農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法
【課題】農業用ハウス室内の温度を随時予測しながら開閉装置を開閉制御して、高度な温度制御性を実現する農業用ハウスの開閉装置用制御システムを提供する。
【解決手段】
農業用ハウス100の屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置104を自動制御する制御システムであり、ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサ12と、タイマ部14と、タイマ部14が計時する所定時間間隔ごとに温度センサ12で測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度Hを設定する予測温度設定部16と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部16で設定した予測温度Hと予め設定した目標温度Tとを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部26(18)と、を備えたことを特徴とする農業用ハウスの開閉装置用制御システム10から構成される。
【解決手段】
農業用ハウス100の屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置104を自動制御する制御システムであり、ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサ12と、タイマ部14と、タイマ部14が計時する所定時間間隔ごとに温度センサ12で測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度Hを設定する予測温度設定部16と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部16で設定した予測温度Hと予め設定した目標温度Tとを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部26(18)と、を備えたことを特徴とする農業用ハウスの開閉装置用制御システム10から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果実、花卉等の農作物を促成栽培する際には、屋根や側壁をポリ塩化ビニル等の透光性フィルムで被覆した農業用ビニルハウスが利用される。ビニルハウスでは、例えば太陽の日差しが強い日中にはハウス室内の温度が高温となり栽培している農作物に高温障害が発生するおそれがあり、栽培温度の管理が重要である。高温障害を防止するために、ビニルハウスの屋根の一部分を開閉させる開閉装置が設けられる場合がある。ビニルハウスの開閉装置は、例えば、屋根を覆うフィルムの一部分を巻取り又は巻戻し動作して、開口部を開閉するように設けられている。そして、ハウス室内温度が高くなる日中には該ハウスの屋根のフィルムの一部を巻取って開口を開けて外気を取り入れ、温度が低くなる夕方にはフィルムの一部を巻戻して開口を閉じ、これらの開閉操作を繰返しながらハウス室内の温度を管理しようとするものであった。開閉装置は、ハウス室内の温度の変化に対応して開閉する必要があるが、人力で開閉するには煩雑で労力がかかる問題があった。そこで、開閉装置の開閉操作を自動で制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、温度センサによる感知温度と制御盤に設定された設定温度との偏差値により開閉制御させるビニルハウス自動開閉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−23666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自動開閉装置のように従来の開閉制御では、温度センサで測定したハウス室内温度と設定値との高低比較により、開口部分を全開又は閉鎖させるように開閉制御するものであった。しかしながら、このような従来の開閉装置の開閉制御では、ハウス室内温度が設定値を超えてから開動作し、ハウス室内温度が設定値より下がって閉動作するので、開閉装置の開閉動作が遅れ、栽培している農作物の温度管理に適した開閉タイミングでの制御が困難であり、農作物に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、従来の開閉制御では、午前中に太陽光でハウス室内の温度センサ付近が温められて設定値より上がって開閉装置を開いた後、冷たい外気を取り入れたことにより急激にハウス内温度が設定値より下がって開閉装置を閉じ、さらに開閉装置を閉じたことにより再びハウス内温度が設置値より高くなって開閉装置を開く、といった開閉制御を短時間で頻繁に繰返してしまう場合があり、栽培農作物に悪影響を及ぼしたり、開閉装置の部材が早期に消耗したり、電力を多量に消費してしまう問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、農業用ハウス室内の温度を随時予測しながら開閉装置を開閉制御して、高精度な温度制御を実現する農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、農業用ハウス100の屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置104を自動制御する制御システムであり、ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサ12と、タイマ部14と、タイマ部14が計時する所定時間間隔ごとに温度センサ12で測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度Hを設定する予測温度設定部16と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部16で設定した予測温度Hと予め設定した目標温度Tとを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部26(18)と、を備えたことを特徴とする農業用ハウスの開閉装置用制御システム10から構成される。基本的には、予測温度Hと目標温度Tとを比較して開閉装置の開閉制御を行うこととしてもよいが、後述のように、目標温度Tを時間帯や温度変化に応じて補正した制御用温度Kを設定し、この制御用温度Kと予測温度Hとの比較により開閉制御すると、ハウス環境に対応した、より高精度な制御を実現できる。タイマ部14、予測温度設定部16、予測開閉制御部26は、例えば、リレーや種々の電子回路、プログラマブル回路、電子機材等によりハードウェア的に構成してもよいし、汎用コンピュータ又は専用コンピュータに組み込むプログラムによりソフトウェア的に構成してもよい。農業用ハウス100は、例えば、ビニルハウスや透明ガラス製の温室等でもよい。開閉装置は、例えば、外面を被覆しているビニルフィルムの一部を巻取り、巻き戻して開閉を行う構成や、一部の開閉扉や開閉窓等を設けて開閉する構成等、その他任意の構成でもよい。
【0007】
また、タイマ部14は、時刻を計る時計機能を有し、予測温度設定部16は、制御を行う時間帯に対応して予め定められた予測温度演算ルールが設定されており、制御時の時刻が属する時間帯に対応して予測温度演算ルールに従って現在及び過去温度T、Sから予測温度Hを算出することとしてもよい。
【0008】
また、予測温度演算ルールは、現在及び過去温度から算出される時間当たりの温度傾斜に掛け算させる増幅用パラメータEを含み、増幅用パラメータEは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、大きな数値で設定され、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、大きな数値で設定されることとしてもよい。
