説明

農作業管理装置、農作業管理方法及びコンピュータプログラム

【課題】作業効率を向上させることができる農作業管理装置、農作業管理方法及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】キーボードを通じて薬剤の検索依頼を受付けた場合、対策を検討すると判断し(S25:YES)、薬剤データベースに登録されている薬剤の検索を行う(S26)。検索結果として、発見日時、場所、病害虫名、検索結果薬剤、在庫、散布回数、散布の可否、発注状況の情報を出力する。薬剤の検索の結果、散布可能な薬剤があるか否かを判断し(S27)、条件に合う薬剤が検索されなかったとき、又は条件に合う薬剤が検索された場合であっても制限散布回数に既に達しているとき、散布可能な薬剤がないと判断し(S27:NO)、代替薬剤の検索を行う(S28)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業の進捗状況を管理する農作業管理装置、農作業管理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の種類、農薬の種類、農薬の散布量、肥料の種類、施肥量、給水量、植え付け日、収穫予定日等のデータを管理することにより、植物毎のきめ細やかな管理を行うことができる栽培システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、農作業に関して、GPS受信機の位置及び時間情報を取得することにより農作業日誌を作成し、作業者が実施し得る複数の作業候補から作業者が実施すべき作業項目を推論することができる技術(例えば、特許文献2を参照)、農作物に対して行われた農作業の情報を自動的に収集し、農作業の履歴を管理することができる技術(例えば、特許文献3を参照)が提案されている。
【0004】
更に、病害虫の診断を行う装置として、利用者に対する質問を用意し、その質問に対する回答を用いて人工知能による予測診断を行う技術が開示されている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−133645号公報
【特許文献2】特開2005−124538号公報
【特許文献3】特開2005−92595号公報
【特許文献4】特開平06−30657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の栽培システムは、作業機械が作業を行うための情報を管理する構成であるため、データキャリアを植物の近傍に配置する必要があり、各作業者が作業を行うための情報を提供することができないという問題点を有する。
【0007】
また、特許文献2に記載の農作業記録自動化システムでは、ルールベース型の推論により、日付、気象条件、時間帯等の作業項目の絞り込みを行っているため、大局的には作業項目を特定できるかもしれないが、推論により得られた結果が必ずしも正確な作業場所、作業開始時刻、作業終了時刻を反映しているとは限らないという問題点を有する。
【0008】
また、特許文献3に記載の農作業履歴管理装置では、ICタグに記憶されている1つの識別子により1つの作業情報を管理する構成であるため、作業場所、作業開始時刻、作業終了時刻等の複数の情報を取得しようとすれば、複数のICタグを用いる必要があり、栽培している農作物、品種が多岐に亘り、作業場所、作業人員が多数になるとICタグの管理が非常に繁雑になるという問題点を有している。
【0009】
また、特許文献4に開示されている技術では、提示される質問に対して利用者自身が回答を入力する必要があり、人工知能で予測診断を行う構成であるため、必ずしも信頼性が高い診断結果が得られるとは限らないという問題点を有する。更に、病害虫の広がり具合を算出することはできないため、駆除対策等の緊急度を推測することはできない。
【0010】
本願は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、栽培している農作物、品種が多岐に亘り、栽培箇所が複数である場合であっても、作業効率を向上させることができる農作業管理装置、農作業管理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの案では、農作業管理装置は、病害虫に関する情報を取得する取得部と、複数種類の農薬の各々について、農薬の使用状況の情報を記憶する記憶部と、前記取得部が取得した前記病害虫に関する情報に基づいて前記記憶部の記憶内容を参照し、該病害虫に対応する農薬の散布回数と共に、該病害虫に対応する農薬の更なる散布が可能であることを示唆する情報を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本願によれば、栽培している農作物、品種が多岐に亘り、栽培箇所が複数である場合であっても、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る農作業管理システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】通信端末及び農作業管理装置の内部構成を説明するブロック図である。
