説明

輸液容器外装袋

【課題】外装袋の上部中央を指先で一方向に切り裂いて輸液容器(点滴容器)のフック部を露出させる開口部を簡単に形成でき、また、収容した輸液容器のフック部をセンタリングできる輸液容器外装袋を提供する。
【解決手段】輸液容器2を収容する光遮断性能を備えた外装袋Aであって、該外装袋の上部中央に、輸液容器2のフック部2cを露出させる開口部形成用の、一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線4を設けた構成の輸液容器外装袋Aとする。外装袋Aの上部中央を指先で切裂き案内線4の一端から切裂き案内線4に沿って切裂き案内線4の他端まで途切れることなくスムーズに素早く切り裂いて開口部を形成でき、この開口部から輸液容器2のフック部2cを露出させることができる。また、外装袋の上部両側に、輸液容器2の両肩部2bを当止してフック部2cをセンタリングさせる斜めシール部3,3をハ字状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点滴用の輸液容器を収容する紫外線遮断性能を備えた外装袋に関し、更に詳しくは、外装袋の上部中央を指先で一方向に切り裂いて輸液容器のフック部を露出させる開口部を極めて簡単に形成できるように、また、輸液容器のフック部を外装袋の中心線上にセンタリングできるように、改良した輸液容器外装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線などの光で変質しやすい点滴用の輸液を入れた輸液容器は、光遮断性能を有する外装袋に収容されて流通し、輸液使用時(点滴時)に外装袋が廃棄され、新たに別の保護カバーが被せられていた。しかしながら、この保護カバーも、外装袋と同様に光遮断性能が必要なものであるため、コスト高になるという問題があった。
【0003】
かかる事情から、廃棄しないでそのまま保護カバーとして兼用できる以下のような外装袋が既に提案されている。
【0004】
その一つは、遮光性を有する三方がヒートシールされた袋であって、上部のヒートシール部の形状が逆凹形で点滴容器のフック部取出し口となっており、左右のサイドシール部に上部Vノッチと下部Vノッチが設けられ、放射線で滅菌された汚染防止袋である(特許文献1)。この汚染防止袋は、上部Vノッチから逆凹形の上部ヒートシール部を切り裂くと、点滴容器のフック部を取り出すことができ、下部ノッチから袋下部を切り裂くと、点滴容器の輸液排出口に点滴用のチューブを接続できるので、点滴時の保護カバーとして兼用することができる。
【0005】
他の一つは、袋上中央部に点滴容器のフック部を露出させる開口部を形成するためのV字状の切裂き案内線を設け、袋下部に下端辺と平行状の切裂き案内線を設けた点滴容器包装袋である(特許文献2)。この点滴容器包装袋も、V字状の切裂き案内線に沿って袋上部を切り裂くと、点滴容器のフック部を取り出すことができ、下端辺と平行状の切裂き案内線に沿って袋下部を切り裂くと、点滴容器の輸液排出口に点滴用のチューブを接続できるので、点滴時の保護カバーとして兼用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3240253号公報
【特許文献2】特開2006−167050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の汚染防止袋は、点滴容器のフック部を取り出す開口部を形成する際、左右いずれか片側の上部Vノッチから上部ヒートシール部の逆凹形部分まで一方向に切り裂き、更に、反対側の上部Vノッチから上部ヒートシール部の逆凹形部分まで逆方向に切り裂く必要があり、いずれか片側の上部Vノッチから一方向に上部ヒートシール部を一手順で切り裂くことによって開口部を形成することができないため、開口作業性があまり良くなく、点滴の準備に手間取るという問題があった。
【0008】
