説明

農地の水分管理システム

【課題】降雨状況を考慮した水分管理を行うことができる農地の水分管理システムを提供する。
【解決手段】傾斜畑Aには、複数のカンキツ園地Bが設けられているとともに、カンキツ園地Bの水分管理システム1が設けられている。この水分管理システム1は、カンキツ園地Bの地中に複数の暗渠管2が埋設されており、各暗渠管2の両端には給水管および排水管4が接続されている。給水管には暗渠管2を通して地中に水を供給する給水手段が接続されている。また、カンキツ園地Bの地中には、暗渠管2が内部に配置されるように暗渠管2を下側から囲む防水部10が埋設されている。さらに、暗渠管2と排水管4との間には、暗渠管2からの排水を調整可能に制限する排水規制管12が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地に設けられたカンキツ園地等の農地の水分管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カンキツ類の高品質化には適期の水管理が重要な要素となっている。農業用ハウスを用いた施設栽培では、降雨による灌水を制御することにより平場においても高品質なカンキツを生産できるようになった。
【0003】
一方、傾斜を利用することで、カンキツ類樹木に水分ストレスを与えてカンキツ類の糖度を上げることが可能である。そのため、山間地では、平場よりも急傾斜地での栽培が高品質なカンキツを生産することができるといわれている。
【0004】
温暖な気候で水はけの良好な土壌の西日本の中山間地域は、カンキツ類の栽培が盛んであり、主要な産地を形成している。特に、中山間地域の傾斜地を有する地域では、カンキツ類は有力な地域産物である。例えば、1960年代以降の果実需要の増加に伴い急傾斜地でも積極的に温州ミカン園として開園されてきた。
【0005】
しかし、今日では、温州ミカンの価格低迷の影響などから、後継者が見あたらず廃園が多く発生している。カンキツ産地の活性化や中山間地域の傾斜地の有効利用のためにも、傾斜地の特徴を活かした新たな栽培方法の展開が求められる。
【0006】
また、近年の消費者は、個々のカンキツに安定した高品質なものを求めており、従来のように自然任せでは高品質なカンキツを安定的に生産できない。
【0007】
このように園主の高齢化や消費者の欲求に応えるために園地整備を行い、省力化や品質の安定を図りたいとの要望が強くある。しかし、従来の造成は、盛り土や切り土による園地整備と潅漑施設程度であり、カンキツ類樹木に十分な水分ストレスを与えているとは言えなかった。
【0008】
そこで、最近ではマルドリ方式が提案されている(非特許文献1参照)。このマルドリ方式とは、周年マルチ(1年間を通して農地にマルチシートを被覆した状態)と、点滴灌水と、液肥施肥とを組み合わせたものである。
【0009】
このマルドリ方式を使用することにより灌水の制御が可能になるので、従来よりもカンキツ類樹木に十分な水分ストレスを与えることができ、高品質なカンキツ類の生産が可能となっている。そのため、地域によってはブランド化を図り、差別化を図る一つの技術として普及を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献1】森永邦久・島崎昌彦・草場新之助・星典宏著、「カンキツ生産の新しい技術 マルドリ方式−その技術と利用−」、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター、2005年3月25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、マルドリ方式は、寡雨時にマルチによってカンキツ類樹木が乾燥しすぎてしまい、カンキツ類樹木に水分ストレスを与えすぎてしまう。逆に、多雨時にはマルチをしていても地中に水が浸透してしまい、カンキツ類樹木に十分な水分ストレスを与えることができない。つまり、マルドリ方式では、降雨状況を考慮した水分管理を行うことができない。このため、マルドリ方式に代わる水分管理システムが要望されている。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、降雨状況を考慮した水分管理を行うことができる農地の水分管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような農地の水分管理システムを採用した。
