農業上活性な有機化合物の結晶複合体
本発明は、水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の農業上活性な有機化合物Aおよびチオファネートメチルを含む結晶複合体に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の農業上活性な有機化合物Aの結晶複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌剤、除草剤および殺虫剤または殺ダニ剤などの農業上活性な有機化合物は、通常、1種以上の農業上活性な有機化合物および好適な製剤添加物を含む液体または固体の製剤として市販されている。いくつかの理由から、農業上活性な有機化合物(A)が固体の状態で存在するタイプの製剤、例えば、ダスト、粉末または顆粒などの固体製剤および懸濁液濃縮物(すなわち、液体の懸濁媒体中に懸濁した活性有機化合物の固体粒子を含む液体製剤)などの液体製剤が好ましい。
【0003】
製剤の目的には、農業上活性な有機化合物は十分に高い融点を有する結晶性物質でなければならない。残念なことに、前記有機化合物の多くはアモルファス物質であり、かつ/または低い融点を有する。このような化合物は、活性化合物の粘着性のために粉砕の間に粉砕装置が動かなくなるので、従来の方法により懸濁液濃縮物(SC)として製剤するのが難しい。アモルファス固体の有機化合物の製剤は、しばしば相分離に関して不安定である。例えば、アモルファス固体活性物質の懸濁液濃縮物は、粒子の凝集または粒子の成長の結果として活性有機化合物が分離することにより不均一になる傾向がある。
【0004】
有機化合物の結晶複合体は、共結晶とも呼ばれ、少なくとも2種の異なる有機化合物からなる多成分結晶または結晶性物質であり、通常25℃で固体であり、または少なくとも非揮発性のオイル(25℃で1 mbar未満の蒸気圧)である。結晶複合体(または共結晶)においては、少なくとも2種の異なる有機化合物が、明確な結晶構造を有する結晶性物質を形成する。すなわち、少なくとも2種の有機化合物が、結晶構造内で明確な相対的な空間配置を有することにより、超分子構造を形成する。
【0005】
共結晶において、少なくとも2種の異なる化合物が、水素結合および、おそらく、πスタッキングおよびファンデルワールス相互作用を含む他の非共有結合分子間力などの非共有結合により相互作用する。水素結合は、方向性があり、比較的強い相互作用であり、これらの2つの性質のため、これは、しばしば自然界全般の分子認識、例えば、DNAの形成、一般的なタンパク質の折りたたみ、受容体等においても支配的な力である。そのため、水素結合は、新規の多成分材料または共結晶を設計するアプローチにおいて考慮されている力であり、文献に記載されている(例えば、D. Braga et al., Chem. Commun., 2005, pp. 2635-3645 and O. Almarsson et al., Chem. Commun., 2004, pp. 1889-1896を参照されたい)。しかしながら、他の分子間力もまた分子認識に関与している可能性がある。
【0006】
結晶格子中の充填を設計または予測することはできないが、いくつかの超分子シントンを共結晶中で認識することに成功した。「超分子シントン」という用語は、互いに水素結合した通常2種の化合物からなる存在であると理解されるべきである。共結晶において、これらのシントンは、さらに結晶格子中に充填されて分子結晶を形成する。分子認識はシントンの形成の一つの状態である。しかしながら、共結晶はまた、エネルギー的に有利でなければならない。すなわち、分子は典型的には純粋な成分の結晶として非常に効率よく充填され得るために共結晶の形成を妨げるので、共結晶の形成においてエネルギー的な利益も必要である。
【0007】
共結晶において、通常、有機化合物の一方が、共結晶形成剤、すなわち、それ自体が容易に結晶性物質を形成し、いくつかのそれ自体では必ずしも結晶相を形成しない他の有機化合物と共結晶を形成することができる化合物として作用する。
【0008】
活性な医薬化合物の結晶複合体は、当業界において様々な場合において記載されており、例えば、US2003/224006、WO03/074474、WO2005/089511、EP1608339、EP1631260およびWO2006/007448に記載されている。
【0009】
チオファネートメチル(thiophanate-methyl)は、式
【化1】
【0010】
で表される有名な結晶性殺菌剤化合物であり、172℃より高い温度で分解により融解する。チオファネートメチルは広い範囲の菌類病原体に対して保護および治療作用を有する。チオファネート分子は植物中で分解してカルベンダジムになるので、これはベンズイミダゾール殺菌剤のグループに属する。
【0011】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、チオファネートメチルが好適な共結晶形成剤であり、水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する多くの農業上活性な有機化合物と結晶複合体を形成することを見出した。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の農業上活性な有機化合物Aおよびチオファネートメチルを含む結晶複合体に関する。
【0013】
本発明の結晶複合体は、明確な結晶構造を有し、妥当な高い融点を有するので、前記複合体を活性物質が固体の状態で存在する固体または液体の製剤に組み込むことが容易になる。さらに、前記結晶複合体の製剤は、特に個々の固体の化合物としてのチオファネートメチルと化合物Aの混合物を含む製剤と比較して、増大した安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】チオファネートメチルのX線粉末回折を示す図である。
【図2】エポキシコナゾールのX線粉末回折を示す図である。
【図3】ピラクロストロビンのX線粉末回折を示す図である。
【図4】チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体のX線粉末回折を示す図である。
【図5a】単結晶のX線分析によるチオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体の構造を、可能性のある水素結合と共に示す図である。
【図5b】単結晶のX線分析による、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体中のチオファネートメチル分子の空間配置を、可能性のある水素結合と共に示す図である。
【図6】チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体のX線粉末回折を示す図である。
【図7】ピラクロストロビン(上)、チオファネートメチル(中)およびチオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体(下)の13C-CP/MASスペクトルを示す図である。
【図8】チオファネートメチルとメトコナゾールの結晶複合体のX線粉末回折を示す図である。
【図9】ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体のIRスペクトルを示す図である。
【図10】メトコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の結晶複合体の形成は、チオファネートメチルがすべての水素供与体と効果的な水素結合を達成することが不可能であり、同時に結晶状態に分子を効果的に充填することが不可能であるために生じたと推測される。したがって、チオファネート分子中のチオ尿素単位のN結合水素原子の少なくとも1個が、農業上活性な化合物A中の少なくとも1個の水素受容体部分と水素結合を形成し、かつ/またはチオファネート分子が、活性化合物A分子が含まれるキャビティーと共に格子様構造を形成する。
【0016】
水素結合において水素受容体であることが可能な官能基または部分には、酸素原子、例えばエーテル基、特にオキシラン基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、カルボキシアミド基における酸素原子、および窒素原子、特に第一級、第二級もしくは第三級アミノ基の形の窒素原子、またはイミノ窒素原子、すなわち、=N-が含まれる。
【0017】
好ましくは、化合物Aは、水素結合において水素受容体であることが可能な官能基または部分として、少なくとも1個の、例えば、1、2、3または4個のイミノ窒素原子を含む。イミノ窒素原子は、複素環、オキシイミノ部分またはアミジノ部分などの環式または非環式部分の一部であってよい。当然、化合物Aは、水素結合において水素受容体として作用することが可能な1個またはそれ以上の原子または部分を有してもよい。
【0018】
特に、化合物Aは、水素結合において水素受容体であることが可能な少なくとも1個の官能基であって、ピリジン、ピリミジン、イミダゾールまたはイミダゾリン、例えば、1H-イミダゾール、2H-イミダゾール、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール、2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール、ピラゾールまたはピラゾリン、例えば1H-ピラゾール、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール、およびトリアゾール環、例えば1H-1,2,4-トリアゾール、1H-1,3,4-トリアゾールおよび1H-1,2,3-トリアゾール環、特にピラゾールまたはトリアゾール環などの5または6員芳香族複素環または部分的不飽和複素環の環原子である少なくとも1個のイミノ窒素を含む前記官能基を含む。前記複素環は、無置換であっても、例えば、1、2または3個の置換基により置換されていてもよい。好適な置換基は、特に、ニトロ、カルボキシレート、スルホニルまたはシアノのような電子吸引メソメリー(-M)効果を及ぼさないものである。好適な置換基には、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-ハロアルコキシまたはフェニル(それ自体が置換されているか、C1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシより選択される1、2、3または4個の基により置換されていてよい)、およびC1〜C6-アルキル(無置換であるか、アルコキシ、シアノ、フェニル、C1〜C4-アルキルカルボニル、C1〜C4-アルコキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシアミド、C1〜C4-アルキルアミノカルボニル、C1〜C4-ジアルキルアミノカルボニルおよびC1〜C4-アルキルカルボニルアミノより選択される1個の基により置換されていてよい)が含まれる。置換されたまたは無置換の5または6員芳香族複素環または部分的不飽和複素環それ自体がより大きい分子の一部であってもよいと理解されるべきである。
【0019】
同様に好ましくは、イミノ窒素は、イミノエーテル基=N-O-Rまたはアミジノ基C(N=R)NR’2 [ここで、RおよびR’は互いに独立して、水素、C1〜C6-アルキル、C2〜C6-アルケニルまたはC2〜C6-アルキニルより選択される]などの非環式オキシイミノ部分の一部であってよい。
【0020】
好ましくは、化合物Aは、ピリジニル、ピリミジニル、1H-イミダゾリル、1H-ピラゾール、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル、およびトリアゾリル、例えば1H-1,2,4-トリアゾリル、4H-1,2,4-トリアゾリル(= 1H-1,3,4-トリアゾリル)、1H-1,2,3-トリアゾリルおよび2H-1,2,3-トリアゾリル環、好ましくはピラゾリルまたはトリアゾリル基、特に1H-ピラゾリルまたは1H-1,3,4-トリアゾリル基(置換されているか、上に定義した通りに置換されていてよい)などの5または6員芳香族複素環基より選択される官能基を含む。好ましい置換基には、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-ハロアルコキシまたはフェニル(それ自体が置換されているか、C1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシ、特にハロゲンまたはメチルより選択される1、2、3または4個の基により置換されていてよい)が含まれる。特に、化合物Aは、イミダゾール-2-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イル(ここで、Hetは、無置換であるか、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1または2個の基および/または1、2または3個のハロゲン原子を有してもよい1個のフェニル基を有してもよい)より選択される1個の官能基を含む。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、化合物Aは、水素結合において水素受容体であることが可能な官能基に加えて、場合により置換されたフェニル環を有する。理論に拘束されないが、発明者らは、本発明の結晶複合体において、フェニル環はチオファネート分子とπ相互作用を有すると考えている。好ましくは、フェニル環は無置換であるか、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-ハロアルコキシ、フェニル(それ自体が置換されているか、C1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシより選択される1、2、3または4個の基により置換されていてよい)、およびC1〜C6-アルキル(無置換であるか、アルコキシ、シアノ、フェニル、C1〜C4-アルキルカルボニル、C1〜C4-アルコキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシアミド、C1〜C4-アルキルアミノカルボニル、C1〜C4-ジアルキルアミノカルボニルおよびC1〜C4-アルキルカルボニルアミノより選択される1個の基により置換されていてよい)より選択される1、2または3個の基を有する。フェニル環上の好適な基には、次の基:N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)およびC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)も含まれる。無置換のフェニルまたはC1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシ、特にハロゲンおよびメチルより選択される1、2または3個の基を有するフェニル、および次の基:N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)またはC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)の一つを有するフェニルが好ましい。
【0022】
好ましくは、場合により置換されたフェニル環は、環原子として少なくとも1個のイミノ窒素原子を有する無置換のまたは置換された芳香族含窒素複素環に、化学結合または1〜5個の原子を有する鎖、好ましくは2または3個の原子を有する鎖を介して結合している。一般に、鎖は炭素原子により形成される。しかしながら、鎖の炭素原子の1つが酸素またはケイ素により置換されていてもよい。鎖は無置換であっても、シアノ、OH、=O、C1〜C4-アルキル(OH、C1〜C2-アルコキシ、C1〜C2-ハロアルコキシ、C1〜C2-ハロアルキル、トリメチルシリル、C3〜C6-シクロアルキルおよびフェニル(それ自体が、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される1またはは2個の基を有してもよい)、もしくはフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)などの1、2または3個の置換基を有してもよく、または、鎖の同じ原子もしくは鎖の2個の隣接する原子に結合する2個の基が3〜6員飽和炭素環もしくは複素環を形成してもよく、前記複素環は環原子として1または2個の酸素原子を有し、前記炭素環および複素環は無置換であるか、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、ハロ-C1〜C4-アルコキシおよびフェニル(それ自体がハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される基を有する。
【0023】
好適な化合物Aは、150〜500ダルトンの範囲の分子量を有する。
【0024】
好適な化合物Aは、除草剤、殺菌剤および殺虫剤/殺ダニ剤より選択される。好適な化合物Aの例には、下記のものが含まれる。
【0025】
下記のクラスに属する殺菌剤:
- ストロビルリン、例えば、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、エネストロブリン(enestroburin)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、メトミノストロビン(metominostrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、メチル(2-クロロ-5-[1-(3-メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル(2-クロロ-5-[1-(6-メチルピリジン-2-イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル2-(オルト-(2,5-ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)-3-メトキシアクリレート;
- アニリド、例えば、ベナラキシル(benalaxyl)、ベノダニル(benodanil)、ボスカリド(boscalid)、カルボキシン(carboxin)、メプロニル(mepronil)、フェンフラム(fenfuram)、フェンヘキサミド(fenhexamid)、フルトラニル(flutolanil)、フラメトピル(furametpyr)、メタラキシル(metalaxyl)、オフレース(ofurace)、オキサジキシル(oxadixyl)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、チフルザミド(thifluzamide)、チアジニル(tiadinil)、4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-[N-(4'-ブロモビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-[N-(4'-トリフルオロメチルビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-[N-(4'-クロロ-3'-フルオロビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-[N-(3',4'-ジクロロ-4-フルオロビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-[N-(3’,4’-ジクロル-5-フルオルビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、3,4-ジクロロイソチアゾール-5-[N-(2-シアノフェニル)]カルボキシアミド;
- モルホリド、例えば、ジメトモルフ(dimethomorph)、フルモルフ(flumorph);
- 安息香酸アミド、例えば、フルメトベル(flumetover)、フルオピコリド(fluopicolide)(ピコベンザミド(picobenzamid))、ゾキサミド(zoxamide);
- 他のカルボキシアミド、例えば、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、マンジプロパミド(mandipropamid)、N-(2-(4-[3-(4-クロルフェニル)プロパ-2-イニルオキシ]-3-メトキシフェニル)エチル)-2-メタンスルホニルアミノ-3-メチルブチルアミド、N-(2-(4-[3-(4-クロルフェニル)プロパ-2-イニルオキシ]-3-メトキシフェニル)エチル)-2-エタンスルホニルアミノ-3-メチルブチルアミド;
- アゾール殺菌剤、特に、
- トリアゾール:ビテルタノール(bitertanol)、ブロムコナゾール(bromuconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、ジニコナゾール(diniconazole)、エニルコナゾール(enilconazole)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フルトリアホール(flutriafol)、ヘキサコナゾール(hexaconazol)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、イプコナゾール(ipconazole)、メトコナゾール(metconazol)、ミクロブタニル(myclobutanil)、ペンコナゾール(penconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、シメコナゾール(simeconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、テトラコナゾール(tetraconazole)、トリアジメノール(triadimenol)、トリアジメホン(triadimefon)、トリチコナゾール(triticonazole);
- イミダゾール:シアゾファミド(cyazofamid)、イマザリル(imazalil)、ペフラゾエート(pefurazoate)、プロクロラズ(prochloraz)、トリフルミゾール(triflumizole);
- ベンズイミダゾール:ベノミル(benomyl)、カルベンダジム(carbendazim)、フベリダゾール(fuberidazole)、チアベンダゾール(thiabendazole);
- その他:エタボキサム(ethaboxam)、エトリジアゾール(etridiazole)、ミメキサゾール(mymexazole);
- ピリジン:フルアジナム(fluazinam)、ピリフェノックス(pyrifenox)、3-[5-(4-クロロフェニル)-2,3-ジメチルイソキサゾリジン-3-イル]ピリジン;
- ピリミジン:ブピリメート(bupirimate)、シプロジニル(cyprodinil)、フェリムゾン(ferimzone)、フェナリモール(fenarimol)、メパニピリム(mepanipyrim)、ヌアリモール(nuarimol)、ピリメタニル(pyrimethanil);
- ピペラジン:トリホリン(triforine);
- ピロール:フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil);
- ジカルボキシイミド:イプロジオン(Iprodione)、プロシミドン(procymidone)、ビンクロゾリン(vinclozolin);および
- 他の殺菌剤:プロキナジド(proquinazid)、ピロキロン(pyroquilon)、キノキシフェン(quinoxyfen)、トリシクラゾール(tricyclazole)、5-クロロ-7-(4-メチルピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、2-ブトキシ-6-ヨード-3-プロピルクロメン-4-オン、3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-スルホニル)-[1,2,4]トリアゾール-1-スルホン酸ジメチルアミドおよびメトラフェノン(metrafenone)。
【0026】
下記のクラスに属する殺虫剤/殺ダニ剤:
- ピレスロイド:アクリナトリン(acrinathrin)、アレトリン(allethrin)、d-シス-トランスアレトリン、d-トランスアレトリン、ビフェントリン(bifenthrin)、ビオアレトリン(bioallethrin)、ビオアレトリンS-シクロペンテニル、ビオレスメトリン(bioresmethrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータシフルトリン、シハロトリン(cyhalothrin)、ラムダシハロトリン、ガンマシハロトリン、シフェノトリン(cyphenothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、アルファシペルメトリン、ベータシペルメトリン、シータシペルメトリン、ゼータシペルメトリン、デルタメトリン(deltamethrin)、エムペントリン(empenthrin)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルシトリネート(flucythrinate)、フルメトリン(flumethrin)、タウフルバリネート(tau-fluvalinate)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、イミプロトリン(imiprothrin)、ペルメトリン(permethrin)、フェノトリン(phenothrin)、プラレトリン(prallethrin)、プロフルトリン(profluthrin)、ピレトリン(pyrethrin)IおよびII、レスメトリン(resmethrin)、RU 15525、シラフルオフェン(silafluofen)、タウフルバリネート(tau-fluvalinate)、テフルトリン(tefluthrin)、テトラメトリン(tetramethrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、ジメフルトリン(dimefluthrin)、ZXI 8901;
- 成長調節物質:a) キチン合成阻害剤:ベンゾイル尿素;ビストリフルロン(bistrifluron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、フルシクロクスロン(flucycloxuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ルフェヌロン(lufenuron)、ノバルロン(novaluron)、ノビフルムロン(noviflumuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、トリフルムロン(triflumuron);ブプロフェジン(buprofezin)、ジオフェノラン(diofenolan)、ヘキシチアゾックス(hexythiazox)、エトキサゾール(etoxazole)、クロフェンテジン(clofentezine);b) エクジソンアンタゴニスト:クロルマフェノジド(chlormafenozide)、ハロフェノジド(halofenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、テブフェノジド(tebufenozide)、アザジラクチン(azadirachtin);c)幼若ホルモン様物質:ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、ヒドロプレン(hydroprene)、キノプレン(kinoprene)、メトプレン(methoprene)、フェノキシカルブ(fenoxycarb);d)脂質生合成阻害剤:スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat);
- ニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト化合物:アセタミプリド(acetamiprid)、クロチアニジン(clothianidin)、ジノテフラン(dinotefuran)、イミダクロプリド(imidacloprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ニコチン、ベンスルタップ(bensultap)、カルタップ(cartap)塩酸塩、チオシクラム(thiocyclam)、チオスルタップナトリウム(thiosultap-sodium);
式(Γ1)のチアゾール化合物
【化2】
【0027】
および
- GABAアンタゴニスト化合物:アセトプロール(acetoprole)、エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、バニリプロール(vaniliprole)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、バニリプロール(vaniliprole)。
【0028】
