説明

輪止め具

【課題】C型止め輪50の凸形状部50bがローラスリット部Sの端部に当接する際、凸形状部50bがローラスリット部Sの端部から乗り上げないワッシャー係止形状の提案。薄肉ローラ内径に近接する部品等あった場合、薄肉ローラ内径側にC型止め輪より係止片を設けられない課題がある。
【解決手段】C型止め輪50の凸形状部50bがローラスリット部Sの端部に当接する際、C型止め輪50の凸形状部50bがローラスリット部Sの端部から乗り上げようとする際、C型止め輪50の両端部の被係止部P1・P2とワッシャー60側の係止部Mで上記の乗り上げを防止する構成。C型止め輪50の両端部P1・P2とワッシャー係止部Mがローラ7と同時に回転することで、薄肉ローラ板厚と同じ掛量の凸形状部50bであった場合でもC型止め輪50係止することができ、薄肉ローラ板厚と同じ掛量の凸形状部50bであるためクリアランスも確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転または固定軸上に保持される部材をその軸方向に位置規制する軸止め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸外形用C型止め輪(C型リング)は、ローラ(軸)外形の周方向に周溝を形成し、この周溝内に装着して、軸受等の部品(被規制部材)が軸外形から脱落することがないように使用されている。
【0003】
特許文献1に記載されているような、画像形成装置に適用される定着装置は、感光体ドラムの周面に形成されたトナー像の転写された用紙上の当該トナー像を当該用紙に定着させるためのものである。この定着装置は、内部にヒータの内蔵された定着ローラを備え、被加熱状態で回転している定着ローラの周面へ向けて用紙を供給することによる加熱処理で当該用紙上のトナー像に定着処理が施されるようになっている。
【0004】
かかる定着装置における定着ローラには、両端に環状の断熱部材が外嵌されているとともに、各断熱部材にベアリングが外嵌され、これらのベアリングが所定のハウジングの互いに対向した側壁にそれぞれ支持されている。これにより、当該定着ローラが軸心回りに回転可能にハウジングに支持されるようになっている。
【0005】
このような定着ローラは、当該定着ローラに外嵌された軸受けによって軸心回りに回転可能に支持されるともに、軸受けから外部に突出している定着ローラの端部にはC字形状を呈する止め輪が外嵌されている。止め輪は固定部を端部に3点有し(すなわち3点支持による)、中央の係止片は、V形状または逆Ω形状で定着ローラ内径側に外れ止め状態で外嵌される。この止め輪が軸受けの側面と干渉することで定着ローラが軸受けから外れるのを防止するようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−57644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、電磁誘導加熱方式を用いた定着装置においては、省エネ及び装置起動時間の短縮化など実現させるため、定着ローラを薄肉化することで熱容量を低減している。また、定着ローラ内径内に配置される磁束発生手段(加熱手段)と定着ローラを近接させて、磁束発生手段から発生する磁束を定着ローラを構成する強磁性の金属内により多く拘束させて発熱効率を向上させている。
【0008】
このような定着装置においては、特許文献1のC型止め輪は、定着ローラ内径側に係止片(凸形状部)を設けているため、定着ローラ内径に近接する磁束発生手段などの部材があった場合、クリアランスが確保できない課題がある。
【0009】
本発明はC型止め輪をローラ(軸)に取り付けた際、ローラ内径に近傍する部材があった場合でも、クリアランスを確保し、安定に係止することができる輪止め具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る輪止め具の代表的な構成は、軸に保持される被規制部材の軸方向の位置を規制するために軸に装着される輪止め具であって、前記軸の周方向に設けられているスリット部に対応して嵌入係合される内向きの凸形状部が内周部に設けられていて前記軸に外嵌されるC型止め輪と、前記C型止め輪と前記被規制部材との間において前記軸に外嵌されるワッシャーと、を有し、前記C型止め輪には前記ワッシャーに対する被固定部が、前記ワッシャーには前記被固定部を係止する固定部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸が薄肉の管軸の場合でもその薄肉板厚分でC型止め輪の内向きの凸形状部を製作することができ、管軸内径に近接する部品等あり、管軸内径側に係止するのが困難な場合でもクリアランスを確保しつつ係止できる構成をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】定着装置の一例の要部の途中部分省略、一部切り欠きの正面模型図である。