【0014】
本発明の農地の水分管理システムでは、
傾斜地に設けられた農地の水分管理システムにおいて、
前記農地の地中に埋設された暗渠管と、
前記暗渠管の両端に接続された給水管および排水管と、
前記給水管に接続されて前記暗渠管を通して前記農地の地中に水を供給する給水手段と、
前記暗渠管が内部に配置されるように前記暗渠管を下側から囲んで埋設された防水部と、
前記暗渠管と前記排水管との間に接続されて前記暗渠管からの排水を調整可能に制限する排水規制手段と
を備えることを特徴とする。
【0015】
ここで、防水部の上側の地中に防根シートを埋設することが好ましい。
【0016】
また、地中に暗渠管が複数埋設される場合には、給水管および排水管と、給水手段と、防水部と、排水規制手段とを備える水分管理ユニットを複数用いて、各水分管理ユニット間を、一方の水分管理ユニットの排水管と、他方の水分管理ユニットの給水手段とで接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の農地の水分管理システムでは、傾斜地に設けられた農地の地中に暗渠管を埋設して暗渠管に給水管および排水管を接続し、給水管に給水手段を接続した。したがって、給水手段を駆動することにより灌水の制御が可能になるので、寡雨時であっても樹木に水分ストレスを与えすぎることがない。また、防水部が暗渠管を下側から囲むように配置されているので、多雨時には地中の余分な水分が暗渠管を通して排水管に流れ、樹木に十分な水分ストレスを与えることが可能になる。さらに、灌水時には地中方向への水の移動を防ぐので少量で灌水することが可能となる。また、防水部内には水が貯留されるので、降雨状況に応じて、排水規制手段により排水を調整することにより、貯留された水で地中の水分を調整することが可能になる。よって、本発明の農地の水分管理システムは、降雨状況を考慮した水分管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態を示す傾斜畑の斜視図である
【図2】同実施の形態のカンキツ園地の水分管理システムの概略構成図である。
【図3】同実施の形態のカンキツ園地の断面図と排水規制手段の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態を示す傾斜畑Aの斜視図である。この傾斜畑Aは帯区画整備がされている。具体的に説明すると、この傾斜畑Aには、複数のカンキツ園地Bが等高線(図示せず)に沿って上下に間隔をあけて設けられている。また、各カンキツ園地Bは傾斜地に設けられており、各カンキツ園地Bには、複数のカンキツ類樹木Gが等高線に沿って並列して植えられている。
【0021】
各カンキツ園地Bの間には作業道Cが設けられている。この作業道Cは、各カンキツ類樹木Gの栽培を行うために用いられる。また、これらのカンキツ園地Bの左右端には支援道路Dが上下に延設されている。この支援道路Dは、カンキツ園地B間の移動のために用いられる。
【0022】
このようにして帯区画整備された傾斜畑Aには、図2に示すように本発明のカンキツ園地Bの水分管理システム1が設けられている。この水分管理システム1は、上側水分管理ユニット1aと、下側水分管理ユニット1bとを備えている。
【0023】
上側水分管理ユニット1aは、各カンキツ園地Bの地中に埋設された複数の暗渠管2と、複数の暗渠管2の右端および左端にそれぞれ接続された給水管3および排水管4と、給水管3に接続された給水手段5とを備えている。
【0024】
給水手段5は、地中に供給する水を貯留するタンク5aと、タンク5aに接続管5cを介して接続された給水ポンプ5bとを備えている。タンク5aは、カンキツ園地Bの作業道Cと支援道路Dの交わる角地に設置され、土あるいは断熱材で覆われている。
【0025】
給水ポンプ5bは、給水管3に接続されている。この給水ポンプ5bは、タンク5a内の水を給水管3と複数の暗渠管2とを通して各カンキツ園地Bの地中に供給するものである。給水ポンプ5bの駆動には、例えば小型の太陽光発電装置が用いられる。なお、給水手段5の構成は、タンク5aと給水ポンプ5bとの組み合わせに限定されない。
【0026】