同様に、上記特許文献2の点滴容器包装袋も、V字状切裂き案内線の一端から他端まで一方向に切り裂こうとすると、V字状切裂き案内線の尖った下端のところで切裂き案内線からはずれて別方向に裂け目が形成されやすいため、V字状切裂き案内線に沿って綺麗に切り裂きたい場合は、V字状切裂き案内線の一端からV字状切裂き案内線の尖った下端まで一方向に切り裂き、更に、V字状切裂き案内線の他端から尖った下端まで逆方向に切り裂くようにせざるを得ず、やはり開口作業性が良くないという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献1,2の袋はいずれも、点滴容器のフック部を袋の幅方向中央にセンタリングする機能を備えていないため、袋上部を切り裂いて形成される開口部(取出口)と点滴容器のフック部の位置がずれ、点滴容器のフック部を袋上部の開口部から取り出しにくいという問題があった。しかも、袋上部を切り裂いて形成される開口部の大きさが一定しているため、収容される点滴容器やフック部の大きさが変わると、その大きさ如何によっては袋上部の開口部からフック部を取り出せない場合もあった。
【0010】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする第一の課題は、外装袋の上部中央を指先で一方向に一手順で切り裂いて輸液容器(点滴容器)のフック部を露出させる開口部を極めて簡単に形成することができる輸液容器外装袋を提供することにある。
また、第二の課題は、輸液容器のフック部を外装袋の中心線上にセンタリングして外装袋の上記開口部から容易に露出させることができる輸液容器外装袋を提供することにある。
更に、第三の課題は、輸液容器のフック部を外装袋の中心線上にセンタリングでき、外装袋の上部中央を切り裂かなくても輸液容器を吊り下げることができる輸液容器外装袋を提供することにある。
そして、好ましい実施形態においては、外装袋の上記開口部の大きさを変更できるようにすることや、外装袋の材料フィルムを改良して切裂き性を一層向上させることなども課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の課題を解決するため、本発明に係る第一の輸液容器外装袋は、輸液容器を収容する光遮断性能を備えた外装袋であって、該外装袋の上部中央に、輸液容器のフック部を露出させる開口部形成用の、一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線が設けられていることを特徴とするものである。
ここに、「一方向に切裂き可能な凹形状」とは、切裂き案内線の一端から切裂き案内線に沿って切裂き案内線の他端まで途切れることなく一手順で切り裂くことができる凹形状」を意味し、所謂、ワンウエイの切裂きが可能な凹形状のことであって、具体的には、後述するような下部を弧状に凹曲させたV字状、半楕円状、半円状、弧状、下端両隅部にアールを設けたU字状などが挙げられる。
【0012】
本発明の第一の輸液容器外装袋においては、切裂き案内線の凹形状を、下部を弧状に凹曲させたV字状とすることが好ましい。そして、切裂き案内線を、外装袋の上部中央において上下方向に間隔をあけて複数設けることが好ましい。
また、外装袋の上部両側に、輸液容器の両肩部を当止して輸液容器のフック部を外装袋の中心線上にセンタリングする斜めシール部をハ字状に形成することが好ましい。
更に、外装袋は、ポリオレフィン系の内層フィルムとポリアミド系の外層フィルムとポリエステル系の中間層フィルムとを接着剤層を介して積層一体化したラミネートフィルムであって、かつ、中間層フィルムの外層フィルム側の面に紫外線吸収層を設けたラミネートフィルムで製袋されたものであることが好ましい。
【0013】
次に、本発明に係る第二の輸液容器外装袋は、輸液容器を収容する光遮断性能を備えた外装袋であって、該外装袋の上部両側に、輸液容器の両肩部を当止して輸液容器のフック穴を外装袋の中心線上にセンタリングする斜めシール部をハ字状に形成すると共に、外装袋の上部中央にV字状の切裂き案内線を設けたことを特徴とするものである。
この第二の輸液容器外装袋も、V字状の切裂き案内線を、外装袋の上部中央において上下方向に間隔をあけて複数形成することが好ましい。
【0014】
