説明

輻射冷暖房装置及び除加湿冷暖房システム

【課題】高COPでメンテナンスを低減可能な建物用の輻射冷暖房装置及び除加湿冷暖房システムを提供する。
【解決手段】輻射熱を利用した輻射冷暖房装置100であって、空調手段200の吹出口からの温調空気が気密状態で輻射ダクト10へ供給され、輻射ダクト10より熱放出空気を気密状態で空調手段200の吹込口へ帰還する循環空調回路を構成し、さらに輻射ダクト10内には熱吸収部材である伝熱部材15を有している。伝熱部材15は、熱吸収面16Aと熱接続面16BとしたL字加工を有し、流入する温調空気より熱吸収面16Aが吸熱し、熱接続面16Bと輻射パネル12とが熱結合され、輻射パネル12より室内1へ効率よく輻射熱を伝搬させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用の輻射冷暖房装置であって、特に輻射熱を利用した輻射冷暖房装置および除加湿冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物用の冷暖房装置として普及しているのは、コンプレッサを内蔵したエアコンが主流である。冷暖房の吹き出し口の取付様式は、壁掛、床置、天井吊り、天井埋込等があり、建物外部にコンプレッサ、凝縮器、ファンが内蔵された室外機を設置している。この構造の冷暖房装置は、ヒートポンプ方式と呼ばれ、媒体を圧縮して高温とし、減圧して低温となる特性を利用したものである。
【0003】
ヒートポンプの冷暖房装置は、一般家庭用のエアコンや小中規模の程度までの建物に利用され、さらには室内機を集中コントロールするマルチエアコン等が中大規模な建物で利用されている。その他に、大規模建物の冷暖設備としては、電動冷凍機、電気ボイラーや化石燃料を利用したボイラー、直焚き冷温水発生機等があり、必要に応じてファンコイルユニットを利用し室内へ冷温風を送風している。さらにまた、環境問題を重視した太陽熱、地熱、地下水等の自然エネルギーを利用も開発されてきている。
【0004】
この中で主に利用されているのがヒートポンプ式冷暖房機およびファンコイルユニットである。これは室内温度を直接冷温風にて対応する方法であり、そのエネルギー源は室外等に設置される熱源装置である。その媒体又は冷温水の熱源温度を冷房時には5〜7℃、暖房時には50〜60℃とし、室温を冷房時26〜28℃、暖房時20〜22℃程度にコントロールしている。しかし、温度(顕熱)・湿度(潜熱)同時処理のために、COP(Coefficient Of Performance:冷暖房平均エネルギー消費効率)を如何にして上げるかが現在の各研究機関のテーマとなっている。
【0005】
さらに、直接冷温風を送る場合風力、風向き等により偏った室内温度分布となり、さらに高温多湿で四季のある日本において、温度(顕熱)と湿度(潜熱)との相関関係により、人が感じる心地よさはかなりバラツキが生じてしまう。また風力により冷温風が直接人体に当たる場合には、手足の冷え等健康に悪影響も与えている。
【0006】
このような影響を考慮し以前より、輻射冷暖房を目的とした冷暖房機器が開発されている。典型的な例として韓国で古来より用いられていたオンドルが挙げられる。これは、調理等に用いた火気の排煙を床にダクトを設け床全体を温めていたが、現在ではマンション等の普及により床下にパイプを設置した冷温水循環オンドルシステムが主流となっている。日本でも従来より天井や壁等に水配管を埋設して、その中に冷温水を循環させて輻射冷暖房を行うシステムは開発されている。
【0007】
しかし輻射冷暖房にて室温をコントロールしても、湿度が高い場合には冷却能力を上げなければ適温と感じないし、湿度が低い場合には温度が上げると更に湿度が下がってしまい人体の呼吸器官等への悪影響の問題点があった。また、湿度が高い状態で冷却能力を上げた場合に熱源部分(水配管等)で結露が発生し、天井、壁及び床の材料を痛めてしまったり、水配管の腐食も懸念され、さらには水配管の腐食による漏水も懸念されていた。一般家庭等では、湿度のコントロールに対しては加湿器や除湿器を併用し対応していた。
【0008】
このような中、温度と湿度とを別々にコントロールする考えが登場してきている。湿度をコントロールできるデシカント方式(除湿材を利用した方法)の開発により吸排気時における水分の吸着・放出コントロールを一台でできる製品が開発されている。これにより湿度をコントロールすることができ、さらには除加湿COPを4.0以上に高めることを可能としている。そこで残りは温度のみに特化して、検討することが可能となっている。
【0009】