好ましい化合物Aには、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、オリサストロビン、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、プロチオコナゾール、プロクロラズ、トリチコナゾール、フルキンコナゾール、メトコナゾール、メタラキシル、メフェノキサムおよびボスカリドより選択される殺菌剤、ならびにフィプロニル、アセタミプリド、イミダクロプリド、チアメトキサムおよびクロチアニジンより選択される殺虫剤/殺ダニ剤が含まれる。
【0029】
化合物Aが式I
【化3】
【0030】
[式中、
Hetは、イミダゾール-2-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イル、特にピラゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イルであり、ここで、Hetは、無置換であるか、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1または2個の基および/または1個のフェニル基(1、2または3個のハロゲン原子を有してもよい)を有してよく;
Xは、Oまたは基CHR3であり;
Yは、CR4R5またはSiR4aR5aであり、Xが基CHR3である場合には、YはOであってもよく;または
XおよびYは一緒になって、化学結合または式
【化4】
【0031】
の二価の基であり;
kは、0、1または2であり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2または3であり;
R1は、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、メトキシ、またはフェニルであり;
R2は、N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)およびC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)より選択され;
R3は、水素またはC1〜C6-アルキル(1、2、3、4または5個のハロゲン原子および/またはOHおよびカルボニル基より選択される1個の官能基を有してもよい)であり;
R4は、水素、CN、OHまたはC1〜C4-アルキルであり、またはR3と一緒になって結合を形成し;
R5は、C1〜C4-アルキル(OH、C1〜C2-アルコキシ、C1〜C2-ハロアルコキシ、C1〜C2-ハロアルキル、トリメチルシリル、C3〜C6-シクロアルキルおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される1または2個の基を有してもよい)、または
フェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり、または
R4およびR5は一緒になって、3〜6員飽和複素環を形成し、前記複素環は環原子として1または2個の酸素原子を有し、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、ハロ-C1〜C4-アルコキシおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキル、特にフッ素、塩素またはメチルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される基を有してもよく;
R4aは、C1〜C4-アルキルまたはC1〜C4-アルコキシ、特にメチルまたはメトキシであり;
R5aは、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシまたはフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキル、特にフッ素、塩素またはメチルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり;
R6は、OHおよびC1〜C4-アルキル、特にOHまたはメチルより独立して選択され;
R6aは、水素およびC1〜C4-アルキルより選択され、かつ
Qは、(CH2)pまたは(CH2)qOであり、ここで、pは、1、2、3または4であり、qは、1、2または3である]
の化合物である結晶複合体が特に好ましい。
【0032】
特に好ましくは、化合物Aには、ピラクロストロビン、オリサストロビン、エポキシコナゾール、プロクロラズ、トリチコナゾール、フルキンコナゾール、メトコナゾール、ボスカリドおよびフィプロニルが含まれる。
【0033】
最も好ましい化合物Aは、エポキシコナゾール、トリチコナゾール、メトコナゾールおよびピラクロストロビンより選択される。
【0034】
本発明の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがエポキシコナゾール(IUPAC:(2RS,3SR)-1-[3-(2-クロロフェニル)-2,3-エポキシ-2-(4-フルオロフェニル)プロピル]-1H-1,2,4-トリアゾール)である結晶複合体に関する。
【0035】
本発明の別の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがピラクロストロビン(IUPAC:メチル{2-[1-(4-クロロフェニル)ピラゾール-3-イルオキシメチル]フェニル}(メトキシ)カルバメート)である結晶複合体に関する。
【0036】
本発明の別の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがメトコナゾール(IUPAC:(1RS,5RS;1RS,5SR)-5-(4-クロロベンジル)-2,2-ジメチル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)シクロペンタノール)である結晶複合体に関する。
【0037】
本発明の別の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがトリチコナゾール(IUPAC:(RS)-(E)-5-(4-クロロベンジリデン)-2,2-ジメチル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)シクロペンタノール)である結晶複合体に関する。
【0038】
本発明の結晶複合体において、チオファネートメチルと化合物Aのモル比は、少なくとも0.5:1であり、0.5:1〜3:1の範囲であってよく、好ましくは0.8:1〜2.5:1または0.9:1〜2.1:1である。特に、前記モル比は1:1〜2:1である。前記範囲からの逸脱は可能であるが、それは一般に20 mol%以下であり、好ましくは10 %以下である。
【0039】
結晶複合体は、X線粉末回折法(PXRD)、IR分光法、特にチオファネートメチルに特徴的な3350 cm-1および3305 cm-1の狭い吸収帯の欠如、固体13C-NMR (13C-CP/MAS:交差分極 - マジック角回転)ならびに熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)などの熱化学分析を含む、結晶性物質の分析に使用される標準的な分析手段により、結晶性チオファネートメチルと結晶性化合物Aの単純な混合物と識別することができる。チオファネートメチルおよび化合物Aの相対的な量は、例えばHPLCまたは1H-NMR分光法により決定することができる。
【0040】
例えば、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)で、純粋な化合物に特徴的な反射が消失したX線粉末回折を示す。特に、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体は、下記の表1に2θ値または格子間隔dとして記載した反射のうち、少なくとも4、好ましくは少なくとも6、特に少なくとも8、より好ましくはすべてを示す。
【表1】
【0041】
本発明の前記実施形態の結晶複合体において、チオファネートメチルとエポキシコナゾールのモル比は、0.9:1〜1.1:1であり、特に約1:1である。
【0042】
チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体の単結晶の研究により、基本結晶構造が三斜晶であり、空間群P-cを有することが示された。構造分析により、結晶複合体はチオファネートメチルとエポキシコナゾールの1:1混合物であり、チオファネートメチルおよびエポキシコナゾールを1分子ずつ含む非対称セルであることが明らかになった。結晶において、チオファネートメチルの2個の分子が、2個の隣接するチオファネートメチル分子のN-H基とC=O基の間の分子間水素結合により二量体を形成している。二量体は、2個のエポキシコナゾール分子の受容体として作用する2個のポケットを形成しているように見える。エポキシコナゾール分子のトリアゾール環の窒素原子とチオファネートメチル分子のNH基の間に水素結合が存在するように見える。さらに、チオファネートメチル分子のフェニル環とエポキシコナゾール分子のフッ素化されたフェニル環の間にπ相互作用が存在すると思われる。この2個のチオファネートメチル分子と2個のエポキシコナゾール分子の複合体は超分子シントンを形成し、それが結晶格子中に充填されて、共結晶を形成する。この複合体の結晶構造の特性データを表2に示す。
【表2】
【0043】
a、b、c = 単位格子のエッジの長さ
α、β、γ = 単位格子の角度
Z = 単位格子中の分子の数
熱重量分析は、エポキシコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体の融解が148℃で開始した後、チオファネートメチルが分解することを示している。
【0044】
例えば、チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)で、純粋な化合物に特徴的な反射が消失したX線粉末回折を示す。特に、チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)でのX線粉末回折において、下記の表3に2θ値または格子間隔dとして記載した反射のうち、少なくとも4、好ましくは少なくとも6、特に少なくとも8、より好ましくはすべてを示す。
【表3】
【0045】
13C-CP/MASにより、固体のチオファネートメチルと固体のピラクロストロビンの単純な混合物の存在ではなく、結晶複合体の存在が確認された。特に、結晶複合体の13C-CP/MAS (CP = 3 ms、D1 = 30 s、25℃、RO 5700 Hz)は、δ182.0、180.8、178.7、177.7、164.3、158.8、154.9、154.0、152.1、139.4、137.9、134.3、131.2、130.2、127.6、125.9、123.8、117.7、115.6、94.3、65.7、63.0、58.8、54.3、53.6および52.6に化学シフトを示した。164.3、158.8 ppmのシフトは最も特徴的であり、チオファネートメチルおよびピラクロストロビンの13C-CP/MASにおいては存在しない。プロトンから13Cへの偏極移行実験により、チオファネートメチルおよびピラクロストロビンが、純粋な化合物の結晶性物質の混合物としてではなく、共結晶として存在することが確認された。
【0046】
本発明の前記実施形態の結晶複合体において、チオファネートメチルとピラクロストロビンのモル比は、1.1:1〜2.5:1の範囲であり、特に1.9:1〜2.1:1、特に約2:1である。
【0047】
熱重量分析は、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体の融点が約150℃であることを示している。
【0048】
例えば、チオファネートメチルとメトコナゾールの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)で、純粋な化合物に特徴的な反射が消失したX線粉末回折を示す。特に、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体は、下記の表4に2θ値または格子間隔dとして記載した反射のうち、少なくとも4、好ましくは少なくとも6、特に少なくとも8、より好ましくはすべてを示す。
【表4】
【0049】
本発明の前記実施形態の結晶複合体において、チオファネートメチルとメトコナゾールのモル比は、0.9:1〜1.1:1であり、特に約1:1である。
【0050】
チオファネートメチルとメトコナゾールの結晶複合体の単結晶の研究により、基本結晶構造が単斜晶であり、空間群P2(1)/cを有することが示された。構造分析により、結晶複合体はチオファネートメチルとメトコナゾールの1:1混合物であり、チオファネートメチルおよびメトコナゾールを1分子ずつ含む非対称セルであることが明らかになった。メトコナゾール分子のトリアゾール環の窒素原子とチオファネートメチル分子のNH基の間に水素結合が存在するように見える。この複合体の結晶構造の特性データを表5に示す。
【表5】
【0051】
a、b、c = 単位格子のエッジの長さ
α、β、γ = 単位格子の角度
Z = 単位格子中の分子の数
メトコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体のDSC測定は、155〜158℃で開始し、160〜168℃のピーク最大値を有する吸熱融解ピークを示す。これは純粋な結晶性メトコナゾール(Pesticide Manualにおける報告によれば100℃)よりも約60℃高く、チオファネートメチルの融点よりも約10〜20℃低い。
【0052】
本発明の結晶複合体は、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aを、溶液もしくはスラリーから、またはチオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aを含む溶融物から共結晶化することにより調製することができる。同様に、本発明の結晶複合体は、化合物Aとチオファネートメチルの混合物を、高温、例えば30℃よりも高い温度、好ましくは40℃以上、特に50℃以上、より好ましくは55℃以上、例えば>30℃〜110℃、好ましくは40℃〜100℃、特に50℃〜90℃、または55℃〜90℃の温度で粉砕することにより調製することも可能である。化合物Aは、粉砕温度で固体であってよい。しかしながら、これは必要ではなく、温度が化合物Aの融点に近いかそれ以上であることが有利であり得る。
【0053】
好ましい実施形態において、チオファネートメチルと少なくとも1種の化合物Aの結晶複合体は、チオファネートメチルと少なくとも1種の化合物Aの有機溶媒中または水と有機溶媒の混合物中のスラリーから得られる。そのため、この方法はチオファネートメチルおよび活性化合物Aを有機溶媒または水と有機溶媒の混合物に懸濁することを含む(スラリー法)。
【0054】
スラリー法に好ましい有機溶媒は、少なくとも部分的に水混和性であるもの、すなわち、室温で10 % v/v以上、より好ましくは20 % v/v以上の水に対する混和性を有するもの、それらの混合物、および前記水混和性溶媒と室温で10 % v/v未満の水混和性を有する有機溶媒との混合物である。好ましくは、有機溶媒は、有機溶媒の総量に対して80 % v/v以上の少なくとも1種の水混和性溶媒を含む。
【0055】
室温で10 %以上の水混和性を有する好適な溶媒には下記のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
1. C1〜C4-アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノールまたはイソプロパノール;
2. C1〜C3-カルボン酸のアミド、N-メチルアミドおよびN,N-ジメチルアミド、例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミド;
3. 合計7個の炭素原子を有する5または6員ラクタム、例えば、ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-イソプロピルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン;
4. ジメチルスルホキシドおよびスルホラン;
5. 3〜6個の炭素原子を有するケトン、例えば、アセトン、2-ブタノン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノン;
6. アセトニトリル;
7. 5または6員ラクトン、例えば、γ-ブチロラクトン;
8. ポリオールおよびポリエーテルオール、例えば、グリコール、グリセリン、ジメトキシエタン、エチレンジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等;
9. 3〜5個の炭素原子を有する環状カーボネート、例えば、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネート;ならびに
10. 環状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびトリオキサン、ジメチル(ポリ)C2〜C3-アルキレングリコールエーテル、例えば、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、低分子量ポリエチレングリコールおよび低分子量ポリプロピレングリコール(MW < 400)。
【0057】
群1、6、8および9の有機溶媒ならびにそれらの水との混合物がより好ましい。水との混合物において、有機溶媒および水の相対量は10:1〜1:10、特に2:1〜1:5の範囲であってよい。
【0058】
スラリー法は、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aを有機溶媒中または溶媒/水混合物中に懸濁することにより簡単に実施することができる。チオファネートメチル、少なくとも1種の化合物Aおよび溶媒または溶媒/水混合物の相対量は、使用する温度で懸濁液が得られるように選択する。チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aが完全に溶解することは避けなければならない。特に、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aは、溶媒または溶媒/水混合物1リットルあたり50〜800 g、より好ましくは100〜600 gの量で懸濁する。
【0059】
チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aの相対的なモル量は、1:2〜20:1、好ましくは1:1〜15:1の範囲である。化合物の1つが結晶複合体の化学量論に対して過剰である場合には、結晶複合体と過剰に存在する化合物の混合物が得られる可能性があるが、少しの過剰は母液中に溶解して存在する可能性がある。製剤の目的には、過剰な化合物Aまたはチオファネートメチルの存在は許容され得る。特に、過剰なチオファネートメチルの存在は安定性の問題を引き起こさない。純粋な結晶複合体を調製するためには、チオファネートメチルおよび化合物Aを、形成される複合体の化学量論に近く、通常化学量論的に必要な量に対して50 mol%より大きく逸脱しない相対モル量で使用する。
【0060】
スラリー法は、通常、10℃以上、好ましくは20℃以上、特に30℃以上、例えば20〜90℃、好ましくは30〜85℃、特に40〜70℃の温度で実施する。
【0061】
スラリー法により結晶複合体を形成するために必要な時間は、温度、溶媒のタイプに依存し、一般に少なくとも12時間である。いずれの場合にも、1週間後には完全な変換が達成されるが、通常、完全な変換に必要な時間は24時間以下である。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態において、結晶複合体は、チオファネートメチルおよび活性化合物Aの懸濁した粒子を含む液体に、30℃以上の温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることにより調製される(せん断法)。
【0063】
液体中で、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aは、液体媒体中に懸濁した粒子として存在する。高温で液体にせん断力を加えると、結晶複合体の形成が起こる。
【0064】
液体媒体の主成分は、水、またはチオファネートメチルおよび化合物Aが実質的に不溶性である、すなわち、25℃における溶解度が5 g/l未満、特に1 g/l未満である有機溶媒である。好適な有機溶媒には、脂肪族炭化水素、ミネラルスピリット、植物油および植物油エステルが含まれる。好ましい実施形態において、液体媒体は、主成分として、水、または水と20 % v/v以下の水混和性溶媒、特に群1または9の溶媒との混合物を含む。それ以外に、液体媒体は、通常液体懸濁液濃縮物に存在する添加剤をも含んでよい。
【0065】
液体媒体は、チオファネートメチルおよび結晶性化合物Aを、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総量に対して5〜70重量%、特に10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%の量で含む。
【0066】
液体媒体は、チオファネートメチルおよび結晶性化合物Aを、1:2〜20:1、好ましくは1:1〜15:1の範囲のチオファネートメチルと少なくとも1種の化合物Aの相対モル量で含有し得る。成分の一つが、結晶複合体の化学量論に対して過剰である場合には、結晶複合体と過剰に存在する化合物の混合物が得られる。製剤の目的には、過剰な化合物Aまたはチオファネートメチルの存在は許容され得る。特に、過剰なチオファネートメチルの存在は安定性の問題を引き起こさない。同様に、過剰な化合物Aの存在は通常安定性の問題を引き起こさない。しかしながら、製剤中での制御されない複合体の形成を避けるために、製剤が、複合体を形成していないチオファネートメチルおよび複合体を形成していない化合物Aの両方を、結晶複合体の形で存在する化合物Aおよびチオファネートの量に対してそれぞれ20重量%よりも多い量で、または特にそれぞれ10重量%よりも多い量で含有しないことが好ましい。したがって、本発明は、特に、本発明の結晶複合体を含む製剤であって、ただし、化合物Aおよびチオファネートの両方が製剤中に複合体を形成しない形で存在する場合には、化合物Aの量は製剤中の複合体の量に対して20重量%以下、特に10重量%以下であり、同時に、チオファネートメチルの量は製剤中の複合体の量に対して20重量%以下、特に10重量%以下である前記製剤に関する。
【0067】
液体媒体は、液体懸濁液濃縮物中に通常存在する添加剤を含んでもよい。好適な添加剤については、下に記載するが、通常作物保護組成物に使用する界面活性剤、特にアニオンまたは非イオン乳化剤、湿潤剤および分散剤、さらに消泡剤、凍結防止剤、pH調節剤、安定剤、凝固防止剤、染料および殺生物剤(保存剤)が含まれる。好ましくは、液体媒体は粘性調節添加剤(増粘剤)を含まない。界面活性剤の量は、一般に、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総重量に対して、0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。凍結防止剤の量は、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総重量に対して、10重量%以下、特に20重量%以下、例えば、0.5〜20重量%、特に1〜10重量%である。凍結防止剤および界面活性剤以外の添加剤は、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総重量に対して、0〜5重量%の量で存在し得る。
【0068】
結晶複合体の形成に必要な温度は、一般に30℃以上、好ましくは35℃以上、特に40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に55℃以上、例えば、30〜100℃、好ましくは35〜100℃、特に40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、特に55〜80℃である。
【0069】
結晶複合体の形成に必要な時間は、公知の方式でせん断法のタイプおよび温度に依存し、当業者が標準的な実験により決定することができる。例えば30分〜48時間の範囲のせん断時間が好適であることが見出されているが、より長い時間も考えられる。1〜24時間のせん断時間が好ましい。
【0070】
せん断力は、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aの粒子を緊密に接触させるのに十分なせん断を提供することができる好適な技術により加えることができる。好適な技術には、グラインディング、破砕またはミリングが含まれ、特に、例えばビーズミリングを含む湿式グラインディングまたは湿式ミリングにより、またはコロイドミルを使用することにより実施する。好適なせん断装置には、特に、ボールミルまたはビーズミル、撹拌ボールミル、循環ミル(ピン粉砕システムを有する撹拌ボールミル)、ディスクミル、環状チャンバーミル、ダブルコーンミル、三本ロールミル、バッチミル、コロイドミル、およびサンドミルなどの媒体ミルが含まれる。粉砕プロセスの間に導入される熱エネルギーを放散するために、好ましくは粉砕チャンバーに冷却システムを取り付ける。特に好適なものは、ボールミルDrais Superflow DCP SF 12(DRAISWERKE、INC.製、40 Whitney Road. Mahwah, NJ 07430 USA)、Drais Perl Mill PMC(DRAISWERKE、INC.製)、循環ミルシステムZETA(Netzsch-Feinmahltechnik GmbH製)、Netzsch Feinmahltechnik GmbH, Selb, Germany製のディスクミル、ビーズミルEiger Mini 50(Eiger Machinery, Inc.製、888 East Belvidere Rd., Grayslake, IL 60030 USA)およびビーズミルDYNO-Mill KDL(WA Bachofen AG製、Switzerland)である。しかしながら、高せん断攪拌機、Ultra-Turrax装置、静的ミキサー、例えば混合ノズルを有するシステムおよびコロイドミルなどの他のホモジナイザーを含む、他のホモジナイザーも好適であり得る。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、せん断はビーズミルによりおこなう。特に、0.05〜5 mm、より好ましくは0.2〜2.5 mm、最も好ましくは0.5〜1.5 mmの範囲のビーズ径が好適であることが見出された。一般に、40〜99 %、特に70〜97 %、最も好ましくは65〜95 %の範囲のビーズ充填率を使用し得る。
【0072】
十分なせん断力を加えた後、結晶複合体の懸濁液が、場合により過剰なチオファネートメチルまたは活性化合物Aとの混合物として得られる。ここで、懸濁した粒子の90重量%が、動的光散乱により測定して、30μm以下、好ましくは20μm以下、特に10μm以下、特に5μm以下の粒径を有する。
【0073】
このようにして得られた結晶複合体の液体懸濁液を、添加物と共に製剤した後、または特に製剤する前に、通常の乾燥法、特に噴霧乾燥または凍結乾燥により、粉末組成物に変換することができる。乾燥の前または間に、乾燥または噴霧補助剤を加えてもよい。水性分散物の乾燥に適した乾燥または噴霧補助剤は公知である。これらには、保護コロイド、例えばポリビニルアルコール、特に>70%の加水分解度を有するポリビニルアルコール、カルボキシル化ポリビニルアルコール、フェノールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸/尿素/ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド/尿素縮合物、ポリビニルピロリドン、マレイン酸(または無水マレイン酸)とスチレンおよびそのエトキシ化誘導体などのビニル芳香族とのコポリマー、マレイン酸または無水マレイン酸とジイソブテンなどのC2〜C10-オレフィンおよびそのエトキシ化誘導体とのコポリマー、カチオンポリマー、例えばN-アルキル-N-ビニルイミダゾリニウム化合物とN-ビニルラクタム等とのホモおよびコポリマー、ならびに無機ブロッキング防止剤(凝固防止剤とも呼ばれる)、例えば、ケイ酸、特に焼成シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が含まれる。乾燥補助剤は、通常、本発明の液体殺有害生物組成物中の活性化合物粒子の重量に対して、0.1〜20重量%の量で使用する。
【0074】
上で既に述べた通り、本明細書において定義される結晶複合体は作物保護組成物を調製するのに好適であり、特に水性懸濁液濃縮物を調製するのに好適である。したがって、本発明はまた、本明細書において定義される結晶複合体、適切な場合には液相、ならびに適切な場合には通常の一般に固体の担体および/または補助剤を含む作物保護組成物を提供する。
