説明

軽量骨材貯蔵設備

【課題】 配合使用する軽量粗骨材に起因した軽量コンクリートの品質や容重のバラツキを防止する上で、軽量骨材貯蔵施設から取出された採取バッチ毎の軽量粗骨材の粒径のバラツキを充分抑制することができる軽量骨材貯蔵設備を提供する。
【解決手段】 水平面に対し傾斜角が15〜25度の傾斜面と、該傾斜面下端に接する水平面を有する軽量骨材貯蔵設備であって、軽量骨材の取出し孔を該傾斜面の水平面からの高さの異なる複数の位置と水平面に有することを特徴とする軽量骨材貯蔵設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した品質の軽量コンクリートを製造するために用いる軽量骨材の貯蔵供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートで用いられる骨材は、砂、砂利や採石などの一般に緻密で強度も高い普通骨材の他、コンクリート建築物等の軽量化を行うため、軽量骨材も頻繁に使用される。軽量骨材は高気孔率とすることで軽量化されているものが殆どであり、特に、無機質原料の造粒物を加熱発泡させて空隙を形成させた人工軽量骨材では、粒度の大きいものほど発泡容積を大きくできるので骨材容重の大幅低減が可能である。一方で、粒径5mm以上の人工軽量粗骨材では、成分的に同じ材質でも、比較的小さい粒径の骨材の方が比較的大きい粒径の骨材よりも密度が高くなるという傾向が顕著に現れる。一般に、生コンクリート工場での骨材の貯蔵は、骨材販売先より搬送された骨材をストックヤード(貯蔵施設)に包装や袋詰め等をされずにそのまま荷下ろしされ、積載放置される。成分的に同じ材質からなるものであっても、異なる粒径のものが混在した人工軽量粗骨材では、ストックヤードに荷下ろしされて、積載されたままであると、密度の高い、従って粒径が比較的小さい骨材が積載物の下部へ、また密度の低い粒径が比較的大きい骨材が上部へ偏在する傾向がある。骨材採取時にストックヤード内の積載物を満遍なく混合すれば良い。しかるに、通常は、ストックヤード内に1箇所設けられた取出し口から、特に混合等を行わずに、単に必要量の骨材を採取しているのが実情である。尚、取出し口の多くは、開口することでストックヤード面の下に設けたフィーダー上に骨材が落下し、採取できる構造となっている。(例えば、非特許文献1参照。)このような状況で採取される軽量粗骨材は、採取バッチによって粗骨材粒径の平均値に差が見られる可能性が高く、特に断続的に骨材を採取するような場合では、前半の採取バッチでは粒径の小さい骨材含有割合が高く、後半の採取バッチでは粒径の小さい骨材含有割合が低くなるといった事態が起こり易い。このような採取骨材をそのまま粗骨材に使用して軽量コンクリートを製造すると、でき上がった軽量コンクリートの容重がバラツキ、また硬化後の品質面でも有意差が生じる虞があった。
【非特許文献1】土木学会コンクリート委員会編、「コンクリートライブラリー121吹付けコンクリート指針(案)[トンネル編]」、第1版、社団法人土木学会、2006年7月8日、p.48−p.50
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、配合使用する軽量粗骨材に起因した軽量コンクリートの品質や容重のバラツキを防止する上で、軽量骨材貯蔵施設から取出された採取バッチ毎の軽量粗骨材の粒径のバラツキを充分抑制することができる軽量骨材貯蔵設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記課題解決の為、検討を重ねた結果、搬送されてきた軽量粗骨材を、特定の角度を有する傾斜面に移すことによって、該傾斜面上を軽量骨材が回転落下し、密度の低いものと高いものが上下層状に偏在した状態にならずに、密度の高いものは傾斜面下端からそれに続く水平面上に、また密度の比較的低いものほど傾斜面上の上部面上に留まり易いという知見を得、このような傾斜面に水平面からの高さの異なる複数の位置に軽量骨材の取出し孔を設けることによって、同じ孔から得られる骨材粒径は常にほぼ一定の値となるため、それぞれの孔からの骨材採取量を一定にすれば、各孔から同時に得られた骨材粒度分布は採取バッチに拘わらず均一となったことから、採取バッチ毎の骨材粒径の変動を抑制でき、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、水平面に対し傾斜角が15〜25度の傾斜面と、該傾斜面下端に接する水平面を有する軽量骨材貯蔵設備であって、軽量骨材の取出し孔を該傾斜面の水平面からの高さの異なる複数の位置と水平面に有することを特徴とする軽量骨材貯蔵設備。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、貯蔵された軽量粗骨材を取り出しても、常にほぼ一定の粒度分布の軽量粗骨材が取り出せるため、これを使用した軽量コンクリートも製造バッチ毎の品質変動が抑制されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の軽量骨材貯蔵設備は、少なくとも水平面に対し傾斜角が15〜25度の傾斜面と、該傾斜面下端に接する水平面を有するものからなる。