そこで温度対応の輻射冷暖房システムが考案されている。例えば、特許文献1に開示される輻射冷暖房システムは、図17及び図18に示すように、建築物の構造体(コンクリートスラブ)804に中空部805を設け空気通路807を構成し、空調機803の空調空気を循環供給する構成すると共に、空気通路807を構成する構造体を少なくとも一部の面を居室801への輻射伝熱面として利用する。また特許文献2に開示される輻射冷暖房システムは、図19に示すように、建築物の上下階を仕切る水平構造体(コンクリートスラブ)の内部に輻射パネル911を設け、熱源により加熱又は冷却された熱媒(例えば水、油、冷媒等)が流通する熱媒配管912を断熱材913で仕切り上面に第1の熱伝導体914と下面に第2の熱伝導体915を備えた輻射パネル911で輻射熱により冷暖房を行う輻射冷暖房システム等が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−311565号公報
【特許文献2】特開2009−222294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記いずれの技術も建築物のコンクリートスラブ内部に熱媒(空気、水、油、冷媒等)を利用した輻射冷暖房システムであり、コンクリートスラブ内部の中空又は中空配管に熱媒を循環させコンクリートスラブを蓄熱させて輻射冷暖房を行う構成となっている。この構成では、コンクリートスラブ内に熱媒を配管(例えば埋設)する必要があり、施工時に相当のコストと手間が掛かる。加えて、運用時においても、コンクリートスラブに蓄熱させるためには、相当の時間とエネルギーを要する。このため、夜間電力等を利用して長時間にわたりコンクリートスラブへの蓄熱を行う必要があり、即応性やエネルギー効率の面からは好ましくない。さらに、地震大国である日本では、地震にあった場合に建築物の駆体に歪みを生じ、コンクリートスラブへのクラック等による熱媒(空気)の漏れや、中空配管の破損による熱媒(水、油、冷媒等)の流出の可能性も考えられる。例えば天井に設けた配管から水などの熱媒が漏れると、雨漏り状態となってしまう虞がある。また空調機を補修するためには建築物のコンクリートスラブ自体の改修が必要となり、さらには通常のメンテナンス作業に際してもアクセスが困難となって、極めて作業性が悪いという問題があった。
【0012】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、エネルギー効率に優れ、施工、メンテナンスも容易な建物用の冷暖房システムであって、とくに輻射熱を利用した輻射冷暖房装置及び除加湿冷暖房システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0013】
以上の目的を達成するため、本発明の第1の側面によれば、輻射熱を利用した冷暖房対象領域への冷暖房が可能な輻射冷暖房装置100であって、冷暖房対象領域に配置された輻射ダクト10と、熱源により温度調整された温調空気を輻射ダクト10に送風させるための空調手段200と、輻射ダクト10および空調手段200との間を気密状態に接続して、温調空気を循環させるための断熱空調配管20と、を備える装置において、輻射ダクト10内に、温調空気の循環を阻害する姿勢に配置されることで、温調空気から吸熱して輻射ダクト10に伝熱する伝熱部材15を設けてなる。これにより、輻射ダクト内には、温調空気が複数の伝熱部材により熱吸着され熱源を効率よく熱伝導される。さらに、閉鎖され気密状態とした循環空調回路を形成しているため空調手段への埃の蓄積がなくフィルターの清掃を必要としない。さらに、室内に冷温風が生じないため、ハウスダストの原因である埃の拡散防止ができ、さらに温度分布の偏りを減少させることができる。さらにまた循環空調回路を形成しているため、外気との温度交換がなされないために空調手段の吹出口から吹き出してくる温調空気と帰還してきた熱放出空気との温度差が小さいため、空調手段の負荷を小さくすることができCOPを大きくすることができる。
【0014】
また、本発明の第2の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、輻射ダクト10は、入力口18および出力口19を持つ箱形ダクト11と、放熱面側に設置した熱伝導性の優れた輻射パネル12と、輻射パネル12を除く側壁面に装着した断熱材13と、を備えている。これにより、定型の箱形ダクトが利用でき、さらに熱伝導率の低いフェノールフォーム等を利用することができる。輻射パネルの材質としては、アルミニウム、銅、鉄等の金属、あるいは合金等であって熱伝導率に優れたものが適している。
