説明

輸液容器用遮光カバー

【課題】 本発明は、紫外線のみならず可視光線の一部に於ける遮光にも優れ、且つ窓部を設けることなく輸液を視認することができる輸液容器用遮光カバーを提供することを課題とする。
【解決手段】 着色インキ層5と紫外線を吸収又は遮断する紫外線吸収遮断処理とが施されたフィルムからなり、着色インキ層5が、朱色インキを印刷した朱インキ層51と黄色インキを印刷した黄インキ層52の2層のインキ層、又は朱色インキ及び黄色インキの混合インキを印刷した混合インキ層の何れかを有する輸液容器用遮光カバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液容器に被せて使用され、紫外線などの光線による輸液劣化を防止する輸液容器用遮光カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミン類やアミノ酸などを含有する輸液は、光によって変質し易く、紫外線のみならず、可視光線の一部にまで遮光することが求められる。この点、輸液容器自体は、液面が見えるように透明なプラスチック製ボトルやフィルム袋からなるため、流通保管時にはダンボールなどの遮光性のある包材に梱包されているが、使用時には輸液容器内に光線が入射するため、ビタミン類などの変質が問題となる。
そこで、輸液を投与する際には、輸液容器の周囲を覆うように遮光カバーを被せることが行われている。
かかる輸液容器用遮光カバーとしては、例えば、特開2003−275280公報記載のものが知られている。該公報の遮光カバーは、紫外線吸収・遮光性インキ層が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム基材に、視認用の窓部を除いて、茶色の遮光性着色インキ層が設けられた遮光フィルムによって形成されており、該窓部以外の部分は、波長400nm以下の光線透過率が5%以下で且つ波長400〜800nmの光線透過率が50%以下のフィルムであり、該窓部は、波長400nm以下の光線透過率が5%以下で且つ波長600nm以上の光線透過率が50%以上に構成されている。かかる窓部が設けられた従来の遮光カバーは、窓部を介して輸液量を視認することができるというものである。
【0003】
しかしながら、上記遮光カバーに用いられているフィルムは、窓部が比較的狭い面積であるため、輸液量を確認し難く、更に、窓部は可視光線の一部(およそ波長500nm程度まで)の透過率が比較的高い(悪い)ので、該窓部から入り込む光線によって輸液が変質する虞がある。この点、窓部を広面積にすると、視認性は向上するが、遮光性は低下し、一方、窓部を狭くとすると遮光性は向上するが、視認性は更に悪くなる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−275280公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、紫外線のみならず可視光線の一部に於ける遮光にも優れ、且つ窓部を設けることなく輸液を視認することができる輸液容器用遮光カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、着色インキ層と紫外線を吸収又は遮断する紫外線吸収遮断処理とが施されたフィルムからなり、着色インキ層が、朱色インキを印刷した朱インキ層と黄色インキを印刷した黄インキ層の2層のインキ層、又は朱色インキ及び黄色インキの混合インキを印刷した混合インキ層の何れかを有する輸液容器用遮光カバーを提供する。
【0007】
上記遮光カバーは、紫外線吸収遮断処理と朱色インキ及び黄色インキが相互に作用して、紫外線及び可視光領域のうち波長530nm以下の可視光線の光線透過率を5%以下に抑えることができ、他方、波長600nm以上の可視光線の光線透過率を70%以上確保することができる。よって、輸液の品質劣化を防止しつつ、カバー全体を通じて輸液量が見えやすい視認性に優れた遮光カバーを提供できる。
【0008】
また、本発明は第2の手段として、ベースフィルムに、第1インキ及び第2インキをそれぞれ印刷した少なくとも2層のインキ層、又は第1インキ及び第2インキを混合した混合インキをベースフィルムに印刷した混合インキ層を備える着色インキ層と、紫外線を吸収又は遮断する紫外線吸収遮断処理と、が施された遮光フィルムからなり、第1インキは、紫外線吸収遮断処理と共にベースフィルムに施された状態で、波長380nm以下の紫外線領域に於ける光線透過率が1%以下、波長420〜530nmの光線透過率が5%以下、且つ波長600nm以上の可視光領域に於ける光線透過率が70%以上になるインキで構成し、第2インキは、紫外線吸収遮断処理と共に施された第1インキに積層してベースフィルムに印刷又は第1インキに混合してベースフィルムに印刷することにより、波長380〜420nmの光線透過率が5%以下、且つ波長600nm以上の可視光領域に於ける光線透過率が70%以上になるインキで構成された輸液容器用遮光カバーを提供する。
