説明

輻射熱伝導抑制フィルムおよび断熱部材

【課題】優れた赤外線反射効果を有する輻射熱伝導抑制フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも樹脂フィルム11と赤外線反射層12とが、接着剤9により複層された輻射熱伝導抑制フィルム10であり、前記接着剤9が部分的に塗布され、接着部13と非接着部14とを形成するため、樹脂フィルム11を透過した赤外線は、接着部13では従来の断熱フィルムと同様に、樹脂フィルム11と接着剤9でそれぞれ吸収されるが、非接着部14では樹脂フィルムでのみ吸収されるため、輻射熱伝導抑制フィルム10の赤外線吸収率が低減し、輻射による熱伝導を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた赤外線反射効果を有する輻射熱伝導抑制フィルムおよび輻射熱伝導抑制フィルムを用いた断熱部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題である温暖化の対策として省エネルギーを推進する動きが活発となっており、温冷熱利用機器に関しては、熱を有効活用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。特に150℃を超える高温領域で断熱材を使用すると、省エネルギー効果が顕著に表れるため、印刷機、複写機、液晶プロジェクター、半導体製造装置への適用が期待されている。
【0003】
150℃を超える高温領域では、室温領域とは異なり、赤外線による輻射熱伝導成分が無視できなくなるため、断熱材の断熱性能が低下してしまう。よって輻射による熱の伝導を抑制する技術が必要となる。
【0004】
輻射熱を抑制する技術としては、プラスチックフィルムの上部に金属箔層と保護層を設けた断熱フィルムが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、真空断熱材の外被材に赤外線反射機能を持たせた断熱性ラミネートフィルムが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図6は、特許文献1に記載された従来の断熱フィルムの断面図である。この断熱フィルム1は、結晶粒の大きい高純度金属の表層2を備えたプラスチックフィルム3であり、表層2の平滑な表面に、熱放射率の小さい金属薄層4が超扁平な結晶粒を有するようにして層着されている。
【0007】
また、金属薄層4の表面には、赤外線および遠赤外線の自由な透過を許容しながら、金属薄層4の表面を安定的に保つように被覆するための保護層5が形成されている。この断熱フィルム1へ侵入しようとする赤外線や遠赤外線からなる熱線は、超扁平な結晶粒を有する金属薄層4の層内で全反射を繰り返し、その後、外部へ向かい反射するようになるため、高い断熱効果を得ることができるとされている。
【0008】
また、図7は、特許文献2に記載された従来の断熱性ラミネートフィルムの断面図である。この断熱性ラミネートフィルムは、保護層5と、遠赤外線反射層6と、ガスバリア層7と、熱溶着層8とを接着剤9にて接着したものである。この断熱性ラミネートフィルムは、保護層に遠赤外線透過物質を用い、遠赤外線反射層に金属箔を用いているため、高い遠赤外線反射率を得ることができるとされている。
【特許文献1】特開平5−164296号公報
【特許文献2】特開平5−193668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、金属薄層と保護層との接合方法が開示されておらず、実現性に乏しい。もし仮に、接着剤を使用した場合、赤外線および遠赤外線が接着剤に吸収され、熱として金属薄層へ伝導するため、赤外線反射効果が低減してしまうという課題があった。
【0010】
また、特許文献2の構成では、保護層に遠赤外線透過性物質を用いたため、遠赤外線反射層まで赤外線が到達することが可能とあるが、赤外線透過性物質の定義が不明確であり、また、保護層と遠赤外線反射層との接着剤も、遠赤外線透過効果を損なわないような接着剤としか定義されておらず不明確である。
【0011】
本発明では、上記従来の課題を解決するものであり、優れた赤外線反射効果を有する輻射熱伝導抑制フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明の輻射熱伝導抑制フィルムは、少なくとも赤外線吸収率が25%未満の樹脂フィルムと赤外線反射層とが、接着剤により複層された、赤外線反射率が50%以上の輻射熱伝導抑制フィルムであり、前記接着剤が部分的に塗布され、接着部と非接着部とを形成することを特徴とするものである。
【0013】
これによって、樹脂フィルムを透過した赤外線は、接着剤の接着部と非接着部へそれぞれ入射する。このとき、接着部に入射した赤外線の一部は、接着剤の赤外線吸収作用により吸収され、熱として赤外線反射層へ伝導するが、非接着部では接着剤が無いので赤外線の吸収が生じない。このように接着剤を部分的に塗布することにより、輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線吸収率を低減し、輻射による熱伝導を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の輻射熱伝導抑制フィルムは、少なくとも赤外線吸収率が25%未満の樹脂フィルムと接着剤と赤外線反射層とを備える、赤外線反射率が50%以上の輻射熱伝導抑制フィルムであり、接着剤が部分的に塗布され、接着部と非接着部とを形成することで赤外線吸収率を低減し、かつ、樹脂フィルムの剥離のない優れた赤外線反射効果を持つフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
請求項1に記載の発明は、少なくとも赤外線吸収率が25%未満の樹脂フィルムと赤外線反射層とが、接着剤により複層された、赤外線反射率が50%以上の輻射熱伝導抑制フィルムであり、前記接着剤が部分的に塗布され、接着部と非接着部とを形成するものである。
【0016】
これにより、赤外線反射層を樹脂フィルムで覆うことにより、酸化劣化や外部からの衝撃に対し、赤外線反射層を保護し、また、輻射熱伝導抑制フィルムに電気絶縁性を付与することができる。
【0017】