【0009】
また、予測開閉制御部26は、予測温度Hと、時間帯に対応して目標温度Fを補正した制御用温度Kと、を比較して、開閉装置を所定幅だけ開閉制御させるようになっており、制御用温度Kは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定されたされたこととしてもよい。
【0010】
また、予測開閉制御部26では目標温度に応じて制御を行なわせる温度域Jが予め設定され、予測開閉制御部26による制御に先立って現在温度Tと該温度域Jとを比較判定し、現在温度Tが該温度域Jの上限値Jaよりも高い場合には開閉装置104を全開させるように制御し、現在温度Tが該温度域Jの下限値Jbよりも低い場合には開閉装置104を完全閉鎖させるように制御する現在温度開閉制御部24を含むこととしてもよい。
【0011】
さらに、本発明は、農業用ハウスにおいて屋根の一部を開閉する開閉装置を制御システムにより自動開閉制御してハウス室内の温度調整を行う温度制御方法であり、ハウス室内に配置した温度センサにより温度を測定する温度測定ステップ(S10)と、温度測定ステップにて温度センサで測定した現在の温度Tと一定時間過去の温度Sを記憶する温度記憶ステップ(S12)と、温度記憶ステップで記憶した現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度Hを設定する予測温度設定ステップ(S14)と、予測温度設定ステップで設定した予測温度Hと予め設定された目標温度Fとを判定要素としてハウスの開閉装置の開閉制御を行う予測開閉制御ステップ(S18)と、を含む制御を所定時間間隔ごとに繰返すことを特徴とする開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法から構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システムによれば、農業用ハウスの屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置を自動制御する制御システムであり、ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサと、タイマ部と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに温度センサで測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度を設定する予測温度設定部と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部で設定した予測温度と予め設定した目標温度とを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部と、を備えたことから、随時ハウス室内の温度を予測して、開閉装置の開閉タイミングを遅らせることなく適時的に開閉制御することができる。同時に、開閉装置の無駄な開閉制御を低減でき、開閉制御によるハウス室内の短時間での頻繁な上下変動を防止できる。その結果、ハウス室内の温度を高精度に制御することができ、実用性が高く、高温障害や低温障害等を防止しながら農作物を適切に栽培することができる。また、開閉装置の部材の早期消耗を防止できるとともに、無駄な電気の使用を減らすことができる。
【0013】
また、タイマ部は、時刻を計る時計機能を有し、予測温度設定部は、制御を行う時間帯に対応して予め定められた予測温度演算ルールが設定されており、制御時の時刻が属する時間帯に対応して予測温度演算ルールに従って現在及び過去温度から予測温度を算出する構成とすることにより、時間帯で変わる太陽光の影響を考慮して農業用ハウス室内の環境に適した予測温度を設定することができ、開閉装置によるハウス室内の温度制御を高精度に実現できる。
【0014】
また、予測温度演算ルールは、現在及び過去温度から算出される時間当たりの温度傾斜に掛け算させる増幅用パラメータを含み、増幅用パラメータは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、大きな数値で設定され、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、大きな数値で設定される構成とすることにより、例えば、午前のように太陽光の影響を受けてハウス室内温度が上昇されやすい時間帯には、開閉装置を開けやすくかつ閉めにくい制御とし、例えば、午後のように太陽が沈んでハウス室内温度が下降されやすい時間帯には、開閉装置を開けにくくかつ閉めやすい制御として、時間帯によるハウス室内の温度変化に適応した予測温度を設定でき、高精度な温度制御を実現できる。
【0015】
また、予測開閉制御部は、予測温度と、時間帯に対応して目標温度を補正した制御用温度と、を比較して、開閉装置を所定幅だけ開閉制御させるようになっており、制御用温度は、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定された構成とすることにより、予測温度を利用して開閉制御する際に、例えば、午前のように太陽光の影響を受けてハウス室内温度が上昇されやすい時間帯には、開閉装置を開けやすくかつ閉めにくい制御とし、例えば、午後のように太陽が沈んでハウス室内温度が下降されやすい時間帯には、開閉装置を開けにくくかつ閉めやすい制御として、時間帯に対応した高精度な温度制御を実現できる。
【0016】
また、予測開閉制御部では目標温度に応じて制御を行なわせる温度域が予め設定され、予測開閉制御部による制御に先立って現在温度と該温度域とを比較判定し、現在温度が該温度域の上限値よりも高い場合には開閉装置を全開させるように制御し、現在温度が該温度域の下限値よりも低い場合には開閉装置を完全閉鎖させるように制御する現在温度開閉制御部を含むことから、現在温度と予測温度との2つの要素を利用して開閉制御を行って、ハウス室内の温度をより高精度に制御することができる。
【0017】
さらに、本発明の開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法によれば、農業用ハウスにおいて屋根の一部を開閉する開閉装置を制御システムにより自動開閉制御してハウス室内の温度調整を行う温度制御方法であり、ハウス室内に配置した温度センサにより温度を測定する温度測定ステップと、温度測定ステップにて温度センサで測定した現在の温度と一定時間過去の温度を記憶する温度記憶ステップと、温度記憶ステップで記憶した現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度を設定する予測温度設定ステップと、予測温度設定ステップで設定した予測温度と予め設定された目標温度とを判定要素としてハウスの開閉装置の開閉制御を行う予測開閉制御ステップと、を含む制御を所定時間間隔ごとに繰返すことから、随時ハウス室内の温度を予測して、開閉装置の開閉タイミングを遅らせることなく適時的に開閉制御することができる。同時に、開閉装置の無駄な開閉制御を低減でき、開閉制御によるハウス室内の短時間での頻繁な上下変動を防止できる。その結果、ハウス室内の温度を高精度に制御することができ、高温障害や低温障害等を防止しながら農作物を適切に栽培することができる。また、開閉装置の部材の早期消耗を防止できるとともに、無駄な電気の使用を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る農業用ハウスの開閉装置用制御システムの概略ブロック図である。
【図2】図1の農業用ハウスの開閉装置用制御システムの開閉制御及び実施形態に係る農業用ハウスの温度制御方法の概略フロー図である。
