【0059】
ここで、本発明者らは、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤とアルケニル又はアルキルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースのいずれをも添加せずに、水性スラリー(原料スラリー)を予め補強筋を埋設した型枠に注入し、軽量気泡コンクリートを製造しようとした。すると、モルタルが陥没し潰れて、成型体が得られない、即ち、十分に成型できないことを本発明者らは確認している。本発明のように、気泡を増量すると気泡の合一が起こり易い上、補強筋を埋設した場合、周知の事実として補強筋が発泡する際の発泡抵抗となるため、より気泡やモルタルの安定性が求められるだけでなく、補強筋の上部近傍では、気泡の合一が起こり易い。つまり、脱泡を引き起こし易く、気泡を形成するガスが大量に抜け出すと陥没が発生する。
【0060】
続いて、本実施の形態における珪酸質原料は、以下に制限されないが、例えば、結晶質の珪石、珪砂、石英及びそれらの含有率の高い岩石、珪藻土、シリカヒューム、フライアッシュ、高炉スラグ、製紙スラッジ焼却灰及び天然の粘土鉱物、並びにそれらの焼成物が挙げられる。ここで、前記珪酸質原料のブレーン比表面積は、以下に制限されないが、2,000cm2/g以上15,000cm2/g以下が好ましく、2,000cm2/g以上5,000cm2/g以下がより好ましく、2,000cm2/g以上4,500cm2/g未満がさらに好ましい。かかる好ましい範囲などは、反応性や成型性だけでなく、ブレーン比表面積が大きくなるに従って粉砕時間や費用がより多く必要となる観点等から導出される。
【0061】
本実施の形態における石灰質原料は、以下に制限されないが、例えば生石灰及び消石灰が挙げられる。また、珪酸成分及びカルシウム成分を主体とするセメント、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントやビーライトセメントも、好ましい態様として挙げられる。ここで、セメントに対する生石灰の質量比は、以下に制限されないが、0.10以上2.0未満が好ましく、0.15以上1.0以下がより好ましく、0.15以上0.5以下がさらに好ましい。また、使用される原料中のCaO/SiO2のモル比は、以下に制限されないが、0.40以上1.2以下が好ましく、0.50以上1.0以下がより好ましく、0.55以上0.8以下がさらに好ましい。
【0062】
また、本実施の形態における水性スラリー中の固形原料に対する成型水分の質量比は、0.60以上0.90以下が好ましく、0.60以上0.85以下がより好ましく、0.60以上0.80以下がさらに好ましい。
【0063】
本実施の形態における発泡剤としては、以下に制限されないが、アルカリ水溶液中で反応して水素を発生する金属粉末、例えばアルミニウム、亜鉛やバリウム等が挙げられる。その中で最も汎用的なものがアルミニウム(粉末)である。JIS K−5906に準拠した水面被覆面積は、以下に制限されないが、1,500cm2/g以上20,000cm2/g以下が好ましく、3,000cm2/g以上12,000cm2/g以下がより好ましく、4,500cm2/g以上8,500cm2/g以下がさらに好ましい。
【0064】
すべての原料を混練した水性スラリーを、型枠(必要に応じて上記の補強筋を予め埋設した型枠)に注入し、好ましくは50〜85℃で1時間以上かけて発泡・予備硬化(予備養生)する。かかる発泡・予備硬化(予備養生)は、蒸気養生室などの水分が蒸発を抑制した環境下で行うことが好ましい。得られた半硬化モルタルは、以下に制限されないが、例えば、軽量気泡コンクリートの製造に一般に用いられるワイヤー等で、必要に応じて任意の形状に切断された後に、オートクレーブを用いて高温高圧養生される。オートクレーブの条件としては、以下に制限されないが、160℃(ゲージ圧力:約0.52MPa)以上220℃(ゲージ圧力:約2.22MPa)以下が好ましい。
【0065】
本実施の形態により得られる低比重軽量気泡コンクリートは、従来の軽量気泡コンクリートが有する長期の耐候性、耐火性、耐不朽性や加工性などの性能を低下させることなく、建築材料としての必要強度を有し、低比重化に伴ってさらなる軽量化、断熱性及び気体透過率の向上を実現している。そのため、前記低比重軽量気泡コンクリートは、外壁材、床材、屋根材や内装材などに好適に用いられる。建築材料としての必要強度は、用途によって要求性能が異なるため、特に制限されないが、運搬などによる欠損を防止する観点から、圧縮強度として1.0N/mm2以上が好ましく、2.0N/mm2以上がより好ましい。さらに、汎用的に使用する観点も加味すると、JIS A5146を満たす3.0N/mm2以上がさらに好ましい。同一の嵩比重における圧縮強度の低下は、主に結晶性トバモライト量の減少に起因すると考えられる。結晶性トバモライトは、軽量気泡コンクリートを構成するものであるため、軽量気泡コンクリートの構造を規定する有効な指標であるが、結晶性トバモライトの絶対量そのものを測定することは困難である。