【0075】
好適な担体は、原則として、作物保護組成物、特に殺菌剤に通常使用されるすべての固体の物質である。固体の担体は、例えば、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、アタクレー(attaclay)、石灰石、石灰、白亜、赤土、黄土、粘土、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの鉱物、粉砕した合成材料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの肥料、ならびに穀物の粗挽き粉、樹皮の粗挽き粉、木材の粗挽き粉および木の実の殻の粗挽き粉などの植物由来の製品、セルロース粉末および他の固体の担体である。
【0076】
結晶複合体の液体の製剤の場合には、組成物は液相を有する、好適な液相は、原則として、水、ならびにピラクロストロビンが難溶性または不溶性である有機溶媒、例えば、25℃および1013 mbarにおけるピラクロストロビンの溶解度が1重量%以下、特に0.1重量%以下、特に0.01重量%以下である有機溶媒である。
【0077】
典型的な補助剤には、界面活性剤、特に作物保護組成物に通常使用される湿潤剤および分散剤、さらに、粘性を変更する添加物(増粘剤)、消泡剤、凍結防止剤、pH調節剤、安定剤、凝固防止剤および殺生物剤(保存剤)が含まれる。
【0078】
本発明は特に、懸濁液濃縮物、特に水性懸濁液濃縮物(SC)の形の作物保護組成物に関する。前記懸濁液濃縮物は、微細に粉砕された粒子の形の結晶複合体を含み、ここで、結晶複合体の粒子は液体媒体、好ましくは水性媒体中に懸濁される。活性化合物粒子の粒径、すなわち活性化合物粒子の90重量%がそれ以下である粒径は、動的光散乱により測定して、典型的には30μm以下、好ましくは20μm以下、特に10μm以下、特に5μm以下である。有利には、本発明のSC中の40重量%以上、特に、60重量%以上の粒子が2μm未満の直径を有する。
【0079】
懸濁液濃縮物、特に水性懸濁液濃縮物は、結晶複合体を、下に記載する通りの通常の製剤添加剤を含有してもよい好適な液体の担体中に懸濁することにより調製することができる。しかしながら、本明細書に記載するせん断法により、すなわち、チオファネートメチルおよび活性化合物Aの懸濁した粒子ならびに場合により別の添加剤を含む液体に、30℃以上の温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることにより懸濁液濃縮物を調製することが好ましい。
【0080】
活性化合物に加えて、懸濁液濃縮物は、典型的には、界面活性剤、ならびに適切な場合には、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤、安定剤(殺生物剤)、pH調節剤および凝固防止剤を含む。
【0081】
前記SCにおいて、活性化合物の量、すなわち、結晶複合体および適切な場合には別の活性化合物の総量は、懸濁液濃縮物の総重量に対して、通常10〜70重量%の範囲、特に15〜50重量%の範囲である。
【0082】
好ましい界面活性剤はアニオンおよび非イオン界面活性剤(乳化剤)である。また、好適な界面活性剤は保護コロイドである。一般に、界面活性剤の量は、本発明のSCの総重量に対して0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。好ましくは、界面活性剤は少なくとも1種のアニオン界面活性剤および少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含み、アニオン界面活性剤の非イオン界面活性剤に対する比は、典型的には10:1〜1:10の範囲である。
【0083】
アニオン界面活性剤(アニオンテンシド(tensides)、乳化剤および分散剤)の例には、アルキルアリールスルホネート、フェニルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアリールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコールエーテルホスフェート、ポリアリールフェニルエーテルホスフェート、アルキルスルホコハク酸塩、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、石油スルホネート、タウリド(taurides)、サルコシド(sarcosides)、脂肪酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグノスルホン酸、スルホン化ナフタレンとホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドおよびフェノールおよび適切な場合には尿素との縮合物、ならびにフェノールスルホン酸、ホルムアルデヒドおよび尿素の縮合物、リグノ亜硫酸廃液およびリグノスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルアリールホスフェート、例えばトリスチリルホスフェート、ならびに上記の物質のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩が含まれる。好ましいアニオン界面活性剤は、少なくとも一つのスルホネート基、特にそれらのアルカリ金属塩およびそれらのアンモニウム塩を有するものである。
【0084】
非イオン界面活性剤(非イオン乳化剤および分散剤)の例には、アルキルフェノールアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、脂肪ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、イソトリデシルアルコール、脂肪アミド、メチルセルロース、脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー(ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー)、およびそれらの混合物が含まれる。好ましい非イオン界面活性剤は、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステルおよびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーおよびそれらの混合物である。
【0085】
保護コロイドは、典型的には、水溶性両親媒性ポリマーである。例には、タンパク質およびカゼインなどの変性タンパク質、水溶性デンプン誘導体およびセルロース誘導体などの多糖、特に疎水性に修飾したデンプンおよびセルロース、さらにポリカルボキシレート、例えば、ポリアクリル酸(ポリアクリレート)、アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーまたはマレイン酸コポリマー、例えばアクリル酸/オレフィンコポリマー、アクリル酸、スチレンコポリマー、無水マレイン酸/オレフィンコポリマー(例えば、SokalanR CP9、BASF)および前記コポリマーとポリエチレングリコールとのエステル化産物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルアミン、ポリエチレンアミンおよびポリアルキレンエーテルが含まれる。
【0086】
特に、本発明のSCは、水性の施用形態による植物の部分の濡れを改善する少なくとも1種の界面活性剤(湿潤剤)およびSC中での活性化合物粒子の分散を安定化させる少なくとも1種の界面活性剤(分散剤)を含む。湿潤剤の量は、SCの総重量に対して、典型的には0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%、特に0.5〜3重量%の範囲である。分散剤の量は、SCの総重量に対して、典型的には0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%である。
【0087】
好ましい湿潤剤は、アニオン性または非イオン性であり、例えば、ナフタレンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩、さらに脂肪アルコールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、脂肪ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレートおよび脂肪酸ポリグリコールエステルより選択される。
【0088】
好ましい分散剤は、アニオン性または非イオン性であり、例えば、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー、アルキルアリールホスフェート、例えばトリスチリルホスフェート、リグノスルホン酸、スルホン化ナフタレンとホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドおよびフェノールおよび適切な場合には尿素との縮合物、ならびにフェノールスルホン酸、ホルムアルデヒドおよび尿素の縮合物、リグノ亜硫酸廃液およびリグノスルホネート、ポリカルボキシレート、例えばポリアクリレート、無水マレイン酸/オレフィンコポリマー(例えば、SokalanR CP9、BASF)、ならびに前記の物質のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩より選択される。
【0089】
本発明のSCに好適な粘性を変更する添加剤(増粘剤)は、特に、製剤に擬塑性流動特性を与える化合物、すなわち、休止状態では高い粘性を有し、撹拌状態では低い粘性を有するような特性を与える化合物である。好適なものは、原則として、この目的で懸濁液濃縮物に使用されるすべての化合物である。例えば、無機物質、例えば、ベントナイトまたはアタプルガイト(attapulgites)(例えば、Engelhardt製のAttaclayR)、および有機物質、例えば、Xanthan GumR (Kelco製のKelzanR)、RhodopolR23 (Rhone Poulenc)またはVeegumR (R.T. Vanderbilt製)などの多糖およびヘテロ多糖が挙げられ、Xanthan-GumRを使用することが好ましい。粘性を変更する添加剤の量は、しばしば、SCの総重量に対して0.1〜5重量%である。
【0090】
本発明のSCに好適な消泡剤は、例えば、この目的に公知のシリコーンエマルション(Wacker製のSilikonR SRE、またはRhodia製のRhodorsilR)、長鎖アルコール、脂肪酸、蝋の水性分散物タイプの消泡剤、固体の消泡剤(いわゆるコンパウンド)、有機フッ素化合物およびそれらの混合物である。消泡剤の量は、典型的には、SCの総重量に対して0.1〜1重量%である。
【0091】
本発明の懸濁液濃縮物を安定化させるために保存剤を加えてもよい。好適な保存剤は、イソチアゾロンをベースとするもの、例えば、ICI製のProxelRまたはThor Chemie製のActicideR RSまたはRohm & Haas製のKathonR MKである。殺菌剤(bactericide)の量は、典型的には、SCの総重量に対して0.05〜0.5重量%である。
【0092】
好適な凍結防止剤は、液体のポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセロールである。凍結防止剤の量は、一般に、懸濁液濃縮物の総重量に対して1〜20重量%、特に5〜10重量%である。
【0093】
適切な場合には、本発明のSCは、pHを調節するために緩衝剤を含んでもよい。緩衝剤の例は、例えばリン酸、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、シュウ酸およびコハク酸などの弱い無機または有機酸のアルカリ金属塩である。
【0094】
結晶複合体の製剤を種子の処理に使用する場合には、製剤は、さらに種子の処理、例えばドレッシングまたはコーティングに使用される通常の成分を含んでもよい。例としては、上記の成分に加えて、着色剤、粘着剤、充填剤および可塑剤が挙げられる。
【0095】
着色剤は、このような目的に通常使用されるすべての染料および顔料である。ここでは、水に難溶性の顔料および水溶性の染料の両方を使用することができる。言及し得る例は、ローダミンB、C.I.ピグメントレッド112およびC.I.ソルベントレッド1、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー80、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー13、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ5、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン7、ピグメントホワイト6、ピグメントブラウン25、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット49、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド14、アシッドブルー9、アシッドイエロー23、ベーシックレッド10、ベーシックレッド108の名称で知られる染料および顔料である。着色剤の量は、通常、製剤の20重量%以下であり、好ましくは、製剤の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲である。
【0096】
粘着剤は、ドレッシング製品に使用することができるすべての通常の結合剤である。好適な結合剤の例には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールおよびタイロースなどの熱可塑性ポリマー、ならびに、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリスチレン、ポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、上記の保護コロイド、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリ無水物、ポリエステルウレタン、ポリエステルアミド、熱可塑性多糖、例えば、セルロースエステル、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステルなどのセルロール誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースを含む)ならびにデンプン誘導体および修飾されたデンプン、デキストリン、マルトデキストリン、アルギン酸塩およびキトサン、さらに、脂肪、油、タンパク質(カゼイン、ゼラチンおよびゼインを含む)、アラビアゴム、セラックが含まれる。好ましい粘着剤は、生物適合性である。すなわち、それらは顕著な植物毒性活性を有しない。好ましくは、粘着剤は生物分解性である。好ましくは、粘着剤は、製剤の活性成分のマトリックスとして作用するように選択する。粘着剤の量は、通常、製剤の40重量%以下であり、好ましくは、製剤の総重量に対して、1〜40重量%の範囲、特に5〜30重量%の範囲である。
【0097】
粘着剤の他に、製剤は不活性充填剤を含んでもよい。これらの例には、上記の固体の担体材料、特に、粘土、白亜、ベントナイト、カオリン、タルク、パーライト、マイカ、シリカ、珪藻土、石英粉末、モンモリロナイトなどの微粒子状無機材料、ならびに、木材粉末、穀類粉末、活性炭等などの微粒子状有機材料が含まれる。充填剤の量は、好ましくは、充填剤の総量が、製剤のすべての非揮発性成分の総重量に対して75重量%以下となるように選択する。一般的に、充填剤の量は、製剤のすべての非揮発性成分の総重量に対して1〜50重量%の範囲である。
【0098】
さらに、製剤は、コーティングの柔軟性を増大する可塑剤を含んでもよい。可塑剤の例には、オリゴマーポリアルキレングリコール、グリセロール、ジアルキルフタレート、アルキルベンジルフタレート、グリコールベンゾエートおよび関連する化合物が含まれる。コーティング中の可塑剤の量は、しばしば、製剤の総重量に対して0.1〜20重量%の範囲である。
【0099】
本発明の結晶複合体は、化合物Aに応じて植物病原性の菌類または害虫を防除するために、公知の方法により使用することができる。特に、結晶複合体は、活性を増大させるためおよび/または活性スペクトルを広くするために別の活性化合物と共に製剤することができる。これらには、原則として、通常ピラクロストロビンと共に使用されるすべての殺虫剤および殺菌剤が含まれる。本発明の新規の結晶複合体は、葉に施用する殺菌剤、ドレッシングおよび土壌の殺菌剤として、植物の保護に使用することができる。
【0100】
それらは、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、牧草、バナナ、ワタ、ダイズ、コーヒー、サトウキビ、ブドウ、果実および観賞用植物などの種々の栽培植物、ならびにキュウリ、マメ、トマト、ジャガイモおよびウリ科植物などの野菜における、ならびにこれらの植物の種子における数多くの菌類を防除するために特に重要である。
【0101】
本発明の結晶複合体は、懸濁液濃縮物として製剤することができる活性化合物と共に、懸濁液濃縮物として製剤するのに特に適している。したがって、本発明の好ましい実施形態は、結晶複合体に加えて、微細に粉砕された微粒子の形の少なくとも1種の別の活性化合物を含む懸濁液濃縮物に関する。粒径、活性化合物の量および補助剤に関しては、上に記載した通りである。
【0102】
結晶複合体と混合する典型的な別の混合成分には、前記の化合物A、特に前記の殺菌剤および殺虫剤/殺ダニ剤が含まれる。
【0103】
原則として、本発明の結晶複合体の製剤は、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを併用した従来の製剤により防除することができる有害な菌類または他の有害生物により引き起こされるすべての植物の病気を防除するために使用することができる。化合物Aまたは別の混合成分に応じて、前記病気は、例えば、下記の植物の病気の一つである。
【0104】
・野菜、アブラナ、サトウダイコン、ダイズ、穀類、ワタ、果実およびイネのアルテルナリア(Alternaria)属、
(例えば、ジャガイモおよび種々の植物のアルテルナリア・ソラニ(A. solani)またはアルテルナリア・アルテルナタ(A. alternata))、
・サトウダイコンおよび野菜のアファノミセス(Aphanomyces)属、
・ワタおよびイネのアスコキタ(Ascochyta)属、
・トウモロコシ、穀類、イネおよびシバのビポラリス(Bipolaris)およびドレクスレラ(Drechslera)属、
(例えば、オオムギのドレクスレラ・テレス(D.teres)、コムギのドレクスレラ・トリチ-レペンチス(D. tritci-repentis))、
・穀物のブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)(うどん粉病)、
・イチゴ、野菜、花およびブドウのボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色カビ病)、
・ワタのボトリオジプロジア(Botryodiplodia)属、
・レタスのブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、
・トウモロコシ、ダイズ、イネおよびサトウダイコンのセルコスポラ(Cercospora)属、(例えば、サトウダイコンのセルコスポラ・ベチクラ(C. beticula))、
・トウモロコシ、穀類、イネのコクリオボルス(Cochliobolus)属、(例えば、穀類のコクリオボルス・サチブス(Cochliobolus sativus)、イネのコクリオボルス・ミヤベアヌス(Cochliobolus miyabeanus))、
・ダイズ、ワタおよび種々の植物のコリネスポラ(Corynespora)属、
・ダイズ、ワタおよび種々の植物ののコレトトリクム(Colletotricum)属、
(例えば、種々の植物のコレトトリクム・アクタタム(C. acutatum))、
・穀類およびイネのクルブラリア(Curvularia)属、
・穀類およびトウモロコシのジプロジア(Diplodia)属、
・トウモロコシのエクセロヒルム(Exserohilum)属、
・ウリ科植物のエリシフェ・シコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)およびスファエロセカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、
・種々の植物のフサリウム(Fusarium)およびベルチシリウム(Verticillium)属(例えば、ベルチシリウム・ダリアエ(V dahliae)、
(例えば、コムギのフサリウム・グラミネアルム(F. graminearum))、
・穀類のガエウマノミセス・グラミニス(Gaeumanomyces graminis)、
・穀類およびイネのギベレラ(Gibberella)属(例えば、イネのギベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi))、
・イネの穀物汚染複合体、
・トウモロコシおよびイネのヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属(例えば、ヘルミントスポリウム・グラミニコラ(H. graminicola))、
・ダイズおよびワタのマクロホミナ(Macrophomina)属、
・穀類のミクロドキウム(Michrodochium)属、例えば、ミクロドキウム・ニバレ(M. nivale)、
・穀類、バナナおよびラッカセイのミコスフェレラ(Mycosphaerella)属、(コムギのミコスフェレラ・グラミニコラ(M. graminicola)、バナナのミコスフェレラ・フィジエシス(M.fijiesis))、
・ダイズのファエオイサリプシス(Phaeoisaripsis)属、
・ダイズのファコプサラ(Phakopsara)属、例えば、ファコプサラ・パキリジ(P. pachyrhizi)およびファコプサラ・メイボミアエ(Phakopsara meibomiae)、
・ダイズのホマ(Phoma)属、
・ダイズ、ヒマワリおよびブドウのホモプシス(Phomopsis)属、(ブドウのホモプシス・ビチコラ(P. viticola)、ヒマワリのホモプシス・ヘリアンチイ(P. helianthii))、
・ジャガイモおよびトマトのフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、
・ブドウのプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、
・ダイズおよびワタのペネシリウム(Penecilium)属、
・リンゴのポドスフェラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha)、
・穀類のシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)、
・ホップおよびウリ科植物のシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)属、(例えば、キュウリのシュードペロノスポラ・クベニス(P. cubenis))、
・穀類、トウモロコシおよびアスパラガスのプクキニア(Puccinia)属(コムギのプクキニア・トリチシナ(P. triticina)およびプクキニア・ストリホルミス(P. striformis)、アスパラガスのプクキニア・アスパラギ(P. asparagi))、
・穀類のピレノホラ(Pyrenophora)属、
・イネのピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、コルチシウム・ササキイ(Corticium sasakii)、サロクラジウム・オリザエ(Sarocladium oryzae)、サロクラジウム・アテヌアタム(S.attenuatum)、エンチロマ・オリザエ(Entyloma oryzae)、
・シバおよび穀類のピリクラリア・グリセア(Pyricularia grisea)、
・シバ、イネ、トウモロコシ、ワタ、アブラナ、ヒマワリ、サトウダイコン、野菜および種々の植物のピチウム属(Pythium spp.)、
・ワタ、イネ、ジャガイモ、シバ、トウモロコシ、アブラナ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜および種々の植物のリゾクトニア(Rhizoctonia)属(例えば、リゾクトニア・ソラニ(R. solani))、
・イネおよび穀類のリンコスポリウム(Rhynchosporium)属(例えば、リンコスポリウム・セカリス(R. secalis)、
・アブラナ、ヒマワリおよび種々の植物のスクレロチニア(Sclerotinia)属、
・コムギのセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)およびスタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum)、
・ブドウのエリシフェ(異名:ウンシヌラ)・ネカトル(Erysiphe(syn. Uncinula)necator)、
・トウモロコシおよびシバのセトスパエリア(Setospaeria)属、
・トウモロコシのスファセロテカ・レイリニア(Sphacelotheca reilinia)、
・ダイズおよびワタのチエバリオプシス(Thievaliopsis)属、
・穀類のチレチア(Tilletia)属、
・穀類、トウモロコシおよびサトウダイコンのウスチラゴ(Ustilago)属、ならびに
・リンゴおよびセイヨウナシのベンツリア(Venturia)属(黒星病)、(例えば、リンゴのベンツリア・イナエクアリス(V. inaequalis))。
【0105】
本発明の複合体は、公知の方法により、昆虫、ダニ(acaricid)または線虫に対して活性を示す別の化合物と共に製剤してもよい。さらに、チオファネートメチルと、刺す、噛む(chewing、biting)または吸う昆虫および他の節足動物に対して活性を有する化合物Aとの結晶複合体を提供すること、または結晶複合体を少なくとも1種の刺す、噛む(chewing、biting)または吸う昆虫および他の節足動物に対して活性を有する前記他の活性成分と共に製剤することが特に有利であることが証明された。刺す、噛む(chewing、biting)または吸う昆虫および他の節足動物には、例えば下記の目に属するものが含まれる。
【0106】
・鞘翅目、特にフィロファガ・クヤバナ(Phyllophaga cuyabana)などのフィロファガ(Phyllophaga)属、ステルネクス・ピングシ(Sternechus pingusi)、ステルネクス・スブシグナタス(Sternechuns subsignatus)などのステルネクス(Sternechus)属、プロメコプス・カリニコリス(Promecops carinicollis)などのプロメコプス(Promecops)属、アラカンタス・モレイ(Aracanthus morei)などのアラカンタス(Aracanthus)属、およびジアブロチカ・スペシオサ(Diabrotica speciosa)、ジアブロチカ・ロンギコルニス(Diabrotica longicornis)、ジアブロチカ・12-プンクタタ(Diabrotica 12-punctata)、ジアブロチカ・ビルギフェラ(Diabrotica virgifera)などのジアブロチカ(Diabrotica)属、
・鱗翅目、特にモロコシマダラメイガ(Elasmopalpus lignosellus)などのエラスモパルプス(Elasmopalpus)属、ジロボデルス(Diloboderus)属、
・等翅目、特にリノテルミチダ(Rhinotermitida)、
・同翅目、特にダルブルス・マイディス(Dalbulus maidis)、
および、線虫、例えば、「根コブ」線虫、例えば、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)および他のメロイドギネ(Meloidogyne)属などのメロイドギネ属;シスト形成線虫(cyst-forming nematodes)、例えば、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)および他のグロボデラ(Globodera)属;ムギシストセンチュウ(Heterodera avenae)、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、テンサイシストセンチュウ(Heterodera schachtii)、クローバーシストセンチュウ(Heterodera trifolii)および他のヘテロデラ(Heterodera)属;コブ(Gall)線虫、例えば、アングイナ(Anguina)属;茎線虫および葉線虫、例えば、アフェレンコイデス(Aphelenchoides)属。
【0107】
例えば、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体を含む製剤を、下記の有害な菌類:
- 穀類、ワタおよびイネのアルテルナリア(Alternaria)属、
- ワタおよびイネのアスコキタ(Ascochyta)属、
- ワタのボトリオジプロジア(Botryodiplodia)属、
- トウモロコシ、ダイズ、イネおよび種々の植物のセルコスポラ(Cercospora)属、
- ダイズ、ワタおよび種々の植物のコリネスポラ(Corynespora)属、
- ダイズ、ワタおよび種々の植物のコレトトリクム(Colletotrichum)属、
- 穀類およびイネのクルブラリア(Curvularia)属、
- 穀類およびイネのジプロジア(Diplodia)属、
- 穀類およびイネのドレクスレラ(Drechslera)属、
- 穀類、ダイズおよびワタのフサリウム(Fusarium)属、
- 穀類およびイネのギベレラ(Giberella)属、
- ダイズおよびワタのマクロホミア(Macrophomia)属、
- ダイズおよびワタのペネシリウム(Penecilium)属、
- ダイズのファエオイサリプシス(Phaeoisaripsis)属、
- ダイズのホマ(Phoma)属、
- ダイズのホモプシス(Phomopsis)属、
- ダイズおよびワタのピチウム(Pythium)属、
- ピレノホラ(Pyrenophora)属、
- イネのピリクラリア(Pyricularia)属、
- ダイズ、イネおよびワタのリゾクトニア(Rhizoctonia)属、
- イネのリコスポリウム(Rhychosporium)属、
- ダイズのセプトリア(Septoria)属、
- 穀類およびイネのチレチア(Tilletia)属、
- 穀類のウスチラゴ(Ustilago)属
を防除するために使用することができる。
【0108】
例えば、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体、および別の成分としてフィプロニルまたは他のGABAアンタゴニスト、例えばアセトプロール、エンドスルファン、エチプロール、バニリプロール、ピラフルプロールまたはピリプロールを含む製剤を、上記の通りの有害な菌類の一つを防除し、同時に昆虫、例えば、
・鞘翅目、特にフィロファガ・クヤバナ(Phyllophaga cuyabana)などのフィロファガ(Phyllophaga)属、ステルネクス・ピングシ(Sternechus pingusi)、ステルネクス・スブシグナタス(Sternechuns subsignatus)などのステルネクス(Sternechus)属、プロメコプス・カリニコリス(Promecops carinicollis)などのプロメコプス(Promecops)属、アラカンタス・モレイ(Aracanthus morei)などのアラカンタス(Aracanthus)属、およびジアブロチカ・スペシオサ(Diabrotica speciosa)、ジアブロチカ・ロンギコルニス(Diabrotica longicornis)、ジアブロチカ・12-プンクタタ(Diabrotica 12-punctata)、ジアブロチカ・ビルギフェラ(Diabrotica virgifera)などのジアブロチカ(Diabrotica)属、オリゾファグス(Oryzophagus)属、および
・鱗翅目、特にモロコシマダラメイガ(Elasmopalpus lignosellus)などのエラスモパルプス(Elasmopalpus)属、ジロボデルス(Diloboderus)属
を防除するために使用することができる。
【0109】
チオファネートメチルおよびエポキシコナゾールを含む製剤を、例えば、下記の有害な菌類:
- 穀類のミクロドキウム(Microdochium)属、
- 穀類およびイネのチレチア(Tilletia)属、
- 穀類のウスチラゴ(Ustilago)属
を防除するために使用することができる。
【0110】
特に、チオファネートメチルおよびメトコナゾールを含む製剤を、例えば、下記の有害な菌類:
- 穀類のリンコスポリウム(Rhynchosporium)属、
- トウモロコシのスファセロテカ(Sphacelotheca)属、
- ダイズのセプトリア(Septoria)属
を防除するために使用することができる。
【0111】
新規の結晶複合体は、結晶複合体のみを含む低溶媒または無溶媒の水性懸濁液濃縮物、ならびに結晶複合体および別の作物保護剤、特に上に示した混合成分を含む低溶媒または無溶媒の水性懸濁液濃縮物の両方の調製を可能にする。溶媒含有量、特に凍結防止剤を除く芳香族炭化水素の含有量は、一般に、懸濁液濃縮物の2重量%以下であり、しばしば2重量%よりも少ない。本発明の懸濁液濃縮物は、化合物Aまたは化合物Aとチオファネートメチルの混合物を含有する公知の懸濁液濃縮物および乳化懸濁液濃縮物と比較して、特に、保存安定性が改善されている点で優れている。
【0112】
下記の図面および実施形態は、本発明を説明するために提供するものであり、本発明を限定するものと理解されるべきではない。
【0113】
分析
X線粉末回折(PXRD)の図は、Siemens製のD-5000回折計を用いて、25℃において、Cu-Kα線を用いて、2θ = 4°〜35°の範囲、0.02°の増分の反射配置で測定した。得られた2θ値は、記載した格子面間隔dを計算するために使用した。
【0114】
単結晶X線回折。データは、黒鉛により単色化したCuKα線(λ = 1.54178Å)を用いて、Bruker AXS CCD検出器により103(2) Kで収集した。構造は、SHELX-97ソフトウェアパッケージによるフーリエ技術を用いて、直接法により解析し、精密化し、展開した(expanded)。
【0115】
熱重量分析/示差熱分析は、Mettler Toledo TGA/SDTA 851により、基準としてAl2O3を用いて実施した。サンプル(8〜22 mg)を白金製サンプルカップに入れて測定した。N2ガス流下、10℃/分で30〜605℃の温度プログラムを使用した。
【0116】
示差走査熱量測定(DSC)は、TS0801RO Sample RobotおよびTS08006C1 Gas Controlを用いたMettler Toledo DSC 823eによりおこなった。測定は、ピンホールを有するアルミニウムのるつぼを用いて、30〜185℃で、5℃/分の加熱速度で実施した。
【0117】
13C-CP/MAS測定は、7Tワイドボアマグネットに連結したBRUKER Avance 300装置により実施し、13C共鳴周波数は75.47 MHzであった。5700 Hzで回転する7 mm o.d. ZrO2ローターを有するBruker MASプローブを使用した(これは、等方性シグナルから75.5 ppmの間隔を有するスピニングサイドバンドを作る)。13Cスペクトルは、交差分極(Hartmann-Hahn contact 3ms、B1= 45 kHz)、捕捉(acquisition)時間35 ms、捕捉の間のTPPMモジュレートデカップリング(B1=45 kHz)、待ち時間2sから120s(プロトンの推測される(または測定された)縦緩和時間T1(H)に依存する);走査の数500〜10000(使用する待ち時間に依存する)により得た。ppmスケールは、アダマンタンの低磁場シグナルを38.066 ppmとして外部から較正した。「混合結晶」の典型的な測定は、例えば、スキャンの間の待ち時間を120秒として500スキャンをおこない、そのため、測定の総時間は17時間であった。
【0118】
サンプルのIRスペクトルは、DTGS KBr検出器を有するThermo Nicolet Nexus 470 IR分光光度計により、KBr錠から測定した。
【0119】
懸濁液濃縮物中の粒径は、Malvern Instruments GmbH製のMastersizer 2000を用いて測定した。
【0120】
エポキシコナゾールはラセミ混合物を使用した。これは、22℃で熱力学的に安定な単斜晶結晶型Iとして存在することが知られている。I型の単結晶構造は決定されている(単斜晶、空間群P21/n、a = 5.396Å、b = 17.304Å、c = 16.568Å、β = 91.742°)。PXRD実験データを図2に示す。I型は、130〜140℃の融解範囲を有する。
【0121】
チオファネートメチルは、22℃で熱力学的に安定な単斜晶結晶型として存在することが知られている。単結晶のX線分析により、a=10.715Å、b=11.548Å、c=11.548Åおよびβ=90.49°の寸法を有する単斜晶単位格子(空間群P21/n)であることが明らかになった。チオファネートメチルは融解した後、直接分解する(I型のm.p.〜180℃)。
【0122】
ピラクロストロビンは、WO 2006/136357に記載される通りの異なる多形で存在することが知られている。下記の実験には、多形IVを使用した(図3のPXRDを参照されたい)。
【0123】
調製例
I スラリー法
実施例1:1 gのチオファネートメチルおよび1.13 gのエポキシコナゾール(1:1のモル比)をプロパンジオールと水の混合物(20 ml、1:3 v/v)と共に丸底フラスコに入れた。得られたスラリーを50℃で1週間撹拌した後、混合物を22℃に冷却し、濾過し、素焼き板の上で22℃で乾燥した。PXRDにより、得られた結晶性物質がチオファネートメチルとエポキシコナゾールの共結晶であることが明らかになった(図4)。結晶複合体の融解は148℃で開始する。
【0124】
実施例2〜6:実施例1の方法を、下記の通りの異なる溶媒または溶媒と水の混合物を使用し、異なる温度を用いて繰り返した。
【0125】
実施例2:1:3 グリセリン:水(50℃)
実施例3:1:3 プロピレンカーボネート:水(50℃)
実施例4:1:3 プロピレンカーボネート:水(22℃)
実施例5:1:3 イソプロパノール:水(50℃)
実施例6:エタノール(22℃)
実施例2〜6のいずれにおいても結晶性物質が得られ、それらはPXRDによりチオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体であると同定された。
【0126】
実施例7:2 gのチオファネートメチルおよび0.96 gのピラクロストロビン(2:1のモル比)をプロパンジオールと水の混合物(20 ml、1:3 v/v)と共に丸底フラスコに入れた。得られたスラリーを50℃で1週間撹拌した後、混合物を22℃に冷却し、濾過し、素焼き板の上で22℃で乾燥した。PXRDにより、得られた結晶性物質がチオファネートメチルとピラクロストロビンの共結晶であることが明らかになった(図5)。得られた物質は、PXRDにより、チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体であると同定された。
【0127】
実施例8〜10:実施例7の方法を、下記の通りの異なる溶媒または溶媒と水の混合物を使用し、異なる温度を用いて繰り返した。
【0128】
実施例8:1:3 グリセリン:水(50℃)
実施例9:1:3 プロピレンカーボネート:水(50℃)
実施例10:1:3 プロピレンカーボネート:水(22℃)
実施例8〜10のいずれにおいても結晶性物質が得られ、それらはPXRDによりチオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体であると同定された。
【0129】
実施例7〜10により得られた物質の13C-CP/MASにより、個々の結晶性物質の混合物ではなく、共結晶が存在することが確認された。特に、ピラクロストロビンおよびメチルチオファネートは同じT1(H)で緩和する:1Hの前飽和の後の可変待機遅延(variable waiting delay)により、プロトンの部分的な緩和が可能になる。この分極を交差分極により1Hから13Cに移した。その結果、ピラクロストロビンおよびメチルチオファネートの13Cシグナルの振幅は、二つのタイプの分子のそれぞれにより見られる1Hリザーバー(reservoir)の分極の増大を反映する。ピラクロストロビンおよびメチルチオファネートは、同一の1H緩和を示し、すなわち、両方が同じ1Hリザーバーにカップリングしており、したがって隣接していなければならないことを示していた。両方の成分のシグナルは同じように緩和し、すなわち、1Hリザーバーが緩和するとスペクトル全体がスケーリングする(scales)。異なる遅延(それぞれ20sおよび120 s)で測定したスペクトルは、絶対強度において2倍異なったが、スケーリングの後、互いに完全に一致した。プロトンのT1緩和は34.4 s (純粋なチオファネートメチル28.6 s、純粋なピラクロストロビン7.0 s)であった。
【0130】
せん断法
下記の製剤添加物を使用した。
【0131】
分散剤1:エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic PE 10500、BASF Aktiengesellschaft製)。
【0132】
分散剤2:アクリル酸グラフトコポリマー(Atlox 4913、Uniquema製)。
【0133】
分散剤3:16個のオキシエチレン単位を有するエトキシ化トリスチリルフェノールアンモニウムサルフェート:Soprophor 4D384、Rhodia製。
【0134】
分散剤4:フェノールスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合生成物のナトリウム塩。
【0135】
消泡剤:市販のシリコン消泡剤(水性乳液、20重量%の活性物質 - Wacker Chemie AGより入手したSilfoam SRE)。
【0136】
染料製剤:ディスパースグリーン
実施例11(比較例):下記の表(すべての量をg/kgで表す)に記載した処方に従って5 kgのサンプルを調製した。キサンタンガム水溶液およびディスパースグリーン以外のすべての成分を容器中で混合した後、6.7 m/sのチップスピードの600 mlビーズミルに、混合物を20℃に維持しながら、8 kg/hで2回連続して通すことにより粉砕した。得られた混合物にキサンタンガムの2%溶液および染料製剤を撹拌しながら加えた。均一な少し粘性の緑色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を、水による100倍希釈のレーザー回折により測定したところ、粒子の90%が3.9μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。
【表6】
【0137】
実施例12:実施例11に記載した処方に従って5 kgのサンプルを調製した。キサンタンガム溶液およびディスパースグリーン以外のすべての成分を容器中で混合した。この混合物を、6.8 m/sで運転している600 mlビーズミルで、混合物を40℃に維持しながら20 kg/hで8時間循環させた。得られた混合物にキサンタンガムの2%溶液および染料製剤を撹拌しながら加えた。均一な少し粘性の緑色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を実施例11に従って測定したところ、1.3μmのD90値を示した。
【0138】
サンプルを蒸発乾固させた。得られた物質のPXRDにより、過剰なチオファネートメチル以外に、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体の存在が明らかになった。
【0139】
実施例13(比較例):下記の表(すべての量をg/kgで表す)に記載した処方に従って2kgのサンプルを調製した。キサンタンガム水溶液以外のすべての成分を容器中で混合した。この混合物を、6.8 m/sで運転している600 mlビーズミルで、混合物を20℃に維持しながら8 kg/hで4時間循環させた。得られた混合物にキサンタンガムの2%溶液を撹拌しながら加えた。均一な少し粘性の無色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を実施例11に従って測定したところ、1.4μmのD90値を示した。
【表7】
【0140】
実施例14:粉砕を開始する前に混合物を45℃に加熱し、この温度を粉砕の間4時間維持した点を除いて、実施例3と同じ処方および同じ方法により2 kgのサンプルを調製した。均一な少し粘性の無色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を、実施例11に従って測定したところ、1.5μmのD90値を示した。
【0141】
保存安定性
実施例1、2、3および4において製造したサンプルの安定性を、HDPE瓶に入れた100 mlのサンプルを決められた期間、決められた温度に保存することにより測定した。典型的な保存試験は、40℃で8週間であった。保存の後、〜100倍希釈のレーザー回折および150μmの湿式ふるい上の残渣の測定の両方により粒径を測定した。
【0142】
典型的な良好な懸濁液の品質は、D90 < 10μmであることおよび湿式ふるい残渣が< 0.5 %であることを特徴とする。
【表8】
【0143】
実施例15(比較例):約350 gの脱塩水を容器に入れた。そこに100 gのプロピレングリコール、20 gの分散剤1、30 gの分散剤4、2 gの粉砕補助剤(アモルファスシリカ)および2 gの消泡剤(シリコン油の水性エマルション)を加えた。混合物を25℃で、1000 rpmの撹拌速度で15分間撹拌した。次に、1000 rpmで撹拌しながら、200 gのエポキシコナゾールおよび300 gのチオファネートメチルを加えた。次に、混合物を、実施例11に記載した通りのビーズミル中で、混合物を10℃に維持しながら少なくとも80重量%の粒子が2μm未満の直径を有するようになるまで粉砕した。得られた混合物にキサンタンガムの2%水溶液および2 gの殺生物製剤を加えた。均一な少し粘性の液体が得られた。この分散物の粒径を水による100倍希釈のレーザー回折により測定したところ、粒子の80%が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。固体のPXRDは、エポキシコナゾールおよびチオファネートメチルの物理的混合物を示した。
【0144】
60℃で1週間保存した後、混合物の粘性は非常に高くなり、濃くなった液体の水による100倍希釈のレーザー回折により粒子の25%未満が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。
【0145】
実施例16:エポキシコナゾールおよびチオファネートメチルの製剤を、粉砕を10℃ではなく50℃で実施した点を除いて、一般処方に従って、実施例15に記載した方法と同様にして調製した。この分散物の粒径を水による100倍希釈のレーザー回折により測定したところ、粒子の90%が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。固体のPXRDにより、この物質がエポキシコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体であることが示された。
【0146】
60℃で1週間保存した後、混合物の粘度は、調製したばかりの液体の粘度と同じであり、濃くなった液体の水による100倍希釈のレーザー回折により粒子の90%が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。
【0147】
実施例17:メトコナゾールとチオファネートメチルの混合物(1 g、モル比1:1)を丸底フラスコに入れて、20 mlのグリセリン中、50℃で2日間スラリー化した。混合物をゆっくりと室温に冷却し、濾過し、素焼き板の上で数時間乾燥した。固体をPXRDにより分析したところ(図8参照)、固体が>95%純粋なメトコナゾールとチオファネートメチルの共結晶であることが示された。この物質のDSC測定は、155〜158℃で開始し、160〜168℃にピーク最大値を有する吸熱融解ピークを示した。IRスペクトルを図10に示す。
【0148】
実施例18:メトコナゾールとチオファネートメチルの混合物(2 g、モル比1:1)を50 mlのアセトニトリルに、穏やかに加熱および撹拌しながら溶解した。溶液を濾過して、濾液を蓋をしないフラスコ中で蒸発させた。1日後、正方形に形成された結晶は単結晶X線分析に十分な大きさになった。構造を解析したところ、メトコナゾールとチオファネートメチルの1:1共結晶であることが明らかになった。同じ実験を酢酸メチルおよびニトロメタン中でおこなったところ同様の結果を得た。
【0149】
実施例19:32重量部のチオファネートメチルおよび6重量部のメトコナゾールを、50重量部の水、8重量部のグリセリン、2重量部の分散剤1および2重量部の分散剤2の混合物中にスラリー化した。この混合物を、65℃で4時間、コロイドミル中で機械的に粉砕した。スラリーを放置して冷却し、固体物質の沈殿の後、上清をデカントした。沈殿を乾燥し、IRにより分析したところ、チオファネートメチルとメトコナゾールの共結晶の存在が示された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の農業上活性な有機化合物Aの結晶複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌剤、除草剤および殺虫剤または殺ダニ剤などの農業上活性な有機化合物は、通常、1種以上の農業上活性な有機化合物および好適な製剤添加物を含む液体または固体の製剤として市販されている。いくつかの理由から、農業上活性な有機化合物(A)が固体の状態で存在するタイプの製剤、例えば、ダスト、粉末または顆粒などの固体製剤および懸濁液濃縮物(すなわち、液体の懸濁媒体中に懸濁した活性有機化合物の固体粒子を含む液体製剤)などの液体製剤が好ましい。
【0003】
製剤の目的には、農業上活性な有機化合物は十分に高い融点を有する結晶性物質でなければならない。残念なことに、前記有機化合物の多くはアモルファス物質であり、かつ/または低い融点を有する。このような化合物は、活性化合物の粘着性のために粉砕の間に粉砕装置が動かなくなるので、従来の方法により懸濁液濃縮物(SC)として製剤するのが難しい。アモルファス固体の有機化合物の製剤は、しばしば相分離に関して不安定である。例えば、アモルファス固体活性物質の懸濁液濃縮物は、粒子の凝集または粒子の成長の結果として活性有機化合物が分離することにより不均一になる傾向がある。
【0004】
有機化合物の結晶複合体は、共結晶とも呼ばれ、少なくとも2種の異なる有機化合物からなる多成分結晶または結晶性物質であり、通常25℃で固体であり、または少なくとも非揮発性のオイル(25℃で1 mbar未満の蒸気圧)である。結晶複合体(または共結晶)においては、少なくとも2種の異なる有機化合物が、明確な結晶構造を有する結晶性物質を形成する。すなわち、少なくとも2種の有機化合物が、結晶構造内で明確な相対的な空間配置を有することにより、超分子構造を形成する。
【0005】
共結晶において、少なくとも2種の異なる化合物が、水素結合および、おそらく、πスタッキングおよびファンデルワールス相互作用を含む他の非共有結合分子間力などの非共有結合により相互作用する。水素結合は、方向性があり、比較的強い相互作用であり、これらの2つの性質のため、これは、しばしば自然界全般の分子認識、例えば、DNAの形成、一般的なタンパク質の折りたたみ、受容体等においても支配的な力である。そのため、水素結合は、新規の多成分材料または共結晶を設計するアプローチにおいて考慮されている力であり、文献に記載されている(例えば、D. Braga et al., Chem. Commun., 2005, pp. 2635-3645 and O. Almarsson et al., Chem. Commun., 2004, pp. 1889-1896を参照されたい)。しかしながら、他の分子間力もまた分子認識に関与している可能性がある。
【0006】
結晶格子中の充填を設計または予測することはできないが、いくつかの超分子シントンを共結晶中で認識することに成功した。「超分子シントン」という用語は、互いに水素結合した通常2種の化合物からなる存在であると理解されるべきである。共結晶において、これらのシントンは、さらに結晶格子中に充填されて分子結晶を形成する。分子認識はシントンの形成の一つの状態である。しかしながら、共結晶はまた、エネルギー的に有利でなければならない。すなわち、分子は典型的には純粋な成分の結晶として非常に効率よく充填され得るために共結晶の形成を妨げるので、共結晶の形成においてエネルギー的な利益も必要である。
【0007】
共結晶において、通常、有機化合物の一方が、共結晶形成剤、すなわち、それ自体が容易に結晶性物質を形成し、いくつかのそれ自体では必ずしも結晶相を形成しない他の有機化合物と共結晶を形成することができる化合物として作用する。
【0008】
活性な医薬化合物の結晶複合体は、当業界において様々な場合において記載されており、例えば、US2003/224006、WO03/074474、WO2005/089511、EP1608339、EP1631260およびWO2006/007448に記載されている。
【0009】
チオファネートメチル(thiophanate-methyl)は、式
【化1】
【0010】
で表される有名な結晶性殺菌剤化合物であり、172℃より高い温度で分解により融解する。チオファネートメチルは広い範囲の菌類病原体に対して保護および治療作用を有する。チオファネート分子は植物中で分解してカルベンダジムになるので、これはベンズイミダゾール殺菌剤のグループに属する。
【0011】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、チオファネートメチルが好適な共結晶形成剤であり、水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する多くの農業上活性な有機化合物と結晶複合体を形成することを見出した。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の農業上活性な有機化合物Aおよびチオファネートメチルを含む結晶複合体に関する。
【0013】
本発明の結晶複合体は、明確な結晶構造を有し、妥当な高い融点を有するので、前記複合体を活性物質が固体の状態で存在する固体または液体の製剤に組み込むことが容易になる。さらに、前記結晶複合体の製剤は、特に個々の固体の化合物としてのチオファネートメチルと化合物Aの混合物を含む製剤と比較して、増大した安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】チオファネートメチルのX線粉末回折を示す図である。
【図2】エポキシコナゾールのX線粉末回折を示す図である。
【図3】ピラクロストロビンのX線粉末回折を示す図である。
【図4】チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体のX線粉末回折を示す図である。
【図5a】単結晶のX線分析によるチオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体の構造を、可能性のある水素結合と共に示す図である。
【図5b】単結晶のX線分析による、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体中のチオファネートメチル分子の空間配置を、可能性のある水素結合と共に示す図である。
【図6】チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体のX線粉末回折を示す図である。
【図7】ピラクロストロビン(上)、チオファネートメチル(中)およびチオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体(下)の13C-CP/MASスペクトルを示す図である。
【図8】チオファネートメチルとメトコナゾールの結晶複合体のX線粉末回折を示す図である。
【図9】ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体のIRスペクトルを示す図である。
【図10】メトコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の結晶複合体の形成は、チオファネートメチルがすべての水素供与体と効果的な水素結合を達成することが不可能であり、同時に結晶状態に分子を効果的に充填することが不可能であるために生じたと推測される。したがって、チオファネート分子中のチオ尿素単位のN結合水素原子の少なくとも1個が、農業上活性な化合物A中の少なくとも1個の水素受容体部分と水素結合を形成し、かつ/またはチオファネート分子が、活性化合物A分子が含まれるキャビティーと共に格子様構造を形成する。
【0016】
水素結合において水素受容体であることが可能な官能基または部分には、酸素原子、例えばエーテル基、特にオキシラン基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、カルボキシアミド基における酸素原子、および窒素原子、特に第一級、第二級もしくは第三級アミノ基の形の窒素原子、またはイミノ窒素原子、すなわち、=N-が含まれる。
【0017】
好ましくは、化合物Aは、水素結合において水素受容体であることが可能な官能基または部分として、少なくとも1個の、例えば、1、2、3または4個のイミノ窒素原子を含む。イミノ窒素原子は、複素環、オキシイミノ部分またはアミジノ部分などの環式または非環式部分の一部であってよい。当然、化合物Aは、水素結合において水素受容体として作用することが可能な1個またはそれ以上の原子または部分を有してもよい。
【0018】
