説明

農作物栽培連動システム

【課題】実際の農作物の栽培に連動させることができ、現実性の高い農作物の栽培シミュレーションゲームをユーザに提供する。
【解決手段】農作物栽培連動システム1は、リアル圃場での栽培と連動させた農作物の栽培シミュレーションゲームを提供するシミュレーションサーバ10を備え、シミュレーションサーバ10は、バーチャル栽培されるバーチャル農作物に関して、当該バーチャル農作物の収量を決定する収量パラメータを含む栽培状況を記録する栽培状況記録部135と、栽培状況を更新しながらバーチャル農作物を自動的に成長させる自動成長制御部51と、リアル圃場で災害が発生したとの情報を受信すると、収量パラメータを強制的に減少させるための補正処理を行う成長補正制御部52と、収量パラメータに応じて、リアル農作物のユーザへの配分量を決定する配分量決定部55と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実際の農場での栽培と連動させた農作物の栽培シミュレーションゲームを提供する農作物栽培連動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピュータ上で農作物の栽培を疑似体験できる栽培シミュレーションゲームが提供されており、ゲームの参加者は、農作物栽培の楽しみを味わうことができる。
【0003】
また、下記特許文献1及び2には、栽培シミュレーションゲームを体験してもらうだけでなく、栽培シミュレーションゲームの終了後に、ゲームの成績に応じて実際の農作物の収穫物を得られるようにしたシミュレーションシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−312421号公報
【特許文献2】特開2004−62849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1及び2においては、栽培シミュレーションゲーム内で栽培していたのと同じ農作物であって、ゲームの成績に応じた質や量の農作物が送付されてくるだけであり、実際の農作物栽培と連動していないため、現実性に欠ける。
【0006】
また、上記特許文献1及び2においては、シミュレーションゲームの成績が良いユーザには、所定の量の農作物を送る必要があるが、実際の農作物の栽培では、真面目に上手く栽培していたとしても、台風や獣害等の自然災害によって収量が大きく減少する場合も多い。しかし、従来のシミュレーションでは、このようなケースであっても予め決められた多くの農作物を送らければならないため、サービス提供者側の負担が大きい。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、実際の農作物の栽培に連動させることができ、現実性の高い農作物の栽培シミュレーションゲームをユーザに提供することができる農作物栽培連動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る農作物栽培連動システムは、ユーザ端末を使用するユーザに対して、リアル圃場での栽培と連動させた農作物の栽培シミュレーションゲームを提供するシミュレーションサーバを備える農作物栽培連動システムにおいて、前記シミュレーションサーバは、前記栽培シミュレーションゲーム上でバーチャル栽培されるバーチャル農作物に関して、当該バーチャル農作物の収量を決定する収量パラメータを含む栽培状況を記録する栽培状況記録部と、前記ユーザ端末を介したユーザの指示に基づいて、前記栽培シミュレーションゲーム上において、前記収量パラメータを含む前記栽培状況を更新しながら前記バーチャル農作物を自動的に成長させる自動成長制御部と、前記リアル圃場で栽培されるリアル農作物の収量を減少させる災害が発生したとの情報を受信すると、前記収量パラメータを強制的に減少させるための補正処理を行う成長補正制御部と、前記収量パラメータに応じて、収穫される前記リアル農作物のユーザへの配分量を決定する配分量決定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る農作物栽培連動プログラムは、コンピュータに、リアル圃場での栽培と連動させた農作物の栽培シミュレーションゲームを提供させるための農作物栽培連動プログラムにおいて、前記コンピュータの記憶装置に、前記栽培シミュレーションゲーム上でバーチャル栽培されるバーチャル農作物に関して、当該バーチャル農作物の収量を決定する収量パラメータを含む