【0066】
そこで、結晶性トバモライトの絶対量の多寡を表す手法の一つとして、結晶性トバモライトの絶対量と相関があるとされる圧縮強度を、結晶性トバモライトの絶対量の代替指標として捉え、かかる圧縮強度に構造を規定する指標としての意味を持たせることができる。本実施の形態で用いる圧縮強度も、単に軽量気泡コンクリートの性能を表す指標であるだけでなく、軽量気泡コンクリートの構造を規定する指標としての意味も有する。また、別の手法として、粉末X線回折測定におけるトバモライトと石英との回折ピークの強度比を、結晶性トバモライトの絶対量の代替指標として捉え、かかる回折ピークの強度比に軽量気泡コンクリートの構造を規定する指標としての意味を持たせることができる。本実施の形態で用いる回折ピークの強度比(以下、「X線ピーク強度比」ともいう。)は、粉末X線回折による、石英の(101)面の回折ピーク強度に対するトバモライトの(220)面の回折ピーク強度として表され、1/4以上が好ましく、1/3以上がより好ましく、1/2以上がさらに好ましい。なお、本明細書における圧縮強度及び粉末X線回折の測定は、後述する実施例で挙げた方法を採用することとする。
【実施例】
【0067】
以下、本実施の形態に係る低比重軽量気泡コンクリートを実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
【0068】
[測定方法]
<嵩比重>
嵩比重は、物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルから100mm×100mm×100mmの試験体を発泡方向に平行に、発泡底部から最上部に至る部分から可能な数だけ採取し、各試験体の寸法と105±5℃で一定質量になるまで乾燥させた絶乾質量から算出した各試験体の嵩比重の平均値とする。
【0069】
<水銀圧入法による細孔径分布及び細孔量>
物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルの発泡底部から最上部に至る部分を破砕、分級して得た2〜4mm部分を105±5℃で一定質量となるまで乾燥し、絶乾状態にしたものを測定試料とした。この測定試料を、ユアサアイオニクス株式会社製「Pore Master−33」を用いて細孔径分布の測定を行った。その際、水銀と試料の接触角は130°、水銀の表面張力は484dyn/cmとして計算した。ここで、細孔量は得られた細孔径分布から、測定試料の固形分の単位質量(1g)に対する細孔直径0.008〜20μmの範囲の細孔体積(細孔総量)として求めた。
【0070】
<気泡量>
気泡量は、直接実測することが困難であるため、実測した嵩比重の逆数から、水銀圧入法により測定した細孔量(上述)と固形分の真密度(2.5)の逆数とを差し引いた値として求めた。
【0071】
<固形分に対する細孔の体積比>
固形分に対する細孔の体積比は、水銀圧入法により測定した細孔量を、固形分の真密度(2.5)の逆数で除した値として求めた。
【0072】
<平均気泡径>
物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルの中央部を切断し、その切断面をキーエンス株式会社製「デジタルマイクロスコープ VHX−600」で拡大し、得られた画像から気泡径を測定した。また、平均気泡径は、無作為に抽出した300点の気泡径の平均値とした。
【0073】
<軽量気泡コンクリートの外観性>
上記の平均気泡径が大きくなるほど、軽量気泡コンクリートの外観性が劣る。そこで、平均気泡径が、2.50mm以下の場合に外観性に優れ、2.50mmを超えた場合に外観性が劣ると評価した。
【0074】
<気体透過率>
物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルから円の中心が発泡方向と垂直になるように、直径50mm×高さ50mmの円柱試験体を採取し、20℃−60%RH下で一定質量となるように含水率を調整した後、東洋精機株式会社製「パーミアグラフ」で気体透過率を測定した。この時、試料におけるガスの流入側と流出側の差圧を1gf/cm2とした。
【0075】
<乾燥質量減少率>