特に、化合物Aは、水素結合において水素受容体であることが可能な少なくとも1個の官能基であって、ピリジン、ピリミジン、イミダゾールまたはイミダゾリン、例えば、1H-イミダゾール、2H-イミダゾール、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール、2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール、ピラゾールまたはピラゾリン、例えば1H-ピラゾール、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール、およびトリアゾール環、例えば1H-1,2,4-トリアゾール、1H-1,3,4-トリアゾールおよび1H-1,2,3-トリアゾール環、特にピラゾールまたはトリアゾール環などの5または6員芳香族複素環または部分的不飽和複素環の環原子である少なくとも1個のイミノ窒素を含む前記官能基を含む。前記複素環は、無置換であっても、例えば、1、2または3個の置換基により置換されていてもよい。好適な置換基は、特に、ニトロ、カルボキシレート、スルホニルまたはシアノのような電子吸引メソメリー(-M)効果を及ぼさないものである。好適な置換基には、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-ハロアルコキシまたはフェニル(それ自体が置換されているか、C1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシより選択される1、2、3または4個の基により置換されていてよい)、およびC1〜C6-アルキル(無置換であるか、アルコキシ、シアノ、フェニル、C1〜C4-アルキルカルボニル、C1〜C4-アルコキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシアミド、C1〜C4-アルキルアミノカルボニル、C1〜C4-ジアルキルアミノカルボニルおよびC1〜C4-アルキルカルボニルアミノより選択される1個の基により置換されていてよい)が含まれる。置換されたまたは無置換の5または6員芳香族複素環または部分的不飽和複素環それ自体がより大きい分子の一部であってもよいと理解されるべきである。
【0019】
同様に好ましくは、イミノ窒素は、イミノエーテル基=N-O-Rまたはアミジノ基C(N=R)NR’2 [ここで、RおよびR’は互いに独立して、水素、C1〜C6-アルキル、C2〜C6-アルケニルまたはC2〜C6-アルキニルより選択される]などの非環式オキシイミノ部分の一部であってよい。
【0020】
好ましくは、化合物Aは、ピリジニル、ピリミジニル、1H-イミダゾリル、1H-ピラゾール、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル、およびトリアゾリル、例えば1H-1,2,4-トリアゾリル、4H-1,2,4-トリアゾリル(= 1H-1,3,4-トリアゾリル)、1H-1,2,3-トリアゾリルおよび2H-1,2,3-トリアゾリル環、好ましくはピラゾリルまたはトリアゾリル基、特に1H-ピラゾリルまたは1H-1,3,4-トリアゾリル基(置換されているか、上に定義した通りに置換されていてよい)などの5または6員芳香族複素環基より選択される官能基を含む。好ましい置換基には、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-ハロアルコキシまたはフェニル(それ自体が置換されているか、C1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシ、特にハロゲンまたはメチルより選択される1、2、3または4個の基により置換されていてよい)が含まれる。特に、化合物Aは、イミダゾール-2-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イル(ここで、Hetは、無置換であるか、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1または2個の基および/または1、2または3個のハロゲン原子を有してもよい1個のフェニル基を有してもよい)より選択される1個の官能基を含む。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、化合物Aは、水素結合において水素受容体であることが可能な官能基に加えて、場合により置換されたフェニル環を有する。理論に拘束されないが、発明者らは、本発明の結晶複合体において、フェニル環はチオファネート分子とπ相互作用を有すると考えている。好ましくは、フェニル環は無置換であるか、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-ハロアルコキシ、フェニル(それ自体が置換されているか、C1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシより選択される1、2、3または4個の基により置換されていてよい)、およびC1〜C6-アルキル(無置換であるか、アルコキシ、シアノ、フェニル、C1〜C4-アルキルカルボニル、C1〜C4-アルコキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシアミド、C1〜C4-アルキルアミノカルボニル、C1〜C4-ジアルキルアミノカルボニルおよびC1〜C4-アルキルカルボニルアミノより選択される1個の基により置換されていてよい)より選択される1、2または3個の基を有する。フェニル環上の好適な基には、次の基:N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)およびC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)も含まれる。無置換のフェニルまたはC1〜C6-アルキル、ハロゲン、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルおよびC1〜C4-ハロアルコキシ、特にハロゲンおよびメチルより選択される1、2または3個の基を有するフェニル、および次の基:N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)またはC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)の一つを有するフェニルが好ましい。
【0022】
好ましくは、場合により置換されたフェニル環は、環原子として少なくとも1個のイミノ窒素原子を有する無置換のまたは置換された芳香族含窒素複素環に、化学結合または1〜5個の原子を有する鎖、好ましくは2または3個の原子を有する鎖を介して結合している。一般に、鎖は炭素原子により形成される。しかしながら、鎖の炭素原子の1つが酸素またはケイ素により置換されていてもよい。鎖は無置換であっても、シアノ、OH、=O、C1〜C4-アルキル(OH、C1〜C2-アルコキシ、C1〜C2-ハロアルコキシ、C1〜C2-ハロアルキル、トリメチルシリル、C3〜C6-シクロアルキルおよびフェニル(それ自体が、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される1またはは2個の基を有してもよい)、もしくはフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)などの1、2または3個の置換基を有してもよく、または、鎖の同じ原子もしくは鎖の2個の隣接する原子に結合する2個の基が3〜6員飽和炭素環もしくは複素環を形成してもよく、前記複素環は環原子として1または2個の酸素原子を有し、前記炭素環および複素環は無置換であるか、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、ハロ-C1〜C4-アルコキシおよびフェニル(それ自体がハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される基を有する。
【0023】
好適な化合物Aは、150〜500ダルトンの範囲の分子量を有する。
【0024】
好適な化合物Aは、除草剤、殺菌剤および殺虫剤/殺ダニ剤より選択される。好適な化合物Aの例には、下記のものが含まれる。
【0025】
下記のクラスに属する殺菌剤:
- ストロビルリン、例えば、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、エネストロブリン(enestroburin)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、メトミノストロビン(metominostrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、メチル(2-クロロ-5-[1-(3-メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル(2-クロロ-5-[1-(6-メチルピリジン-2-イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル2-(オルト-(2,5-ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)-3-メトキシアクリレート;
- アニリド、例えば、ベナラキシル(benalaxyl)、ベノダニル(benodanil)、ボスカリド(boscalid)、カルボキシン(carboxin)、メプロニル(mepronil)、フェンフラム(fenfuram)、フェンヘキサミド(fenhexamid)、フルトラニル(flutolanil)、フラメトピル(furametpyr)、メタラキシル(metalaxyl)、オフレース(ofurace)、オキサジキシル(oxadixyl)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、チフルザミド(thifluzamide)、チアジニル(tiadinil)、4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-[N-(4'-ブロモビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-[N-(4'-トリフルオロメチルビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、4-ジフルオロメチル-2-メチルチアゾール-5-[N-(4'-クロロ-3'-フルオロビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-[N-(3',4'-ジクロロ-4-フルオロビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、3-ジフルオロメチル-1-メチルピラゾール-4-[N-(3’,4’-ジクロル-5-フルオルビフェニル-2-イル)]カルボキシアミド、3,4-ジクロロイソチアゾール-5-[N-(2-シアノフェニル)]カルボキシアミド;
- モルホリド、例えば、ジメトモルフ(dimethomorph)、フルモルフ(flumorph);
- 安息香酸アミド、例えば、フルメトベル(flumetover)、フルオピコリド(fluopicolide)(ピコベンザミド(picobenzamid))、ゾキサミド(zoxamide);
- 他のカルボキシアミド、例えば、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、マンジプロパミド(mandipropamid)、N-(2-(4-[3-(4-クロルフェニル)プロパ-2-イニルオキシ]-3-メトキシフェニル)エチル)-2-メタンスルホニルアミノ-3-メチルブチルアミド、N-(2-(4-[3-(4-クロルフェニル)プロパ-2-イニルオキシ]-3-メトキシフェニル)エチル)-2-エタンスルホニルアミノ-3-メチルブチルアミド;
- アゾール殺菌剤、特に、
- トリアゾール:ビテルタノール(bitertanol)、ブロムコナゾール(bromuconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、ジニコナゾール(diniconazole)、エニルコナゾール(enilconazole)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フルトリアホール(flutriafol)、ヘキサコナゾール(hexaconazol)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、イプコナゾール(ipconazole)、メトコナゾール(metconazol)、ミクロブタニル(myclobutanil)、ペンコナゾール(penconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、シメコナゾール(simeconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、テトラコナゾール(tetraconazole)、トリアジメノール(triadimenol)、トリアジメホン(triadimefon)、トリチコナゾール(triticonazole);
- イミダゾール:シアゾファミド(cyazofamid)、イマザリル(imazalil)、ペフラゾエート(pefurazoate)、プロクロラズ(prochloraz)、トリフルミゾール(triflumizole);
- ベンズイミダゾール:ベノミル(benomyl)、カルベンダジム(carbendazim)、フベリダゾール(fuberidazole)、チアベンダゾール(thiabendazole);
- その他:エタボキサム(ethaboxam)、エトリジアゾール(etridiazole)、ミメキサゾール(mymexazole);
- ピリジン:フルアジナム(fluazinam)、ピリフェノックス(pyrifenox)、3-[5-(4-クロロフェニル)-2,3-ジメチルイソキサゾリジン-3-イル]ピリジン;
- ピリミジン:ブピリメート(bupirimate)、シプロジニル(cyprodinil)、フェリムゾン(ferimzone)、フェナリモール(fenarimol)、メパニピリム(mepanipyrim)、ヌアリモール(nuarimol)、ピリメタニル(pyrimethanil);
- ピペラジン:トリホリン(triforine);
- ピロール:フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil);
- ジカルボキシイミド:イプロジオン(Iprodione)、プロシミドン(procymidone)、ビンクロゾリン(vinclozolin);および
- 他の殺菌剤:プロキナジド(proquinazid)、ピロキロン(pyroquilon)、キノキシフェン(quinoxyfen)、トリシクラゾール(tricyclazole)、5-クロロ-7-(4-メチルピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、2-ブトキシ-6-ヨード-3-プロピルクロメン-4-オン、3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-スルホニル)-[1,2,4]トリアゾール-1-スルホン酸ジメチルアミドおよびメトラフェノン(metrafenone)。
【0026】
下記のクラスに属する殺虫剤/殺ダニ剤:
- ピレスロイド:アクリナトリン(acrinathrin)、アレトリン(allethrin)、d-シス-トランスアレトリン、d-トランスアレトリン、ビフェントリン(bifenthrin)、ビオアレトリン(bioallethrin)、ビオアレトリンS-シクロペンテニル、ビオレスメトリン(bioresmethrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータシフルトリン、シハロトリン(cyhalothrin)、ラムダシハロトリン、ガンマシハロトリン、シフェノトリン(cyphenothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、アルファシペルメトリン、ベータシペルメトリン、シータシペルメトリン、ゼータシペルメトリン、デルタメトリン(deltamethrin)、エムペントリン(empenthrin)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルシトリネート(flucythrinate)、フルメトリン(flumethrin)、タウフルバリネート(tau-fluvalinate)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、イミプロトリン(imiprothrin)、ペルメトリン(permethrin)、フェノトリン(phenothrin)、プラレトリン(prallethrin)、プロフルトリン(profluthrin)、ピレトリン(pyrethrin)IおよびII、レスメトリン(resmethrin)、RU 15525、シラフルオフェン(silafluofen)、タウフルバリネート(tau-fluvalinate)、テフルトリン(tefluthrin)、テトラメトリン(tetramethrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、ジメフルトリン(dimefluthrin)、ZXI 8901;
- 成長調節物質:a) キチン合成阻害剤:ベンゾイル尿素;ビストリフルロン(bistrifluron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、フルシクロクスロン(flucycloxuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ルフェヌロン(lufenuron)、ノバルロン(novaluron)、ノビフルムロン(noviflumuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、トリフルムロン(triflumuron);ブプロフェジン(buprofezin)、ジオフェノラン(diofenolan)、ヘキシチアゾックス(hexythiazox)、エトキサゾール(etoxazole)、クロフェンテジン(clofentezine);b) エクジソンアンタゴニスト:クロルマフェノジド(chlormafenozide)、ハロフェノジド(halofenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、テブフェノジド(tebufenozide)、アザジラクチン(azadirachtin);c)幼若ホルモン様物質:ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、ヒドロプレン(hydroprene)、キノプレン(kinoprene)、メトプレン(methoprene)、フェノキシカルブ(fenoxycarb);d)脂質生合成阻害剤:スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat);
- ニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト化合物:アセタミプリド(acetamiprid)、クロチアニジン(clothianidin)、ジノテフラン(dinotefuran)、イミダクロプリド(imidacloprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ニコチン、ベンスルタップ(bensultap)、カルタップ(cartap)塩酸塩、チオシクラム(thiocyclam)、チオスルタップナトリウム(thiosultap-sodium);
式(Γ1)のチアゾール化合物
【化2】
【0027】
および
- GABAアンタゴニスト化合物:アセトプロール(acetoprole)、エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、バニリプロール(vaniliprole)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、バニリプロール(vaniliprole)。
【0028】
好ましい化合物Aには、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、オリサストロビン、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、プロチオコナゾール、プロクロラズ、トリチコナゾール、フルキンコナゾール、メトコナゾール、メタラキシル、メフェノキサムおよびボスカリドより選択される殺菌剤、ならびにフィプロニル、アセタミプリド、イミダクロプリド、チアメトキサムおよびクロチアニジンより選択される殺虫剤/殺ダニ剤が含まれる。
【0029】
化合物Aが式I
【化3】
【0030】
[式中、
Hetは、イミダゾール-2-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イル、特にピラゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イルであり、ここで、Hetは、無置換であるか、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1または2個の基および/または1個のフェニル基(1、2または3個のハロゲン原子を有してもよい)を有してよく;
Xは、Oまたは基CHR3であり;
Yは、CR4R5またはSiR4aR5aであり、Xが基CHR3である場合には、YはOであってもよく;または
XおよびYは一緒になって、化学結合または式
【化4】
【0031】
の二価の基であり;
kは、0、1または2であり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2または3であり;
R1は、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、メトキシ、またはフェニルであり;
R2は、N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)およびC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)より選択され;
R3は、水素またはC1〜C6-アルキル(1、2、3、4または5個のハロゲン原子および/またはOHおよびカルボニル基より選択される1個の官能基を有してもよい)であり;
R4は、水素、CN、OHまたはC1〜C4-アルキルであり、またはR3と一緒になって結合を形成し;
R5は、C1〜C4-アルキル(OH、C1〜C2-アルコキシ、C1〜C2-ハロアルコキシ、C1〜C2-ハロアルキル、トリメチルシリル、C3〜C6-シクロアルキルおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される1または2個の基を有してもよい)、または
フェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり、または
R4およびR5は一緒になって、3〜6員飽和複素環を形成し、前記複素環は環原子として1または2個の酸素原子を有し、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、ハロ-C1〜C4-アルコキシおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキル、特にフッ素、塩素またはメチルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される基を有してもよく;
R4aは、C1〜C4-アルキルまたはC1〜C4-アルコキシ、特にメチルまたはメトキシであり;
R5aは、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシまたはフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキル、特にフッ素、塩素またはメチルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり;
R6は、OHおよびC1〜C4-アルキル、特にOHまたはメチルより独立して選択され;
R6aは、水素およびC1〜C4-アルキルより選択され、かつ
Qは、(CH2)pまたは(CH2)qOであり、ここで、pは、1、2、3または4であり、qは、1、2または3である]
の化合物である結晶複合体が特に好ましい。
【0032】
特に好ましくは、化合物Aには、ピラクロストロビン、オリサストロビン、エポキシコナゾール、プロクロラズ、トリチコナゾール、フルキンコナゾール、メトコナゾール、ボスカリドおよびフィプロニルが含まれる。
【0033】
最も好ましい化合物Aは、エポキシコナゾール、トリチコナゾール、メトコナゾールおよびピラクロストロビンより選択される。
【0034】
本発明の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがエポキシコナゾール(IUPAC:(2RS,3SR)-1-[3-(2-クロロフェニル)-2,3-エポキシ-2-(4-フルオロフェニル)プロピル]-1H-1,2,4-トリアゾール)である結晶複合体に関する。
【0035】
本発明の別の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがピラクロストロビン(IUPAC:メチル{2-[1-(4-クロロフェニル)ピラゾール-3-イルオキシメチル]フェニル}(メトキシ)カルバメート)である結晶複合体に関する。
【0036】
本発明の別の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがメトコナゾール(IUPAC:(1RS,5RS;1RS,5SR)-5-(4-クロロベンジル)-2,2-ジメチル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)シクロペンタノール)である結晶複合体に関する。
【0037】
本発明の別の非常に好ましい実施形態は、化合物Aがトリチコナゾール(IUPAC:(RS)-(E)-5-(4-クロロベンジリデン)-2,2-ジメチル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)シクロペンタノール)である結晶複合体に関する。
【0038】
本発明の結晶複合体において、チオファネートメチルと化合物Aのモル比は、少なくとも0.5:1であり、0.5:1〜3:1の範囲であってよく、好ましくは0.8:1〜2.5:1または0.9:1〜2.1:1である。特に、前記モル比は1:1〜2:1である。前記範囲からの逸脱は可能であるが、それは一般に20 mol%以下であり、好ましくは10 %以下である。
【0039】
結晶複合体は、X線粉末回折法(PXRD)、IR分光法、特にチオファネートメチルに特徴的な3350 cm-1および3305 cm-1の狭い吸収帯の欠如、固体13C-NMR (13C-CP/MAS:交差分極 - マジック角回転)ならびに熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)などの熱化学分析を含む、結晶性物質の分析に使用される標準的な分析手段により、結晶性チオファネートメチルと結晶性化合物Aの単純な混合物と識別することができる。チオファネートメチルおよび化合物Aの相対的な量は、例えばHPLCまたは1H-NMR分光法により決定することができる。
【0040】
例えば、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)で、純粋な化合物に特徴的な反射が消失したX線粉末回折を示す。特に、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体は、下記の表1に2θ値または格子間隔dとして記載した反射のうち、少なくとも4、好ましくは少なくとも6、特に少なくとも8、より好ましくはすべてを示す。
【表1】
【0041】
本発明の前記実施形態の結晶複合体において、チオファネートメチルとエポキシコナゾールのモル比は、0.9:1〜1.1:1であり、特に約1:1である。
【0042】
チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体の単結晶の研究により、基本結晶構造が三斜晶であり、空間群P-cを有することが示された。構造分析により、結晶複合体はチオファネートメチルとエポキシコナゾールの1:1混合物であり、チオファネートメチルおよびエポキシコナゾールを1分子ずつ含む非対称セルであることが明らかになった。結晶において、チオファネートメチルの2個の分子が、2個の隣接するチオファネートメチル分子のN-H基とC=O基の間の分子間水素結合により二量体を形成している。二量体は、2個のエポキシコナゾール分子の受容体として作用する2個のポケットを形成しているように見える。エポキシコナゾール分子のトリアゾール環の窒素原子とチオファネートメチル分子のNH基の間に水素結合が存在するように見える。さらに、チオファネートメチル分子のフェニル環とエポキシコナゾール分子のフッ素化されたフェニル環の間にπ相互作用が存在すると思われる。この2個のチオファネートメチル分子と2個のエポキシコナゾール分子の複合体は超分子シントンを形成し、それが結晶格子中に充填されて、共結晶を形成する。この複合体の結晶構造の特性データを表2に示す。