【図3】農業用ハウスの開閉装置及び図1の制御システムの概略説明図である。
【図4】図1の農業用ハウスの開閉装置用制御システムの一部詳細に示したブロック図である。
【図5】予測温度設定部による予測温度を設定するフローの説明図である。
【図6】現在温度開閉制御部による開閉制御のフローの説明図である。
【図7】予測開閉制御部による開閉制御のフローの説明図である。
【図8】増幅用パラメータの一例を示す表である。
【図9】予測温度制御部による制御を行なう温度域の時間帯に対応した上限値、下限値の一例である。
【図10】予測温度と比較する制御用温度の一例である。
【図11】実施例で開閉制御を行ったグラフである。
【図12】比較例で開閉制御を行ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照しつつ本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法の実施形態について説明する。本発明に係る農業用ハウスの開閉装置用制御システムは、農業用ハウスの屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気を行い、外気を取り入れて温度調整を行わせる開閉装置を自動制御する制御システムであり、所定時間間隔で随時ハウス室内の温度を予測しながら開閉制御することにより、農作物の栽培に適して高精度に温度制御を行うものである。
【0020】
図1ないし図7は、本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システムの一実施形態を示している。本実施形態では、図3に示すように、農業用ハウス(以下、単に「ハウス」ともいう)100は、例えば、金属パイプで骨組みを立設し、その屋根と側壁部分に透明ビニル製の農業用フィルム102を被覆して構築されている。なお、図3では、複数棟のハウスを連続して設けた連棟タイプのビニルハウスの例を示している。開閉装置104は、例えば、ハウスの屋根の端部側又は谷部側のフィルム102の一部を巻取り、巻戻し自在に巻取る金属パイプ等からなる巻取り軸106と、巻取り軸106の長手方向一端部側に連結され該巻取り軸106を正逆回転駆動させるモータを内蔵した駆動装置108と、を含む。駆動装置108で巻取り軸106を回転させてフィルム102の一部を巻き取ると所定幅で開口を開ける(図3上、二点鎖線参照)とともに、巻取り軸106を逆に回転させて巻き取っているフィルム102の一部を巻き戻すと開口を所定幅閉じる。開閉装置104の全開位置、全閉鎖位置には、リミットスイッチが設けられていてもよい。開閉装置104は、支持用の柱又はハウスの骨組等に支持されて高位置に配置されている。本実施形態では、制御システム10が駆動装置108と電気的に接続され、制御システム10によって駆動装置108のモータの正逆回転制御を行って開閉装置104の開閉制御を行う。
【0021】
図1に示すように、本実施形態において、農業用ハウスの開閉装置用制御システム(以下、単に「制御システム」ともいう)10は、温度センサ12と、タイマ部14と、予測温度設定部16と、開閉制御部18と、を備えている。
【0022】
温度センサ12は、ハウス100の室内に配置され、ハウス室内の温度を随時測定する温度測定手段である。本実施形態では、タイマ部14、予測温度設定部16、開閉制御部18は、例えば、制御盤20に一体的に組み付けて設けられている。制御盤20は、温度センサ12と開閉装置104との間に電気的に接続され、温度センサ12からの測定温度のデータに基づいて開閉装置104に開閉制御信号を送る制御手段を構成する。制御盤20は、例えば、ビニルハウスの外側又は内側の任意の場所に設置される。
【0023】
タイマ部14は、時間を計る計時手段であり、制御周期となる所定時間間隔の計時を行う。本実施形態では、例えば、タイマ部14は、温度センサ12による測定や、予測温度設定部16による予測温度の設定、開閉制御部18による開閉装置の開閉判定又は開閉制御を繰返す所定時間間隔(例えば、10秒間隔)を計時する。さらに、タイマ部14は、後述のように開閉制御部18が動作又は停止制御を行った後に、設定される制御停止インターバルの時間(例えば、1分間)を計時する。すなわち、タイマ部14は、各制御周期用の所定時間間隔(例えば、10秒)カウントタイマと、制御停止インターバル用(例えば、1分間)のカウントタイマを含む。さらに、本実施形態では、タイマ部14は、現在の時刻を計る時計機能を有している。タイマ部14は、制御を行っている現在の時刻のデータを予測温度設定部16や開閉制御部18に送る。タイマ部14は、例えば、機械的に計時するタイマ部材で実現しても良いし、コンピュータ上でソフトウェア的に計時するタイマ手段でもよい。
【0024】
予測温度設定部16は、タイマ部14で計時された所定時間間隔ごとに、将来的に予測される予測温度を設定する予測温度設定手段である。本実施形態では、予測温度設定部16は、所定時間間隔(例えば10秒間隔)ごとに温度センサ12で測定された現在温度Tと、一定時間遡った過去温度Sと、に基づいて、演算ルールに従って予測温度Hを設定する。本実施形態では、予測温度設定部16は、例えば、現在温度Tデータと、10秒間隔ごとに測定された過去5分間分について30点の過去温度Sデータと、を記憶しておく。予測温度Hを演算するための演算ルールは、例えば、ある時間での予測のベース温度となる基準温度(C)+時間当たりの温度傾斜(D)×増幅用パラメータ(E)の計算式からなる。なお、予測温度の演算は、例えば、最小二乗法等、その他近似直線を求める計算式を利用してもよい。
【0025】
本実施形態では、基準温度Cは、例えば、5分前から現在までの5分間の平均温度が利用される。なお、基準温度Cは、現在温度Tでも良いし、例えば、1分前から現在までの1分間の平均温度A等でもよい。温度傾斜Dは、予測に用いる温度変化率であり、例えば、記憶されている現在温度及び過去5分間の過去温度を利用して、10秒当たりの温度傾斜が算出される。本実施形態では、温度傾斜Dは、例えば、1分前から現在までの1分間の1分前平均温度Aと、5分前から4分前までの1分間の5分前平均温度Bと、を算出し、それを時間で割り算して求められる。すなわち、10秒当たりの温度傾斜D=(B−A)/30の計算式で算出される。なお、温度傾斜Dは、1秒当たりの温度傾斜でもよい。また、温度傾斜の計算方法は上記に限らず周知の近似直線等の求め方による任意の計算方法でもよい。増幅用パラメータEは、予め設定されており、予測する所定時間後の未来まで一定の割合で温度が変化すると仮定して温度傾斜Dに掛け算する時間成分を考慮したパラメータである。
【0026】
