説明

農作業機

【課題】十分な砕土性を得ることができかつ作土の中層に土塊類が混じらない農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体5を備える。ロータリ耕耘体5の後方には、前後水平方向に対して前低後高状に傾斜した傾斜方向に並んだ複数の突起付砕土ローラ11からなる砕土ローラ群12を配設する。
ロータリ耕耘体5側からの土塊類は砕土ローラ群12上を前斜め下方に向って転がり落ちる。この土塊類の上には、突起付砕土ローラ11で細かくした細土が隣合う突起付砕土ローラ11間の間隙10を通過して落下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ耕耘体と砕土ローラ群とを備えた農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアップカット方向に回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体と、ロータリ耕耘体の上方部を覆うとともに後端部に均平板を有したカバー体と、ロータリ耕耘体および均平板間に前後方向進退調節自在に配設されたスクリーンとを備えた農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平1−167804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば圃場の土質等によっては、十分な砕土性が得られないおそれがあった。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、十分な砕土性を得ることができ、かつ、作土の中層に土塊類が混じるという不具合を防止できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体と、このロータリ耕耘体の後方に配設され、前後水平方向に対して前低後高状に傾斜した傾斜方向に並んだ複数の突起付砕土ローラにて構成された砕土ローラ群とを備え、前記ロータリ耕耘体側から供給された土塊類が前記砕土ローラ群上を前斜め下方に向って転がり落ち、この転がり落ちた土塊類の上に前記突起付砕土ローラで細かくされた細土が互いに隣合う突起付砕土ローラ間の間隙を通過して落下するものである。
【0006】
そして、複数の突起付砕土ローラにて構成された砕土ローラ群をロータリ耕耘体の後方に配設したため、十分な砕土性を得ることが可能となり、かつ、ロータリ耕耘体側から供給された土塊類が砕土ローラ群上を前斜め下方に向って転がり落ち、この土塊類の上に細土が互いに隣合う突起付砕土ローラ間の間隙を通過して落下するため、作土の中層に土塊類が混じるという不具合を防止可能である。
【0007】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、突起付砕土ローラは、左右水平方向に長手状の回転軸部と、この回転軸部の外周側に放射状に突設された複数の突起部とを有するものである。
【0008】
そして、左右水平方向に長手状の回転軸部とこの回転軸部の外周側に放射状に突設された複数の突起部とを有する突起付砕土ローラにて、ロータリ耕耘体側からの土塊を適切に砕いて細土にすることが可能である。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、砕土ローラ群の傾斜角度が調節可能となっているものである。
【0010】
そして、砕土ローラ群の傾斜角度が調節可能となっているため、圃場の土質等に適切に対応することが可能である。
【0011】
請求項4記載の農作業機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機において、砕土ローラ群の上端側位置でロータリ耕耘体からの土塊類が前記砕土ローラ群上を後斜め上方に向って移動するのを規制する移動規制体を備えるものである。
【0012】
そして、砕土ローラ群の上端側位置でロータリ耕耘体からの土塊類が砕土ローラ群上を後斜め上方に向って移動するのを規制する移動規制体を備えるため、作土の中層に土塊類が混じるという不具合を効果的に防止可能である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、複数の突起付砕土ローラにて構成された砕土ローラ群をロータリ耕耘体の後方に配設したため、十分な砕土性を得ることができ、かつ、ロータリ耕耘体側から供給された土塊類が砕土ローラ群上を前斜め下方に向って転がり落ち、この土塊類の上に細土が互いに隣合う突起付砕土ローラ間の間隙を通過して落下するため、作土の中層に土塊類が混じるという不具合を防止できる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、左右水平方向に長手状の回転軸部とこの回転軸部の外周側に放射状に突設された複数の突起部とを有する突起付砕土ローラにて、ロータリ耕耘体側からの土塊を適切に砕いて細土にできる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、砕土ローラ群の傾斜角度が調節可能となっているため、圃場の土質等に適切に対応できる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、砕土ローラ群の上端側位置でロータリ耕耘体からの土塊類が砕土ローラ群上を後斜め上方に向って移動するのを規制する移動規制体を備えるため、作土の中層に土塊類が混じるという不具合を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)に連結された状態でこのトラクタの走行により前方に移動しながら耕耘作業を行うロータリ耕耘装置(馬鈴薯の床作りロータリ)である。なお、農作業機1による耕耘作業の後、図示しない畝立て作業機等で畝立て作業等の後作業が行われる。