物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルの発泡方向の高さの中央部から100mm×100mm×100mmの試験体を採取し、20℃−60%RH下で、3日間水中浸漬して取り出した直後に初期質量を測定した。その後、20℃−60%RH下で14日間放置(乾燥)してから質量(以下、「14日後質量」という。)を測定した。また、試験体は、105±5℃で一定質量になるまで乾燥させた絶乾質量を測定し、乾燥質量減少率(質量%)を下記式により算出した。なお、初期質量、14日後質量及び絶乾質量の単位はいずれも「g」である。
乾燥質量減少率={(初期質量−14日後質量)/絶乾質量}×100
【0076】
<圧縮強度>
JIS A5416に規定される軽量気泡コンクリートの圧縮強度試験方法に準じて測定した。物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルの発泡方向の高さの中央部から、100mm×100mm×100mmの試験体を採取し、70℃熱風循環式乾燥機中で含水率が10±2%になるまで乾燥した後、常温まで冷却した。試験体の寸法及び質量を測定した後、発泡方向に対して直角の方向から0.1〜0.2N/mm2/secの速度で荷重を加え、荷重の最大値を読み取り、圧縮強度(N/mm2)を下記式により算出した。
圧縮強度[N/mm2]=最大荷重[N]/加圧面積[mm2
また、圧縮試験後の試験体を105±5℃で一定質量になるまで乾燥させた絶乾質量及び圧縮試験時質量から、圧縮試験時含水率(%)を下記式により算出した。
【0077】
圧縮試験時含水率[%]={(試験時質量[g]−絶乾質量[g])/絶乾質量[g]}×100
【0078】
<軽量気泡コンクリートの粉末X線回折>
物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルの発泡底部から最上部に至る部分を破砕したものを乳鉢中で粉砕した後に、理学電気(株)製RINT2000において、CuのKα線を用いて測定した。測定条件は、加速電圧40kV、加速電流200mA、受光スリット幅0.15mm、走査速度4゜/分、及びサンプリング0.02゜であった。回折線は、グラファイトのモノクロメーターにより単色化した上でカウントした。
また、石英の(101)面の回折ピーク強度に対するトバモライトの(220)面の回折ピーク強度を表すX線ピーク強度比は、バックグラウンドを含めたトバモライトの(220)面の回折ピーク強度を、バックグラウンドを含めた石英の(101)面の回折ピーク強度で除することにより求めた。
【0079】
[実施例1]
本実施例の軽量気泡コンクリートは、下記表1の原料配合一覧及び下記表2の成型条件一覧に基づき、次の方法で製造した。愛知県産の珪石粉末に水を加え、生石灰粉末(河合石灰工業株式会社)、早強ポルトランドセメント(宇部セメント株式会社)、及び二水石膏を添加して攪拌し、スラリーとした。その後、ポリカルボン酸EOエステル系高性能減水剤(花王株式会社 TK−1000)及びアルケニルコハク酸塩(花王株式会社 ラテムルDSK)を加えて撹拌し、さらに金属アルミ粉末(大和金属工業株式会社)を添加し攪拌することにより、モルタルスラリーを得た。なお、前記ポリカルボン酸EOエステル系高性能減水剤は、上述のポリカルボン酸EOエステル系混和剤に相当する。
【0080】
得られたモルタルスラリーを、補強筋として幅554mm×長さ1,790mmのメタルラス(JIS A5505の平ラスに準拠)を型枠底板に対して垂直に、50mm間隔で8枚埋設した縦1850mm×横650mm×高さ700mmの型枠に注入した。体積膨張後に発泡・予備硬化(予備養生)してできた半硬化状の軽量気泡コンクリートブロックを、ピアノ線で幅600mm×長さ1,800mm×厚さ50mmのパネル8枚(メタルラスあり)と、幅600mm×長さ1,800mm×厚さ100mmのパネル1枚(メタルラスなし)とに切断した。
【0081】
この半硬化状の軽量気泡コンクリートパネルを、飽和水蒸気雰囲気下で180℃4時間オートクレーブ養生して、軽量気泡コンクリートパネルを得た。ここで得られた9枚の軽量気泡コンクリートパネルのうち、8枚がメタルラス入りパネルで、1枚は物性測定用の無筋パネルであった。ここで、本実施例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、下記表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通りである。
【0082】
[実施例2〜7]
本実施例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、実施例1と同様にして製造した。ここで、本実施例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通りである。