図7に示すように、増幅用パラメータEは、制御する時間帯によって異なる値で設定される。さらに、増幅用パラメータEは、それぞれの時間帯において、実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かによっても異なる値で設定している。具体的には、増幅用パラメータEは、太陽光の影響を受けてハウス室内の温度が上昇傾向に予想される午前の時間帯では、実際のハウス室内の温度が上昇する場合には、温度傾斜Dを大きく増幅するように比較的大きな値M(例えば、90)で設定される。よって、予測温度Hも高い温度値で算出される。一方、増幅用パラメータEは、午前の時間帯で、予想に反して実際のハウス室内の温度が下降する場合には、温度傾斜Dを増幅しない、すなわち0(例えば、0×M=0としてもよい)の値で設定される。よって、予測温度Hは、過去5分間の平均温度Cの値がそのまま設定される。さらに、増幅用パラメータEは、外気の影響を受けてハウス室内の温度が下降傾向に予想される午後の時間帯では、実際のハウス室内の温度が下降する場合には、温度傾斜Dを大きく増幅するように比較的大きな値M(例えば、90)で設定される。よって、予測温度Hは低い温度値で算出される。一方、増幅用パラメータEは、午後の時間帯で、予想に反して実際のハウス室内の温度が上昇する場合には、温度傾斜Dを増幅しない、すなわち0(例えば、0×M=0としてもよい)の値で設定される。よって、予測温度Hは、過去5分間の平均温度Cの値がそのまま設定される。このように、本実施形態では、制御を行う時間帯に対応して増幅用パラメータEの値を変更させることにより、予測温度演算ルールが変更される。これにより、時間帯を考慮して補正しながら予測温度の算出を行って、開閉装置の制御の精度を向上しうる。なお、増幅用パラメータEは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって実際のハウス室内の温度変化が下降の場合や、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0に限らず比較的小さな数値(例えば、0.1×M(90)=9)で増幅するように設定してもよい。また、増幅用パラメータEの値は、栽培農作物の種類、季節、ハウスの大きさ等の条件に対応して任意に設定してもよい。
【0027】
さらに、予測温度設定部16は、現在及び過去温度T、Sからハウス室内の温度変化が上昇か、下降かを判定する。温度変化の判定は、例えば、1分前平均温度Aと5分間の平均温度Cとの差により判定する。なお、温度変化の判定は、例えば、温度傾斜Dの正負で判定したり、現在温度と任意の過去の温度の差で判定してもよい。
【0028】
なお、予測温度設定部16は、図4に示すように、例えば、記憶部30と、演算処理部32と、を含むコンピュータ又は電子回路等から構成される。記憶部30は、例えば、メモリ等からなり、動作プログラム及び、目標温度F、現在温度T、10秒ごとに測定した過去5分間分の30点の過去温度S、各演算ルールや計算式、増幅用パラメータE等を記憶する。さらに、記憶部30は、各算出結果の平均温度A、B、Cや、温度傾斜D、予測温度Hを記憶しておく。演算処理部32は、例えば、コンピュータのCPU又は電子回路の組み合わせ等から構成されており、タイマ部14の計時タイミングに従って各制御処理を行うとともに、平均温度A、B、C、温度傾斜D、予測温度Hを算出する。さらに、演算処理部32は、タイマ部から現在時刻がどの時間帯に属しているか、又はハウス室内の温度変化が上昇か下降かの判定処理を行う。
【0029】
開閉制御部18は、温度センサ12や予測温度設定部16から送られる現在温度、予測温度に基づいて開閉装置104を開閉制御する開閉制御手段である。本実施形態では、開閉制御部18は、現在温度により開閉制御する現在温度開閉制御部24と、予測温度により開閉制御する予測開閉制御部26と、を含む。開閉制御部18では、予測開閉制御部26により予測制御する温度域Jを目標温度Fに応じて予め設定しておき、現在温度Tが温度域Jの範囲外の場合には現在温度開閉制御部24による制御を行ない、現在温度Tが温度域Jの範囲内の場合には予測開閉制御部26による制御を行う。温度域Jは、例えば、時間帯で異なるように設定されており、目標温度Fに加算減算することによりその温度域Jの上限値Jaと下限値Jbが設定される。本実施形態では、図8に示すように、太陽光の影響を受けてハウス室内の温度が上昇傾向に予想される午前の時間帯の場合は、上限値Jaが目標温度F+3.0℃、下限値Jbが目標温度F−3.0℃で設定される。すなわち、目標温度Fが例えば25℃とすると、温度域Jは、22〜28℃の範囲に設定される。一方、外気の影響を受けてハウス室内の温度が下降傾向に予想される午後の時間帯の場合は、上限値Jaが目標温度F+5.0℃、下限値Jbが目標温度F−0.0℃で設定される。すなわち、目標温度Fが例えば25℃とすると、温度域Jは25〜30℃の範囲に設定される。なお、上限値、下限値の値は栽培農作物の種類、季節、ハウスの大きさ等の条件に対応して任意に設定してもよい。
【0030】
現在温度開閉制御部24は、予測開閉制御部26に先立って、現在温度Tと、温度域Jと、を比較判定して開閉制御を行う第1の制御手段である。現在温度開閉制御部24は、現在温度Tが温度域Jaの上限値よりも高い場合には、開閉装置104に全開させるように開閉装置へ動作信号を送る。なお、すでに開閉装置がすでに全開状態の場合にはそのまま維持する。現在温度開閉制御部24は、現在温度Tが温度域Jの下限値Jbよりも低い場合には、開閉装置104を完全閉鎖させるように制御する。なお、開閉装置がすでに閉じている場合にはそのまま維持する。
【0031】
予測開閉制御部26は、予測温度Hと、予め設定された制御用温度Kと、を高低比較判定して開閉装置104の開閉制御を行う第2の制御手段である。本実施形態では、制御用温度Kは、例えば、目標温度Fに所定の値を加算減算して得られる。図9に示すように、制御用温度Kは、制御を行う時間帯に対応して異なる値で設定される。さらに、制御用温度Kは、それぞれの時間帯において実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かによっても異なる値で設定される。例えば、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される午前の時間帯で、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F+1.5℃(例えば、26.5℃)で設定される。午前の時間帯で予想に反して実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F−1.5℃(例えば、23.5℃)で設定される。一方、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される午後の時間帯で、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F+5.0℃(例えば、30℃)で設定される。午後の時間帯で、予想に反してハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F+1.0℃(例えば、26℃)で設定される。すなわち、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定されている。
【0032】
予測開閉制御部26は、予測温度Hと制御用温度Kとの比較の前に、実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かを判定する。温度変化の判定は、例えば、1分前から現在までの1分間の平均温度Aと、1分前の温度又は前回開閉装置を開閉制御したときの温度と、の高低比較で行う。なお、温度変化の判定は、現在温度と任意の過去の温度との比較や、上述の予測温度設定部16での判定結果や温度傾斜D等を利用して判定してもよい。そして、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が上昇の場合であって予測温度Hの方が制御用温度Kより高い場合には、開閉装置104を所定幅(例えば、10%)だけ開くように制御する。また、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が上昇の場合であって予測温度Hの方が制御用温度Kより低い場合にはそのまま維持する。一方、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が下降の場合であって予測温度の方が制御用温度より高い場合には開閉装置104をそのまま維持する。また、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が下降の場合であって、予測温度Hの方が制御用温度Kより低い場合には開閉装置104を所定幅(例えば、10%)だけ閉じるように制御する。予測開閉制御部26は、所定幅の開閉制御を行った後には、一定時間(例えば、1分間)の制御停止インターバルを確保する。予測開閉制御部26は、インターバル中は開閉装置の開閉制御は行なわず、そのままの開口状態を保持する。これにより、過剰な開閉動作を防止して適切な開閉幅を保持しながら高精度な温度制御を行なえる。さらに、予測開閉制御部26は、開閉制御を行った際の温度(前回開閉温度)を記憶する。この前回開閉温度は、上述のように温度変化の判定に利用される。
