説明

農園芸用毒餌剤

【課題】種々の害虫に対して優れた防除効果を示す農園芸用毒餌剤を提供する。
【解決手段】害虫に誘引性のある可食性担体(例:米糠等)中に、一般式(I)
【化1】


(式中、R1はC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルチオC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルスルフィニルC1-C6アルキル基又はC1-C6アルキルスルホニルC1-C6アルキル基を示し、Xは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子を示し、nは1又は2を示し、Yは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロC1-C6アルコキシ基を示し、mは2又は3を示す。)で示される有効成分としてフタルアミド誘導体を含有する農園芸用毒餌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフタルアミド誘導体を有効成分として含有してなる毒餌剤及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より毒餌剤としては、誘引成分である担体(米糠等)中に有効成分として有機燐系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤及びピレスロイド系殺虫剤を含有させたものが、ネキリムシ、ハスモンヨトウ、コオロギ等の防除に使用されている。
本発明で用いられるフタルアミド誘導体は、殺虫活性を有する公知化合物であり(例えば、特許文献1又は2参照。)、他の殺虫剤と混用することにより相乗的な殺虫活性を示すことが知られている(例えば、特許文献3参照。)。使用目的に応じて適当な剤型に調整して使用できること、また、貯穀害虫、家屋害虫、衛生害虫、森林害虫等にベイト剤(毒餌剤)として使用できることが文献に記載されている(例えば、特許文献1又は2参照。)。しかし、毒餌剤としての具体的製法や施用方法については開示されておらず、特に農園芸分野の害虫を対象とした農園芸用毒餌剤としての使用については記載も示唆もない。
【0003】
【特許文献1】特開平11−240857号公報
【特許文献2】特開2001−131141号公報
【特許文献3】特開2003−12415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術において、有機燐剤及びカーバメート剤は、有効成分としての安定性が充分でなく効果持続性が短いこと、特有の臭いによって対象害虫が毒餌剤を忌避するため薬剤の取りこみが十分でないこと、抵抗性を示す害虫が出現していることから効果は必ずしも十分ではないこと、哺乳類や鳥類等他の動物に対する毒性も高いため誤摂取による事故の危険もあること等の課題がある。ピレスロイド剤は、忌避性を示すため毒餌剤としては薬剤の取りこみが十分でないこと、抵抗性を示す害虫が出現しており効果は必ずしも十分ではないこと、対象害虫以外の生物に対する毒性(特に魚毒性)が高いこと等の課題を有している。
よって、安全で効果の高い毒餌剤、例えば、農園芸作物を土壌等に生息する害虫等から守るために、害虫等に対しては忌避作用が無く、低薬量で高い効果を持続し、既存薬剤に抵抗性を示す害虫にも高い効果を示し、かつ哺乳類、鳥類や魚類等目的とする害虫以外の生物に対する毒性の低い、農園芸用毒餌剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者等はフタルアミド誘導体を害虫に誘引性のある担体中に、有効成分として含有させたところ、既存薬剤に抵抗性を示す害虫を含め、各種害虫に対して優れた誘因・喫食性を有し(忌避性がなく)、かつ致死効力の高いこと、更に、通常の農薬製剤の散布等と比して、単位施用面積当たりの施用量が極めて低薬量であっても高い害虫防除効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、害虫に誘引性のある担体に一般式(I)
【化1】

