説明

農園芸用殺菌剤組成物及びその使用方法

【課題】
多種類の病害に対して高い効果を発揮することにより農作業が効率化できるとともに薬害の無い農園芸用殺菌剤組成物及びその使用方法を提供すること。作物生産の安定化或いは使用薬量の低減につながり、総合的な自然環境への負荷の軽減に資すること。
【課題を解決するための手段】
塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅及び水酸化第二銅等の無機銅剤及び有機銅剤から選択される殺菌成分とリン酸のカリウム塩、ナトリウム塩又はアンモニウム塩とを成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物及びその使用方法が、多種類の病害に対して殺菌剤単剤の効果からは予期できない優れた効果を示すこと及び種々の植物に対して薬害を示さないことから優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機銅剤及び有機銅剤からなる群から選ばれる1又は2以上の殺菌成分及びリン酸塩又はこれらに更に亜リン酸又はその塩を含有する農園芸用殺菌剤組成物並びにその殺菌剤としての使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
殺菌成分及び亜リン酸又はその塩からなる組成物が多種類の病害に対して相乗的に予防及び治療効果を発揮すること及び肥料効果があること(例えば、特許文献1参照)が知られている。
銅を含有する薬剤の効果増強、薬害軽減の技術は種々知られている。
硫酸銅及びポリリン酸からなる植物病害防除用製剤が植物病害防除効果を示すこと及び薬害軽減効果を示すこと(例えば、特許文献2参照)は知られている。シュウ酸銅とアルカリ金属塩の混合物とすると銅あたりの殺菌活性が上がり、薬害も少ないことが示されている(例えば、特許文献3参照。)。リン脂質を有効成分として含有する無機銅剤の薬害軽減用組成物も知られている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、これらの効果と薬害軽減のレベルは、必ずしも充分ではなかった。
【0003】
金属塩よりなる群から選ばれる化合物と、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等から選ばれるpH調整化合物を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物も知られている(例えば、特許文献5参照。)。また、この組成物が相乗効果を有し薬害も無いことが示されている。しかし、pH調整についての具体的態様は明らかではない。特に、リン酸塩の効果については、効果試験例、一般的記載には明確な記載はされておらず、リン酸塩が好ましい旨の示唆も無い。むしろ、酢酸やクエン酸がより好ましいことがデータとして記載されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平2000−264802号公報
【特許文献2】国際特許出願公開2004/017735号パンフレット
【特許文献3】特開平4−18005号公報(課題を解決するための手段)
【特許文献4】特開平6−247821号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開昭55−27164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農業及び園芸等の作物生産は病害等による被害が今なお大きく、また既存薬に対する微生物や菌類の薬剤抵抗性の要因から新規な植物病害防除用殺菌剤の開発が望まれている。無機銅又は有機銅等の銅剤は比較的安価で広範囲の病害に対して防除効果を有するため農園芸用殺菌剤として広く用いられてきた。銅剤単独での効果は充分ではないため、その効果を高めることができれば、作物生産の安定化或いは使用薬量の低減につながり、総合的な自然環境への負荷の軽減に資することにもなる。ところが、一般的に銅剤は他の成分により植物体への吸収が増すと薬害が発生することから、肥料や他の有効成分との混合製剤の開発や混用方法の確立が難しく、その解決が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、植物病害に十分な効果を発揮する薬剤や処理方法の開発に鋭意検討を続けた結果、無機銅剤及び有機銅剤からなる殺菌成分及びリン酸又はその塩を成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物が、多種類の病害に対して殺菌剤単剤の効果からは予期できない優れた効果を示すこと及び種々の植物に対して薬害を示さないことを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、殺菌成分として無機銅剤及び有機銅剤からなる群から選ばれる1又は2以上の殺菌剤及びリン酸塩を含有する農園芸用殺菌剤組成物並びにその使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、種々の植物病害に対して相乗的な防除効果が認められ、かつ、種々の植物に対して薬害を示さないことから農園芸用殺菌剤として使用することができる。また、高い効果の持続性が認められることから、環境中への投下薬量の低減や散布回数の減少により高い安全性と経済性が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物に用いられる殺菌成分としての無機銅剤としては、銅イオンを含有する抗菌性化合物であればよく、例えば、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、塩基性炭酸銅、亜酸化銅、塩基性燐酸銅、塩基性硫酸銅カルシウム、銅アンモニウム錯塩及び水酸化第二銅等が挙げられる。有機銅剤としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、PCP銅、テレフタル酸銅及びオキシンドー等が挙げられる。好適には、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅及び/又は水酸化第二銅である。特に好ましくは、塩基性硫酸銅である。