下側水分管理ユニット1bは、各カンキツ園地Bの地中に埋設された複数の暗渠管2と、複数の暗渠管2の左端および右端にそれぞれ接続された給水管3および排水管4と、給水管3に接続された給水手段5と、排水管4に接続されたタンク6とを備えている。
【0027】
この下側水分管理ユニット1bの給水手段5は、上側水分管理ユニット1aの給水手段5と同じものであるが、タンク5aは上側水分管理ユニット1aの排水管4に接続されている。また、給水ポンプ5bの駆動には、上側水分管理ユニット1aの給水ポンプ5bと同様に、例えば小型の太陽光発電装置が用いられる。なお、この下側水分管理ユニット1bの給水手段5の構成は、タンク5aと給水ポンプ5bとの組み合わせに限定されず、上側水分管理ユニット1aの給水手段5と構成が異なっても良い。
【0028】
図3は、カンキツ園地Bの断面図である。暗渠管2は既存のものが使用されており、暗渠管2の周面には多数の孔2aが設けられている。暗渠管2の周囲には防水部10が埋設されている。この防水部10は、カンキツ園地Bと作業道Cとの境目Eから後方に向けて形成されている。なお、防水部10は、防水機能を有するものであり、粘土層、固結した堆積岩層等の固い地盤、既存の防水シート等から構成され、これらを単独で使用する、あるいは複数組み合わせて使用する。
【0029】
さらに、防水部10は、暗渠管2が内部に配置されるように暗渠管2を下側から囲むように形成されている。これを具体的に説明すると、防水部10は、カンキツ園地Bと作業道Cとの境目Eから下方へ延びる作業道側防水部10aと、作業道側防水部10aの下端からカンキツ園地Bに沿うように斜め上方に延びるカンキツ園地側防水部10bとを備えている。
【0030】
防水部10の上側の地中には防根シート11が埋設されている。この防根シート11は、暗渠管2の孔2aがカンキツ類樹木の根によって目詰まりするのを防止するものであり、既存のものが使用されている。また、この防根シート11は、防水部10の上側の地中において、カンキツ園地Bから地中に後方へ延びるようにして埋設されている。
【0031】
また、図3に示すように、各暗渠管2と排水管4との間には、各暗渠管2からの排水を調整可能に制限する排水規制管(排水規制手段)12がそれぞれ接続されている。
【0032】
この排水規制管12はL字状に形成されており、暗渠管2に接続された立ち上げ管121と、立ち上げ管121内に配置された移動管122とを備えている。立ち上げ管121はL字管状に形成されており、水平部分121aの端が暗渠管2に接続されている。移動管122は直管状に形成されており、立ち上げ管121の垂直部分121b内を最上位置P〜最下位置Qの範囲内で上下に移動可能に嵌合されている。なお、作業道側防水部10aの上端の高さ位置は、移動管122の最下位置Qと同じになるように設定されている。また、カンキツ園地側防水部10bの上端の高さ位置は、移動管122の最上位置Pと同じになるように設定されている。
【0033】
また、各排水管4は、排水規制管12との接続部分がL字状に形成されている。これを具体的に説明すると、各排水管4は、立ち上げ管121の垂直部分121bを上側から囲む垂直管部4aと、垂直管部4aの下端に接続されて、立ち上げ管121の水平部分121aの屈曲側を囲む水平管部4bとを備えている。垂直管部4aは、移動管122が最上位置Pに位置したときに、移動管122の上端と、垂直管部4aの内側上面との間に空間Sが形成されるように形成されている。
【0034】
以上のように構成されているカンキツ園地Bの水分管理システム1において、次に、降雨状況に応じた水分制御について説明する。
【0035】
寡雨や多雨でない時期は、上側水分管理ユニット1aでは、地中の水分が各暗渠管2の多数の孔2aから内部に入って排水管4に流れ、下側水分管理ユニット1bのタンク5a内に溜められる。また、必要であれば、上側水分管理ユニット1aの給水ポンプ5bを駆動して、タンク5a内に溜められている水を給水管3と各暗渠管2とを通して各カンキツ園地Bの地中に供給する。以上のようにして上側のカンキツ園地Bの水分を制御する。
【0036】
下側水分管理ユニット1bでは、地中の水分が各暗渠管2の多数の孔2aから内部に入って排水管4に流れ、タンク6内に溜められる。また、必要であれば、下側水分管理ユニット1bの給水ポンプ5bを駆動して、タンク5a内に溜められている水を給水管3と各暗渠管2とを通して各カンキツ園地Bの地中に供給する。以上のようにして下側のカンキツ園地Bの水分を制御する。