(式中、R1はC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルチオC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルスルフィニルC1-C6アルキル基又はC1-C6アルキルスルホニルC1-C6アルキル基を示し、Xは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子を示し、nは1又は2を示し、Yは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロC1-C6アルコキシ基を示し、mは2又は3を示す。)で示されるフタルアミド誘導体を有効成分として含有してなる毒餌剤及びその使用方法並びに害虫の防除方法に関し、特に農園芸用毒餌剤に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、フタルアミド誘導体の一般農薬粒剤を処理しても十分な効果が認められない条件で、単位面積あたりの施用量で比較すると、その約20分の1の薬量でも優れた効果を発揮するものである。フタルアミド誘導体にとって本発明は薬量を極めて低薬量化できる技術である。また、効果持続性面において、従来の農園芸用毒餌剤よりも明らかに優れ、従来の農園芸用毒餌剤が抵抗性を示す種々害虫にも優れた効果を示し、哺乳類や鳥類や魚類等他の動物に対する安全性面においても従来品よりも優れた農園芸用毒餌剤として有用である。更に、本発明の毒餌剤は、作物に通常散布する場合に比べ、一般的に作物への薬剤の残留が少なくなるという利点を有し、減農薬という要望にも応えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフタルアミド誘導体の一般式(I)の定義において「ハロゲン原子」とは塩素原子、臭素原子、沃素原子又はフッ素原子を示し、「C1-C6 アルキル基」とは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6個のアルキル基を示す。「ハロC1-C6 アルキル基」とは、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、1,2,2,2,−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基等の同一又は異なっても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6個のアルキル基を示す。「ハロC1-C6アルコキシ基」とは、例えば、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基等の同一又は異なっても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6個のアルコキシ基を示す。
【0008】
一般式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物としてR1がC1-C6アルキル
基、C1-C6アルキルチオC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルスルフィニルC1-C6アルキル基又はC1-C6アルキルスルホニルC1-C6アルキル基を示し、Xがハロゲン原子を示し、nが1を示し、Yが同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロC1-C6アルコキシ基を示し、mが2又は3を示すものが挙げられ、特に好ましい化合物としてN2 −(1,1−ジメチル−2−メチルチオエチル)−3−ヨード−N1 −{2−メチル−4−[1,2,2,2,−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}フタルアミド、N2 −(1,1−ジメチル−2−メチルスルホニルエチル)−3−ヨード−N1 −{2−メチル−4−[1,2,2,2,−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}フタルアミド、N2 −(1,1−ジメチル−2−メチルスルフィニルエチル)−3−ヨード−N1 −{2−メチル−4−[1,2,2,2,−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}フタルアミド、3−
ヨード−N1−{2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}−N2−(1−メチル−2−メチルスルホニルエチル)フタルアミド、3−クロロ−N1−{2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}−N2−(1−メチル−2−メチルスルホニルエチル)フタルアミド、3−ブロモ−N1−{2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}−N2−(1−メチル−2−メチルスルホニルエチル)フタルアミド又は3−ヨード−N1−{2−メチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}−N2−(1−メチル−2−メチルスルフィニルエチル)フタルアミドが挙げられる。
【0009】
本発明において用いられる有効成分化合物のフタルアミド誘導体は特開平11−240857号公報又は特開2001−131141号公報等に記載の公知化合物であり、該公報の記載に準じて製造することができる。これらのフタルアミド誘導体は、新規系統の殺虫性化合物で、既存剤に抵抗性を示す害虫に対しても有効であり、急性毒性は普通物レベル、魚毒性はA類であることから、従来技術の課題を解決するための性能を有している化合物と言える。
第1表に代表的な化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特開平11−240857号公報及び特開2001−131141号公報に開示されている化合物を例示することができる。また、本発明において用いられる有効成分化合物のフタルアミド誘導体は、その構造式中に1つ又は複数個の不斉炭素原子又は不斉中心を含む場合があり、2種以上の光学異性体及びジアステレオマーが存在する場合もあり、本発明は各々の光学異性体及びそれらが任意の割合で含まれる混合物をも全て包含するものである。尚、表中、「n」はノルマルを、「i」はイソを、「t」はターシャリーを示す。
【0010】
【表1】

