説明

輸液容器

【目的】 本発明は、簡単かつ迅速に薬剤とこの薬剤の溶解液を混合できると共に容器内の薬剤が混合操作上及び外部から異物あるいは微生物によって汚染されることのない輸液容器を提供することにある。
【構成】 第1の薬剤が収容される瓶(12)と、前記第1の薬剤と混合される第2の薬剤が収容されるバッグ(14)と、前記瓶(12)とバッグ(14)を連通する液通過装置(20)と、この液通過装置(20)の構成部材であって前記瓶(12)に取り付けられるホルダー(32)と、このホルダー(32)に一端部が挿入されて押圧すると前記瓶(12)の開口部(28)を閉塞しているゴム栓(30)の閉塞を解除すると共に他端部が前記バッグ(14)に挿入されるコネクター(40)とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、病院等の医療分野で点滴注射等に用いられる輸液容器に関する。
【0002】
【従来の技術】病院等においては容器に入った粉末薬剤,凍結乾燥薬剤を溶解液と混合して溶解し、輸液として点滴注射に用いる。この場合、上記薬剤の入った容器とその薬剤の溶解液とを接続用具を用いて接続し、溶解液を薬剤の入った容器に移し薬剤を溶解している。しかし、前記薬剤と溶解液とを混合する場合は薬剤の入った容器と溶解液の入った容器とを両頭針あるいは連通管等の連結用具を用いて接続し、溶解液を薬剤の入った容器に入れて薬剤を溶解するので、混合操作が煩雑となり、また外気中で薬剤の入った容器に孔を開けるので容器内の薬剤が汚染される虞れがある。そこで、上記のような問題を解消したものとして特公平2−1277号,特公平2−362561号に示されるような輸液容器が提案されている。しかし、これらの輸液容器は、いずれも連通させる目的で太い針を用いているため新たな問題として針がゴム栓を貫通する際に生じるゴム屑による汚染の危険がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事実に鑑み開発されたものであり、簡単かつ迅速に薬剤とこの薬剤の溶解液を混合できると共に容器内の薬剤が混合操作上及び外部から異物あるいは微生物によって汚染されることのない輸液容器を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1の本発明は、第1の薬剤が収容される第1の容器と、前記第1の薬剤と混合される第2の薬剤が収容される第2の容器と、前記第1の容器と第2の容器を連通する連通装置と、この連通装置の構成部材であって前記第1の容器に取り付けられるホルダーと、このホルダーに一端部が挿入されて押圧すると前記第1の容器の開口部を閉塞している閉塞部材の閉塞を解除すると共に他端部が前記第2の容器に挿入されるコネクターと、を有することを特徴としている。
【0005】
【作用】本発明の輸液容器は、第1の容器に収容されている第1の薬剤と第2の容器に収容されている第2の薬剤とを混合する場合はコネクターを押し込む。これにより、コネクターの上端部は第1の容器の開口部を閉塞している閉塞部材を押圧して、閉塞部材は第1の容器内部に押し込まれる。これにより、第1の容器と第2の容器とはコネクターを介して連通され、第1の容器に収容されている第1の薬剤と第2の容器に収容されている第2の薬剤とは混合される。
【0006】
【第1実施例】図1には本発明に係る輸液容器(10)の正面図が示されている。図1に示されるように輸液容器の上部には第1の薬剤としての凍結製剤等の薬が収容された第1の容器としての瓶(12)が配設されている。この瓶(12)の下方には塩化ビニール樹脂やポリオレフィン系樹脂等の可撓性材料で形成された第2の容器としてのバッグ(14)が配設されている。このバッグ(14)には第2の薬剤としての溶解液が充填されており、バッグ(14)の下部には液取出孔(16)が穿設されている。この液取出孔(16)には下端部に注射針(18)が取り付けられた管(19)の上端部が取り付けられている。前記瓶(12)とバッグ(14)とは連通装置としての液通過装置(20)を介して連通されるようになっている。図2には前記液通過装置(20)が拡大断面図で示されている。前記瓶(12)の下部に形成された口部(24)の内周面には小溝(26)が周方向に形成されている。口部(24)の開口部(28)には開口部(28)を閉塞するゴム栓(30)が圧入され、ゴム栓(30)の外周に形成された小突起(30A)が前記小溝(26)に嵌合されている。また、口部(24)の外周には突出部(24A)が周方向に形成されている。この突出部(24A)には合成樹脂材で中空形状に形成されたホルダー(32)の上端部(32A)が外嵌されている。即ち、前記上端部(32A)の内周面にはパッキン(34)が配設された溝部(36)が周方向に形成され、この溝部(36)に前記口部(24)の突出部(24A)が嵌合されている。前記ホルダー(32)の下端部(32B)の内周面はホルダー(32)に挿入される合成樹脂材で中空形状に形成されたコネクター(40)の中間部(41)の外周面に密接するようになっている。前記下端部(32B)の下方にはフック部(38)が連続形成されている。このフック部(38)はコネクター(40)の中間部(41)の外周に形成された溝部(40A)に嵌合して、ホルダー(32)はコネクター(40)と連結している。また、前記溝部(40A)の下方には溝部(40B)が形成され前記フック部(38)が嵌合できるようになっている。前記コネクター(40)の上端部(42)は前記口部(24)の開口部(28)より僅かに小径とされ、上端部(42)の端面には上端部(42)の開口部を閉じる薄いシール膜(44)が張られている。このシール膜(44)は前記ゴム栓(30)に当接している。前記上端部(42)には前記小溝(26)に嵌合する小突起(42A)が形成されている。また、上端部(42)と中間部(41)との間には前記開口部(28)より大径の肩部(43)が形成されているている。前記コネクター(40)の中間部(41)の外周には溝部(40C)が形成されてOリング(46)が嵌入されている。また、前記ホルダー(32)の下端部(32B)の内周面には溝部(48)が形成されて、Oリング(50)が嵌入されている。図1に示されるように前記コネクター(40)の下端部は前記バッグ(14)の上端部に形成された孔を介してバッグ(14)内に挿入されている。なお、図1には図示しないが前記瓶(12)等に吊下部材を取り付けて輸液容器(10)を吊り下げるようになっている。