【0033】
なお、開閉制御部18は、図4に示すように、例えば、記憶部40と、演算処理部42と、開閉動作指令部44と、を含むコンピュータ又は電子回路等から構成され、それらにより現在温度開閉制御部24と予測開閉制御部26とを実現している。記憶部40は、例えば、メモリ等からなり、動作プログラム及び、目標温度F、現在温度T、過去温度S、予測温度H、温度域Jの上限値Ja及び下限値Jb、制御用温度K、1分前平均温度A、開閉装置が前回開閉動作した時の温度、開閉装置を開閉させる際の1回の動作で開閉させる所定幅等を記憶する。演算処理部42は、例えば、コンピュータのCPU又は電子回路の組み合わせ等から構成されており、タイマ部14の計時タイミングに従って各制御処理を行うとともに、目標温度へ加算減算することによる温度域Jの上限値及び下限値の計算や制御用温度Kの計算を行う。さらに、演算処理部32は、タイマ部14からの現在時刻がどの時間帯に属しているかの判定、温度変化が上昇か下降かの判定、現在温度Tが温度域J内かどうかの判定、予測温度Hと制御用温度Kとの比較判定等の各判定処理を行い、その判定結果を開閉動作指令部44に送る。なお、本実施形態では、予測温度設定部16と開閉制御部18とを別々の構成で説明したが、それぞれの記憶部30、40を共通させて構成させてもよいし、記憶部30、40及び演算処理部32、42を共通して1つのコンピュータ上で構成することとしてもよい。
【0034】
制御盤20には、例えば、目標温度F、増幅用パラメータE、時間帯の分割、温度域Jの上限値及び下限値、制御用温度K、開閉装置を開閉させる際の1回の動作で開閉させる所定幅等の、制御のための予め設定された各種の設定用パラメータを入力、変更設定できる設定入力部22が設けられている。制御盤20には、これらのパラメータ等を表示して確認できるメータやディスプレイ等が設けられていても良い。
【0035】
なお、本実施形態では、増幅用パラメータE、温度域J、制御用温度K等の各設定値において、時間帯の分割を午前と午後との2つの場合で説明したが、時間帯の分割方法はこれに限らない。例えば、1日を6時間間隔で、すなわち0時から6時、6時から12時、12時から18時、18時から24時(0時)の4つの時間帯に分けたり、朝昼夜の3分割で分けても良く、その他任意の時間帯で分割して設定してもよい。時間帯の分割は、太陽の影響や季節、栽培農作物等の条件に対応して適宜設定すると良い。また、増幅用パラメータE、制御用温度K等の各設定値について、ハウス室内の温度変化が上昇か下降かの2パターンに限らず、多段階に境界を設定して複数のパターンに分けて設定することとしてもよい。また、本実施形態に係る制御システムと雨センサによる開閉制御を組み合わせて使用しても良い。雨センサが降雨を検出した際に、開閉装置を完全閉鎖するように制御すると好適に農作物を栽培できる。
【0036】
次に、本実施形態に係る農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ビニルハウスの温度制御方法について説明する。図2に示すように、まず、温度センサからの測定温度に基づいて予測温度設定部において将来的に予測される予測温度を設定する。本実施形態では、ステップS10では、例えば、10秒間隔ごとに温度センサ12でハウス室内の温度を測定する。ステップ12では、温度センサからの温度データについて10秒ごとに記憶していく。よって、ステップS12では、10秒ごとに現在の温度データと、過去に一定期間遡った(例えば5分間分)の温度データが順次更新される。次に、ステップ14では、現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度が設定される。詳細には、図5に示すように、例えば、ステップS30で、1分前から現在までの1分間の第1平均温度Aを算出する。ステップS32では、5分前から4分前までの1分間の第2平均温度Bを算出する。ステップS34では、5分前から現在までの5分間の平均温度Cを算出する。ステップS36では、温度傾斜Dを(B−A)/30の計算式で算出する。ステップS38では、実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かを判定し、ステップS40では、タイマ部が計った現在の時刻が午前、午後のどちらの時間帯に属するか判定する。ステップS42では、前ステップ(S38、S40)までの温度変化と時間帯の判定結果により、増幅用パラメータEの値が選択される。ステップS44では、演算ルールで定められている計算式C+D×Eで予測温度Hを算出する。
【0037】
予測温度設定部16で予測温度が設定されると開閉制御部18では、図2に示すように、ステップS16で、予測温度Hによる制御に先立って、現在温度開閉制御部24で現在温度Tと目標温度Fに対応して予め定められた温度域Jとの比較判定により開閉制御が行なわれる。具体的には、例えば、図6に示すように、ステップS50では、現在時刻が午前、午後のいずれの時間帯に属しているか判定する。ステップS52で、時間帯に対応して下限値Jbを設定する。例えば、図9に示すように、前ステップS50の判定で、時間帯が午前であれば下限値Jbは目標温度F−3.0℃、時間帯が午後であれば下限値Jbは目標温度F+0.0℃で設定される。ステップS54では、現在温度開閉制御部24は、現在温度Tと下限値Jbとを高低比較する。このステップS54で現在温度Tが下限値Jbより低い場合(T<Jb)には、ステップS56に進み、現在温度開閉制御部24は、開閉装置に連続的に閉め動作するように制御信号を送り、開閉装置を完全に閉じる。なお、既に開閉装置を閉じている場合にはその状態を維持する。ステップS54で現在温度Tが下限値Jbより高い場合(T≧Jb)には、ステップS58に進み、時間帯に対応して上限値Jaを設定する。ステップS58では、例えば、図9に示すように、前ステップS50の判定で、時間帯が午前であれば上限値Jaは目標温度F+3.0℃、時間帯が午後であれば上限値Jaは目標温度F+5.0℃で設定される。ステップS60では、現在温度開閉制御部24は、現在温度Tと上限値Jaとを高低比較する。このステップS60で現在温度Tが上限値Jaより高い場合(T>Ja)には、ステップS62に進み、現在温度開閉制御部24は、開閉装置に連続的に開け動作するように制御信号を送り、開閉装置を完全に開ける。なお、既に開閉装置を完全に開いている場合にはその状態を維持する。ステップS60で現在温度Tが上限値Jaより低い場合(T≦Ja)には、現在温度Tが温度域Jの範囲内であるとして、次の予測開閉制御部26による制御(ステップS18)に進む。
【0038】