【0015】
さらに、本発明の第3の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、輻射ダクト10は、熱伝導性の優れた輻射パネル12と、入力口18および出力口19を持つ側壁面を成型された断熱部材14と、を嵌合形成している。これにより、輻射ダクトを構成する構成部材を少なくでき、且つ輻射パネルに伝熱部材を装着後側壁面と嵌合形成できるため作業効率を上げることもできる。さらにこれにより、輻射パネルが設置される冷暖房対象領域に合わせることができ、設置条件に適合させることができる。ここで利用できる輻射パネルの材質は、アルミニウム、銅、鉄等の金属、あるいは合金等であって熱伝導率に優れたものが適している。
【0016】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、伝熱部材15は、輻射パネル12と熱結合する熱接続面16Bと、輻射ダクト10の内部の放熱面側に略垂直に設置された矩形板として熱吸収面16Aとを有し、熱吸収面16Aが、輻射ダクト10に対し、高さは内部高と略同等で、幅は入力口18面の約1/2から3/4で、向きを入力口18壁面に対し略平行とし、伝熱部材15が、輻射ダクト10の入力口18から出力口19までの間を千鳥状に略等間隔で複数設置し、輻射ダクト10内の送風空間における風流を蛇行させることができる。これにより、温調空気の風流を各伝熱部材の熱吸収面にて吸熱し、熱接続面と熱結合されている輻射パネルに効率よく熱伝導させることができる。されに複数の伝熱部材を千鳥状に配置させ各熱吸収面に温調空気を滞留させ十分に輻射パネルに熱交換でき、さらなる輻射熱を室内に伝播させることができる。ここでは、伝熱部材の熱吸収面の向きを入力口壁面に対し略平行としているが、これに限らず入力口壁面に対して略傾斜とすることもできる。
【0017】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、断熱空調配管20は、空調手段200の吹出口に接続し、輻射ダクト10の入力口18と接続し、輻射ダクト10の出力口19にさらに断熱空気配管20及び輻射ダクト10を複数直列に接続し、冷暖房対象領域の範囲を拡張できる。これにより、室内の広さに合わせて輻射ダクトを直列に接続することにより冷暖房輻射範囲を広範囲にすることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、断熱空調配管20は、空調手段200の吹出口に接続され複数並列に分岐し、分岐された断熱空気配管20にそれぞれボリュームダンパー30を設置し、ボリュームダンパー30の出力をそれぞれ輻射ダクト10の入力口18と接続し、複数の輻射ダクト10の出力口19にさらに断熱空気配管20及び輻射ダクト10を複数直列に接続し、冷暖房対象領域の範囲を拡張できる。これにより、室内の広さに合わせて輻射ダクトを並列及び直列に接続することで輻射範囲を選択でき、且つ並列に接続した場合に各輻射ダクトへの温調空気の流量調整をボリュームダンパーにより行うことで、室内の温度の偏りを調整することができる。
【0019】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、輻射ダクト10を天井CE面に配置することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、輻射ダクト10を壁WA面に配置することもできる。
【0021】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、輻射ダクト10を床FL面に配置することもできる。これらの設置場所に限定されることなく、床面、天井面及び壁面の複数面に設けることも可能である。
【0022】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る輻射冷暖房装置100によれば、排水用のドレイン配管を必要としない構成とすることができる。これは、取付設置時に閉鎖された循環空調回路を形成する時点で内部の空気を乾燥させることができる。これにより、使用時に輻射冷暖房装置内を循環する温調空気が、外部の空気より隔離されているため温調空気に湿気の混入が防げ、温度変化による結露などを防ぐことができ、排水用のドレイン配管の設置が必要なくなるため、ドレイン配管の工事、設置スペース等を削減することができる。
【0023】