栽培状況を記録させる栽培状況記録ステップと、前記栽培シミュレーションゲーム上において、前記収量パラメータを含む前記栽培状況を更新しながら前記バーチャル農作物を自動的に成長させる自動成長ステップと、前記リアル圃場で栽培されるリアル農作物の収量を減少させる災害が発生したとの情報を受信すると、前記収量パラメータを強制的に減少させるための補正処理を行う成長補正ステップと、前記収量パラメータに応じて、収穫される前記リアル農作物のユーザへの配分量を決定する配分量決定ステップと、を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る農作物栽培連動システムよれば、実際の農作物の栽培に連動させることができ、現実性の高い農作物の栽培シミュレーションゲームをユーザに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る農作物栽培連動システムの構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るシミュレーションサーバの構成を概略的に示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るシミュレーションサーバの機能を概略的に示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るリアル圃場の栽培区分けを示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る農作物栽培連動システムによる栽培連動処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る栽培状況DBに記録される栽培状況の一部の内容を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係るユーザ端末上に表示されるバーチャル圃場を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る農作物栽培連動システムについて詳細に説明する。本実施形態では、農作物栽培連動システムが提供する仮想の栽培シミュレーションゲーム上での農作物のバーチャル栽培と、実際の農場でのリアル栽培とを連動させており、栽培シミュレーションゲーム上でのユーザの指示に基づき、実際の農場内のリアル圃場でリアル農作物の栽培を行うと共に、リアル圃場で収穫されたリアル農作物がゲームのユーザに実際に配分される。
【0013】
そして、本実施形態に係る農作物栽培連動システムでは、栽培シミュレーションゲーム上でのバーチャル農作物の収量を、リアル農作物の収量になるべく近づけるように連動させる処理を行っている。
【0014】
図1は、本実施形態に係る農作物栽培連動システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、農作物栽培連動システム1は、バーチャル農作物の栽培シミュレーションゲームを提供するためのシミュレーションサーバ10と、栽培シミュレーションゲームのサービスを利用するユーザが使用するユーザ端末20と、リアル圃場で農作業に従事する作業者が使用する作業者端末30と、を備えている。
【0015】
シミュレーションサーバ10とユーザ端末20は、インターネットや専用線等のネットワーク5によって接続されており、作業者端末30は無線の基地局8を介してネットワーク5に接続されている。よって、シミュレーションサーバ10、ユーザ端末20及び作業者端末30の間では、データ通信が可能である。
【0016】
続いて、図2及び図3を参照しながら、シミュレーションサーバ10の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るシミュレーションサーバの構成を概略的に示す模式図、図3は、本実施形態に係るシミュレーションサーバの機能を概略的に示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、シミュレーションサーバ10は、各種演算を行うCPU等の演算装置11と、各種情報を記録しておくHDDやフラッシュメモリ、演算処理のワークエリアとして機能するRAM等からなる記憶装置13と、を備えている。シミュレーションサーバ10は、栽培シミュレーションゲームの提供業者が設置するサーバである。
【0018】