【0009】
かかる輸液容器用遮光カバーも同様に、輸液の品質劣化を防止しつつ、カバー全体を通じて輸液量が見えやすい視認性に優れたものである。
【0010】
さらに、上記第1インキとしては、これを波長350〜800nmに於ける光線透過率が80%以上の透明なポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚0.3〜1.5μmでグラビア印刷にて塗布した際、この印刷フィルムの波長420〜530nmに於ける光線透過率が5%以下、波長600nm〜800nmに於ける光線透過率が70%以上、波長350〜420nm中に於いて光線透過率が5%以上となる部分を示すインキを用いることが好ましい。
また、上記第2インキとしては、これを波長350〜800nmに於ける光線透過率が80%以上の透明なポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚0.3〜1.5μmでグラビア印刷にて塗布した際、この印刷フィルムの波長380〜420nmに於ける光線透過率が30%以下、波長420〜450nmに於ける光線透過率が10%以下、波長600〜800nmに於ける光線透過率が70%以上、波長300〜400nm中に於いて光線透過率が20%以上となるピーク部を示すインキを用いることが好ましい。
ここで、光線透過率とは、JIS K 7105に準拠して測定したものをいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明の輸液容器用遮光カバーは、紫外線及び可視光領域の一部の光線を確実に遮光でき、他方、波長600nm以上の可視光線については光線透過率が70%以上確保されているので、カバーの全面から輸液を視認することができる。従って、本発明の輸液容器用カバーは、従来の遮光カバーのように視認用の窓部を形成する必要がなく、使用時に於いて輸液の変質を防止でき、外部から輸液量を一目で視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1に於いて、10は、輸液容器に外嵌することができるように袋状に成形されている輸液容器用遮光カバーを示す。
具体的には、この遮光カバー10は、遮光フィルム1を適宜矩形状に形成した2枚のフィルム片1a,1aを、シーラント層を対向させて重ね合わせ、その両側端縁部を熱シールすると共に、上端縁中央部に確保する上方開口部を除いて、2枚のフィルム片1a,1aの上端縁部を熱シールすることにより形成されている。かかる遮光カバー10は、下方の開口部から輸液容器に被せ、該輸液容器の吊下げ部を上方開口部から覗き出させて使用される。
【0013】
遮光カバー10を構成する遮光フィルム1は、図2に示すように、ベースフィルム2の内面に紫外線吸収遮断処理として設けられた紫外線吸収遮断層3と、更にこの内面に設けられた着色インキ層5と、更にこの内面に設けられたシーラント層6と、を有する。
ベースフィルム2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリスチレンなどのポリスチレン系、環状オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物などからなる透明なフィルム、及びこれらの積層フィルムなどを用いることができ、汎用的であること、耐熱性があり又強度的に優れること、透明性も良好であることからポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルムを用いることが好ましい。かかるベースフィルム2は、紫外線吸収又は遮断剤を練り込んだ樹脂組成物にて製膜されたフィルムや、紫外線吸収又は遮断剤を浸透させたフィルムなどの紫外線吸収遮断処理が施されたものを用いることもできる。ベースフィルム2は、波長600〜800nmで光線透過率が80%以上の透明性に優れるものが用いられる。ベースフィルム2の厚さは、概ね10〜70μm程度である。
【0014】
紫外線吸収遮断層3としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物などの有機系紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線遮断剤などを用いることができる。かかる紫外線吸収剤又は遮断剤を適当なバインダーに分散・溶解させ、グラビアコーティング法などの印刷法などによって塗布することにより、紫外線吸収遮断層3は、ベースフィルム2の内面全体に積層されている。
【0015】
次に、着色インキ層5は、第1インキ及び第2インキをそれぞれ印刷した2層のインキ層51,52を備えている。
