説明

輸液バツグ

【構成】 ポリオレフィン系樹脂からなるバッグ本体10、10間に挟まれて剥離可能に熱シールされた、弱シール部14としての二層のテープ40を設ける。その一方は本体10、10と同じ樹脂からなる樹脂層41である。他方は本体10、10と同種の樹脂にそれと実質的に相互溶着しない別のポリオレフィン系樹脂をブレンドした樹脂層42である。弱シール部14には、熱シールされた部分よりも各薬液収容室15、16側へ延びる非シール部43、44を形成する。
【効果】 ブレンド樹脂層42が上記別の樹脂を含んでいるので、本体10からの剥離が容易になる。従って剥離する際に本体10、10が破損しない。非シール部43、44と本体10、10との隙間に薬液の液圧がかかり易くなっているので、弱シール部14を容易に剥離することができる。本体10、10の周縁部11〜13とテープ40の熱シール処理を同一温度で行うことができる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、輸液バッグに関し、より詳しく述べると、異種の薬液をそれぞれ収容する薬液収容室を、弱シール部によって区画している合成樹脂製の輸液バッグに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】
従来より周縁部が熱シールされていると共に、内部に異種の薬液をそれぞれ収容する、二室に区画された薬液収容室を備えた合成樹脂製の輸液バッグにおいて、上記薬液収容室を二室に区画するために、剥離可能に弱シール部を形成することが公知の手段として採用されてきた。
【0003】
以下にその弱シール部の具体例と、問題点を指摘する。
■ 接着阻害剤を介在させてシールしたもの(実公昭59−42370)は、製造工程が複雑であることと、接着阻害剤が内容物に混入するので、医療用には不適である。
■ 二室の隔離部分に破断容易な薄膜を挟んでシールしたもの(実公平2−11342)は、破断した薄膜の断片が内容物に混入するおそれがあるので、医療用に用いるには不適であるほか、破断するための薄膜の材質がきわめて限定されることになる。
【0004】
■ 弱シール部に、バッグ本体の材質との溶着強度が弱い材質の薄膜を入れてやるもの(周知慣用技術集56−35の135頁)は、溶着強度が弱いので、溶着ムラが生じ易いほか、不必要なときに剥離してしまうおそれがある。そのため、一般に強めの溶着を薄膜全体にわたって施す操作が試みられてきたが、それにより今度は剥離が困難になるという問題が生じ、ほとんど採用されていないのが現状である。
【0005】
■ バッグの周縁部よりも二室の隔離部分を低い温度で熱シールするもの(特公平2−4671)は、周縁部の熱シールをポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド樹脂のうち高い溶融温度のポリプロピレン樹脂の温度条件で行い、弱シールにする隔離部分は溶融温度の低い方のポリエチレン樹脂の温度条件で熱シールするようにしたものであるが、ブレンドした樹脂のうちの一方ずつの溶融温度を選択しての熱シールが難しく、上記構成の場合、周縁部の溶着強度が充分でない場合がある。そのため薬液を混和させるためにバッグを押圧した際に、弱シール部より先に周縁部が破れる危険性がある。さらに周縁部と弱シール部とのシール温度を異にしているので、温度設定が非常に煩わしい上に、弱シール部のシール条件が変わると、シール強度が大きく変わる結果、剥離に要する力が大きく変わって製品の品質にばらつきが生じるという問題が発生する。
【0006】
しかも、弱シール部を剥離する際に、ポリエチレン樹脂の伸長した微細繊維(以下、「ヒゲ」という)が発生し、このヒゲが脱離して不溶性微粒子が生じるというおそれがある。また剥離面が白化し、製品の美観が悪くなって、その製品を使用している患者に心理的な悪影響を与えるおそれがあるという問題もある。
■ 弱シール部として、異種の樹脂テープをバッグ本体間に挟み、バッグ本体との熱シールに表裏で強弱をつけたもの(実開昭62−3466)もあるが、テープの全幅をバッグ本体と熱シールしたものゆえ、弱シール部をバッグ本体から剥離し難く、剥離しようとして強い力がかかってバッグ本体に破れを生じたりするおそれがあった。
【0007】