記憶装置13は、シミュレーションサーバ10において後述する所定の処理を実行するための各種プログラムを格納しておくプログラム格納部131と、栽培シミュレーションゲームの利用者として登録しているユーザに関する各種情報を記録しておくユーザ情報DB(データベース)132と、栽培シミュレーションゲームにおいて栽培される農作物に関する各種情報を記録しておく農作物情報DB133と、栽培シミュレーションゲームのコンテンツの情報を記録しておくコンテンツ情報DB134と、栽培シミュレーションゲーム上でのバーチャル農作物の栽培状況を記録しておく栽培状況DB135と、を備えている。
【0019】
プログラム格納部131は、栽培シミュレーションゲームを提供するための各種プログラムを格納している。各種プログラムとしては、農作物情報DB133を参照しながらユーザが作付けを指示した各種農作物を栽培シミュレーションゲーム上で自動的に成長させる自動成長プログラムや、栽培シミュレーションゲーム上でのバーチャル農作物の成長をリアル圃場での成長に連動させるべく手動で補正するための成長強制補正プログラム等が含まれる。
【0020】
ユーザ情報DB132は、栽培シミュレーションゲームに登録した各ユーザのID、パスワード、住所等のユーザ情報を記録している。農作物情報DB133は、栽培シミュレーションゲーム上で栽培される農作物に関して、各農作物の名称、説明、初期ユニット数、最低ユニット数、作付け可能期間、成長フェーズ情報、病害情報、虫害情報等を記録している。
【0021】
コンテンツ情報DB134は、栽培シミュレーションゲームを構成する画面情報等、各種コンテンツ情報を記録している。栽培状況DB135は、栽培シミュレーションゲーム上でユーザが作付けしたバーチャル農作物の成長状況に関する栽培状況を記録しており、栽培状況には、後述する収量パラメータである残存ユニット数及び各ユニットの元気度が含まれている。栽培状況の詳細については、後述する。
【0022】
また、図3に示すように、シミュレーションサーバ10は、自動成長部51と、成長補正部52と、配分決定部55とを備えている。自動成長部51は、栽培シミュレーションゲーム上で栽培されるバーチャル農作物を、予め定められた自動成長アルゴリズムに従って自動的に成長させる。このような自動成長部51の機能は、演算装置11が、農作物情報DB133の情報を参照しながら、プログラム格納部131に格納されている自動成長プログラムを実行することで実現され、成長結果は、栽培状況DB135に記録される。
【0023】
成長補正部52は、作業者端末30を介した作業者の指示に基づき、自動成長しているバーチャル農作物の成長状況を強制的に補正する。このような成長補正部52の機能は、演算装置11が、プログラム格納部131に格納されている成長強制補正プログラムを実行することで実現される。
【0024】
配分決定部55は、作業者端末30から受信するリアル農作物の収量に基づいて、バーチャル農作物を栽培しているユーザに対する、リアル農作物の収穫物の配分量を決定する。このような配分決定部55の機能は、作業者端末30へのリアル収量の入力情報に基づき、演算装置11が、プログラム格納部131に格納されている配分決定プログラムを実行することで実現される。
【0025】
ユーザ端末20は、ユーザが使用するPCであり、各種演算処理を行う演算装置と、各種情報を記憶しておくと共に演算処理のワークエリアとして機能する記憶装置と、各種情報を表示するディスプレイ23と、を備えている。ユーザ端末20としては、デスクトップ型のPCだけでなく、ノート型PC、スマートフォンを含む携帯電話、タブレット型コンピュータ、PDA(personal Digital Assistant)、ネットブック、ゲーム機等、種々の端末を利用することが可能である。
【0026】
作業者端末30は、農作業者がリアル農場で使用する携帯端末であり、スマートフォンを含む携帯電話、タブレット型コンピュータ、PDA等、種々の端末を使用することができる。作業者端末30は、各種演算処理を行う演算装置と、各種情報を記憶しておくと共に演算処理のワークエリアとして機能する記憶装置と、作業者が各種情報を端末に入力するための入力装置としてのキーボード31と、写真を撮影するためのカメラ32と、各種情報を表示するディスプレイ33と、を備えている。
【0027】
リアル農場での作業者は、作業者端末30を使うことで、カメラ32でリアル農作物の成長状況を撮影し、シミュレーションサーバ10に送信したり、リアル農作物の成長状況に関する情報をキーボード31から入力してシミュレーションサーバ10に送信したりすることができる。