図2に示すように、ステップS18では、予測開閉制御部26により、予測温度Hと予め設定された制御用温度Kとを比較判定して、開閉装置の開閉制御を行う。具体的には、図7に示すように、ステップS64では、後述のステップS74で設定される制御停止インターバル中かどうか判定する。インターバル中でない場合には、ステップS66に進み、ハウス室内の温度が上昇か下降かを判定する。インターバル中の場合には、ステップS84で設定時間が経過しているか否かを判定し、時間が経過してなければスタートに戻り、時間が経過している場合には、ステップS86でインターバルの設定が解除される。ステップS66で温度変化が上昇の場合には、ステップS68に進み、上述のステップS50(図6参照)での時間帯の判定に基づいて、制御用温度Kを設定する。例えば、時間帯が午前の場合には、制御用温度Kは目標温度F+1.5℃で設定され、時間帯が午後の場合には、制御用温度Kは目標温度F+5.0℃で設定される。ステップS70では、予測開閉制御部26は、上述のステップS14で設定された予測温度Hと、前ステップS68で設定された制御用温度Kと、を高低比較する。予測温度Hが制御用温度Kよりも高い場合には、ステップS72に進み、開閉装置を所定幅(例えば、10%)だけ開くように制御する。なお、既に開閉装置が全開の場合にはそのまま維持する。ステップS74では、一定時間(例えば、1分間)の制御停止インターバル時間が設定される。ステップS70で、予測温度Tが制御用温度Kより低い場合には、ステップ76に進み、開閉装置を開閉動作させず現状を維持する。一方、前述のステップS66において、ハウス室内の温度変化が下降の場合には、ステップS78に進み、上述のステップS50(図6参照)での時間帯の判定に基づいて、制御用温度Kを設定する。例えば、時間帯が午前の場合には、制御用温度Kは目標温度−1.5℃で設定され、時間帯が午前の場合には、制御用温度Kは目標温度+1.0℃で設定される。ステップS80では、予測開閉制御部26は、上述のステップS14で設定された予測温度Hと、前ステップS78で設定された制御用温度Kと、を高低比較する。予測温度Hが制御用温度Kよりも高い場合には、ステップS82に進み、開閉装置を所定幅(例えば、10%)だけ閉じるように制御する。その後、ステップS74に進み、一定時間(例えば、1分間)の制御停止時間が設定される。上述のステップS80で、予測温度Tが制御用温度Kより低い場合には、開閉装置を開閉動作させず現状を維持する。このように本実施形態では、所定時間周期で、温度測定ステップ(S10)、温度記憶ステップ(S12)、予測温度設定ステップ(S14)、現在温度開閉制御ステップ(S16)、予測温度開閉制御ステップ(S18)、を含む制御を繰返しながら開閉装置の開閉制御を行う。このようにして、常時予測温度を設定しつつ、現在温度及び予測温度を参照して開閉装置を開閉制御しながら大容量空間であるハウス室内の温度制御を高精度に行うことができる。
【実施例】
【0039】
上記実施形態に係る制御システム10を農業用ハウスの開閉装置の制御システムとして設置し、上記温度制御方法により開閉装置の開閉制御を行った。図11のグラフは、2010年2月20日に測定を行った結果を示すグラフである。目標温度は25℃に設定されている。図11では、上段に9:00から11:00までの時間帯のグラフを示し、下段に16:00から17:30まで時間帯のグラフを示す。また、比較例として、別の日(2010年1月27日)に、背景技術で説明したような従来の開閉装置の制御方法、すなわち温度センサによる測定温度と設定温度との偏差値により開閉制御させる方法を行なった結果を、図12のグラフに示している。なお、図12では、上段に9:00から11:00までの時間帯のグラフを示し、下段に16:00から17:30まで時間帯のグラフを示す。
【0040】
本実施例と比較例とを比較すると、図11の本実施例のグラフでは、開閉装置は、ハウス室内の温度に応じて段階的に開閉幅を調整しながら制御されているのが分かる。温度変化を見ると、午前9:20〜10:00までの時間帯では、ハウス室内の温度が目標温度に近傍で維持されている。特に、9:50過ぎぐらいまではハウス室内の温度が目標温度を超えることなく目標温度に近い略一定な温度で高精度な制御を実現している。また、午後には16:30〜17:00ぐらいまでハウス室内を目標温度に近い温度で制御しており、特に16:50から17:10の時間帯は、目標温度に近似した温度でハウス室内の温度を制御しているのが分かる。一方、図12の従来のグラフでは、9:30過ぎぐらいでハウス室内の温度が目標温度より高くなって開閉装置を開く制御を行っているが、すでに目標温度を越えて開閉タイミングが遅れた制御となっている。さらに、10:00〜10:40の時間帯では、開閉装置は短時間で全開、完全閉鎖を繰返した大きな開閉動作を行っている。さらに、ハウス室内の温度変化も目標温度に対して短時間で上下変動しているのが分かる。このように、本実施例では、従来のものと比較してハウス室内の温度を高精度に制御しており、制御性に優れているのが分かる。
【0041】
以上説明した本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法は、野菜、果物、花卉等その他の農作物を栽培する際に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
10 制御システム
12 温度センサ
14 タイマ部
16 予測温度設定部
18 開閉制御部
24 現在温度開閉制御部
26 予測開閉制御部
100 農業用ビニルハウス
104 開閉装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果実、花卉等の農作物を促成栽培する際には、屋根や側壁をポリ塩化ビニル等の透光性フィルムで被覆した農業用ビニルハウスが利用される。ビニルハウスでは、例えば太陽の日差しが強い日中にはハウス室内の温度が高温となり栽培している農作物に高温障害が発生するおそれがあり、栽培温度の管理が重要である。高温障害を防止するために、ビニルハウスの屋根の一部分を開閉させる開閉装置が設けられる場合がある。ビニルハウスの開閉装置は、例えば、屋根を覆うフィルムの一部分を巻取り又は巻戻し動作して、開口部を開閉するように設けられている。そして、ハウス室内温度が高くなる日中には該ハウスの屋根のフィルムの一部を巻取って開口を開けて外気を取り入れ、温度が低くなる夕方にはフィルムの一部を巻戻して開口を閉じ、これらの開閉操作を繰返しながらハウス室内の温度を管理しようとするものであった。開閉装置は、ハウス室内の温度の変化に対応して開閉する必要があるが、人力で開閉するには煩雑で労力がかかる問題があった。そこで、開閉装置の開閉操作を自動で制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、温度センサによる感知温度と制御盤に設定された設定温度との偏差値により開閉制御させるビニルハウス自動開閉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−23666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自動開閉装置のように従来の開閉制御では、温度センサで測定したハウス室内温度と設定値との高低比較により、開口部分を全開又は閉鎖させるように開閉制御するものであった。しかしながら、このような従来の開閉装置の開閉制御では、ハウス室内温度が設定値を超えてから開動作し、ハウス室内温度が設定値より下がって閉動作するので、開閉装置の開閉動作が遅れ、栽培している農作物の温度管理に適した開閉タイミングでの制御が困難であり、農作物に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、従来の開閉制御では、午前中に太陽光でハウス室内の温度センサ付近が温められて設定値より上がって開閉装置を開いた後、冷たい外気を取り入れたことにより急激にハウス内温度が設定値より下がって開閉装置を閉じ、さらに開閉装置を閉じたことにより再びハウス内温度が設置値より高くなって開閉装置を開く、といった開閉制御を短時間で頻繁に繰返してしまう場合があり、栽培農作物に悪影響を及ぼしたり、開閉装置の部材が早期に消耗したり、電力を多量に消費してしまう問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、農業用ハウス室内の温度を随時予測しながら開閉装置を開閉制御して、高精度な温度制御を実現する農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、農業用ハウス100の屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置104を自動制御する制御システムであり、ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサ12と、タイマ部14と、タイマ部14が計時する所定時間間隔ごとに温度センサ12で測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度Hを設定する予測温度設定部16と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部16で設定した予測温度Hと予め設定した目標温度Tとを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部26(18)と、を備えたことを特徴とする農業用ハウスの開閉装置用制御システム10から構成される。