また、樹脂フィルムを透過した赤外線は、接着剤の接着部と非接着部へそれぞれ入射する。このとき、接着部に入射した赤外線の一部は、接着剤の赤外線吸収作用により吸収されるが、非接着部では接着剤が無いので赤外線の吸収が生じない。
【0018】
このように接着剤を部分的に塗布することにより、輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線吸収率を低減し、輻射による熱伝導を抑制することができる。
【0019】
また、接着剤の接着部と非接着部の形成方法や形状に関しては特に指定するものではなく、溶剤によるエッチングやフォトレジストによるエッチング、グラビア印刷や、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷技術を用いても良い。
【0020】
また、輻射熱伝導抑制フィルムの構成は、樹脂フィルムと赤外線反射層とを接着剤により複層しているが、樹脂フィルムや赤外線反射層の数を増やすことで、輻射熱伝導抑制フィルムの耐磨耗性や耐腐食性を向上させることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、接着剤は、接着部と被接着部が幾何学模様を形成するように塗布するものである。
【0022】
これにより、非接着部がフィルムのどの箇所においても、均一に分散しているため、熱源から発生する赤外線がどこに照射しても、効率よく反射させることができ、また、接着部が均一に分散しているため、フィルムの機械的強度を均一にすることができる。
【0023】
また、幾何学模様とは、三角形、方形、菱形、多角形、円形などを素材とする模様である。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、輻射熱伝導抑制フィルムの有効面積に対する接着剤塗布率を全体の25%以上80%以下とするものである。
【0025】
なお、輻射熱伝導抑制フィルムの有効面積とは、赤外線反射効果の現れる赤外線反射層の面積であり、また、接着剤塗布率とは、輻射熱伝導抑制フィルムの有効面積に対する、接着剤塗布面積が占める割合である。
【0026】
これにより、接着部において、樹脂フィルムと赤外線反射層との接着強度を確保しながら、非接着部において、赤外線を効率良く反射することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、樹脂フィルムの融点を150℃以上とするものである。これにより、輻射熱伝導抑制フィルムに優れた耐熱性を付与することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、樹脂フィルムがフッ素系樹脂であることを特徴とするものである。
【0029】
フッ素系樹脂は、赤外線波長である2μm〜25μmの吸収が比較的少なく、樹脂フィルムによる赤外線の吸収をさらに抑えることができるため、赤外線反射層での赤外線反射をより効率よく行うことができる。
【0030】
また、フッ素樹脂は、例えばETFEフィルムや、FEPフィルム、PFAフィルム、CTFEフィルムが挙げられ、これらのフィルムは、耐熱性とともに耐食性、耐薬品性に優れていることから、輻射熱伝導抑制フィルムに耐熱性や耐食性、耐薬品性の効果を付与することができる。
【0031】
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、樹脂フィルムがポリフェニレンサルファイドフィルムであることを特徴とするものである。
【0032】
ポリフェニレンサルファイドフィルムはフッ素系樹脂フィルムと同様に、他の樹脂に比べ、赤外線波長の吸収が比較的少なく、樹脂フィルムによる赤外線の吸収をさらに抑えることができるため、赤外線反射層での赤外線反射をより効率よく行うことができる。
【0033】
また、ポリフェニレンサルファイドフィルムは耐熱性や難燃性に優れていることから、輻射熱伝導抑制フィルムに耐熱性や難燃性の効果を付与することができる。
【0034】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、赤外線反射層が、金属箔であることを特徴とするものである。金属を薄く延ばした金属箔を使用することによって、輻射熱伝導抑制フィルムに高反射率とガスバリア性を付加することができる。
【0035】
請求項8に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、赤外線反射層が、金属蒸着フィルムであることを特徴とするものである。樹脂フィルムの表面に金属を蒸着した金属蒸着フィルムを用いることで、輻射熱伝導抑制フィルムに柔軟性や、耐衝撃性、低熱伝導性を付加することができる。
【0036】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の発明の輻射熱伝導抑制フィルムを断熱材表面へ備えた断熱部材であり、輻射熱伝導抑制フィルムにより輻射熱伝導を抑制することで、断熱材の輻射による熱伝導の増加を抑えることができ、優れた断熱効果が発揮されるものである。
【0037】
また、断熱材としては、ポリスチレンフォームやポリウレタンフォーム、フェノールフォームなどの発泡プラスチック系断熱材や、グラスウールやロックウール、ガラス粉末などの無機物系断熱材や、これらの断熱材をガスバリア性のある外被材で覆い、内部を減圧してなる真空断熱材が利用できる。
【0038】
また、断熱材表面への備え付け方法に関しては特に指定するものではなく、接着剤による化学的接合や、クギ止めや縫合などの物理的接合でも良い。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における輻射熱伝導抑制フィルムの断面図を示すものであり、図2は、本発明の実施の形態1における接着剤部分塗布の一例として、ドット状に塗布された接着剤の模式図を示すものである。
【0041】
図1において、輻射熱伝導抑制フィルム10は、赤外線吸収率が25%未満の樹脂フィルム11と赤外線反射層12とが接着剤9により複層されるように構成されている。また、図2において、接着剤9は、接着部13と非接着部14がドット状となるように接着剤が印刷されている。
【0042】
以上のように構成された輻射熱伝導抑制フィルム10について、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