【図2】図1の(2)-(2)線に沿う拡大横断右側面模型図である。
【図3】(a)は定着ローラの左側端部に装着されている部材の分解斜視図、(b)は右側端部に装着されている部材の分解斜視図である。
【図4】励磁コイルと磁性体コアとの分解斜視図である。
【図5】加熱アセンブリと磁束調整装置との斜視模型図である。
【図6】(a)は磁束調整部材が退避位置に位置している状態時の図、(b)は磁束調整部材が磁束遮蔽位置に位置している状態時の図である。
【図7】(a)は定着ローラの右側端部に装着されている部材の分解斜視図、(b)はそれらが組み付けられた状態の定着ローラの右側端部斜視図である。
【図8】(a)と(b)は磁束調整部材と定着ローラ内径とのクリアランス、及び係合部の説明図である。
【図9】V形状係止部(内向きの凸形状部)の乗上げ方向を示す図である。
【図10】ワッシャ―及びC型止め輪の係合部(固定手段)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら本発明に係る輪止め具を用いた装置の具体例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0014】
[実施例1]
図1は本発明に係る輪止め具を用いた定着装置100の一例の要部の途中部分省略、一部切り欠きの正面模型図である。図2は図1の(2)-(2)線に沿う拡大横断右側面模型図である。この定着装置100は、内部加熱型で、磁束調整部材を用いた磁束調整タイプの電磁誘導加熱方式の画像加熱装置である。
【0015】
ここで、この定着装置100について正面(前面)とは装置を記録材入口側からみた面、背面(後面)とはその反対側の面(記録材出口側)、左右とは装置を正面から見て左右である。上下とは重力方向において上下である。定着装置またはその構成部材に関して長手方向とは回転体の軸線方向(スラスト方向)または記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向またはその方向に並行な方向である。短手方向とは回転体の軸線方向に直交する方向または記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向またはその方向に並行な方向である。
【0016】
(1)定着ローラ
7は電磁誘導発熱する誘導発熱体としての円筒状の定着ローラである。定着ローラ7は、鉄、ニッケル、コバルトなどの金属を用いるのが良い。強磁性の金属(透磁率の大きい金属)を使うことで、定着ローラ7の内部に配設されている後述する磁束発生手段(加熱手段)としての加熱アセンブリ1から発生する磁束を強磁性の金属内により多く拘束させることができる。すなわち、磁束密度を高くすることができる。それにより、定着ローラ7を構成している強磁性金属の表面にうず電流を効率的に発生させて発熱させることができる。
【0017】
定着ローラ7の肉厚は、略0.3〜2mm程度にすることで熱容量を低減している。定着ローラ7の外側表面はトナー離型層7aで被覆されている。離型層7aは一般にはPTFE10〜50μmやPFA10〜50μmで構成されている。また、離型層7aの内側にゴム層(弾性層)など他の所望の機能層を設けた構成にすることもできる。
【0018】
定着ローラ7の左側と右側の端部は、それぞれ、定着装置筐体の左右の定着ローラ支持体(装置側板)12L・12Rとの間に、保温手段としての環状の断熱ブッシュ70L・70Rと環状の軸受(ベアリング)11L・11Rを介して回転可能に保持されている。軸受11L・11Rは断熱ブッシュ70L・70Rを介して定着ローラ7に外嵌されている。断熱ブッシュ70L・70Rは定着ローラ7から軸受11L・11Rへの伝熱を低減させるために用いている。
【0019】
図3の(a)は定着ローラ7の左側端部に装着(外嵌)されている部材の分解斜視図である。(b)は定着ローラ7の右側端部に装着されている部材の分解斜視図である。軸受11L・11Rにおいて、11aと11bは軸受のインナーリングとアウターリングである。
【0020】