この第1インキ層51は、紫外線吸収遮断層3と共にベースフィルム2に設けられた状態で、波長380nm以下の紫外線領域に於けるフィルムの光線透過率を1%以下、波長420〜530nmの光線透過率を5%以下、且つ波長600nm以上の可視光領域に於ける光線透過率を70%以上とすることができるインキから構成されている。
第1インキとしては、特に限定されず、例えば、朱色を呈する朱色インキや、次の条件1を満たすインキなどが例示される。
条件1:波長350〜800nmに於ける光線透過率が80%以上の透明なポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥厚約0.3〜1.5μmでインキをグラビア印刷し、この印刷フィルムについてJIS K 7105に準拠して光線透過率を測定する。
a)波長420〜530nmに於ける光線透過率が5%以下、
b)波長600〜800nmに於ける光線透過率が70%以上、
c)波長350〜420nm中に於いて光線透過率が5%以上となる部分がある、
光学的特性を示すインキで、より具体的には、
上記a)〜c)に加えて、
d)波長300〜400nmに於いて光線透過率が10%以上となるピーク部を示すインキ。
【0016】
また、第2インキ層52は、紫外線吸収遮断層3と第1インキ層51の相乗効果によって上記光線透過率を示すフィルムに、更に積層(又は第1インキに混合)することにより、上記紫外線吸収遮断層3と第1インキ層51では抑えることができなかった波長380〜420nmに於ける光線透過率を5%以下に抑えることができ、且つ波長600以上の可視光領域に於ける光線透過率を70%以上確保できるインキから構成されている。
第2インキとしては、特に限定されず、例えば、黄色を呈する黄色インキや、次の条件2を満たすインキなどが例示される。
条件2:波長350〜800nmに於ける光線透過率が80%以上の透明なポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥厚約0.3〜1.5μmでインキをグラビア印刷し、この印刷フィルムについてJIS K 7105に準拠して光線透過率を測定する。
e)波長380〜420nmに於ける光線透過率が30%以下、
f)波長600〜800nmに於ける光線透過率が70%以上、
g)波長420〜450nmに於ける光線透過率が10%以下、
h)波長300〜400nm中に於いて光線透過率が20%以上となるピーク部を示すインキ。
【0017】
上記着色インキ層5のうち第1インキ層51は、紫外線吸収遮断層3と相乗して、ベースフィルム2を透過する光線のうち、波長380nm以下の光線透過率を1%以下、波長420〜530nmの光線透過率を5%以下、且つ波長600nm以上の可視光領域に於ける光線透過率を70%以上とするものである。
一方、着色インキ層5のうち第2インキ層52は、第1インキ層51と紫外線吸収遮断層3だけでは、抑制することができない波長380〜420nmの光線透過率を5%以下に抑えつつ、波長600nm以上の光線については抑制せずに、第1インキ層51で確保された光線透過率70%以上を維持できるものである。
特に、第2インキ層52が黄色インキの場合、波長600〜800nmに於ける光線透過性に優れ、一方、波長380〜420nmに於ける光線吸収性に優れている。
かかる着色インキ層5によって、本発明の遮光フィルム1は、波長530nm以下の可視光線及び紫外線を光線透過率5%以下、特に510nm以下を3%以下、より好ましい態様では1%以下に遮断でき、他方、波長600nm以上の可視光線を光線透過率70%以上確保することができる。
【0018】
着色インキ層5は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の慣用の印刷法により印刷すればよく、フィルム2の内面全体に形成される。また、着色インキ層5の厚みは、遮光性と視認性を考慮して適宜設計されるものであり、余りに薄いと遮光性に劣り、逆に厚すぎると視認性が低下するため、例えば乾燥厚約0.5〜5μm程度が好ましい。具体的には、第1インキ層51は、例えば乾燥厚約0.3〜2.0μm程度、好ましくは乾燥厚0.3〜1.5μm程度、より好ましくは乾燥厚0.3〜1.0μmに塗布される。また、第2インキ層52は、例えば乾燥厚約0.3〜3.0μm程度、好ましくは乾燥厚0.3〜1.5μm程度、より好ましくは乾燥厚0.3〜1.0μm程度に塗布される。
尚、各インキ層を形成する際には、塗布するインキに、必要に応じて、透明メジウムインキなどの着色剤成分を含まない透明インキを混合することにより、上記インキ層の厚みを調整することができる。
【0019】
