説明

輝度上昇シート部材用二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】 BEFやDBEFの代替製品として用いられる輝度上昇シートにおいて、バックライトの光源から出る紫外領域波長の光の影響により、液晶を黄変劣化させることがなく、色調を安定して維持でき、輝度上昇シートの間で色度変化が少なく安定的な色調の製品を提供する。
【解決手段】 少なくとも3層からなる、厚みが75〜350μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの内層に紫外線吸収剤を含有し、波長370nmの光線透過率が2.0%以下であり、ヘーズが2.3%以下であり、150℃で30分間処理後のフィルム長手方向(MD)の加熱収縮率が1.5%以下、フィルム幅方向(TD)の加熱収縮率が0.7%以下であり、測定時の総厚みが900μmから1100μmの間で最も1000μmに近くなるようにフィルムを複数枚重ね合わした時の色調反射法y値が0.3230以下であることを特徴とする輝度上昇シート部材用二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度上昇シート部材用二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものであり、詳しくは、携帯電話から液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する場合あり)のバックライトに用いられている輝度上昇シートの代替製品の部材として用いられるポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有しており、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネートフィルム、ガラスディスプレイ等のガラス表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
【0003】
ポリエステルフィルムは、近年、特に各種光学用フィルムに多く使用され、携帯電話からLCDのバックライトを構成する拡散シート、マイクロレンズシート、プリズムシート、複合シート、高輝度シート、反射板や、タッチパネル等のベースフィルム、反射防止用ベースフィルム、ディスプレイの防爆用ベースフィルム、PDPフィルター用フィルム等の各種用途に用いられている。
【0004】
このバックライトを構成する部材において、輝度向上の役割を果たすものに、輝度上昇シートがあり、BEF(Brightness Enhancement Film)や反射型偏光フィルム、DBEF(Dual Brightness Enhancement Film)が知られており、携帯電話からLCDまで幅広く使われている。これらのシートによると、例えば、LCDにおいて、バックライトの光源の光を液晶パネルの下側の各種光学シートに吸収させることがなく、また、視野角を妨げることなく、液晶画面を明るくすることができ、結果として、光利用効率をあげることができるため、この輝度上昇シートがない状態と比較して、同一輝度条件では消費電力を下げることができ、バックライトの光量やライトの本数、LEDの個数を減らせることができ、環境的なメリットがある。
【0005】
しかし、これらのフィルムは、高価であること、供給の安定性等の懸念があること、などから代替製品の検討が行われている。BEFやDBEFは、ポリマー表面の形状を鋳型で付与することで光の反射を利用する方法(BEF)、フィルムに超積層構造を付与させる方法(DBEF)であるが、BEFやDBEFのように輝度向上を達成するためには、他にもいくつかの方法があり、例えば、入射してそのまま透過しない光のリサイクルを利用することを目的として、様々なネマチック液晶やコレステリック液晶などをフィルムに塗布し、配向させる方法がある。このフィルムに液晶を塗布する方法は、価格や供給安定性の点で非常に優位であり、主として採用されつつあるが、塗布した液晶がバックライトの光源の紫外線領域の波長の光の影響を受けて劣化し、作製した輝度上昇シートが黄変し、高品質で高精細な画像を与えることができなくなる問題がある。この場合、バックライトの光源側になる、液晶塗布面とは反対面側のフィルム面において、紫外線吸収剤を含有したバックコート処理を行う方法も考えられるが、紫外線吸収剤を含有するバックコート処理は、コート後のコート外観にムラ等が発生して均一に塗布することができず、シート面において紫外線遮断能力にムラが発生したり、コート外観のムラの影響で高品質な画像を得ることができなったりするなどの問題がある。
【0006】
また、実際にこのフィルムを製膜する工程においては、内層に含有させる紫外線吸収剤自身の色度の影響や、リサイクル性の原料を多量に用いた時の影響により、フィルムが黄色みを帯びるようになり、その結果、輝度が低下して鮮明で高精細な画像を得られなくなるという問題や、作製された各輝度上昇シートの間で色度変化を起こすようになるため、バックライトユニットにシートを組み込んだ際、光源側のバックライトの色度調整が都度必要になるという問題がある。
【0007】