基本的には、予測温度Hと目標温度Tとを比較して開閉装置の開閉制御を行うこととしてもよいが、後述のように、目標温度Tを時間帯や温度変化に応じて補正した制御用温度Kを設定し、この制御用温度Kと予測温度Hとの比較により開閉制御すると、ハウス環境に対応した、より高精度な制御を実現できる。タイマ部14、予測温度設定部16、予測開閉制御部26は、例えば、リレーや種々の電子回路、プログラマブル回路、電子機材等によりハードウェア的に構成してもよいし、汎用コンピュータ又は専用コンピュータに組み込むプログラムによりソフトウェア的に構成してもよい。農業用ハウス100は、例えば、ビニルハウスや透明ガラス製の温室等でもよい。開閉装置は、例えば、外面を被覆しているビニルフィルムの一部を巻取り、巻き戻して開閉を行う構成や、一部の開閉扉や開閉窓等を設けて開閉する構成等、その他任意の構成でもよい。
【0007】
また、タイマ部14は、時刻を計る時計機能を有し、予測温度設定部16は、制御を行う時間帯に対応して予め定められた予測温度演算ルールが設定されており、制御時の時刻が属する時間帯に対応して予測温度演算ルールに従って現在及び過去温度T、Sから予測温度Hを算出することとしてもよい。
【0008】
また、予測温度演算ルールは、現在及び過去温度から算出される時間当たりの温度傾斜に掛け算させる増幅用パラメータEを含み、増幅用パラメータEは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、大きな数値で設定され、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、大きな数値で設定されることとしてもよい。
【0009】
また、予測開閉制御部26は、予測温度Hと、時間帯に対応して目標温度Fを補正した制御用温度Kと、を比較して、開閉装置を所定幅だけ開閉制御させるようになっており、制御用温度Kは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定されたされたこととしてもよい。
【0010】
また、予測開閉制御部26では目標温度に応じて制御を行なわせる温度域Jが予め設定され、予測開閉制御部26による制御に先立って現在温度Tと該温度域Jとを比較判定し、現在温度Tが該温度域Jの上限値Jaよりも高い場合には開閉装置104を全開させるように制御し、現在温度Tが該温度域Jの下限値Jbよりも低い場合には開閉装置104を完全閉鎖させるように制御する現在温度開閉制御部24を含むこととしてもよい。
【0011】
さらに、本発明は、農業用ハウスにおいて屋根の一部を開閉する開閉装置を制御システムにより自動開閉制御してハウス室内の温度調整を行う温度制御方法であり、ハウス室内に配置した温度センサにより温度を測定する温度測定ステップ(S10)と、温度測定ステップにて温度センサで測定した現在の温度Tと一定時間過去の温度Sを記憶する温度記憶ステップ(S12)と、温度記憶ステップで記憶した現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度Hを設定する予測温度設定ステップ(S14)と、予測温度設定ステップで設定した予測温度Hと予め設定された目標温度Fとを判定要素としてハウスの開閉装置の開閉制御を行う予測開閉制御ステップ(S18)と、を含む制御を所定時間間隔ごとに繰返すことを特徴とする開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法から構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システムによれば、農業用ハウスの屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置を自動制御する制御システムであり、ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサと、タイマ部と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに温度センサで測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度を設定する予測温度設定部と、タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部で設定した予測温度と予め設定した目標温度とを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部と、を備えたことから、随時ハウス室内の温度を予測して、開閉装置の開閉タイミングを遅らせることなく適時的に開閉制御することができる。同時に、開閉装置の無駄な開閉制御を低減でき、開閉制御によるハウス室内の短時間での頻繁な上下変動を防止できる。その結果、ハウス室内の温度を高精度に制御することができ、実用性が高く、高温障害や低温障害等を防止しながら農作物を適切に栽培することができる。また、開閉装置の部材の早期消耗を防止できるとともに、無駄な電気の使用を減らすことができる。
【0013】
また、タイマ部は、時刻を計る時計機能を有し、予測温度設定部は、制御を行う時間帯に対応して予め定められた予測温度演算ルールが設定されており、制御時の時刻が属する時間帯に対応して予測温度演算ルールに従って現在及び過去温度から予測温度を算出する構成とすることにより、時間帯で変わる太陽光の影響を考慮して農業用ハウス室内の環境に適した予測温度を設定することができ、開閉装置によるハウス室内の温度制御を高精度に実現できる。
【0014】
また、予測温度演算ルールは、現在及び過去温度から算出される時間当たりの温度傾斜に掛け算させる増幅用パラメータを含み、増幅用パラメータは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、大きな数値で設定され、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0又は小さな数値で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、大きな数値で設定される構成とすることにより、例えば、午前のように太陽光の影響を受けてハウス室内温度が上昇されやすい時間帯には、開閉装置を開けやすくかつ閉めにくい制御とし、例えば、午後のように太陽が沈んでハウス室内温度が下降されやすい時間帯には、開閉装置を開けにくくかつ閉めやすい制御として、時間帯によるハウス室内の温度変化に適応した予測温度を設定でき、高精度な温度制御を実現できる。
【0015】
