説明

農園芸用殺菌剤組成物及びその使用方法

【課題】 種々の植物病害に対して広い殺菌スペクトラムを有し、低薬量で優れた防除効果を示す農園芸用殺菌剤組成物を提供する。
【解決手段】 ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と、殺菌活性を有する化合物の1種又は2種以上とを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と、殺菌活性を有する化合物の1種又は2種以上とを含有する農園芸用殺菌剤組成物及びその使用方法に関する。更に、ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と、殺菌活性を有する化合物の相乗効果を利用した植物病害の防除方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある種のピラジンカルボキサミド誘導体が有害生物防除活性を有することが知られている(例えば、特許文献1又は2参照。)。また、ある種のビフェニル化合物が有害菌類の防除に有効であることが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、本発明で使用されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類は、従来技術には開示されていない新規化合物であり、該化合物と殺菌活性を有する1又は2以上の化合物とを含有する農園芸用殺菌剤組成物もまた知られておらず、更にこれらを混用することで植物病害の防除において相乗効果を示すことは知られていない。
【特許文献1】特開平2−175号公報
【特許文献2】国際公開第05/115994号パンフレット
【特許文献3】特許第3202079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術においては、特許文献1に記載の化合物は灰色かび病やうどんこ病に対して実用的な活性を示さず、特許文献2に記載の化合物は殺ダニ活性を有するものの殺菌活性は低く、特許文献3に記載の化合物はうどんこ病に対する活性が低く、コムギの赤さび病やイネの紋枯れ病等担子菌類による病害に対しては実用的な殺菌活性を示さない等の課題があった。この様に従来技術の化合物単独では農園芸用殺菌剤組成物としてその効力や防除スペクトラムの点で必ずしも十分ではなかった。近年、地球環境への負荷が注目されるようになり、投下薬剤量の低減や効率的な植物病害の防除を目的として、殺菌スペクトラムの補完や相乗効果を有する混合剤の組合せが報告されている。しかしながら、混合相手によっては拮抗作用を生じたり、相加効果程度の効果しか得られない場合もあり、最適な混合相手を見出すには試行錯誤を繰り返すしかないのが現状である。従って、種々の植物病害に対して広い殺菌スペクトラムを有し、低薬量で優れた防除効果を示す農園芸用殺菌剤組成物の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と、殺菌活性を有する化合物の1種又は2種以上とを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物が相乗的な防除効果を示すのみならず、極めて広い殺菌スペクトラムを有することを見いだし、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、
(1)一般式(I)
【化1】

{式中、Xはハロ(C1−C3)アルキル基を示す。
Yは水素原子;又はハロゲン原子を示す。
Rはハロゲン原子;(C1−C6)アルキル基;ハロ(C1−C6)アルキル基;(C1−C6)アルコキシ基;ハロ(C1−C6)アルコキシ基;(C1−C6)アルキルチオ基;ハロ(C1−C6)アルキルチオ基;(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロ(C1−C6)アルキルスルフィニル基;(C1−C6)アルキルスルホニル基;ハロ(C1−C6)アルキルスルホニル基;(C1−C6)アルコキシカルボニル基;(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基;フェニル基;1以上の同一又は異なっても良いハロゲン原子により置換された置換フェニル基;フェノキシ基;1以上の同一又は異なっても良いハロゲン原子により置換された置換フェノキシ基;ピリジルオキシ基;1以上の同一又は異なっても良いハロゲン原子又はハロ(C1−C6)アルキル基により置換された置換ピリジルオキシ基;ピリミジルオキシ基;又は1以上の同一又は異なっても良い(C1−C3)アルコキシ基により置換された置換ピリミジルオキシ基を示し、nは1〜5の整数を示す。nが2〜5の整数である場合、Rは同一又は異なっても良く、また、隣り合う2つのRが一緒になって(C3−C5)アルキレン基;(C2−C4)アルキレンオキシ基;(C1−C3)アルキレンジオキシ基;又はハロ(C1−C3)アルキレンジオキシ基を示すことができる。}で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と、殺菌活性を有する化合物の1種又は2種以上とを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物、
(2)ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類が、Xがフルオロメチル基;ジフルオロメチル基;又はトリフルオロメチル基であり、Yが水素原子であり、Rがハロゲン原子;ハロ(C1−C6)アルキル基;又はハロ(C1−C6)アルコキシ基であり、nが1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、Rは同一又は異なっていても良い化合物である、上記(1)に記載の農園芸用殺菌剤組成物、
(3)ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類が、Xがトリフルオロメチル基であり、Yが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、nが1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、Rは同一又は異なっていても良い化合物である、上記(1)に記載の農園芸用殺菌剤組成物、
(4)殺菌活性を有する化合物がアゾール系殺菌剤、ストロビルリン系殺菌剤、アミド系殺菌剤、ヘテロ環系殺菌剤、カーバメート系殺菌剤、銅剤、グアニジン系殺菌剤、抗生物質、イソプロチオラン、シフルフェナミド、シモキサニル、フルオルイミド及びトルフェンピラドからなる群より選択される1種又は2種以上である上記(1)乃至(3)いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物、
(5)殺菌活性を有する化合物がシメコナゾール、アゾキシストロビン、フルトラニル、マンゼブ、ピリベンカルブ(KUF−1204)、クロロタロニル、塩基性硫酸銅、8−ヒドロキシキノリン銅、フルオルイミド、トルフェンピラド及びチオファネートメチルからなる群より選択される1種又は2種以上である上記(1)乃至(3)いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物、及び、
(6)ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類1質量部に対して、殺菌活性を有する化合物が0.1〜100質量部の割合で配合されてなる上記(1)乃至(5)いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物、
に関する。
【0005】
本発明はまた、
(7)上記(1)乃至(6)いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物の有効量を用いて対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体を処理することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物の使用方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、従来技術に比べて優れた性能、特に農園芸用殺菌剤として種々の植物病害に対して広い防除スペクトラムを有し、かつ低薬量で優れた病害防除効果を示すため、地球環境への負荷が少なく、種々の植物病害を効果的に防除することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ピラジンカルボキサミド誘導体の一般式(I)の定義において、「ハロゲン原子」としては、塩素原子、臭素原子、沃素原子又はフッ素原子が挙げられる。
「ハロ(C1−C)アルキル基」としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロイソプロピル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2,3−ジブロモプロピル基等の同一又は異なっていても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜3個のアルキル基が挙げられる。
「(C1−C6)アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、ネオペンチル基、ノルマルヘキシル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキル基が挙げられる。「ハロ(C1−C6)アルキル基」としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロイソプロピル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2,3−ジブロモプロピル基等の同一又は異なっていても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキル基が挙げられる。
「(C1−C6)アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ノルマルペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシ基が挙げられる。「ハロ(C1−C6)アルコキシ基」としては、例えば、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、パーフルオロエトキシ基、パーフルオロイソプロポキシ基、クロロメトキシ基、2−ブロモエトキシ基、1−クロロエトキシ基、2,3−ジブロモプロポキシ基等の同一又は異なっていても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシ基が挙げられる。
【0008】
「(C1−C6)アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、セカンダリーブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ノルマルペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ノルマルヘキシルチオ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルチオ基が挙げられる。「ハロ(C1−C6)アルキルチオ基」としては、例えば、ジフルオロメチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、パーフルオロエチルチオ基、3−クロロプロピルチオ基、パーフルオロイソプロピルチオ基、パーフルオロヘキシルチオ基等の同一又は異なっていても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルチオ基が挙げられる。
「(C1−C6)アルキルスルフィニル基」としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ノルマルプロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ノルマルブチルスルフィニル基、セカンダリーブチルスルフィニル基、ターシャリーブチルスルフィニル基、ノルマルペンチルスルフィニル基、イソペンチルスルフィニル基、ノルマルヘキシルスルフィニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルフィニル基が挙げられる。「ハロ(C1−C6)アルキルスルフィニル基」としては、例えば、ジフルオロメチルスルフィニル基、トリフルオロメチルスルフィニル基、パーフルオロエチルスルフィニル基、3−クロロプロピルスルフィニル基、パーフルオロイソプロピルスルフィニル基、パーフルオロヘキシルスルフィニル基等の同一又は異なっていても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルフィニル基が挙げられる。
【0009】
「(C1−C6)アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルプロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、セカンダリーブチルスルホニル基、ターシャリーブチルスルホニル基、ノルマルペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ノルマルヘキシルスルホニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルホニル基が挙げられる。「ハロ(C1−C6)アルキルスルホニル基」としては、例えば、ジフルオロメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、パーフルオロエチルスルホニル基、3−クロロプロピルスルホニル基、パーフルオロイソプロピルスルホニル基、パーフルオロヘキシルスルホニル基等の同一又は異なっていても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0010】
「(C1−C6)アルコキシカルボニル基」としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ノルマルプロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ノルマルブトキシカルボニル基、ターシャリーブトキシカルボニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシカルボニル基が挙げられる。「(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基」としては、例えば、メトキシイミノメチル基、エトキシイミノメチル基、ノルマルプロポキシイミノメチル基、イソプロポキシイミノエチル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基が挙げられる。
「(C3−C5)アルキレン基」としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数3〜5個のアルキレン基が挙げられる。「(C2−C4)アルキレンオキシ基」としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜4個のアルキレンオキシ基が挙げられる。「(C1−C3)アルキレンジオキシ基」としては、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜3個のアルキレンジオキシ基が挙げられる。「ハロ(C1−C3)アルキレンジオキシ基」としては、例えば、ジクロロメチレンジオキシ基、ジフルオロメチレンジオキシ基、パーフルオロエチレンジオキシ基、2,2−ジフルオロプロピレンジオキシ基等の同一又は異なっていても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜3個のアルキレンジオキシ基が挙げられる。
【0011】
本発明において、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体の塩類としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩等の無機酸塩類;酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩類;ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、トリメチルアンモニウム等の無機又は有機の塩基との塩類等を例示することができる。
【0012】
一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体において、Xとしては、好ましくはフルオロメチル基;ジフルオロメチル基;又はトリフルオロメチル基であり、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。Yとして好ましくは水素原子;又はハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子である。Rとして好ましくは、ハロゲン原子;ハロ(C1−C6)アルキル基;又はハロ(C1−C6)アルコキシ基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。nとして好ましくは1〜3の整数である。本発明における一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類としては、Xがトリフルオロメチル基であり、Yが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、nが1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、Rは同一又は異なっていてもよい化合物が特に好ましい。
【0013】
一般式(I)で表される化合物は、例えば下記の製造方法1及び2に従って製造されるが、これらの方法に限定されるものではない。
製造方法1
【化2】