さらにまた、本発明の第11の側面に係る除加湿冷暖房システムによれば、潜熱を制御可能な除加湿機300と、除加湿機300と、輻射冷暖房装置100とを連動させて、冷暖房対象領域の温度と湿度とを制御可能なコントローラ250と、を備えている。これにより、湿度が高い場合には冷却能力を上げなければ適温と感じないし、湿度が低い場合には温度が上げるとさらに湿度が下がってしまい人体の呼吸器官等への悪影響を及ぼす問題点を回避することができる。さらには、潜熱と顕熱を同時に監視し、コントローラにより温湿度を調整することができ、さらなる省エネを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る輻射冷暖房装置を示す概略構成図である。
【図2】輻射ダクトの第一変形例を示す垂直断面図である。
【図3】輻射ダクトの第二変形例を示す垂直断面図である。
【図4】輻射ダクトの第三変形例を示す垂直断面図である。
【図5】図4おける輻射ダクトの斜視図である。
【図6】図5の輻射ダクトのA−A線における垂直断面図である。
【図7】図6の輻射ダクト内に設置される伝熱部材の斜視図である。
【図8】図5における輻射ダクトの例1でB−B線における水平断面図である。
【図9】図5における輻射ダクトの例2でB−B線における水平断面図である。
【図10】図5における輻射ダクトの例3でB−B線における水平断面図である。
【図11】輻射ダクトの接続形態の一例を示す概略構成図である。
【図12】輻射ダクトの接続形態の他の例を示す概略構成図である。
【図13】実施例1に係る輻射冷暖房装置の設置断面図である。
【図14】実施例2に係る輻射冷暖房装置の設置断面図である。
【図15】実施例3に係る輻射冷暖房装置の設置断面図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る除加湿冷暖房システムを示す設置断面図である。
【図17】従来の輻射冷暖房システムを示す縦断面図である。
【図18】図17に示す輻射冷暖房システムの横断面図である。
【図19】従来の他の輻射冷暖房システムを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための輻射熱を利用した輻射冷暖房装置及び除加湿冷暖房システムを例示するものであって、本発明は輻射熱を利用した輻射冷暖房装置及び除加湿冷暖房システムを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0026】
図1から図10に基づいて、本発明の実施の形態に係る輻射冷暖房装置100を説明する。図1は、輻射冷暖房装置100の概略構成図を示している。空調手段200の吹出口からの温調空気が気密状態で断熱空調配管20を経由し輻射ダクト10へ供給される。さらに輻射ダクト10より熱放出空気を気密状態で断熱空調配管20を経由し熱放出空気が空調手段200の吹込口へ帰還する循環空調回路を構成している。ここで用いられる空調手段200は、高顕熱型冷暖房空調機の採用が望まれる。また外気の空気が混入されない閉塞構造とすることで、外部からの埃や湿気の侵入が排除されるため、空調手段200内部のフィルターの目詰まりや熱伝導フィンの汚れの発生を抑制し、メンテナンスフリーやこれに近付けた環境を実現できる。また高顕熱型冷暖房空調機にデシカント方式の除加湿機を組み合わせることで、COP4.5以上を実現できる。
(輻射ダクト)
【0027】
さらに、図1で用いられる輻射ダクト10の構造の一例として、図2で輻射ダクト10の垂直断面図が示すようにダクト11が、室内1に接面する輻射パネル12を接着剤等を利用し固定し、さらにその他の外周面を断熱材13で覆い包み込み一体形成とした構造とすることができる。ここで利用するダクト11は、一般的な亜鉛メッキ鋼板等のダクトを利用することにより安価に制作することができる。また断熱材13は、熱伝導率の低いフェノールフォームを利用しているが、これに限らず化学繊維系や鉱物繊維系とすることもできる。さらにまた輻射パネル12は熱伝導性が優れているアルミニウムとしているが、これに限らず熱伝導性に優れる銅等の金属製とすることもできる。これにより、輻射パネル12以外での熱の放出を遮断することができ、室内1に接面した輻射パネル12側からのみ効率よく室内1への輻射熱の伝搬が可能である。
【0028】