【表2】
【0043】
a、b、c = 単位格子のエッジの長さ
α、β、γ = 単位格子の角度
Z = 単位格子中の分子の数
熱重量分析は、エポキシコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体の融解が148℃で開始した後、チオファネートメチルが分解することを示している。
【0044】
例えば、チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)で、純粋な化合物に特徴的な反射が消失したX線粉末回折を示す。特に、チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)でのX線粉末回折において、下記の表3に2θ値または格子間隔dとして記載した反射のうち、少なくとも4、好ましくは少なくとも6、特に少なくとも8、より好ましくはすべてを示す。
【表3】
【0045】
13C-CP/MASにより、固体のチオファネートメチルと固体のピラクロストロビンの単純な混合物の存在ではなく、結晶複合体の存在が確認された。特に、結晶複合体の13C-CP/MAS (CP = 3 ms、D1 = 30 s、25℃、RO 5700 Hz)は、δ182.0、180.8、178.7、177.7、164.3、158.8、154.9、154.0、152.1、139.4、137.9、134.3、131.2、130.2、127.6、125.9、123.8、117.7、115.6、94.3、65.7、63.0、58.8、54.3、53.6および52.6に化学シフトを示した。164.3、158.8 ppmのシフトは最も特徴的であり、チオファネートメチルおよびピラクロストロビンの13C-CP/MASにおいては存在しない。プロトンから13Cへの偏極移行実験により、チオファネートメチルおよびピラクロストロビンが、純粋な化合物の結晶性物質の混合物としてではなく、共結晶として存在することが確認された。
【0046】
本発明の前記実施形態の結晶複合体において、チオファネートメチルとピラクロストロビンのモル比は、1.1:1〜2.5:1の範囲であり、特に1.9:1〜2.1:1、特に約2:1である。
【0047】
熱重量分析は、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体の融点が約150℃であることを示している。
【0048】
例えば、チオファネートメチルとメトコナゾールの結晶複合体は、25℃(Cu-Kα線、1.54178Å)で、純粋な化合物に特徴的な反射が消失したX線粉末回折を示す。特に、チオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体は、下記の表4に2θ値または格子間隔dとして記載した反射のうち、少なくとも4、好ましくは少なくとも6、特に少なくとも8、より好ましくはすべてを示す。
【表4】
【0049】
本発明の前記実施形態の結晶複合体において、チオファネートメチルとメトコナゾールのモル比は、0.9:1〜1.1:1であり、特に約1:1である。
【0050】
チオファネートメチルとメトコナゾールの結晶複合体の単結晶の研究により、基本結晶構造が単斜晶であり、空間群P2(1)/cを有することが示された。構造分析により、結晶複合体はチオファネートメチルとメトコナゾールの1:1混合物であり、チオファネートメチルおよびメトコナゾールを1分子ずつ含む非対称セルであることが明らかになった。メトコナゾール分子のトリアゾール環の窒素原子とチオファネートメチル分子のNH基の間に水素結合が存在するように見える。この複合体の結晶構造の特性データを表5に示す。
【表5】
【0051】
a、b、c = 単位格子のエッジの長さ
α、β、γ = 単位格子の角度
Z = 単位格子中の分子の数
メトコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体のDSC測定は、155〜158℃で開始し、160〜168℃のピーク最大値を有する吸熱融解ピークを示す。これは純粋な結晶性メトコナゾール(Pesticide Manualにおける報告によれば100℃)よりも約60℃高く、チオファネートメチルの融点よりも約10〜20℃低い。
【0052】
本発明の結晶複合体は、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aを、溶液もしくはスラリーから、またはチオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aを含む溶融物から共結晶化することにより調製することができる。同様に、本発明の結晶複合体は、化合物Aとチオファネートメチルの混合物を、高温、例えば30℃よりも高い温度、好ましくは40℃以上、特に50℃以上、より好ましくは55℃以上、例えば>30℃〜110℃、好ましくは40℃〜100℃、特に50℃〜90℃、または55℃〜90℃の温度で粉砕することにより調製することも可能である。化合物Aは、粉砕温度で固体であってよい。しかしながら、これは必要ではなく、温度が化合物Aの融点に近いかそれ以上であることが有利であり得る。
【0053】
好ましい実施形態において、チオファネートメチルと少なくとも1種の化合物Aの結晶複合体は、チオファネートメチルと少なくとも1種の化合物Aの有機溶媒中または水と有機溶媒の混合物中のスラリーから得られる。そのため、この方法はチオファネートメチルおよび活性化合物Aを有機溶媒または水と有機溶媒の混合物に懸濁することを含む(スラリー法)。
【0054】
スラリー法に好ましい有機溶媒は、少なくとも部分的に水混和性であるもの、すなわち、室温で10 % v/v以上、より好ましくは20 % v/v以上の水に対する混和性を有するもの、それらの混合物、および前記水混和性溶媒と室温で10 % v/v未満の水混和性を有する有機溶媒との混合物である。好ましくは、有機溶媒は、有機溶媒の総量に対して80 % v/v以上の少なくとも1種の水混和性溶媒を含む。
【0055】
室温で10 %以上の水混和性を有する好適な溶媒には下記のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
1. C1〜C4-アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノールまたはイソプロパノール;
2. C1〜C3-カルボン酸のアミド、N-メチルアミドおよびN,N-ジメチルアミド、例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミド;
3. 合計7個の炭素原子を有する5または6員ラクタム、例えば、ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-イソプロピルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン;
4. ジメチルスルホキシドおよびスルホラン;
5. 3〜6個の炭素原子を有するケトン、例えば、アセトン、2-ブタノン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノン;
6. アセトニトリル;
7. 5または6員ラクトン、例えば、γ-ブチロラクトン;
8. ポリオールおよびポリエーテルオール、例えば、グリコール、グリセリン、ジメトキシエタン、エチレンジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等;
9. 3〜5個の炭素原子を有する環状カーボネート、例えば、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネート;ならびに
10. 環状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびトリオキサン、ジメチル(ポリ)C2〜C3-アルキレングリコールエーテル、例えば、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、低分子量ポリエチレングリコールおよび低分子量ポリプロピレングリコール(MW < 400)。
【0057】
群1、6、8および9の有機溶媒ならびにそれらの水との混合物がより好ましい。水との混合物において、有機溶媒および水の相対量は10:1〜1:10、特に2:1〜1:5の範囲であってよい。
【0058】
スラリー法は、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aを有機溶媒中または溶媒/水混合物中に懸濁することにより簡単に実施することができる。チオファネートメチル、少なくとも1種の化合物Aおよび溶媒または溶媒/水混合物の相対量は、使用する温度で懸濁液が得られるように選択する。チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aが完全に溶解することは避けなければならない。特に、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aは、溶媒または溶媒/水混合物1リットルあたり50〜800 g、より好ましくは100〜600 gの量で懸濁する。
【0059】
チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aの相対的なモル量は、1:2〜20:1、好ましくは1:1〜15:1の範囲である。化合物の1つが結晶複合体の化学量論に対して過剰である場合には、結晶複合体と過剰に存在する化合物の混合物が得られる可能性があるが、少しの過剰は母液中に溶解して存在する可能性がある。製剤の目的には、過剰な化合物Aまたはチオファネートメチルの存在は許容され得る。特に、過剰なチオファネートメチルの存在は安定性の問題を引き起こさない。純粋な結晶複合体を調製するためには、チオファネートメチルおよび化合物Aを、形成される複合体の化学量論に近く、通常化学量論的に必要な量に対して50 mol%より大きく逸脱しない相対モル量で使用する。
【0060】
スラリー法は、通常、10℃以上、好ましくは20℃以上、特に30℃以上、例えば20〜90℃、好ましくは30〜85℃、特に40〜70℃の温度で実施する。
【0061】
スラリー法により結晶複合体を形成するために必要な時間は、温度、溶媒のタイプに依存し、一般に少なくとも12時間である。いずれの場合にも、1週間後には完全な変換が達成されるが、通常、完全な変換に必要な時間は24時間以下である。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態において、結晶複合体は、チオファネートメチルおよび活性化合物Aの懸濁した粒子を含む液体に、30℃以上の温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることにより調製される(せん断法)。
【0063】
液体中で、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aは、液体媒体中に懸濁した粒子として存在する。高温で液体にせん断力を加えると、結晶複合体の形成が起こる。
【0064】
液体媒体の主成分は、水、またはチオファネートメチルおよび化合物Aが実質的に不溶性である、すなわち、25℃における溶解度が5 g/l未満、特に1 g/l未満である有機溶媒である。好適な有機溶媒には、脂肪族炭化水素、ミネラルスピリット、植物油および植物油エステルが含まれる。好ましい実施形態において、液体媒体は、主成分として、水、または水と20 % v/v以下の水混和性溶媒、特に群1または9の溶媒との混合物を含む。それ以外に、液体媒体は、通常液体懸濁液濃縮物に存在する添加剤をも含んでよい。
【0065】
液体媒体は、チオファネートメチルおよび結晶性化合物Aを、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総量に対して5〜70重量%、特に10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%の量で含む。
【0066】
液体媒体は、チオファネートメチルおよび結晶性化合物Aを、1:2〜20:1、好ましくは1:1〜15:1の範囲のチオファネートメチルと少なくとも1種の化合物Aの相対モル量で含有し得る。成分の一つが、結晶複合体の化学量論に対して過剰である場合には、結晶複合体と過剰に存在する化合物の混合物が得られる。製剤の目的には、過剰な化合物Aまたはチオファネートメチルの存在は許容され得る。特に、過剰なチオファネートメチルの存在は安定性の問題を引き起こさない。同様に、過剰な化合物Aの存在は通常安定性の問題を引き起こさない。しかしながら、製剤中での制御されない複合体の形成を避けるために、製剤が、複合体を形成していないチオファネートメチルおよび複合体を形成していない化合物Aの両方を、結晶複合体の形で存在する化合物Aおよびチオファネートの量に対してそれぞれ20重量%よりも多い量で、または特にそれぞれ10重量%よりも多い量で含有しないことが好ましい。したがって、本発明は、特に、本発明の結晶複合体を含む製剤であって、ただし、化合物Aおよびチオファネートの両方が製剤中に複合体を形成しない形で存在する場合には、化合物Aの量は製剤中の複合体の量に対して20重量%以下、特に10重量%以下であり、同時に、チオファネートメチルの量は製剤中の複合体の量に対して20重量%以下、特に10重量%以下である前記製剤に関する。
【0067】
液体媒体は、液体懸濁液濃縮物中に通常存在する添加剤を含んでもよい。好適な添加剤については、下に記載するが、通常作物保護組成物に使用する界面活性剤、特にアニオンまたは非イオン乳化剤、湿潤剤および分散剤、さらに消泡剤、凍結防止剤、pH調節剤、安定剤、凝固防止剤、染料および殺生物剤(保存剤)が含まれる。好ましくは、液体媒体は粘性調節添加剤(増粘剤)を含まない。界面活性剤の量は、一般に、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総重量に対して、0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。凍結防止剤の量は、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総重量に対して、10重量%以下、特に20重量%以下、例えば、0.5〜20重量%、特に1〜10重量%である。凍結防止剤および界面活性剤以外の添加剤は、液体媒体、化合物Aおよびチオファネートメチルの総重量に対して、0〜5重量%の量で存在し得る。
【0068】
結晶複合体の形成に必要な温度は、一般に30℃以上、好ましくは35℃以上、特に40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に55℃以上、例えば、30〜100℃、好ましくは35〜100℃、特に40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、特に55〜80℃である。
【0069】
結晶複合体の形成に必要な時間は、公知の方式でせん断法のタイプおよび温度に依存し、当業者が標準的な実験により決定することができる。例えば30分〜48時間の範囲のせん断時間が好適であることが見出されているが、より長い時間も考えられる。1〜24時間のせん断時間が好ましい。
【0070】
せん断力は、チオファネートメチルおよび少なくとも1種の化合物Aの粒子を緊密に接触させるのに十分なせん断を提供することができる好適な技術により加えることができる。好適な技術には、グラインディング、破砕またはミリングが含まれ、特に、例えばビーズミリングを含む湿式グラインディングまたは湿式ミリングにより、またはコロイドミルを使用することにより実施する。好適なせん断装置には、特に、ボールミルまたはビーズミル、撹拌ボールミル、循環ミル(ピン粉砕システムを有する撹拌ボールミル)、ディスクミル、環状チャンバーミル、ダブルコーンミル、三本ロールミル、バッチミル、コロイドミル、およびサンドミルなどの媒体ミルが含まれる。粉砕プロセスの間に導入される熱エネルギーを放散するために、好ましくは粉砕チャンバーに冷却システムを取り付ける。特に好適なものは、ボールミルDrais Superflow DCP SF 12(DRAISWERKE、INC.製、40 Whitney Road. Mahwah, NJ 07430 USA)、Drais Perl Mill PMC(DRAISWERKE、INC.製)、循環ミルシステムZETA(Netzsch-Feinmahltechnik GmbH製)、Netzsch Feinmahltechnik GmbH, Selb, Germany製のディスクミル、ビーズミルEiger Mini 50(Eiger Machinery, Inc.製、888 East Belvidere Rd., Grayslake, IL 60030 USA)およびビーズミルDYNO-Mill KDL(WA Bachofen AG製、Switzerland)である。しかしながら、高せん断攪拌機、Ultra-Turrax装置、静的ミキサー、例えば混合ノズルを有するシステムおよびコロイドミルなどの他のホモジナイザーを含む、他のホモジナイザーも好適であり得る。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、せん断はビーズミルによりおこなう。特に、0.05〜5 mm、より好ましくは0.2〜2.5 mm、最も好ましくは0.5〜1.5 mmの範囲のビーズ径が好適であることが見出された。一般に、40〜99 %、特に70〜97 %、最も好ましくは65〜95 %の範囲のビーズ充填率を使用し得る。
【0072】
十分なせん断力を加えた後、結晶複合体の懸濁液が、場合により過剰なチオファネートメチルまたは活性化合物Aとの混合物として得られる。ここで、懸濁した粒子の90重量%が、動的光散乱により測定して、30μm以下、好ましくは20μm以下、特に10μm以下、特に5μm以下の粒径を有する。
【0073】
このようにして得られた結晶複合体の液体懸濁液を、添加物と共に製剤した後、または特に製剤する前に、通常の乾燥法、特に噴霧乾燥または凍結乾燥により、粉末組成物に変換することができる。乾燥の前または間に、乾燥または噴霧補助剤を加えてもよい。水性分散物の乾燥に適した乾燥または噴霧補助剤は公知である。これらには、保護コロイド、例えばポリビニルアルコール、特に>70%の加水分解度を有するポリビニルアルコール、カルボキシル化ポリビニルアルコール、フェノールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸/尿素/ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド/尿素縮合物、ポリビニルピロリドン、マレイン酸(または無水マレイン酸)とスチレンおよびそのエトキシ化誘導体などのビニル芳香族とのコポリマー、マレイン酸または無水マレイン酸とジイソブテンなどのC2〜C10-オレフィンおよびそのエトキシ化誘導体とのコポリマー、カチオンポリマー、例えばN-アルキル-N-ビニルイミダゾリニウム化合物とN-ビニルラクタム等とのホモおよびコポリマー、ならびに無機ブロッキング防止剤(凝固防止剤とも呼ばれる)、例えば、ケイ酸、特に焼成シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が含まれる。乾燥補助剤は、通常、本発明の液体殺有害生物組成物中の活性化合物粒子の重量に対して、0.1〜20重量%の量で使用する。
【0074】
上で既に述べた通り、本明細書において定義される結晶複合体は作物保護組成物を調製するのに好適であり、特に水性懸濁液濃縮物を調製するのに好適である。したがって、本発明はまた、本明細書において定義される結晶複合体、適切な場合には液相、ならびに適切な場合には通常の一般に固体の担体および/または補助剤を含む作物保護組成物を提供する。
【0075】
好適な担体は、原則として、作物保護組成物、特に殺菌剤に通常使用されるすべての固体の物質である。固体の担体は、例えば、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、アタクレー(attaclay)、石灰石、石灰、白亜、赤土、黄土、粘土、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの鉱物、粉砕した合成材料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの肥料、ならびに穀物の粗挽き粉、樹皮の粗挽き粉、木材の粗挽き粉および木の実の殻の粗挽き粉などの植物由来の製品、セルロース粉末および他の固体の担体である。
【0076】
結晶複合体の液体の製剤の場合には、組成物は液相を有する、好適な液相は、原則として、水、ならびにピラクロストロビンが難溶性または不溶性である有機溶媒、例えば、25℃および1013 mbarにおけるピラクロストロビンの溶解度が1重量%以下、特に0.1重量%以下、特に0.01重量%以下である有機溶媒である。
【0077】
典型的な補助剤には、界面活性剤、特に作物保護組成物に通常使用される湿潤剤および分散剤、さらに、粘性を変更する添加物(増粘剤)、消泡剤、凍結防止剤、pH調節剤、安定剤、凝固防止剤および殺生物剤(保存剤)が含まれる。
【0078】
本発明は特に、懸濁液濃縮物、特に水性懸濁液濃縮物(SC)の形の作物保護組成物に関する。前記懸濁液濃縮物は、微細に粉砕された粒子の形の結晶複合体を含み、ここで、結晶複合体の粒子は液体媒体、好ましくは水性媒体中に懸濁される。活性化合物粒子の粒径、すなわち活性化合物粒子の90重量%がそれ以下である粒径は、動的光散乱により測定して、典型的には30μm以下、好ましくは20μm以下、特に10μm以下、特に5μm以下である。有利には、本発明のSC中の40重量%以上、特に、60重量%以上の粒子が2μm未満の直径を有する。
【0079】
懸濁液濃縮物、特に水性懸濁液濃縮物は、結晶複合体を、下に記載する通りの通常の製剤添加剤を含有してもよい好適な液体の担体中に懸濁することにより調製することができる。しかしながら、本明細書に記載するせん断法により、すなわち、チオファネートメチルおよび活性化合物Aの懸濁した粒子ならびに場合により別の添加剤を含む液体に、30℃以上の温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることにより懸濁液濃縮物を調製することが好ましい。
【0080】
活性化合物に加えて、懸濁液濃縮物は、典型的には、界面活性剤、ならびに適切な場合には、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤、安定剤(殺生物剤)、pH調節剤および凝固防止剤を含む。
【0081】
前記SCにおいて、活性化合物の量、すなわち、結晶複合体および適切な場合には別の活性化合物の総量は、懸濁液濃縮物の総重量に対して、通常10〜70重量%の範囲、特に15〜50重量%の範囲である。
【0082】
好ましい界面活性剤はアニオンおよび非イオン界面活性剤(乳化剤)である。また、好適な界面活性剤は保護コロイドである。一般に、界面活性剤の量は、本発明のSCの総重量に対して0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。好ましくは、界面活性剤は少なくとも1種のアニオン界面活性剤および少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含み、アニオン界面活性剤の非イオン界面活性剤に対する比は、典型的には10:1〜1:10の範囲である。
【0083】
アニオン界面活性剤(アニオンテンシド(tensides)、乳化剤および分散剤)の例には、アルキルアリールスルホネート、フェニルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアリールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコールエーテルホスフェート、ポリアリールフェニルエーテルホスフェート、アルキルスルホコハク酸塩、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、石油スルホネート、タウリド(taurides)、サルコシド(sarcosides)、脂肪酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグノスルホン酸、スルホン化ナフタレンとホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドおよびフェノールおよび適切な場合には尿素との縮合物、ならびにフェノールスルホン酸、ホルムアルデヒドおよび尿素の縮合物、リグノ亜硫酸廃液およびリグノスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルアリールホスフェート、例えばトリスチリルホスフェート、ならびに上記の物質のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩が含まれる。好ましいアニオン界面活性剤は、少なくとも一つのスルホネート基、特にそれらのアルカリ金属塩およびそれらのアンモニウム塩を有するものである。
【0084】
非イオン界面活性剤(非イオン乳化剤および分散剤)の例には、アルキルフェノールアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、脂肪ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、イソトリデシルアルコール、脂肪アミド、メチルセルロース、脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー(ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー)、およびそれらの混合物が含まれる。好ましい非イオン界面活性剤は、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステルおよびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーおよびそれらの混合物である。
【0085】
保護コロイドは、典型的には、水溶性両親媒性ポリマーである。例には、タンパク質およびカゼインなどの変性タンパク質、水溶性デンプン誘導体およびセルロース誘導体などの多糖、特に疎水性に修飾したデンプンおよびセルロース、さらにポリカルボキシレート、例えば、ポリアクリル酸(ポリアクリレート)、アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーまたはマレイン酸コポリマー、例えばアクリル酸/オレフィンコポリマー、アクリル酸、スチレンコポリマー、無水マレイン酸/オレフィンコポリマー(例えば、SokalanR CP9、BASF)および前記コポリマーとポリエチレングリコールとのエステル化産物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルアミン、ポリエチレンアミンおよびポリアルキレンエーテルが含まれる。
【0086】
特に、本発明のSCは、水性の施用形態による植物の部分の濡れを改善する少なくとも1種の界面活性剤(湿潤剤)およびSC中での活性化合物粒子の分散を安定化させる少なくとも1種の界面活性剤(分散剤)を含む。湿潤剤の量は、SCの総重量に対して、典型的には0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%、特に0.5〜3重量%の範囲である。分散剤の量は、SCの総重量に対して、典型的には0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%である。
【0087】
好ましい湿潤剤は、アニオン性または非イオン性であり、例えば、ナフタレンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩、さらに脂肪アルコールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、脂肪ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレートおよび脂肪酸ポリグリコールエステルより選択される。
【0088】
好ましい分散剤は、アニオン性または非イオン性であり、例えば、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー、アルキルアリールホスフェート、例えばトリスチリルホスフェート、リグノスルホン酸、スルホン化ナフタレンとホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドおよびフェノールおよび適切な場合には尿素との縮合物、ならびにフェノールスルホン酸、ホルムアルデヒドおよび尿素の縮合物、リグノ亜硫酸廃液およびリグノスルホネート、ポリカルボキシレート、例えばポリアクリレート、無水マレイン酸/オレフィンコポリマー(例えば、SokalanR CP9、BASF)、ならびに前記の物質のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩より選択される。