【図3】作物管理テーブルの一例を示す概念図である。
【図4】作業管理テーブルの一例を示す概念図である。
【図5】進捗状況管理テーブルの一例を示す概念図である。
【図6】作業員管理テーブル及びRFID管理テーブルの一例を示す概念図である。
【図7】作業履歴管理テーブルの一例を示す概念図である。
【図8】病害虫管理テーブル及び病害虫対応履歴テーブルの一例を示す概念図である。
【図9】薬剤データベースの一例を示す概念図である。
【図10】作業開始時に農作業管理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】作業中断時に農作業管理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】薬剤の検索結果の一例を示す図表である。
【図13】分析処理の実行時に農作業管理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】病害虫の広がり具合の算出結果の一例を示す図表である。
【図15】病害虫耐性のある品種、薬剤耐性のある病害虫耐性のある病害虫の抽出結果の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係る農作業管理システムの全体構成を示す模式図である。本実施の形態に係る農作業管理システムは、農作業を行う各作業者が携帯する通信端末10と、農作業の管理を行う作業管理センタに設置された農作業管理装置20とを備える。
【0015】
通信端末10は、例えば、ボタン型RFIDタグ(RFID : radio frequency identification)であり、3つの操作ボタン12A〜12Cからなる操作部12と農作業管理装置20から送信される情報を表示するための表示部13とを備える。通信端末10は、操作ボタン12A〜12Cが押下操作された場合、それぞれの操作ボタン12A〜12Cに応じて異なる信号(例えば、周波数が異なる信号)を農作業管理装置20に送信するように構成されている。また、通信端末10は、これらの信号を送信するときに自己を識別するための情報(以下、RFID番号)及び自己の位置に係る情報(以下、位置情報という)を前記信号と同時的に又は前後して農作業管理装置20に送信する。
【0016】
農作業管理装置20は、通信端末10から送信される3種類の信号を識別することにより、通信端末10からどのような通知が行われたのかを判断する。本実施の形態では、操作ボタン12Aが押下操作された場合に通信端末10から送信される信号を受信したとき、農作業管理装置20は、その通信端末10を携帯している作業者が作業を開始又は終了したと判断する。同様に、農作業管理装置20は、操作ボタン12Bが押下操作された場合に送信される信号を受信した場合、実施中の作業を終了し、次の作業に切り替えたと判断する。また、操作ボタン12Cが押下操作された場合に送信される信号を受信した場合、何らかの理由により作業を中断したと判断する。
【0017】
農作業管理装置20は、このような信号を受信することで実現される通信端末10からの通知と、通信端末10から送信される位置情報とに基づいて農作業の管理を行う。例えば、通信端末10から作業開始する旨の通知(すなわち、操作ボタン12Aが押下操作された場合に送信される信号)を受信した場合、この通信端末10を携帯している作業者が作業を行っている場所(以下、作業場所という)を特定し、特定した作業場所で実施すべき作業内容及び作業予定時間を通信端末10に送信する。これらの情報を受信した通信端末10は、表示部13への情報の表示を行う。図1に示した例では、本日の作業予定として、誘引作業、芽かき作業が表示されており、各作業の作業予定時間が100分、120分であることが示されている。
【0018】
