説明

農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液

【課題】農業・園芸用の殺菌・殺虫、成長促進剤に用いられ、食品添加剤として用いられ、更には表皮または皮膚の保護用塗布剤として用いられるコロイド水溶液またはコロイド水溶液のゲルを提供する。
【解決手段】炭化珪素、特に、緑色炭化珪素と水とを所定の割合で配合し混合してコロイド水溶液を形成する。また、炭化珪素と水と“にがり”とを所定の割合で配合し混合してコロイド水溶液を形成する。更に、緑色炭化珪素、水、“にがり”、アルギン酸ナトリウムおよび亜塩素酸ナトリウムを所定の割合で配合し混合し加熱してコロイド水溶液のゲルを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液および農作物および園芸用植物の成長促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界はナノテクノロジー技術の時代に突入し、種々の材料がナノテクノロジー産業に応用されている。炭化珪素も種々の用途に応用されているが、一般に、炭化珪素には、例えばダイアモンドのような透明な炭化珪素、または例えば研磨剤や砥石のような黒色炭化珪素および緑色炭化珪素の3種類のものがある。
また、炭化珪素のうち、特に、緑色炭化珪素は、通常、黒色炭化珪素に比べ不純物が少なく、石油コークス等の炭素と珪石を主材料とし、電極間にシリカと炭材を敷き、電極間を黒鉛粉コアで繋ぎ、さらに原材料で覆ったのち通電して加熱するアチソン炉法、シリコン炭素直接反応法等で製造されている。また、特開2003-176119号公報、段落[013]および[0014]に記載されているように、緑色炭化珪素は、廉価に容易に入手し得る籾殻炭化物などの珪素集積バイオマス炭化物や炭素粉体とシリカ粉体との配合物などを原料とし、2GHz以上の高周波電磁波を照射して比較的容易に製造することができる。
【特許文献1】特開2003-176119号公報、参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
更に、炭化珪素は、医療分野で注目されているDDS(Drug Delivery system)(薬物送達システム)に有用なナノセラミックス微粒子であり、この微粒子による薬物送達システムの効果を農作物、園芸植物に応用すれば有用ではないか、と思考し、種々の実験を重ねた結果、緑色炭化珪素および水をある特定の割合で配合し、混合して形成したコロイド水溶液が植物の成長促進に顕著な効用が得られることを確かめた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は長期に亘って植物の育成を保持し得る効果を発揮することができる農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液を提供せんとするものである。
本発明の他の目的は農薬散布の希釈液、液肥等、その他資材の希釈液、常時の灌水に使用し得る、殺菌、殺虫促進および農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液を提供せんとするものである。
本発明の他の目的は食品添加剤として用いるに好適なコロイド水溶液を提供せんとするものである。
本発明の更に他の目的は表皮または皮膚の保護に用いる塗布剤として好適なコロイド水溶液のゲルを提供せんとするものである。
【発明の効果】
【0005】
斯様に、本発明農業・園芸用成長促進剤によれば、緑色炭化珪素を使用するため、薬物送達システムの効果は勿論、殺菌効果および腐敗防止効果を長時間に亘り発揮させることができ、これに界面活性剤の役目も呈する“にがり”をそれぞれ所定の割合で混入、混合し、更にはこれに亜塩素酸ナトリウムを加え、水溶液中に混合させてコロイド溶液を形成し、商品として出荷する際に長期間の保存が可能になり、さらに亜塩素酸ナトリウムを加えることによって殺菌効果および腐敗防止効果を長時間に亘り発揮させることができる。
【0006】
また、本発明コロイド水溶液は食品添加剤として用いて食味を向上させるとともに、アルギン酸ナトリウムおよび亜塩素酸ナトリウムを加え、加熱してゲル化することするにより表皮または皮膚の保護用塗布剤として用いて皮膚の炎症防止、保湿効果にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明コロイド水溶液は、炭化珪素、特に、緑色炭化珪素と水とを所定の割合で配合し混合して形成することを特徴とする。
更に本発明コロイド水溶液は、炭化珪素と水と“にがり”とを所定の割合で配合し混合して形成することを特徴とする。
また、本発明コロイド水溶液は、緑色炭化珪素、水、“にがり”、アルギン酸ナトリウムおよび亜塩素酸ナトリウムを所定の割合で配合し混合して形成することを特徴とする。
【0008】
本発明では、先ず、所定量の炭化珪素の粉体を所定量の水に投入し、混合、攪拌して炭化珪素のコロイド水溶液を形成する。このコロイド水溶液は通常農作物に対して使用する場合、例えば、約1000リットルの水に投入して使用する必要があり、大容量のため搬送に不便である。