本考案は、以上のごとき従来における輸液バッグに有する課題を解消するために種々研究の末考案するに至ったものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本考案における輸液バッグは、周縁部が熱シールされたポリオレフィン系樹脂のバッグ本体を含み、このバッグ本体内に形成されて異種の薬液をそれぞれ収容する薬液収容室を、当該バッグ本体の内壁とその間に挟まれて剥離可能に熱シールされた弱シール部によって区画している輸液バッグにおいて、上記弱シール部は、バッグ本体(多層体の場合は最内層のポリオレフィン系樹脂)と同じ樹脂からなる同一樹脂層と、バッグ本体と同種のポリオレフィン系樹脂にそれとは実質的に相互溶着しない別のポリオレフィン系樹脂をブレンドしたブレンド樹脂層とからなるテープを熱シールすることにより形成され、この弱シール部には、その幅方向両端部分に、熱シールされた部分よりも各薬液収容室側へ延設された非シール部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
上記バッグ本体は、ポリエチレン樹脂の単層体あるいは最内層がポリエチレン樹脂の多層体であり、上記ブレンド樹脂層のバッグ本体と同種のポリオレフィン系樹脂は、密度が0.92〜0.96のポリエチレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層の別のポリオレフィン系樹脂は、0〜5モル/モル%のエチレンを含有するポリプロピレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層のポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド比は、75:25〜40:60(重量比)であってもよい。
【0010】
上記テープ全体の厚みが40〜150μmとなるように、同一樹脂層とブレンド樹脂層の厚みが、それぞれ20〜100μmの間に設定されていてもよい。
【0011】
【作用】
上記構成の本考案による輸液バッグでは、バッグ本体間に挟まれて剥離可能に熱シールされた弱シール部が、ポリオレフィン系樹脂からなるバッグ本体(多層体の場合は最内層のポリオレフィン系樹脂)と同じ樹脂からなる同一樹脂層と、上記バッグ本体と同種のポリオレフィン系樹脂にそれと実質的に相互溶着しない別のポリオレフィン系樹脂をブレンドしたブレンド樹脂層とからなるテープを熱シールすることによって構成されているから、バッグ本体に対しては、テープのうちのブレンド樹脂層が同一樹脂層に比べてより剥離が容易な弱シールとなり、バッグ本体からの剥離側となる。他方、弱シール部以外となる周縁部の熱シールが同じポリオレフィン系樹脂どうしの溶着によるものゆえ、充分な強度があり、弱シール部より先に周縁部でバッグ本体どうしが剥離するおそれはない。またブレンド樹脂層を採用していることから、弱シール部を剥離する際に、破片等の異物が発生するおそれもない。しかもこの弱シール部には、その幅方向両端部分に、熱シールされた部分よりも各薬液収容室側へ延設された非シール部が形成されているので、弱シール部両端とバッグ本体間の隙間に薬液の液圧がかかり易くなっている結果、この部分を利用して弱シール部をバッグ本体から容易に剥離することができる。
【0012】
また上記バッグ本体のポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂の単層体あるいは最内層がポリエチレン樹脂の多層体であり、上記ブレンド樹脂層のバッグ本体と同種のポリオレフィン系樹脂が、密度が0.92〜0.96のポリエチレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層の別のポリオレフィン系樹脂が、0〜5モル/モル%のエチレンを含有するポリプロピレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層のポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド比が、75:25〜40:60(重量比)である場合には、シール条件(シール温度、シール圧力等)が多少ばらついたり変化しても、製品のシール強度を所望の強さに維持することができると共に、剥離時に剥離面が白化したり、不溶性微粒子の発生を防止することができる。