定着ローラ7の左側端部には断熱ブッシュ70Lよりも外側において環状の定着ローラギア10が外嵌されている。ギア10の内周部の一部には係止突起部10aが設けられている。定着ローラ7の左側端部には係止突起部10aに対応する切欠き係止溝7aが設けられている。ギア10は係止突起部10aを係止溝7aに対応させて定着ローラ7の左側端部から外嵌させる。これにより、ギア10は定着ローラ7の左側端部に対して係止突起部10aと係止溝7aとの係合により回り止めされて外嵌される。
【0021】
ギア10(被規制部材)はギア10よりも外側において定着ローラ7の左側端部に装着された後述する輪止め具80Lにより位置規制されて定着ローラ7の左側端部からの外れ止めがなされている。
【0022】
定着ローラ7の右側端部には断熱ブッシュ70Rよりも外側において後述する輪止め具80Rが装着されている。これにより、断熱ブッシュ70R(被規制部材)が位置規制されて定着ローラ7の右側端部からの外れ止めがなされている。
【0023】
定着ローラ7はギア10に制御回路部17で制御される駆動系33から回転力が伝達されることで、図2において矢印Aの時計方向に所定の周速度にて回転駆動される。
【0024】
(2)加圧ローラ
8は定着ローラ7の下側に定着ローラ7に並行に配列した加圧体としての弾性加圧ローラであり、鉄製の芯金8aの外周に、シリコーンゴム層8bと、定着ローラ7と同様にトナー離型層8cを設けた構成である。加圧ローラ8は、芯金8aの左右の両端部がそれぞれ左右の可動の加圧ローラ支持体14L・14Rに対して加圧ローラベアリング15L・15Rを介して回転自在に保持されている。左右の加圧ローラ支持体14L・14Rは付勢手段(不図示)により押し上げられている。
【0025】
これにより、加圧ローラ8の上面が定着ローラ7の下面に対してシリコーンゴム層8bの弾性に抗して所定の押圧力にて圧接されて、定着ローラ7と加圧ローラ8との間に記録材搬送方向Cに関して所定幅の加熱部としての定着ニップ部Nが形成されている。加圧ローラ8は定着ローラ7が回転駆動されると定着ニップ部Nにおける圧接摩擦力で定着ローラ7の回転に従動して矢印の反時計方向Bに回転する。
【0026】
本実施例において、定着装置100に対する記録材32の通紙は、中央基準搬送でなされる。図1において、W1は定着装置100に通紙可能な記録材32の最大サイズ紙幅、W2は小サイズ紙幅である。W3・W3は小サイズ紙幅W2の記録材32を通紙したときに定着ニップ部Nに生じる非通紙部であり、最大サイズ紙幅W1と小サイズ紙幅W2との差領域である。Oは中央基準搬送の通紙センターラインである。
【0027】
本例において、最大サイズ紙幅W1はA4幅(297mm)、小サイズ紙幅W2はA4R(210mm)である。本例の装置において最大サイズ紙幅W1が通常紙サイズ幅であり、以下、W1を通常紙サイズ幅と記す。
【0028】
(3)加熱アセンブリ1
磁束発生手段としての加熱アセンブリ1は円筒状の定着ローラ7の内空部に定着ローラ7と同心に定着ローラ7の内面に非接触に挿入されて配設されている。加熱アセンブリ1は、定着ローラ7の内径よりも小さい外径で、定着ローラ7よりも長い円筒状のホルダー2の内部に、励磁コイル5、横断面T字型に配設された磁性体製の第1乃至第3のコア6a・6b・6c、ステイ3等が配設されて構成されている。
【0029】
本例のホルダー2は耐熱性と機械的強度を兼ね備えたPPS系樹脂にガラスを添加したものの成形体である。もちろん非磁性である。ホルダー2には、PPS系樹脂、PEEK系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、セラミック、液晶ポリマー、フッ素系樹脂などの非磁性材料が適している。
【0030】
ホルダー2は長手軸線にほぼ沿って縦2つ割りとした第1半体2aと第2半体2bの形態で成形してある。第1半体2aの内部に、上記のコイル5、コア6a・6b・6c、ステイ3が組み込まれている。ステイ3はコイル5やコア6a・6b・6c等を保持する部材である。
【0031】
この第1半体2bに対して蓋をするように第2半体2bを重ね合わせて接着剤で一体に接合する、あるいは嵌め合い構造部で一体に接合する。この第2半体2bにより第1半体2bに対してコイル5、コア6a・6b・6c、ステイ3等が押さえ込まれる。これにより、内部にコイル5、コア6a・6b・6c、ステイ3を内蔵させて保持させた横断面形状をほぼ円筒形状のホルダー2が組み立てられている。
【0032】