さらに、フィルムに液晶を塗布する輝度上昇シート作製工程において、液晶が熱等の影響により黄色に色付きを起こすことがあるため、現在用いられているBEFやDBEFの輝度上昇シートの代替製品として用いる際には、BEFやDBEFと比較して色調差ができるだけ少ない方が好ましく、支持体となるフィルムの黄色みの色調について安定化させることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−43208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、BEFやDBEFの代替製品として用いられる、フィルムに液晶を塗布する形態の輝度上昇シートにおいて、主にバックライトの光源から出る紫外領域の波長の光の影響により、液晶を黄変劣化させることがなく、その結果、シートの色度変化が少なく、色調を安定して維持することができ、また、作製後の輝度上昇シートの間で色度変化が少なく安定的な色調の製品を提供することが可能となるため、バックライトの光源における色度調整作業が不要となり、高い輝度向上性能を有して高品質で高精細な画像を与えることができる、輝度上昇シートの部材用フィルムとして好適なポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、少なくとも3層からなる、厚みが75〜350μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの内層に紫外線吸収剤を含有し、波長370nmの光線透過率が2.0%以下であり、ヘーズが2.3%以下であり、150℃で30分間処理後のフィルム長手方向(MD)の加熱収縮率が1.5%以下、フィルム幅方向(TD)の加熱収縮率が0.7%以下であり、測定時の総厚みが900μmから1100μmの間で最も1000μmに近くなるようにフィルムを複数枚重ね合わした時の色調反射法y値が0.3230以下であることを特徴とする輝度上昇シート部材用二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィルムによれば、携帯電話からLCD用のバックライトの輝度上昇シートのベースフィルムとして用いた場合に、フィルムに塗布する液晶の劣化による黄変への色調変化を発生させることがなく、バックライトユニットに輝度上昇シートを組み込んだ際、バックライト光源側による色度調整作業が不要となり、高い輝度と安定して高品質な画像を得ることができることになるため、工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の輝度上昇シート部材用二軸延伸ポリエステルフィルムは、3層以上の多層フィルムである。本発明でいう輝度上昇シート部材用二軸延伸ポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押し出しされる、いわゆる押出法により、押し出されたポリエステルフィルムであって、縦方向および横方向の二軸に配向させたフィルムである。
【0013】
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等が例示される。かかるポリエステルは、共重合されないホモポリマーであってもよく、またジカルボン酸成分の20モル%以下が主成分以外のジカルボン酸成分であり、および/またはジオール成分の20モル%以下が主成分以外のジオール成分であるような共重合ポリエステルであってもよい。またそれらの混合物であってもよい。
【0014】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用して良いが、好ましくはアンチモン化合物の量を零又はアンチモンとして100ppm以下にすることによりフィルムのくすみを低減したものが好ましい。
【0015】
なおポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい。
【0016】
本発明のフィルムは、例えば、フィルムの厚みが125μmの時、紫外線吸収剤を通常0.14〜5.0重量%、好ましくは0.14〜4.0重量%の範囲で含有するものである(フィルムの厚みが250μmの時は、紫外線吸収剤を通常0.07〜2.5重量%、好ましくは0.07〜2.0重量%の範囲で含有するものである)。紫外線吸収剤が0.14重量%未満の場合は、紫外線によりフィルムに塗布した液晶が劣化することがあり、5.0重量%を超える量の紫外線吸収剤を含有させた場合、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトし、接着性低下等、表面機能性の悪化を招くおそれがある。また、5.0重量%を超える多量の配合は、最終的に得られる輝度上昇シートの黄色みが増して輝度が低下したり、コストアップにも繋がったりするおそれがある。
【0017】
本発明のフィルムは、波長370nmの光線透過率が2.0%以下、好ましくは1.5%以下である。波長370nmの光線透過率が2.0%より大きくなると、ポリエステルフィルムを通過する紫外線によりフィルムに塗布している液晶の黄変劣化を防ぐのに十分とは言えない。
【0018】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、1,3,5−トリアジン系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物を挙げることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、色調を考慮した場合、黄色みが付きにくいベンゾオキサジノン系化合物が好適に用いられる。紫外線吸収剤として用いるベンゾオキサゾリン系化合物の例としては、2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]が挙げられる。
【0019】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0020】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0021】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.02〜3μmが好ましい。平均粒径が0.02μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、透明性に劣るようになってしまうことがある。
【0022】