【0028】
以上、農作物栽培連動システム1の構成について説明したが、続いて、本システム1が提供するリアル栽培と連動した栽培シミュレーションゲームの内容について、図面を参照しながら説明する。まず、バーチャル栽培と連動したリアル圃場での栽培方法について説明する。図4は、本実施形態に係るリアル圃場の栽培区分けを示す模式図である。
【0029】
同図に示すように、リアル圃場は、畝に相当するブロックに区分けされ、ブロック毎に栽培する農作物の種別が設定されており、同じブロックには同じ農作物が作付けされる。図4では、ブロック1にレタス、ブロック2に小松菜、ブロック3にスイカが作付けされている。
【0030】
また、各ブロックは、複数のフィールドに分割されている。栽培シミュレーションゲームでは、ユーザは、バーチャル栽培にあたって、バーチャル圃場を一区画借りると共に、バーチャル農作物の一区画分の種子(苗)を購入して、バーチャル農作物の栽培を行うように構成されている。
【0031】
このバーチャル圃場の区画(バーチャルフィールド)に対応して、リアル圃場でも各ブロックが複数の区画(リアルフィールド)に区分けされている。バーチャル圃場において所定の一区画(一バーチャルフィールド)に対して作付けが行われると、連動して、リアル圃場においても、作業者が一つのリアルフィールドに対して同じ農作物の作付けを行う。
【0032】
また、フィールド内には、農作物の株に相当するユニットが設定されている。また、農作物毎に初期に与えられる初期ユニット数が設定されている。例えば、図4に示すように、レタスの初期ユニット数は5個、小松菜の初期ユニット数は10個、スイカの初期ユニット数は2個に設定されている。収穫時には、ユーザは、バーチャルフィールドに生き残っているユニットの数である残存ユニット数(収量パラメータ)に応じて、収穫物を配分される。
【0033】
リアルフィールドにおける農作物の収量は季節や災害等の種々の要因によって変動するため、本実施形態では、バーチャルフィールドにおける残存ユニット数をゲーム上で調整することで、栽培シミュレーションゲーム上のバーチャル収量をリアル圃場でのリアル収量にできるだけ連動させて近づけるようにしている。
【0034】
次に、図5を参照しながら、栽培シミュレーションゲームでのバーチャル栽培とリアル農場でのリアル栽培との連動について説明する。図5は、本実施形態に係る農作物栽培連動システムによる栽培連動処理の流れを示すフローチャートである。なお、シミュレーションサーバ10、ユーザ端末20及び作業者端末30における種々の処理は、各装置の演算装置が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0035】
まず、S10において、栽培シミュレーションゲームに登録済みのユーザが、ユーザ端末20を介して、所望の農作物の種子(苗)を購入して作付けを指示すると、指示情報がネットワーク5を介してシミュレーションサーバ10へと送信される(S11)。
【0036】
指示を受けたシミュレーションサーバ10は、S12において、他のユーザからの指示も含めて作付けを集計し、作付け指示の一覧表を作成する。この作付け集計は、例えば、一日一回、24時に実行されるようにすれば良い。集計された作付け一覧情報は、集計後、作業者端末30へとネットワーク5を介して送信される(S13)。翌日、作業者は、S14において作業者端末30上に表示された一覧表を見ながら、リアル圃場において作付け作業を行うことができる(S15)。
【0037】
なお、本実施形態では、同じ日に作付けされる同じ農作物のフィールドには、同じ作業番号が付され、以降は、リアル農場において作業番号毎に管理される。つまり、後述する成長強制補正や収穫時の配分は作業番号単位で行われる。
【0038】
S15の作付けが完了すると、作業者は、S16で作付け作業が完了したことを作業者端末30に入力する。入力された作付け完了の情報は、S17でシミュレーションサーバ10へと送信される。
【0039】
作付け完了情報を受信したシミュレーションサーバ10は、S18において、栽培状況DB135を更新し、作付けされた農作物の情報を追加する。ここで、図6を参照しながら、栽培状況DB135に記録されている情報について説明する。図6は、栽培状況DB135に記録される栽培状況の一部の内容を示す図である。
【0040】