また、通信端末10から作業内容を切り替える旨の通知(すなわち、操作ボタン12Bが押下操作された場合に送信される信号)を受信した場合、農作業管理装置20は、各作業者による作業履歴を更新すると共に、作業の進捗状況を更新する。更に、通信端末10から作業を中断する旨の通知(すなわち、操作ボタン12Cが押下操作された場合に送信される信号)を受信した場合であって、その中断理由が害虫又は病変の発生である場合、中断理由、害虫又は病変(病害虫)の発見日時、発見場所、散布した薬剤等の情報を後述するテーブルに登録する。農作業管理装置20は、テーブルに登録された内容を分析することにより、害虫及び病変の広がり具合(深刻度、危険率)を算出したり、病害虫耐性を持つ品種、薬剤耐性を持つ病害虫を抽出したりすることができる。
【0019】
また、農作業管理装置20は、通信ネットワークNを介して病害虫診断の専門家が使用する端末30及び薬剤の受注センタに設置された端末40に接続されている。したがって、害虫又は病変を発見したが、その対策が不明である場合、作物、品種、生育ステージ、発見日時、発見場所、病害虫名、画像、気象条件等の情報を、専門家が使用する端末30に送信することで、診断が確実かつ速やかに行われる。更に、害虫又は病変に対して散布すべき薬剤の在庫がない場合、受注センタの端末40に対してオンライン発注を行うことで、速やかに必要な薬剤の確保が可能になる。
【0020】
なお、本実施の形態では、通信端末10から送信される信号を農作業管理装置20にて直接的に受信する構成としたが、通信端末10と農作業管理装置20との間で送受される信号及び情報を中継する1又は複数の中継装置を配置してもよいことは勿論のことである。
【0021】
図2は通信端末10及び農作業管理装置20の内部構成を説明するブロック図である。通信端末10は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、及び位置検出部15を備え、制御部11が各ハードウェア12〜15の動作を制御することにより、全体を本発明に係る通信装置として機能させる。
【0022】
制御部11は、各ハードウェア12〜15の動作を制御するための制御プログラム、自他を識別するための識別情報を予め記憶したROM、及びこのROMに記憶されたプログラムを実行するCPU等を備える。操作部12が備える操作ボタン12A〜12Cが押下操作された場合、制御部11は、それぞれの操作ボタン12A〜12Cに応じた信号を生成し、通信部14を通じて農作業管理装置20に送信する。これらの信号を送信するとき、識別情報(RFID番号)及び位置検出部15が取得した位置情報を前記信号と同時的に又は前後して農作業管理装置20に送信する。
【0023】
農作業管理装置20は、CPU21、ROM23、RAM24、入力インタフェース25、出力インタフェース26、通信インタフェース27、HDD28、及び補助記憶装置29を備える。これらのハードウェア各部はバス22を介して接続されている。ROM23には、本発明に係るコンピュータプログラム、及び前述のハードウェア各部を制御するための制御プログラム等が予め記録されており、CPU21がこれらのプログラムをRAM24上にロードして実行することにより、装置全体を本発明に係る農作業管理装置20として機能させる。また、CPU21は内蔵の時計を有しており、各種の処理を実行したときの時刻情報を出力することができるように構成されている。
【0024】
通信インタフェース27には、作業者が携帯する通信端末10及び通信ネットワークNに接続された各端末30,40と通信を行う通信装置270が接続されており、この通信装置270の動作を制御することによって通信端末10、及び端末30,40との通信を行う。通信装置270は、例えば、通信端末10から送信される信号を受信するためのアンテナ回路、アンテナ回路にて受信した信号をデジタル信号に変化する信号変換回路、送信すべき情報の出力先を決定するフォワーディングエンジン等を備える。
【0025】
HDD28は磁気記憶装置であり、その記憶領域の一部は、作物管理テーブル281、作業管理テーブル282、進捗状況管理テーブル283、作業員管理テーブル284、RFID管理テーブル285、作業履歴管理テーブル286、病害虫管理テーブル287、病害虫対応履歴テーブル288、薬剤データベース280として利用されている。各テーブル281〜288及び薬剤データベース280の内容は自動又は手動により随時更新される。なお、これら各テーブル281〜288及び薬剤データベース280については後に詳述することとする。
【0026】
入力インタフェース25にはキーボード250が接続されており、HDD28に設けられた各テーブル281〜288及び薬剤データベース280に登録すべき情報、各種処理の実行指示等を受付ける。また、出力インタフェース26にはモニタ260が接続されており、各テーブル281〜288及び薬剤データベース280に登録された情報、各種処理の実行結果等を表示する。