更に、本発明に係る第三の輸液容器外装袋は、輸液容器を収容する紫外線遮断性能を備えた外装袋であって、該外装袋の上部両側に、輸液容器の両肩部を当止して輸液容器のフック穴を外装袋の中心線上にセンタリングする斜めシール部をハ字状に形成すると共に、外装袋の上部中央に、センタリングされた輸液容器のフック部と重なるように、フック用開口部又は該開口部形成用の切裂き案内線を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第一の輸液容器外装袋は、該外装袋の上部中央に、輸液容器のフック部を露出させる開口部形成用の、一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線が設けられているので、外装袋の上部中央を指先で切裂き案内線の一端から切裂き案内線に沿って切裂き案内線の他端まで途切れることなく一手順でスムーズに素早く切り裂いて開口部を形成し、この開口部から輸液容器のフック部を露出させることができる。このように、本発明の輸液容器外装袋は、素早く且つ確実に輸液容器のフック部を露出させ、点滴用のポールの鉤部に引っ掛けて輸液容器を吊り下げることができるので、点滴の準備作業の効率が向上し、看護士の負担を軽減することができる。
【0016】
切裂き案内線の形状は、一方向に切裂き可能な凹形状であれば限定されないが、特に、切裂き案内線の凹形状が下部を弧状に凹曲させたV字状であると、その一端から他端まで切裂き案内線に沿って綺麗に素早くスムーズに一手順で切り裂くことができるという利点があり、例えば、半円状や半楕円状の切裂き案内線のように、一方向に切り裂くことはできるけれども切裂き案内線の最後の他端近くで切裂き案内線から外れる方向に切り裂かれ易くなるような事態は生じない。
【0017】
そして、一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線が、外装袋の上部中央において上下方向に間隔をあけて複数設けられていると、切裂き案内線を選択して外装袋の上部中央を切り裂くことにより、輸液容器の大きさに見合った最適の大きさの切裂き開口部を形成して、輸液容器のフック穴を確実に露出させることができる利点がある。
【0018】
また、外装袋の上部両側に、輸液容器の両肩部を当止して輸液容器のフック部を外装袋の中心線上にセンタリングする斜めシール部がハ字状に形成されていると、このハ字状の斜めシール部でセンタリングされた輸液容器のフック部が、切裂き案内線に沿って外装袋の上部中央を一方向に切り裂いて形成された開口部から左右に位置ずれすることなく露出するため、この露出した輸液容器のフック部を点滴用のポールの鉤部に引っ掛けて点滴の準備作業を効率良く行うことができる。そして、輸液容器を吊り下げた状態では、ハ字状に形成された斜めシール部が輸液容器の両肩部に掛止されるので、外装袋は点滴が終わるまで脱落することなく保護カバーとして輸液容器内部の輸液を紫外線などの光から保護することができる。
【0019】
更に、外装袋が、ポリオレフィン系の内層フィルムとポリアミド系の外層フィルムとポリエステル系の中間層フィルムとを接着剤層を介して積層一体化したラミネートフィルムであって、かつ、中間層フィルムの外層フィルム側の面に紫外線吸収層を設けたラミネートフィルムで製袋されたものであると、中間層フィルムと内層フィルムの接着強度が向上して、切裂き性に劣る内層フィルムが中間層フィルムと共に容易に切裂かれるようになるので、外装袋の切裂き案内線に沿った切裂き性が一層良くなる利点がある。
【0020】
次に、本発明の第二の輸液容器外装袋は、その中に収容された輸液容器の両肩部が、外装袋の上部両側にハ字状に形成された斜めシール部によって当止され、輸液容器のフック部が外装袋の中心線上にセンタリングされるため、V字状の切裂き案内線に沿って外装袋の上部中央を切り裂くと、センタリングされた輸液容器のフック部が左右に位置ずれすることなく、切り裂かれた開口部から露出することになる。このように本発明の第二の輸液容器外装袋も、輸液容器のフック部をセンタリングして開口部から素早く露出させ、点滴用のポールの鉤部に引っ掛けて輸液容器を吊り下げることができるので、点滴の準備作業を効率良く行うことが可能となり、輸液容器を吊り下げた状態では、ハ字状に形成された斜めシール部が輸液容器の両肩部に掛止されるので、外装袋は点滴が終わるまで脱落することなく、保護カバーとして輸液容器内部の輸液を紫外線などの光から保護することができる。
そして、この第二の輸液容器外装袋において、V字状の切裂き案内線を上下方向に間隔をあけて外装袋の上部に複数設けたものは、切裂き案内線を選択して外装袋の上部中央を切り裂くことにより、輸液容器の大きさに見合った最適の大きさの開口部を形成することができる。
【0021】