【0011】
有効成分の使用量は、対象害虫の種類にもよるが、施用有効成分量として約0.1〜3
00グラム/10アール程度である。
本発明の毒餌剤中の有効成分としてのフタルアミド誘導体の含有量は、使用する殺虫活性成分の殺虫活性や対象害虫等を考慮して適宜決めることができるが、下限量は通常0.01重量%より多くが必要であり、好ましくは0.1重量%程度以上である。上限量は特に制限は無いが、経済性や求められる残効性や製剤物性等により変化し、約10重量%程度が好ましく、5重量%程度以下がより好ましい。
【0012】
誘引・可食性担体としては、米糠を代表的な例として挙げることができるが、これに限定されたものではなく、例えば、デンプン類、小麦粉、トウモロコシ粉、米粉、パン粉、ポテト等の穀物粉類、フスマ、酒粕、ビール粕、おから、魚粕、油粕、茸類栽培後の培地等の食品産業廃棄物、サナギ粉、オキアミ、牛や豚肉粉等の動物性粉末、砂糖、ブドウ糖、蜂蜜、糖蜜、水飴等の糖質、大豆油、菜種油、ゴマ油、小麦胚芽油等の植物精油、酵母等を単独あるいは組み合わせて用いることができる。これらの中で、米糠、酒粕等は特に好ましい。
【0013】
本発明の毒餌剤は、上記可食性担体を水等の適当な溶媒を加えて混練し、粒剤、錠剤等の適当な剤型に成型した後、有効成分であるフタルアミド誘導体を含む溶液を含浸させた後、再度乾燥することにより製造できる。また、最初から上記可食性担体にフタルアミド誘導体を加えて、常法によって粒剤、錠剤等の適当な剤型に成型して製造することもできる。
【0014】
また、必要に応じて酸化防止剤、保存料、誤食防止剤、その他害虫に対する誘因性を補強するための香料等を添加してもよい。ここで酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、dl−α−トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチック酸、メチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、グアヤク脂、L−シスチィン塩酸塩等が挙げられ、保存料としては、たとえば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、ジフェニル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン等を挙げることができる。また誤食防止剤としては、例えば、トウガラシ末、アマランス、アマランスアルミニウムレーキ、エリスロシン、エリスロシンアルミニウムレーキ、ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、アシドレッド、タートラジン、タートラジンアルミニウムレーキ、サンセットイエローFCFアルミニウムレーキ、ファストグリーンFCF、ファストグリーンFCFアルミニウムレーキ、ブリリアントブルーFCF、ブリリアントブルーFCFアルミニウムレーキ、インジゴカルミン、インジゴカルミンアルミニウムレーキ、β−カロチン、銅クロロフィル等が挙げられる。また、香料としてはたとえばチーズ香料、バター香料、ピーナッツ香料、ピーチ香料、ストロベリー香料、ミルク香料等を例示することができる。
【0015】
本発明の毒餌剤は、フタルアミド誘導体以外の有効成分として有機燐系殺虫性化合物、カーバメート系殺虫性化合物、ピレスロイド系殺虫性化合物、ネオニコチノイド系殺虫性化合物、昆虫幼若ホルモン様化合物、昆虫キチン質形成阻害化合物や殺虫活性を有する天然物等を添加して使用することもできる。また、代謝阻害剤等の協力剤(活性強化剤)等を添加することもできる。
【0016】
使用しうる有機燐系殺虫性化合物の具体例としては、例えば、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェニトロチオン、フェンチオン、マラチオン、ピリミホスメチル、プロチオホス、ピリダフェンチオン、イソキサチオン、トリクロルホン等が
、カーバメート系殺虫性化合物の具体例としては、例えば、BPMC、エチオフェンカーブ、MPMC、プロポキサー、NAC(カルバリル)、XMC等が、ピレスロイド系殺虫性化合物の具体例としては、例えば、サイパーメスリン、デルタメスリン、フェンプロパスリン、フェンバレレート、ペルメトリン、シフルスリン、トラロメスリン、フルサイスリネート、ビフェノトリン、サイハロスリン、シクロプロトリン、フルバリネート、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、テフルトリン等、ネオニコチノイド系殺虫性化合物の具体例としては、例えば、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド、ジノテフラン等がそれぞれ挙げられる。昆虫幼若ホルモン様化合物の具体例としては、例えば、メトプレン、ピリプロキシフェン、フェノキシカーブ等、昆虫キチン質形成阻害化合物の具体例としては、例えば、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、クロルフルアズロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ノバルロン、シロマジン、ブプロフェジン等、その他系統の殺虫性化合物の具体例としては、例えば、フィプロニル、クロルフェナピル、エマメクチンベンゾエート、アバメクチン、テブフェノジド、メトキシフェノジド、クロマフェノジド、スピノサド、インドキサカルブ、ピリダリル、メタフルミゾン、SI−0009(開発コード)、DKI−0001(開発コード)、ヒドラメチルノン、メタアルデヒド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の毒餌剤は、フタルアミド誘導体以外の有効成分としてさらに昆虫寄生菌を添加することができ、例えば、メタリジウム属(Metarhizium)のメタリジウム アニソプリアエ(Metarhizium anisopliae)、及びボウベリア属(Beauveria)のボウベリア バッシアーナ(Beauveria bassiana)等を挙げることができる。
