説明

農業用ハウスの暖房方法

【課題】ハウスみかん生産等に採用される大型の二層型農業用ハウスを簡便に提供することができ、冬季・寒期における暖房コストを大幅に低減できる農業用ハウスの暖房方法を提供すること。
【解決手段】天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスにおいて、側面をさらに透光性シート又は透光性フィルムで内張りすると共に、天井面の近傍に透光性エアマット14を配置し、夜間は、ハウス内に設置する暖房装置17を稼動し、暖房装置17で発生する暖気をダクト18で導いてハウス内に分散して吹き出させると共に、暖房装置17で発生する一部暖気を透光性エアマット14に送り込み膨らませ、透光性エアマット14から流出する暖気をハウス内に吹き出させ、昼間は、暖房装置17の稼動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスに好適な農業用ハウスの暖房方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスは、ハウスの骨格を形成するフレームと、該フレームに展着する採光性を有する一層の採光性を有する面構成部材(シート、ガラス、又はプラスチック)とから構成した一層型農業用ハウスが広く使用されている。
【0003】
しかし、一層の面構成部材で周囲を覆う従来の一層型農業用ハウスは断熱性が十分でないので、次のような欠点がある。(1)夏季にはハウス内の温度が高くなり過ぎる。このため、被覆シートの外側を更に断熱シートで覆う、或は被覆シートの裾を捲り上げて内外の通気を調整する等の対策が必要とされている。(2)冬季には放熱し易いためにハウス内の温度が下り過ぎることから温水ボイラ等の暖房装置が必要である。そして、温度管理が極めて面倒である。
【0004】
また従来において、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスではないが、断熱性が十分でないことに起因する一層型農業用ハウスの欠点を補うことはできる二層型農業用ハウスが、例えば、特許文献1に提案されている。この二層型農業用ハウスは、フレームが、外側シート部で被覆された外側枠体と、内側シート部で被覆された内側枠体とで二重に構成され、外側シート部と内側シート部との端が閉じていて密閉空間になっており、内側シート部の下側がハウス室になっていて、さらに、ハウス室内には冷暖房装置から冷・熱媒が循環供給される透明中空筒体からなる冷・熱媒循環体(透光性エアマット)を内側シート部の内側に沿って配設した構成であり、密閉空間内の空気層によりハウス室内を外気温から完全に遮断し、また密閉空間には地中から蒸発する水分が浸入しない構成として、空気の対流もない断熱層として機能させて、ハウス室内の急激な温度変化を防止している。
【0005】
【特許文献1】特開平11−75573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の一層型農業用ハウスでは、被暖房容積が非常に大きく、天井面及び側面の全てで外気と熱交換するので、暖房装置の暖房のみに頼ると生産コストが高くなりすぎて採算性が著しく悪くなる、という問題がある。
【0007】
また、特許文献1のような二層型農業用ハウスは、設備コストがきわめて高くなり、ハウスみかん生産等に採用される全面採光性を有する大型の農業用ハウスには採用できない。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑み案出したもので、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の二層型農業用ハウスを簡便に提供することができ、冬季・寒期における暖房コストを大幅に低減できる農業用ハウスの暖房方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスにおいて、前記側面をさらに透光性シート又は透光性フィルムで内張りすると共に、前記天井面の近傍に該天井部の略全面を覆って透光性エアマットを配置し、夜間は、ハウス内に設置する暖房装置を稼動し、該暖房装置で発生する暖気をダクトで導いてハウス内に分散して吹き出させると共に、前記暖房装置で発生する一部暖気を前記透光性エアマットに送り込んで膨らませ、該透光性エアマットから流出する暖気をハウス内に吹き出させ、昼間は、前記暖房装置の稼動を停止する、農業用ハウスの暖房方法としたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、ハウス全内面を簡易な構造・低コスト・採光可能・断熱可能な二重壁面を簡便に設備することができ、夜間と昼間とで二重断熱と採光と暖房を異なった組み合わせを利用して効果的な暖房を行うことで、冬季・寒期における暖房コストを大幅に低減できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記天井面の傾斜方向の上端下側近傍と下端下側近傍に水平棹を架設し、これら水平棹にワイヤーを掛けて天井部の略全面に張り巡らし、該ワイヤーの上に前記透光性エアマットを備え、かつ該透光性エアマットの暖気取り入れ口と暖気放出口とをハウスの長手方向両側に離間した配置とした、ことを特徴とする。