(式中、X、Y、R及びnは前記と同意義であり、L1は塩素原子、臭素原子、(C1−C)アルコキシ基等の脱離基を表す。)
【0014】
一般式(II)で表されるピラジンカルボン酸誘導体と一般式(III)で表される2−アミノビフェニル誘導体とを塩基の存在下、不活性溶媒中反応させることにより一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体を製造することができる。本反応における反応温度は通常約−20℃〜120℃の範囲で、反応時間は通常約0.2時間〜24時間の範囲で行われる。一般式(III)で表される2−アミノビフェニル誘導体は一般式(II)で表されるピラジンカルボン酸誘導体に対して通常約0.2〜5倍モルの範囲で使用される。
【0015】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類;カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック−7−エン等の第三級アミン類;ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物等を挙げることができる。塩基の量は一般式(II)で表されるピラジンカルボン酸誘導体に対して通常約0.5〜10倍モルの範囲で使用される。使用できる不活性溶媒としては、本反応を著しく阻害しないものであれば良く、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、水、酢酸等の極性溶媒等を挙げることができ、これらの不活性溶媒は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0016】
一般式(III)で表される2−アミノビフェニル誘導体はTetrahedron Letters,Vol.28,5093(1987)及びTetrahedron Letters,Vol.29,5436(1988)等に記載の方法、又はそれに準じた方法で製造することができる。
【0017】
製造方法2
【化3】

{式中、X、Y、R及びnは前記と同意義であり、L2は塩素原子、臭素原子、沃素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の脱離基を示し、L3はB(OH)基、B(OR2)基(式中、R2は同一又は異なっていても良く、(C1−C10)アルキル基を示すか、又は2つのR2は末端で結合して−CH2CH2−基又は−C(CH32C(CH32−基を形成していてもよい。)又はSn(R33基(式中、R3は同一又は異なっていても良く、(C1−C10)アルキル基を示す。)を示す。}
【0018】
一般式(IV)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体と一般式(V)で表される化合物とを触媒及び塩基の存在下、不活性溶媒中で反応させることにより一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体を製造することができる。本反応における反応温度は通常約20℃〜150℃の範囲で、反応時間は通常約1時間〜24時間の範囲で行われる。一般式(V)で表される化合物は一般式(IV)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体に対して通常約0.8〜5倍モルの範囲で使用される。
【0019】
触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)塩化メチレン錯体、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド等のパラジウム触媒が挙げられる。触媒の使用量は一般式(V)で表される化合物に対して約0.001〜0.1倍モルの範囲で使用される。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類等が挙げられる。塩基の使用量は一般式(IV)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体に対して通常約0.5〜10倍モルの範囲である。
【0020】
本反応は必要に応じて相関移動触媒(例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩等を挙げることができる。)の存在下に行うことができる。また、一般式(V)で表される化合物におけるL3がSn(R3)3基である場合は、反応を効率的に行うために更に例えば、酸化銅(II)、酸化銀(II)等の存在下に反応を行うことができる。使用できる不活性溶媒としては、本反応を著しく阻害しないものであれば良く、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、水、酢酸等の極性溶媒を挙げることができ、これらの不活性溶媒は単独で又は2種以上混合して使用することができる。反応終了後、目的物を含む反応系から常法により目的物を単離すれば良く、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等で精製することにより目的物を製造することができる。製造される化合物には、融点が異なるものが製造される場合がある。それは結晶多形であり、いずれも一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体として本発明に用いることができる。
【0021】
かくして得られる一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体の代表例を第1表に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、第1表において物性は融点(℃)を示し、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「Ph」はフェニル基を、「n−」はノルマルを、「i−」はイソを、「t−」はターシャリーを示し、Q1及びQ2は以下の構造式で表される置換基を示す。