【0018】
本発明の毒餌剤は、農園芸用害虫、森林・木材用害虫、畜産用害虫、衛生用害虫等の害虫等の種々の害虫に対して優れた防除効果を示し、例えば下記に示す代表的な害虫に対し有効に作用するが、これら以外の害虫にも使用でき、また土壌表面又は表層近くで活動する全ての害虫に対しても使用できる。害虫の例としては以下のような害虫を例示することができる。
鱗翅目、例えばカブラヤガ(Agrotis segetum)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、オオカブラヤガ(Agrotis tokionis)、センモンヤガ(Agrotis exexclamationis)、シロモンヤガ(Xestia c-nigrum)、オオバコヤガ(Diarsia canescens)、クロクモヤガ(Hermonassa cecilia)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、ヘリオチス種(Heliothis spp.)、タマナギンウワバ(Autographa nigrisigna)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、モンシロチョウ(Pieris rapae)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)、スジキリヨトウ(Spodoptera depravata)等、
【0019】
鞘翅目、例えばコガネムシ科のアノマラ属(Anomala spp.)、マラデラ属(Maladera spp.)、セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)、ナガチャコガネ(Heptophylla picea)、ウスチャコガネ(Phyllopertha diversa)、マメコガネ(Popilla japonica)、トビイロムナボソコメツキ(Agriotes ogurae)、カンシャクシコメツキ(Melanotus okinawenisis)、ハムシ科のディアブロティカ属(Diabrotica spp.)、シバオサゾウムシ(Sphenophorus venatus)、ゾウムシ科のセプティカス属(Scepticus spp.)等、双翅目、例えばゴボウネモグリバエ(Ophiomyia lappivora)、チビクロバネキノコバエ(Bradisia agrestis)、タマネギバエ(Delia antiqua)、ダイコンバエ(Delia floralis)、タネバエ(Hylemya platura)、ジクラノプチカ属(Dicranoptycha spp.)等、腹足綱動物に属するナメクジ類、カタツムリ類等、甲殻綱動物に属するオカダンゴムシ等。
特に、鱗翅目害虫の幼虫の総称であるネキリムシ類に対して優れた防除効果を有する。中でも、ヤガ類、ヨトウガ類の老齢幼虫は一般に薬剤防除が困難であり、本剤の優れた効果が特徴的に発揮される。また、本発明の毒餌剤は有機燐系殺虫剤、カーバメート系殺虫
剤又はピレスロイド系殺虫剤等の薬剤に抵抗性を有する害虫に対しても優れた効果を有し、特に薬剤抵抗性のネキリムシ類に対して卓越した効果を有する。
森林・木材害虫用、畜産用又は衛生用害虫としては例えば、ヤマトアブ等のアブ科、イエバエ等のイエバエ科、ウマバエ等のウマバエ科、ウシバエ等のウシバエ科、オオキモンノミバエ等のノミバエ科、シナハマダラカ、ヒトスジシマカ等のカ科、ネコノミ、イヌノミ等のヒトノミ科、ヤマトマダニ等のマダニ科、モンシロドクガ等のドクガ科、コクゾウムシ等のオサゾウムシ科、キイロスズメバチ等のスズメバチ科、ヒトノミ等のヒトノミ科、チャバネゴキブリ等のチャバネゴキブリ科、ワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ等のゴキブリ科、ケジラミ等のケジラミ科、ヤマトシロアリ、イエシロアリ等のミゾガシラシロアリ科、シュルツェマダニ等のマダニ科、イエダニ等のオオサシダニ科等の森林・木材用、畜産用又は衛生用害虫に対しても効果を有するものである。
【実施例】
【0020】
以下に実施例につき具体的に示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
製造例
米糠75重量%、蒸留水25重量%を混合し、押し出し造粒機(造粒径2.5mm)で造粒し、乾燥(50℃、6時間)、整粒(粒長:3〜8mm)工程を経て、担体を得た。本担体に化合物No.25を0.1重量%含浸させた(担体1gにつき化合物No.25の2000ppm水希釈液(防腐剤として、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(商品名:ケーソン)を0.05%添加)0.5mlの割合で含浸させた。)。その後再度乾燥(50℃、6時間)工程を経て、本発明の毒餌剤を得た。本製造例で得た毒餌剤を用いて以下の試験を行った。
製剤参考例(通常剤型の処方)
化合物No.25 1部
ベントナイトとクレーの混合粉末 94部
リグニンスルホン酸カルシウム 5部
以上を均一に混合し、適量の水を加えて混練し、造粒、乾燥して粒剤とした。得られた粒剤を、以下の試験に用いた。
【0021】
試験例1. 化合物No.25における毒餌剤の通常剤型(粒剤)に対する優位性
ビニールハウス内の畑地を1m2(1×1m)毎に高さ30cmのプラスチック製の板で囲い、その中にキャベツの苗25株を移植し、製造例で製造した毒餌剤を3又は6kg/10aの割合で土壌表面に均一に散粒した。散粒後、作物にタマナヤガの6令幼虫20頭を放虫した。放虫14日後にキャベツ苗の欠株率を調査し、下記数式により、防除率を算出した。この試験は2連で行った。その結果を第2表に示す。
比較のため、製剤参考例で得た非可食性担体による通常剤型(一般農薬粒剤)及びNAC毒餌剤(カーバメート系殺虫剤)について同様に試験した。
[数1]
防除率=100−(処理区の欠株率/無処理区の欠株率)×100
【0022】
【表2】