【0009】
本発明のリン酸塩としては、特に限定はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩等が挙げられる。動植物に悪影響が無いものであれば良く、有機塩基との塩であっても良い。具体的リン酸の塩としては、例えば、第一リン酸アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸水素二アンモニウム、((NH4)2HPO4)、リン酸二水素カリウム(K2HPO4)、リン酸三カリウム(K3PO4)等が挙げられ、リン酸水素二カリウムが好ましい。
また、亜リン酸塩としては、例えば、亜リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、亜リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)等が挙げられ、亜リン酸水素二カリウムが好ましい。
本発明の農園芸用殺菌剤組成物のpHは特に制限されないが、約6から約10程度の範囲が好ましい。
【0010】
本発明の無機銅剤及び有機銅剤からなる殺菌成分及びリン酸塩を成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物には更に亜リン酸又はそのカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩若しくはアンモニウム塩を加えても良い。
【0011】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物に加える殺菌成分とリン酸塩との2種混合、又は、殺菌成分とリン酸塩と亜リン酸若しくはそれらの塩との組合せの3種混合は特に制限は無いが、好適には無機銅剤とリン酸塩の組合せが良く、特に好ましくは塩基性硫酸銅とリン酸塩の組合せが良い。
【0012】
本発明の有効成分の農園芸用殺菌剤組成物に含有できる量としては、有効成分の総量としては通常約0.2%〜約90%程度で、殺菌成分が0.1%から80%の範囲で、リン酸又はその塩が0.1%から90%の範囲で用いられる。好ましくは下限1%程度、上限50%程度の範囲で含有することが経済的である。配合割合は殺菌成分とリン酸又はその塩の成分の比率が1:80〜80:1の範囲で用いることができるが、好ましくは、1:10〜1:1の範囲である。また、3種混合の場合、有効成分の総量としては通常約0.2%〜約90%程度で、殺菌成分が0.1%から80%の範囲で、リン酸の塩及び亜リン酸の塩の合計量として0.1%から90%の範囲で用いられる。その場合のリン酸塩と亜リン酸塩等の比率は1:10〜10:1の割合で含有できるが、好ましくは1:2〜2:1の範囲である。
【0013】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の他の成分としては、例えば、固体、液体の各種担体以外に、界面活性剤、分散剤、希釈剤、乳化剤、展着剤、湿展剤、増粘剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、酸化防止剤、分解防止剤、代謝阻害剤、アジュバント類等の補助成分を添加することもできる。
【0014】
本発明で使用できる不活性担体としては固体又は液体の何れであっても良く、固体の担体になり得る材料としては、例えば植物質粉末類(例えばダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣等)、粉砕合成樹脂等の合成重合体、粘土類(例えばカオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(例えばタルク、ピロフィライト等)、シリカ類{例えば珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン(含水微粉珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。)}、活性炭、天然鉱物質類(例えばイオウ粉末、軽石、アタパルジャイトおよびゼオライト等)、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、プラスチック担体等(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等)、炭酸カルシウム等の無機鉱物性粉末、硫安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料、有機肥料、動物排泄物発酵産物、堆肥等を挙げることができ、これらは単独で若しくは二種以上の混合物の形で使用される。
【0015】
液体の担体になりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するものの他、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうることとなるものから選択され、例えば代表例として次に挙げる担体を例示できるが、これらは単独で若しくは2種以上の混合物の形で使用され、例えば水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えばエチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエ−テル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えばケロシン、鉱油等)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えばジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩素化ベンゼン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、ジイソプピルフタレ−ト、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ニトリル類(例えばアセトニトリル等)、ジメチルスルホキシド類等を挙げることができる。好ましくは水である。
【0016】