【化4】

【0022】
一般式(I):
【化5】

【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
本発明で使用する殺菌活性を有する化合物としては、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エニルコナゾール、エポキシコナゾール、フルキンコナゾール、フェンブコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリチコナゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、イマザリル、トリフルミゾール、シアゾファミド、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、フベリダゾール、エタボキサム、エトリジアゾール、オキスポコナゾールフマル酸、ヒメキサゾール等のアゾール系殺菌剤;アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フルオキサストロビン、クレソキシムメチル、メトミノストロビン、オリザストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン等のストロビルリン系殺菌剤;カルボキシン、ベナラキシル、ボスカリド、ビキサフェン、フェンヘキサミド、フルトラニル、フラメトピル、メプロニル、メタラキシル、メフェノキサム、オフラセ、オキサジキシル、オキシカルボキシン、ペンチオピラド、チフルザミド、チアジニル、ジメトモルフ、フルモルフ、フルメトベル、フルオピコリド、カルプロパミド、ジクロシメット、マンジプロパミド等のアミド系殺菌剤;
【0027】
フルアジナム、ピリフェノックス、ブピリメート、シプロジニル、フェナリモル、フェリムゾン、メパニピリム、ヌアリモール、ピリメタニル、トリホリン、フェンピクロニル、フルジオキソニル、アルジモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン、イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン、ファモキサドン、フェナミドン、オクチリノン、プロベナゾール、アニラジン、ジクロメジン、ピロキロン、プロキナジド、トリシクラゾール、カプタホル、キャプタン、ダゾメット、ホルペット、フェノキサニル、キノキシフェン、アミスルブロム等のヘテロ環系殺菌剤;マンゼブ、マンネブ、メタム、メチラム、ファーバム、プロピネブ、チウラム、ジネブ、ジラム、ジエトフェンカルブ、イプロバリカルブ、ベンチアバリカルブイソプロピル、プロパモカルブ塩酸塩、チオファネートメチル、ピリベンカルブ(KUF−1204)等のカーバメート系殺菌剤;ボルドー液、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、水酸化第二銅、8−ヒドロキシキノリン銅等の銅剤;ドジン、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、グアザチン等のグアニジン系殺菌剤;カスガマイシン、ストレプトマイシン、ポリオキシン、オキシテトラサイクリン、バリダマイシンA等の抗生物質;その他、ビナパクリル、ジノカップ、ジノブトン、ジチアノン、イソプロチオラン、エジフェンホス、イプロベンホス、ホセチル、ホセチルアルミニウム、ピラゾホス、トルクロホスメチル、クロロタロニル、ジクロフルアニド、フルスルファミド、ヘキサクロロベンゼン、フサライド、ペンシクロン、キントゼン、シフルフェナミド、シモキサニル、ジメチリモール、エチリモール、フララキシル、メトラフェノン、スピロキサミン、アンバム、硫黄、石灰硫黄合剤、エクロメゾール、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、チアジアジン、テクロフタラム、トリアジン、ノニルフェノールスルホン酸銅、ヒドロキシイソキサゾール、フルオルイミド、ポリカーバメート、メタスルホカルブ、EDDP、IBP、トルフェンピラド等が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する殺菌活性を有する化合物としては、ストロビルリン系殺菌剤、アミド系殺菌剤、ヘテロ環系殺菌剤、カーバメート系殺菌剤、銅剤、グアニジン系殺菌剤、抗生物質、イソプロチオラン、シフルフェナミド、シモキサニル、フルオルイミド及びトルフェンピラドからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。中でも、シメコナゾール、アゾキシストロビン、フルトラニル、マンゼブ、ピリベンカルブ(KUF−1204)、クロロタロニル、塩基性硫酸銅、8−ヒドロキシキノリン銅、フルオルイミド、トルフェンピラド及びチオファネートメチルからなる群より選択される1種又は2種以上が特に好ましい。
【0029】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、種々の植物病害に対して各々単独で使用する場合に比べて幅広い殺菌スペクトラムを有するとともに相乗的な防除効果を有し、特に水稲、果樹、野菜、その他作物及び花卉の植物病害防除に適している。
【0030】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の使用対象病害としては糸状菌類病害、細菌類病害、ウイルス病病害等が挙げられる。糸状菌類病害としては、例えば、不完全菌類による病害(例えば、ボトリチス(Botrytis) 属病害、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属病害、フザリウム(Fusarium)属病害、セプトリア(Septoria)属病害、サルコスポラ(Cercospora)属病害、シュードサルコスポレラ(Pseudocercosporella)属病害、リンコスポリウム(Rhynchosporium)属病害、ピリキュラリア(Pyricularia)属病害、アルタナリア(Alternaria)属病害等);担子菌類による病害(例えば、ヘミレイア(Hemileia)属病害、リゾクトニア(Rhizoctonia)属病害、ウスティラゴ(Ustilago)属病害、ティフラ(Typhula)属病害、プッキニア(Puccinia)属病害等);子のう菌類による病害(例えば、ベンチュリア(Venturia)属病害、ポドスフェラ(Podosphaera)属病害、レプトスファエリア(Leptosphaeria)属病害、ブルメリア(Blumeria)属病害、エリシフェ(Erysiphe)属病害、ミクロドキュウム(Microdochium)属病害、スクレロチニア(Sclerotinia)属病害、ゲウマノマイセス(Gaeumannomyces)属病害、モニリニア(Monilinia)属病害、ウンシヌラ(Unsinula)属病害等);その他の菌類による病害(例えば、アスコクイタ(Ascochyta)属病害、フォマ(Phoma)属病害、ピシウム(Pythium)属病害、コルティシウム(Corticium)属病害、ピレノフォラ(Pyrenophora)属病害等)等が挙げられる。細菌類病害としては、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属病害、ザントモナス(Xanthomonas)属病害、エルウィニア(Erwinia)属病害等が挙げられる。ウイルス病病害としては、例えば、タバコモザイクウイルス等による病害等が挙げられる。
【0031】