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、フィルムを構成する全ポリエステルに対し通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0023】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0024】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、75〜350μmの範囲であり、好ましくは125〜250μmの範囲である。フィルムの厚みが75μm未満の場合、フィルムの腰が弱いため、枚葉状に打ち抜き後、1枚毎に実施される最終検査やバックライトへのシートの組み込み時の作業性が悪くなり、また耐熱性が損なわれ、バックライトの光源のランプや周辺部品の発熱の影響によりシートの寸法安定性が損なわれて撓みが発生する。一方、350μmより厚いとその剛性のために作業性が著しく悪化する。
【0026】
本発明のフィルムの全光線透過率は、88%以上が好ましく、さらに好ましくは89%以上である。本発明のフィルムは、その優れた光透過性を有するために光学用途に広く用いられるが、全光線透過率が88%未満の場合には、光学用としては不適当となることがある。
【0027】
本発明のフィルムは、フィルムヘーズが2.3%以下、好ましくは2.1%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。本発明のフィルムは、その優れた透明性を有するために光学用途に広く用いられるが、フィルムヘーズが2.3%を超える場合には、光学用としては不適当となる。
【0028】
本発明のフィルムは、150℃で30分間処理後の加熱収縮率に関して、フィルム長手方向(MD)の値が1.5%以下、さらに好ましくは1.3%以下である。また、フィルム幅方向(TD)の値が0.7%以下、好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。フィルム長手方向(MD)が1.5%、幅方向(TD)が0.7%を超えて大きくなると、ディスプレイ製品の部材として使用した場合に、バックライトの光源のランプや周辺部品の発熱の影響により、シートを形成しているフィルムの寸法安定性が損なわれ、特にシートの縁の部分においては、波状のうねり現象が発生するようになり、画像に歪みやムラが発生して画像品質の劣化の原因となる。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムは、測定時の総厚みが900μmから1100μmの間で最も1000μmに近くなるようにフィルムを複数枚重ね合わした時の色調反射法y値が0.3230以下の範囲である。色調反射法y値が0.3230を超える場合には、フィルムの黄色みが強く、ディスプレイ用として使用した場合、画像の色調が劣るようになったり、輝度が低下したりするなどの点で不適切となる。また、作製を行った各シート間で色調差が発生するようになり、バックライトユニットにシートを組み込んだ際に都度、バックライト光源の色度調整が必要になるという不具合が発生する。
【0030】
かかる色調のフィルムとするためには、原料のポリエステルを製造する際の触媒、助剤を選択し、なるべく触媒の量を少なくすることや、重合および製膜時にポリエステルが必要以上に高温度になったり、溶融時間が長くなったりしないようにすること、さらにリサイクル性の原料の配合量を少なくすることなどの方法を採用することができる。
【0031】
また、本発明のフィルムは、180℃で10分間熱処理後のフィルム表面へのオリゴマー(環状三量体)析出量の表裏面の総和が、15mg/m以下であることが好ましく、さらに好ましくは10.0mg/m以下、特に好ましくは8.0mg/m以下である。フィルム表面へのオリゴマー析出量が15mg/mを超える場合には、表面でオリゴマーが結晶化してフィルム上に設ける機能層に溶け込んで特性に影響を及ぼす等の問題を引き起こすことがある。
【0032】
熱処理によるフィルム表面へのオリゴマー析出量を上記の範囲とするためには、オリゴマー含有量の少ないポリエステルを用いたり、インラインまたはオフラインで塗布層を設けたりすることによりフィルム表面にオリゴマーが析出するのを押えることで、熱処理後のフィルム表面へのオリゴマー析出量を上記範囲とすることができる。
【0033】
本発明のフィルムは、共押出法を用いて積層構造とすることができるが、その際。最外層厚みは、片側のみの厚みについて、通常2μm以上かつ総厚みの1/10以下であることが好ましい。かかる厚みが2μm未満では、加工中の熱履歴等により、内層に含有されているオリゴマー(環状三量体)がフィルム表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルム表面の異物量の増加が見られる可能性がある。一方、1/10を超えるとフィルムがカールしやすくなる傾向がある。
【0034】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0035】
まず、公知の手法により乾燥した、または未乾燥のポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0036】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜5倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜5倍延伸を行い、200〜240℃で10〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に1〜10%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0037】
本発明においては、前記の通りポリエステルの溶融押出機を2台以上用いて、いわゆる共押出法により3層の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料を用いてA/B/A構成のフィルムとすることができる。