他の補助剤としては次に例示する代表的な補助剤をあげることができ、これらの補助剤は目的に応じて使用され、単独で、ある場合は二種以上の補助剤を併用し、又ある場合には全く補助剤を使用しないことも可能である。有効成分化合物の乳化、分散、可溶化及び/又は湿潤の目的のために界面活性剤が使用され、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルアリ−ルスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸縮合物、リグニンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等の界面活性剤を例示することができる。又、有効成分化合物の分散安定化、粘着及び/又は結合の目的のために、次に例示する補助剤を使用することもでき、例えばカゼイン、ゼラチン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、糠油、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩等の補助剤を使用することもできる。
【0017】
固体製品の流動性改良のために次に挙げる補助剤を使用することもでき、例えばワックス、ステアリン酸塩、燐酸アルキルエステル等の補助剤を使用できる。懸濁性製品の解こう剤として、例えばナフタレンスルホン酸縮合物、縮合燐酸塩等の補助剤を使用することもできる。消泡剤としては、例えばシリコーン油等の補助剤を使用することもできる。
【0018】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物には、更に防除対象病害虫、防除適期の拡大のため、或いは薬量の低減、相乗効果を図る目的で他の農園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、生物農薬等と混合して使用することも可能であり、又、使用場面に応じて除草剤、植物成長調節剤、肥料等と混合して使用することも可能である。
【0019】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、農薬製剤上の常法に従い、使用上都合の良い形状に製剤して使用するのが一般的である。即ち、殺菌成分等の有効成分及びリン酸又はその塩類を適当な不活性担体に、又は必要に応じて補助剤と一緒に適当な割合に配合して溶解、分離、懸濁、混合、含浸、吸着若しくは付着させ、適宜の剤形、例えば懸濁剤、乳剤、乳懸濁剤、液剤、水和剤、粒剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、粉剤、錠剤、ジャンボ剤、種子コーティング製剤、液剤等に製剤して施用することができる。また、殺菌成分の銅剤等とリン酸塩を上記に準じて別々に製剤、調整し、使用時に混合して使用することもできる。
【0020】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の使用対象としては、下記の植物病害を例示することができる。大きく分ければ、糸状菌類病害、細菌類病害、ウイルス病病害を含むものであり、例えば、不完全菌類(例えば、ボトリチス(Botrytis)
属病害、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium) 属病害、フザリウム(Fusarium) 属病害、セプトリア(Septoria)属病害、サルコスポラ(Cercospora)属病害、ピリキュラリア(Pyricularia)属病害、アルタナリア(Alternaria)属病害等)、担子菌類(例えばヘミレイア(Hemileia)属病害、リゾクトニア(Rhizoctonia)
属病害、プッキニア(Puccinia)属病害等)、ベンチュリア(Venturia)属病害、モニリニア(Monilinia) 属病害、ウンシヌラ(Unsinula)属病害等、その他の菌類(例えば、アスコキータ(Ascochyta)
属病害、フォマ(Phoma) 属病害、ピシウム(Pythium) 属病害、コルティシウム(Corticium) 属病害、ピレノフォラ(Pyrenophora)
属病害等)等、細菌類による病害である、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属病害、キサントモナス(Xanthomonas) 属病害、エルビィニア(Erwinia)
属病害等、あるいは、ウイルス類(例えば、タバコモザイクウイルス)による病害等を含むものである。
【0021】
個々の病害としては、例えば、イネいもち病(Pyricularia
oryze) 、イネ紋枯病(Rhizoctonia solani)、イネごま葉枯病(Cochiobolus miyabeanus)、イネ苗立ち枯れ病(Rhizopus
chinensis, Pythium graminicola, Fusarium graminicola, Fusarium roseum, Mucor
sp., Phoma sp., Tricoderma sp.)、イネ馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、オオムギ及びコムギ等のうどんこ病(Erysiphe
graminis) 又はキュウリ等のうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)及び他の宿主植物のうどんこ病、オオムギ及びコムギ等の眼紋病(Pseudocercosporella
herpotrichoides) 、コムギ等の黒穂病(Urocystis tritici) 、オオムギ及びコムギ等の雪腐病(Fusariumu nivale,
Pythium iwayamai, Typhla ishikariensis, Sclerotinia borealis)、エンバクの冠さび病(Puccinia
coronata) 及び他の植物のさび病、キュウリ、イチゴ等の灰色かび病(Botrytis cinerea)、トマト、キャベツ等の菌核病(Sclerotinia
sclerotiorum)、バレイショ、トマト等の疫病(Phytophthora infestans)及び他の植物の疫病、キュウリべと病(Pseudoperonospora