傾斜角が15度未満では骨材密度差によって傾斜面上の高さ位置に留まる骨材を振り分けることが困難になるので好ましくない。また、傾斜角が25度を超えると、傾斜面の下方まで、殆どの骨材が落下してしまい、密度の低い骨材と高い骨材が上下層状に偏在することが解消し難くなるので好ましくない。また、傾斜面の大きさは特に制限されない。従って、傾斜面上端部の水平面からの高さも制限されない。実用上の観点からはこの高さは1.5m程度までとするのが好ましい。また、水平面の大きさも特に制限されない。搬入された骨材が傾斜面からはみ出して直接落下するのを防ぐため、これを囲むような側壁等を設けることが好ましい。水平面も傾斜面との接する部分を除き側壁等で囲まれるのが好ましい。
【0008】
また、本発明の軽量骨材貯蔵設備は、前記の傾斜面と水平面に、軽量骨材を取り出すための取出し孔を有する。傾斜面に設ける取出し孔は水平面からの高さの異なる複数の位置に設ける。取出し孔をこのように設けることによって、密度差がある骨材を常にほぼ同じ割合で採取可能となるので、採取バッチ毎の骨材粒度分布の変動を抑制することができる。傾斜面に設ける取出し孔の位置高さは特に限定されるものではない。また、異なる2ヶ所以上の高さの位置に取出し孔が設けられている限り、その設置個数も制限されない。好ましい例として、傾斜面全体の中間の高さとなる位置(以下、中部位置という。)、中部位置と傾斜面上端との中間付近の位置(以下、上部位置という。)、及び中部位置と傾斜面下端との中間付近の位置(以下、下部位置という。)の3箇所に設けることが挙げられる。より好ましくは、上部と中部の略中間と、下部と中部の略中間にさらに1箇所ずつ設け5箇所とする。また、水平面にも骨材の取出し孔を1ヶ所設けることを必須とする。水平面ならそのどの位置に設けても構わないが、好ましくは傾斜面上端から下端までの長さの概ね半分程度に相当する傾斜面下端からの距離の水平面上の位置とする。傾斜面に設ける取出し孔が1箇所しかないと、その位置に留まった特定の密度範囲、即ち特定の粒度範囲のものだけを中心とした軽量骨材の採取が行われるため好ましくない。また、水平面に取出し孔が無いと、最も密度が高い範囲の骨材群が採取されなくなる虞があるので好ましくない。
【0009】
前記、取出し孔自体の構造は、例えば、骨材積載面に開けられた穴のような構造とし、この穴を骨材取り出し時に開口することによって、下部に設けられたベルトコンベヤーやフィーダー等の供給装置上に骨材を落下させて取り出せるような構造が望ましい。この例示以外の構造でも良く、骨材を積載面から落下採取できるような構造であれば特に限定されない。各取出し孔は、一定時間開口することで、所望の量の骨材が取り出せるように計量機能が付帯され制御できるものが望ましいが、全て同じ構造の取出し孔とし、このような計量機能が無いものでも良く、機能面で特に限定されるものではない。供給装置によって運び出される軽量粗骨材は、軽量コンクリートの原料としてそのまま配合使用することができる。
【0010】
また、本発明の軽量骨材貯蔵設備で対象とする骨材は、軽量の粗骨材とする。具体的には絶乾密度2.0以下で、粒径5mm以上の骨材が対象となる。絶乾密度2.0を超える比較的重い骨材では、傾斜面に留まれずに下方まで転がり落ちてしまうため適さない。また、粒径5mm未満の細骨材では粗骨材のような粒径による顕著な密度差が現れ難いため適さない。密度の下限は制限されない。また、粒径の上限は骨材強度上の制約から、実用的には最大粒径20mm程度とする。
【実施例】
【0011】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明するが、本発明は以下に表す実施例に限定されるものではない。
【0012】
幅4m×奥行き4m×長さ4mの平坦面を有する貯蔵板を用い、該板には奥行き方向に一方の端から1m(A口)、2m(B口)及び3m(C口)の位置の3箇所に50cm×50cm角の骨材開閉可能な取出し口を設け、この貯蔵板を表1に示す傾斜角となるよう水平面に設置した。また水平面には傾斜板との接点から約1mの位置に同様の骨材取出し口1箇所(D口)を設けた。傾斜面の上端付近から粒径5〜10mmの骨材(平均密度1.9)と粒径10〜15mmの骨材(平均密度1.4)が等重量混在してなる軽量粗骨材を5m3搬入した。各傾斜角度毎に、4箇所全ての取出し口を開口して軽量粗骨材を採取した場合と、A口、B口及びC口を閉じ、D口のみ開口させて軽量粗骨材を採取した場合の採取軽量粗骨材を用いて、それぞれ軽量コンクリートを作製した。軽量コンクリートは、普通ポルトランドセメント199kg、6号砂(普通細骨材)410kg、採取した軽量粗骨材265kg及び水94kgを、強制2軸ミキサに投入し、1分間混合した。尚、配合使用した軽量粗骨材は、傾斜角と取出し口が異なる毎に1つの水準とし、各水準について軽量粗骨材の採取を断続的に5回行い、それぞれの水準と骨材採取バッチ毎に軽量コンクリートを作製した。
【0013】
【表1】