コイル5は、図4の斜視図のように、左右方向に長い略楕円形状(横長舟形)に捲線されており、定着ローラ7の内面に沿うようにホルダー2の第1半体2aの内面にあてがわれて第1半体2aの内部に納められている。コイル5は定着ローラ7の長手に沿って長い。
【0033】
コイル5は加熱に十分な交番磁束を発生するものでなければならないが、そのためには抵抗成分を低く、インダクタンス成分を高くとる必要がある。一例として、コイル5のコイル線材は、外径0.1〜0.50mmの絶縁被覆した導線を20〜200本リッツしたものを用いている。より具体的には、外径0.17mm、140本、総外径4mmのリッツ線をコイル線材として用いている。コイル5が昇温した場合を考えて絶縁被覆には耐熱性のものを使用した。
【0034】
第1コア6aはT字の垂直部に対応するコアであり、コイル5の巻き中心部5aに対応位置している。第2と第3コア6bと6cはT字の水平部に対応するコアである。第1乃至第3コア6a・6b・6cは、図4の斜視図のように、短い長さのコアをコイル5の長手に沿って複数配置してある。
【0035】
コア6a・6b・6cの全体の配設長さ寸法は通常紙サイズ幅W1と略同じで、通常紙サイズ幅部に対応位置している。コア6a・6b・6cは、それぞれ高透磁率かつ低損失のものを用いると良く、磁気回路の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。例えばフェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる磁性材料が用いられる。
【0036】
加熱アセンブリ1は定着ローラ7の内空部に挿入されて、ホルダー2の左側端部2Lと右側端部2Rがそれぞれ定着ローラ7の左側端部の開口部と右側端部の開口部から外方に突出している。そして、ホルダー2の左側端部2Lが定着装置筐体の第1の左側板12Lよりも外側に設けられた第2の左側板30Lに対して非回転に保持されている。また、ホルダー2の右側端部2Rが第1の右側板12Rよりも外側に設けられた第2の右側板30Rに対して非回転に保持されている。
【0037】
この場合、加熱アセンブリ1は、ホルダー2のコイル5、コア6a・6b・6cを組み込んだ第1半体2a側を記録材導入側に指向させた角度姿勢で、かつ定着ローラ内面に非接触に所定の間隔をあけた状態にして側板30L・30R間に配設される。ホルダー2の右側端部2Rの開口部からはコイル5のコイル供給線(リード線)5bが引き出されていて、電力制御回路(励磁回路、電磁誘導加熱駆動回路、高周波コンバータ)13に接続されている。
【0038】
(4)磁束調整装置
101は磁束調整装置である。この装置101は、加熱アセンブリ1と誘導発熱体である定着ローラ7の隙間に配置されて定着ローラ周方向へ移動する磁束調整部材(磁束の一部を遮蔽するシャッター)18を有する。そして、この磁束調整部材18を定着ローラ周方向の任意の位置へ移動せしめる為の移動手段25を有する。
【0039】
図5は加熱アセンブリ1と磁束調整装置101との斜視模型図である。加熱アセンブリ1のホルダー2の右側端部2Rには環状の軸受20aを介して環状の磁束調整部材駆動ギア20が回転可能に配設されている。磁束調整部材18は右側端部18bがギア20に対して結合されて片持ちで支持されている。磁束調整部材18はギア20が回転されることでギア20と一緒にホルダー2の外側においてホルダー2と同軸にホルダー2の周方向に回転する。即ち、磁束調整部材18はギア20が回転されることで加熱アセンブリ1と誘導発熱体である定着ローラ7の隙間において定着ローラ周方向へ移動する。
【0040】
移動手段25は、上記のように磁束調整部材18と接続した磁束調整部材駆動ギア20と、この駆動ギア20に駆動を与える為のギア列24a・24b、駆動源となる磁束調整部材駆動モーター21等で構成される。また、駆動ギア20には位置検出用のスリット(不図示)が設けられており、このスリットを光電読取りして磁束調整部材18の回転角度位置を検出するギアポジションセンサー19が配設されている。
【0041】
磁束調整部材18は、左側遮蔽部18L、右側遮蔽部18R、左側遮蔽部18Lと右側遮蔽部18Rとを支持する支持部18a、駆動ギア20との接続部20bなどからなる。磁束調整部材18の形態として、本例においては、記録材32の搬送方向と直交する方向(定着ローラ7の長手方向)に形状を変化させる構成となっている。
【0042】
