説明

輝度むら低減装置および輝度むら低減方法

【課題】できるだけ小容量の補正データで、表示画像の品位を落とすことなく輝度むらを低減できる「輝度むら低減装置および輝度むら低減方法」を提供する。
【解決手段】6ビット階調から8ビット階調にビットアップ処理して生成した評価用画像データにおいて、最多分布の輝度値を有する最多エリアを除き、より大きい輝度値の高輝度エリアと、より小さい輝度値の低輝度エリアとについて、ビットアップ処理の際に追加した下位2ビットに対する補正値を求めることにより、最多エリアについては補正値を不要にするとともに、1つ当たりの補正値を2ビットのみで構成できるようにして、補正データの容量を小さく抑える。また、画像全体の輝度値を一律に高くせず、高輝度エリアと低輝度エリアの輝度値を最多エリアの輝度値に近づけるように画素値を補正することで、画像が全体として白っぽく色飛びするという画質の低下を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度むら低減装置および輝度むら低減方法に関し、特に、表示画像の画素値を補正することによって、表示パネルに画像を表示した場合の輝度むらを低減される装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を表示させるための装置として、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、有機ELディスプレイなどの表示パネルを備えた表示装置が用いられている。一般に、これらの表示装置においては、表示パネルに画像を表示させると輝度むらが生じるという問題がある。例えばLCDの場合、バックライトユニット自体の光学むら(発光分布のバラツキ)や、液晶ガラス自体の歪むらなどによって輝度むらが生じる。
【0003】
このような輝度むらは、表示画像の画質に大きな影響を与える。特に、夜間など周囲が暗い環境で画像を表示する場合、暗い階調(低階調)側での輝度むらが目立つ。そのため、輝度むらを低減することが重要な課題となっている。この課題に対応するため、従来、輝度むらを低減させるための技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、輝度むらがあっても、明るい階調(高階調)側では人の目には分かりにくいという性質を利用して、表示画像の輝度を高くして全体的に明るくし、輝度むらを目立たなくするという技術が存在する。これは、例えば6ビット階調の画像データが入力された場合、当該画像データの各画素に“000002”という値を加算することによって輝度を2階調分高くし、画像を全体的に明るくするという手法である。
【0005】
しかしながら、この手法では、表示画像の輝度が全体的に明るい階調側へシフトするため、全体として画像が白っぽくなってしまう。そのため、黒などの低階調を基調として重厚なイメージを意図したはずの画像が、全体として色が少し薄くなった感じで白っぽくなってしまい、画像としての品位が低下してしまうという問題があった。
【0006】
また、複数の画素から成る所定エリア内の輝度値の平均値を算出し、当該所定エリアの輝度値を平均値に補正することによって輝度むらを低減する技術も存在する。例えば、図10(a)に示すように、所定エリアを形成する9個の画素のうち、左下の画素の輝度値が3.0cd/m、残り8個の画素の輝度値が1.0cd/mであったとする。この場合、当該9個の画素値の平均値を求めると、1.22cd/mとなる。そこで、図10(b)に示すように、当該9個の画素値を全て1.22cd/mに補正する。
【0007】
このように平均値を算出して輝度値を補正する技術では、補正前は図10(a)のようにエリア内の殆どの画素で1.0cd/mであったのを、補正後は図10(b)のようにエリア内の全画素で1.22cd/mまで輝度を上げる結果となっている。そのため、先ほどの従来技術と同様に、表示画像の輝度が全体的に明るい階調側へシフトすることになるため、全体として色が少し薄くなった感じで白っぽくなってしまうという問題があった。
【0008】
これ以外にも、輝度むらを低減させるための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1には、表示画像を分割した複数のブロックのうち輝度むらが生じているブロックの画素値を補正して輝度を上げる、または輝度むらが生じているブロック以外の画素値を補正して輝度を下げることによって、輝度むらを低減させる手法が記載されている(図10および図11)。
【0009】
