説明

輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法およびシステム

【課題】輸入実行直後、あるいは輸入申告前に輸入対象の品目に関して必要な法令の手続の要否を簡単かつ正確に知らせることのできる輸入品の法令対応チェック漏れ防止システムを提案すること。
【解決手段】HSコードには輸入の対象となるあらゆる品目が網羅されている。電気用品安全法の対象となる450品目もこの中に必ず含まれる。この450品目がHSコードのどの品目に対応するのかを特定した対照表11を作成し、これを電子データの形態でデータベース2とし、輸入実績に示される品目の中にこの450品目に該当する品目が含まれているか否かをコンピュータシステムからなるチェックシステム4によって電子的に確認できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気用品安全法などのように、輸入品に課せられる規制などを規定している各種の法令による対象品目であるか否かをチェックする際に用いる輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法およびシステムに関する。特に、本発明は、輸入品が電気用品安全法による対象品目であるか否かをチェックする際に用いる輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
貿易対象の商品については「HSコード」が用いられている。HSコードは、「Harmonized Commodity Description and Coding System」の略であり、1988年1月1日、HS条約(商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約)として発効した。現在、日本を含む主要貿易国など117の国、地域と1つの関税同盟がこの条約の加盟国となっている。
【0003】
HSコードは、あらゆる貿易対象品目を「部」および「類」、「項」、「号」の各2桁ずつ3段階(合計6桁)の数字を用いて順に細分化して分類、配列しており、これは条約加盟国すべてに共通するコードである。現在、21部、97類、5223号(品目)に細分化されたあらゆる品目が組織的、体系的に分類されている。
【0004】
さらに、日本国内においては、関税定率法においてHSコードを基準とした輸入申告などの通関業務が行われており、具体的にはHSコードが組み込まれたNACCS(通関情報処理システム)にて電子的な情報処理が行われている。この電子処理による輸入実績に関しては、社団法人日本通関事業組合からほぼリアルタイムで入手可能(有料)である。入手できるデータには、HSコード6桁に加え、日本国独自で付与された最大3桁分の分類番号が付与されている。したがって、最大で合計9桁の細分化された商品分類データが各品目に付与されており、各輸入業者は、自社の輸入品目の実績をより詳細に確認できるようになっている。
【0005】
ここで、国内で適用される法令で、輸入許可証あるいは輸入が禁止されている品目に関しては、輸入通関申告時に事前に手続が行われるので、法令違反行為は事前に防止される。しかるに、法令によっては輸入については許可などの事前手続が不要であるが、国内での販売、使用時に必要な手続を要する品目を規定している場合がある。たとえば、電気用品安全法に示される品目は、事前の輸入許可を必要としないため、輸入を実行した後に、必要な手続を怠り、法令違反を引き起こす場合がある。
【0006】
電気用品安全法においては、その別表第二(型式の区分)に具体的な品名が450種類掲載されている。輸入業者は、この法律の遵守のために、まず法律の対象となる品目の確認作業を行うことになり、社内の現場に対して、450品目の内容の理解と対象となる品目に関しては法律に求められた義務を忠実に履行することを求めることになる。
【0007】
各輸入業者は、このような対応を現場に徹底させなければならない。しかし、経験不足など、社員の法に対する知識レベルが不十分な場合には、不注意などによる単純な見落としが発生する可能性を排除できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、このような状況を改善するために、輸入実行直後、あるいは輸入申告前に輸入対象の品目に関して必要な法令の手続の要否を簡単かつ正確にチェックすることのできる輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法およびシステムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
HSコードには輸入の対象となるあらゆる品目が網羅されている。例えば、電気用品安全法の対象となる450品目もこの中に必ず含まれることになる。この点に着目して、本発明では、この450品目をHSコードのどの品目に対応するのかを特定した対照表を作成し、これを電子データの形態でデータベース化して、輸入実績に示される品目の中にこの450品目に該当する品目が含まれているか否かをコンピュータシステムからなるチェックシステムによって電子的に確認できるようにしている。
【0010】
ここで、この確認作業は、社団法人日本通関事業組合等から入手できる輸入実績のデータを逐一照合することにより可能である。この照合作業は、HSコードと対象となる450品目のデータベースとの電子的な照合作業であるので、労力を要することなく迅速かつ正確に行うことができる。また、この照合作業により、仮に経験不足、見落としによる当該法律の対象品目の輸入を行った場合でも、少なくとも市場に対象商品が出回る前に対応することが可能になる。
【0011】
また、最近は各社の事務処理が電子化され、輸入業務に際しては輸入通関業務のために事前にHSコード情報が輸入品目に付与されることが多い。したがって、このデータとの照合を行えば、輸入実行前に法律の求める義務を十分な余裕をもって実施することが可能になる。
【0012】
一方、本発明の方法およびシステムは、電気用品安全法以外の法令違反を防止するためのチェックシステムとして用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、輸入業務において、経験不足、見落としなどによる電気用品安全法などの法律違反を確実に回避できる。また、多種の輸入品目、新規分野の品目の輸入業務を実行している場合でも容易に対象となる品目を特定できるので、膨大な作業となりうる確認作業を、労力と時間を殆ど要することなく正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システムの実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システムの概略ブロック図である。この図に示すように、輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システム1は、対照表データベース2と、コンピュータ3を中心に構成されたチェックシステム4とを有している。対照表データベース2には、HSコードと、輸入品の関連法規において規制対象とされている規制対象品目の対照表5が電子データの形態で記憶保持されている。チェックシステム4はCPU、ROM、RAMなどを備えており、ROMなどに予め格納されている検索プログラムを実行することにより対照表5の検索動作が実現される。また、チェックシステム4には操作パネル、マウスなどの入力部6、液晶表示パネル、スピーカなどの出力部7などが接続されている。さらに、チェックシステム4は通信機能を内蔵しており、LAN、インターネットなどの通信回線8を介して、外部との間で通信が可能である。