【0009】
また、この炭化珪素は粉体のまま搬送し、作業現場で1000リットルの水に投入してコロイド水溶液を形成するのが良いが、作業現場で100リットル、200リットル程度の少量のコロイド水溶液が必要な場合には100リットル、200リットルの水に投入する炭化珪素の分量を計量するのが困難であり、しかも、炭化珪素の粉体が樹脂容器に付着して所望の分量を得るのも不便である。
【0010】
上述した1000リットルの炭化珪素のコロイド水溶液は容量、重量が嵩み、搬送するには不便である。そこで、かかるコロイド水溶液の濃縮液を造れば搬送に便利であることに思いついた。
【0011】
かかる炭化珪素のコロイド水溶液の濃縮液はマイナスイオンを有している。従って、この濃縮液を収容する容器としては、同じくマイナスイオンを有するガラス容器を用いると濃縮液中の炭化珪素の粒子がガラス容器に付着せず、好適である。
【0012】
しかし、ガラス容器は割れ易く、重量が重く、しかも、高価であるため、上記炭化珪素のコロイド水溶液の濃縮液の容器としは不適当である。
また、割れ難く、軽量で、安価な容器としては樹脂容器が最適であるが、樹脂容器は、粗面であり、プラスの静電気を帯び易く、従って、炭化珪素の粒子が付着し易く、不適当である。
【0013】
かかる炭化珪素粒子の付着を防止するために、炭化珪素と樹脂容器との双方に適合した界面活性剤として、“にがり”を使用するのが好適であることを確かめた。
【0014】
従って、本発明では炭化珪素と水とのコロイド水溶液に“にがり”を所定の割合で配合したコロイド水溶液を形成する。
【0015】
更に、上記炭化珪素のコロイド水溶液の濃縮液には比較的多量の水が存在する。従って、かかるコロイド水溶液の濃縮液は、商品として流通させるためには、樹脂容器内に収容する必要があり、店頭において、または、購入されたまま長期間に亘って樹脂容器内に保存されたままの状態となる場合がある。この際、水が腐敗するのを防止するためには、更に上記炭化珪素および“にがり”のコロイド水溶液に亜塩素酸ナトリウムを追加するのが好適であることを確かめた。
【0016】
従って、本発明では炭化珪素と水と“にがり”とのコロイド水溶液に亜塩素酸ナトリウムを所定の割合で配合したコロイド水溶液を形成する。
【0017】
斯様に、本発明によれば、炭化珪素、特に、緑色炭化珪素と、“にがり”と、亜塩素酸ナトリウムとを混合させることによって、以下に示す諸効果をうることができる。
【0018】
炭化珪素(SiC)は多孔質であるため、亜塩素酸ナトリウム(NaclO2)を多孔内に抱き込み、すこしずつ吐き出すことができ、その結果、殺菌効果および腐敗防止効果を長時間に亘り発揮することができる。
【0019】
また、“にがり”の主成分は塩化マグネシウム(MgCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン(P)、鉄(Fe)、亜鉛(Z)、マンガン(Mg)で構成されており、二酸化マグネシウム(MgO2)と塩化ナトリウム(NaCl)との界面活性剤としての役目を果たしているとともに土壌中に、ナトリウム(Na)、マンガン(Mg)、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、リン(P)、鉄(Fe)、等を残存させ、これら元素を補給することができる。
【0020】
殺菌効果を呈する亜塩素酸ナトリウム(NaclO2)は塩化水素(Hcl)と、超酸化ナトリウム(NaO2)と、水酸化ナトリウム(NaOH)とに分解される。塩化水素(Hcl)は気体となって殺菌効果を呈しながら空気中にガスとして放出され、超酸化ナトリウム(NaO2)は不安定なため、水、Naとして存在し、水酸化ナトリウム(NaOH)はごく微量に存在するだけである。
【0021】
かかる亜塩素酸ナトリウム(NaclO2)は、これを単に水溶液で薄めただけで、土中散布する場合には、分解スピードが速いため、長時間に亘って、充分な殺菌殺虫効果および腐敗防止効果を呈することができない欠点がある。
【0022】
しかし、上述した炭化珪素が混合されていれば、多孔質の炭化珪素(SiC)の多孔内に亜塩素酸ナトリウム(NaclO2)を抱き込み、すこしずつ吐き出すことができ、その結果、殺菌効果および腐敗防止効果を長時間に亘り発揮することができる。従って、土中には、ナトリウム(Na)、マンガン(Mg)、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、リン(P)、鉄(Fe)、等がミネラル成分、養素搬送剤、土壌安定剤として残存し、植物の成長促進に寄与し得るようになる。
【実施例1】
【0023】
以下に本発明の実施例を説明する。
本発明では、先ず、粒度、0.3μm以下の緑色炭化珪素を用意し、その約1g〜3gを1000ccの水に入れてコロイド水溶液を造り、さらに、“にがり”約50cc〜100ccと亜塩素酸ナトリウム(NaclO2)の約10%水溶液、1cc〜2ccとを加えてコロイド水溶液の濃縮液を形成する。