【0038】
また、本発明のフィルムは、携帯電話からLCD用のバックライトに用いる輝度上昇シートに用いるため、バックコート用の樹脂と密着性を向上することを目的として、バックコート加工面側において、下引き層としての塗布層を設けることができる。
【0039】
かかる塗布層の形成に当たっては、フィルムを製造する工程内、特に縦方向に延伸した後、横方向の延伸の前に行う方法が、極めて薄い塗布層を形成できる点、塗布液の乾燥や硬化反応を製膜工程内で実施できることなどの点で好ましい。かかる塗布層としては、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなるものが好ましく、バインダー樹脂としては密着性の観点から、通常ポリエステル、アクリル系ポリマー、およびポリウレタンの中から選ばれたポリマーを採用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。ここでいう誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。
【0040】
なお必要に応じてフィルムの製造後にオフラインコートでコートしても良い。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は、水系および/または溶剤系いずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
【0041】
また本発明のフィルムは、光学用に用いるので、特に液晶加工面とは反対面側におけるバックコート加工面側において、静電気によるゴミ付着防止、さらには電磁波シールドを目的とした機能性多層薄膜を形成させることもさらに好ましい。
【0042】
本発明でバックコート用の樹脂との密着性向上を目的として用いる塗布剤として、上記のポリエステル、アクリル系ポリマー、およびポリウレタンの中で特に好ましいポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、ポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているポリマーである。
【0043】
架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が特に好ましい。 メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
【0044】
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの光透過性を低下させる傾向がある。
【0045】
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。一方有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
【0046】
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。
【0047】
また、塗布層は、上記のように、静電気によるゴミの付着防止、さらには電磁波シールドなどを目的とした機能性多層薄膜とするため、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0048】
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0049】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
【0050】
本発明における塗布層は、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0051】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
【0052】
このような塗布フィルムを光学用途に適用する場合には、塗布層表面の塗布ヌケが、この塗布層のさらに上に拡散用の樹脂、バックコート用の樹脂を設ける時に問題となっている。塗布ヌケが生じる理由は明確ではないが、フィルム中にある異物がフィルム表面に粗大突起を作りそれが核となって塗布剤がはじき、それが延伸されて塗布ヌケが発生したり、フィルムの表面に付着したオリゴマーやゴミが核となりそこを核として塗布剤がはじきヌケとなったりする場合等が考えられる。したがって、かかる核となり得るゴミや異物をできる限り除去した条件で製膜することが必要である。かかる異物にはフィルム上に付着または析出したオリゴマーも含まれるため、フィルムが含有するオリゴマー量を低減することも塗布のヌケを減少させる効果を有する。
【0053】
本発明のフィルムは、塗布層を有する場合、その塗布ヌケの個数)が通常50個/m以下、好ましくは30個/m以下、さらに好ましくは10個/m以下である。いずれにせよ今後ますます厳しくなる光学用フィルムにおいては、塗布ヌケは可能な限り零にすることが必要である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0055】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0056】
(2)第三成分(共重合成分)含有量の測定
樹脂試料を重水化クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(重量比7/3)の混合溶媒に濃度3重量%となるように溶解させた溶液について、核磁気共鳴装置(日本電子社製「JNM−EX270型」)を用いて、1 H−NMRを測定して各ピークを帰属し、ピークの積分値から共重合成分の含有量を算出した。
【0057】
(3)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0058】