【0083】
[実施例8〜10]
本実施例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、混和剤として、アルケニルコハク酸塩(花王株式会社 ラテムルDSK)をオレイン酸カリウム(花王株式会社 FR−14)に代えた点以外は、実施例1と同様にして製造した。ここで、本実施例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通りである。
【0084】
[実施例11〜13]
本実施例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、混和剤として、アルケニルコハク酸塩(花王株式会社 ラテムルDSK)をメチルセルロース(信越化学工業株式会社 Hi−メトローズ65SH4000)に代えた点以外は、実施例1と同様にして製造した。ここで、本実施例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通りである。
【0085】
[実施例14]
本実施例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、混和剤としてオレイン酸カリウム(花王株式会社 FR−14)をさらに追加した点以外は、実施例1と同様にして製造した。ここで、本実施例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通りである。
【0086】
[実施例15]
本実施例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、混和剤として、メチルセルロース(信越化学工業株式会社 Hi−メトローズ65SH4000)をさらに追加した点以外は、実施例1と同様にして製造した。ここで、本実施例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通りである。
【0087】
[実施例16]
本実施例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、混和剤として、アルケニルコハク酸塩(花王株式会社 ラテムルDSK)をオレイン酸カリウム(花王株式会社 FR−14)とメチルセルロース(信越化学工業株式会社 Hi−メトローズ65SH4000)とに代えた点以外は、実施例1と同様にして製造した。ここで、本実施例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通りである。
【0088】
[比較例1]
本比較例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、愛知県産珪石粉末に水を加え、生石灰粉末(河合石灰工業株式会社)、普通ポルトランドセメント(宇部セメント株式会社)、及び二水石膏を添加して攪拌した。その後、金属アルミ粉末(大和金属工業株式会社)を添加して攪拌したモルタルスラリーを、補強筋を埋設していない縦150mm×横250mm×高さ150mmの型枠に注入した。その後、発泡・予備硬化(予備養生)してできた半硬化状の軽量気泡コンクリートブロックを、飽和水蒸気雰囲気下で180℃、4時間オートクレーブ養生して、物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルのみを得た。
ここで、本比較例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通り、実施例1〜16の軽量気泡コンクリートと比較すると、細孔量や気泡量は近似しているものの気体透過率が小さかった。このことから、空隙構造が異なると共に平均気泡径が大きく外観性が劣ることを確認した。
【0089】
[比較例2]
本比較例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、発泡・予備硬化を−53.3kPaで実施した点以外は、比較例1と同様にして製造した。
ここで、本比較例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通り、実施例1〜16の軽量気泡コンクリートと比較すると、細孔量や気泡量は近似しているものの気体透過率が小さかった。このことから、空隙構造が異なると共に平均気泡径が大きく外観性が劣ることを確認した。
【0090】
[比較例3]