しかしながら、この手法では、他のブロックに比べて輝度が低いブロックの画素値を大きくして当該他のブロックに合わせるか(図10)、他のブロックに比べて輝度が高いブロックの画素値を小さくして当該他のブロックに合わせる(図11)ため、輝度値の差が大きい場合(輝度むらの程度が大きい場合)には、補正値自体が大きい値となる。そのため、画素値を大きくしたブロックについては明るくなり過ぎて画像がかなり白っぽくなってしまい、逆に、画素値を小さくしたブロックについては暗くなり過ぎて画像がかなりくすんだ感じになってしまうという問題があった。
【0010】
また、上記特許文献1の手法では、あらかじめ決められたブロックを単位として輝度値の補正を行っている。その一方で、実際の輝度むらは、必ずしもブロックを単位として生じる訳ではない。そのため、ブロックのサイズを大きく設定すると、精細に輝度むらを低減させることができない。より精細に輝度むらを減少させるためには、細かいブロックに分割する必要があり、画像処理部の回路規模が増大するという問題が生じる。
【0011】
後者の問題を解消するために、特許文献1に記載の発明では、表示パネルに各特定画素値の表示画像を表示した場合の各特定画素位置の測定輝度をあらかじめ記憶しておく。そして、目標輝度(ガンマ特性)および測定輝度と表示パネルの階調特性とに基づいて補正データを算出し、算出した補正データを用いて、表示パネルに表示する画像の各画素値を補正するようにしている。
【0012】
また、特許文献2に記載の発明では、表示装置に所定の評価用画像を表示させたときの表示画面を撮影して、表示画面における輝度分布を取得する。そして、当該取得した輝度分布に基づいて、表示装置における理想輝度分布を算出し、理想輝度分布と輝度分布とに基づいて輝度むら補正データを算出するようにしている。
【0013】
しかしながら、特許文献1,2に記載の発明では、膨大な補正データが必要になる。そのため、その補正データを算出するために多くの時間がかかり、算出した補正データを記憶しておくための記録媒体として大きな容量が必要になるという問題があった。
【0014】
また、特許文献1,2に記載の発明においても、目標輝度(ガンマ特性)と測定輝度との差が大きい場合、理想輝度分布と測定輝度分布との差が大きい場合には、補正値自体が大きい値となる。そのため、画素値を大きくした部分については明るくなり過ぎて画像がかなり白っぽくなってしまい、逆に、画素値を小さくした部分については暗くなり過ぎて画像がかなりくすんだ感じになってしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−84729号公報
【特許文献2】特開2007−88980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、できるだけ小容量の補正データで、表示画像の品位を落とすことなく輝度むらを低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した課題を解決するために、本発明では、Mビットより数ビット大きいNビット階調の評価用画像データを表示装置に表示させたときの輝度むら分布において、最も多く分布された輝度値を有する画素のエリアを最多エリアとして、最多エリアの輝度値より大きい輝度値を有する画素の高輝度エリアと、最多エリアの輝度値より小さい輝度値を有する画素の低輝度エリアとについて、Nビットのうち下位数ビット(N−Mビット)に対する補正値を取得して記憶させておく。そして、Mビット階調の画像データに下位数ビットを加えることによって生成したNビット階調の画像データを対象として、高輝度エリアについては画像データの下位数ビットに補正値を減算し、低輝度エリアについては画像データの下位数ビットに補正値を加算することによって補正を行うようにしている。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成した本発明によれば、最も多く分布された輝度値を有する画素の最多エリアについては補正データを取得する必要がなく、最多エリア以外の高輝度エリアおよび低輝度エリアについてのみ補正データを取得すればよい。しかも、その補正データを構成する補正値は、Nビットのうち下位数ビットに対して加算または減算すべき値を示すものであるから、1つの補正値は数ビットのみで構成することができる。これにより、補正データの容量を小さく抑えることができる。
【0019】