次に、シーラント層6としては、熱溶着可能なものであれば特に限定されず、例えば、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを用いることができる。シーラント層6は、例えばベースフィルム2の最内面側に、公知のラミネート法、例えば押出ラミネート法や、透明な接着剤を用いるドライラミネート法などによって積層することができる。これらのなかでは、シーラント層6表面の凹凸が小さく、より透明な積層フィルムを得ることができる点から、ドライラミネート法で積層することが好ましい。この場合、その接着剤としては、透明性の高いものが用いられる。
尚、シーラント層6が設けられた遮光フィルム1は、ヒートシール等によって簡易に袋状などに形成することができるので好ましいが、シーラント層6を有しない遮光フィルム1を用いることもできる。
【0020】
上記遮光カバー10は、輸液容器に被して使用される。この遮光カバー10は、波長530nm以下の光線透過率が5%以下(特に波長510nm以下を3〜1%以下)の遮光フィルム1からなるので、輸液の品質低下防止に優れている。一方、遮光カバー10は、波長600nm以上の可視光の光線透過率が70%以上の遮光フィルム2からなるので、カバー10の全面を通じて被包された輸液容器の液面が見えやすく、輸液の減り状況を簡単に把握することができる。
【0021】
尚、本発明の遮光フィルム1の層構成は、上記に例示したものに限られず、種々の態様に変更することができる。
例えば、上記各実施形態では、ベースフィルム2に紫外線吸収遮断層3が設けられているが、例えば、該ベースフィルム2として紫外線吸収又は遮断剤を練り込むなどの紫外線吸収遮断処理が施されたフィルムを用いた場合には、紫外線吸収遮断層3は省略することもできる。また、着色インキ層を構成するインキに紫外線吸収又は遮断剤を混合することもでき、この場合についても同様に、紫外線吸収遮断層3は省略することもできる。
また、上記実施形態では、着色インキ層5を構成する2層のインキ層51,52は、直接重ね塗りされているが、例えば、ベースフィルム2を介在させて2層のインキ層51,52が積層されているものでよい。また、着色インキ層5は、異なるインキの2層積層構造に限られず、3層以上でもよい。
さらに、上記各実施形態では、着色インキ層5は、第1インキと第2インキをそれぞれ塗り分けた2層以上のインキ層からなるが、例えば、第1インキと第2インキを混合した混合インキにて形成された混合インキ層から構成されていてもよい。尚、この混合インキ層は、1層塗りでも構わないし、又これを2層以上積層してよく、更に、上記第1インキ層及び/又は第2インキ層と混合インキ層を積層することにより着色インキ層5を構成することもできる。
【0022】
これら各種の変形例の組み合わせを示せば(但し、紫外線吸収遮断層及びシーラント層は省略する)、上層から順に、第1インキ層/ベースフィルム/第2インキ層、第2インキ層/ベースフィルム/第1インキ層、ベースフィルム/第1インキ層/第2インキ層/第2インキ層、ベースフィルム/第1インキ層/第2インキ層/第1インキ層/第2インキ層、ベースフィルム/混合インキ層、ベースフィルム/混合インキ層/混合インキ層、混合インキ層/ベースフィルム/第1インキ層、/ベースフィルム/混合インキ層/第1インキ層/第2インキ層などが例示される。
尚、ベースフィルム2が複層フィルムからなる場合には、その中間に、適宜、着色インキ層5や紫外線吸収遮断層3を介在させるものでも構わない。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記に例示した層以外の機能層や他の着色インキ層を積層することも可能である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
(使用した印刷インキ)
黄色インキ(1)…大日精化工業(株)製、商品名:HRカラー722黄LX。
黄色インキ(2)…大日精化工業(株)製、商品名:NTハイラミック722R黄M3。
朱色インキ…大日精化工業(株)製、商品名:HRカラー950朱LX。
紫外線吸収剤が配合された黄色インキ(以下「紫外線吸収黄インキ」という)…東洋インキ製造(株)製、商品名:マルチセットVコンク黄。
尚、各インキは、実施例6の紫外線吸収黄インキを除き、150線のグラビアロールを用いてグラビア印刷法によって印刷した。
【0024】
(実施例1)
紫外線吸収剤を混合して製膜された厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:HBP)の外面に、黄色インキ(1)をグラビア印刷によりベタ刷りして黄色インキ層(乾燥厚約1.0μm)を形成した。更に、この上から、同黄色インキ(1)を同様にして重ね塗りした。他方、このフィルムの内面に、朱色インキに透明インキ(大日精化工業(株)製、商品名:HRカラーRメジウム)を等量加えて着色剤濃度を半分にした薄い朱色インキをグラビア印刷によりベタ刷りして朱色インキ層(乾燥厚約1.0μm)を形成した。この印刷フィルムの内面に、シーラント層として厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(アイセロ化学(株)製、商品名:L130AS)を、二液硬化型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケラック)を介してドライラミネートした。得られたフィルムについて、波長200〜800nmに於ける光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