【0027】
なお、本実施の形態では、本発明に係るコンピュータプログラムを記録媒体であるROM23に予め記録しておき、CPU21がそのコンピュータプログラムを読み出して実行する構成としたが、FDなどの磁気ディスク、CD−ROM、MO、MD、DVD−ROMなどの光ディスク、ICカード、メモリカード、光カードなどのカード型メモリ等の可搬型の記録媒体に本発明に係るコンピュータプログラムを記録しておき、補助記憶装置29を用いて前記コンピュータプログラムを読み込み、読み込んだコンピュータプログラムをCPU21が実行する構成であってもよい。
【0028】
また、本実施の形態では、農作業管理装置20が薬剤データベース280を備える構成としたが、農作業管理装置20に直接又は任意の通信ネットワークを介して接続される記憶装置内に薬剤データベース280を設ける構成としてもよい。
【0029】
以下、農作業管理装置20のHDD28内に設けられた各種テーブル及び薬剤データベース280の例について説明する。図3は作物管理テーブル281の一例を示す概念図である。作物管理テーブル281では、作物名、品種名、栽培株数、栽培面積、レーン数、栽培方法、作型、播種日、定植日、開花日、収穫日の情報を互いに関連付けて記憶する。
【0030】
図4は作業管理テーブル282の一例を示す概念図である。作業管理テーブル282では、作物名、作業番号、作業名、標準作業時間、生育ステージの情報を互いに関連付けて記憶する。この作業管理テーブル282では、実施順序に従って作業名が登録されている。したがって、例えば、施設消毒の作業の後に播種作業を行うことがこの作業管理テーブル282から分かる。また、標準作業時間としては、10aの栽培面積を1人の作業者が作業するとした場合の作業時間が記録されている。
【0031】
図5は進捗状況管理テーブル283の一例を示す概念図である。進捗状況管理テーブル283では、作物名、レーン番号、生育ステージ、本日の作業内容、進捗状況の情報を互いに関連付けて記憶する。すなわち、進捗状況管理テーブル283には作業場所(レーン番号)に関連付けて作業内容及び進捗状況の情報が記憶されている。なお、図5に示した例では、「トマト」の進捗状況を管理するテーブルを示したが、進捗状況管理テーブル283では、農作物毎、農作物の品種毎の進捗状況が登録される。
【0032】
図6は作業員管理テーブル284及びRFID管理テーブル285の一例を示す概念図である。図6(a)に示す作業員管理テーブル284では、作業員名、性別、年令、経験年数、就業日数、就業時間の情報を互いに関連付けて記憶する。図6(b)に示すRFID管理テーブル285は、RFID番号、作業員名、作業開始フラグ、作業切替フラグ、作業中断フラグを互いに関連付けて記憶する。RFID番号は各通信端末10に割り当てられた固有の識別情報である。作業開始フラグは、作業者が作業中であるか否かを示すフラグであり、作業中である場合「1」がセットされ、作業中でない場合「0」がセットされる。作業切替フラグは、作業の切替回数を示すフラグであり、切替回数に等しい整数値がセットされる。作業中断フラグは、作業者による作業が中断しているか否かを示すフラグであり、中断中である場合「1」がセットされ、中断中でない場合「0」がセットされる。このRFID管理テーブル285は、通信端末10の操作ボタン12A〜12Cが押下操作されたときに送信される信号を受信した場合、自動更新されるように構成されている。
【0033】
図7は作業履歴管理テーブル286の一例を示す概念図である。作業履歴管理テーブル286では、作業日、作業内容、作業開始時刻、作業終了時刻、中断開始時刻、中断終了時刻、中断理由を互いに関連付けて記憶する。この作業履歴管理テーブル286は、作業者毎に用意されるテーブルであり、通信端末10の操作ボタン12A〜12Cが押下操作されたときに送信される信号を受信した場合、自動更新されるように構成されている。また、必要に応じて中断理由の項目の入力を入力インタフェース25に接続されたキーボード250より受付ける。
【0034】
図8は病害虫管理テーブル287及び病害虫対応履歴テーブル288の一例を示す概念図である。図8(a)に示す病害虫管理テーブル287では、作物名、品種名、レーン番号、生育ステージ、発見日時、場所、病害虫名、画像の有無、気象条件(温度、湿度、日照)の情報を関連付けて記憶する。また、図8(b)に示す病害虫対応履歴テーブル288では、発見日時、場所、病害虫名、対応日時、散布薬剤、濃度、累積回数、散布範囲の情報を互いに関連付けて記憶する。これらのテーブルは、手動又は自動により適宜更新される。