また、本発明によれば、画像全体の輝度値を一律に高くしているわけではないし、最多エリアについては画素値を何ら補正していないので、画像が全体として白っぽくなってしまうという画質の低下を回避することができる。また、本発明では、最多エリアの輝度値と高輝度エリアの輝度値との差そのもの、あるいは最多エリアの輝度値と低輝度エリアの輝度値との差そのものを補正値とするのではなく、Mビット階調の画像データをNビット階調の画像データにビットアップするときに加えられる下位数ビットに対して加算または減算すべき値を補正値としている。そのため、その補正値が大きな値になり過ぎることはない。これにより、画素値を補正することによって、その補正した部分の画像が白っぽくなり過ぎたり、くすんだ感じになり過ぎたりしてしまうことも回避することができる。
【0020】
以上のように、本発明によれば、できるだけ小容量の補正データで、表示画像の品位を落とすことなく輝度むらを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態による輝度むら低減装置を備えた画像表示システムの構成例を示す図である。
【図2】中級モデルの画像生成部を適用した場合の本実施形態による画像処理部(輝度むら低減装置)の処理例を示す図である。
【図3】本実施形態による画像処理部(輝度むら低減装置)の機能構成例を示すブロック図である。
【図4】本実施形態のエリア特定部により特定される最多エリア、高輝度エリア、低輝度エリアの一例を示す図である。
【図5】本実施形態の補正値を説明するための図である。
【図6】本実施形態による画像処理部(輝度むら低減装置)の動作例を示すフローチャートであり、補正データを求める際の動作例を示す図である。
【図7】本実施形態による画像処理部(輝度むら低減装置)の動作例を示すフローチャートであり、画像データの補正を行う際の動作例を示す図である。
【図8】本実施形態において補正可能な階調の範囲を示す図である。
【図9】普及モデルの画像生成部を適用した場合の本実施形態による画像処理部(輝度むら低減装置)の処理例を示す図である。
【図10】輝度むらを低減する従来技術の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による輝度むら低減装置を備えた画像表示システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の画像表示システムは、画像生成部10、画像処理部20およびLCD30を備えて構成されている。ここで、画像処理部20が本実施形態の輝度むら低減装置に相当する。
【0023】
本実施形態の画像表示システムは、例えば車両に搭載されるものである。車載システムの場合、ディスプレイの画像データ入力インタフェースは、24ビット入力が主流になっている。すなわち、赤色8ビット(R0〜7)、緑色8ビット(G0〜7)、青色8ビット(B0〜7)の画像データ入力インタフェースである。本実施形態のLCD30も、24ビットの画像データ入力インタフェースを持つものとする。
【0024】
これに対して、画像データの送り出し側である画像生成部10は、18ビットの画像データ出力インタフェースを持つものとする。すなわち、赤色6ビット(R0〜5)、緑色6ビット(G0〜5)、青色6ビット(B0〜5)の画像データ出力インタフェースである。
【0025】
一般に、車載用の画像生成部10としては、モデルに応じて以下の3種類の出力形式がある。
1.高級モデル:24ビット=8ビット×RGB→16,777,216色
2.中級モデル:18ビット=6ビット×RGB→262,144色
3.普及モデル:16ビット=5ビット×RB+6ビット×G→65,536色
最近では、コスト削減や画像生成時間の短縮などを目的として、少ない階調数(色数)の中級モデルまたは普及モデルの採用が増えている。そこで、本実施形態では一例として、中級モデルの画像生成部10を用いる場合について説明する。
【0026】
画像生成部10の出力ビット数(RGB各6ビット)とLCD30の入力ビット数(RGB各8ビット)とが合わないため、画像処理部20は、画像生成部10から入力される画像データを6ビット階調から8ビット階調に変換する処理(以下、ビットアップ処理という)を行う。具体的には、画像処理部20は、6ビット階調の画像データに対して、下位に2ビットを加えることによって8ビット階調の画像データを生成する。
【0027】
図2は、中級モデルの画像生成部10を適用した場合における画像処理部20の処理例を示す図である。図2(a)は従来の処理例を示し、図2(b)は本実施形態の処理例を示している。図2(a)に示すように、従来は、単純に下位2ビットに“00”という値を追加していた。これに対して本実施形態では、図2(b)に示すように、2ビットで表せる4つの値(00,01,10,11)のうち何れかを補正値として用いることにより、画像データの輝度むらを低減するようにしている。具体的な処理については、以下に説明する。
【0028】