【0014】
得られたフレッシュ軽量コンクリートに対し、スランプと空気量(第1バッチで採取した軽量粗骨材を使用したコンクリートのみ対象)を、それぞれJIS A1101とJIS A1116に準じた方法で測定し、さらに単位容積質量(第1、第3、及び第5バッチでそれぞれ採取した軽量粗骨材を使用したコンクリートを対象)をJIS A1116に準じた方法で何れも20℃で測定した。これらの結果を表2に表す。
【0015】
【表2】

【0016】
表2の結果より、本発明を適用して採取した軽量粗骨材を用いた軽量コンクリートは、軽量粗骨材の採取バッチに拘わらず実質一定の単位容積質量が得られ、またスランプや空気量の採取条件による差も殆ど見られなかった。これに対し、本発明外の貯蔵設備に置かれた軽量粗骨材を用いた軽量コンクリートは、特に軽量粗骨材の採取バッチ毎のコンクリート単位容積質量のバラツキが大きく、使用骨材がバッチ毎に異なる粒度分布を呈していることが主要原因となっていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面に対し傾斜角が15〜25度の傾斜面と、該傾斜面下端に接する水平面を有する軽量骨材貯蔵設備であって、軽量骨材の取出し孔を該傾斜面の水平面からの高さの異なる複数の位置と水平面に有することを特徴とする軽量骨材貯蔵設備。

【公開番号】特開2009−155103(P2009−155103A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338674(P2007−338674)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】