また、第三の輸液容器外装袋は、輸液容器のフック穴と、このフック穴に重なるように外装袋の上部中央に設けられたフック用開口部又は該開口部形成用の切裂き案内線とが位置ずれしても、輸液容器の両肩部をハ字状の斜めシール部に当止させることで、輸液容器のフック部を簡単にセンタリングして外装袋のフック用開口部又は該開口部形成用の切裂き案内線に重ねることができ、重ねたままの状態で点滴用のポールの鉤部に引っ掛けるか、又は、切裂き案内線を切り裂いて形成したフック用開口部を輸液容器のフック部と重ねて点滴用のポールの鉤部に引っ掛けることにより、点滴の準備作業を効率良く行うことができる。このように、第三の輸液容器外装袋において予めフック用開口部を形成したものは、袋の上部中央を切り裂く必要がないので、その分だけ作業性が向上する。そして、フック用開口部をポールの鉤部に引っ掛けて吊り下げた外装袋は、点滴が終わるまで脱落することなく、保護カバーとして輸液容器内部の輸液を紫外線などの光から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る第一の輸液容器外装袋の一実施形態を示す正面図である。
【図2】点滴時の同実施形態の輸液容器外装袋の正面図である。
【図3】本発明に係る第一の輸液容器外装袋の他の実施形態を示す部分正面図である。
【図4】本発明に係る第一の輸液容器外装袋の更に他の実施形態を示す部分正面図であって、(a)は横幅の小さい輸液容器を収容した場合を、(b)は横幅の大きい輸液容器を収容した場合を示す。
【図5】本発明に係る第二の輸液容器外装袋の一実施形態を示す正面図である。
【図6】本発明に係る第三の輸液容器外装袋の一実施形態を示す部分正面図である。
【図7】点滴時の同実施形態の輸液容器外装袋の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明に係る第一の輸液容器外装袋の一実施形態を示したものである。この図1に示す輸液容器外装袋Aは、正面及び背面の合成樹脂ラミネートフィルム1の上端縁1aと左右の側端縁1b,1cをヒートシールして製袋されたものであって、下端の開口部から輸液容器2がその輸液排出口2aを下向きにして袋内に収容されるようになっている。そして、外装袋Aの下端縁1dは、輸液容器2を収容したのちヒートシールされ、輸液容器2が外気から遮断されるようになっている。
【0024】
この外装袋Aの上部両側には、輸液容器2の両肩部2b,2b(斜めに丸みをもってカットされた両肩部)を当止する左右一対の斜めシール部3,3が、外装袋Aの中心線CLを挟んで左右対称位置にハ字状に形成されており、袋内に収容された輸液容器2の両肩部2b,2bが上記の斜めシール部3,3によって当止されると、輸液容器2の上端部中央に形成されたフック部(フック穴)2cが外装袋Aの中心線CL上にセンタリングされるようになっている。この実施形態の斜めシール部3,3はいずれも直線的に形成されているが、多少凸曲または凹曲させて形成してもよい。
【0025】
斜めシール部3,3の傾斜角(水平に対する傾斜角)は特に限定されないが、輸液容器2の両肩部2b,2bが少し丸みをもって略45°の角度で斜めにカットされていることが多いので、そのような両肩部2b,2bを安定して当止できるように、斜めシール部3,3の傾斜角を略45°に設定することが好ましい。
【0026】
また、斜めシール部3,3の上端の間隔も特に限定されないが、横幅の狭い輸液容器から横幅の広い輸液容器まで収容できるようにするためには、斜めシール部3,3の上端の間隔を外装袋の幅寸法の1/5〜2/3程度に設定することが好ましく、場合によっては、斜めシール部3,3の上端の間隔をあけないようにしてもよい。
【0027】
この外装袋Aの上部中央には、輸液容器2のフック部2cを露出させる開口部形成用の、一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線4として、下部を弧状(楕円弧状)に凹曲させたV字状の切裂き案内線4が炭酸ガスレーザーで赤外線を発振させることによって形成されている。この炭酸ガスレーザーで形成された切裂き案内線4は、発振される赤外線の波長の関係で、合成樹脂ラミネートフィルム1の後述する内層フィルム(直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)が貫通されないため、所謂、ハーフカットの切裂き案内線となる。従って、外装袋Aのバリア性能が保たれ、酸素や水分の透過を抑えることができる。尚、外装袋Aのバリア性能が要求されない場合は、ミシン目線で切裂き案内線4を機械的に形成しても勿論よい。