図3は、本実施形態による画像処理部20(輝度むら低減装置)の機能構成例を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態の画像処理部20は、階調数変換部21、補正演算部22、輝度むら測定部23、エリア特定部24、補正データ取得部25および補正データ記憶部26を備えて構成されている。なお、図2(a)に示す従来の処理は、階調数変換部21のみで実現される。これに対して、図2(b)に示す本実施形態の補正を行うために、階調数変換部21に加えて、補正演算部22、輝度むら測定部23、エリア特定部24、補正データ取得部25および補正データ記憶部26を設けている。
【0029】
なお、図3に示す画像処理部20は、実際にはコンピュータのCPUあるいはMPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。当該プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、DVD、不揮発性メモリカード等を用いることもできる。また、当該プログラムをインターネット等のネットワークを介して画像処理部20にダウンロードすることも可能である。
【0030】
階調数変換部21は、Mビット階調(Mは正の整数)の画像データを入力し、下位に数ビットを加えることによってNビット階調(Nは正の整数でN>M)の画像データに変換する。本実施形態では、階調数変換部21は、画像生成部10から6ビット階調の画像データを入力し、下位に2ビット(“00”の値)を加えることによって8ビット階調の画像データに変換する。そして、このようにして生成した8ビット階調の画像データを補正演算部22に出力する。
【0031】
画像生成部10により生成された画像データをLCD30に表示する場合は、階調数変換部21は、RGBの各色から成る6ビット階調の表示用画像データを画像生成部10から入力し、これをRGBの各色から成る8ビット階調の表示用画像データに変換して補正演算部22に出力する。補正演算部22は、図2(b)に示したように、8ビット階調の画像データを構成している下位2ビット(階調数変換部21により加えられた部分)を適当な値に補正して、補正後の表示用画像データをLCD30に出力する。
【0032】
一方、下位2ビットの補正値を求める場合は、階調数変換部21は、RGBの各色から成る6ビット階調の評価用画像データを画像生成部10から入力し、これをRGBの各色から成る8ビット階調の評価用画像データに変換して補正演算部22に出力する。この場合、補正演算部22は、下位2ビットに対する補正を行わず(“00”の値のまま)、未補正の評価用画像データをLCD30に出力する。
【0033】
本実施形態において、6ビット階調の評価用画像データは、全画素において、真っ黒から1階調目のデータ“000001”であるものとする。この場合、階調数変換部21は、“000001”の下位側に2ビットの値“00”を加えることによって8ビット階調の評価用画像データ“00000100”を生成し、補正演算部22に出力する。補正演算部22は、この評価用画像データ“00000100”に補正を加えず、そのままLCD30に出力する。なお、評価用画像データとして真っ黒のデータ“000000”を用いないのは、真っ黒の場合は“000000”の画像データを用いる代わりに、バックライト自体を消すことによって対応する場合があるからである。
【0034】
輝度むら測定部23は、階調数変換部21により生成された8ビット階調の評価用画像データをLCD30に表示させたときの輝度を画素毎に測定し、表示画面における輝度むら分布を取得する。ここで言う輝度むら分布とは、LCD30の画面に表示された画像データのどの画素領域にどのような輝度むらが存在しているかを表すものである。なお、画素毎の輝度は、例えば公知の2次元色彩輝度計を用いて測定することが可能である。
【0035】
評価用画像データとして1階調目のデータ“00000100”をLCD30に全画面表示させているので、仮に輝度むらが全くなければ、輝度むら測定部23により測定される各画素の輝度値は全て同じ値となる。これに対して、輝度むらがある場合は、輝度むらが生じている画素領域の画素値は、他の画素領域の画素値と異なる値となる。輝度むら測定部23は、同じ輝度値を有する画素どうしをグルーピングすることにより、輝度むら分布を取得する。
【0036】
エリア特定部24は、輝度むら測定部23により取得された輝度むら分布において、最も多く分布された輝度値を有する画素のエリアを最多エリア、当該最多エリアの輝度値より大きい輝度値を有する画素のエリアを高輝度エリア、当該最多エリアの輝度値より小さい輝度値を有する画素のエリアを低輝度エリアとして特定する。
【0037】