【0013】
さらに上記テープ全体の厚みが40μm〜150μmとなるように、同一樹脂層とブレンド樹脂層の厚みが、それぞれ20μm〜100μmの間に設定されている場合には、シール条件に多少のばらつきや変化が生じた場合においても、シール強度の一様性を一層高めることができる。
【0014】
【実施例】
本考案の実施例について図を参照しながら以下に例示する。
1は輸液バッグの全体を指しており、10、10は合成樹脂シートからなるバッグ本体である。本実施例において、このバッグ本体10は、ポリオレフィン系樹脂としてのポリエチレン樹脂の単層体にて形成されており、周縁部即ち左右側周縁部11、12および下周縁部13が熱シールされている。なお上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂の単層体の他、ポリプロピレン樹脂を採用してもよい。またポリエチレン樹脂を最内層とする多層体により上記バッグ本体10、10を採用してもよい。
【0015】
バッグ1にはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、好ましくはバッグ本体10、10と同樹脂からなる舟型口芯20が口部となるよう溶着されている。舟型口芯20には1個以上の口部31を有し、口部31にゴム栓を有するキャップ30が取付けられている。
14は異種の薬液をそれぞれ収容した薬液収容室15、16を剥離可能に隔離している弱シール部であり、その幅は、5〜20mmである。この弱シール部14はバッグ本体10、10間に二層のテープ40を挟んで剥離可能に熱シールしてある。
【0016】
テープ40の一方の層は、バッグ本体10、10と同じポリオレフィン系樹脂にて構成された同一樹脂層41であり、他方の層は、このバッグ本体10、10と同種のポリオレフィン系樹脂に、それと実質的に相互溶着しないポリオレフィン系樹脂をブレンドして構成されたブレンド樹脂層42である。
例えば、本実施例におけるように、バッグ本体10、10及び同一樹脂層41をポリエチレン樹脂にて形成する場合、他方のブレンド樹脂層42は、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド樹脂にて形成する。なお、バッグ本体10、10のポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が好ましいものである。
【0017】
バッグ本体10、10が最内層をポリエチレン樹脂とする多層体である場合も上述と同じテープ構成となる。
ここでブレンド樹脂層42のポリエチレン樹脂の密度は、0.92g/cm3 〜0.96g/cm3 がよく、好ましくは0.93g/cm3 〜0.95g/cm3 がよい。ブレンド樹脂層42のポリエチレン樹脂の密度が上記の範囲よりも低い場合には、シール条件(シール温度やシール圧力等)のばらつきや変化により、シール強度がばらつくという不都合がある。加えて弱シール部14を剥離する際に、ヒゲが発生したり、剥離面が白化したりする。またヒゲが発生することにより、剥離面からヒゲが脱離して薬液中に不溶性微粒子が発生するという不都合がある。また、ブレンド樹脂層42のポリエチレン樹脂の密度が上記の範囲よりも高い場合には、シール強度が低下するという不都合がある。これに対し、上記実施例の範囲にブレンド樹脂層42のポリエチレン樹脂の密度を設定した場合には、シール条件が変化しても、一様なシール強度を得ることができると共に、ポリエチレン樹脂のヒゲの発生を防止でき、しかも剥離面の白化を防止することができ、好都合である。
【0018】
ブレンドするポリプロピレン樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン・プロピレンのランダムコポリマー、ブロックコポリマーを使用することができ、コポリマーのエチレン含量は、5モル/モル%以下が好適である。ブレンド樹脂層42のポリプロピレン樹脂のエチレン含量が上記の範囲外である場合には、シール条件の変化により、シール強度がばらついたり、ヒゲが発生したり、剥離面が白化するおそれがある。これに対し、上記実施例の範囲にブレンド樹脂層42のポリプロピレン樹脂のエチレン含量を設定した場合には、シール条件が変化しても、一様なシール強度を得ることができると共に、剥離面にヒゲや白化が発生するのを防止でき、好都合である。