樹脂フィルム11は、酸化劣化や外部からの衝撃に対し、赤外線反射層を保護し、また、輻射熱伝導抑制フィルムに電気絶縁性を付与する作用を有し、長期にわたって輻射熱伝導抑制効果が持続するものである。
【0044】
また、熱源から発生した赤外線は、樹脂フィルム11を透過し、接着剤9の接着部13または非接着部14へ入射する。このとき、接着部13へ入射した赤外線の一部は、接着剤9の赤外線吸収作用によって吸収され、熱となるが、非接着部14へ入射した赤外線は、接着剤9が無いため、吸収されることなく赤外線反射層12へ向かい、赤外線反射層12の表面で反射される。そして、反射された赤外線は、ふたたび接着剤9の接着部13と非接着部14をそれぞれ通過し、樹脂フィルム11を透過する。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、輻射熱伝導抑制フィルム10は、接着剤9が部分的に塗布され、接着部13と非接着部14とを形成することにより、樹脂フィルム11と赤外線反射層12との接着強度を確保しつつ、赤外線が接着剤9で吸収される割合が低く、樹脂フィルム11を透過し、赤外線反射層13まで到達した赤外線は赤外線反射層において有効に反射されるため、優れた赤外線反射効果を発揮することができる。
【0046】
本発明の実施の形態における樹脂フィルム11は、例えば、ETFEフィルム(融点265℃、赤外線吸収率8%)や、FEPフィルム(融点270℃、赤外線吸収率8%)、PFAフィルム(融点305℃、赤外線吸収率8%)、PPSフィルム(融点285℃、赤外線吸収率10%)、無延伸CPPフィルム(融点170℃、赤外線吸収率17%)、PETフィルム(融点265℃、赤外線吸収率18%)が挙げられ、また、融点を持たないものとしては、PSFフィルム(連続使用温度150℃、赤外線吸収率10%)や、PESフィルム(連続使用温度180℃、赤外線吸収率15%)などが利用でき、特に、赤外線波長領域である2〜25μmの吸収率が小さいフッ素系樹脂フィルムやポリフェニレンサルファイドフィルムとすることにより、赤外線反射層12での赤外線反射を効率良く行うことができる。
【0047】
また、赤外線反射層12としては、例えば、アルミニウム箔や金箔、銀箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔などの金属を薄く延ばした金属箔や、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケルを蒸着した金属蒸着フィルム等が考えられるが、高い赤外線反射率であり、かつ、プロセスコストの安価なアルミニウム箔や銅箔を用いることが好ましい。
【0048】
また、接着剤9としては、例えばポリウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤、レゾルシノール樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、シリコーンイミド系接着剤等の有機接着剤や、水ガラスやセラミックス、セメント等の無機接着剤が利用できる。
【0049】
また、樹脂フィルム11と赤外線反射層12との間には、接着剤9による接着部13と、非接着部14が形成されており、接着部13と非接着部14の形成方法としては、グラビア印刷や、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷技術や、溶剤や光によるエッチング等が考えられるが、現実的には、プロセスコストの安価な印刷技術を利用することが好ましい。
【0050】
また、接着剤9は、赤外線反射層12と樹脂フィルム11の柔軟性や引張強度等の物理的特性を考慮して、どちらの面に塗布しても良い。
【0051】
また、接着部13の印刷模様をドット状としたが、輻射熱伝導抑制フィルムの使用形状によって、三角形、方形、菱形、多角形、円形などを素材とする幾何学模様や、意匠のような非幾何学模様を用いても良い。
【0052】
また、接着部13と非接着部14の面積割合は、必要な接着強度と赤外線反射効果の度合いに応じて自由に変えることができるが、樹脂フィルムと赤外線反射層との接着強度を確保しながら赤外線を効率良く反射させるためには、接着剤塗布率が25%以上80%以下であることが好ましい。
【0053】
また、輻射熱伝導抑制フィルム10の構成を、樹脂フィルム11と赤外線反射層13とを接着剤12によって複層したが、樹脂フィルム11と赤外線反射層13はそれぞれ一層である必要はない。
【0054】
例えば、輻射熱伝導抑制フィルム10を挟んで両側に熱源がある場合、赤外線反射層13の両面に樹脂フィルム11を接着剤12によって接合することにより、輻射熱伝導抑制フィルム10が、各熱源から発生する赤外線を反射し、他方の熱源から発生する赤外線の影響をなくすことができる。
【0055】
以上のような本発明の輻射熱伝導抑制フィルム11を輻射熱伝導の抑制が必要な箇所に取り付けることにより、有効な断熱効果が得られる。
【0056】
取り付け箇所の例としては、住宅や工場の屋根や壁のような建築部材や、コンピューターやプリンター、複写機、プロジェクター等の情報機器、ジャーポットや電子レンジや給湯器などの調理家電、半導体製造装置などの保温、遮熱が必要なあらゆるケースが考えられる。
【0057】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における断熱部材の断面図である。図3において、輻射熱伝導抑制フィルム10は、断熱材15の高温となる面に取り付けられている。
【0058】
輻射熱伝導抑制フィルム10は、本発明の実施の形態1と同様の構成が利用できる。本実施の形態では、樹脂フィルム11として2μmのPPSフィルム(赤外線吸収率10%)、25μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)、15μmのPETフィルム(赤外線吸収率18%)をそれぞれ用い、赤外線反射層12として、12μmのアルミニウム箔を用いた。
【0059】
断熱材15としては、ポリスチレンフォームやポリウレタンフォーム、フェノールフォームなどの発泡プラスチック系断熱材や、グラスウールやロックウール、ガラス粉末などの無機物系断熱材や、これらの断熱材をガスバリア性のある外被材で覆い、内部を減圧してなる真空断熱材が利用できる。