図4は、最多エリア、高輝度エリア、低輝度エリアの一例を示す図である。図4の例では、例えば0.055cd/mの輝度値を有する画素が画像データ中で最も多く分布しており、その分布領域が最多エリア31として特定されている。また、最多エリア31の輝度値より大きい0.110cd/mの輝度値を有する画素の分布領域が高輝度エリア32として特定され、最多エリア31の輝度値より小さい0.018cd/mの輝度値を有する画素の分布領域が低輝度エリア33として特定されている。
【0038】
なお、ここでは説明の便宜上、最多エリア31の輝度値より大きい輝度値が一律的に0.110cd/mであり、1つの高輝度エリア32が特定される例を示したが、これに限定されない。最多エリア31の輝度値より大きい輝度値が複数あるときは、それぞれの輝度値毎に別の高輝度エリア32−1,32−2,32−3,・・・が特定される。低輝度エリア33についても同様である。
【0039】
補正データ取得部25は、エリア特定部24により特定された高輝度エリア32および低輝度エリア33について、階調数変換部21により加えられた下位2ビットに対する補正値を取得する。そして、高輝度エリア32および低輝度エリア33の位置と補正値との対応関係を補正データとして生成し、補正データ記憶部26に記憶させる。
【0040】
具体的には、補正データ取得部25は、最多エリア31の輝度値と高輝度エリア32の輝度値との差の大きさに応じて、下位2ビットの値としてとり得る値の中から何れかの値を高輝度エリア32の補正値として取得する。また、補正データ取得部25は、最多エリア31の輝度値と低輝度エリア33の輝度値との差の大きさに応じて、下位2ビットの値としてとり得る値の中から何れかの値を低輝度エリア33の補正値として取得する。
【0041】
ここで、補正値の求め方について詳しく説明する。仮に、画像生成部10から真っ白のデータ“111111”が出力された場合、画像処理部20により下位2ビットに“00”が付加され、“11111100”の画像データ(階調=252)がLCD30に表示される。このときの輝度値が仮に500cd/mだとする。
【0042】
一方、上述のように、真っ黒から1階調目の画像データ“000001”が画像生成部10から出力された場合、画像処理部20により下位2ビットに“00”が付加され、“00000100”の画像データ(階調=4)がLCD30に表示される。このときの輝度値Xは、X=(4/252)γ*500なる式で求められる。γ特性が標準の2.2であるとすると、輝度値Xは0.055cd/mとなる。
【0043】
ここで、階調1〜7の輝度値をそれぞれ求めると、図5のようになる。上述のように、階調4の場合の輝度値は、下位2ビットに“00”を付加する場合の輝度値を示している。これに対して、階調1〜3の場合の輝度値は、下位2ビットに“00”を付加した後、補正値として“11”、“10”または“01”の何れかを減算する場合の輝度値を示している。一方、階調5〜7の場合の輝度値は、下位2ビットに“00”を付加した後、補正値として“01”、“10”または“11”の何れかを加算する場合の輝度値を示している。
【0044】
この図5から分かるように、例えば最多エリア31の輝度値が0.055cd/mであり、高輝度エリア32の輝度値が0.110cd/mであった場合は、下位2ビットから“11”を減算すると、0.110cd/m−0.052cd/m=0.058cd/mとなり、最多エリア31の輝度値0.055cd/mとの差(輝度むら)を小さくすることができる。よって、この場合における高輝度エリア32の補正値は“11”とする。
【0045】
また、低輝度エリア33の輝度値が0.018cd/mであった場合は、下位2ビットに“01”を加算すると、0.018cd/m+0.035cd/m=0.053cd/mとなり、最多エリア31の輝度値0.055cd/mとの差(輝度むら)を小さくすることができる。よって、この場合における低輝度エリア33の補正値は“01”とする。
【0046】
この例の場合、補正データ取得部25は、高輝度エリア32の画素位置と補正値“11”とを関連付けるとともに、低輝度エリア33の画素位置と補正値“01”とを関連付けることによって補正データを生成し、当該補正データを補正データ記憶部26に記憶させる。
【0047】
以上のようにして補正データが補正データ記憶部26に記憶された後、補正演算部22は、階調数変換部21により生成された8ビット階調の表示用画像データを対象として、補正データ記憶部26に記憶された補正データに基づいて、高輝度エリア32については補正値を減算し、低輝度エリア33については補正値を加算することによって輝度むらの補正を行う。そして、補正後の画像データをLCD30に出力して表示させる。このようにして表示される画像は、補正により輝度むらが低減された状態となっている。