【0035】
図9は薬剤データベース280の一例を示す概念図である。薬剤データベース280には、薬剤の登録番号、種類、名称、一般名、濃度、混合数、用途、剤型名、制限散布回数、散布の可否の情報が互いに関連付けられて記憶されている。
【0036】
以下、農作業管理装置20が実行する処理について説明する。図10は作業開始時に農作業管理装置20が実行する処理の手順を示すフローチャートである。まず、農作業管理装置20は通信インタフェース27を通じて入力される通信端末10からの通知に基づき、作業者による作業が開始されたか否かを判断する(ステップS11)。すなわち、通信端末10の操作ボタン12Aが押下操作された場合に送信される信号と当該通信端末10のRFID番号とを通信装置270を介して受信したとき、RFID管理テーブル285を参照し、受信したRFID番号に対応した作業開始フラグが「1」か「0」であるかを調べることにより、当該通信端末10を携帯した作業者により作業が開始されたか否かを判断することができる。通信端末10の操作ボタン12Aが押下操作された場合に送信される信号を受信しない場合、すなわち、作業が開始されていないと判断できる場合(S11:NO)、作業が開始されるまで待機する。
【0037】
通信端末10の操作ボタン12Aが押下操作された場合に送信される信号と当該通信端末10のRFID番号とを受信したときの作業開始フラグが「0」である場合、作業が実施されていないときに操作ボタン12Aが押下操作されたと判断できるため、作業が開始されたと判断し(S11:YES)、作業開始フラグに「1」をセットすると共に、これらの信号と同時的又は前後して通信端末10から送信されてくる位置情報に基づき作業場所を特定する(ステップS12)。作業場所の特定は、位置情報と作業場所とを関連付けたテーブルを予め用意しておくか、又は位置情報を変数として作業場所を出力する関数を予め用意しておき、これらのテーブル又は関数を用いることにより作業場所を特定することができる。
【0038】
次いで、農作業管理装置20は、特定した作業場所での作業内容、進捗状況を進捗状況管理テーブル283から読み出す(ステップS13)。例えば、特定した作業場所が「レーン番号1」に該当する場所のときに読み出される内容は、本日の作業内容が「収穫」であり、進捗状況が「30%」である。
【0039】
次いで、農作業管理装置20は、読み出した作業内容の作業予定時間を算出する(ステップS14)。作業管理テーブル282には、各作業の標準作業時間(すなわち、10aの栽培面積を1人の作業者が作業を行う場合の作業時間)が登録されており、作物管理テーブル281には栽培面積が登録されているため、これらの情報と、現時点で作業している人数及び読み出した進捗状況の情報を考慮して作業予定時間を算出することができる。なお、このとき各作業者の能力(例えば、作業員管理テーブル284に登録されている経験年数)を反映したファクターを乗じて作業予定時間を算出してもよい。
【0040】
次いで、農作業管理装置20は、読み出した作業内容が就業時間内に終了するか否かを判断する(ステップS15)。ステップS14で作業予定時間を算出しているので、現在時刻と作業予定時間とから作業終了時刻を算出することができ、算出した作業終了時刻と作業員管理テーブル284の就業時間の項目に登録されている時刻とを比較することにより、読み出した作業内容が就業時間内に終了するか否かを判断することができる。
【0041】
就業時間内に作業が終了すると判断した場合(S15:YES)、作業管理テーブル282から次の作業内容を読み出し(ステップS16)、処理をステップS14に戻す。また、就業時間内に作業が終了しないと判断した場合(S15:NO)、進捗状況管理テーブル283又は作業管理テーブル282から読み出した作業内容、及び算出した作業予定時間の情報を通信装置270を介して送信することにより、通信端末10に通知する(ステップS17)。これらの情報を受信した通信端末10は表示部13への表示を行う。
【0042】
次いで、農作業管理装置20は通信インタフェース27を通じて入力される通信端末10からの通知に基づき、作業者による作業が終了したか否かを判断する(ステップS18)。作業開始時と同様に、通信端末10の操作ボタン12Aが押下操作された場合に送信される信号と当該通信端末10のRFID番号とを通信装置270を介して受信したとき、RFID管理テーブル285を参照し、受信したRFID番号に対応した作業開始フラグが「1」か「0」を調べることにより、当該通信端末10を携帯した作業者による作業が終了したか否かを判断することができる。通信端末10の操作ボタン12Aが押下操作された場合に送信される信号を受信しない場合、すなわち、作業が終了していないと判断できる場合(S18:NO)、作業が終了するまで待機する。