【0060】
また、断熱部材への取り付け方法に関しては特に指定するものではなく、接着剤による化学的接合や、クギ止めや縫合などの物理的接合でも良いが、様々な断熱部材に適用することを考えると、接着剤による化学的接合が好ましい。
【0061】
以上のように構成された輻射熱伝導抑制フィルムについて、接着剤塗布率を変えたときの輻射熱伝導抑制効果について確認した結果を、実施例1から実施例9に示し、比較例を比較例1から比較例13に示す。なお、輻射熱伝導抑制効果を明確にするため、本実施の形態では、断熱部材として、厚さ12mmのグラスウールボードを用いた。
【0062】
また、性能評価は、厚さ12mmのグラスウールボード表面の垂直方向からハロゲンヒーターを照射したときの輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度を評価項目とした。
【0063】
また、評価の基準は、ハロゲンヒーターを、グラスウールボード単体の高温側表面温度が150℃となる距離に設置し、接着剤塗布率が100%である輻射熱伝導抑制フィルム(比較例5、比較例7、比較例9、比較例11)をグラスウールボードの高温側表面へ設置したときの各フィルム表面中心温度である。この温度より10℃以上の低減効果が得られれば、接着剤の部分塗布による輻射熱伝導抑制効果があると判断した。
【0064】
ここで、樹脂フィルムの赤外線吸収率は、日本電子製フーリエ変換赤外分光光度計JIR5500型と赤外放射ユニットIR−IRR200とを用いて、150℃で得られた赤外放射率を吸収率とみなした。また、赤外線反射率は、日立製作所赤外分光光度計270−30を用い、反射装置の相対反射12°で測定した。
【0065】
(実施例1)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が25:75(接着剤塗布率:25%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして2μmのPPSフィルム(赤外線吸収率10%)をラミネートした。
【0066】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると82%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は117℃であった。
【0067】
(実施例2)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が63:37(接着剤塗布率:63%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして2μmのPPSフィルム(赤外線吸収率10%)をラミネートした。
【0068】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると74%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は123℃であった。
【0069】
(実施例3)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が80:20(接着剤塗布率:80%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして2μmのPPSフィルム(赤外線吸収率10%)をラミネートした。
【0070】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると71%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は125℃であった。
【0071】
(実施例4)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が25:75(接着剤塗布率:25%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして25μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)をラミネートした。
【0072】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると84%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は115℃であった。
【0073】
(実施例5)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が45:55(接着剤塗布率:45%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして25μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)をラミネートした。
【0074】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると79%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は116℃であった。
【0075】
(実施例6)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が63:37(接着剤塗布率:63%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして25μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)をラミネートした。
【0076】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると77%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は119℃であった。
【0077】
(実施例7)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が25:75(接着剤塗布率:25%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして15μmのPETフィルム(赤外線吸収率18%)をラミネートした。