糸状菌類病害の具体的病害としては、例えば、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、イネ紋枯病(Rhizoctonia solani)、イネごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、イネ苗立ち枯れ病(Rhizopus chinensis,Pythium graminicola,Fusarium graminicola,Fusarium roseum,Mucor sp.,Phoma sp.,Tricoderma sp.)、イネ馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、オオムギ及びコムギ等のうどんこ病(Blumeria graminis)、ナス等のうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、キュウリ等のうどんこ病(Sphaerotheca cucurbitae)、アズキ等のうどんこ病(Erysiphe pisi)及び他の宿主植物のうどんこ病、オオムギ及びコムギ等の眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、コムギ等の黒穂病(Urocystis agropyri)、オオムギ及びコムギ等の雪腐病(Microdochium nivalis,Pythium iwayamai,Typhla ishikariensis,Typhla incarnata,Sclerotinia borealis)、オオムギ及びコムギ等の赤かび病(Fusarium graminearum,Fusarium avenaceum,Fusarium culmorum,Microdochium nivalis)、オオムギ及びコムギ等のさび病(Puccinia recondita,Puccinia striiformis,Puccinia graminis)、オオムギ及びコムギ等の立枯病(Gaeumannomyces graminis)、エンバクの冠さび病(Puccinia coronata)、及び他の植物のさび病、キュウリ、イチゴ等の灰色かび病(Botrytis cinerea)、トマト、キャベツ等の菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、ジャガイモ、トマト等の疫病(Phytophthora infestans)及び他の植物の疫病、キュウリべと病(Pseudoperonospora cubensis)、ブドウべと病(Plasmopara viticola)等の種々の植物のべと病、リンゴ黒星病(Venturia inaequalis)、リンゴ斑点落葉病(Alternaria mali)、ナシ黒斑病(Alternaria kikuchiana)、カンキツ黒点病(Diaporthe citri)、カンキツそうか病(Elsinoe fawcetti)、テンサイ褐斑病(Cercospora beticola)、ラッカセイ褐斑病(Cercosporidium personatum)、ラッカセイ黒渋病(Cercospora personata)、コムギ葉枯れ病(Septoria tritici)、コムギふ枯れ病(Leptosphaeria nodorum)、オオムギ網斑病(Pyrenophora teres)、オオムギ斑葉病(Pyrenophora graminea)、オオムギ雲形病(Rhynchosporium secalis)、コムギ裸黒穂病(Ustilago nuda)、コムギなまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、シバの葉腐病(Rhizoctonia solani)、シバのダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)等が挙げられる。
【0032】
細菌類病害の具体的病害としては、Pseudomonas属による、例えば、キュウリ斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv.lachrymans)、トマト青枯病(Pseudomonas solanacearum)及びイネ籾枯細菌病(Pseudomonas glumae);Xanthomonas属による、例えば、キャベツ黒腐病(Xanthomonas campestris)、イネ白葉枯病(Xanthomonas oryzae)及びカンキツかいよう病(Xanthomonas citri);Erwinia属による、例えば、キャベツ軟腐病(Erwinia carotovora)等が挙げられる。
ウイルス病病害の具体的病害としては、タバコモザイク病(Tobacco mosaic virus)等が挙げられる。
【0033】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物を使用できる植物としては特に限定されるものではないが、例えば、穀類(例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、オートムギ、トウモロコシ、高粱等)、豆類(例えば、大豆、小豆、そら豆、えんどう豆、落花生等)、果樹・果実類(例えば、リンゴ、柑橘類、梨、ブドウ、桃、梅、桜桃、クルミ、アーモンド、バナナ、イチゴ等)、野菜類(例えば、キャベツ、トマト、ほうれん草、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン等)、根菜類(例えば、ニンジン、馬鈴薯、サツマイモ、大根、蓮根、かぶ等)、加工用作物類(例えば、綿、麻、コウゾ、ミツマタ、菜種、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、オリーブ、ゴム、コーヒー、タバコ、茶等)、瓜類(例えば、カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン等)、牧草類(例えば、オーチャードグラス、ソルガム、チモシー、クローバー、アルファルファ等)、芝類(例えば、高麗芝、ベントグラス等)、香料等用作物類(例えば、ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、胡椒、しょうが等)、花卉類(例えば、キク、バラ、蘭等)等が挙げられる。
【0034】
また、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、IPM(総合的有害生物管理)において活用することもできる。IPMには、例えば遺伝子組み換え作物(例えば、除草剤耐性作物、殺虫性タンパク産生遺伝子を組み込んだ害虫耐性作物、病害に対する抵抗性誘導物質産生遺伝子を組み込んだ病害耐性作物、食味向上作物、保存性向上作物、収量向上作物等)の導入、昆虫性フェロモン(例えば、ハマキガ類、ヨトウガ類の交信攪乱剤等)等のフェロモン剤の活用、天敵昆虫等の活用、化学農薬等の活用等が含まれ、これらを併用して有害生物を総合的に防除するものである。本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、前記化学農薬として活用することができる。
【0035】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、有効成分に他の成分を加えずそのまま用いても良いが、通常は農薬製剤上の常法に従い使用上都合の良い剤型に製剤して使用することが好ましい。
即ち、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と殺菌活性を有する化合物の1種又は2種以上とを、適当な不活性担体に、又は必要に応じて補助剤と一緒に適当な割合で配合して溶解、分離、懸濁、混合、含浸、吸着若しくは付着させて適宜の剤型、例えば、懸濁剤、乳剤、液剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤、粉剤、錠剤、パック剤等に製剤して使用することができる。
【0036】
本発明で使用できる不活性担体は固体又は液体の何れであっても良い。固体の担体になりうる材料としては、例えば、ダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣;粉砕合成樹脂等の合成重合体;粘土類(例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(例えば、タルク、ピロフィライト等)、シリカ類{例えば、珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン(含水微粉珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。)}、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム等の無機鉱物性粉末;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体;硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料;堆肥等を挙げることができ、これらは単独で若しくは二種以上の混合物の形で使用することができる。
【0037】