またさらなる一例の輻射ダクト10の構造として、図3で輻射ダクト10の垂直断面図に示されるように輻射パネル12と箱形に形成された断熱部材14とを接着剤等により嵌合形成した構造とすることもできる。ここで、利用する断熱部材14としては押出発泡ポリスチレンフォーム等の発泡プラスチック系等とし、輻射パネル12は、熱伝導性が優れているアルミニウムを使用しているが、その他の金属で、銅、鉄、あるいは合金等とすることもできる。これにより輻射ダクト10が、製造時の工程数及び部品点数を少なくでき、さらには軽量化ができるため建築駆体への重量的影響も軽減ができる。
【0029】
またさらに図4に示す輻射ダクト10の垂直断面図は、図2に示した例の変形例で、輻射パネル12と箱形に形成されたダクト11とを接着剤等により接合され、輻射パネル12を除くダクト11の外周面を断熱材13で覆い包み込み一体形成とした構成とすることができる。この方法が、部材も安価で且つ後述する伝熱部材15を輻射パネル12とダクトを接合する前に取付加工ができ、輻射ダクトの製造を容易にすることができ。各実験に関しては、この方法にて実施しており、この後の図に関してもこの加工方法による説明を行う。
【0030】
さらにまた、図5は図4をモデルにした輻射ダクト10の斜視図で、断熱空調配管20を接続するための接続筒17を入力口18及び出力口19の二カ所に設けている。これにより、設置現場での断熱空調配管20との接続を効率よく実施することができる。さらに、断熱空調配管20を接続するための接続筒17を設けず、断熱空調配管20を直接輻射ダクト10の壁面に開口孔を設けそこに挿入し、挿入した周囲をシーリングすることで輻射ダクト10の断熱部材14の加工も簡易化ができ更なる軽量化することも可能である。
【0031】
ここで、輻射ダクト10の寸法は設置される冷暖房対象領域の接面の大きさにより決定することができる。実施例では、輻射ダクト10の幅Wを450mm、高さHを200mm、長さLを1800mmとして実験を実施したがこれに限るものではない。
(伝熱部材)
【0032】
この輻射ダクト10内には、図6及び図7に示されるような伝熱部材15は、熱吸収面16Aと熱接続面16BとしたL字加工を有し、熱吸収面16Aが輻射パネル12に略垂直に複数設置されている。さらに、この伝熱部材15は、熱接続面16Bと輻射パネル12とが熱接合されるように接着剤又はスポット溶接等にて固定されている。
【0033】
さらにここで用いる伝熱部材15の熱吸収面16Aの寸法は、幅が輻射ダクト10の幅Wの約1/2から3/4とし、高さを輻射ダクト10の内高と略同等の高さとする。さらにまた、各伝熱部材15の間隔は150から250mmとして実験を実施したがこの間隔に限るものではない。これにより、伝熱部材15より空調空気の熱を輻射パネル12へ熱交換することができ、輻射パネル12より室内1空間へ効率よく輻射熱を伝播させることができる。
【0034】
さらに伝熱部材15の素材は、熱伝導性が優れているアルミニウムを使用しているが、その他の金属で、銅、鉄、あるいは合金等とすることもできる。
【0035】
さらにまた図8は図5の輻射ダクト10の例1のB−B線における水平断面図を示している。伝熱部材15は温調空気が輻射ダクト10の入力口18から出力口19へ直線的に流出しないように千鳥状に設置し、熱吸収面16Aの向きは入力口18の面に略平行に設置している。これにより、入力口18より送風された温調空気は、伝熱部材15の熱吸収面16Aに熱接触しながら各伝熱部材15の間を蛇行しながら出力口19へと送出され、各伝熱部材15と接触した時点で吸熱し輻射パネル12へ効率よく伝熱することができる。
【0036】
さらにまた別の設置方法として図9は、図5の輻射ダクト10の例2のB−B線における水平断面図を示している。この伝熱部材15は温調空気が輻射ダクト10の入力口18から出力口19へ直線的に流出しないように千鳥状に設置している。さらに伝熱部材15は、熱吸収面16Aを入力口18から順番に輻射ダクト10の内側から出力口19に向け壁面方向に傾斜を設け、次の伝熱部材15が内側から逆の側面へ向くようにと交互に設置されている。
【0037】
同様に別の設置方法として図10は、図5の輻射ダクト10の例3のB−B線における水平断面図を示している。この伝熱部材15は温調空気が輻射ダクト10の入力口18から出力口19へ直線的に流出しないように千鳥状に設置している。さらに伝熱部材15は、熱吸収面16Aを出力口19から順番に輻射ダクト10の内側から入力口18に向け壁面方向に傾斜を設け、次の伝熱部材15が内側から逆の側面へ向くようにと交互に設置されている。
【0038】