【0028】
上記の切裂き案内線4は、図1に示すように、輸液容器2の両肩部2b,2bがハ字状の斜めシール部3,3でセンタリングされた状態において、輸液容器2のフック部2cが切裂き案内線4の内側(図1では上側)となるように形成することが必要であり、そのように形成すると、切裂き案内線4に沿って袋上部の合成樹脂ラミネートフィルム1を指先で一方向に切り裂いたとき、図2に示すように、袋上部の切裂き開口部5に輸液容器2のフック部2cを露出させることができる。また、下部を弧状に凹曲させたV字状の切裂き案内線4の開き角は60°〜110°程度であることが好ましく、この実施形態の切裂き案内線4の場合は90°に設定している。開き角が60°〜110°程度であると、切裂き案内線4の一方向の切裂き性が良くなる利点がある。また、この切裂き案内線4の下部の凹曲させた部分は、円弧状でも楕円弧状でも他の適当な弧状でもよいが、この実施形態の切裂き案内線4のように下部を楕円弧状に凹曲させていると、切裂き性が更に良くなる利点があるので好ましい。
【0029】
切裂き案内線4の形状は、一方向に切裂き可能な凹形状、即ち、切裂き案内線4の一端から切裂き案内線4に沿って切裂き案内線4の他端まで途切れることなく一度に切り裂くことができる凹形状であれば、この実施形態の切裂き案内線4のような下部を弧状に凹曲させたV字状に限定されるものでなく、例えば、図3に示す輸液容器外装袋Bの切裂き案内線41のような半楕円状、或いは半円状、或いは弧状、或いは下端両隅部にアールを設けたU字状など、途中に屈曲部が存在しないか又は存在しても屈曲角が150°以上の鈍角であるような種々の凹形状とすることが可能である。しかしながら、この実施形態の切裂き案内線4のように下部を弧状に凹曲させたV字状のものは、切裂き案内線4の一端から他端まで切裂き案内線4に沿って一作業で綺麗に素早くスムーズに切り裂くことができ、他の凹形状の切裂き案内線のように、一方向に切り裂くことはできるが切裂き案内線の最後の他端近くで切裂き案内線から外れる方向に切り裂かれ易くなるような事態が生じないので、最も好ましい凹形状である。
【0030】
図1に示す輸液容器外装袋Aは、切裂き案内線4を一つだけ形成しているが、図4の(a)(b)に示す輸液容器外装袋Cように、下部を弧状に凹曲させたV字状の大小の切裂き案内線4a,4bを外装袋の上部中央において上下方向に間隔をあけて複数形成してもよい。同様に、半楕円状の大小の切裂き案内線や、他の凹形状の大小の切裂き案内線を間隔をあけて複数形成してもよい。このように大小の切裂き案内線4a,4bを複数形成してあると、図4の(a)に示すように、横幅の小さい輸液容器21を収容する場合は、小さい切裂き案内線4aに沿って袋上部を切り裂いて輸液容器21のフック部2cを露出させればよく、また、図4の(b)に示すように、横幅の大きい輸液容器22を収容する場合は、大きい切裂き案内線4bに沿って袋上部を切り裂いて輸液容器22のフック部2cを露出させることができるので、輸液容器が小さくても大きくても、それに見合った大きさの切裂き開口部を形成して確実にフック部2cを露出させることができる。尚、切裂き案内線は、外装袋Aの上部中央において間隔をあけて3つ以上形成してもよいことは言うまでもない。
【0031】
図1に示すように、外装袋Aの上端縁1aには、ノッチ部1e,1eが切裂き案内線4の両端に位置して形成されており、いずれか一方のノッチ部1eから切裂き案内線4に沿って他端まで一方向の切裂き作業を容易に行えるようになっている。また、この外装袋Aの左右の側端縁1b,1cの下端近くにも、ノッチ部1f,1fが形成されており、このノッチ部1f,1fから袋下部を容易に切断切り裂くことができるようになっている。尚、これらのノッチ部に代えて、単なる切込みを入れるようにしてもよい。
【0032】
外装袋Aを構成する正面及び背面の合成樹脂ラミネートフィルム1は、光遮断性能好ましくは紫外線遮断性能を有し且つヒートシール可能なものであれば全て使用可能であり、更に好ましくは、バリア性能を兼ね備えたものが使用される。
【0033】