液体の担体になりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するものの他、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうることとなるものから選択され、例えば代表例として次に挙げる担体を例示できる。これらは単独で若しくは2種以上の混合物の形で使用され、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ケロシン、鉱油等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩素化ベンゼン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、ジイソプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレ−ト等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル等)、ジメチルスルホキシド、N− メチルピロリドン類等を挙げることができる。
【0038】
補助剤としては次に例示する界面活性剤、分散安定化、粘着及び/又は結合助剤、流動性改良剤、解こう剤、消泡剤、防腐剤等を挙げることができ、これらの補助剤を目的に応じて使用することができる。補助剤は、単独で用いてもよく、ある場合は二種以上の補助剤を併用して用いてもよく、又ある場合には全く補助剤を使用しなくてもよい。
界面活性剤は、例えば有効成分化合物の乳化、分散、可溶化及び/又は湿潤の目的のために使用することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルアリールスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸縮合物、リグニンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等が挙げられる。
分散安定化、粘着及び/又は結合助剤は、有効成分化合物の分散安定化を目的として、また粒子成形のための粘着及び/又は結合助剤として使用することができる。分散安定化、粘着及び/又は結合助剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、糠油、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0039】
流動性改良剤は、固体製品の流動性改良のために使用することができる。流動性改良剤としては、例えば、ワックス、ステアリン酸塩、燐酸アルキルエステル等が挙げられる。解こう剤は、懸濁性製品の分散解こう剤として使用することができる。解こう剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸縮合物、縮合燐酸塩等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、パラクロロメタキシレノール、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
更に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物には、必要に応じて機能性展着剤、ピペロニルブトキサイド等の代謝分解阻害剤等の活性増強剤、プロピレングリコール等の凍結防止剤、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の酸化防止剤、紫外線吸収剤等その他の添加剤等も加えることができる。
【0040】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分である、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類の含有量と殺菌活性を有する化合物の含有量の和としては、農園芸用殺菌剤組成物100質量部中、約0.01〜90質量部の範囲から適宜選択して使用すれば良く、例えば、農園芸分野で使用される各種製剤(乳剤、粉剤、水和剤、粒剤、顆粒水和剤、フロアブル剤等)とする場合は約0.01〜50質量部が適当である。好ましくは約1〜50質量部程度の範囲とすることが経済的である。その内訳としては、通常、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類1質量部に対して殺菌活性を有する化合物が約0.01〜1000質量部の範囲で配合され、殺菌スペクトラムの拡大や相乗効果を引き出すために、好ましくは約0.05〜100質量部の範囲であり、より好ましくは約0.1〜100質量部の範囲であり、更に好ましくは約0.1〜10質量部の範囲である。
【0041】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物を対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体に使用することによって、植物病害から作物を保護することができる。本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、該農園芸用殺菌剤組成物の有効量を用いて対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体を処理することにより使用される。対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体の「処理」には、農園芸用殺菌剤組成物の散布、塗布、対象植物が生育している土壌に対する散布、灌注等が含まれる。
【0042】
具体的には、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は種々の植物病害を防除するためにそのまま、又は水等で適宜希釈し、若しくは懸濁させた形で使用すれば良く、例えば果樹、穀類、野菜等において発生する植物病害に対しては植物の茎葉部に散布する他に、種子の薬剤への浸漬、種子粉衣、カルパー処理等の種子処理;土壌全層混和、作条施用、床土混和、セル苗処理、植え穴処理、株元処理、トップドレス、イネの箱処理、水面施用等、土壌又は栽培担体等に農園芸用殺菌剤組成物の有効量を施用して根から吸収させて使用することもできる。加えて、養液(水耕)栽培における養液への施用、くん煙あるいは樹幹注入等による使用もすることができる。
【0043】
植物の茎葉部への散布方法としては、乳剤、フロアブル剤等の液体製剤又は水和剤もしくは顆粒水和剤等の固形製剤を水で適宜希釈し、散布する方法、粉剤を散布する方法又はくん煙等が挙げられる。
【0044】
種子処理の方法としては、例えば、液状又は固体状の製剤を希釈又は希釈せずして液体状態にて種子を浸漬して薬剤を浸透させる方法、固形製剤又は液状製剤を種子と混和、粉衣処理して種子の表面に付着させる方法、樹脂、ポリマー等の付着性の担体と混和して種子にコーティングする方法、植え付けと同時に種子付近に散布する方法等が挙げられる。当該種子処理を行う「種子」とは、植物の繁殖に用いられる栽培初期の植物体を意味し、例えば、種子の他、球根、塊茎、種芋、株芽、むかご、鱗茎又は挿し木栽培等を挙げることができる。
【0045】
土壌又は栽培担体への施用方法としては、例えば、液体製剤を水に希釈又は希釈せずして植物体の株元又は育苗用苗床等に施用する方法、粒剤を植物体の株元又は育苗のための苗床等に散布する方法、播種前又は移植前に粉剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤等を散布し土壌全体と混和する方法、播種前又は植物体を植える前に植え穴、作条等に粉剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤等を散布する方法等が挙げられる。上記の「土壌」又は「栽培担体」とは、作物を栽培するための支持体、特に根を生えさせる支持体を示すものであり、材質は特に制限されないが、植物が生育しうる材質であれば良く、いわゆる土壌、育苗マット、水等であっても良く、具体的な素材としては例えば、砂、軽石、バーミキュライト、珪藻土、寒天、ゲル状物質、高分子物質、ロックウール、グラスウール、木材チップ、バーク、紙等であっても良い。
【0046】
水稲の育苗箱への施用方法において、剤型は、例えば播種時施用、緑化期施用、移植時施用などの施用時期により異なる場合もあるが、粉剤、顆粒水和剤、粒剤等の剤型で施用すれば良い。培土との混和によっても施用することができ、培土と粉剤、顆粒水和剤又は粒剤等との混和、例えば、床土混和、覆土混和、培土全体への混和等することができ、単に、培土と各種製剤を交互に層状にして施用してもよい。
【0047】
水田への施用方法としては、ジャンボ剤、パック剤、粒剤、顆粒水和剤等の固形製剤;フロアブル、乳剤等の液体状製剤を、通常は、湛水状態の水田に散布する。その他、田植え時には、適当な製剤をそのまま又は肥料等に混和して土壌に散布、注入することもできる。また、水口や灌漑装置等の水田への水の流入元に乳剤、フロアブル等の薬液を利用することにより、水の供給に伴い省力的に施用することもできる。
【0048】
