説明

農園芸用育成装置及びハウス栽培方法

【課題】発熱体から発熱して栽培するにあたり、熱が床土にこもりにくくさせる。
【解決手段】面発熱体8を床土6中に展延させて埋設し、床土6に籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14を設ける。容器4が可搬型であって、面発熱体8には電気コード10が接続されている。床土6内に籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14によって空隙15が形成され、この空隙15内の空気が温められてやはり空隙15を通り抜けて合成樹脂シート5内に至り、床土6の温度と合成樹脂シート5内の温度差を少なくして良好に苗を育成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苺やスイカ等を促成栽培するための農園芸用育成装置及びハウス栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上方を透明ビニールで覆った合成樹脂製容器に培養土を床土として収容し、面発熱体を床土中に展延させて埋設し、面発熱体の全面から均一に発熱することで、床土の温度を平均化して成育する農園芸用育成装置が知られている。
【0003】
また、ハウス内に苗床を配設するとともに、苗床の植付け部を加温するための発熱体を設け、この発熱体は、鉄粉、アルミ粉あるいはカーボン等の導電材の粉を混入した導電性ゴムまたは導電性プラスチックを板状に成形した発熱部と、該発熱部の両側に埋め込まれた通電用のリード線とで構成されている。そして、発熱体からの熱を土壌の全体に効率よく均一に伝達させて、室内温度及び植付け部温度の検出信号に基づいて、発熱体を制御するハウス栽培における温度制御方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
実開昭58−2886号公報
特開平5−328858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術においては、面発熱体の全面から均一に発熱して促成栽培するものであるが、従来の培養土などでは、面発熱体の熱が培養土内でこもりやすく、この結果透明ビニール内温度の上昇がやや劣るという問題があった。
【0006】
解決しようとする問題点は、発熱体からの熱で土を温めて栽培するにあたり、熱が土にこもりにくくする点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、発熱体を土中に埋設し、前記土に籾殻堆肥又は及びバーク堆肥を設けたことを特徴とする農園芸用育成装置である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、ハウス内に土を配設し、この土を加温するための発熱体を設けると共に、この土に籾殻堆肥又は及びバーク堆肥を設けて、前記発熱体の熱で籾殻堆肥又は及びバーク堆肥によって形成された空隙内の空気を温めて、この温められた空気をさらに籾殻堆肥又は及びバーク堆肥によって形成された空隙を介してハウス室内に導入することを特徴とするハウス栽培方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、土内に空隙が形成され、この空隙内の空気が温められて通り抜けて土上に至り、土の温度と土上の温度差を少なくして良好に苗などを育成できる
請求項2の発明によれば、発熱体は、土内の空隙内の空気を温め、この温められた空気がさらに上方にある空隙を通ってハウス内に導入できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】同断面図である。
【図3】本発明の実施例2を示す一部切り欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0012】
図1〜図2は実施例1を示しており、平面がほぼ長方形の底面1から上部開口2へ向けて外周壁3が上向きに設けられてプランター等と称する容器4が形成される。容器4の上部開口2の上方は、保温用の透明又は半透明のハウスシート等とも称する覆いである合成樹脂シート5(フィルム状のものを含む)によりほぼ密閉するように覆われて、上部開口2上には小型のビニールハウスのような温室が形成されている。この容器4はプラスチック製であり、1個当りの長さが0.5〜1.5m程度であって、手で持って移動できる可搬式となっている。そして、このような容器4を単独で或いは長手方向を連通状態として複数連結して使用する。尚、容器4は金属製であって、トラックに積んで運搬できるような可搬式のものでもよい。
【0013】
そして、容器4内に苗床等培養用土(砂或いは土機能を有するものを含む)であるの床土6が収容されている。この床土6の収容にあっては、底面1上に断熱シート7が設けられ、この断熱シート7上には面発熱体8が設けられており、そしてこの面発熱体8上に床土6が配置されている。前記断熱シート7は例えば断熱材本体の上面7Aにアルミニウム蒸着層のような熱線反射面が形成されたものである。また、面発熱体8は、可撓性であって、同じく可撓性の絶縁防水シート9(フィルムを含む)で全面を覆われており、その電気コード10が温度調節器11を介して電源12に接続している。
