説明

輸液容器およびその成形方法

【構成】 熱可塑性樹脂から成る容器本体と、内容物取出部および内容物充填部がブロー成形によって一体化されたものであることを特徴とする輸液容器。この輸液容器は、前記内容物取出部が、下方へいくにつれて段差を介して径が小さく成る有底環状側壁、該環状側壁の上方の段差により形成される環状段差部、該環状段差部に設けられた上向きに凸の環状突起、該環状突起よりも内側の環状段差部上に位置する弾性部材、および該弾性部材の端部を環状段差部と環状突起と共に密封するための環状体、該環状体の開口部を覆うガスバリヤー性基材から成るシート状物から成り、且つ有底環状側壁の底部が環状側壁に比して薄肉に形成されているもので構成されていることが好ましい。
【効果】 この輸液容器は、容器本体と、内容物取出部等が一体に構成されているために、シール不良がなく、無菌状態での投与に適している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、輸液容器およびその成形方法に関するものであって、より詳しくは、容器本体をブロー成形すると同時に内容物取出用部材および内容物充填剤部材を一体化してなる輸液容器、ならびに、容器本体と内容物取出用部材および内容物充填剤部材をブロー成形によって密着一体化することができ、しかも成形された容器の無菌性も高度に保つことができる輸液容器の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】輸液容器は、血液、点滴、栄養剤、清浄液等の無菌性を要求される液体を内容物とし、容器に設けられた内容物取出部材に管等を接合して、内容物の取出しが行われるものである。従来、輸液容器としては、2枚の合成樹脂製シートをその頂縁、側縁および底縁で加熱溶着し、底縁を溶着する際にシートの間に内容物充填部材や取出部材等を挟んで、これらを容器本体と一体化して成るものが知られている。このようにシートの間に直接内容物取出部材等を挟んでシートを加熱して溶着するタイプのものは、円筒形状の導管から成る内容物取出導入部材等の表面を両側から覆うように密着しなければならず、溶着が非常に困難であり、溶着不良によるピンホールの発生により液洩れ、内容物汚染等の問題を生じることがあった。またこのタイプでは、成形時に容器内部に成形器具が入るために、容器の無菌性が十分に保持できないという問題も併せ持っていた。
【0003】このような問題を解決するものとして、内容物充填部材や取出部材等を予め座盤なるものに固定して一体成形し、この座盤の部分を合成樹脂製シートと溶着固定して成る薬液バックも知られている(実開昭55−37645号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この薬液バックは、直接内容物充填部材等を挟んで合成樹脂製シートを溶着固定するものに比べれば、ピンホール等の発生は抑制できるものであるが、底部には座盤の厚さによる段差を生じているため、前記座盤を合成樹脂製シートの一体化を溶着により行うと、やはり完全に密着させることは困難である。また、この薬液バックでは、座盤に内容物充填部材等を固定することから、内容物充填部材等は容器本体から突出した状態になり、使用状態(薬液バックをスタンド等に吊下げた場合)において管等を垂らしにくいと共に、引っ掛けやすい構造になってしまう。
【0005】さらに、これら従来の輸液容器に用いられていた内容物取出部材等は、内容物取出しのための管等の先端に設けられた針等で貫通可能な貫通部材、容器本体と薬液導入部材との密封性を保持するためのパッキン、および分離可能な外キャップから成っており、内容物取出しための管等をこの内容物取出部材に適用するには、先ず最初に外キャップを外して先端部の針を貫通可能な部材に差し込むものであるが、外キャップを外した時点で貫通部材は既に大気に触れており、汚染されるおそれがあり、内容物の無菌性を確実に保持し得ないという問題がある。
【0006】さらにまた、パッキンのみでは容器本体と内容物取出部材等との間を十分に密封することは難しいという問題もあった。
【0007】したがって、本発明の目的は、容器本体と、内容物取出部材および内容物充填剤部材がブロー成形によって一体化された輸液容器を提供することにある。本発明の他の目的は、面倒な溶着作業が不要で、容器本体および内容物取出部材等をピンホールの発生なく一体成形し得る輸液容器の成形方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、成形の際の容器の汚染等が有効に防止できる輸液容器の成形方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、使用の際に容易に管等を設置できると共に、内容物が残った状態で管等を取外しても再度使用可能な、容器内の無菌性を保持できる輸液容器を提供し得る成形方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明によれば、熱可塑性樹脂から成る容器本体と、内容物取出部および内容物充填部がブロー成形によって一体化されたものであることを特徴とする輸液容器が提供される。