【0043】
通信端末10の操作ボタン12Aが押下操作された場合に送信される信号と当該通信端末10のRFID番号とを受信したときの作業開始フラグが「1」である場合、作業中に操作ボタン12Aが押下操作されたと判断できるため、作業が終了したと判断し(S18:YES)、作業開始フラグに「0」をセットして本フローチャートによる処理を終了する。
【0044】
図11は作業中断時に農作業管理装置20が実行する処理の手順を示すフローチャートである。まず、農作業管理装置20は通信インタフェース27を通じて入力される通信端末10からの通知に基づき、作業者による作業が中断されたか否かを判断する(ステップS21)。前述と同様にRFID管理テーブル285を参照し、通信端末10のRFID番号に対応した作業中断フラグが「1」か「0」であるかを調べることにより、当該通信端末10を携帯した作業者による作業が中断されたか否かを判断することができる。通信端末10の操作ボタン12Cが押下操作された場合に送信される信号を受信しない場合、すなわち、作業が中断されていないと判断できる場合(S21:NO)、作業が中断されるまで待機する。
【0045】
通信端末10の操作ボタン12Cが押下操作された場合に送信される信号と当該通信端末10のRFID番号とを受信したときの作業中断フラグが「0」である場合、作業の実施中に操作ボタン12Cが押下操作されたと判断できるため、作業が中断されたと判断する(S21:YES)。このとき、農作業管理装置20は作業中断フラグに「1」をセットする。
【0046】
次いで、中断理由が害虫又は病変の発生であるか否かを判断する(ステップS22)。例えば、作業が中断しているときに作業履歴管理テーブル286の中断理由の項目にアクセスがあった場合、又は病害虫管理テーブル287にアクセスがあった場合、中断理由が害虫又は病変の発生であると判断することができる。中断理由が害虫又は病変の発生でないと判断した場合(S22:NO)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0047】
中断理由が害虫又は病変の発生であると判断した場合(S22:YES)、専門家の診断が必要であるか否かを判断する(ステップS23)。例えば、病害虫管理テーブル287において、病害虫名以外の項目が入力された状態で登録された場合、又は、病害虫対応履歴テーブル288において、発見日時、場所、病害虫名の項目が入力され、他の項目が入力されていない状態で登録された場合、専門家の診断が必要であると判断することができる。専門家の判断が必要であると判断した場合(S23:YES)、専門家に情報を送信する(ステップS24)。具体的には、作物、品種、生育ステージ、発見日時、発見場所、病害虫名、画像、気象条件等の情報を、通信ネットワークNを介して専門家が使用する端末30に送信する。
【0048】
専門家の診断が必要でないと判断した場合(S23:NO)、対策を検討するか否かを判断する(ステップS25)。例えば、入力インタフェース25に接続されているキーボード250を通じて薬剤の検索依頼を受付けた場合、対策を検討すると判断し(S25:YES)、薬剤データベース280に登録されている薬剤の検索を行う(ステップS26)。図12は薬剤の検索結果の一例を示す図表である。図12に示した例では、検索結果として、発見日時、場所、病害虫名、検索結果薬剤、在庫、散布回数、散布の可否、発注状況の情報が出力されている。なお、対策を検討しないと判断した場合(S25:NO)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0049】
薬剤の検索の結果、散布可能な薬剤があるか否かを判断する(ステップS27)。条件に合う薬剤が検索されなかったとき、又は条件に合う薬剤が検索された場合であっても制限散布回数に既に達しているとき、散布可能な薬剤がないと判断し(S27:NO)、代替薬剤の検索を行い(ステップS28)、処理をステップS27に戻す。
【0050】
散布可能な薬剤があると判断した場合(S27:YES)、その薬剤は在庫が有るか否かを判断する(ステップS29)。在庫がないと判断した場合(S29:NO)、発注者名、発注する薬剤の名称、必要数等の情報を通信ネットワークNを介して受注センタの端末40に送信することによりオンライン発注を行う(ステップS30)。ステップS29で在庫ありと判断した場合(S29:YES)、散布する薬剤を決定し(ステップS31)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0051】