【0012】
この構成により、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスにおいて、天井面の下側近傍に該天井部の略全面に渡りワイヤーの張り巡らしが簡易に行えて、該ワイヤーの上に透光性エアマットを載置すれば足りる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の二層型農業用ハウスを簡便に提供することができ、冬季・寒期における暖房コストを大幅に低減できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、透光性エアマットを簡易に取り付けることができ、透光性エアマットの取り付けコストを極めて低く抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0016】
〔実施の形態1〕
まず、この実施の形態の農業用ハウスの構成について説明する。
図1に示すように、この農業用ハウス10は、アルミニウム押出型材で形成されたハウスフレーム11と、二連の寄棟形の屋根型天井面12を有し該天井面12及び側面13が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスである。
【0017】
この農業用ハウス10は、屋根型天井面12の下側に該屋根面に沿って透光性エアマット14を備えている。この透光性エアマット14は、根型天井面12の略全面に対応する面積を有して備えられる。
【0018】
この透光性エアマット14は、例えば、ポリエチレン/エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂/ポリエチレン(PE/EVA/PE)の三層押し出しフィルムを二枚重ねして、ハウス長手方向に沿う縦ヒートシールを両端及び中程に施されていると共に、ハウス幅方向の両端に横ヒートシールを両端に施され、かつ、ハウスの長手方向両側に離間した配置に暖気取り入れ口14aと暖気放出口14bとを備えている構成である。
【0019】
この透光性エアマット14は、屋根型天井面12の下側に該屋根面に沿って略全面に渡り張り巡らしたワイヤー15により支持されている。より具体的には、屋根型天井面12の傾斜方向の上端下側近傍と下端下側近傍に水平棹16、16、…をワイヤー吊りする及び/又は柱で支持するなどにより架設し、これら水平棹16、16、…にワイヤー15を掛けて屋根型天井面12の下側に該屋根面に沿って略全面に張り巡らし、該ワイヤー15の上に透光性エアマット14を備えている。
【0020】
この透光性エアマット14を屋根型天井面12の下側に該屋根面に沿ってそなえるために、必要に応じて、二枚重ねの透光性エアマット14に対して鋏等で適宜の大きさの開口を切り開き、かつ、開口縁を合掌状にヒートシールを施し、この開口を通して水平棹16、16、…を天井吊りするためのワイヤー等を屋根型天井面12のハウスフレーム11に掛けることができる。
好ましくは、C形の大きな切り込みを設け、該C形の大きな切り込みの縁をヒートシールすることにより、必要な時にC形の蓋片を開き、通常は、開口を閉じて断熱が確保できる構成とするのが好ましい。
【0021】
そして、ハウス内の長手方向の一側にかつハウス幅方向の略中央に、暖房装置(例えば温風ボイラ)17が設置され、該暖房装置17に接続されたダクト18がハウス幅方向伸びている。ダクト18は、両端が開口していると共に、ダクト18の上面の適宜ピッチの位置に複数の温風吹出口18aを備えている。従って、暖房装置17で発生する暖気をダクト18の両端及び各温風吹出口18aから吹き出してハウス内を暖房できるようになっている。
【0022】
さらに、ダクト18の上面から上方へ延びる縦方向通気ダクト19、該縦方向通気ダクト19に連通する横方向通気ダクト20と、該横方向通気ダクト20からさらに縦方向に延びる複数の分岐ダクト21、21、…が備えられ、分岐ダクト21、21、…の上端が透光性エアマット14の暖気取り入れ口14aに接続されている。従って、暖房装置17で発生する暖気の一部を透光性エアマット14内に供給するようになっている。
【0023】