【0037】
なお、地中に供給する水の量、暗渠管2の孔2aの数や大きさ等は、高品質なカンキツ類が生産できるようにカンキツ園地Bの広さや気候等を考慮した試験を予め行い、その試験結果に基づいて最適な数値が設定されている。
【0038】
寡雨時には、上側水分管理ユニット1aでは、給水ポンプ5bを駆動して、タンク5a内に溜められている水を給水管3と各暗渠管2とを通して各カンキツ園地Bの地中に供給し、上側の各カンキツ園地Bの水分を制御する。
【0039】
また、下側水分管理ユニット1bでは、給水ポンプ5bを駆動して、タンク5a内に溜められている水を給水管3と各暗渠管2とを通して各カンキツ園地Bの地中に供給し、下側の各カンキツ園地Bの水分を制御する。
【0040】
このように、本実施の形態の水分管理システム1では、2つの給水ポンプ5bを駆動することによって従来のマルドリ方式と同様に灌水の制御が可能になるため、寡雨時でもカンキツ園地Bが乾燥しすぎることがなく、カンキツ類樹木に水分ストレスを与えすぎることがない。
【0041】
多雨時には、上側水分管理ユニット1aでは、地中の余分な水分が各暗渠管2の孔2aから内部に入って排水管4に流れ、タンク5a内に溜められる。また、各暗渠管2は防水部10の内部に配置されているので、各暗渠管2の内部に入った水が下側の孔2aから地中に浸透するのが抑えられる。したがって、地中の余分な水分は各暗渠管2を通して排水管4に流れるので、上側のカンキツ類樹木に十分な水分ストレスを与えることが可能になる。
【0042】
また、下側水分管理ユニット1bでは、地中の余分な水分が各暗渠管2の孔2aから内部に入って排水管4に流れ、タンク6内に溜められる。また、各暗渠管2は、上側水分管理ユニット1aの各暗渠管2と同様に防水部10内に配置されているので、各暗渠管2の内部に入った水が下側の孔2aから地中に浸透するのが抑えられる。したがって、地中の余分な水分は各暗渠管2を通して排水管4に流れるので、下側のカンキツ類樹木に十分な水分ストレスを与えることが可能になる。
【0043】
また、防水部10は暗渠管2を下側から囲むように形成したので、防水部10の内部には、給水管3からの水と、地中からの水とが貯留される。そして、排水規制管12で排水を調整することにより、防水部10の内部に貯留された水の量が調整される。これを具体的に説明する。移動管122の上端位置が、最上位置P〜最下位置Qの範囲内で設定されると、立ち上げ菅121内の水位は、設定された移動管122の上端位置と同じ位置に設定され、この水位に合わせて防水部10の内部水位が設定される。
【0044】
次に、降雨状況に伴う水分制御について説明する。移動管122の上端位置(防水部10の内部水位)が予め設定され、この状態で降雨があると、移動管122または立ち上げ管121から水があふれて、あふれた水が排水管4に流れる。したがって、降雨状況(寡雨時、多雨時、それ以外の時期)に応じて移動管122の上端位置を予め設定しておくことで、防水部10内の水の量、つまり地中の水分量を効率良く制御することが可能になる。
【0045】
このように本実施の形態のカンキツ園地Bの水分管理システム1においては、降雨状況に応じてカンキツ園地Bへの給水とカンキツ園地Bからの排水とを行うことで、カンキツ類樹木Gに対する水分ストレスを容易に行うようにした。よって、本実施の形態のカンキツ園地Bの水分管理システム1は、降雨状況を考慮した水分管理を行うことができる。
【0046】
また、本実施の形態の水分管理システム1では、各防水部10の上側の地中に防根シート11を埋設した。これにより、各暗渠管2がカンキツ類樹木Gの根で目詰まりするのが防止されるので、カンキツ園地Bの水分を効率良く制御することができる。また、この防根シート11により、カンキツ類樹木Gの根が防水部10内に侵入するのが抑えられる。したがって、防水部10内に貯留されている水が、カンキツ類樹木Gの根で自由に吸い上げられてしまうのが抑えられるので、地中の水分管理を安定して行うことができる。
【0047】