畑作物においては、本発明の農園芸用殺菌剤組成物を用いて、播種から育苗期、生育期において、種子又は植物体に近接する栽培担体等の処理を行うことができる。畑に直接播種する植物においては、種子への直接処理の他、栽培中の植物の株元への処理が好適である。粒剤を用いて散布処理又は水に希釈又は希釈しない薬剤を液状にて潅注処理を行うことができる。粒剤を播種前の栽培担体と混和させた後、播種するのも好ましい処理である。
【0049】
移植を行う栽培植物の播種、育苗期の処理としては、種子への直接処理の他、育苗用苗床への、液状とした薬剤の潅注処理又は粒剤の散布処理が好ましい。また、定植時に粒剤を植え穴に施用したり、移植場所近辺の栽培担体に混和したりすることも好ましい処理である。
【0050】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は通常の剤型、例えば乳剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、液剤、粒剤、粉剤、薫煙剤等の剤型に製剤して使用すればよく、その施用量は、有効成分の配合割合、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、防除対象有害生物、対象作物等により異なるが、通常1アール当たり有効成分量として約0.1g〜1000gの範囲から適宜選択して施用すれば良く、好ましくは約1g〜500gの範囲が良い。種子への処理においては種子との比較で、種子100gに対して、有効成分量として約0.01g〜50gの範囲で使用することが可能であり、好ましくは有効成分量として約0.1g〜10gの範囲である。乳剤、水和剤等を水等で希釈して施用する場合、その施用濃度は通常約0.00001〜0.1%であり、粒剤、粉剤あるいは種子に処理する場合の液剤等は、通常希釈することなくそのまま施用すれば良い。
【0051】
また、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分である一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と殺菌活性を有する化合物とは各々単独で同時期に使用することにより、予め有効成分が混合された農園芸用殺菌剤組成物と同様の殺菌スペクトラムの拡大効果や、ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と殺菌活性を有する化合物との相乗効果を発揮させることができる。即ち、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類及び殺菌活性を有する化合物を各々単独で製剤化したものやその希釈液を、使用の現場において処理時に混用して施用してもよく、更に、別々に同時期にこれらを用いて植物の茎葉部、種子、栽培担体等を処理してもよい。なお、各々単独で別々に施用する場合、同時に施用してもよく、約7日程度の間隔を設けてもよいが、いずれか一方の有効成分が植物又は栽培担体に残存している時期に他方の有効成分を施用することが好ましく、上記の「同時期」とは、そのように両者が処理されている時期の少なくとも一部が重複することを含む概念であり、必ずしも全く同時に施用作業を行う必要はない。このような、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類及び殺菌活性を有する化合物の1種又は2種以上の有効量を用いて、該ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類及び殺菌活性を有する化合物各々単独で植物又は栽培担体を同時期に処理する植物病害の防除方法も、本発明の1つである。一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類及び殺菌活性を有する化合物の有効成分量としては、上述した農園芸用殺菌剤組成物におけるのと同様である。
【0052】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、更に防除対象病害虫、防除適期の拡大のため、或いは薬量の低減をはかる目的で他の農園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、生物農薬等と混合して使用することも可能であり、また、使用場面に応じて除草剤、植物成長調節剤、肥料等と混合して使用することもできる。
【0053】
かかる目的で使用する他の農園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤としては、例えば、エチオン、トリクロルホン、メタミドホス、アセフェート、ジクロルボス、メビンホス、モノクロトホス、マラチオン、ジメトエート、ホルモチオン、メカルバム、バミドチオン、チオメトン、ジスルホトン、オキシデプロホス、ナレッド、メチルパラチオン、フェニトロチオン、シアノホス、プロパホス、フェンチオン、プロチオホス、プロフェノホス、イソフェンホス、テメホス、フェントエート、ジメチルビンホス、クロルフェビンホス、テトラクロルビンホス、ホキシム、イソキサチオン、ピラクロホス、メチダチオン、クロロピリホス、クロルピリホス・メチル、ピリダフェンチオン、ダイアジノン、ピリミホスメチル、ホサロン、ホスメット、ジオキサベンゾホス、キナルホス、テルブホス、エトプロホス、カズサホス、メスルフェンホスDPS(NK−0795)、ホスホカルブ、フェナミホス、イソアミドホス、ホスチアゼート、イサゾホス、エナプロホス、フェンチオン、ホスチエタン、ジクロフェンチオン、チオナジン、スルプロホス、フェンスルフォチオン、ジアミダホス、ピレトリン、アレスリン、プラレトリン、レスメトリン、ペルメトリン、テフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、デルタメトリン、アクリナトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、ハルフェンプロックス、シラフルオフェン、フルシトリネート、フルバリネート、メソミル、オキサミル、チオジカルブ、アルジカルブ、アラニカルブ、カルタップ、メトルカルブ、キシリカルブ、プロポキスル、フェノキシカルブ、フェノブカルブ、エチオフェンカルブ、フェノチオカルブ、ビフェナゼート、BPMC(2−セコンダリーブチルフェニル−N−メチルカーバメート)、カルバリル、ピリミカーブ、カルボフラン、カルボスルファン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ、アルドキシカルブ、ジアフェンチウロン、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、ヘキサフルムロン、ノバルロン、ルフェヌロン、フルフェノクスロン、クロルフルアズロン、酸化フェンブタスズ、水酸化トリシクロヘキシルスズ、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、メトプレン、ハイドロプレン、ビナパクリル、アミトラズ、ジコホル、ケルセン、クロルベンジレート、フェニソブロモレート、テトラジホン、ベンスルタップ、ベンゾメート、テブフェノジド、メトキシフェノジド、ピリダリル、メタフルミゾン、フルベンジアミド、クロマフェノジド、プロパルギット、アセキノシル、エンドスルファン、ジオフェノラン、クロルフェナピル、フェンピロキシメート、トルフェンピラド、フィプロニル、テブフェンピラド、トリアザメート、エトキサゾール、ヘキシチアゾクス、硫酸ニコチン、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリド、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフラン、フルアジナム、ピリプロキシフェン、ヒドラメチルノン、ピリミジフェン、ピリダベン、シロマジン、TPIC(トリプロピルイソシアヌレート)、ピメトロジン、クロフェンテジン、ブプロフェジン、チオシクラム、フェナザキン、キノメチオネート、インドキサカルブ、ポリナクチン複合体、ミルベメクチン、アバメクチン、エマメクチン・ベンゾエート、スピノサッド、BT(バチルス・チューリンゲンシス)、アザディラクチン、ロテノン、ヒドロキシプロピルデンプン、塩酸レバミゾール、メタム・ナトリウム、酒石酸モランテル、ダゾメット、トリクラミド、バストリア又はモナクロスポリウム・フィマトパガム等を挙げることができる。
【0054】