【0014】
前記床土6としては、籾の最も外側にある皮からなる籾殻を発酵させて作った土壌改良材である籾殻堆肥13、又は及び樹木の皮の部分(バーク)を発酵させて作った土壌改良材であるバーク堆肥14を含んだものである。尚、床土6の上面には乾燥した籾殻或いは砂が覆い材としての表層16として設けられている。尚、床土6の少なくとも一部は、籾殻堆肥13、又はバーク堆肥14、或いは籾殻堆肥13及びバーク堆肥14に形成してもよく、また床土6全体を籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14によって形成してもよい。
【0015】
次に前記構成についてその作用を説明する。床土6に苗が植えられた状態においては、通電することで面発熱体8は全面的に発熱し床土6を予め温度調節器11で設定された温度に温める。そして、床土6には籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14が設けられているので、これらは粒状であったり、不定形状であるので、さらには籾殻堆肥13、バーク堆肥14自体によっても細かい空隙15が形成されている。これらに起因して、これら籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14によって空隙15が床土6内で形成しやすくなり、このように床土6内に形成された空隙15にある空気も床土6と一緒に温められ、そしてこの温められた空気は床土6中のやはり空隙15を上向きに通り抜けて合成樹脂シート5内の空洞、すなわちハウス室内に至り、該箇所を暖めることとなり、この結果、床土6内の温度と合成樹脂シート5内、すなわちハウス室内の温度との温度差は少なくなる。
【0016】
以上のように、前記実施例では面発熱体8を床土6中に展延させて埋設し、床土6に籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14を設けたことにより、床土6内に籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14によって空隙15が形成され、この空隙15内の空気が温められてやはり空隙15を通り抜けて合成樹脂シート5内に至り、床土6の温度と合成樹脂シート5内の温度差を少なくして良好に苗を育成できる。
【0017】
さらに、容器4が可搬型であって、面発熱体8には電気コード10が接続されているので、扱いが容易である。
【0018】
また、ハウス内に床土6を配設し、この床土6を加温するための発熱体8を設けると共に、この床土6に籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14を設けて、発熱体8の熱で籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14によって形成された空隙15内の空気を温めて、この温められた空気をさらに籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14によって形成された空隙15を介して上昇させてハウス室内に導入することで、床土6とハウス室内とが同じ温度になるように発熱体8で加熱することができる。
【実施例2】
【0019】
図3は実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2は、大型ハウスの場合を示しており、床土6に断熱シート7、この断熱シート7上に面発熱体8が設けられ、さらにこの面発熱体8上の床土6には籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14が含まれている。
【0020】
したがって、床土6内に籾殻堆肥13又は及びバーク堆肥14によって空隙15が形成され、この空隙15内の空気が温められてやはり空隙15を通り抜けて合成樹脂シート5内に至り、床土6の温度と合成樹脂シート5内、すなわちハウス室内の温度差を少なくして良好に苗を育成できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように本発明に係る農園芸用育成装置は、各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0022】
6 床土(土)
8 面発熱体(発熱体)
13 籾殻堆肥
14 バーク堆肥
15 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を土中に埋設し、前記土に籾殻堆肥又は及びバーク堆肥を設けたことを特徴とする農園芸用育成装置。
【請求項2】
ハウス内に土を配設し、この土を加温するための発熱体を設けると共に、この土に籾殻堆肥又は及びバーク堆肥を設けて、前記発熱体の熱で籾殻堆肥又は及びバーク堆肥によって形成された空隙内の空気を温めて、この温められた空気をさらに籾殻堆肥又は及びバーク堆肥によって形成された空隙を介してハウス室内に導入することを特徴とするハウス栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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