【0078】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると64%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は123℃であった。
【0079】
(実施例8)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が45:55(接着剤塗布率:45%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして15μmのPETフィルム(赤外線吸収率18%)をラミネートした。
【0080】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると59%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は126℃であった。
【0081】
(実施例9)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が80:20(接着剤塗布率:80%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして15μmのPETフィルム(赤外線吸収率18%)をラミネートした。
【0082】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると55%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は130℃であった。
【0083】
(実施例10)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が25:75(接着剤塗布率:25%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして12μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)をラミネートした。
【0084】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると84%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールよりなる真空断熱材に貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は107℃であった。
【0085】
(実施例11)
赤外線反射層として2μmのPPSフィルムの片面にアルミニウム蒸着を施した蒸着フィルムの蒸着面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が25:75(接着剤塗布率:25%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして12μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)をラミネートした。
【0086】
本実施例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると73%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールよりなる真空断熱材に貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は121℃であった。
【0087】
また、赤外線反射層に金属蒸着フィルムを用いた為、輻射熱伝導抑制フィルムに柔軟性や、耐衝撃性、低熱伝導性を付加することができた。
【0088】
(比較例1)
輻射熱抑制フィルムを設置せず、グラスウールボードにハロゲンヒーターの熱照射をおこなったところ、グラスウールボードの表面中心温度は150℃であった。
【0089】
(比較例2)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔(赤外線反射率95%)をそのままグラスウールボード表面に設置した。この断熱部材にハロゲンヒーターの熱照射をおこなったところ、アルミニウム箔表面中心温度は98℃であったが、使用後10日が経過するとアルミニウム箔表面中心温度の上昇が確認され、酸化劣化による赤外線吸収の増加が推測できる。
【0090】
(比較例3)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ホッチキスを用いて樹脂フィルムとして2μmのPPSフィルム(赤外線吸収率10%)を仮止めした(接着剤塗布率:0%)。
【0091】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると89%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は110℃であったが、2μmのPPSフィルムは破断しやすく、また、12μmのアルミニウム箔に皺が生じ、ハンドリング性に欠けるものであった。
【0092】
(比較例4)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、接着部と非接着部が10:90(接着剤塗布率:10%)となるようにグラビア印刷法を用いて塗布し、樹脂フィルムとして2μmのPPSフィルム(赤外線吸収率10%)をラミネートした。
【0093】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると86%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は115℃であったが、アルミニウム箔との接着面積が非常に少ないため、2μmのPPSフィルムは破断しやすく、また、12μmのアルミニウム箔に皺が生じ、ハンドリング性に欠けるものであった。
【0094】
(比較例5)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、アルミニウム箔の片面全体に塗布し(接着剤塗布率:100%)、樹脂フィルムとして2μmのPPSフィルム(赤外線吸収率10%)をラミネートした。