さらに本発明によれば、前記内容物取出部が、下方へいくにつれて段差を介して径が小さく成る有底環状側壁、該環状側壁の上方の段差により形成される環状段差部、該環状段差部に設けられた上向きに凸の環状突起、該環状突起よりも内側の環状段差部上に位置する弾性部材、および該弾性部材の端部を環状段差部と環状突起と共に密封するための環状体、該環状体の開口部を覆うガスバリヤー性基材から成るシート状物から成り、且つ有底環状側壁の底部が環状側壁に比して薄肉に形成されているものである請求項1記載の輸液容器が提供される。
【0009】さらにまた本発明によれば、熱可塑性樹脂から成る容器本体と、内容物取出部および内容物充填部から成る輸液容器の成形方法において、熱可塑性樹脂から成る容器本体を形成するためのパリソンを、内容物取出または充填のための部材が設置されたブロー成形金型内でブロー成形することにより、内容物取出または充填のための部材を容器本体と一体化することを特徴とする輸液容器の成形方法が提供される。
【0010】
【発明の具体的説明】本発明の輸液容器は、容器本体と、内容物取出部および内容物充填部をブロー成形によって一体のものとして形成した点に特徴がある。これによって、容器本体に内容物取出部と内容物充填部を別部材として形成し、これをヒートシールなどの手段で一体化していた従来の輸液容器においてしばしば発生していたシール不良による液漏れを防止でき、ひいては、気密性に優れ無菌状態での投与を可能にした輸液容器が提供される。また、本発明の輸液容器の成形方法は、ブロー金型内に、あらかじめ前記内容物取出部等をインサートしておき、容器本体をブロー成形するものであり、この方法によれば、内容物取出部と内容物充填部を合成樹脂のシートの間の所定の場所にセットし、これをヒートシールすることによって成形していた従来の成形方法のような、ピンホールを生じたり、シール不良を生じ易いと言う問題や、無菌性を保持することが困難であると言う問題は完全に解決される。
【0011】すなわち、ブロー成形によりパリソンは型に合わせて隙間なく延伸され、これと同時に型内に予め設置された内容物取出具と内容物充填部とも隙間なく密着し、かくして容器本体と内容物取出部材等はシール不良を起こすことなく容器本体と一体化することができることになる。
【0012】しかも、無菌状態に保持されたブロー成形型内で無菌エアで延伸され一体成形されているので、容器内部の無菌性も従来の熱接着により行っていたものよりも格段に信頼性が高いものとなる。
【0013】本発明の輸液容器の成形方法では、予め内容物取出部材および内容物充填部材を成形しておき、この内容物取出部材と内容物充填部をブロー金型内にインサートし、且つブロー金型中で容器本体用パリソンをブロー成形し、内容物取出部材を容器本体と一体にして輸液容器が製造されるか、あるいは、内容物充填部は、容器本体の一部としてパリソンから直接ブローによって成形されていてもよい。
【0014】本発明においては、先ず内容物取出部材と容器本体となるパリソンを予め成形する。内容物取出部材は、これに限定されないが、シェル部を熱可塑性樹脂の射出成形により成形し、これに弾性部材を嵌込み、次いで熱可塑性樹脂と金属箔の積層体を開口部を覆うようにヒートシールして成形する。また容器本体となるパリソンは、内容物取出部材をぴったり嵌合し得る開口と、流体吹込用開口を有する有底パリソンを射出成形により成形する。次いで、このパリソンにブロー金型内で内容物取出部材を嵌合させて、流体吹込用開口から高圧無菌流体を吹込んで延伸し、その後流体吹込用開口および周囲を圧着して容器の形に成形し、冷却後型から取出して完全に密封された輸液容器が成形される。
【0015】本発明により成形された容器の一例を、正面図、上面図、下面図、側面図として示す図1において、全体を1で示す輸液容器は、容器本体2およびこれと連続的に一体に設けられた内容物充填部3、さらに内容物充填部3の隣接して、別に成形された内容物取出部材が一体化された内容物取出部4が設けられている。内容物充填部3および内容物取出部4と対向する部分には、圧着されたシート状部5が形成されており、このシート上部5のほぼ中央には吊下げ用開口6が形成されている。
【0016】また本発明においては、従来公知のいかなる内容物取出部材を用いても前述したような優れた密封性および無菌性を得ることができるが、図2に示すような内容物取出部材を用いればさらに優れた効果を得ることができる。図2において、全体を7で示す内容物取出部材は、下方へいくほど段差を介して径が小さく成る有底環状側壁8、環状側壁8の上方の段差により形成される環状段差部9、環状段差部9に設けられた上向きに凸の環状突起10、環状突起10よりも内側の環状段差部上に位置する弾性部材11、およびこの弾性部材11の端部を環状段差部9と環状突起10と共に密封するための環状体12、この環状体12の開口部を覆うガスバリヤー性基材から成るシート状物13から成っている。また底部14は、環状側壁8と一体に成形されているが、環状側壁8よりも薄肉に形成され、針等により容易に穿孔し得るようになっている。また環状体12と環状突起10の先端部はヒートシールされて、これらは一体になって、弾性部材11端部を固定している。