尚、光線透過率の測定は、JIS K 7105に準拠した積分球式光線透過率測定装置(島津製作所(株)製、商品名:UV−2450(但し、この測定装置には、積分球附属装置(島津製作所(株)製、商品名:ISR−2200)が取付けられている)を用いて測定した。以下、同測定装置で各フィルムの光線透過率を測定した。
【0025】
(実施例2)
実施例1と同じフィルムの内面に、黄色インキ(2)をベタ印刷して黄色インキ層(乾燥厚約1.0μm)を形成し、この上から同黄色インキ(2)を同様にして重ね塗りした。さらに、この上から実施例1と同様にして濃度調整された薄い朱色インキ層を同量重ね塗りした。この印刷フィルムに、実施例1と同様にしてシーラント層を積層し、得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
(実施例3)
実施例1と同じフィルムの内面に、紫外線吸収黄インキをベタ印刷してUV黄色インキ層(乾燥厚約1.0μm)を形成し、この上から同紫外線吸収黄インキを同様にして重ね塗りした。さらに、この上から実施例1と同様にして濃度調整された薄い朱色インキ層を同量重ね塗りした。この印刷フィルムに、実施例1と同様にしてシーラント層を積層し、得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
(実施例4)
実施例3の紫外線吸収黄インキを1回印刷に変えた以外は、実施例3と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
【0026】
(実施例5)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの内面に、紫外線吸収黄インキをベタ印刷してUV黄色インキ層(乾燥厚約1.0μm)を形成し、さらに、この上から実施例1と同様にして濃度調整された薄い朱色インキ層を同量重ね塗りした。この印刷フィルムの内面に、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(アイセロ化学(株)製、商品名:L130AS)を、二液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネートした。得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
(実施例6)
実施例5の紫外線吸収黄インキを、100線のグラビアロールを用いてベタ印刷したこと、及び、朱色インキ:透明インキの混合割合を容積比で10:3にして乾燥厚約1.2μmで塗布したこと以外は、実施例5と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
(実施例7)
実施例5と同じフィルムの内面に、紫外線吸収黄インキをベタ印刷してUV黄色インキ層(乾燥厚約1.0μm)を形成し、この上から同紫外線吸収黄インキを同様にして重ね塗りした。さらに、この上から実施例1と同様にして濃度調整された薄い朱色インキ層を同量重ね塗りした。この印刷フィルムに、実施例5と同様にしてシーラント層を積層し、得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
(実施例8)
実施例1と同じフィルムの外面に、朱色インキと黄色インキ(1)を容積比で1:2の割合で混合したインキを乾燥厚約1.0μmでベタ印刷し、更にこれを2回繰り返して計3層の混合インキ層を形成した。この印刷フィルムに、実施例5と同様にしてシーラント層を積層し、得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同じフィルム(紫外線吸収剤を混合して製膜された厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)に印刷などを行わず、該フィルムについて同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
(比較例2)
実施例1と同じフィルムの内面に、朱色インキをベタ印刷して朱色インキ層(乾燥厚約1.0μm)を形成した。この印刷フィルムに、実施例5と同様にしてシーラント層を積層し、得られたフィルムについて、同様に光線透過率を測定した。その結果を図3に示す。
【0028】
(参考例)
実施例及び比較例で使用した印刷インキのうち、黄色インキ(1)、黄色インキ(2)及び朱色インキのそれぞれの光線遮断効果を確認するため、次の光学的試験を行った。