紫外線遮断性能を有し且つヒートシール可能なラミネートフィルムとしては、例えば、ヒートシール性の良好な直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリオレフィン系の内層フィルム(厚さ60μm)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系の外層フィルム(厚さ12μm)と、延伸ナイロン(ONY)などのポリアミド系の中間層フィルム(厚さ15μm)を、接着剤層を介して積層一体化したラミネートフィルムであって、中間層フィルムの内層フィルム側の面に紫外線吸収層(紫外線吸収剤を含んだ塗料又はインクのコート層又は印刷層)を設けたものや、接着剤層に紫外線吸収剤を含有させたものが好ましく使用される。尚、紫外線吸収剤としては、公知のベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの種々の紫外線吸収剤が全て使用可能である。
【0034】
また、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリオレフィン系の内層フィルム(厚さ50μm)と、延伸ナイロン(ONY)などのポリアミド系の外層フィルム(厚さ15μm)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系の中間層フィルム(厚さ12μm)を、接着剤層を介して積層一体化したラミネートフィルムであって、中間層フィルムの外層フィルム側の面に上記紫外線吸収層を設けたラミネートフィルムも好ましく使用される。
【0035】
特に、後者のラミネートフィルムは、中間層フィルムの内層フィルム側の面に紫外線吸収層が存在せず、ポリエステル系の中間層フィルムとポリオレフィン系の内層フィルムとの接着強度が大で、しかも、ポリオレフィン系の内層フィルムの厚さが50μmと少し薄くなっているため、本来、切裂き性に劣る内層フィルムが中間層フィルムと共に容易に切き裂かれるようになり、外装袋Aの切裂き案内線4に沿った切裂き性が一層向上する利点があるので、極めて好ましいラミネートフィルムである。
【0036】
また、光遮断性能を有するラミネートフィルムとしては、例えば、カーボンその他の黒色顔料や酸化チタンその他の白色顔料を、上記外層フィルム、中間層フィルム、内層フィルムのいずれか又は全てに含有させることによって、可視光線を吸収又は反射できるようにしたものや、特定の有色顔料を含有させることによって、特定波長領域の光を選択的に遮断できるようにしたもの等が使用される。
【0037】
一方、バリア性能を兼ね備えたラミネートフィルムとしては、例えば、前者のラミネートフィルムの外層フィルムの中間層フィルム側の面や、後者のラミネートフィルムの中間層フィルムのいずれか片面に、アルミニウム等の金属蒸着膜やアルミナ、シリカ等の透明金属酸化物蒸着膜を形成したものなどが好ましく使用される。
【0038】
この輸液容器外装袋Aは、例えば次の方法によって製造することができる。
即ち、材料となる前記ラミネートフィルムを、その外層フィルムが外側となるように折返して、上端縁及び左右の側端縁となる部分をヒートシールすると共に、袋上部両側となる部分をハ字状にヒートシールして斜めシール部を形成し、更に上下から炭酸ガスレーザー加工を施して、袋上部中央となる部分に切裂き案内線4を形成した後、上端縁及び左右の側端縁となるヒートシール部分の周囲を打ち抜くことによって、効率良く輸液容器外装袋Aを量産することができる。
【0039】
以上のような構成の輸液容器外装袋Aは、該外装袋Aの上部中央を指先で切裂き案内線4の一端のノッチ部1eから切裂き案内線4に沿って切裂き案内線4の他端まで一方向に素早くスムーズに一作業で切り裂いて切裂き開口部5を形成することができ、このように切裂き開口部5を形成すると、図2に示すように、ハ字状の斜めシール部3,3で両肩部2b,2bが当止されて外装袋の中心線CL上にセンタリングされた輸液容器2のフック部(フック穴)2cが、左右に位置ずれすることなく、ちょうど切裂き開口部5から露出する。従って、輸液容器2の露出したフック部2cを、図2に示すように点滴用のポールの鉤部6に引っ掛けて、輸液容器2を吊り下げると共に、外装袋Aの下端部をノッチ部1f,1fから切断又は切り裂き、点滴用のチューブ7等を輸液容器2の輸液排出口2aに接続して、点滴の準備作業を効率良く行うことができる。そして、このように輸液容器2を吊り下げた状態では、ハ字状に形成された斜めシール部3,3が輸液容器2の両肩部2b,2bに掛止されるので、外装袋Aは点滴が終わるまで脱落することなく、保護カバーとして輸液容器2内部の輸液を紫外線などの光から保護し、輸液の変質を防止することができる。