同図に示すように、栽培状況は、上述したユニット単位で記録されており、各レコードは、「レコードNo.」、「作業番号」、「ユーザ」、「農作物」、「ブロック」、「フィールド」、「ユニット」、「生死」及び「元気度」の情報を含んでいる。「作業番号」は、上述したリアル農場での栽培管理単位であり、同日に作付けされた同一の農作物のユニットには、同じ作業番号が付される。
【0041】
「ユーザ」は、栽培シミュレーションゲームに登録したユーザのユーザ識別子(ID)であり、「農作物」は、農作物の品種を表す識別子である。「ブロック」は、圃場におけるブロック番号、「フィールド」は、各ブロックにおけるフィールド番号、「ユニット」は、各フィールドにおけるユニット番号である。なお、本実施形態では、「作業番号」、「農作物」、「ブロック」の情報は、バーチャル圃場とリアル圃場とで共通番号として管理されている。
【0042】
「生死」は、各ユニットの農作物が生き残っているか、枯死等により消滅しているかの生死を示す情報であり、「元気度」は、各ユニットのバーチャル農作物の元気度が百分率[%]で示されている。本実施形態では、収穫時に生き残っている残存ユニット数と収穫時の元気度が、収穫物のユーザへの配分量を左右する収量パラメータとなる。
【0043】
作付けされて栽培状況DB135に記録された農作物の成長状況に関しては、ユーザがユーザ端末20からシミュレーションサーバ10にアクセスする(S20)ことで、当該ユーザが栽培する農作物の成長状況がゲームのコンテンツ情報と共にユーザ端末20へと送信され、バーチャル圃場の様子がディスプレイ23上に表示される(S23)。もちろん、このバーチャル圃場の表示は、作付け後、任意のタイミングで行うことができる。
【0044】
図7は、本実施形態に係るユーザ端末上に表示されるバーチャル圃場を示す図であり、図7(a)は、水菜が栽培されているバーチャル圃場、図7(b)は、キャベツが栽培されているバーチャル圃場の様子を示している。なお、図示されているように、図7(a)の水菜の残存ユニット数は、23個であり、図7(b)のキャベツの残存ユニット数は、6個である。
【0045】
一方、作付けされたバーチャル農作物は、自動成長部51によって自動的に成長させられ(S25)、栽培状況DB135の栽培状況が適宜更新される。自動成長部51は、各ユニットの「生死」及び「元気度」を調整する機能を有している。また、自動成長部51は、各ユニットの農作物を発芽、成長1、成長2、成長3、収穫待ち等のフェーズ毎に成長させ、バーチャル圃場の各ユニットに表示されるバーチャル農作物の画像をフェーズに合わせて変更する機能も有する。
【0046】
「元気度」の調整に関しては、ユーザが栽培シミュレーションゲーム上での水遣りや肥料の散布、雑草除去等の栽培指示を怠けている場合等に、自動成長部51によって、該当するユニットの元気度が、毎日所定の割合ずつ(例えば、3%)下げられる。
【0047】
また、自動成長部51は、品種毎に設定された所定の時期に、バーチャル農作物に、所定の害病や害虫を発生させる機能を有している。バーチャル農作物が病気にかかっているたり、バーチャル農作物に虫が付いている間は、毎日所定の割合で元気度が下げられる。ユーザは、ゲーム上で病気を治すための薬剤を与えたり、虫を除去したりすることで、元気度の低下を止めることができる。
【0048】
また、「生死」の調整に関しては、作付け時には、一フィールド内に初期ユニット数分のユニットが与えられる。一方、本実施形態の栽培シミュレーションゲームにおいて、所定のユニットを消滅させるケースとして、三つのケースが設定されている。
【0049】
一つ目のケースは、作付け時の発芽率によって所定のユニットが発芽しないで消滅するケースである。この発芽率の設定は、季節によって収量が大きく左右される農作物について、収量が減少する時期に発芽率を低く設定することで、発芽段階でユニット数を減少させることができる。これにより、バーチャル栽培での収量をリアル栽培での収量に近づけることができる。
【0050】
二つ目は、栽培中に所定のユニットの元気度が0になって枯死するケースである。上述したように、ゲーム上でユーザが水遣りや肥料の供与、害虫の除去等をさぼったりすると元気度が減少する。そして、元気度が0になったユニットの農作物は枯死し、ユニット数が減少する。これら、一つ目と二つ目のケースは、自動成長部51によって実施される。
【0051】
三つ目は、リアル圃場において、台風や冷害等の事前災害、イタチや猪等の獣害などの大きな災害が発生したときに、作業者の指示により、バーチャル農作物の収量を連動させて減少させるために強制的に行われるケースである。これは、後述する成長補正部52によって実施される。