【0048】
図6および図7は、本実施形態による画像処理部20(輝度むら低減装置)の動作例を示すフローチャートである。このうち、図6は補正データを求める際の動作例を示し、図7は画像データの補正を行う際の動作例を示している。なお、図6に示すフローチャートは、補正データの生成を指示して画像生成部10から評価用画像データが出力されたときに開始する。また、図7に示すフローチャートは、通常の動作で画像生成部10から表示用画像データが出力されたときに開始する。
【0049】
図6において、階調数変換部21は、画像生成部10から入力される6ビット階調の評価用画像データに対してビットアップ処理を行う(ステップS1)。すなわち、階調数変換部21は、画像生成部10から6ビット階調の評価用画像データ“000001”を入力し、下位に“00”という2ビットの値を加えることにより、8ビット階調の評価用画像データ“00000100”を生成する。
【0050】
階調数変換部21は、生成した8ビット階調の評価用画像データを補正演算部22に出力し、補正演算部22は補正を行うことなく評価用画像データをLCD30に出力することにより、当該評価用画像データをLCD30に表示させる。輝度むら測定部23は、階調数変換部21により生成された8ビット階調の評価用画像データをLCD30に表示させたときの輝度を画素毎に測定し、表示画面における輝度むら分布を取得する(ステップS2)。
【0051】
続いて、エリア特定部24は、輝度むら測定部23により取得された輝度むら分布において、最多エリア31、高輝度エリア32および低輝度エリア33を特定する(ステップS3)。
【0052】
さらに、補正データ取得部25は、エリア特定部24により特定された高輝度エリア32および低輝度エリア33について、階調数変換部21により加えられた下位2ビットに対する補正値を取得する(ステップS4)。そして、補正データ取得部25は、高輝度エリア32および低輝度エリア33の位置と補正値とを対応付けた補正データを生成して、補正データ記憶部26に記憶させる(ステップS5)。以上により、図6に示すフローチャートの処理は終了する。
【0053】
図7において、階調数変換部21は、画像生成部10から入力される6ビット階調の表示用画像データに対してビットアップ処理を行う(ステップS11)。すなわち、階調数変換部21は、画像生成部10から6ビット階調の表示用画像データを入力し、全画素について下位に“00”という2ビットの値を加えることにより、8ビット階調の表示用画像データを生成する。
【0054】
次に、補正演算部22は、画像処理部20により生成された8ビット階調の表示用画像データを対象として、図6の処理によって補正データ記憶部26に記憶された補正データに基づいて画素値の補正を行う(ステップS12)。すなわち、補正演算部22は、8ビット階調の表示用画像データの下位2ビットに対し、高輝度エリア32については“11”、“10”または“01”の何れかの補正値を減算し、低輝度エリア33については“11”、“10”または“01”の何れかの補正値を加算することによって補正を行う。なお、最多エリア31については下位2ビットの補正を行わず、値は“00”のままとする。
【0055】
最後に、補正演算部22は、補正後の表示用画像データをLCD30に出力して表示させる(ステップS13)。以上により、図7に示すフローチャートの処理は終了する。
【0056】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、6ビット階調の評価用画像データを8ビット階調にビットアップしてLCD30に表示させたときの輝度むら分布において、最も多く分布された輝度値を有する画素のエリアを最多エリア31として、最多エリア31の輝度値より大きい輝度値を有する画素の高輝度エリア32と、最多エリア31の輝度値より小さい輝度値を有する画素の低輝度エリア33とについて、8ビットのうち下位2ビットに対する補正値を取得して補正データ記憶部26に記憶させておく。
【0057】
そして、6ビット階調の表示用画像データを8ビット階調にビットアップして生成した表示用画像データを対象として、補正データ記憶部26に記憶しておいた補正データに基づいて、高輝度エリア32については画像データの下位2ビットに補正値を減算し、低輝度エリア33については画像データの下位2ビットに補正値を加算することによって補正を行うようにしている。
【0058】