【0016】
チェックシステム4は、入力部6からHSコードが入力されると、入力されたHSコードを用いて対照表データベース2を検索して、入力されたHSコードが規制対象品目に対応付けされているか否かを判別し、チェック結果(判別結果)を出力部7を介して出力する。また、通信回線8を介してHSコードを受信してチェックを実行し、チェック結果を通信回線8を介して送信することも可能となっている。
【0017】
対照表データベース2の対照表5には少なくとも第1の対照表11および第2の対照表12が含まれている。第1の対照表11は、HSコードと、電気用品安全法の別表第二(型式の区分)に掲載されている指定品目との対応関係を示す対照表である。第2の対照表12は、電気用品安全法とは異なる輸入品の関連法規における対象品目とHSコードとの対応関係を示す表である。チェック時においては、入力部5を介して対照表11、12の一方を選択すると共に、HSコードを入力すればよい。
【0018】
ここで、図2には、電気用品安全法による第1の対照表11の一部を示してある。第1の対照表11には、「No.」、「大項目」、「特定(非)No.」、「具体的な品名」、「HSコード(9桁)」、「HS数」、「品名(HSコード)」、「備考」の各欄が含まれている。この表に示すように、電気用品安全法の指定品目とHSコードとは一対一に対応するものではなく、電気用品安全法の指定品目1個に対して複数個のHSコードが対応している場合もある。
【0019】
図3にはチェック結果の出力例を示してある。図示の例ではチェック結果を示す一覧表には、「営業部室名」、「輸入申告日」、「INDEX NO.」、「輸入申告商品名」、「HS CODE」、「電安法上の商品名」の各欄が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システムの概略ブロック図である。
【図2】電気用品安全法による対照表の一例を示す説明図である。
【図3】チェック結果の一覧表の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システム
2 対照表データベース
3 コンピュータ
4 チェックシステム
5 対照表
6 入力部
7 出力部
8 通信回線
11 第1の対照表
12 第2の対照表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSコードと、輸入品の関連法規において規制対象とされている規制対象品目との対照表を作成し、
当該対照表が電子データの形態で記憶保持された対照表データベースを作成し、
コンピュータシステムを用いて、前記対照表データベースを用いたチェックシステムを構築し、
輸入品に付与されたHSコードを前記チェックシステムに入力して前記対照表データベースを検索させ、入力されたHSコードが規制対象品目に対応付けされているか否かのチェック結果を出力させることを特徴とする輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法において、
輸入品に付与されたHSコードとして、社団法人日本通関事業組合から入手可能な輸入通関実績データにおいて付与されているHSコード、または、輸入通関申告データにおいて付与されているHSコードを用いることを特徴とする輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法において、
輸入品の関連法規は電気用品安全法であり、
前記対照表は、HSコードと、電気用品安全法の別表第二(型式の区分)に掲載されている指定品目との対照表であることを特徴とする輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援方法。
【請求項4】
HSコード、および、輸入品の関連法規において規制対象とされている規制対象品目の対照表が、電子データの形態で記憶保持されている対照表データベースと、
この対照表データベースを用いたチェックシステムとを有し、
このチェックシステムは、HSコードの入力部と、入力されたHSコードを用いて前記対照表データベースを検索して入力されたHSコードが規制対象品目に対応付けされているか否かを判別するコンピュータシステムからなるチェック部と、このチェック部のチェック結果を出力する出力部とを備えていることを特徴とする輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システムにおいて、
輸入品の関連法規は電気用品安全法であり、
前記対照表は、HSコードと、電気用品安全法の別表第二(型式の区分)に掲載されている指定品目との対照表であることを特徴とする輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システム。
【請求項6】
請求項4に記載の輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システムにおいて、
輸入品の関連法規は、少なくとも、第1の関係法規と第2の関連法規を含み、
第1の関連法規は電気用品安全法であり、
前記対照表は、少なくとも、第1の対照表と第2の対照表を含み、
第1の対照表は、HSコードと、電気用品安全法の別表第二(型式の区分)に掲載されている指定品目との対応関係を示す対照表であり、
前記入力部を介して使用する前記対照表を選択することが可能であり、
前記チェック部は、選択された対照表を検索することを特徴とする輸入品の法令対応チェック漏れ防止支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−98914(P2009−98914A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269593(P2007−269593)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000005913)三井物産株式会社 (37)