【0019】
農作業機1は図示しないトラクタの3点リンク部に連結された機体2を備え、この機体2にはトラクタのPTO軸にユニバーサルジョイント等を介して連結された入力軸3側からの動力により所定方向、例えばアップカット方向に回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体5が回転可能に設けられている。
【0020】
ロータリ耕耘体5は、左右水平方向に長手状の耕耘軸部6を有し、この耕耘軸部6の外周側には複数の耕耘爪部7が放射状に突設されている。そして、ロータリ耕耘体5の上方部は、機体2のカバー部8にて覆われている。
【0021】
また、ロータリ耕耘体5の後方には、前後水平方向に対して前低後高状に傾斜した傾斜方向(傾斜角度α=約50度)に並んだ複数、例えば5本の突起付砕土ローラ11にて構成された傾斜状の砕土ローラ群12が配設されている。
【0022】
各突起付砕土ローラ11は、機体2の後部に左右水平方向の回転中心軸線(回動支点)Xを中心として回動可能に設けられている。そして、各突起付砕土ローラ11は、耕耘軸部6側からの動力により所定方向(例えば図1中、時計回り)に回転しながら、ロータリ耕耘体5側からの土塊(比較的軟らかい土塊)を砕いて細土にする。この突起付砕土ローラ11で細かくされた細土は、互いに隣合う突起付砕土ローラ11間の間隙10を通過して落下するようになっている。
【0023】
ここで、各突起付砕土ローラ11は、機体2の後部の左右の側板部14間に回転中心軸線を中心として回転可能に架設された左右水平方向に長手状の回転軸部15を有し、この回転軸部15の外周側には弾性変形可能なゴム製或いは樹脂製で略円弧状の複数の突起部16が回転軸部15の軸方向に間隔をおいて並んだ状態で放射状に突設されている。
【0024】
また、図3に示されるように、ロータリ耕耘体5側からの所定大きさ以上の土塊類(間隙10を通過不可能な比較的硬い土塊および石)は、その自重で砕土ローラ群12上を前斜め下方に向って転がり落ち、この転がり落ちた土塊類の上に突起付砕土ローラ11で細かくされた細土が互いに隣合う突起付砕土ローラ11間の間隙10を通過して落下するようになっている。
【0025】
さらに、図1および図4等に示されるように、角度調節手段21の操作部、例えば操作ハンドル22の回動操作により砕土ローラ群12の傾斜角度αが所定範囲(40度〜60度の範囲)内で調節可能となっている。
【0026】
機体2の左右の側板部(回動フレーム部)14が下端位置つまり1番下の突起付砕土ローラ11の回転中心軸線Xを中心として上下方向に回動調節可能となっており、左右の側板部14の上部相互が左右水平方向に延びるパイプ状の連結部23にて一体的に連結されている。そして、機体2の前側のフレーム部24と機体2の後側の連結部23間にわたって角度調節手段21が設けられ、この角度調節手段21が、フレーム部24にタンブラ25を介して取り付けられ前端部に操作ハンドル22が設けられた第1ロッド26と、この第1ロッド26の後端部に前端部が螺合され後端部が連結部23に取り付けられた第2ロッド27とを有している。
【0027】
また、機体2の左右の側板部14間に位置する連結部23には、砕土ローラ群12の上端側位置で、ロータリ耕耘体5からの土塊類が突起付砕土ローラ11の回転により砕土ローラ群12上を後斜め上方に向って移動するのを規制する弾性変形可能な移動規制体であるゴム板31が設けられている。このゴム板31は、例えば左右水平方向に細長い矩形板状のもので、側板部14間の位置であって上から2番目の突起付砕土ローラ11の上方位置に配設されている。なお、機体2の左右の側板部14の上縁部相互は、湾曲面状の上部カバー部32にて一体的に連結されている。また、機体2の前端部にはゲージ輪33が設けられている。
【0028】
次に、上記一実施の形態の作用等を説明する。
【0029】
農作業機1を使用して耕耘作業をする場合、図示しないトラクタの3点リンク部に機体2を連結すること等により、トラクタの3点リンク部に農作業機1を連結装着する。
【0030】
その後、圃場においてトラクタの3点リンク部を作動させて農作業機1を所望量下降させてから、トラクタの走行により農作業機1を前方に移動させると、圃場の土は、アップカット方向に駆動回転するロータリ耕耘体5にて耕耘砕土される。
【0031】