このように輻射ダクト10内部の伝熱部材15の設置方法は、温調空気を伝熱部材15の熱吸収面16Aで熱吸収し、熱接触面16Bから輻射パネル12へ熱交換できればよく、図6から図10の事例に限定されるものではない。さらに、伝熱部材15の熱吸収面16Aは矩形として実験したが、温調空気を滞留させることができる形状、且つ温調空気の熱伝導できる形状であれば、例えば湾曲面、屈曲面及び棒状等の形状とすることもでき限定されるものではない。これにより、温調空気の風流を各伝熱部材15に滞留させることができ、複数の伝熱部材15が十分に熱交換でき、さらなる輻射熱を室内1に伝播させることができる。
(概略構成図)
【0039】
ここで輻射冷暖房装置100の第一の構成例を図11に沿って説明する。まず空調手段200の吹出口より断熱ダクト21を経由し吹出ボックス22と断熱空調配管20との順序に接続されている。次に断熱空調配管20を輻射ダクト10の入力口18に接続し、次に各断熱空調配管20と各輻射ダクト10との順序に複数直列接続されている。さらに終端の輻射ダクト10より断熱空調配管20、吹込ボックス23及び断熱ダクト21の順序で接続され、空調手段200の吹込口に帰還する循環空調回路を構成している。
【0040】
ここで、この第一の構成例では、輻射ダクト10を6台直列に接続しているが、この台数に限るものではなく、冷暖房対象領域への輻射範囲により輻射ダクト10を直列に接続する台数を選択することができる。
【0041】
さらに輻射冷暖房装置100の第二の構成例を図12に沿って説明する。まず空調手段200の吹出口より断熱ダクト21を経由し吹出ボックス22と断熱空調配管20との順序に接続されている。次に断熱空調配管20を3方向に分岐させ並列とし、分岐された断熱空調配管20それぞれにボリュームダンパー30が接続されている。さらに、各ボリュームダンパー30に各輻射ダクト10を接続し、次に各断熱空調配管20と各輻射ダクト10との順序に直列接続されている。さらにまた並列をなしている各輻射ダクト10に各断熱空調配管20を接続し、それらを一本の断熱空調配管20に連結させ、吹込ボックス23を経由し断熱ダクト21に接続され、空調手段200の吹込口に帰還接続されている。
【0042】
これらの各接続部分は気密に接続されており、温調空気の風流は空調手段200、吹出ボックス22、断熱空調配管20、ボリュームダンパー30、輻射ダクト10、断熱空調配管20、吹込ボックス23の順序で流れ、最終的に空調手段200へ帰還する循環空調回路を構成している。
【0043】
さらにこの第二の構成例では、3台の輻射ダクト10を並列に接続し、さらに輻射ダクト10を直列に接続した計6台が接続されているが、冷暖房対象領域への輻射範囲により輻射ダクト10の台数は限定されるものではない。これにより、室内1の広さに合わせて輻射ダクト10を並列及び直列に台数を増やし接続することで冷暖房対象領域への輻射範囲を選択できる。
【0044】
さらにまた並列に接続された輻射ダクト10の前段にはボリュームダンパー30が接続されており、並列に接続した各輻射ダクト10への温調空気の流量調整をボリュームダンパー30により行うことで、室内1の温度の偏りを調整することができる。
【0045】
さらにまた第一及び第二の構成例共にこの循環空調回路は、内部の空気を乾燥状態にさせて設置される。これにより、気密状態で循環する温調空気は外気との接触がなく、循環空調回路内部への埃や湿気等の混入を防ぎ、空調手段200内部のフィルターや熱伝導フィンの汚れを防止する効果が得られ、清掃メンテナンスを低減できる。さらに、温調空気が乾燥され湿気の混入がないため、空調手段200には排水用のドレイン配管の設置が必要なくなるため、ドレイン配管の工事、設置スペース等を削減することができる。
【0046】
さらにまたこの循環空調回路を形成しているため、外気との熱交換がなされない構造になっている。そのために空調手段200の吹出口から吹き出してくる温調空気と、帰還して吹込口に戻ってきた熱放出空気との温度差が小さいため、空調手段200の稼動効率を下げることができ、COPを4.5以上にすることが可能である。例えば冷房時には熱放出空気が外気温より低い温度で、また暖房時には熱放出空気が外気温より高い温度で空調手段200に帰還してくるため、空調手段200の稼動効率を下げ、且つ熱交換効率を向上させることができ、省エネ効果を高めることができる。
(実施例)
【0047】
これより図13の実施例1に係る設置断面図に沿って説明する。この断面図は天井CE空間に輻射冷暖房装置100を設置した実施例である。天井CE面に併せた輻射ダクト10の輻射パネル12が、室内1に接面した状態で設置され、天井CEの裏面に空調手段200が設置されている。これにより、天井CE面とした輻射パネル12より輻射熱として室内1に伝搬し、室内1全体を均一な設定温度とすることができる。ここで、天井CE面に併せた輻射パネル12は、その他の天井素材色に合わせ、表面加工されているため、違和感を生じさせることはない。