本比較例の軽量気泡コンクリートは、表1の原料配合一覧及び表2の成型条件一覧に基づき、愛知県産珪石粉末に水を加え、軽量気泡コンクリート製造工程で発生した半硬化状物の解砕屑、生石灰粉末(河合石灰工業株式会社)、早強ポルトランドセメント(宇部セメント株式会社)、及び二水石膏を添加して攪拌し、スラリーとした。その後、メチルセルロース(信越化学工業株式会社 Hi−メトローズ65SH4000)及び高級アルコールの硫酸エステル(花王株式会社 エマール40)を加えて撹拌し、さらに金属アルミ粉末(大和金属工業株式会社)を添加し、攪拌してモルタルスラリーを得た。このスラリーを、補強筋を埋設していない縦150mm×横250mm×高さ150mmの型枠に注入後、発泡・予備硬化してできた半硬化状の軽量気泡コンクリートブロックを、飽和水蒸気雰囲気下で180℃4時間オートクレーブ養生して、物性測定用の軽量気泡コンクリート無筋パネルのみを得た。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
ここで、本比較例で得られた軽量気泡コンクリートの諸物性は、表3の構造一覧及び表4の物性・評価一覧に示す通り、実施例1〜16の軽量気泡コンクリートと比較すると、細孔量や気泡量が異なるだけでなく、気体透過率が実測不可能なほど大きかった。このことから、実施例・比較例間で、空隙構造が異なることを確認すると共に、外観性や成型性に影響する平均気泡径が顕著に異なることを確認した。
【0096】
以上より、実施例1〜16で得られた低比重軽量気泡コンクリートは、特異的で優れた気体透過率を有する空隙構造を形成し、且つ平均気泡径が小さいため優れた外観性や成型性を発揮し得ることを明らかにした。また、特異的で優れた気体透過率を有する空隙構造、及び小さな平均気泡径に起因して、乾燥速度(乾燥質量減少率)及び強度物性が顕著に向上することを明らかにし、これにより優れた吸音性能、調湿性能及び耐凍害性能といった諸性能が発揮され得る。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係る低比重軽量気泡コンクリートは、従来の軽量気泡コンクリートが有する耐久性、耐火性、断熱性や加工性などの性能を損なうことなく、著しく外観性や気体透過率に優れる。これにより、乾燥速度(乾燥質量減少率)が向上し、軽量気泡コンクリート内部の含水率の差が低減することに加えて、吸音性能、調湿性能及び耐凍害性能の向上が期待できる。そのため、建築材料、中でも外壁材、内壁材、床材や屋根材などに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行い、その後半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することにより得られる軽量気泡コンクリートにおいて、
嵩比重が0.20以上0.45未満であり、且つ気体透過率が0.01cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以上3.0cm3・cm/(cm2・sec・g/cm2)以下の空隙構造を有する、軽量気泡コンクリート。
【請求項2】
気泡の量が、固形分の単位質量当たり、1.00cm3/g以上5.00cm3/g以下であり、
細孔の量が、固形分の単位質量当たり、0.55cm3/g以上0.90cm3/g以下である、請求項1に記載の軽量気泡コンクリート。
【請求項3】
前記固形分に対する前記細孔の体積比が1.25以上2.25以下である、請求項2に記載の軽量気泡コンクリート。
【請求項4】
乾燥質量減少率が40〜95質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の軽量気泡コンクリート。
【請求項5】
予め前記型枠中に補強筋を埋設する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の軽量気泡コンクリート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の軽量気泡コンクリートの製造方法であって、
珪酸質原料及び石灰質原料を含む水性スラリーに、ポリカルボン酸EOエステル系混和剤と、アルケニル又はアルキルコハク酸の金属塩、一価の脂肪酸の金属塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種以上とを少なくとも添加すること、
さらに発泡剤を加え型枠に注入して成型を行うこと、及び
半硬化状態になったものをオートクレーブ養生することを含む、軽量気泡コンクリートの製造方法。

【公開番号】特開2011−79686(P2011−79686A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231500(P2009−231500)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】