【0019】
ブレンド樹脂層42のブレンド比は、ポリエチレン樹脂:ポリプロピレン樹脂=75:25〜40:60(重量比)であり、好ましくはポリエチレン樹脂:ポリプロピレン樹脂=70:30〜50:50である。ブレンド樹脂層42内のポリプロピレン樹脂の割合が上記の範囲よりも高い場合には、シール強度が弱すぎ、ポリプロピレン樹脂の割合が上記の範囲よりも低い場合には、シール強度が強すぎて不都合である。これに対し、上記実施例の範囲にブレンド樹脂層42のブレンド比を設定した場合には、適度のシール強度を得ることができ、しかもシール条件がはらついたり変化しても一様なシール強度を得ることができ、好都合である。
【0020】
なおバッグ本体10、10とテープ40の一方の層41をポリプロピレン樹脂とすることもできる。その場合、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド樹脂の層42のブレンド比は、ポリエチレン樹脂:ポリプロピレン樹脂=1:0.2〜2(重量比)とし、また上記熱シール温度は200℃〜250℃とするのがよい。
【0021】
上記テープ40の長さはバッグ本体10、10の横幅より若干短く設定されている(図1参照)。さらにテープ40の厚さは、40μm〜150μmであり、同一樹脂層41及びブレンド樹脂層42は、それぞれ20μm〜100μm、好ましくは20μm〜70μmである。ブレンド樹脂層42の厚さが上記の範囲外であると、シール条件の変化により、シール強度がばらつくという不都合がある。これに対し、上記実施例の範囲にブレンド樹脂層42の厚さを設定した場合には、シール条件がばらついていたり変化しても、一様なシール強度を得ることができ、好都合である。
【0022】
さらに弱シール部14の両幅方向両端部分には、各薬液収容室15、16側に0.5mm〜5mm延設された非シール部43、44が形成されている。そして、この非シール部43、44が形成されることによって、それとバッグ本体10、10との隙間に薬液の液圧力Fがかかり易くなっている(図3、図4参照)。
上記バッグ本体10、10の各周縁部11、12、13および弱シール部14の熱シールの温度は130℃〜200℃である。
【0023】
次に、上記本考案の輸液バッグの製造例を以下に述べる。
A方法:(図5参照)
(1)押出し成形による円筒状ポリエチレン樹脂シートSを一定の長さに切断する。
(2)側面の一部に穴Hをあけ、上記フィルム状テープ40を挿入する。
【0024】
(3)3方の周縁部11、12、13および弱シール部14を熱溶着し(但し下部に薬液の充填口を残す)、周縁部の余分の樹脂をカットする。
(4)舟型口芯20を取付ける。
(5)下部充填口17より薬液を充填し熱シールした後、上部口部31より薬液を充填しキャップ30を取付ける(逆も可)。
【0025】
(6)必要に応じて滅菌操作を行う。
他の製造例については(図6参照)、 (1)ポリエチレン樹脂シートS上に上記フィルム状テープ40を一定の間隔で配置する。
(2)もう一枚のポリエチレン樹脂シートSを(1) のシートSの上に被せる。
【0026】
(3)3方の周縁部11、12、13および弱シール部14の熱溶着、並びに周縁カットを行う。 (4)〜(6) 上記A方法に準じる。
上記何れの方法の場合も、テープ40は、同一樹脂層41を構成する一方のポリエチレン樹脂およびブレンド樹脂層42を構成する他方のポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド樹脂とを、共押出し成形方法等の公知の二層形成のための方法によって製造される。
【0027】