【0089】
本発明のSCに好適な粘性を変更する添加剤(増粘剤)は、特に、製剤に擬塑性流動特性を与える化合物、すなわち、休止状態では高い粘性を有し、撹拌状態では低い粘性を有するような特性を与える化合物である。好適なものは、原則として、この目的で懸濁液濃縮物に使用されるすべての化合物である。例えば、無機物質、例えば、ベントナイトまたはアタプルガイト(attapulgites)(例えば、Engelhardt製のAttaclayR)、および有機物質、例えば、Xanthan GumR (Kelco製のKelzanR)、RhodopolR23 (Rhone Poulenc)またはVeegumR (R.T. Vanderbilt製)などの多糖およびヘテロ多糖が挙げられ、Xanthan-GumRを使用することが好ましい。粘性を変更する添加剤の量は、しばしば、SCの総重量に対して0.1〜5重量%である。
【0090】
本発明のSCに好適な消泡剤は、例えば、この目的に公知のシリコーンエマルション(Wacker製のSilikonR SRE、またはRhodia製のRhodorsilR)、長鎖アルコール、脂肪酸、蝋の水性分散物タイプの消泡剤、固体の消泡剤(いわゆるコンパウンド)、有機フッ素化合物およびそれらの混合物である。消泡剤の量は、典型的には、SCの総重量に対して0.1〜1重量%である。
【0091】
本発明の懸濁液濃縮物を安定化させるために保存剤を加えてもよい。好適な保存剤は、イソチアゾロンをベースとするもの、例えば、ICI製のProxelRまたはThor Chemie製のActicideR RSまたはRohm & Haas製のKathonR MKである。殺菌剤(bactericide)の量は、典型的には、SCの総重量に対して0.05〜0.5重量%である。
【0092】
好適な凍結防止剤は、液体のポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセロールである。凍結防止剤の量は、一般に、懸濁液濃縮物の総重量に対して1〜20重量%、特に5〜10重量%である。
【0093】
適切な場合には、本発明のSCは、pHを調節するために緩衝剤を含んでもよい。緩衝剤の例は、例えばリン酸、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、シュウ酸およびコハク酸などの弱い無機または有機酸のアルカリ金属塩である。
【0094】
結晶複合体の製剤を種子の処理に使用する場合には、製剤は、さらに種子の処理、例えばドレッシングまたはコーティングに使用される通常の成分を含んでもよい。例としては、上記の成分に加えて、着色剤、粘着剤、充填剤および可塑剤が挙げられる。
【0095】
着色剤は、このような目的に通常使用されるすべての染料および顔料である。ここでは、水に難溶性の顔料および水溶性の染料の両方を使用することができる。言及し得る例は、ローダミンB、C.I.ピグメントレッド112およびC.I.ソルベントレッド1、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー80、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー13、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ5、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン7、ピグメントホワイト6、ピグメントブラウン25、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット49、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド14、アシッドブルー9、アシッドイエロー23、ベーシックレッド10、ベーシックレッド108の名称で知られる染料および顔料である。着色剤の量は、通常、製剤の20重量%以下であり、好ましくは、製剤の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲である。
【0096】
粘着剤は、ドレッシング製品に使用することができるすべての通常の結合剤である。好適な結合剤の例には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールおよびタイロースなどの熱可塑性ポリマー、ならびに、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリスチレン、ポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、上記の保護コロイド、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリ無水物、ポリエステルウレタン、ポリエステルアミド、熱可塑性多糖、例えば、セルロースエステル、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステルなどのセルロール誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースを含む)ならびにデンプン誘導体および修飾されたデンプン、デキストリン、マルトデキストリン、アルギン酸塩およびキトサン、さらに、脂肪、油、タンパク質(カゼイン、ゼラチンおよびゼインを含む)、アラビアゴム、セラックが含まれる。好ましい粘着剤は、生物適合性である。すなわち、それらは顕著な植物毒性活性を有しない。好ましくは、粘着剤は生物分解性である。好ましくは、粘着剤は、製剤の活性成分のマトリックスとして作用するように選択する。粘着剤の量は、通常、製剤の40重量%以下であり、好ましくは、製剤の総重量に対して、1〜40重量%の範囲、特に5〜30重量%の範囲である。
【0097】
粘着剤の他に、製剤は不活性充填剤を含んでもよい。これらの例には、上記の固体の担体材料、特に、粘土、白亜、ベントナイト、カオリン、タルク、パーライト、マイカ、シリカ、珪藻土、石英粉末、モンモリロナイトなどの微粒子状無機材料、ならびに、木材粉末、穀類粉末、活性炭等などの微粒子状有機材料が含まれる。充填剤の量は、好ましくは、充填剤の総量が、製剤のすべての非揮発性成分の総重量に対して75重量%以下となるように選択する。一般的に、充填剤の量は、製剤のすべての非揮発性成分の総重量に対して1〜50重量%の範囲である。
【0098】
さらに、製剤は、コーティングの柔軟性を増大する可塑剤を含んでもよい。可塑剤の例には、オリゴマーポリアルキレングリコール、グリセロール、ジアルキルフタレート、アルキルベンジルフタレート、グリコールベンゾエートおよび関連する化合物が含まれる。コーティング中の可塑剤の量は、しばしば、製剤の総重量に対して0.1〜20重量%の範囲である。
【0099】
本発明の結晶複合体は、化合物Aに応じて植物病原性の菌類または害虫を防除するために、公知の方法により使用することができる。特に、結晶複合体は、活性を増大させるためおよび/または活性スペクトルを広くするために別の活性化合物と共に製剤することができる。これらには、原則として、通常ピラクロストロビンと共に使用されるすべての殺虫剤および殺菌剤が含まれる。本発明の新規の結晶複合体は、葉に施用する殺菌剤、ドレッシングおよび土壌の殺菌剤として、植物の保護に使用することができる。
【0100】
それらは、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、牧草、バナナ、ワタ、ダイズ、コーヒー、サトウキビ、ブドウ、果実および観賞用植物などの種々の栽培植物、ならびにキュウリ、マメ、トマト、ジャガイモおよびウリ科植物などの野菜における、ならびにこれらの植物の種子における数多くの菌類を防除するために特に重要である。
【0101】
本発明の結晶複合体は、懸濁液濃縮物として製剤することができる活性化合物と共に、懸濁液濃縮物として製剤するのに特に適している。したがって、本発明の好ましい実施形態は、結晶複合体に加えて、微細に粉砕された微粒子の形の少なくとも1種の別の活性化合物を含む懸濁液濃縮物に関する。粒径、活性化合物の量および補助剤に関しては、上に記載した通りである。
【0102】
結晶複合体と混合する典型的な別の混合成分には、前記の化合物A、特に前記の殺菌剤および殺虫剤/殺ダニ剤が含まれる。
【0103】
原則として、本発明の結晶複合体の製剤は、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを併用した従来の製剤により防除することができる有害な菌類または他の有害生物により引き起こされるすべての植物の病気を防除するために使用することができる。化合物Aまたは別の混合成分に応じて、前記病気は、例えば、下記の植物の病気の一つである。
【0104】
・野菜、アブラナ、サトウダイコン、ダイズ、穀類、ワタ、果実およびイネのアルテルナリア(Alternaria)属、
(例えば、ジャガイモおよび種々の植物のアルテルナリア・ソラニ(A. solani)またはアルテルナリア・アルテルナタ(A. alternata))、
・サトウダイコンおよび野菜のアファノミセス(Aphanomyces)属、
・ワタおよびイネのアスコキタ(Ascochyta)属、
・トウモロコシ、穀類、イネおよびシバのビポラリス(Bipolaris)およびドレクスレラ(Drechslera)属、
(例えば、オオムギのドレクスレラ・テレス(D.teres)、コムギのドレクスレラ・トリチ-レペンチス(D. tritci-repentis))、
・穀物のブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)(うどん粉病)、
・イチゴ、野菜、花およびブドウのボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色カビ病)、
・ワタのボトリオジプロジア(Botryodiplodia)属、
・レタスのブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、
・トウモロコシ、ダイズ、イネおよびサトウダイコンのセルコスポラ(Cercospora)属、(例えば、サトウダイコンのセルコスポラ・ベチクラ(C. beticula))、
・トウモロコシ、穀類、イネのコクリオボルス(Cochliobolus)属、(例えば、穀類のコクリオボルス・サチブス(Cochliobolus sativus)、イネのコクリオボルス・ミヤベアヌス(Cochliobolus miyabeanus))、
・ダイズ、ワタおよび種々の植物のコリネスポラ(Corynespora)属、
・ダイズ、ワタおよび種々の植物ののコレトトリクム(Colletotricum)属、
(例えば、種々の植物のコレトトリクム・アクタタム(C. acutatum))、
・穀類およびイネのクルブラリア(Curvularia)属、
・穀類およびトウモロコシのジプロジア(Diplodia)属、
・トウモロコシのエクセロヒルム(Exserohilum)属、
・ウリ科植物のエリシフェ・シコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)およびスファエロセカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、
・種々の植物のフサリウム(Fusarium)およびベルチシリウム(Verticillium)属(例えば、ベルチシリウム・ダリアエ(V dahliae)、
(例えば、コムギのフサリウム・グラミネアルム(F. graminearum))、
・穀類のガエウマノミセス・グラミニス(Gaeumanomyces graminis)、
・穀類およびイネのギベレラ(Gibberella)属(例えば、イネのギベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi))、
・イネの穀物汚染複合体、
・トウモロコシおよびイネのヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属(例えば、ヘルミントスポリウム・グラミニコラ(H. graminicola))、
・ダイズおよびワタのマクロホミナ(Macrophomina)属、
・穀類のミクロドキウム(Michrodochium)属、例えば、ミクロドキウム・ニバレ(M. nivale)、
・穀類、バナナおよびラッカセイのミコスフェレラ(Mycosphaerella)属、(コムギのミコスフェレラ・グラミニコラ(M. graminicola)、バナナのミコスフェレラ・フィジエシス(M.fijiesis))、
・ダイズのファエオイサリプシス(Phaeoisaripsis)属、
・ダイズのファコプサラ(Phakopsara)属、例えば、ファコプサラ・パキリジ(P. pachyrhizi)およびファコプサラ・メイボミアエ(Phakopsara meibomiae)、
・ダイズのホマ(Phoma)属、
・ダイズ、ヒマワリおよびブドウのホモプシス(Phomopsis)属、(ブドウのホモプシス・ビチコラ(P. viticola)、ヒマワリのホモプシス・ヘリアンチイ(P. helianthii))、
・ジャガイモおよびトマトのフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、
・ブドウのプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、
・ダイズおよびワタのペネシリウム(Penecilium)属、
・リンゴのポドスフェラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha)、
・穀類のシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)、
・ホップおよびウリ科植物のシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)属、(例えば、キュウリのシュードペロノスポラ・クベニス(P. cubenis))、
・穀類、トウモロコシおよびアスパラガスのプクキニア(Puccinia)属(コムギのプクキニア・トリチシナ(P. triticina)およびプクキニア・ストリホルミス(P. striformis)、アスパラガスのプクキニア・アスパラギ(P. asparagi))、
・穀類のピレノホラ(Pyrenophora)属、
・イネのピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、コルチシウム・ササキイ(Corticium sasakii)、サロクラジウム・オリザエ(Sarocladium oryzae)、サロクラジウム・アテヌアタム(S.attenuatum)、エンチロマ・オリザエ(Entyloma oryzae)、
・シバおよび穀類のピリクラリア・グリセア(Pyricularia grisea)、
・シバ、イネ、トウモロコシ、ワタ、アブラナ、ヒマワリ、サトウダイコン、野菜および種々の植物のピチウム属(Pythium spp.)、
・ワタ、イネ、ジャガイモ、シバ、トウモロコシ、アブラナ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜および種々の植物のリゾクトニア(Rhizoctonia)属(例えば、リゾクトニア・ソラニ(R. solani))、
・イネおよび穀類のリンコスポリウム(Rhynchosporium)属(例えば、リンコスポリウム・セカリス(R. secalis)、
・アブラナ、ヒマワリおよび種々の植物のスクレロチニア(Sclerotinia)属、
・コムギのセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)およびスタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum)、
・ブドウのエリシフェ(異名:ウンシヌラ)・ネカトル(Erysiphe(syn. Uncinula)necator)、
・トウモロコシおよびシバのセトスパエリア(Setospaeria)属、
・トウモロコシのスファセロテカ・レイリニア(Sphacelotheca reilinia)、
・ダイズおよびワタのチエバリオプシス(Thievaliopsis)属、
・穀類のチレチア(Tilletia)属、
・穀類、トウモロコシおよびサトウダイコンのウスチラゴ(Ustilago)属、ならびに
・リンゴおよびセイヨウナシのベンツリア(Venturia)属(黒星病)、(例えば、リンゴのベンツリア・イナエクアリス(V. inaequalis))。
【0105】
本発明の複合体は、公知の方法により、昆虫、ダニ(acaricid)または線虫に対して活性を示す別の化合物と共に製剤してもよい。さらに、チオファネートメチルと、刺す、噛む(chewing、biting)または吸う昆虫および他の節足動物に対して活性を有する化合物Aとの結晶複合体を提供すること、または結晶複合体を少なくとも1種の刺す、噛む(chewing、biting)または吸う昆虫および他の節足動物に対して活性を有する前記他の活性成分と共に製剤することが特に有利であることが証明された。刺す、噛む(chewing、biting)または吸う昆虫および他の節足動物には、例えば下記の目に属するものが含まれる。
【0106】
・鞘翅目、特にフィロファガ・クヤバナ(Phyllophaga cuyabana)などのフィロファガ(Phyllophaga)属、ステルネクス・ピングシ(Sternechus pingusi)、ステルネクス・スブシグナタス(Sternechuns subsignatus)などのステルネクス(Sternechus)属、プロメコプス・カリニコリス(Promecops carinicollis)などのプロメコプス(Promecops)属、アラカンタス・モレイ(Aracanthus morei)などのアラカンタス(Aracanthus)属、およびジアブロチカ・スペシオサ(Diabrotica speciosa)、ジアブロチカ・ロンギコルニス(Diabrotica longicornis)、ジアブロチカ・12-プンクタタ(Diabrotica 12-punctata)、ジアブロチカ・ビルギフェラ(Diabrotica virgifera)などのジアブロチカ(Diabrotica)属、
・鱗翅目、特にモロコシマダラメイガ(Elasmopalpus lignosellus)などのエラスモパルプス(Elasmopalpus)属、ジロボデルス(Diloboderus)属、
・等翅目、特にリノテルミチダ(Rhinotermitida)、
・同翅目、特にダルブルス・マイディス(Dalbulus maidis)、
および、線虫、例えば、「根コブ」線虫、例えば、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)および他のメロイドギネ(Meloidogyne)属などのメロイドギネ属;シスト形成線虫(cyst-forming nematodes)、例えば、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)および他のグロボデラ(Globodera)属;ムギシストセンチュウ(Heterodera avenae)、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、テンサイシストセンチュウ(Heterodera schachtii)、クローバーシストセンチュウ(Heterodera trifolii)および他のヘテロデラ(Heterodera)属;コブ(Gall)線虫、例えば、アングイナ(Anguina)属;茎線虫および葉線虫、例えば、アフェレンコイデス(Aphelenchoides)属。
【0107】
例えば、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体を含む製剤を、下記の有害な菌類:
- 穀類、ワタおよびイネのアルテルナリア(Alternaria)属、
- ワタおよびイネのアスコキタ(Ascochyta)属、
- ワタのボトリオジプロジア(Botryodiplodia)属、
- トウモロコシ、ダイズ、イネおよび種々の植物のセルコスポラ(Cercospora)属、
- ダイズ、ワタおよび種々の植物のコリネスポラ(Corynespora)属、
- ダイズ、ワタおよび種々の植物のコレトトリクム(Colletotrichum)属、
- 穀類およびイネのクルブラリア(Curvularia)属、
- 穀類およびイネのジプロジア(Diplodia)属、
- 穀類およびイネのドレクスレラ(Drechslera)属、
- 穀類、ダイズおよびワタのフサリウム(Fusarium)属、
- 穀類およびイネのギベレラ(Giberella)属、
- ダイズおよびワタのマクロホミア(Macrophomia)属、
- ダイズおよびワタのペネシリウム(Penecilium)属、
- ダイズのファエオイサリプシス(Phaeoisaripsis)属、
- ダイズのホマ(Phoma)属、
- ダイズのホモプシス(Phomopsis)属、
- ダイズおよびワタのピチウム(Pythium)属、
- ピレノホラ(Pyrenophora)属、
- イネのピリクラリア(Pyricularia)属、
- ダイズ、イネおよびワタのリゾクトニア(Rhizoctonia)属、
- イネのリコスポリウム(Rhychosporium)属、
- ダイズのセプトリア(Septoria)属、
- 穀類およびイネのチレチア(Tilletia)属、
- 穀類のウスチラゴ(Ustilago)属
を防除するために使用することができる。
【0108】
例えば、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体、および別の成分としてフィプロニルまたは他のGABAアンタゴニスト、例えばアセトプロール、エンドスルファン、エチプロール、バニリプロール、ピラフルプロールまたはピリプロールを含む製剤を、上記の通りの有害な菌類の一つを防除し、同時に昆虫、例えば、
・鞘翅目、特にフィロファガ・クヤバナ(Phyllophaga cuyabana)などのフィロファガ(Phyllophaga)属、ステルネクス・ピングシ(Sternechus pingusi)、ステルネクス・スブシグナタス(Sternechuns subsignatus)などのステルネクス(Sternechus)属、プロメコプス・カリニコリス(Promecops carinicollis)などのプロメコプス(Promecops)属、アラカンタス・モレイ(Aracanthus morei)などのアラカンタス(Aracanthus)属、およびジアブロチカ・スペシオサ(Diabrotica speciosa)、ジアブロチカ・ロンギコルニス(Diabrotica longicornis)、ジアブロチカ・12-プンクタタ(Diabrotica 12-punctata)、ジアブロチカ・ビルギフェラ(Diabrotica virgifera)などのジアブロチカ(Diabrotica)属、オリゾファグス(Oryzophagus)属、および
・鱗翅目、特にモロコシマダラメイガ(Elasmopalpus lignosellus)などのエラスモパルプス(Elasmopalpus)属、ジロボデルス(Diloboderus)属
を防除するために使用することができる。
【0109】
チオファネートメチルおよびエポキシコナゾールを含む製剤を、例えば、下記の有害な菌類:
- 穀類のミクロドキウム(Microdochium)属、
- 穀類およびイネのチレチア(Tilletia)属、
- 穀類のウスチラゴ(Ustilago)属
を防除するために使用することができる。
【0110】
特に、チオファネートメチルおよびメトコナゾールを含む製剤を、例えば、下記の有害な菌類:
- 穀類のリンコスポリウム(Rhynchosporium)属、
- トウモロコシのスファセロテカ(Sphacelotheca)属、
- ダイズのセプトリア(Septoria)属
を防除するために使用することができる。
【0111】
新規の結晶複合体は、結晶複合体のみを含む低溶媒または無溶媒の水性懸濁液濃縮物、ならびに結晶複合体および別の作物保護剤、特に上に示した混合成分を含む低溶媒または無溶媒の水性懸濁液濃縮物の両方の調製を可能にする。溶媒含有量、特に凍結防止剤を除く芳香族炭化水素の含有量は、一般に、懸濁液濃縮物の2重量%以下であり、しばしば2重量%よりも少ない。本発明の懸濁液濃縮物は、化合物Aまたは化合物Aとチオファネートメチルの混合物を含有する公知の懸濁液濃縮物および乳化懸濁液濃縮物と比較して、特に、保存安定性が改善されている点で優れている。
【0112】
下記の図面および実施形態は、本発明を説明するために提供するものであり、本発明を限定するものと理解されるべきではない。
【0113】
分析
X線粉末回折(PXRD)の図は、Siemens製のD-5000回折計を用いて、25℃において、Cu-Kα線を用いて、2θ = 4°〜35°の範囲、0.02°の増分の反射配置で測定した。得られた2θ値は、記載した格子面間隔dを計算するために使用した。
【0114】
単結晶X線回折。データは、黒鉛により単色化したCuKα線(λ = 1.54178Å)を用いて、Bruker AXS CCD検出器により103(2) Kで収集した。構造は、SHELX-97ソフトウェアパッケージによるフーリエ技術を用いて、直接法により解析し、精密化し、展開した(expanded)。
【0115】
熱重量分析/示差熱分析は、Mettler Toledo TGA/SDTA 851により、基準としてAl2O3を用いて実施した。サンプル(8〜22 mg)を白金製サンプルカップに入れて測定した。N2ガス流下、10℃/分で30〜605℃の温度プログラムを使用した。
【0116】
示差走査熱量測定(DSC)は、TS0801RO Sample RobotおよびTS08006C1 Gas Controlを用いたMettler Toledo DSC 823eによりおこなった。測定は、ピンホールを有するアルミニウムのるつぼを用いて、30〜185℃で、5℃/分の加熱速度で実施した。
【0117】
13C-CP/MAS測定は、7Tワイドボアマグネットに連結したBRUKER Avance 300装置により実施し、13C共鳴周波数は75.47 MHzであった。5700 Hzで回転する7 mm o.d. ZrO2ローターを有するBruker MASプローブを使用した(これは、等方性シグナルから75.5 ppmの間隔を有するスピニングサイドバンドを作る)。13Cスペクトルは、交差分極(Hartmann-Hahn contact 3ms、B1= 45 kHz)、捕捉(acquisition)時間35 ms、捕捉の間のTPPMモジュレートデカップリング(B1=45 kHz)、待ち時間2sから120s(プロトンの推測される(または測定された)縦緩和時間T1(H)に依存する);走査の数500〜10000(使用する待ち時間に依存する)により得た。ppmスケールは、アダマンタンの低磁場シグナルを38.066 ppmとして外部から較正した。「混合結晶」の典型的な測定は、例えば、スキャンの間の待ち時間を120秒として500スキャンをおこない、そのため、測定の総時間は17時間であった。
【0118】
サンプルのIRスペクトルは、DTGS KBr検出器を有するThermo Nicolet Nexus 470 IR分光光度計により、KBr錠から測定した。
【0119】
懸濁液濃縮物中の粒径は、Malvern Instruments GmbH製のMastersizer 2000を用いて測定した。
【0120】
エポキシコナゾールはラセミ混合物を使用した。これは、22℃で熱力学的に安定な単斜晶結晶型Iとして存在することが知られている。I型の単結晶構造は決定されている(単斜晶、空間群P21/n、a = 5.396Å、b = 17.304Å、c = 16.568Å、β = 91.742°)。PXRD実験データを図2に示す。I型は、130〜140℃の融解範囲を有する。
【0121】
チオファネートメチルは、22℃で熱力学的に安定な単斜晶結晶型として存在することが知られている。単結晶のX線分析により、a=10.715Å、b=11.548Å、c=11.548Åおよびβ=90.49°の寸法を有する単斜晶単位格子(空間群P21/n)であることが明らかになった。チオファネートメチルは融解した後、直接分解する(I型のm.p.〜180℃)。
【0122】
ピラクロストロビンは、WO 2006/136357に記載される通りの異なる多形で存在することが知られている。下記の実験には、多形IVを使用した(図3のPXRDを参照されたい)。
【0123】
調製例
I スラリー法
実施例1:1 gのチオファネートメチルおよび1.13 gのエポキシコナゾール(1:1のモル比)をプロパンジオールと水の混合物(20 ml、1:3 v/v)と共に丸底フラスコに入れた。得られたスラリーを50℃で1週間撹拌した後、混合物を22℃に冷却し、濾過し、素焼き板の上で22℃で乾燥した。PXRDにより、得られた結晶性物質がチオファネートメチルとエポキシコナゾールの共結晶であることが明らかになった(図4)。結晶複合体の融解は148℃で開始する。