【0095】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると68%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は137℃であった。
【0096】
(比較例6)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ホッチキスを用いて樹脂フィルムとして25μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)を仮止めした(接着剤塗布率:0%)。
【0097】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると90%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は107℃であったが、FEPフィルムとアルミニウム箔との間に接着剤が介在しないため、12μmのアルミニウム箔に皺が生じ、ハンドリング性に欠けるものであった。
【0098】
(比較例7)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、アルミニウム箔の片面全体に塗布し(接着剤塗布率:100%)、樹脂フィルムとして25μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)をラミネートした。
【0099】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると69%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は134℃であった。
【0100】
(比較例8)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ホッチキスを用いて樹脂フィルムとして15μmのPETフィルム(赤外線吸収率18%)を仮止めした(接着剤塗布率:0%)。
【0101】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると85%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は114℃であったが、PETフィルムとアルミニウム箔との間に接着剤が介在しないため、アルミニウム箔に皺が生じ、ハンドリング性に欠けるものであった。
【0102】
(比較例9)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、アルミニウム箔の片面全体に塗布し(接着剤塗布率:100%)、樹脂フィルムとして15μmのPETフィルム(赤外線吸収率18%)をラミネートした。
【0103】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると69%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は144℃であった。
【0104】
(比較例10)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ホッチキスを用いて樹脂フィルムとして120μmのポリイミドフィルム(赤外線吸収率80%)を仮止めした(接着剤塗布率:0%)。
【0105】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると45%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は165℃であり、輻射熱伝導抑制フィルムを設置しないもの(比較例1)よりも温度が上昇してしまった。
【0106】
これはポリイミドフィルムの赤外線吸収率が80%と非常に高いため、熱源からの赤外線を吸収したためである。
【0107】
また、ポリイミドフィルムとアルミニウム箔との間に接着剤が介在しないため、アルミニウム箔に皺が生じ、ハンドリング性に欠けるものであった。
【0108】
(比較例11)
赤外線反射層として12μmのアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、アルミニウム箔の片面全体に塗布し(接着剤塗布率:100%)、樹脂フィルムとして120μmのポリイミドフィルム(赤外線吸収率80%)をラミネートした。
【0109】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると30%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は177℃であり、輻射熱伝導抑制フィルムを設置しないもの(比較例1)よりも温度が上昇してしまった。
【0110】
これはポリイミドフィルムの赤外線吸収率が80%と非常に高いため、熱源からの赤外線を吸収したためである。
【0111】
(比較例12)
赤外線反射層として12μmの艶消しアルミニウム箔の片面に、ホッチキスを用いて樹脂フィルムとして10μmのCPPフィルム(赤外線吸収率17%)を仮止めした(接着剤塗布率:0%)。
【0112】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると45%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は152℃であり、輻射熱伝導抑制フィルムを設置しないもの(比較例1)よりも温度が上昇してしまった。
【0113】
これは輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率が45%であるため、輻射熱伝導抑制効果が確認できなかったと考える。また、CPPフィルムとアルミニウム箔との間に接着剤が介在しないため、アルミニウム箔に皺が生じ、ハンドリング性に欠けるものであった。
【0114】
(比較例13)
赤外線反射層として12μmの艶消しアルミニウム箔の片面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、アルミニウム箔の片面全体に塗布し(接着剤塗布率:100%)、樹脂フィルムとして10μmのCPPフィルム(赤外線吸収率17%)をラミネートした。