具体的には、支持部18aにより連結支持された左側遮蔽部18Lと右側遮蔽部18Rとを突起状に定着ローラ7の円周方向に伸長させて遮蔽部18L・18Rとなし、この遮蔽部18L・18Rが交番磁束を遮蔽する。磁束遮蔽を必要と想定される記録材サイズに応じて、この遮蔽部18L・18Rの長手方向幅・位置は決定される。
【0043】
磁束調整部材18の材質としては、磁束調整部材自体の昇温を防止するために、誘導電流を流す導電体であって固有抵抗の小さい非磁性材料である銅、アルミニウム、銀若しくはその合金、または磁束を閉じ込める固有抵抗が大きいフェライト等が適している。さらに鉄やニッケルのような磁性材料でも、円孔やスリットなどの通孔を形成して渦電流による発熱を抑えることで使用が可能であるとされている。
【0044】
磁束調整部材18は、常時は、図6の(a)のように、定着ローラ7内において加熱アセンブリ1のコイル5側とは反対側(ホルダー2の第2半体2b側)の位置をホームポジションである磁束調整部材退避位置としてこの位置に保持される。この退避位置は、加熱アセンブリ1から定着ローラ7に磁束が実質的に作用しない位置である。
【0045】
また、磁束調整部材18は、図6の(b)のように、定着ローラ7内において加熱アセンブリ1のコイル5側の位置(ホルダー2の第1半体2a側)を遮蔽位置としてこの位置に保持される。この遮蔽位置は、加熱アセンブリ1から定着ローラ7に対する作用磁束を遮蔽部18L・18Rが非通紙部W3で一部遮蔽する作用磁束遮蔽位置である。
【0046】
上記のように、磁束調整部材18を小サイズ記録材の非通紙部W3を遮蔽するような形状にすることで、小サイズ記録材が連続して搬送された際に発生しやすい定着ローラ7の端部の非通紙部W3の過昇温を防止できる。
【0047】
つまり、図6の(a)では、磁束調整部材18は退避位置にあり、コア6a・6b・6cに導かれ定着ニップ部Nに向かう交番磁束はニップ長手方向全域で遮蔽されることなく、定着ローラ7の長手方向全域を電磁誘導発熱させる。
【0048】
一方、図6の(b)では、磁束調整部材18は遮蔽位置にあり、コア6a・6b・6cに導かれ定着ニップ部Nに向かう交番磁束の一部(長手方向端部領域)は遮蔽部18L・18Rに遮蔽される。これにより、定着ローラ7の長手方向端部領域の非通紙部W3の発熱を抑制することが可能である。
【0049】
この磁束調整部材18は、ギアポジションセンサー19の検知する磁束遮蔽部材18の位置信号と、定着ニップ部Nに通紙使用される記録材32のサイズを検知するサイズ検知センサ(不図示)からの検知信号に基づいて移動制御される。即ち、上記の信号に基づいて、制御回路部17が磁束調整部材駆動モーター21を回転駆動することによって、退避位置(ホームポジション)から遮蔽位置へ、または遮蔽位置から退避位置へ回転移動される。
【0050】
尚、磁束調整手段として、コイル5から定着ローラ7へ作用する磁束の一部を遮蔽するシャッター18を例に説明したが、これに限られない。例えば、磁性体をコイルに対して相対移動配置することで、コイルから定着ローラへの磁束経路を変更させ、定着ローラの長手方向に関する磁束密度を調整しても良い。
【0051】
(5)定着動作
制御回路部17は所定の制御タイミングにおいて駆動系33をONする。これにより定着ローラ7が回転駆動され、また加圧ローラ8が従動回転する。また、制御回路部17は加熱アセンブリ1のコイル5に電力制御装置(励磁回路)13からコイル供給線5bを介して電力(高周波電流)を供給する。これにより、加熱アセンブリ1から発生する磁束(交番磁界)の作用で誘導発熱体としての定着ローラ7が誘導発熱(うず電流損によるジュール熱)する。
【0052】
この定着ローラ7の温度が定着ローラ長手の定着ローラ表面の略中央部位に対向配置させた第1の温度検知手段(サーミスタ等)TH1で検出され、その検出温度信号がCPUとRAMやROMなどのメモリからなる温度制御手段としての制御回路部17に入力する。
【0053】
制御回路部17は、この第1の温度検知手段TH1から入力する定着ローラ7の検出温度が所定の定着温度に維持されるように、メモリに記憶された温調制御プログラムに従い電力制御装置13から加熱アセンブリ1のコイル5への供給電力を制御する。即ち、定着ローラ温度を所定の定着温度(目標温度)に温調する。
【0054】
この状態において、画像形成装置の画像転写部等の画像形成部側(不図示)において静電的に形成された未定着トナー画像tを担持した記録材32が記録材搬送路Hを矢印C方向から定着装置100の定着ニップ部Nに導入されて挟持搬送されていく。
【0055】