【0023】
試験例2. 有機燐系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤との効果持続性の比較
ビニールハウス内の畑地を1m2(1×1m)毎に高さ30cmのプラスチック製の板で囲い、その中にキャベツの苗25株を移植し、製造例で製造した毒餌剤3kg/10aを土壌表面に均一に散粒した。散粒直後及び14日後にカブラヤガの6令幼虫30頭を放虫した。放虫14日後にキャベツ苗の欠株率を調査し、試験例1と同様にして防除率を算出した。この試験は2連で行った。
比較のため、トリクロルホン毒餌剤(有機燐系殺虫剤)、NAC毒餌剤(カーバメート系殺虫剤)、ペルメトリン毒餌剤(ピレスロイド系殺虫剤)について同様に試験した。
その結果を第3表に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
試験例3. 大規模試験でのカブラヤガに対する効果
ビニールハウス内の畑地を15m2(6×2.5m)毎に高さ30cmのプラスチック製の板で囲い、その中にキャベツの苗63株を移植し、製造例で製造した毒餌剤4kg/10a(対照のNAC毒餌剤は6kg/10a)を土壌表面に均一に散粒後、カブラヤガの5〜6令幼虫35頭を放虫した。放虫7日、14日、20日後にキャベツ苗の欠株率を調査し、試験例1と同様に防除率を算出した。この試験は2連で行った。その結果を第4表に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
試験例4. 有機燐系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤抵抗性系統ハスモンヨトウに対する効果
ビニールハウス内の畑地を1m2(1×1m)毎に高さ30cmのプラスチック製の板で囲い、その中にキャベツの苗25株を移植し、製造例で製造した毒餌剤3kg/10aを土壌表面に均一に散粒後、ハスモンヨトウの5〜6令幼虫80頭を放虫した。放虫14日後にキャベツ苗の欠株率を調査し、試験例1と同様に防除率を算出した。この試験は2連で行った。
同様にして他の毒餌剤についても試験した。これらの結果を第5表に示す。
【0028】
【表5】