透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(波長350〜800nmに於ける光線透過率が80%以上のもの)の一面に、上記インキを150線のグラビアロールを用いてグラビア印刷し(乾燥厚約1.0μm)、印刷フィルムを作製した。この各印刷フィルム及び透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(未印刷のもの)について、上記測定装置で波長200〜800nmの光線透過率を測定した。その結果を図4に示す。
【0029】
次に、上記実施例及び比較例のフィルムを矩形状に切断して得られた2枚のフィルム片を、シーラント層が対向するように重ね合わせて、且つその両側端縁部及び上端縁部(但し、上端縁中央部を除く)を熱シールすることにより、袋状のカバーを作製した。かかるカバーを用いて、別途準備した輸液容器(無色透明な合成樹脂製袋に黄色の輸液を半分程度封入した袋)を覆い、このものを白色の壁面の前方約50cmに吊し、100cm離れた位置から、カバーを通して輸液の液線が見えるかどうかを確認した。
その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の輸液容器用遮光カバーの一実施形態を示す斜視図。
【図2】本発明の遮光フィルムを示す縦断面図。
【図3】実施例及び比較例の光線透過率を示すグラフ図。
【図4】参考例の光線透過率を示すグラフ図。
【符号の説明】
【0032】
1…遮光フィルム、2…ベースフィルム、3…紫外線吸収遮断層、5…着色インキ層、6…シーラント層、10…遮光カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色インキ層と紫外線を吸収又は遮断する紫外線吸収遮断処理とが施された遮光フィルムからなり、
前記着色インキ層が、朱色インキを印刷した朱インキ層と黄色インキを印刷した黄インキ層の2層のインキ層、又は朱色インキ及び黄色インキの混合インキを印刷した混合インキ層を備えることを特徴とする輸液容器用遮光カバー。
【請求項2】
ベースフィルムに、第1インキ及び第2インキをそれぞれ印刷した少なくとも2層のインキ層、又は第1インキ及び第2インキを混合した混合インキを印刷した混合インキ層を備える着色インキ層と、紫外線を吸収又は遮断する紫外線吸収遮断処理と、が施された遮光フィルムからなり、
前記第1インキは、前記紫外線吸収遮断処理と共にベースフィルムに施された状態で、波長380nm以下の紫外線領域に於ける光線透過率が1%以下、波長420〜530nmの光線透過率が5%以下に、且つ波長600nm以上の可視光領域に於ける光線透過率が70%以上になるインキで構成し、
前記第2インキは、前記紫外線吸収遮断処理と共に施された第1インキのインキ層に積層してベースフィルムに印刷又は第1インキに混合してベースフィルムに印刷することにより、更に波長380〜420nmに於ける光線透過率が5%以下に、且つ波長600nm以上の可視光領域に於ける光線透過率が70%以上になるインキで構成することを特徴とする輸液容器用遮光カバー。
【請求項3】
前記第1インキが、下記に示すインキである請求項2記載の遮光カバー。
波長350〜800nmに於ける光線透過率が80%以上の透明なポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚0.3〜1.5μmでグラビア印刷した際、この印刷フィルムの波長420〜530nmに於ける光線透過率が5%以下、波長600〜800nmに於ける光線透過率が70%以上、波長350〜420nm中に於いて光線透過率が5%以上となる部分を示すインキ。
【請求項4】
前記第2インキが、下記に示すインキである請求項2又は3記載の遮光カバー。
波長350〜800nmに於ける光線透過率が80%以上の透明なポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚0.3〜1.5μmでグラビア印刷した際、この印刷フィルムの波長380〜420nmに於ける光線透過率が30%以下、波長420〜450nmに於ける光線透過率が10%以下、波長600〜800nmに於ける光線透過率が70%以上、波長300〜400nm中に於いて光線透過率が20%以上となるピーク部を示すインキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−271761(P2006−271761A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96951(P2005−96951)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(500026119)味の素ファルマ株式会社 (3)