このように構成した本実施形態によれば、最多エリア31については補正データを取得する必要がなく、最多エリア31以外の高輝度エリア32および低輝度エリア33についてのみ補正データを取得すればよい。しかも、その補正データを構成する補正値は、8ビットのうち下位2ビットに対して加算または減算すべき値を示すものであるから、1つの補正値は2ビットのみで構成することができる。これにより、補正データの容量を小さく抑えることができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、画像全体の輝度値を一律に高くしているわけではないし、最多エリア31については何ら補正をしていない。すなわち、画像全体の輝度値を一律に高くせず、高輝度エリア32と低輝度エリア33の輝度値を最多エリア31の輝度値に近づけるように補正しているので、画像が全体として白っぽくなってしまうという画質の低下を回避することができる。
【0060】
また、本実施形態では、最多エリア31の輝度値と高輝度エリア32の輝度値との差そのもの、あるいは最多エリア31の輝度値と低輝度エリア33の輝度値との差そのものを補正値とするのではなく、6ビット階調の画像データを8ビット階調の画像データにビットアップするときに加えられる下位2ビットに対して加算または減算すべき値を補正値としている。そのため、その補正値が大きな値になり過ぎることはない。これにより、高輝度エリア32や低輝度エリア33の画素値を補正することによって、その補正した部分の画像が白っぽくなり過ぎたり、くすんだ感じになり過ぎたりしてしまうことも回避することができる。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、明るい階調の画像データから暗い階調の画像データまで輝度むらを補正することができる。例えば、6ビット階調の画像データとして真っ白の画像データ“111111”が入力された場合でも、図8に示すように、ビットアップ処理の際に加えられた下位2ビットを補正値として利用し(従来は値が“00”に固定されていて利用できなかった)、輝度むらを補正することができる。また、6ビット階調の画像データとして真っ黒から1階調目の画像データ“000001”が入力された場合でも、ビットアップ処理の際に加えられた下位2ビットを補正値として利用し(従来は値が“00”に固定されていて利用できなかった)、輝度むらを補正することができる。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、できるだけ小容量の補正データで、表示画像の品位を落とすことなく輝度むらを低減することができる。また、本実施形態によれば、真っ黒から1階調目の画像データだけで輝度むらを測定し、補正データを生成するようにしているので、補正データの演算を短時間で行うことができるというメリットも有する。
【0063】
なお、上記実施形態では、中級モデルの画像生成部10を用いる場合について説明したが、普及モデルを用いる場合についても本発明を適用することが可能である。図9は、普及モデルの画像生成部10を適用した場合の本実施形態による画像処理部20(輝度むら低減装置)の処理例を示す図である。
【0064】
上述したように、画像生成部10が普及モデルの場合、画像データ出力インタフェースは、赤色5ビット(R0〜4)、緑色6ビット(G0〜5)、青色5ビット(B0〜4)の合計16ビット出力となる。この場合、画像処理部20の階調数変換部21は、図9(a)に示すように、赤色および青色については、5ビット階調の画像データに対して下位に“000”という3ビットを加えることによって8ビット階調の画像データとする。また、緑色については、6ビット階調の画像データに対して下位に“00”という2ビットを加えることによって8ビット階調の画像データとする。
【0065】
また、補正データ取得部25は、図9(b)に示すように、赤色および青色については、8ビット階調の画像データの下位3ビットに対する補正値(加算値または減算値)として、“001”、“010”、“011”、“100”、“101”、“110” 、“111”の何れかを取得する。緑色については、8ビット階調の画像データの下位2ビットに対する補正値(加算値または減算値)として、“01”、“10”、“11”の何れかを取得する。
【0066】
また、上記実施形態では、評価用画像データとして画像処理部20が6ビット階調の画像データを入力し、それを8ビット階調の画像データに内部(階調数変換部21)で変換しているが、評価用画像データについては最初から8階調の画像データ“00000100”を画像処理部20に入力するようにしてもよい。この場合、階調数変換部21の処理は不要である。
【0067】