【0029】
試験例5. 有機燐系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤抵抗性系統オオタバコガに対する効果
ビニールハウス内の畑地を1m2(1×1m)毎に高さ30cmのプラスチック製の板で囲い、その中にキャベツの苗25株を移植し、製造例で製造した毒餌剤4kg/10a土壌表面に均一に散粒後、オオタバコガの5令幼虫20頭を放虫した。放虫5日後に区内の生存虫数を調査し、下記数式により、防除率を算出した。この試験は2連で行った。
同様にして他の毒餌剤についても試験した。これらの結果を第6表に示す。
[数2]
防除率=100−(処理区の生存虫数/無処理区の生存虫数)×100
【0030】
【表6】

【0031】
本発明の毒餌剤は、第2表に示す通り、本発明の有効成分であるフタルアミド誘導体を従来の非可食性担体による一般農薬粒剤の剤型で処理しても十分な効果が認められない条件で、その20分の1の薬量で優れた効果を発揮し、フタルアミド誘導体の薬量を極めて低薬量化することができる。また、効果持続性面において第3、第4表に示す通り、従来の農園芸用毒餌剤よりもが明らかに優れ、第5、第6表に示す通り、従来の農園芸用毒餌剤に対して抵抗性を示す種々害虫についても優れた効果を示し、さらに安全性面においても従来品よりも優れており、農園芸用毒餌剤としてきわめて有用性の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫に誘引性のある可食性担体中に、一般式(I)
【化1】

(式中、R1はC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルチオC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルスルフィニルC1-C6アルキル基又はC1-C6アルキルスルホニルC1-C6アルキル基を示し、Xは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子を示し、nは1又は2を示し、Yは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロC1-C6アルコキシ基を示し、mは2又は3を示す。)で表されるフタルアミド誘導体を有効成分として含有してなる毒餌剤。
【請求項2】
フタルアミド誘導体の含有量が0.01〜5重量%である請求項1に記載の毒餌剤。
【請求項3】
可食性担体として米糠及び/又は酒粕を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の毒餌剤。
【請求項4】
対象害虫が農園芸分野の害虫である請求項1乃至3いずれか1項に記載の毒餌剤。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の毒餌剤の有効量を作物周辺土壌に施用することを特徴とする毒餌剤の使用方法。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の毒餌剤の有効量を作物周辺土壌に施用することを特徴とする農園芸分野の害虫の防除方法。
【請求項7】
農園芸分野の害虫がネキリムシ類である請求項6に記載の農園芸分野の害虫の防除方法。
【請求項8】
農園芸分野の害虫が薬剤抵抗性ネキリムシ類である請求項6又は7に記載の農園芸分野の害虫の防除方法。
【請求項9】
農園芸分野の害虫が有機燐系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤又はピレスロイド系殺虫剤から選択される1以上の薬剤に抵抗性を示すネキリムシ類である請求項6乃至8いずれか1項に記載の農園芸分野の害虫の防除方法。
【請求項10】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の毒餌剤を製造するための一般式(I)
【化2】

(式中、R1はC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルチオC1-C6アルキル基、C1-C6アルキルスルフィニルC1-C6アルキル基又はC1-C6アルキルスルホニルC1-C6アルキル基を示し、Xは
同一又は異なっても良く、ハロゲン原子を示し、nは1又は2を示し、Yは同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基又はハロC1-C6アルコキシ基を示し、mは2又は3を示す。)で表されるフタルアミド誘導体の使用。


【公開番号】特開2006−249074(P2006−249074A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28343(P2006−28343)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】