この挟持搬送過程で記録材32面の未定着トナー画像tが定着ローラ7の熱とニップ圧で固着画像として記録材32面に定着される。31は分離爪であり、定着ニップ部Nに導入されて定着ニップ部Nを出た記録材が定着ローラ7に巻き付くのを抑え、定着ローラ7から分離させる役目をする。
【0056】
定着ローラ7の長手方向において、非通紙部W3に対応する定着ローラ表面には、非通紙部領域W3の温度を検知する第2の温度検知手段(第1のシャッターサーミスター)TH2が対向配置されている。また、該非通紙部W3の外側部位に対応する定着ローラ表面には、非通紙部領域W3の外側部位の温度を検知する第3の温度検知手段(第2のシャッターサーミスター)TH3が対向配置されている。変更手段171は、第2と第3の温度検知手段TH2とTH3の検知結果に応じて、制御回路部17で温調される定着ローラ7の目標温度を予め定められた設定温度に変更、決定する。
【0057】
(6)輪止め具80
本実施例の装置100において、定着ローラ7の左側端部に対して環状の断熱ブッシュ70Lを介して外嵌されている環状の軸受11Lは、アウターリング11bの鍔座部11c(図3)が左側の定着ローラ支持体12Lの外側面に受け止められる。これにより、軸受11Lは定着ローラ長手方向内方への位置規制がなされる。断熱ブッシュ70Lは鍔座部70aが軸受11Lの外側面に受け止められることで定着ローラ長手方向内方への位置規制がなされる。
【0058】
ギア10は係止突起部10aの内端面が係止溝7aの内底面に受け止められて定着ローラ長手方向内方への位置規制がなされる。ギア10は、ギア10よりも外側において定着ローラ7の左側端部に装着された輪止め具80Lにより受け止められて定着ローラ長手方向外方への位置規制がなされる。この状態において、ギア10の内面側と断熱ブッシュ70Lの外面側は接触或いは僅少な隙間をもって対向している。これにより、断熱ブッシュ70Lおよび軸受11Lの定着ローラ長手方向外方への位置規制がなされる。
【0059】
また、定着ローラ7の右側端部に対して環状の断熱ブッシュ70Rを介して外嵌されている環状の軸受11Rはアウターリング11bの鍔座部11c(図3)が右側の定着ローラ支持体12Rの外側面に受け止められる。これにより、軸受11Rは定着ローラ長手方向内方への位置規制がなされる。断熱ブッシュ70Rは鍔座部70aが軸受11Rの外側面に受け止められて定着ローラ長手方向内方への位置規制がなされる。断熱ブッシュ70Rは、断熱ブッシュ70Rよりも外側において定着ローラ7の右側端部に装着された輪止め具80Rにより受け止められて定着ローラ長手方向外方への位置規制がなされる。
【0060】
本実施例において、左側と右側の輪止め具80Lと80Rは同様の構成であるから、以下、右側の輪止め具80Rを代表して説明する。図7の(a)は定着ローラ7の右側端部に装着されている部材の分解斜視図、(b)はそれらの部材が組み付けられた状態の定着ローラ7の右側端部斜視図である。
【0061】
輪止め具80Rは、C型止め輪50と、ワッシャー60を有している。即ち、軸である定着ローラ7に保持される被規制部材としての断熱ブッシュ70Rの定着ローラ長手方向外方への移動を規制する位置規制手段として、C型止め輪50を使用している。ワッシャー60は断熱ブッシュ70RとC型止め輪50の間に配置され、断熱ブッシュ70Rの削れを防止している。
【0062】
C型止め輪50において、50aは開口部(C端部)である。50bはC型止め輪50の内周部に周内周に沿って間隔をあけて設けられている2箇所以上の内向きの凸形状部(ワイヤーフォームングV形状部)である。これらの凸形状部50bは、軸である定着ローラ7の周方向に間隔をあけて設けられている2箇所以上のスリット部(ローラスリット部)Qに対応して嵌入係合される。本実施例においてはC型止め輪50には3箇所の凸形状部50bが設けられている。これに対応して、定着ローラ7には3つのスリット部Qが設けられている。
【0063】
C型止め輪50は3つの凸形状部50bをそれぞれ定着ローラ7側のスリット部Qに嵌入係合させた状態で定着ローラ7に対して外嵌されて装着される。これにより、C型止め輪50は定着ローラ7に対して定着ローラ長手方向の外方および内方への位置が規制がなされて装着される。
【0064】
本実施例の装置100においては、前記のように、加熱アセンブリ1と誘導発熱体である定着ローラ7の隙間に配置され定着ローラ周方向へ移動する磁束調整部材18と、磁束調整部材18を任意の位置へ移動せしめる為の移動手段25などからなる。そのため、図8の(a)で示すハッチング部の様に、磁束調整部材18と定着ローラ7の内径とのクリアランスCLを接線方向で1.2mm確保している。クリアランスを接線方向で1.2mm確保している理由は次のとおりである。