また、上記実施形態では、階調数変換部21により下位数ビットに“00”または“000”を加えた後、当該加えた下位数ビットに対して補正演算部22により補正値を加算または減算するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、階調数変換部21によるビットアップ処理と補正演算部22による補正処理とを同時に行うようにしてもよい。すなわち、Mビット階調の画像データの下位に数ビットを加えてNビット階調の画像データを生成する際に、補正データ記憶部26を参照して、補正値を加算または減算するようにしてもよい。
【0068】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
20 画像処理部
21 階調数変換部
22 補正演算部
23 輝度むら測定部
24 エリア特定部
25 補正データ取得部
26 補正データ記憶部
30 LCD
31 最多エリア
32 高輝度エリア
33 低輝度エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mビット階調(Mは正の整数)の画像データを入力し、下位に数ビットを加えることによってNビット階調(Nは正の整数でN>M)の画像データに変換する階調数変換部と、
Nビット階調の評価用画像データを表示装置に表示させたときの輝度を画素毎に測定し、表示画面における輝度むら分布を取得する輝度むら測定部と、
上記輝度むら測定部により取得された上記輝度むら分布において、最も多く分布された輝度値を有する画素のエリアを最多エリア、当該最多エリアの輝度値より大きい輝度値を有する画素のエリアを高輝度エリア、当該最多エリアの輝度値より小さい輝度値を有する画素のエリアを低輝度エリアとして特定するエリア特定部と、
上記エリア特定部により特定された上記高輝度エリアおよび上記低輝度エリアについて、上記階調数変換部により加えられた下位数ビットに対する補正値を取得し、上記高輝度エリアおよび上記低輝度エリアの位置と上記補正値との対応関係を補正データとして記憶させる補正データ取得部と、
上記階調数変換部により生成されたNビット階調の表示用画像データを対象として、上記補正データ取得部により記憶された補正データに基づいて、上記高輝度エリアについては上記補正値を減算し、上記低輝度エリアについては上記補正値を加算することによって補正を行う補正演算部とを備えたことを特徴とする輝度むら低減装置。
【請求項2】
上記補正データ取得部は、上記最多エリアの輝度値と上記高輝度エリアの輝度値との差の大きさに応じて、上記下位数ビットの値としてとり得る値の中から何れかの値を上記高輝度エリアの補正値として取得するとともに、上記最多エリアの輝度値と上記低輝度エリアの輝度値との差の大きさに応じて、上記下位数ビットの値としてとり得る値の中から何れかの値を上記低輝度エリアの補正値として取得することを特徴とする請求項1に記載の輝度むら低減装置。
【請求項3】
Mビット階調(Mは正の整数)の評価用画像データを入力し、下位に数ビットを加えることによってNビット階調(Nは正の整数でN>M)の評価用画像データに変換する第1のステップと、
上記第1のステップで生成されたNビット階調の評価用画像データを表示装置に表示させたときの輝度を画素毎に測定し、表示画面における輝度むら分布を取得する第2のステップと、
上記第2のステップで取得された上記輝度むら分布において、最も多く分布された輝度値を有する画素のエリアを最多エリア、当該最多エリアの輝度値より大きい輝度値を有する画素のエリアを高輝度エリア、当該最多エリアの輝度値より小さい輝度値を有する画素のエリアを低輝度エリとして特定する第3のステップと、
上記第3のステップで特定された上記高輝度エリアおよび上記低輝度エリアについて、上記階調数変換部により加えられた下位数ビットに対する補正値を取得し、上記高輝度エリアおよび上記低輝度エリアの位置と上記補正値との対応関係を補正データとして記憶させる第4のステップと、
Mビット階調の表示用画像データを入力し、下位に数ビットを加えることによってNビット階調の表示用画像データに変換する第5のステップと、
上記第5のステップで生成されたNビット階調の表示用画像データを対象として、上記4のステップで記憶された補正データに基づいて、上記高輝度エリアについては上記補正値を減算し、上記低輝度エリアについては上記補正値を加算することによって補正を行う第6のステップとを有することを特徴とする輝度むら低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−73172(P2013−73172A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213933(P2011−213933)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】