そして、図3に示すように、ロータリ耕耘体5側からカバー部8にて案内されつつ砕土ローラ群12上に供給された土塊類、つまり隣合う突起付砕土ローラ11間の間隙10を通過不可能な比較的硬い土塊および石は、傾斜角度αをもって前低後高状に傾斜した砕土ローラ群12上を前斜め下方に向って自重で転がり落ち、1番下の突起付砕土ローラ11とロータリ耕耘体5との間から落下する。
【0032】
続いて、この土塊類の上に、砕土ローラ群12の突起付砕土ローラ11で細かくされた細土が互いに隣合う突起付砕土ローラ11間の間隙10を通過して落下する。
【0033】
このように農作業機1を使用して耕耘作業をする場合には、複数の突起付砕土ローラ11にて構成された砕土ローラ群12をロータリ耕耘体5の後方に配設したため、従来の構成に比べて十分な砕土性を得ることができ、かつ、ロータリ耕耘体5側からの土塊類が砕土ローラ群12上を前斜め下方に向って転がり落ちこの落ちた土塊類の上に細土が突起付砕土ローラ11間の間隙10を通過して落下するため、作土の中層に土塊類が混じるという不具合を防止できる。よって作土表面から中層を細土で形成することができ、良好な床作りができる。
【0034】
また、角度調節手段21の操作ハンドル22を回動操作して砕土ローラ群12をその下端側を中心として回動させることで砕土ローラ群12の傾斜角度αを調節できるため、圃場の土質、作業スピード等に適切に対応することができる。
【0035】
さらに、砕土ローラ群12の上端側位置でロータリ耕耘体5からの土塊類が砕土ローラ群12上を後斜め上方に向って移動するのを規制するゴム板31を備えるため、そのゴム板31にて土塊類が砕土ローラ群12の後方部から落下することを適切に防止できる。
【0036】
なお、突起付砕土ローラ11は、略円弧状の突起部16を有するものには限定されず、例えば図5に示すように回転軸部15の外周側から周方向に等間隔をおいた12方向に向って放射状に突出した直線状の突起部16を有するものや、図6に示すように回転軸部15の外周側から周方向に等間隔をおいた8方向に向って放射状に突出した直線状の突起部16を有するもの等でもよい。
【0037】
また、砕土ローラ群12を構成する突起付砕土ローラ11の数は5本には限定されず、例えば図示しないが、3本、4本或いは6本以上でもよい。
【0038】
さらに、操作ハンドル22の手動操作により砕土ローラ群12の傾斜角度αが調節可能なものには限定されず、例えば図示しないが、モータ等の駆動手段からの駆動力により砕土ローラ群12の傾斜角度αが調節可能なもの等でもよい。
【0039】
また、土塊類が傾斜状の砕土ローラ群12上を後斜め上方に向って移動するのを規制する移動規制体は、弾性変形可能なゴム板31からなるものには限定されず、例えば図示しないが、金属板からなるものや、複数本の棒からなるくし状のもの等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の農作業機の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同上農作業機の一部切欠き平面図である。
【図3】同上農作業機の作業状態を示す側面図である。
【図4】同上農作業機の砕土ローラ群の回動範囲を示す側面図である。
【図5】同上農作業機の突起付砕土ローラの変形例を示す図である。
【図6】同上突起付砕土ローラの他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 農作業機
5 ロータリ耕耘体
10 間隙
11 突起付砕土ローラ
12 砕土ローラ群
15 回転軸部
16 突起部
31 移動規制体であるゴム板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体と、
このロータリ耕耘体の後方に配設され、前後水平方向に対して前低後高状に傾斜した傾斜方向に並んだ複数の突起付砕土ローラにて構成された砕土ローラ群とを備え、
前記ロータリ耕耘体側から供給された土塊類が前記砕土ローラ群上を前斜め下方に向って転がり落ち、この転がり落ちた土塊類の上に前記突起付砕土ローラで細かくされた細土が互いに隣合う突起付砕土ローラ間の間隙を通過して落下する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
突起付砕土ローラは、左右水平方向に長手状の回転軸部と、この回転軸部の外周側に放射状に突設された複数の突起部とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
砕土ローラ群の傾斜角度が調節可能となっている
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項4】
砕土ローラ群の上端側位置でロータリ耕耘体からの土塊類が前記砕土ローラ群上を後斜め上方に向って移動するのを規制する移動規制体を備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−55021(P2006−55021A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238207(P2004−238207)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】