(4)積層ポリエステル層の厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層厚さとした。
【0059】
(5)全光線透過率、ヘーズ
全光線透過率はJIS−K−7361、ヘーズはJIS−K−7136に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH2000」により、全光線透過率、ヘーズを測定した。
【0060】
(6)加熱収縮率
長手方向がMD方向(縦方向)となるように、15mm幅で150mm長の短冊上にサンプルを切り出し、また、幅方向がTD方向(横方向)となるように15mm幅で150mm長の短冊上にサンプルを切り出し、熱風循環炉を使用して、無張力状態にて、150℃に設定されたオーブン中で30分間加熱処理を行い、MD、TD方向のそれぞれの方向において、加熱処理前後での長さを測微計により測定し、下記式にて各サンプルの熱収収縮率を求めた。
加熱収縮率(%)=[(a−b)/a]×100
(上記式中、aおよびbは、それぞれ加熱前後のフィルムの長さ(mm)を意味する)
【0061】
(7)色調反射法y値
JIS−Z−5722に準じたミノルタ製分光測色計「CM−3700d」により、色調反射法y値を測定した。また、測定は、例えば、フィルムの厚みが188μmの時は5枚重ね、250μmの時は4枚重ね、350μmの時は3枚重ねとして、総厚みが900μmから1100μmになるように複数枚重ね合わせて測定した。
【0062】
(8)光線透過率
島津製作所社製 分光光度計UV3100により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを1nm、波長190〜800nm領域で連続的に光線透過率を測定し、370nm波長での光線透過率を検出した。
【0063】
(9)光学部材適性(輝度)
光学用部材として、輝度上昇シートとして使用した場合の特性を評価した。すなわちフィルムの片面に、ポリエステル系バインダーを塗布してバックコート層を形成し、反対面の塗布剤が無い面に、ラビング評価装置(小型ラビング装置:MRM−100(株式会社イーエッチシー)、ラビング布:レーヨン布YA−20−R(吉川加工株式会社))を用いてラビング処理を行い、コレステリック系の液晶を塗布して得られた輝度上昇シート、1枚をバックライトユニットに組み込んで、得られる面状発光の輝度を以下の観点で評価した。
輝度レベル:輝度計を用いて評価し、実施例3のフィルムを使用した場合と比較した。
A:輝度が向上し、改良が見られた
B:輝度の低下は確認できなかった
C:輝度が低下した
【0064】
(10)光学部材適性(画像ムラ遮蔽性)
上記(9)にて得られた輝度上昇シート1枚を、光源であるライトがLEDのエッジタイプのバックライトユニットに組み込んで、得られる面状発光の画像品質を以下の観点で評価した。
A:画像ムラが現れず、改良が見られた
B:画像ムラが画面状において部分的に薄く現れた
C:画像ムラが画面状において全体的にはっきりと現れた
【0065】
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(a)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.68に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(a)の極限粘度は0.68であった。
【0066】
<ポリエステル(b)の製造方法>
ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径1.6μmのシリカ粒子を0.2部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(b)を得た。得られたポリエステル(b)は、極限粘度0.65であった。
【0067】
<ポリエステル(c)の製造方法>
ポリエステル(a)の製造方法において、出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とジエチレングリコール2重量部とし、重合触媒として酸化ゲルマニウムを使用したこと以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(c)を得た。なお、酸化ゲルマニウムの添加方法は公知の方法を採用し、その添加量はゲルマニウムとして原料重量に対して100ppmとした。得られたポリエステル(c)の固有粘度は0.68であった。
【0068】
<ポリエステル(d)の製造方法>
ポリエステル(a)をベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジンー4−オン](CYTEC社製 CYASORB UV−3638 分子量369 ベンザオキサジン系)を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステル(d)を作製した。得られたポリエステル(d)の極限粘度は、0.59であった。
【0069】
実施例1:
前述のポリエステル(c)、(b)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、B層の原料を、ポリエステル(c)、(d)をそれぞれ99%、1%の割合で混合した混合原料として、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、A層を最外層(表層)、B層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成で共押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度81℃で縦方向に3.0倍延伸した後、以下に示した組成の塗布剤を塗布した後テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、231℃で熱処理を行った後、横方向に4%弛緩し、厚さ250μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。バックコート用の塗布層の厚みは0.15μmであった。