cubensis)、ブドウべと病(Plasmopara viticola) 等の種々の植物のべと病、
【0022】
リンゴ黒星病(Venturia inaequalis) 、リンゴ斑点落葉病(Alternaria
mali) 、ナシ黒斑病(Alternaria kikuchiana) 、カンキツ黒点病(Diaporthe citri) 、カンキツそうか病(Elsinoe
fawcetti)、テンサイ褐斑病(Cercospora beticola) 、ラッカセイ褐斑病(Cercospora arachidicola) 、ラッカセイ黒渋病(Cercospora
personata)、コムギ葉枯れ病(Septoria tritici)、コムギふ枯れ病(Septoria nodorum)、オオムギ雲型病(Rhynchosporium
secalis)、コムギ黒穂病(Tilletia caries) 、
【0023】
シバの葉腐病(Rhizoctonia solani)、シバのダラースポット病(Sclerotinia
homoeocarpa) 、Psuedomonas 属、例えばキュウリ斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv. lachrymans) 、トマト青枯病(Pseudomonas
solanacearum)及びイネ籾枯細菌病(Pseudomonas glumae)、 Xanthomonas属、例えばキャベツ黒腐病(Xanthomonas
campestris)、イネ白葉枯病(Xanthomonas oryzae)及びカンキツかいよう病(Xanthomonas citri) 、 Erwinia属、例えばキャベツ軟腐病(Erwinia
carotovora)等の細菌病、タバコモザイク病(Tobacco mosaic virus)等のウイルス病等に対して顕著な防除効果を有するものである。
【0024】
好適には、キュウリべと病(Pseudoperonospora
cubensis)、バレイショ及びトマト疫病(Phytophthora infestans)、テンサイ褐斑病(Cercospora
beticola)に対して高い防除効果を有する。
【0025】
本発明の殺菌剤組成物を使用できる植物は特に限定されるものではないが、例えば以下に示した植物が挙げられる。
穀類(例えば、稲、大麦、小麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ、高粱等)、豆類(大豆、小豆、そら豆、えんどう豆、落花生等)、果樹・果実類(リンゴ、柑橘類、梨、ブドウ、桃、梅、黄桃、クルミ、アーモンド、バナナ、イチゴ等)、野菜類(キャベツ、トマト、ほうれん草、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン等)、根菜類(ニンジン、馬鈴薯、サツマイモ、大根、蓮根、かぶ等)、加工用作物類(綿、麻、コウゾ、ミツマタ、菜種、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、オリーブ、ゴム、コーヒー、タバコ、茶等)、瓜類(カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン等)、牧草類(オーチャードグラス、ソルガム、チモシー、クローバー、アルファルファ等)、芝類(高麗芝、ベントグラス等)、香料等用作物類(ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、胡椒、しょうが等)、花卉類(キク、バラ、蘭等)等の植物に使用できる。
【0026】
本発明の使用方法に用いる農園芸用殺菌剤組成物は、各種病害を防除するためにそのまま、又は水等で適宜希釈し、若しくは懸濁させた形で植物病害防除に有効な量を当該病害の発生が予測される対象植物に散布して用いられ、植物の根部や基部を侵害する病害に対しては土壌、育苗マット等の栽培担体に施用することができ、土壌灌注処理、育苗箱潅注処理、セルトレー潅注処理、培土混和処理、種子処理等により播種時や定植時、生育期に防除することもできる。
【0027】
本発明の使用方法を実施する場合の「土壌」又は「栽培担体」とは、植物を栽培するための支持体を示すものであり、材質は特に制限されないが、植物が生育しうる材質であれば良く、例えば、いわゆる各種土壌、育苗マット、水等を含むものであり、砂、バーミキュライト、綿、紙、珪藻土、寒天、ゲル状物質、高分子物質、ロックウール、グラスウール、木材チップ、バーク、軽石やこれらの混合物等であっても良い。
【0028】
本発明の施用方法においては、殺菌成分及びリン酸又はその塩を混合製剤化して施用しても良く、個々の有効成分の製剤とリン酸塩の組成物や希釈液等を処理時に混用して施用しても良い。また、殺菌成分及びリン酸又の塩を別々に施用する場合、別々に希釈等して施用しても良く、2日程度の間隔を設けても良い。
【0029】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、植調剤、除草剤、種子消毒剤、肥料又は土壌改良資材と混合して又は混合せずに同時に若しくは時間を置いて用いることができる。
【0030】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の施用濃度及び施用量としては、散布処理する場合は、通常、100倍から2000倍の範囲で水に希釈して用いることにより経済的な防除が可能であり、散布水量は10アールあたり100リットルから10アールあたり500リットルで用いることにより効率的な防除が可能である。また、水を用いずに粉剤として植物体にそのまま散布することも可能であり、土壌灌注処理や種子処理等の方法では10倍〜100倍程度の高濃度で施用することもでき、培土混和処理等の方法では希釈せずに用いることもできる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の殺菌剤組成物の代表的な実施例、試験例を例示するが本発明はこれらに限られるものではない。尚、以下の試験例の表等において、「リン酸塩」は「リン酸水素二カリウム」を示し、「亜リン酸塩」は「亜リン酸水素二カリウム」を示す。
実施例1.