【0065】
電磁誘導加熱方式を用い省エネ及び装置起動時間の短縮化など実現させるため、本実施例の定着ローラ7の肉厚は、0.65mmにすることで熱容量を低減し、更に、加熱アセンブリ1と定着ローラ7とのクリアランスを1.2mmとする。これにより、磁束発生手段である加熱アセンブリ1から発生する磁束を定着ローラ7の強磁性の金属内により多く拘束させることができ発熱効率を向上できるからである。
【0066】
本実施例のC型止め輪50は、角線材1mmのワイヤーフォーミングで製作されている(角線材C型止め輪)。定着ローラ7にC型止め輪50の取り付けスリット部Qを有しており、スリット部Qの周方向の溝幅8.0mm、軸方向の溝幅1.2mmとなっている。このスリット部QにC型止め輪50の凸形状部50bを係止する。
【0067】
C型止め輪50の凸形状部50bの形状量は、定着ローラ7の肉厚0.65mmと内壁からの凸形状量0.35mmとし、定着ローラ7の外径より0.95mmとなっており、回動する磁束調整部材18とのクリアランス0.85mmを確保している。
【0068】
C型止め輪50は、定着ローラ7に外嵌して締め付ける構成をとるためバネ性を持たせる必要があり、C型止め輪50の開口部50aを閉じ形状に製作しなければならない。その際、ワイヤーフォーミングで製作を行うが、定着ローラ7と磁束調整部材18のクリアランスの関係上、凸形状部50bの凸形状はV形状で製作しなければならない。
【0069】
そのため、C型止め輪50は凸形状部50bがV形状となっているため、定着ローラ7が停止したとき軸アライメントのズレでスラスト力が掛かって停止する。そして、定着ローラ7に再駆動を掛けた場合に断熱ブッシュ70Rとワッシャー60が空転することで、定着ローラ7と通常連れまわっているC型止め輪50に引きはがす方向の力(ブレーキ)を加えてしまうことがある。
【0070】
本実施例における検討では、スラスト力約294Nかけた場合にC型止め輪50に引きはがす方向の力(ブレーキ)は静止摩擦係数(駆動の瞬間)より、約5Nかかる。それに対し、C型止め輪50が開く耐力は約1.8Nとなっている。そのため、図9に示す定着ローラ端面I(スリット端部)の回転方向に対し、凸部端面L(ワイヤーフォーミングV形状端部)に外向きの力Fsinθ‐aが加わる角度になってしまう。すなわち、V形状は定着ローラ周方向に対して乗り上げやすい形状となってしまう。図8の(a)において、JはワイヤーフォーミングV形状角度である。
【0071】
そこで、本実施例においては、図10のように、断熱ブッシュ70RとC型止め輪50の間に配置されたワッシャー60に対して固定部M(ワッシャー係止部)を設ける。そして、その固定部Mに対してC型止め輪50の被固定部P1・P2(止め輪係止部)を係止する。これにより上記のようなC型止め輪50の乗り上げを防止している。
【0072】
図10に示す本実施例では、C型止め輪50の開口部(C端部)50aの両端部に被固定部P1・P2として内向き(C型止め輪中心方向の向き)の凸部を具備させている。また、ワッシャー60側の固定部Mとして前記内向きの凸部P1・P2と係合する張り出し部が設けられている。張り出し部Mには前記内向きの凸部P1・P2が挿入される係合穴部M1・M2が設けられている。
【0073】
張出し部Mはワッシャー60のC型止め輪60との摺動面よりC型止め輪取り付け方向に垂直な張出し部であり、その垂直な面内に係合穴部M1・M2が設けられている。その係合穴部M1・M2にC型止め輪50の開口部50aの両端部の凸部P1・P2がそれぞれ挿入される。
【0074】
ここで、定着ローラ回転時、図8の(a)と(b)に示すように、定着ローラ7のスリット部Qの端部とC型止め輪50の凸形状部50bがスリット部Qから乗り上げるまでの距離をL(定着ローラスリット端部とC型止め輪凸部の距離)とする。また、ワッシャー60の係止部Mの開口部端面とC型止め輪50の被係止部P2までの距離をK(ワッシャー係合部とC型止め輪係合部の距離)とする。
【0075】
この距離Lと距離Kの関係を、K<Lを満足する様な、ワッシャー係止部Mを設けることで、C型止め輪50の凸形状部50bがスリット部Qから乗り上げるのを防止することができる。JはワイヤーフォーミングV形状角度である。
【0076】