さらに、本実施の形態の水分管理システム1では、カンキツ園地Bの地中に暗渠管2が複数埋設される場合には、給水管3、排水管4、給水手段5、防水部10、排水規制管12、防根シート11を備える水分管理ユニットを複数用いた。本実施の形態では、上側水分管理ユニット1aと下側水分管理ユニット1bの2つである。そして、双方の水分管理ユニット1a,1b間を、上側水分管理ユニット1aの排水管4と、下側水分管理ユニット1bの給水手段5とで接続した。したがって、上側水分管理ユニット1aから排出される水を下側水分管理ユニット1bにそのまま使用できるので、カンキツ園地Bの水分制御を効率良く、且つ経済的に行うことができる。
【0048】
また、本実施の形態では、下側水分管理ユニット1bの排水管4から排出された水をタンク6に貯留するようにしたが、この排水管4を上側水分管理ユニット1bのタンク5aに接続するようにしても良い。
【0049】
また、この水分管理システム1を施工する場合には、帯区画整備と併せて行うことにより施工コストを抑えることができる。
【0050】
以上、本発明にかかる実施の形態を例示したが、この実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0051】
本実施の形態では、カンキツ園地Bに本発明を適用した場合について説明したが、他の農地、例えば果樹園地に本発明を適用した場合も、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、本実施の形態では、排水規制手段として、立ち上げ管121と移動管122とから構成される排水規制管12を使用した。しかし、排水規制手段は、この排水規制管12に限定されることはない。例えば各暗渠管2の両端に開閉弁を接続し、この開閉弁を操作することで排水を調整するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように本発明では、降雨状況を考慮した水分管理を行うことができる。したがって、本発明を、農地の水分管理システムの技術分野で十分に利用することができる。また、本発明を、作業性が低く重労働を伴って敬遠されがちな傾斜地でのカンキツ栽培に適用することにより高品質な果実生産を可能とし、特に中山間地域に適用することで、高品質な果実生産を最大限可能とすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 水分管理システム
1a 上側水分管理ユニット
1b 下側水分管理ユニット
2 暗渠管
3 給水管
4 排水管
5 給水手段
10 防水部
11 防根シート
12 排水規制管(排水規制手段)
A 傾斜畑(傾斜地)
B カンキツ園地(農地)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜地に設けられた農地の水分管理システムにおいて、
前記農地の地中に埋設された暗渠管と、
前記暗渠管の両端に接続された給水管および排水管と、
前記給水管に接続されて前記暗渠管を通して前記農地の地中に水を供給する給水手段と、
前記暗渠管が内部に配置されるように前記暗渠管を下側から囲んで埋設された防水部と、
前記暗渠管と前記排水管との間に接続されて前記暗渠管からの排水を調整可能に制限する排水規制手段と
を備えることを特徴とする農地の水分管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の農地の水分管理システムにおいて、
前記防水部の上側の地中に防根シートを埋設したことを特徴とする農地の水分管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の農地の水分管理システムにおいて、
前記農地の地中に前記暗渠管が複数埋設される場合には、前記給水管および前記排水管と、前記給水手段と、前記防水部と、前記排水規制手段とを備える水分管理ユニットを複数用いて、各水分管理ユニット間を、一方の水分管理ユニットの排水管と、他方の水分管理ユニットの給水手段とで接続したことを特徴とする農地の水分管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−205571(P2012−205571A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75267(P2011−75267)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)