【0052】
なお、本実施形態では、全てのユーザに最低限の収穫物を分配するために、品種毎に最低ユニット数が設定されており、バーチャル上の各フィールドの残存ユニット数が最低ユニット数未満にならないように、自動成長部51及び成長補正部52が制御している。よって、ユーザがバーチャル栽培での作業を全く行わなかったり、大規模な事前災害によってリアル圃場の収量が大きく減少したりしたとしても、各フィールドにおいては、最低ユニット数を下回るようにユニットが消滅させられることはない。
【0053】
一方、リアル圃場においては、ユーザに指示により作付けされたリアル農作物の栽培が、作業者によって行われる。作業者は、適宜、水遣り、肥料の散布を行って、リアル農作物を成長させる。
【0054】
ここで、S30において、リアル農作物の収量を減少させるような災害がリアル農場で発生した場合には、栽培シミュレーションゲーム上の収量も減少させるような強制補正処理を行う必要がある。本実施形態では、収量を減少させる災害を、大きく収量を下げる大災害(台風や冷害等の自然災害、イタチや猪等の獣害)と、小さく収量を下げる小災害(病害、虫害)とに分けて、補正処理の内容を異ならせている。
【0055】
S30において災害が発生すると、作業者は、災害の状況を確認し、S31において、作業者端末30に災害の種別、被害規模及び災害が発生した場所(作業番号)を含む災害情報を入力する。入力された災害情報は、S32において、作業者端末30からシミュレーションサーバ10へと送信される。
【0056】
災害情報を受信したシミュレーションサーバ10は、受信した災害情報の内容に基づいて、栽培状況DB135内に記録されている栽培状況を強制的に補正して(S33)、更新する。具体的には、大災害の場合、成長補正部52は、災害を受けた区域に位置する作業番号に属するフィールド内のユニットを所定の数だけ枯死させ、残存ユニット数を減少させる。
【0057】
例えば、台風による自然災害によりリアル圃場全体にわたって3割の農作物が枯れてしまった場合には、そのリアル圃場に含まれる全てのフィールドに対応するバーチャルフィールドの残存ユニット数を3割ずつ減少させる。これにより、リアル農作物の収量が大災害により大きく減少するのに連動させて、バーチャル農作物の収量も同じように減少させることができる。
【0058】
なお、このように大災害に連動させてユニット数を減少させ場合には、大災害が発生してユニット数が減少した旨のメッセージが、災害を受けたリアル圃場の写真等と共にバーチャル圃場に表示され、ユーザに知らされるように構成されている。
【0059】
一方、小災害の場合には、成長補正部52は、災害を受けた作業番号に属するフィールドに対応するバーチャルフィールド内の各ユニットの元気度を災害が除去されるまで、毎日一定の割合(例えば、3%)で減少させる。
【0060】
小災害は、病害や虫害の発生であり、作業者がリアル圃場において、収量に影響を与えそうな病害や虫害の発生を確認したときに、災害情報の入力を行って強制補正を行わせる。なお、ユーザが栽培シミュレーションゲーム内で病気を治したり害虫を除去したりすると、元気度の減少は停止する。
【0061】
このように、小災害の場合、直接ユニット数を減少させる大災害の場合と比べるとバーチャル収量を減少させる程度は小さいが、元気度が0まで減少したユニットのバーチャル農作物は枯死するため、小災害であってもバーチャル収量を減少させることにつながる。
【0062】
次に、農作物の収穫時期が近づくと、S35〜S40において、ユーザに対してリアル収穫物の配分量を伝える処理が行われる。本実施形態では、収穫の一週間前に収量が伝えられる。まず、S35において、収穫時期の一週間前に、作業者がリアル圃場の農作物の生育状況を作業番号単位で観察し、一週間後のリアル収量を予想する。一般に、収穫の一週間前であれば、ある程度収量を正確に予測することが可能である。
【0063】
S36において、作業者がリアル予想収量を収穫日と共に作業者端末30に入力すると、入力された情報が、S37において、シミュレーションサーバ10へと送信される。リアル予想収量を受信したシミュレーションサーバ10においては、配分決定部55が、当該作業番号内にバーチャルフィールドを有するユーザへの配分量を決定する(S38)。
【0064】