かくして形成した農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液の濃縮液を以下の目的に使用する。
(1)農薬散布の希釈用、
(2)液肥等、その他資材の希釈用、
(3)日常の灌水時。
【0024】
メロンの農作物の殺菌および殺虫を行うために用いられている成長促進調整剤、特に、殺菌剤および殺虫剤として、例えば、メロン防除に使用される農薬としては、アミスタ20フロアブル、フルピカフロアブル(何れも商品名)等があが、これらアミスタ20フロアブル、フルピカフロアブルは現在効果が少ないとの理由で殆んど使用されていない。
【0025】
しかし、本発明コロイド水溶液を農業・園芸用成長促進剤を上述した農薬の希釈剤として用いる場合には、特にメロンの防除用として、即ち、メロンのうどんこ病、つる病、べと病、更にはトマトの葉カビ病、イチゴのうどんこ病、炭疸病、灰色カビ病、キュウリのうどんこ病、炭疸病、菌核病、灰色カビ病等を防除するための農業・園芸用成長促進剤として用いて場合には、本発明コロイド水溶液の浸透力のため、従来殆んど使用されていない上記アミスタ20フロアブル(アゾキシストロビン水和剤)、フルピカフロアブル(メパニピリム水和剤)(何れも商品名)の農薬の効果、特に殺菌、殺虫促進の効果を増強させ有効に活用することができる。
【0026】
かかるコロイド水溶液の濃縮液は適当な容量の樹脂容器に入れても長時間保存に耐え、運搬にも適している。
【0027】
上記“にがり”および亜塩素酸ナトリウムは、土壌、作物に対して悪環境を呈することはなく、農薬、肥料成分に対しても不適切なものではない。
【0028】
更に、本発明では、炭化珪素と水と“にがり”とを上述した割合で配合し、混合して形成したコロイド水溶液は薬物送達システムの効果を呈し、浸透力効果および“にがり”分の食味向上効果に優れ、食品添加物として有効であることを確認した。
【0029】
例えば、お米を炊く時の水に使用すれば、古米が新米同様の食味を呈するようになる。
また、豆類、魚類、肉類、その他硬度のある食材の煮物に使用すれば、炭化珪素の浸透力効果、および“にがり”分の食味向上効果のために、料理が美味しくなる。
更に、コーヒーやお茶の水にコロイド水溶液を少量添加すれば、美味しく飲用することができる。
【0030】
更に、本発明によれば、炭化珪素1g〜5gと水999ミリリットルと“にがり”50〜500ミリリットルとを加えて70゜C〜75゜Cの温度に加熱しながらアルギン酸ナトリウム400g〜800gを添加し攪拌してコロイド水溶液をゲル化する。
斯様にして形成されたコロイド水溶液のゲルを皮膚用およびマッサージ用塗布剤として使用すれば、皮膚の炎症防止、保湿効果に有効であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0031】
斯様に、本発明コロイド水溶液は、農業・園芸用の殺菌、殺虫剤および農業・園芸用の成長促進剤、食品添加剤および皮膚塗布剤として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素と水とを所定の割合で配合し混合して形成することを特徴とする農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液。
【請求項2】
請求項1に記載のコロイド水溶液に更に“にがり”を所定の割合で配合し混合して形成することを特徴とする農作物の殺菌、殺虫促進および農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液。
【請求項3】
炭化珪素を緑色炭化珪素とすることを特徴とする請求項1または2に記載の農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液。
【請求項4】
請求項3に記載のコロイド水溶液に亜塩素酸ナトリウムを所定の割合で配合し混合して形成することを特徴とする農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の農業・園芸用成長促進に用いるコロイド水溶液を農作物または園芸植物に施用することを特徴とする農作物または園芸植物の成長促進方法。
【請求項6】
緑色炭化珪素と水とを所定の割合で配合し混合してコロイド水溶液を造り、該コロイド水溶液に“にがり”を所定の割合で配合し混合し食品添加剤として用いるコロイド水溶液。
【請求項7】
請求項6に記載のコロイド水溶液にアルギン酸ナトリウムおよび亜塩素酸ナトリウムを所定の割合で配合し、混合し、加熱してゲル化し、皮膚の保護に用いるコロイド水溶液。

【公開番号】特開2006−232764(P2006−232764A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52328(P2005−52328)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(591240342)株式会社染谷 (7)
【Fターム(参考)】