【0048】
さらに図14の実施例2に係る設置断面図に沿って説明する。この断面図は空調手段200を天井CE裏面に設置し、輻射ダクト10の輻射パネル12が壁パネル面に併せて設置されている。これにより、壁WAパネルに併せて設置されている輻射パネル12から輻射熱として室内1に伝搬し、室内1全体を均一な設定温度とすることができる。ここで、壁WAパネルに併せた輻射パネル12は、その他の壁面素材色に合わせ、表面加工されているため、違和感を生じさせることはない。この実施例では、天井CEの裏面に空調手段200に設置しているが、壁WAや床FL等の裏面に設置できる空間があれば設置することができる。
【0049】
さらにまた図15の実施例3に係る設置断面図に沿って説明する。この断面図は空調手段200を天井CE裏面に設置し、輻射ダクト10の輻射パネル12が床FLパネル面に併せて設置されている。これにより、床FLパネルに併せて設置されている輻射パネル12から輻射熱として室内1に伝搬し、室内1全体を均一な設定温度とすることができる。ここで、床FLパネルに併せた輻射パネル12は、その他の床素材色に合わせ、表面加工されているため、違和感を生じさせることはない。この実施例では、天井CEの裏面に空調手段200に設置しているが、壁WAや床FL等の裏面に設置できる空間があれば設置することができる。
【0050】
さらにまた、図13から図15に示した実施例の他にも、図示はしないが輻射ダクト10を天井CE面、壁WA面及び床FL面の二面または三面に設置することもできる。例えば夏場は天井CE面に設置された輻射ダクト10による輻射熱で冷房を行い、冬場は床FL面に設置された輻射ダクト10による輻射熱で暖房を行うように、断熱空気配管20を切り替える構造とすることもできる。これにより、空気の熱伝導特性を利用することで効率的に室内1の冷暖房を行うこともできる。
【0051】
ここでさらに、図16は、実施の形態に係る除加湿冷暖房システムを示す設置断面図を示している。この除加湿冷暖房システムは、輻射熱を利用した輻射冷暖房装置100に使用される空調手段200と、潜在である湿度をコントロールできる除加湿機300とを接続ケーブル260にて連動させることで、顕在である温度と潜在である湿度を同時に監視しコントローラ250で調整することができる。これにより、湿度が高い場合には冷却能力を上げなければ適温と感じないし、湿度が低い場合には温度が上げるとさらに湿度が下がってしまい人体の呼吸器官等への悪影響を及ぼす問題点を回避することができ、高COPの実現が可能で省エネを実現することができる。
【0052】
ここで使用される空調手段200は高顕熱型冷暖房装置で、除加湿機300はデシカント方式の除加湿機を利用することで、COPを4.5以上とし省エネ化を実現することができ、且つ室内の潜在と顕在を同時にコントロールできるため人に優しいシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…室内
10…輻射ダクト
11…箱形ダクト
12…輻射パネル
13…断熱材
14…断熱部材
15…伝熱部材
16A…熱吸収面
16B…熱接続面
17…接続筒
18…入力口
19…出力口
20…断熱空調配管
21…断熱ダクト
22…吹出ボックス
23…吹込ボックス
30…ボリュームダンパー
100…輻射冷暖房装置
200…空調手段
250…コントローラ
260…接続ケーブル
300…除加湿機
801…居室
803…空調手段
805…中空部
804…構造体(コンクリートスラブ)
807…空気経路
911…輻射パネル
912…熱媒配管
913…断熱材
914…熱伝導体
915…熱伝導体
H…輻射ダクトの高さ
W…輻射ダクトの幅
L…輻射ダクトの長さ
CE…天井
WA…壁
FL…床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輻射熱を利用した冷暖房対象領域への冷暖房が可能な輻射冷暖房装置(100)であって、
冷暖房対象領域に配置された輻射ダクト(10)と、
熱源により温度調整された温調空気を前記輻射ダクト(10)に送風させるための空調手段(200)と、
前記輻射ダクト(10)および前記空調手段(200)との間を気密状態に接続して、温調空気を循環させるための断熱空調配管(20)と、
を備える装置において、