この収量配分は、当該フィールド内に生き残っているユニットの数である残存ユニット数に応じて行われる。例えば、当該作業番号内にユーザA,B,Cがそれぞれ所有する3個のフィールドA,B,Cが含まれ、各フィールドの初期ユニット数が5個の場合を想定する。リアル収量が最大収量の8割程度(ユニット数12個に相当)と予想され、作業者がS36においてリアル予想収量を8割と入力した場合には、配分決定部55は、リアル収穫物を各フィールドの残存ユニット数に応じて各ユーザに配分する。ここで、最大収量とは、フィールド内のユニットが全て順調に成長した場合の収量である。
【0065】
フィールドA,B,Cの残存ユニット数がそれぞれ4個、3個、4個であったとすると、ユーザAにユニット4個分、ユーザBにユニット3個分、ユーザCにユニット4個分を配分するように決定される。リアル収穫量がユニット数12個に相当するため、フィールドA,B,Cの残存ユニット数が合計11個であれば、不足無くリアル収穫物を配分することができる。
【0066】
上述したように、本実施形態においては、リアル圃場の収量にバーチャル圃場の収量を連動させるように、栽培途中でバーチャル上の収量パラメータ(残存ユニット数、元気度)を調整している。したがって、通常であれば、配分量決定時に、リアル予想収量とバーチャル収量(残存ユニット数)とは近い数値になっているため、S38においては、残存ユニット数に応じて各ユーザにリアル収穫物の配分を行うようにすれば良い。
【0067】
一方、何らかの要因によってリアル予想収量がバーチャル収量(残存ユニット数)を下回ってしまった場合には、配分決定部55は、上述した元気度によって残存ユニットの足切りを行うように制御する。
【0068】
すなわち、当該作業番号に属する残存ユニットを元気度に従って順に並べ、リアル収量が不足するユニット数分だけ、元気度の小さい方から残存ユニットを足切りし、足切りされた残存ユニットを有するユーザには、足切りされた残存ユニット数分だけ収量配分を差し引いて配分する。
【0069】
但し、本実施形態では、栽培シミュレーションゲームの成績が良くなく、元気度の低いユニットばかりのユーザに対しても、上述した最低ユニット数分の収量を保証するため、この足切りも最低ユニット数を保証するように行われる。つまり、足切り後の残存ユニット数が最低ユニット数を下回る場合には、当該ユーザのユニットの足切りを行わずに、次に元気度の低いユニットを有するユーザに対して足切りを行うようにする。
【0070】
なお、本実施形態では、リアル予想収量が最低ユニット数を下回り、最低保障収量を分配することができないユーザが存在する場合には、当該ユーザに対して返金処理で対応するように設定されている。また、同じ作業番号内にユーザが一人の場合であっても残存ユニット数に応じて分配が行われる。
【0071】
S38で決定された各ユーザへの配分量は、S39において、各ユーザ端末20へと送信され、S40において、各ユーザ端末20上に表示される。この配分量の通知は、実際の収穫の一週間前に行われ、配分量を知ったユーザは、収穫物を自宅へ送ってもらったり、ネット上で販売したりするか等の選択を行い、サービス提供者に知らせることができる。
【0072】
以上、詳細に説明した本実施形態によれば、栽培シミュレーションゲーム上のバーチャル農作物の栽培状況が、リアル圃場でのリアル農作物の栽培状況に連動して補正されるように構成されているので、実際の農作物に近く、現実性の高い栽培シミュレーションゲームをユーザに提供することができる。
【0073】
また、リアル農作物の収量に連動させてバーチャル農作物の収量を補正することで、収穫時の収穫物の配分の際に、バーチャル農作物の収量に比べてリアル農作物の収量が大きく不足し、サービス提供者が過大な負担を負うのを防ぐこともできる。また、リアル農作物の収量減に連動してバーチャル農作物の収量を減少させることで、ユーザも収量が減少することを納得でき、収穫物が少ないことによる不満の発生を抑えることもできる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内でさらに種々の変形が可能である。例えば、上述したシミュレーションサーバの機能は、単一のサーバではなく、複数のサーバで分散して行わせるようにしても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、作業者は作業者端末から各種情報を入力しているが、シミュレーションサーバの入力装置を使って直接サーバに入力するようにしても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 農作物栽培連動システム