上記の実施例をまとめると次のとおりである。C型止め輪50の凸形状部50bが軸である定着ローラ7のスリット部Sの端部に当接する際、凸形状部50bがスリット部Sの端部から乗り上げない輪止め具を提案するものである。薄肉のローラ内径に近接する部品等あった場合、薄肉ローラの内径側にC型止め輪50より係止片を設けられない課題がある。
【0077】
そこで、C型止め輪50の凸形状部50bがローラスリット部Sの端部に当接する際、C型止め輪50の凸形状部50bが定着ローラ7のスリット部Sの端部から乗り上げようとする際、この乗り上げを防止する構成を提案するものである。そのために、C型止め輪50の両端部の被係止部P1・P2とワッシャー60側の係止部Mとの相互係合にて上記の乗り上げを防止する構成としている。
【0078】
C型止め輪50の両端部P1・P2とワッシャー係止部Mが定着ローラ7と同時に回転することで、薄肉ローラの板厚と同じ掛量の凸形状部50bであった場合でもC型止め輪50を軸である定着ローラ7に係止することができる。そして、薄肉ローラの板厚と同じ掛量の凸形状部50bであるためクリアランスCLも確保できる。
【0079】
(7)その他の事項
1)以上、右側の輪止め具80Rを代表して説明したが、左側の輪止め具80Lも上記の右側と輪止め具80Lと同様である。
【0080】
2)輪止め具80の開口部(C端部)50aの両端部に被固定部P1・P2として外向き(C型止め輪中心方向とは反対の向き)の凸部を具備させて、それをワッシャー60側の係合穴部M1・M2に挿入する構成にすることもできる。
【0081】
3)C型止め輪50とワッシャー60との相互固定手段(被固定部と固定部)の構成は、実施例の凸部P1・P2と係合穴部M1・M2の構成に限られない。C型止め輪50をワッシャー60に固定してC型止め輪50の開きを抑制する構成のものであればよい。
【0082】
4)以上の説明は定着装置に関する実施例であるが、本発明の輪止め具80は回転または固定軸上に保持される部材をその軸方向に位置規制する軸止め具に関するものであるため、定着装置に限定されない。
【符号の説明】
【0083】
80・・輪止め具、50・・C型止め輪、50b・・内向きの凸部、P1・P2・・被固定部、60・・ワッシャー7、M・・固定部、7・・軸、S・・スリット部、70・・被規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に保持される被規制部材の軸方向の位置を規制するために軸に装着される輪止め具であって、
前記軸の周方向に設けられているスリット部に対応して嵌入係合される内向きの凸形状部が内周部に設けられていて前記軸に外嵌されるC型止め輪と、
前記C型止め輪と前記被規制部材との間において前記軸に外嵌されるワッシャーと、
を有し、前記C型止め輪には前記ワッシャーに対する被固定部が、前記ワッシャーには前記被固定部を係止する固定部が設けられていることを特徴とする輪止め具。
【請求項2】
前記被固定部は前記C型止め輪における開口部の両端部に設けられており、前記ワッシャーには前記固定部として前記C型止め輪の取り付け側の一部に前記被固定部と係合する張り出し部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の輪止め具。
【請求項3】
前記開口部の両端部に設けられた前記被固定部は内向きまたは外向きの凸部であり、固定部としての前記張り出し部には前記内向きまたは外向きの凸部が挿入される係合穴部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の輪止め具。
【請求項4】
前記C型止め輪は、内周部に、前記軸の周方向に間隔をあけて設けられている2箇所以上のスリット部に対応して嵌入係合される2箇所以上の内向きの凸形状部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の輪止め具。
【請求項5】
前記軸の回転時に、前記C型止め輪の前記凸部が前記ワッシャーの前記係合穴部に当接して前記C型止め輪が固定されることを特徴とする請求項3または4に記載の輪止め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87810(P2013−87810A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226635(P2011−226635)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】