【0040】
尚、図3に示す輸液容器外装袋Bは、一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線として半楕円状の切裂き案内線41を設けた以外は図1,図2に示す輸液容器外装袋Aと同様の構成であり、また、図4に示す輸液容器外装袋Cも、下部を弧状に凹曲したV字状の複数の切裂き案内線4a,4bを間隔をあけて設けた以外は図1,図2に示す輸液容器外装袋Aと同様の構成であるから、図3,図4において同一部材に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0041】
図5は本発明に係る第二の輸液容器外装袋の一実施形態を示したもので、この輸液容器外装袋Dは、光遮断性能を備えた外装袋Dの上部両側に、輸液容器2の両肩部2b,2bを当止して輸液容器2のフック穴2cを外装袋の中心線CL上にセンタリングする斜めシール部3,3をハ字状に形成すると共に、外装袋Dの上部中央に下部が尖ったV字状の切裂き案内線42を炭酸ガスレーザーで形成したものである。
【0042】
この輸液容器外装袋Dは、一方向に切断可能な下部が弧状に凹曲したV字状の前記切裂き案内線4に代えて、下部が尖ったV字状の上記切裂き案内線42を設けた以外は、図1,図2に示す輸液容器外装袋Aと同様の構成としたものであるから、図5において同一部材に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0043】
このような輸液容器外装袋Dは、V字状の切裂き案内線42に沿って綺麗に切り裂くためには、切裂き案内線42の両端から下端に向かって二方向に切り裂くようにせざるを得ないが、輸液容器2のフック部2cがハ字状の斜めシール部3,3によりセンタリングされて、切り裂かれた開口部から露出するため、点滴用のポールの鉤部に引っ掛けて点滴の準備作業を効率良く行うことができる。そして、輸液容器2を吊り下げた状態では、ハ字状に形成された斜めシール部3,3が輸液容器の両肩部に掛止されるので、外装袋Dは点滴が終わるまで脱落することなく、保護カバーとして輸液容器内部の輸液を紫外線などの光から保護することができる。
【0044】
尚、この輸液容器外装袋Dにおいて、V字状の切裂き案内線を上下方向に間隔をあけて外装袋の上部中央に複数形成し、切裂き案内線を選択して外装袋の上部中央を切り裂くことによって、輸液容器2の大きさに見合った最適の大きさの開口部を形成できるように構成してもよい。
【0045】
図6,図7は本発明に係る第三の輸液容器外装袋の一実施形態を示したもので、この輸液容器外装袋Eは、光遮断性能を備えた外装袋Eの上部両側に、輸液容器2の両肩部2b,2bを当止して輸液容器2のフック穴2cを外装袋の中心線CL上にセンタリングする斜めシール部3,3をハ字状に形成すると共に、外装袋Eの上部中央に、センタリングされた輸液容器2のフック部(穴)2cと重なるようにフック用開口部(穴)8を設けたものである。このように、フック用開口部8を予め設けた第三の輸液容器外装袋Eは、バリア性能を有しないので、酸素や水分によって変質し難い輸液を詰めた輸液容器を収容する場合に使用される。
尚、フック用開口部8の形状は丸穴形状のみに限定されるものではなく、点滴用のポールの鉤部6に係止できるような開口形状であればどのような形状であってもよい。
【0046】
この輸液容器外装袋Eは、下部が弧状に凹曲したV字状の前記切裂き案内線4に代えて、上記フック用開口部8を、センタリングされた輸液容器2のフック部2cと重なるように外装袋Eの上部中央に設けた以外は、図1,図2に示す輸液容器外装袋Aと同様の構成としたものであるから、図6,図7において同一部材に同一符号を付して重複説明を省略する。

【0047】
このような輸液容器外装袋Eは、輸液容器2のフック部2cと、このフック穴2cに重なるように外装袋Eの上部中央に設けられたフック用開口部8とが位置ずれしても、輸液容器2の両肩部2b,2bをハ字状の斜めシール部3,3に当止させることで、輸液容器2のフック部2cを簡単にセンタリングして外装袋Eのフック用開口部8に重ねることができ、このようにフック部2cとフック用開口部8を重ねたまま点滴用のポールの鉤部6に引っ掛けて、点滴の準備作業を効率良く行うことができる。このように外装袋Eの上部中央を切り裂く必要がないので、その分だけ作業性が向上する。そして、フック用開口部8をポールの鉤部6に引っ掛けて吊り下げた外装袋Eは、点滴が終わるまで脱落することなく、保護カバーとして輸液容器内部の輸液を紫外線などの光から保護することができる。