5 ネットワーク
8 基地局
10 シミュレーションサーバ
11 演算装置
13 記憶装置
131 プログラム格納部
132 ユーザ情報DB
133 農作物情報DB
134 コンテンツ情報DB
135 栽培状況DB
51 自動成長部
52 成長補正部
55 配分決定部
20 ユーザ端末
23 ディスプレイ
30 作業者端末
31 キーボード
32 カメラ
33 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末を使用するユーザに対して、リアル圃場での栽培と連動させた農作物の栽培シミュレーションゲームを提供するシミュレーションサーバを備える農作物栽培連動システムにおいて、
前記シミュレーションサーバは、
前記栽培シミュレーションゲーム上でバーチャル栽培されるバーチャル農作物に関して、当該バーチャル農作物の収量を決定する収量パラメータを含む栽培状況を記録する栽培状況記録部と、
前記ユーザ端末を介したユーザの指示に基づいて、前記栽培シミュレーションゲーム上において、前記収量パラメータを含む前記栽培状況を更新しながら前記バーチャル農作物を自動的に成長させる自動成長制御部と、
前記リアル圃場で栽培されるリアル農作物の収量を減少させる災害が発生したとの情報を受信すると、前記収量パラメータを強制的に減少させるための補正処理を行う成長補正制御部と、
前記収量パラメータに応じて、収穫される前記リアル農作物のユーザへの配分量を決定する配分量決定部と、
を備えることを特徴とする農作物栽培連動システム。
【請求項2】
前記栽培状況記録部は、ユーザによる前記バーチャル農作物の作付け単位であるフィールド内に所定の数で初期設定されるユニット毎に前記栽培状況を記録すると共に、前記収量パラメータとして、前記ユニット毎の生死情報を記録しており、
前記配分量決定部は、収穫時に前記フィールド内に生き残っている前記ユニットの数である残存ユニット数に応じてユーザへの配分量を決定する、ことを特徴とする請求項1記載の農作物栽培連動システム。
【請求項3】
前記成長補正制御部は、前記フィールド内に生き残っている前記ユニットを強制的に消滅させる補正処理を行うことを特徴とする請求項2記載の農作物栽培連動システム。
【請求項4】
前記栽培状況記録部は、前記収量パラメータとして、前記ユニット毎に当該ユニットの元気度をさらに記録しており、
前記配分量決定部は、前記リアル農作物の収量が前記バーチャル農作物の収量よりも少ない場合に、前記元気度の低い順に前記ユニットを足切りし、足切りされた前記ユニットの数分だけ差し引いてユーザへの配分量を決定することを特徴とする請求項2又は3記載の農作物栽培連動システム。
【請求項5】
ユーザに前記リアル農作物の配分量を最低限保証するために、前記バーチャル農作物の品種毎に、前記フィールド内に生き残らせる最低ユニット数を記録する農作物情報記録部をさらに備え、
前記自動成長制御部及び前記成長補正制御部は、前記残存ユニット数が前記最低ユニットを下回らないように処理することを特徴とする請求項2乃至4何れか1項に記載の農作物栽培連動システム。
【請求項6】
コンピュータに、リアル圃場での栽培と連動させた農作物の栽培シミュレーションゲームを提供させるための農作物栽培連動プログラムにおいて、
前記コンピュータの記憶装置に、前記栽培シミュレーションゲーム上でバーチャル栽培されるバーチャル農作物に関して、当該バーチャル農作物の収量を決定する収量パラメータを含む栽培状況を記録させる栽培状況記録ステップと、
前記栽培シミュレーションゲーム上において、前記収量パラメータを含む前記栽培状況を更新しながら前記バーチャル農作物を自動的に成長させる自動成長ステップと、
前記リアル圃場で栽培されるリアル農作物の収量を減少させる災害が発生したとの情報を受信すると、前記収量パラメータを強制的に減少させるための補正処理を行う成長補正ステップと、
前記収量パラメータに応じて、収穫される前記リアル農作物のユーザへの配分量を決定する配分量決定ステップと、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする農作物栽培連動プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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