【0007】次に、第1実施例の作用について説明する。図3に示すように瓶(12)に収容されている凍結製剤とバッグ(14)内に収容されている溶解液とを混合する場合はコネクター(40)を瓶(12)方向に押し込む。コネクター(40)の中間部(41)の外周面はホルダー(32)の内周面に摺動しながら移動する。これにより、コネクター(40)の上端部(42)は瓶(12)の開口部(28)に進出して圧入されているゴム栓(30)を押圧して、ゴム栓(30)は瓶(12)の内部に押し込まれる。また、コネクター(40)の上端部(42)の小突起(42A)は開口部(28)の小溝(26)に嵌合すると共にコネクター(40)の肩部(43)は口部(24)の先端面に当接してコネクター(40)は停止する。しかも、ホルダー(32)のフック部(38)は溝部(40A)との嵌合を解除された後に溝部(40B)に嵌合するので、ホルダー(32)とコネクター(40)の連結状態は維持される。なお、前記コネクター(40)の上端部(42)の端面に張られているシール膜(44)は前記コネクター(40)を押圧した再の押圧力で破れる。この結果、瓶(12)とバッグ(14)とはコネクター(40)を介して連通されるので、輸液容器(10)を振ったりあるいは輸液容器(10)の上下を反対にすると瓶(12)に収容されている薬剤とバッグ(14)内に収容されている溶解液とは混合する。また、ホルダー(32)とコネクター(40)と当接部にはOリング(46),(50)が配設されているのでコネクター(40)を通過する溶解液が外部に漏れる心配は全くない。従って、瓶(12)に収容されている凍結製剤とバッグ(14)内に収容されている溶解液とを混合する場合は単にコネクター(40)を瓶(12)方向に押し込むだけで凍結製剤と溶解液とを混合でき、しかも外気中で瓶(12)のゴム栓(30)やバッグ(14)に孔を開けたりすることがないので凍結製剤,溶解液が汚染されることはない。
【0008】
【第2実施例】図4乃至図6には本発明に係る輸液容器(10)の第2実施例の一部拡大断面図が示されている。なお、第1実施例と同一の構成については同一の符号を用いてその説明を省略する。図4に示すように、前記コネクター(40)の中間部(41)の外周には溝部は形成されておらず、このためOリングも配設されていない。また、前記ホルダー(32)の中間部の内周面にも溝部が形成されておらず、このためOリングも配設されていない。従って、この実施例においては第1実施例と異なりOリングが配設されていないので、部品点数を少なくできるという利点がある。しかし、外部からの異物あるいは微生物の混入を完全に防ぐ目的で第2の容器を形成している可撓性材料を用いて第1の容器及び連通装置を覆うことが好ましい(図6参照)。なお、他の構成及び作用は第1実施例と同一なので、その説明を省略する。
【0009】なお、上記各実施例の輸液容器(10)全体を合成樹脂等で製造された薄いシートで密閉するようにしてより輸液容器(10)の衛生管理を高めるようにしてもよい。
【0010】
【発明の効果】本発明に係る輸液容器は、コネクターを押し込むだけで第1の容器の第1の薬剤と第2の容器の第2の薬剤とを混合できるので、混合作業を簡単かつ迅速に行うことができると共に容器の薬剤を汚染することがないという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る輸液容器の第1実施例の正面図である。
【図2】本発明に係る輸液容器の第1実施例の一部拡大断面図である。
【図3】本発明に係る輸液容器の第1実施例の一部拡大断面の作用説明図である。
【図4】本発明に係る輸液容器の第2実施例の一部拡大断面図である。
【図5】本発明に係る輸液容器の第2実施例の一部拡大断面の作用説明図である。
【図6】本発明に係る輸液容器の第2実施例の正面図である。
【符号の説明】
(10)・・・輸液容器
(12)・・・瓶
(14)・・・バッグ
(20)・・・液通過装置
(32)・・・ホルダー
(40)・・・コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の薬剤が収容される第1の容器と、前記第1の薬剤と混合される第2の薬剤が収容される第2の容器と、前記第1の容器と第2の容器を連通する連通装置と、この連通装置の構成部材であって前記第1の容器に取り付けられるホルダーと、このホルダーに一端部が挿入されて押圧すると前記第1の容器の開口部を閉塞している閉塞部材の閉塞を解除すると共に他端部が前記第2の容器に挿入されるコネクターと、を有することを特徴とする輸液容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−161693
【公開日】平成5年(1993)6月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−352038
【出願日】平成3年(1991)12月12日
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【出願人】(000236724)不二硝子株式会社 (1)