同様に除草剤としては、例えば、グリホサート、スルホセート、グルホシネート、ビアラホス、ブタミホス、エスプロカルブ、プロスルホカルブ、ベンチオカーブ、ピリブチカルブ、アシュラム、リニュロン、ダイムロン、イソウロン、ベンスルフロンメチル、シクロスルファムロン、シノスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、アジムスルフロン、イマゾスルフロン、テニルクロール、アラクロール、プレチラクロール、クロメプロップ、エトベンザニド、メフェナセット、ペンディメタリン、ビフェノックス、アシフルオフェン、ラクトフェン、シハロホップブチル、アイオキシニル、ブロモブチド、アロキシジム、セトキシジム、ナプロパミド、インダノファン、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラフルフェンエチル、イマザピル、スルフェントラゾン、カフェンストロール、ベントキサゾン、オキサジアゾン、パラコート、ジクワット、ピリミノバック、シマジン、アトラジン、ジメタメトリン、トリアジフラム、ベンフレセート、フルチアセットメチル、キザロホップ・エチル、ベンタゾン又は過酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0055】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが発明の要旨を超えない限りそれらに限定されるものではない。実施例中、「%」は、特に断らない限り「質量%」を表す。
【実施例】
【0056】
[製造例1]
N−(4’−クロロビフェニル−2−イル)−3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボキサミド(第1表の化合物No.6)の製造
4’−クロロビフェニル−2−イルアミン(0.3g;1.5mmol)及び3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボン酸クロリド(0.32g;1.5mmol)のTHF(テトラヒドロフラン)(10mL)溶液にトリエチルアミン(0.2g;2mmol)を加え、室温にて2時間撹拌した。水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=3:1(V/V))で精製して表題化合物(0.47g)を得た。
収率:85%
物性:融点 144〜145℃
【0057】
[製造例2]
N−(4’−トリフルオロメトキシビフェニル−2−イル)−3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボキサミド(第1表の化合物No.14)の製造
N−(2−ブロモフェニル)−3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボキサミド(0.48g;1.4mmol)及び4−トリフルオロメトキシフェニルボロン酸(0.31g;1.5mmol)のトルエン10mL溶液に炭酸ナトリウム(0.6g;5.7mmol)の水5mL溶液を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g;0.09mmol)を添加した。アルゴン気流下、6時間加熱還流した後、室温にまで冷却し酢酸エチルと水を加え分液した。有機層を水及び飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=4:1(V/V))で精製して表題化合物(0.43g)を得た。
収率:70%
物性:融点 138〜140℃
【0058】
[製造例3]
N−(3’,4’−ジフルオロビフェニル−2−イル)−3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボキサミド(第1表の化合物No.21)の製造
3’,4’−ジフルオロビフェニル−2−イルアミン(1g;4.9mmol)及び3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボン酸メチル(1.06g;5.1mmol)の混合溶液に28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(2.1g;10.9mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。酢酸エチルと水を加え分液し、有機層を水及び飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=4:1(V/V))で精製して表題化合物(1.5g)を得た。
収率:77%
物性:融点 116〜117℃
【0059】
[製造例4]
N−(3’−フルオロ−4’−ジフルオロメチルビフェニル−2−イル)−3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボキサミド(第1表の化合物No.63)の製造
3’−フルオロ−4’−ジフルオロメチルビフェニル−2−イルアミン(1.14g;5.0mmol)及び3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボン酸メチル(1.06g;5.1mmol)の混合溶液に28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(2.1g;10.9mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。酢酸エチルと水を加え分液し、有機層を水及び飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=4:1(V/V))で精製して表題化合物(1.6g)を得た。
収率:80%
物性:融点 111℃
【0060】
以下に本発明の代表的な製剤例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製剤例中、部とあるのは質量部を示す。
【0061】
[製剤例1]
第1表記載の化合物 5部
アゾキシストロビン 5部
キシレン 70部
N−メチルピロリドン 10部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルと
アルキルベンゼンスルホン酸カルシウムとの混合物 10部
以上を均一に混合溶解して乳剤とする。
【0062】
[製剤例2]
第1表記載の化合物 1部
チオファネートメチル 2部
クレー粉末 82部
珪藻土粉末 15部
以上を均一に混合粉砕して粉剤とする。
【0063】
[製剤例3]
第1表記載の化合物 2部
クロロタロニル 3部
ベントナイトとクレーの混合粉末(混合比 ベントナイト:クレー=30:70(質量比))
90部
リグニンスルホン酸カルシウム 5部
以上を均一に混合し、適量の水を加えて混練し、造粒、乾燥して粒剤とする。
【0064】
[製剤例4]
第1表記載の化合物 5部
塩基性硫酸銅 15部
カオリンと合成高分散珪酸(混合比 カオリン:合成高分散珪酸=85:15(質量比))
75部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルと
アルキルベンゼンスルホン酸カルシウムとの混合物 5部
以上を均一に混合粉砕して水和剤とする。
【0065】
[製剤例5]
第1表記載の化合物 2部
フルオルイミド 8部
ルノックス1000C(商標名、東邦化学社) 5部
カープレックス#80D(商標名、塩野義製薬社) 3部
エチレングリコール 8部
水 54部
以上を混合分散させ、得られたスラリー状混合物をダイノーミル(商標名、WAB社)で湿式粉砕した後、別にあらかじめ混合溶解しておいたキサンタンガム1%水溶液20部を加えて均一に混合し、有効成分10%を含有するフロアブル剤とする。
【0066】
次に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物が各々単剤で使用する場合に比べて、特段の効果を表すことを試験例で示す。
【0067】
[試験例1]イネいもち病防除効果試験
所定濃度の薬液50mlを調製し、ポットで栽培した5葉期のイネ(品種:金南風)に茎葉散布した。散布翌日に、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種6日後に下記の基準に従って発病指数を調査し、下記式1に従って防除価を求めた。結果を第2表に示す。尚、無処理区の発病指数は2.4であった。
【0068】
発病指数の基準
0 : 発病なし
1 : 病斑面積率1〜10%
2 : 病斑面積率11〜20%
3 : 病斑面積率21〜30%
4 : 病斑面積率31〜40%
5 : 病斑面積率41〜50%
6 : 病斑面積率51〜60%
7 : 病斑面積率61〜70%
8 : 病斑面積率71〜80%
9 : 病斑面積率81〜90%
10: 病斑面積率91〜100%
【0069】
【数1】