塩基性硫酸銅15重量部、リン酸水素ニカリウム54重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩3重量部、リグニンスルホン酸カルシウム3重量部、含水ケイ酸4重量部及び焼成珪藻土21重量部を均一に混合粉砕して水和剤とする。
実施例2.
塩基性硫酸銅15重量部、リン酸水素二カリウム27重量部、亜リン酸水素二カリウム27重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩3重量部、リグニンスルホン酸カルシウム3重量部、含水ケイ酸4重量部及び焼成珪藻土21重量部を均一に混合粉砕して水和剤とする。
【0032】

試験例1.キュウリべと病防除効果試験(1)
所定濃度の薬液を調整し、ポットで栽培した2.3葉期のキュウリ(品種:四葉)に茎葉散布した。散布翌日にキュウリべと病菌(Psuedoperonospora
cubensis) の遊走子を接種した。接種6日後に下記の基準に従って発病指数を調査し、式1に従って防除価を求めた。尚、無処理区の発病指数は6.5であった。
【0033】
発病指数
0 : 発病なし
1 : 病斑面積率1〜10%
2 : 病斑面積率11〜20%
3 : 病斑面積率21〜30%
4 : 病斑面積率31〜40%
5 : 病斑面積率41〜50%
6 : 病斑面積率51〜60%
7 : 病斑面積率61〜70%
8 : 病斑面積率71〜80%
9 : 病斑面積率81〜90%
10: 病斑面積率91〜100%
【0034】
〔式1〕
(無処理区の発病指数−処理区の発病指数)×100
防除価(%)=―――――――――――――――――――――――――
無処理区の発病指数
【0035】
以下の表中のコルビーの期待値は、式2のコルビーの計算式によって算出した。一般に、与えられた2種類の有効成分を混合して処理した場合に、実際に測定された効果が下記のコルビーの式で計算される期待値(E)よりも大きいと、2種の有効成分の組み合わせによる作用が相乗的であると判定される。
【0036】
〔式2〕
コルビーの期待値(E)=(X+Y)−(X×Y)÷100
数式中、Xは一方の有効成分の防除価(%)を、Yは他方の有効成分の防除価(%)を、Eは二種の有効成分の組み合わせに期待される期待される防除価(%)を示す。
【0037】
表1 キュウリべと病防除効果(1)
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供試薬剤 防除価 コルビー
(濃度、ppm) の期待値
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試験区
1 リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) 73 27.0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較区
1 亜リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) 46 27.0
2 リン酸塩(2150) 0 −
3 塩基性硫酸銅(1160) 27 −
4 亜リン酸塩(2150) 0 −
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
無処理区 発病指数:6.5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0038】
試験例2.キュウリべと病防除効果試験(2)
所定濃度の薬液を調整し、ポットで栽培した2.3葉期のキュウリ(品種:四葉)に茎葉散布した。散布翌日にキュウリべと病菌(Psuedoperonospora cubensis) の遊走子を接種した。接種8日後に発病指数を試験例1と同様の基準に従って調査し、式1に従って防除価を求めた。尚、無処理区の発病指数は8.8であった。
【0039】
表2 キュウリべと病防除効果(2)
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供試薬剤 防除価 コルビー
(濃度、ppm) の期待値
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試験区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) 100 75.2
2 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150)+水酸化第二銅(1536) 94 91.2
3 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150)+塩基性塩化銅(1682) 100 70.4
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150) 20 −
2 塩基性硫酸銅(1160) 69 −
3 水酸化第二銅(1536) 89 −
4 塩基性塩化銅(1682) 63 −
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
無処理区 発病指数:8.8
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【0040】
試験例3.トマト疫病防除効果試験
所定濃度の薬液を調整し、ポットで栽培した8葉期のトマト(品種:レジナ)に茎葉散布した。散布翌日にトマト疫病菌(Phytophthora
infestans) の遊走子を接種した。接種8日後に発病指数を試験例1と同様の基準に従って調査し、式1に従って防除価を求めた。尚、無処理区の発病指数は8.0であった。
【0041】
表3 トマト疫病防除効果
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供試薬剤 防除価 コルビー
(濃度、ppm) の期待値
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試験区
1 リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) 75 34.7
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較区
1 亜リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) 63 50.6
2 リン酸塩(2150) 8 −
3 塩基性硫酸銅(1160) 29 −
4 亜リン酸塩(2150) 29 −
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
無処理区 発病指数:8.0
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【0042】
試験例4.バレイショ疫病防除効果試験
所定濃度の薬液を調整し、ポットで栽培した10葉期のバレイショ(品種:男爵)に茎葉散布した。散布翌日にトマト疫病菌(Phytophthora infestans) の遊走子を接種した。接種7日後に発病指数を試験例1と同様の基準に従って調査し、式1に従って防除価を求めた。尚、無処理区の発病指数は8.0であった。
【0043】
表4 バレイショ疫病防除効果