【0115】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると36%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールボードに貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は162℃であり、輻射熱伝導抑制フィルムを設置しないもの(比較例1)よりも温度が上昇してしまった。
【0116】
これは輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率が36%であるため、輻射熱伝導抑制効果が確認できなかったと考える。
【0117】
(比較例14)
赤外線反射層として2μmのPPSフィルムの片面にアルミニウム蒸着を施した蒸着フィルムの蒸着面に、ポリオール(三井武田ケミカル社製:タケラックA−310)とポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製:タケネートA−3)と酢酸エチルとからなる接着剤を、アルミニウム蒸着面全体に塗布し(接着剤塗布率100%)、樹脂フィルムとして12μmのFEPフィルム(赤外線吸収率8%)をラミネートした。
【0118】
本比較例の輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率を測定すると66%であった。この輻射熱伝導抑制フィルムをグラスウールよりなる真空断熱材に貼り付け、評価を行ったところ、輻射熱伝導抑制フィルム表面中心温度は142℃であった。
【0119】
以上のように構成された輻射熱伝導抑制フィルムについて、接着剤塗布率を変えたときの輻射熱伝導抑制効果について確認した結果(実施例1〜9および比較例1〜13)を(表1)に示す。また、接着剤塗布率の変化による輻射熱伝導抑制フィルムの表面中心温度の関係を図4に、輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率と表面中心温度の関係を図5に示す。
【表1】

【0120】
図4、図5の結果から、赤外線反射率が50%以上の輻射熱伝導抑制フィルムにおいて、接着剤を部分的に塗布することにより、さらなる輻射熱伝導抑制効果が得られることが確認できた。
【0121】
また、接着剤塗布率が80%以上になると、接着剤の部分塗布による輻射熱伝導抑制効果が小さくなる。また、接着剤塗布率が25%以下になると、接着剤の部分塗布による輻射熱伝導抑制効果は大きくなるが、輻射熱伝導抑制フィルムの接着強度が極端に低下するため、樹脂フィルムの剥離や、赤外線反射層に皺が生じたりするのでハンドリング性に欠ける。よって、接着剤塗布率は25%以上80%以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上のように、本発明にかかる輻射熱伝導抑制フィルムは、接着剤を部分塗布することにより、接着剤層での赤外線吸収を抑え、赤外線反射層において効率良く反射させることが可能であるため、輻射熱伝導の抑制が必要となる空間に使用することができる。例えば、温冷熱利用機器、印刷機、複写機、液晶プロジェクター、半導体製造装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施の形態1における輻射熱伝導抑制フィルムの断面図
【図2】本発明の実施の形態1における接着剤の模式図
【図3】本発明の実施の形態2における断熱部材の断面図
【図4】接着剤塗布率の変化による輻射熱伝導抑制フィルムの表面中心温度の関係を示す特性図
【図5】輻射熱伝導抑制フィルムの赤外線反射率と表面中心温度の関係を示す特性図
【図6】従来の断熱フィルムの断面図
【図7】従来の断熱性ラミネートフィルムの断面図
【符号の説明】
【0124】
8 熱溶着層
9 接着剤
10 輻射熱伝導抑制フィルム
11 樹脂フィルム
12 赤外線反射層
13 接着部
14 非接着部
15 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも赤外線吸収率が25%未満の樹脂フィルムと、赤外線反射層とが、接着剤により複層された、赤外線反射率が50%以上の輻射熱伝導抑制フィルムであり、前記接着剤が部分的に塗布され、接着部と非接着部とを形成することを特徴とする輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項2】
接着剤が部分的に塗布され、接着部と非接着部とが幾何学模様を形成することを特徴とする請求項1記載の輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項3】
輻射熱伝導抑制フィルムの有効面積に対する接着剤塗布率が、全体の25%以上80%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項4】
樹脂フィルムは融点が150℃以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項5】
樹脂フィルムが、フッ素系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項6】
樹脂フィルムが、ポリフェニレンサルファイドフィルムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項7】
赤外線反射層が、金属箔であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項8】
赤外線反射層が、金属蒸着フィルムであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の輻射熱伝導抑制フィルム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の輻射熱伝導抑制フィルムを表面に備えた断熱部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−35433(P2006−35433A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213971(P2004−213971)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】