前記輻射ダクト(10)内に、温調空気の循環を阻害する姿勢に配置されることで、温調空気から吸熱して前記輻射ダクト(10)に伝熱する伝熱部材(15)を設けてなることを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記輻射ダクト(10)は、
入力口(18)および出力口(19)を持つ箱形ダクト(11)と、
放熱面側に設置した熱伝導性の優れた輻射パネル(12)と、
前記輻射パネル(12)を除く側壁面に装着した断熱材(13)と、
を備えることを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項3】
請求項1に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記輻射ダクト(10)は、
熱伝導性の優れた前記輻射パネル(12)と、
入力口(18)および出力口(19)を持つ側壁面を成型された断熱部材(14)と、
を嵌合形成し、
を特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記伝熱部材(15)は、
前記輻射パネル(12)と熱結合する熱接続面(16B)と、
前記輻射ダクト(10)の内部の放熱面側に略垂直に設置された矩形板として熱吸収面(16A)とを有し、
前記熱吸収面(16A)が、前記輻射ダクト(10)に対し、高さは内部高と略同等で、幅は入力口(18)面の約1/2から3/4で、向きを入力口(18)壁面に対し略平行とし、
前記伝熱部材(15)が、前記輻射ダクト(10)の入力口(18)から出力口(19)までの間を千鳥状に略等間隔で複数設置し、
前記輻射ダクト(10)内の送風空間における風流を蛇行させることを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記断熱空調配管(20)は、前記空調手段(200)の吹出口に接続し、
前記輻射ダクト(10)の入力口(18)と接続し、
前記輻射ダクト(10)の出力口(19)にさらに前記断熱空気配管(20)及び前記輻射ダクト(10)を複数直列に接続し、
冷暖房対象領域の範囲を拡張できることを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記断熱空調配管(20)は、前記空調手段(200)の吹出口に接続され複数並列に分岐し、
分岐された前記断熱空気配管(20)にそれぞれボリュームダンパー(30)を設置し、
前記ボリュームダンパー(30)の出力をそれぞれ前記輻射ダクト(10)の入力口(18)と接続し、
複数の前記輻射ダクト(10)の出力口(19)にさらに前記断熱空気配管(20)及び前記輻射ダクト(10)を複数直列に接続し、
冷暖房対象領域の範囲を拡張できることを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記輻射ダクト(10)を天井(CE)面に配置することを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記輻射ダクト(10)を壁(WA)面に配置することを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
前記輻射ダクト(10)を床(FL)面に配置することを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)であって、
排水用のドレイン配管を有さないことを特徴とする輻射冷暖房装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一に記載の輻射冷暖房装置(100)と、
潜熱を制御可能な除加湿機(300)と、
前記除加湿機(300)と、輻射冷暖房装置(100)とを連動させて、冷暖房対象領域の温度と湿度とを制御可能なコントローラ(250)と、
を備えることを特徴とする除加湿冷暖房システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−225517(P2012−225517A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90496(P2011−90496)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(594073314)四電エナジーサービス株式会社 (5)
【出願人】(598080026)株式会社協和設備コンサルタント (1)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】