【0070】
(塗布剤の組成:重量比)
a/b/c/d=47/20/30/3
ここで、aは、テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/ジエチレングリコール/トリエチレングリコール=31/16/3/22/21(モル比)のポリエステル分散体;bは、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリルニトリル/N−メチロールメタアクリルアミド=45/45/5/5(モル比)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤);cは、ヘキサメトキシメチルメラミン(メラミン系架橋剤);dは、粒子径0.06μmの酸化ケイ素の水分散体(無機粒子である。
【0071】
実施例2:
ポリエステル(c)、(b)をそれぞれ92%、8%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(c)、(d)をそれぞれ84.1%、0.9%、実施例1のポリエステル製造時に発生した耳部およびマスターロール耳部からの再生品を15%の割合で混合した混合原料をB層の原料としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0072】
実施例3:
ポリエステル(a)、(b)をそれぞれ92%、8%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(a)、(d)をそれぞれ99%、1%の割合で混合した混合原料をB層の原料としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0073】
比較例1:
ポリエステル(c)、(b)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、B層の原料をポリエステル(c)100%として、235℃で熱処理を行った以外は実施例1と同様にして、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0074】
比較例2:
ポリエステル(c)、(b)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(c)、(d)をそれぞれ49.2%、50.8%の割合で混合した混合原料をB層の原料としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0075】
比較例3:
ポリエステル(c)、(b)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、B層の原料をポリエステル(c)、(d)を37.5%、2.5%実施例1のポリエステル製造時に発生した耳部およびマスターロール耳部からの再生品を60%の割合で混合した混合原料をB層の原料としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0076】
比較例4:
ポリエステル(c)、(b)をそれぞれ78%、22%の割合で混合した混合原料をA層の原料としたこと以外は実施例1と同様の条件で製膜を行い、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは10/230/10μmであった。
【0077】
比較例5:
ポリエステル(c)、(b)をそれぞれ92%、8%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、縦方向に3.2倍、横方向に4.0倍延伸し、215℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩したこと以外は実施例1と同様にして、厚み250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、10/230/10μmであった。
【0078】
得られたフィルムの物性値と、370nmにおける光線透過率、および光学部材適性(輝度と画像ムラ遮蔽性)について表1にまとめた。本発明の要件を満たすフィルムは、光学用としての適性が高いことがわかる。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のフィルムは、携帯電話からLCD用のバックライトに用いられる輝度上昇シートの部材として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層からなる、厚みが75〜350μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの内層に紫外線吸収剤を含有し、波長370nmの光線透過率が2.0%以下であり、ヘーズが2.3%以下であり、150℃で30分間処理後のフィルム長手方向(MD)の加熱収縮率が1.5%以下、フィルム幅方向(TD)の加熱収縮率が0.7%以下であり、測定時の総厚みが900μmから1100μmの間で最も1000μmに近くなるようにフィルムを複数枚重ね合わした時の色調反射法y値が0.3230以下であることを特徴とする輝度上昇シート部材用二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−250445(P2012−250445A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124968(P2011−124968)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】