図13は分析処理の実行時に農作業管理装置20が実行する処理の手順を示すフローチャートである。農作業管理装置20は、まず、入力インタフェース25を通じて入力される情報に基づき分析処理の実行指示があるか否かを判断する(ステップS41)。分析処理の実行指示がないと判断した場合(S41:NO)、実行指示があるまで待機する。
【0052】
分析処理の実行指示があると判断した場合(S41:YES)、農作業管理装置20は、病害虫管理テーブル287から病害虫の広がり具合を算出する(ステップS42)。例えば、レーン幅を1mと仮定し、前回の観測データとの差分をとることにより広がり具合を算出することができる。図14は病害虫の広がり具合の算出結果の一例を示す図表である。図14に示した例では、病害虫の観測履歴として、発見日時、場所、病害虫名、汚染範囲等の情報が記録されており、これらの記録に基づいて広がり具合が算出されている。
【0053】
次いで、農作業管理装置20は、病害虫対応履歴テーブル288より、病害虫耐性のある品種、薬剤耐性のある病害虫を抽出する(ステップS43)。図15は病害虫耐性のある品種、薬剤耐性のある病害虫耐性のある病害虫の抽出結果の一例を示す図表である。図15(a)に示した例では、病害虫耐性のある品種として、「TM01」及び「TM03」が抽出されていることを示している。また、図15(b)に示した例では、薬剤耐性のある病害虫として、「アブラムシ」が抽出されていることを示している。
【0054】
なお、本実施の形態では、作業開始、作業終了、作業中断の判断をRFID管理テーブル285で管理しているフラグに基づいて行ったが、通信端末10の操作ボタン12A〜12Cの押し方について予めルールを定めておき、このルールに従った押し方で操作ボタン12A〜12Cが押下操作された場合に送信される信号に基づいて判断してもよい。例えば、操作ボタン12Aの1回押しの場合、作業が開始されたと判断し、操作ボタン12Aの2回押しの場合、作業が終了されたと判断することもできる。また、操作ボタン12Bが長押しされた場合、作業が中断されたと判断することもできる。
【符号の説明】
【0055】
10 通信端末
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 通信部
20 農作業管理装置
21 CPU
22 バス
23 ROM
24 RAM
25 入力インタフェース
26 出力インタフェース
27 通信インタフェース
28 HDD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病害虫に関する情報を取得する取得部と、
複数種類の農薬の各々について、農薬の使用状況の情報を記憶する記憶部と、
前記取得部が取得した前記病害虫に関する情報に基づいて前記記憶部の記憶内容を参照し、該病害虫に対応する農薬の散布回数と共に、該病害虫に対応する農薬の更なる散布が可能であることを示唆する情報を出力する出力部と
を備えることを特徴とする農作業管理装置。
【請求項2】
コンピュータが、
病害虫に関する情報を取得し、
取得した前記病害虫に関する情報に基づき、複数種類の農薬の各々について農薬の使用状況の情報を記憶した記憶部の記憶内容を参照し、該病害虫に対応する農薬の散布回数と共に、該病害虫に対応する農薬の更なる散布が可能であることを示唆する情報を出力する
ことを特徴とする農作業管理方法。
【請求項3】
コンピュータに、
入力された病害虫に関する情報に基づき、複数種類の農薬の各々について農薬の使用状況の情報を記憶した記憶部の記憶内容を参照し、該病害虫に対応する農薬の散布回数と共に、該病害虫に対応する農薬の更なる散布が可能であることを示唆する情報を出力する
処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−37714(P2013−37714A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−213165(P2012−213165)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2009−508809(P2009−508809)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)