【0017】この内容物取出部材においては、実際に内容物を取出す場合に、先ずシート状物13をはがし、管等の先端に設けられた針を弾性部材に刺してそのまま底部14まで貫通させて、内容物に管の先端が達して取出される。したがって、弾性部材11および底部14で区画される空間15は、外気に触れることがないので、内容物取出しを行う際にもかなりの信頼性で内容物の無菌性を保持することが可能になるのである。しかも弾性部材は、管を抜いた後も空間15を外気から遮断した状態に維持するので、一旦内容物の取出しを中止して、再び内容物の取出しを行うことも可能になる。
【0018】本発明において、容器本体を形成する熱可塑性樹脂としては、低−、中−あるいは高密度のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1等のポリオレフィン樹脂を好適に用いることができる。パリソンは、従来公知の押出成形、射出成形等により成形することができ、またブロー成形の条件としては、用いる樹脂等によって異なるが、一般に成形温度160ないし260℃、ブロー比1.1ないし5倍であることが好ましい。
【0019】内容物取出部材も、容器本体と同様の熱可塑性樹脂から成ることが好ましい。また内容物取出部材に用いる弾性部材としては、イソプレンゴムとブタジエンゴムのブレンド品等を好適に用いることができる。用いる弾性部材の種類によっては、針等を貫通させやすくするために、スコアを設けておいてもよい。さらに、内容物取出部材のガスバリヤー性基材は、金属箔またはガスバリヤー性樹脂単独でももちろんよいが、これらとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の積層体を用いることにより、特別な接着剤を用いることなく、ヒートシールによって接着することが可能となる。
【0020】
【発明の効果】本願の第1番目の発明である輸液容器は、容器本体と、内容物取出部および内容物充填部をブロー成形によって一体のものとして形成したことにより、従来の輸液容器においてしばしば発生していたシール不良による液漏れを防止でき、ひいては、気密性に優れ無菌状態での投与を可能にすることができる。さらに、特定の内容物取出し部材を用いれば、使用の際に容易に管等を設置できると共に、内容物が残った状態で管等を取外しても再度使用可能な、容器内の無菌性を保持できる輸液容器を提供することができる。また、本願の第2番目の発明は、面倒な溶着作業が不要で、容器本体および薬液導入部材等をピンホールの発生なく、つまり、シール不良を発生することなく、しかも成形の際の容器本体の汚染等が有効に防止できる輸液容器の成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の輸液容器の一例を示す図である。
【図2】本発明の輸液容器に用いることができる内容物取出部材の一例を示す断面図である。
【符合の説明】
1 輸液容器
2 容器本体
3 内容物充填部
4 内容物取出部
8 環状側壁
9 環状段差部
10 環状突起
11 弾性部材
12 環状体
13 シート状物
14 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂から成る容器本体と、内容物取出部および内容物充填部がブロー成形によって一体化されたものであることを特徴とする輸液容器。
【請求項2】 前記内容物取出部が、下方へいくにつれて段差を介して径が小さく成る有底環状側壁、該環状側壁の上方の段差により形成される環状段差部、該環状段差部に設けられた上向きに凸の環状突起、該環状突起よりも内側の環状段差部上に位置する弾性部材、および該弾性部材の端部を環状段差部と環状突起と共に密封するための環状体、該環状体の開口部を覆うガスバリヤー性基材から成るシート状物から成り、且つ有底環状側壁の底部が環状側壁に比して薄肉に形成されているものである請求項1記載の輸液容器。
【請求項3】 熱可塑性樹脂から成る容器本体と、内容物取出部および内容物充填部から成る輸液容器の成形方法において、熱可塑性樹脂から成る容器本体を形成するためのパリソンを、内容物取出または充填のための部材が設置されたブロー成形金型内でブロー成形することにより、内容物取出または充填のための部材を容器本体と一体化することを特徴とする輸液容器の成形方法。

【図2】
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【図1】
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