【0070】
また、下記式2のコルビーの計算式によって算出したコルビーの期待値を用いて相乗効果の有無を評価した。一般に、与えられた2種類の有効成分を混合して処理した場合に、実際に測定された効果が下記のコルビーの式で計算されるコルビーの期待値(E)(二種の有効成分の組み合わせに期待される防除価(%)を示すことになる。)よりも大きいと、2種の有効成分の組み合わせによる作用が相乗的であると判定される。
【数2】


(式中、Xは一方の有効成分の防除価(%)を、Yは他方の有効成分の防除価(%)を表す。)
【0071】
【表4】

【0072】
[試験例2]トマト疫病防除効果試験
所定濃度の薬液50mlを調製し、ポットで栽培した6葉期のトマト(品種:ポンテローザ)に茎葉散布した。散布翌日にトマト疫病菌(Phytophthora infestans)の遊走子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種7日後に試験例1の判定基準に従って防除価を判定した。結果を第3表に示す。尚、無処理区の発病指数は10.0であった。
【0073】
【表5】

【0074】
[試験例3]キュウリべと病防除効果試験
所定濃度の薬液50mlを調製し、ポットで栽培した1葉期のキュウリ(品種:四葉)に茎葉散布した。散布翌日にキュウリべと病菌(Psuedoperonospora cubensis) の遊走子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種8日後に試験例1の判定基準に従って防除価を判定した。結果を第4表に示す。尚、無処理区の発病指数は8.3であった。
【0075】
【表6】

【0076】
[試験例4]
ブドウべと病防除効果試験
所定濃度の薬液50mlを調製し、ポットで育成したブドウ苗木(品種:ピオーネ)に茎葉散布した。散布翌日にブドウべと病菌(Plasmopara viticola)に罹病したブドウ葉から得られた遊走子のう懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種6日後に試験例1の判定基準に従って防除価を判定した。結果を第5表に示す。尚、無処理区の発病指数は5.0であった。
【0077】
【表7】

【0078】
[試験例5]
オオムギうどんこ病防除効果試験
所定濃度の薬液50mlを調製し、ポットで育苗した1葉期のオオムギ(品種:関東6号)に茎葉散布した。散布翌日にオオムギうどんこ病菌(Blumeria graminis hordei)に罹病したオオムギ葉から得られた胞子を振りかけて接種し、温室内で保持した。接種7日後に試験例1の判定基準に従って防除効果を判定した。結果を第6表に示す。尚、無処理区の発病指数は5.0であった。
【0079】
【表8】

【0080】
[試験例6]
キュウリ灰色かび病防除効果試験
所定濃度の薬液50mlを調製し、ポットで育苗した1葉期のキュウリ(品種:四葉)に茎葉散布した。散布翌日にPSA培地で培養して得られたキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の胞子懸濁液を直径6mmのペーパーディスクに含浸させてキュウリ子葉に置床接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種6日後に式3に従って防除価を求めた。結果を第7表に示す。尚、無処理区の病斑直径は25mmであった。
【数3】

【0081】
【表9】

【0082】
[試験例7]キュウリ褐斑病防除効果試験
所定濃度の薬液を調製し、ポットで栽培した3葉期のキュウリ(品種:四葉)に茎葉散布した。散布翌日にキュウリ褐斑病菌(Corynespora cassicola)の胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種8日後に試験例1の判定基準に従って防除価を判定した。結果を第8表に示す。尚、無処理区の発病指数は5.3であった。
【0083】
【表10】

【0084】
[試験例8]キュウリ炭疽病防除効果試験
所定濃度の薬液を調製し、ポットで栽培した2葉期のキュウリ(品種:四葉)に茎葉散布した。散布翌日にキュウリ炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare)の胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種8日後に試験例1の判定基準に従って防除価を判定した。結果を第9表に示す。尚、無処理区の発病指数は4.4であった。
【0085】
【表11】

【0086】
[試験例9]キュウリ炭疽病防除効果試験
所定濃度の薬液を調製し、ポットで栽培した3葉期のコムギ(品種:農林61号)に茎葉散布した。散布翌日にコムギふ枯病菌(Leptosphaeria nodorum)の胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種11日後に試験例1の判定基準に従って防除価を判定した。結果を第10表に示す。尚、無処理区の発病指数は3.4であった。
【0087】
【表12】

【0088】
[試験例10]イネ紋枯病防除効果試験
所定濃度の薬液を調製し、ポットで栽培した8葉期のイネ(品種:金南風)に茎葉散布した。散布翌日にイネの株元にイネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)の菌核を接種し、25℃多湿条件下で保持した。接種7日後に接種部位からの病斑高を計測し、下記の式4に従って防除価を判定した。結果を第11表に示す。尚、無処理区の病斑高は14cmであった。
【数4】

【0089】
【表13】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、地球環境への負荷が少なく、種々の植物病害に対して広い殺菌スペクトラムを有し、低薬量で優れた防除効果を示すため有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

{式中、Xはハロ(C1−C3)アルキル基を示す。
Yは水素原子;又はハロゲン原子を示す。
Rはハロゲン原子;(C1−C6)アルキル基;ハロ(C1−C6)アルキル基;(C1−C6)アルコキシ基;ハロ(C1−C6)アルコキシ基;(C1−C6)アルキルチオ基;ハロ(C1−C6)アルキルチオ基;(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロ(C1−C6)アルキルスルフィニル基;(C1−C6)アルキルスルホニル基;ハロ(C1−C6)アルキルスルホニル基;(C1−C6)アルコキシカルボニル基;(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基;フェニル基;1以上の同一又は異なっても良いハロゲン原子により置換された置換フェニル基;フェノキシ基;1以上の同一又は異なっても良いハロゲン原子により置換された置換フェノキシ基;ピリジルオキシ基;1以上の同一又は異なっても良いハロゲン原子又はハロ(C1−C6)アルキル基により置換された置換ピリジルオキシ基;ピリミジルオキシ基;又は1以上の同一又は異なっても良い(C1−C3)アルコキシ基により置換された置換ピリミジルオキシ基を示し、nは1〜5の整数を示す。nが2〜5の整数である場合、Rは同一又は異なっても良く、また、隣り合う2つのRが一緒になって(C3−C5)アルキレン基;(C2−C4)アルキレンオキシ基;(C1−C3)アルキレンジオキシ基;又はハロ(C1−C3)アルキレンジオキシ基を示すことができる。}で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類と、殺菌活性を有する化合物の1種又は2種以上とを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項2】
ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類が、Xがフルオロメチル基;ジフルオロメチル基;又はトリフルオロメチル基であり、Yが水素原子であり、Rがハロゲン原子;ハロ(C1−C6)アルキル基;又はハロ(C1−C6)アルコキシ基であり、nが1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、Rは同一又は異なっていても良い化合物である、請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項3】
ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類が、Xがトリフルオロメチル基であり、Yが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、nが1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、Rは同一又は異なっていても良い化合物である、請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項4】
殺菌活性を有する化合物がアゾール系殺菌剤、ストロビルリン系殺菌剤、アミド系殺菌剤、ヘテロ環系殺菌剤、カーバメート系殺菌剤、銅剤、グアニジン系殺菌剤、抗生物質、イソプロチオラン、シフルフェナミド、シモキサニル、フルオルイミド及びトルフェンピラドからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1乃至3いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項5】
殺菌活性を有する化合物がシメコナゾール、アゾキシストロビン、フルトラニル、マンゼブ、ピリベンカルブ(KUF−1204)、クロロタロニル、塩基性硫酸銅、8−ヒドロキシキノリン銅、フルオルイミド、トルフェンピラド及びチオファネートメチルからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1乃至3いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項6】
ピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類1質量部に対して、殺菌活性を有する化合物が0.1〜100質量部の割合で配合されてなる請求項1乃至5いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物の有効量を用いて対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体を処理することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物の使用方法。

【公開番号】特開2009−23994(P2009−23994A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154563(P2008−154563)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】