以上説明したように実施例における輸液バッグ1によれば、バッグ本体10、10間に挟まれて剥離可能に熱シールされた弱シール部14が、ポリオレフィン系樹脂からなるバッグ本体10、10(多層体の場合は最内層のポリオレフィン系樹脂)と同じ樹脂からなる同一樹脂層41と、上記バッグ本体10、10と同種のポリオレフィン系樹脂にそれと実質的に相互溶着しない別のポリオレフィン系樹脂をブレンドしたブレンド樹脂層42とからなるテープ40を熱シールすることによって構成されているから、バッグ本体10、10に対しては、テープ40のうちのブレンド樹脂層42が同一樹脂層41に比べてより剥離が容易な弱シールとなり、バッグ本体10、10からの剥離側となる。他方、弱シール部14以外となる周縁部11、12、13の熱シールがポリエチレン樹脂の単体樹脂どうしの溶着によるものゆえ、充分な強度があり、弱シール部14より先に周縁部11、12、13でバッグ本体10、10どうしが剥離するおそれはない。またブレンド樹脂層42を採用していることから、弱シール部14を剥離する際に、破片等の異物が発生するおそれもない。しかも上記弱シール部14には、その幅方向両端部分に、熱シールされた部分よりも各薬液収容室15、16側へ延設された非シール部43、44が形成されているので、この非シール部43、44とバッグ本体10、10との間に薬液の液圧がかかり易くなっている結果、これを利用して弱シール部14をバッグ本体10、10から剥離させ易くなる。
【0028】
従って本実施例によれば、輸液バッグ1の一方の薬液収容室15(16)に軽い押圧荷重(本実施例では20〜50kg)を加えることにより、バッグ本体10、10の破損を招来することなく、弱シール部14を容易に剥離することができるという特有の効果があり、異種の薬液を混和させる際の弱シール部14の剥離を確実に行うことができ、医療用としても安全で使いやすい輸液バッグ1を提供することが可能になる。
【0029】
しかも本実施例によれば、バッグ本体10、10の周縁部11、12、13の熱シールと弱シール部14の熱シールを同一温度で溶着することができ、温度設定の煩わしさがない。また熱シールを同一温度で溶着できることから、温度設定ミスによる不良品の発生がない。従って製品の製造が容易になり、産業上の利用性が高くなるという顕著な効果も奏する。
【0030】
さらに本実施例においては、上記バッグ本体10、10のポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂の単層体であり、上記ブレンド樹脂層42のバッグ本体10、10と同種のポリオレフィン系樹脂が、密度が0.92〜0.96のポリエチレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層42の別のポリオレフィン系樹脂が、0〜5モル/モル%のエチレンを含有するポリプロピレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層42のポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド比が、75:25〜40:60(重量比)であるので、シール条件が多少ばらついたり変化しても、製品のシール強度を所望の強さに維持することができると共に、剥離時に剥離面が白化したり、不溶性微粒子の発生の原因となるヒゲが生じたりするのを防止することができる。従って製品の品質管理が容易になり、しかも不溶性微粒子による薬液の汚染や悪影響を防止することができるという顕著な効果を奏する。加えて剥離面の白化を防止することが可能なので、輸液バッグ1の美観を損ねるおそれもない。
【0031】
さらに本実施例においては、テープ40の厚みが40μm〜150μmになるように、上記同一樹脂層41とブレンド樹脂層42の厚みをそれぞれ20μm〜100μmに設定しているので、シール条件が多少ばらついたり変化しても、製品のシール強度を所望の強さに維持することができる。従って、製品の品質のばらつきを防止することができるという利点がある。
【0032】
【考案の効果】
上記本考案の輸液バッグによると、輸液バッグの一方の薬液収容室に軽い押圧荷重を加えることにより、バッグ本体の破損を招来することなく、弱シール部を容易に剥離することができるという特有の効果があり、異種の薬液を混和させる際の弱シール部の剥離を確実に行うことができ、医療用としても安全で使いやすい輸液バッグを提供することが可能になる。
【0033】
しかも本考案によれば、バッグ本体の周縁部の熱シールと弱シール部の熱シールを同一温度で溶着することができ、温度設定の煩わしさがない。また熱シールを同一温度で溶着できることから、温度設定ミスによる不良品の発生がない。従って製品の製造が容易になり、産業上の利用性が高くなるという顕著な効果も奏する。