【0048】
図6,図7に示す輸液容器外装袋Eは、その上部中央にフック用開口部8を最初から形成しているが、該開口部8形成用の切裂き案内線を外装袋Eの上部中央に形成し、ポールの鉤部6に引っ掛けるときに切裂き案内線に沿って外装袋Eの上部を切り裂いて、フック用開口部8を形成するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 合成樹脂ラミネートフィルム
2,21,22 輸液容器
2b 輸液容器の両肩部
2c 輸液容器のフック部(フック穴)
3 斜めシール部
4,4a,4b,41, 一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線
42 V字状の切裂き案内線
5 切裂き開口部
8 外装袋のフック用開口部
A,B,C,D,E 輸液容器外装袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液容器を収容する光遮断性能を備えた外装袋であって、該外装袋の上部中央に、輸液容器のフック部を露出させる開口部形成用の、一方向に切裂き可能な凹形状の切裂き案内線が設けられていることを特徴とする輸液容器外装袋。
【請求項2】
上記切裂き案内線の凹形状が、下部を弧状に凹曲させたV字状であることを特徴とする請求項1に記載の輸液容器外装袋。
【請求項3】
上記切裂き案内線が、外装袋の上部中央において上下方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の輸液容器外装袋。
【請求項4】
上記外装袋の上部両側に、輸液容器の両肩部を当止して輸液容器のフック部を外装袋の中心線上にセンタリングする斜めシール部がハ字状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の輸液容器外装袋。
【請求項5】
上記外装袋が、ポリオレフィン系の内層フィルムとポリアミド系の外層フィルムとポリエステル系の中間層フィルムとを接着剤層を介して積層一体化したラミネートフィルムであって、かつ、中間層フィルムの外層フィルム側の面に紫外線吸収層を設けたラミネートフィルムで製袋されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の輸液容器外装袋。
【請求項6】
輸液容器を収容する光遮断性能を備えた外装袋であって、該外装袋の上部両側に、輸液容器の両肩部を当止して輸液容器のフック穴を外装袋の中心線上にセンタリングする斜めシール部をハ字状に形成すると共に、外装袋の上部中央にV字状の切裂き案内線を設けたことを特徴とする輸液容器外装袋。
【請求項7】
上記V字状の切裂き案内線が、外装袋の上部中央において上下方向に間隔をあけて複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の輸液容器外装袋。
【請求項8】
輸液容器を収容する紫外線遮断性能を備えた外装袋であって、該外装袋の上部両側に、輸液容器の両肩部を当止して輸液容器のフック穴を外装袋の中心線上にセンタリングする斜めシール部をハ字状に形成すると共に、外装袋の上部中央に、センタリングされた輸液容器のフック部と重なるように、フック用開口部又は該開口部形成用の切裂き案内線を設けたことを特徴とする輸液容器包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104331(P2011−104331A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7201(P2010−7201)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(505276052)サンスイパック株式会社 (3)
【出願人】(390004709)カイト化学工業株式会社 (15)
【出願人】(000208145)大洋薬品工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】