透光性エアマット14は、暖気を供給されると、ワイヤー15の上で膨らんで、屋根型天井面12の外側の外気とハウス内上部の空気を大きく隔離するようになっている。透光性エアマット14は、暖気取り入れ口14aから導入した暖気を反対側の暖気放出口14bからハウス内へ放出するようになっている。これにより、透光性エアマット14の内部を暖気がハウスの長尺方向に通流し、透光性エアマット14に触れるハウス内上部の空気を暖めるようになっている。
【0024】
透光性エアマット14は、暖房装置17の稼働を停止し暖気の供給を停止されると、内部を通流する暖気が暖気放出口14bから抜けてワイヤー15の上扁平になり、この場合も、屋根型天井面12の外側の外気とハウス内上部の空気を大きく隔離するようになっている。
【0025】
続いて、上記構成の農業用ハウスの暖房方法について説明する。
〔夜間の暖房方法〕
冬季(寒期)において、夜間は、ハウス内に設置する暖房装置17を稼動し、該暖房装置17で発生する暖気をダクト18で導いて温風吹出口18aよりハウス内に分散して吹き出させると共に、暖房装置17で発生する一部暖気をハウス内の天井部近くに該天井部の略全面に渡り配設した透光性エアマット14に対して縦方向通気ダクト19、横方向通気ダクト20、分岐ダクト21に通流させて送り込んで膨らませ、該透光性エアマット14の暖気放出口14bから流出する暖気をハウス内に吹き出させる。
これにより、夜間は、暖房装置17で発生する暖気によってハウス内空気が暖まり、該暖まった空気が上昇して透光性エアマット14に触れるが、透光性エアマット14内を通流する暖気との間で熱交換が行われる。こうして、ハウス内の上部空気は屋根外方の外気(寒気)との熱交換を回避される。屋根外方の外気(寒気)に対する断熱が確保され、側面も内張りをして外気に対して二層に隔離しているので断熱が効果的に確保され、暖房装置17で発生する暖気によってハウス内空気が効果的に暖められる。
〔昼間の暖房方法〕
昼間は、暖房装置17の稼動を停止する。ハウス内空気は、ハウス天井部及び透光性エアマット14を透過する太陽光により昇温される。さらに、ハウス内上部の空気は、透光性エアマット14により屋根外方の外気(寒気)との熱交換を回避され断熱される。側面も内張りをして外気に対して二層に隔離しているので断熱が効果的に確保される。
【0026】
上述した実施の形態によれば、屋根型天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の二層型農業用ハウスを簡便に提供することができ、冬季・寒期における暖房コストを大幅に低減できる。
【0027】
〔その他の実施の形態〕
本発明は上記実施の形態にこれに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。天井面は、山形ではなく、平屋根も含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1に係る農業用ハウスの暖房方法を実施できる農業用ハウスの概略の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 農業用ハウス
11 ハウスフレーム
12 天井面
13 側面
14 透光性エアマット
14a 暖気取り入れ口
14b 暖気放出口
15 ワイヤー
16 水平棹
17 暖房装置
18 ダクト
18a 温風吹出口
19 縦方向通気ダクト
20 横方向通気ダクト
21 分岐ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面を有し該天井面及び側面が採光性を有する面構成部材で構成されたハウスみかん生産等に採用される大型の農業用ハウスにおいて、
前記側面をさらに透光性シート又は透光性フィルムで内張りすると共に、前記天井面の近傍に該天井部の略全面を覆って透光性エアマットを配置し、
夜間は、ハウス内に設置する暖房装置を稼動し、該暖房装置で発生する暖気をダクトで導いてハウス内に分散して吹き出させると共に、前記暖房装置で発生する一部暖気を前記透光性エアマットに送り込んで膨らませ、該透光性エアマットから流出する暖気をハウス内に吹き出させ、
昼間は、前記暖房装置の稼動を停止する、
ことを特徴とする農業用ハウスの暖房方法。
【請求項2】
前記天井面の傾斜方向の上端下側近傍と下端下側近傍に水平棹を架設し、これら水平棹にワイヤーを掛けて天井部の略全面に張り巡らし、該ワイヤーの上に前記透光性エアマットを備え、かつ該透光性エアマットの暖気取り入れ口と暖気放出口とをハウスの長手方向両側に離間した配置とした、
ことを特徴とする農業用ハウスの暖房方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−65890(P2009−65890A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236855(P2007−236855)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】