【0034】
さらに請求項2記載の考案によれば、弱シール部を剥離した際に、ヒゲの発生による不溶性微粒子が発生するおそれがないので、製品の品質管理が容易になり、しかも不溶性微粒子による薬液の汚染や悪影響を防止することができるという特有の効果を奏する。加えて剥離面の白化を防止することが可能なので、輸液バッグの美観を損ねるおそれもないという利点がある。
【0035】
さらに請求項3記載の考案によれば、弱シール部のシール条件が多少変動しても、一様なシール強度を得ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本考案の輸液バッグを示す正面図である。
【0037】
【図2】上記輸液バッグの概要断面図である。
【0038】
【図3】弱シール部の拡大断面図である。
【0039】
【図4】弱シール部の拡大断面図である。
【0040】
【図5】上記輸液バッグの製造例を示す行程図であり、(1) 原材料となる樹脂シートの斜視図であり、(2) は(1) の加工物にテープを装着している状態を示す斜視図であり、(3) は(2) の加工物をバッグ状に加工した状態を示す正面図であり、(4)は(3) の加工物に舟型口芯を取り付けた状態を示す正面図であり、(5) は(4) の加工物に薬液を封入した状態を示す正面図である。
【0041】
【図6】上記輸液バッグの別の製造例を示す行程図であり、(1) はバッグ本体の一方の原材料となる樹脂シートの斜視図であり、(2) は(1) の加工物にバッグ本体の他方の原材料となる樹脂シートを覆った状態を示す斜視図であり、(3) は(2) の加工物をバッグ状に加工した状態を示す斜視図である。
【0042】
【符号の説明】
1 輸液バッグ
10 バッグ本体
11 左側周縁部
12 右側周縁部
13 下側周縁部
14 弱シール部
15 薬液収容室
16 薬液収容室
40 テープ
41 同一樹脂層
42 ブレンド樹脂層
43 非シール部
44 非シール部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】周縁部が熱シールされたポリオレフィン系樹脂のバッグ本体を含み、このバッグ本体内に形成されて異種の薬液をそれぞれ収容する薬液収容室を、当該バッグ本体の内壁とその間に挟まれて剥離可能に熱シールされた弱シール部によって区画している輸液バッグにおいて、上記弱シール部は、バッグ本体(多層体の場合は最内層のポリオレフィン系樹脂)と同じ樹脂からなる同一樹脂層と、バッグ本体と同種のポリオレフィン系樹脂にそれとは実質的に相互溶着しない別のポリオレフィン系樹脂をブレンドしたブレンド樹脂層とからなるテープを熱シールすることにより形成され、この弱シール部には、その幅方向両端部分に、熱シールされた部分よりも各薬液収容室側へ延設された非シール部が形成されていることを特徴とする輸液バッグ。
【請求項2】上記バッグ本体は、ポリエチレン樹脂の単層体あるいは最内層がポリエチレン樹脂の多層体であり、上記ブレンド樹脂層のバッグ本体と同種のポリオレフィン系樹脂は、密度が0.92〜0.96のポリエチレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層の別のポリオレフィン系樹脂は、0〜5モル/モル%のエチレンを含有するポリプロピレン樹脂であり、上記ブレンド樹脂層のポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のブレンド比は、75:25〜40:60(重量比)である請求項1記載の輸液バッグ。
【請求項3】上記テープ全体の厚みが40〜150μmとなるように、同一樹脂層とブレンド樹脂層の厚みが、それぞれ20〜100μmの間に設定されている請求項1項記載の輸液バッグ。

【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】実開平5−5138
【公開日】平成5年(1993)1月26日
【考案の名称】輸液バツグ
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−94870
【出願日】平成3年(1991)11月19日
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)