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供試薬剤 防除価 コルビー
(濃度、ppm) の期待値
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試験区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) 100 68.0
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比較区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150) 36 −
2 塩基性硫酸銅(1160) 50 −
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無処理区 発病指数:8.0
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【0044】
試験例5.テンサイ褐斑病防除効果試験
所定濃度の薬液を調整し、ポットで栽培した6葉期のテンサイ(品種:めぐみ)に茎葉散布した。散布翌日にテンサイ褐斑病菌(Cercospora beticola)を接種した。接種30日後に発病指数を試験例1と同様の基準に従って調査し、式1に従って防除価を求めた。尚、無処理区の発病指数は6.7であった。
【0045】
表5 テンサイ褐斑病防除効果
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供試薬剤 防除価 コルビー
(濃度、ppm) の期待値
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試験区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) 99 56.0
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比較区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150) 0 −
2 塩基性硫酸銅(1160) 56 −
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無処理区 発病指数:6.7
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【0046】
試験例6.バレイショ薬害試験(圃場試験)
バレイショ(品種:西豊)を供試し、開花期及び開花8日後の計2回、所定濃度の薬液を200L/10aの割合で茎葉散布した。2回目散布21日後まで随時観察し、下記の基準に従って薬害程度を調査した。結果を表6に示す
【0047】
薬害程度
− : 薬害なし
± : 軽微な薬害あり
+ : 軽度な薬害あり
【0048】
表6 バレイショに対する薬害
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供試薬剤 薬害
(濃度、ppm)
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試験区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) −
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無処理区 −
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【0049】
試験例7.トマト薬害試験(ハウス試験)
12葉期のトマト(品種:ホーム桃太郎)を供試し、7日間隔で計3回、所定濃度の薬液を200L/10aの割合で茎葉散布した。3回目散布22日後まで随時観察し、試験例6と同様の基準に従って薬害程度を調査した。
【0050】
表7 トマトに対する薬害
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供試薬剤 薬害
(濃度、ppm)
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試験区
1 リン酸塩(2150)+亜リン酸塩(2150)+塩基性硫酸銅(1160) −
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無処理区 −
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本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、各種作物に薬害が無かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機銅剤及び有機銅剤からなる群から選ばれる1又は2以上の殺菌成分と、リン酸のカリウム塩、リン酸のナトリウム塩及びリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物とを成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項2】
無機銅剤及び有機銅剤からなる群から選ばれる1又は2以上の殺菌成分と、リン酸のカリウム塩、リン酸のナトリウム塩及びリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物と、亜リン酸、亜リン酸のカリウム塩、亜リン酸のナトリウム塩及び亜リン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物を成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項3】
無機銅剤及び有機銅剤からなる群が塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅及び水酸化第二銅からなる群である請求項1又は2に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項4】
リン酸のカリウム塩、リン酸のナトリウム塩及びリン酸のアンモニウム塩からなる群から選択される1又は2以上の化合物がリン酸水素二カリウムである請求項1乃至3いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項5】
請求項1及至4いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物の有効量を植物又は栽培担体に処理することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物の使用方法。
【請求項6】
無機銅剤及び有機銅剤からなる群から選ばれる1又は2以上の殺菌成分と、リン酸のカリウム塩、リン酸のナトリウム塩及びリン酸のアンモニウム塩からなる群から選ばれる1又は2以上の化合物を使用場面で混合して殺菌剤として使用する方法。


【公開番号】特開2006−282553(P2006−282553A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102986(P2005−102986)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】