【0124】
実施例2〜6:実施例1の方法を、下記の通りの異なる溶媒または溶媒と水の混合物を使用し、異なる温度を用いて繰り返した。
【0125】
実施例2:1:3 グリセリン:水(50℃)
実施例3:1:3 プロピレンカーボネート:水(50℃)
実施例4:1:3 プロピレンカーボネート:水(22℃)
実施例5:1:3 イソプロパノール:水(50℃)
実施例6:エタノール(22℃)
実施例2〜6のいずれにおいても結晶性物質が得られ、それらはPXRDによりチオファネートメチルとエポキシコナゾールの結晶複合体であると同定された。
【0126】
実施例7:2 gのチオファネートメチルおよび0.96 gのピラクロストロビン(2:1のモル比)をプロパンジオールと水の混合物(20 ml、1:3 v/v)と共に丸底フラスコに入れた。得られたスラリーを50℃で1週間撹拌した後、混合物を22℃に冷却し、濾過し、素焼き板の上で22℃で乾燥した。PXRDにより、得られた結晶性物質がチオファネートメチルとピラクロストロビンの共結晶であることが明らかになった(図5)。得られた物質は、PXRDにより、チオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体であると同定された。
【0127】
実施例8〜10:実施例7の方法を、下記の通りの異なる溶媒または溶媒と水の混合物を使用し、異なる温度を用いて繰り返した。
【0128】
実施例8:1:3 グリセリン:水(50℃)
実施例9:1:3 プロピレンカーボネート:水(50℃)
実施例10:1:3 プロピレンカーボネート:水(22℃)
実施例8〜10のいずれにおいても結晶性物質が得られ、それらはPXRDによりチオファネートメチルとピラクロストロビンの結晶複合体であると同定された。
【0129】
実施例7〜10により得られた物質の13C-CP/MASにより、個々の結晶性物質の混合物ではなく、共結晶が存在することが確認された。特に、ピラクロストロビンおよびメチルチオファネートは同じT1(H)で緩和する:1Hの前飽和の後の可変待機遅延(variable waiting delay)により、プロトンの部分的な緩和が可能になる。この分極を交差分極により1Hから13Cに移した。その結果、ピラクロストロビンおよびメチルチオファネートの13Cシグナルの振幅は、二つのタイプの分子のそれぞれにより見られる1Hリザーバー(reservoir)の分極の増大を反映する。ピラクロストロビンおよびメチルチオファネートは、同一の1H緩和を示し、すなわち、両方が同じ1Hリザーバーにカップリングしており、したがって隣接していなければならないことを示していた。両方の成分のシグナルは同じように緩和し、すなわち、1Hリザーバーが緩和するとスペクトル全体がスケーリングする(scales)。異なる遅延(それぞれ20sおよび120 s)で測定したスペクトルは、絶対強度において2倍異なったが、スケーリングの後、互いに完全に一致した。プロトンのT1緩和は34.4 s (純粋なチオファネートメチル28.6 s、純粋なピラクロストロビン7.0 s)であった。
【0130】
せん断法
下記の製剤添加物を使用した。
【0131】
分散剤1:エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic PE 10500、BASF Aktiengesellschaft製)。
【0132】
分散剤2:アクリル酸グラフトコポリマー(Atlox 4913、Uniquema製)。
【0133】
分散剤3:16個のオキシエチレン単位を有するエトキシ化トリスチリルフェノールアンモニウムサルフェート:Soprophor 4D384、Rhodia製。
【0134】
分散剤4:フェノールスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合生成物のナトリウム塩。
【0135】
消泡剤:市販のシリコン消泡剤(水性乳液、20重量%の活性物質 - Wacker Chemie AGより入手したSilfoam SRE)。
【0136】
染料製剤:ディスパースグリーン
実施例11(比較例):下記の表(すべての量をg/kgで表す)に記載した処方に従って5 kgのサンプルを調製した。キサンタンガム水溶液およびディスパースグリーン以外のすべての成分を容器中で混合した後、6.7 m/sのチップスピードの600 mlビーズミルに、混合物を20℃に維持しながら、8 kg/hで2回連続して通すことにより粉砕した。得られた混合物にキサンタンガムの2%溶液および染料製剤を撹拌しながら加えた。均一な少し粘性の緑色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を、水による100倍希釈のレーザー回折により測定したところ、粒子の90%が3.9μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。
【表6】
【0137】
実施例12:実施例11に記載した処方に従って5 kgのサンプルを調製した。キサンタンガム溶液およびディスパースグリーン以外のすべての成分を容器中で混合した。この混合物を、6.8 m/sで運転している600 mlビーズミルで、混合物を40℃に維持しながら20 kg/hで8時間循環させた。得られた混合物にキサンタンガムの2%溶液および染料製剤を撹拌しながら加えた。均一な少し粘性の緑色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を実施例11に従って測定したところ、1.3μmのD90値を示した。
【0138】
サンプルを蒸発乾固させた。得られた物質のPXRDにより、過剰なチオファネートメチル以外に、ピラクロストロビンとチオファネートメチルの結晶複合体の存在が明らかになった。
【0139】
実施例13(比較例):下記の表(すべての量をg/kgで表す)に記載した処方に従って2kgのサンプルを調製した。キサンタンガム水溶液以外のすべての成分を容器中で混合した。この混合物を、6.8 m/sで運転している600 mlビーズミルで、混合物を20℃に維持しながら8 kg/hで4時間循環させた。得られた混合物にキサンタンガムの2%溶液を撹拌しながら加えた。均一な少し粘性の無色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を実施例11に従って測定したところ、1.4μmのD90値を示した。
【表7】
【0140】
実施例14:粉砕を開始する前に混合物を45℃に加熱し、この温度を粉砕の間4時間維持した点を除いて、実施例3と同じ処方および同じ方法により2 kgのサンプルを調製した。均一な少し粘性の無色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を、実施例11に従って測定したところ、1.5μmのD90値を示した。
【0141】
保存安定性
実施例1、2、3および4において製造したサンプルの安定性を、HDPE瓶に入れた100 mlのサンプルを決められた期間、決められた温度に保存することにより測定した。典型的な保存試験は、40℃で8週間であった。保存の後、〜100倍希釈のレーザー回折および150μmの湿式ふるい上の残渣の測定の両方により粒径を測定した。
【0142】
典型的な良好な懸濁液の品質は、D90 < 10μmであることおよび湿式ふるい残渣が< 0.5 %であることを特徴とする。
【表8】
【0143】
実施例15(比較例):約350 gの脱塩水を容器に入れた。そこに100 gのプロピレングリコール、20 gの分散剤1、30 gの分散剤4、2 gの粉砕補助剤(アモルファスシリカ)および2 gの消泡剤(シリコン油の水性エマルション)を加えた。混合物を25℃で、1000 rpmの撹拌速度で15分間撹拌した。次に、1000 rpmで撹拌しながら、200 gのエポキシコナゾールおよび300 gのチオファネートメチルを加えた。次に、混合物を、実施例11に記載した通りのビーズミル中で、混合物を10℃に維持しながら少なくとも80重量%の粒子が2μm未満の直径を有するようになるまで粉砕した。得られた混合物にキサンタンガムの2%水溶液および2 gの殺生物製剤を加えた。均一な少し粘性の液体が得られた。この分散物の粒径を水による100倍希釈のレーザー回折により測定したところ、粒子の80%が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。固体のPXRDは、エポキシコナゾールおよびチオファネートメチルの物理的混合物を示した。
【0144】
60℃で1週間保存した後、混合物の粘性は非常に高くなり、濃くなった液体の水による100倍希釈のレーザー回折により粒子の25%未満が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。
【0145】
実施例16:エポキシコナゾールおよびチオファネートメチルの製剤を、粉砕を10℃ではなく50℃で実施した点を除いて、一般処方に従って、実施例15に記載した方法と同様にして調製した。この分散物の粒径を水による100倍希釈のレーザー回折により測定したところ、粒子の90%が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。固体のPXRDにより、この物質がエポキシコナゾールとチオファネートメチルの結晶複合体であることが示された。
【0146】
60℃で1週間保存した後、混合物の粘度は、調製したばかりの液体の粘度と同じであり、濃くなった液体の水による100倍希釈のレーザー回折により粒子の90%が2μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。
【0147】
実施例17:メトコナゾールとチオファネートメチルの混合物(1 g、モル比1:1)を丸底フラスコに入れて、20 mlのグリセリン中、50℃で2日間スラリー化した。混合物をゆっくりと室温に冷却し、濾過し、素焼き板の上で数時間乾燥した。固体をPXRDにより分析したところ(図8参照)、固体が>95%純粋なメトコナゾールとチオファネートメチルの共結晶であることが示された。この物質のDSC測定は、155〜158℃で開始し、160〜168℃にピーク最大値を有する吸熱融解ピークを示した。IRスペクトルを図10に示す。
【0148】
実施例18:メトコナゾールとチオファネートメチルの混合物(2 g、モル比1:1)を50 mlのアセトニトリルに、穏やかに加熱および撹拌しながら溶解した。溶液を濾過して、濾液を蓋をしないフラスコ中で蒸発させた。1日後、正方形に形成された結晶は単結晶X線分析に十分な大きさになった。構造を解析したところ、メトコナゾールとチオファネートメチルの1:1共結晶であることが明らかになった。同じ実験を酢酸メチルおよびニトロメタン中でおこなったところ同様の結果を得た。
【0149】
実施例19:32重量部のチオファネートメチルおよび6重量部のメトコナゾールを、50重量部の水、8重量部のグリセリン、2重量部の分散剤1および2重量部の分散剤2の混合物中にスラリー化した。この混合物を、65℃で4時間、コロイドミル中で機械的に粉砕した。スラリーを放置して冷却し、固体物質の沈殿の後、上清をデカントした。沈殿を乾燥し、IRにより分析したところ、チオファネートメチルとメトコナゾールの共結晶の存在が示された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の農業上活性な有機化合物Aおよびチオファネートメチルを含む結晶複合体。
【請求項2】
チオファネートメチルと活性化合物Aのモル比が少なくとも0.5:1、特に0.9:1〜2.1:1である、請求項1に記載の結晶複合体。
【請求項3】
化合物Aの官能基が少なくとも1個のイミノ窒素原子を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の結晶複合体。
【請求項4】
化合物Aの少なくとも1個の官能基が、置換されたまたは無置換の、ピリジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、ピラゾリルおよびトリアゾリル基より選択される5または6員ヘテロ芳香族基である、請求項3に記載の結晶複合体。
【請求項5】
化合物Aの少なくとも1個の官能基が、置換されたまたは無置換のピラゾリルまたはトリアゾリル基である、請求項4に記載の結晶複合体。
【請求項6】
化合物Aの少なくとも1個の官能基が、オキシイミノ基またはアミジノ基である、請求項3に記載の結晶複合体。
【請求項7】
化合物Aが、さらに場合により置換されたフェニル環を有する、前記の請求項のいずれか1項に記載の結晶複合体。
【請求項8】
場合により置換されたフェニル環が、環原子として少なくとも1個のイミノ窒素原子を有する無置換のまたは置換された芳香族含窒素複素環に、化学結合または1〜5個の原子を有する鎖を介して結合している、請求項7に記載の結晶複合体。
【請求項9】
化合物Aが 式
【化1】
[式中、
Hetは、イミダゾール-2-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イルであり、ここで、Hetは、無置換であるか、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1または2個の基および/または1個のフェニル基(1、2または3個のハロゲン原子を有してもよい)を有してよく;
Xは、Oまたは基CHR3であり;
Yは、CR4R5またはSiR4aR5aであり、Xが基CHR3である場合には、YはOであってもよく;または
XおよびYは一緒になって、化学結合または式
【化2】
の二価の基であり;
kは、0、1または2であり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2または3であり;
R1は、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、メトキシ、またはフェニルであり;
R2は、N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)およびC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)より選択され;
R3は、水素またはC1〜C6-アルキル(1、2、3、4または5個のハロゲン原子および/またはOHおよびカルボニル基より選択される1個の官能基を有してもよい)であり;
R4は、水素、CN、OHまたはC1〜C4-アルキルであり、またはR3と一緒になって結合を形成し;
R5は、C1〜C4-アルキル(OH、C1〜C2-アルコキシ、C1〜C2-ハロアルコキシ、C1〜C2-ハロアルキル、トリメチルシリル、C3〜C6-シクロアルキルおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される1または2個の基を有してもよい)、または
フェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり、または
R4およびR5は一緒になって、3〜6員飽和複素環を形成し、前記複素環は環原子として1または2個の酸素原子を有し、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、ハロ-C1〜C4-アルコキシおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される基を有してもよく;
R4aは、C1〜C4-アルキルまたはC1〜C4-アルコキシであり;
R5aは、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシまたはフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり;
R6は、OHおよびC1〜C4-アルキルより独立して選択され;
R6aは、水素およびC1〜C4-アルキルより選択され、かつ
Qは、(CH2)pまたは(CH2)qOであり、ここで、pは、1、2、3または4であり、qは、1、2または3である]
の化合物である、請求項8に記載の結晶複合体。
【請求項10】
活性化合物Aがピラクロストロビンである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項11】
25℃でのCu-Kα線によるX線粉末回折において、2θ値で表して、下記の反射:4.9±0.2°、6.8±0.2°、8.5±0.2°、12.0±0.2°、14.5±0.2°、16.9±0.2°、20.4±0.2°、22.9±0.2°、25.5±0.2°、29.3±0.2°のうちの少なくとも4を示す、請求項10に記載の結晶複合体。
【請求項12】
活性化合物Aがエポキシコナゾールである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項13】
25℃でのCu-Kα線によるX線粉末回折において、2θ値で表して、下記の反射:6.2±0.2°、9.0±0.2°、9.8±0.2°、12.4±0.2°、15.1±0.2°、18.0±0.2°、21.9±0.2°、23.5±0.2°、24.7±0.2°、30.9±0.2°のうちの少なくとも4を示す、請求項12に記載の結晶複合体。
【請求項14】
活性化合物Aがメトコナゾールである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項15】
25℃でのCu-Kα線によるX線粉末回折において、2θ値で表して、下記の反射:5.0±0.2°、9.9±0.2°、11.3±0.2°、12.0±0.2°、15.0±0.2°、16.7±0.2°、18.1±0.2°、21.6±0.2°、27.8±0.2°のうちの少なくとも4を示す、請求項14に記載の結晶複合体。
【請求項16】
活性化合物Aがトリチコナゾールである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項17】
前記の請求項のいずれか1項に定義される通りの結晶複合体を調製する方法であって、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを有機溶媒中または水と有機溶媒の混合物中に懸濁することを含む、前記方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に定義される通りの結晶複合体を調製する方法であって、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを液体に懸濁した粒子の形で含む液体に、30℃よりも高い温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることを含む、前記方法。
【請求項19】
せん断力を、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを水性の液体に懸濁した粒子の形で含む水性懸濁液に加える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか1項に定義した通りのチオファネートメチルと少なくとも1種の農業上活性な化合物Aの結晶複合体を含む、農業用組成物。
【請求項21】
過剰なチオファネートメチルを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
チオファネートメチルと少なくとも1種の活性化合物Aの結晶複合体を水性懸濁液の形で含む、請求項20または21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
チオファネートメチルおよび活性化合物Aを懸濁した粒子の形で含む水性懸濁液に、30℃よりも高い温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることにより得ることができる、請求項22に記載の組成物。
【請求項1】
水素結合において水素受容体となることが可能な少なくとも1個の官能基を有する少なくとも1種の農業上活性な有機化合物Aおよびチオファネートメチルを含む結晶複合体。
【請求項2】
チオファネートメチルと活性化合物Aのモル比が少なくとも0.5:1、特に0.9:1〜2.1:1である、請求項1に記載の結晶複合体。
【請求項3】
化合物Aの官能基が少なくとも1個のイミノ窒素原子を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の結晶複合体。
【請求項4】
化合物Aの少なくとも1個の官能基が、置換されたまたは無置換の、ピリジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、ピラゾリルおよびトリアゾリル基より選択される5または6員ヘテロ芳香族基である、請求項3に記載の結晶複合体。
【請求項5】
化合物Aの少なくとも1個の官能基が、置換されたまたは無置換のピラゾリルまたはトリアゾリル基である、請求項4に記載の結晶複合体。
【請求項6】
化合物Aの少なくとも1個の官能基が、オキシイミノ基またはアミジノ基である、請求項3に記載の結晶複合体。
【請求項7】
化合物Aが、さらに場合により置換されたフェニル環を有する、前記の請求項のいずれか1項に記載の結晶複合体。
【請求項8】
場合により置換されたフェニル環が、環原子として少なくとも1個のイミノ窒素原子を有する無置換のまたは置換された芳香族含窒素複素環に、化学結合または1〜5個の原子を有する鎖を介して結合している、請求項7に記載の結晶複合体。
【請求項9】
化合物Aが 式
【化1】
[式中、
Hetは、イミダゾール-2-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イルまたは1,2,4-トリアゾール-1-イルであり、ここで、Hetは、無置換であるか、ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1または2個の基および/または1個のフェニル基(1、2または3個のハロゲン原子を有してもよい)を有してよく;
Xは、Oまたは基CHR3であり;
Yは、CR4R5またはSiR4aR5aであり、Xが基CHR3である場合には、YはOであってもよく;または
XおよびYは一緒になって、化学結合または式
【化2】
の二価の基であり;
kは、0、1または2であり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2または3であり;
R1は、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、メトキシ、またはフェニルであり;
R2は、N(OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)OCH3)、C(=CH-OCH3)(C(O)NHCH3)、C(=N-OCH3)(C(O)OCH3)およびC(=N-OCH3)(C(O)OCH3)より選択され;
R3は、水素またはC1〜C6-アルキル(1、2、3、4または5個のハロゲン原子および/またはOHおよびカルボニル基より選択される1個の官能基を有してもよい)であり;
R4は、水素、CN、OHまたはC1〜C4-アルキルであり、またはR3と一緒になって結合を形成し;
R5は、C1〜C4-アルキル(OH、C1〜C2-アルコキシ、C1〜C2-ハロアルコキシ、C1〜C2-ハロアルキル、トリメチルシリル、C3〜C6-シクロアルキルおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される1または2個の基を有してもよい)、または
フェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり、または
R4およびR5は一緒になって、3〜6員飽和複素環を形成し、前記複素環は環原子として1または2個の酸素原子を有し、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、ハロ-C1〜C4-アルコキシおよびフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)より選択される基を有してもよく;
R4aは、C1〜C4-アルキルまたはC1〜C4-アルコキシであり;
R5aは、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシまたはフェニル(ハロゲン原子およびC1〜C4-アルキルより選択される1、2または3個の基を有してもよい)であり;
R6は、OHおよびC1〜C4-アルキルより独立して選択され;
R6aは、水素およびC1〜C4-アルキルより選択され、かつ
Qは、(CH2)pまたは(CH2)qOであり、ここで、pは、1、2、3または4であり、qは、1、2または3である]
の化合物である、請求項8に記載の結晶複合体。
【請求項10】
活性化合物Aがピラクロストロビンである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項11】
25℃でのCu-Kα線によるX線粉末回折において、2θ値で表して、下記の反射:4.9±0.2°、6.8±0.2°、8.5±0.2°、12.0±0.2°、14.5±0.2°、16.9±0.2°、20.4±0.2°、22.9±0.2°、25.5±0.2°、29.3±0.2°のうちの少なくとも4を示す、請求項10に記載の結晶複合体。
【請求項12】
活性化合物Aがエポキシコナゾールである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項13】
25℃でのCu-Kα線によるX線粉末回折において、2θ値で表して、下記の反射:6.2±0.2°、9.0±0.2°、9.8±0.2°、12.4±0.2°、15.1±0.2°、18.0±0.2°、21.9±0.2°、23.5±0.2°、24.7±0.2°、30.9±0.2°のうちの少なくとも4を示す、請求項12に記載の結晶複合体。
【請求項14】
活性化合物Aがメトコナゾールである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項15】
25℃でのCu-Kα線によるX線粉末回折において、2θ値で表して、下記の反射:5.0±0.2°、9.9±0.2°、11.3±0.2°、12.0±0.2°、15.0±0.2°、16.7±0.2°、18.1±0.2°、21.6±0.2°、27.8±0.2°のうちの少なくとも4を示す、請求項14に記載の結晶複合体。
【請求項16】
活性化合物Aがトリチコナゾールである、請求項9に記載の結晶複合体。
【請求項17】
前記の請求項のいずれか1項に定義される通りの結晶複合体を調製する方法であって、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを有機溶媒中または水と有機溶媒の混合物中に懸濁することを含む、前記方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に定義される通りの結晶複合体を調製する方法であって、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを液体に懸濁した粒子の形で含む液体に、30℃よりも高い温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることを含む、前記方法。
【請求項19】
せん断力を、チオファネートメチルおよび活性化合物Aを水性の液体に懸濁した粒子の形で含む水性懸濁液に加える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか1項に定義した通りのチオファネートメチルと少なくとも1種の農業上活性な化合物Aの結晶複合体を含む、農業用組成物。
【請求項21】
過剰なチオファネートメチルを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
チオファネートメチルと少なくとも1種の活性化合物Aの結晶複合体を水性懸濁液の形で含む、請求項20または21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
チオファネートメチルおよび活性化合物Aを懸濁した粒子の形で含む水性懸濁液に、30℃よりも高い温度で、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることにより得ることができる、請求項22に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−518050(P2010−518050A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548695(P2009−548695)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051562
【国際公開番号】WO2008/096005
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051562
【国際公開番号】WO2008/096005
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
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