また、予測開閉制御部は、予測温度と、時間帯に対応して目標温度を補正した制御用温度と、を比較して、開閉装置を所定幅だけ開閉制御させるようになっており、制御用温度は、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定された構成とすることにより、予測温度を利用して開閉制御する際に、例えば、午前のように太陽光の影響を受けてハウス室内温度が上昇されやすい時間帯には、開閉装置を開けやすくかつ閉めにくい制御とし、例えば、午後のように太陽が沈んでハウス室内温度が下降されやすい時間帯には、開閉装置を開けにくくかつ閉めやすい制御として、時間帯に対応した高精度な温度制御を実現できる。
【0016】
また、予測開閉制御部では目標温度に応じて制御を行なわせる温度域が予め設定され、予測開閉制御部による制御に先立って現在温度と該温度域とを比較判定し、現在温度が該温度域の上限値よりも高い場合には開閉装置を全開させるように制御し、現在温度が該温度域の下限値よりも低い場合には開閉装置を完全閉鎖させるように制御する現在温度開閉制御部を含むことから、現在温度と予測温度との2つの要素を利用して開閉制御を行って、ハウス室内の温度をより高精度に制御することができる。
【0017】
さらに、本発明の開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法によれば、農業用ハウスにおいて屋根の一部を開閉する開閉装置を制御システムにより自動開閉制御してハウス室内の温度調整を行う温度制御方法であり、ハウス室内に配置した温度センサにより温度を測定する温度測定ステップと、温度測定ステップにて温度センサで測定した現在の温度と一定時間過去の温度を記憶する温度記憶ステップと、温度記憶ステップで記憶した現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度を設定する予測温度設定ステップと、予測温度設定ステップで設定した予測温度と予め設定された目標温度とを判定要素としてハウスの開閉装置の開閉制御を行う予測開閉制御ステップと、を含む制御を所定時間間隔ごとに繰返すことから、随時ハウス室内の温度を予測して、開閉装置の開閉タイミングを遅らせることなく適時的に開閉制御することができる。同時に、開閉装置の無駄な開閉制御を低減でき、開閉制御によるハウス室内の短時間での頻繁な上下変動を防止できる。その結果、ハウス室内の温度を高精度に制御することができ、高温障害や低温障害等を防止しながら農作物を適切に栽培することができる。また、開閉装置の部材の早期消耗を防止できるとともに、無駄な電気の使用を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る農業用ハウスの開閉装置用制御システムの概略ブロック図である。
【図2】図1の農業用ハウスの開閉装置用制御システムの開閉制御及び実施形態に係る農業用ハウスの温度制御方法の概略フロー図である。
【図3】農業用ハウスの開閉装置及び図1の制御システムの概略説明図である。
【図4】図1の農業用ハウスの開閉装置用制御システムの一部詳細に示したブロック図である。
【図5】予測温度設定部による予測温度を設定するフローの説明図である。
【図6】現在温度開閉制御部による開閉制御のフローの説明図である。
【図7】予測開閉制御部による開閉制御のフローの説明図である。
【図8】増幅用パラメータの一例を示す表である。
【図9】予測温度制御部による制御を行なう温度域の時間帯に対応した上限値、下限値の一例である。
【図10】予測温度と比較する制御用温度の一例である。
【図11】実施例で開閉制御を行ったグラフである。
【図12】比較例で開閉制御を行ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照しつつ本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法の実施形態について説明する。本発明に係る農業用ハウスの開閉装置用制御システムは、農業用ハウスの屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気を行い、外気を取り入れて温度調整を行わせる開閉装置を自動制御する制御システムであり、所定時間間隔で随時ハウス室内の温度を予測しながら開閉制御することにより、農作物の栽培に適して高精度に温度制御を行うものである。
【0020】
図1ないし図7は、本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システムの一実施形態を示している。本実施形態では、図3に示すように、農業用ハウス(以下、単に「ハウス」ともいう)100は、例えば、金属パイプで骨組みを立設し、その屋根と側壁部分に透明ビニル製の農業用フィルム102を被覆して構築されている。なお、図3では、複数棟のハウスを連続して設けた連棟タイプのビニルハウスの例を示している。開閉装置104は、例えば、ハウスの屋根の端部側又は谷部側のフィルム102の一部を巻取り、巻戻し自在に巻取る金属パイプ等からなる巻取り軸106と、巻取り軸106の長手方向一端部側に連結され該巻取り軸106を正逆回転駆動させるモータを内蔵した駆動装置108と、を含む。駆動装置108で巻取り軸106を回転させてフィルム102の一部を巻き取ると所定幅で開口を開ける(図3上、二点鎖線参照)とともに、巻取り軸106を逆に回転させて巻き取っているフィルム102の一部を巻き戻すと開口を所定幅閉じる。開閉装置104の全開位置、全閉鎖位置には、リミットスイッチが設けられていてもよい。開閉装置104は、支持用の柱又はハウスの骨組等に支持されて高位置に配置されている。本実施形態では、制御システム10が駆動装置108と電気的に接続され、制御システム10によって駆動装置108のモータの正逆回転制御を行って開閉装置104の開閉制御を行う。
【0021】
図1に示すように、本実施形態において、農業用ハウスの開閉装置用制御システム(以下、単に「制御システム」ともいう)10は、温度センサ12と、タイマ部14と、予測温度設定部16と、開閉制御部18と、を備えている。
【0022】
温度センサ12は、ハウス100の室内に配置され、ハウス室内の温度を随時測定する温度測定手段である。本実施形態では、タイマ部14、予測温度設定部16、開閉制御部18は、例えば、制御盤20に一体的に組み付けて設けられている。制御盤20は、温度センサ12と開閉装置104との間に電気的に接続され、温度センサ12からの測定温度のデータに基づいて開閉装置104に開閉制御信号を送る制御手段を構成する。制御盤20は、例えば、ビニルハウスの外側又は内側の任意の場所に設置される。
【0023】
タイマ部14は、時間を計る計時手段であり、制御周期となる所定時間間隔の計時を行う。本実施形態では、例えば、タイマ部14は、温度センサ12による測定や、予測温度設定部16による予測温度の設定、開閉制御部18による開閉装置の開閉判定又は開閉制御を繰返す所定時間間隔(例えば、10秒間隔)を計時する。さらに、タイマ部14は、後述のように開閉制御部18が動作又は停止制御を行った後に、設定される制御停止インターバルの時間(例えば、1分間)を計時する。すなわち、タイマ部14は、各制御周期用の所定時間間隔(例えば、10秒)カウントタイマと、制御停止インターバル用(例えば、1分間)のカウントタイマを含む。さらに、本実施形態では、タイマ部14は、現在の時刻を計る時計機能を有している。タイマ部14は、制御を行っている現在の時刻のデータを予測温度設定部16や開閉制御部18に送る。タイマ部14は、例えば、機械的に計時するタイマ部材で実現しても良いし、コンピュータ上でソフトウェア的に計時するタイマ手段でもよい。
【0024】
予測温度設定部16は、タイマ部14で計時された所定時間間隔ごとに、将来的に予測される予測温度を設定する予測温度設定手段である。本実施形態では、予測温度設定部16は、所定時間間隔(例えば10秒間隔)ごとに温度センサ12で測定された現在温度Tと、一定時間遡った過去温度Sと、に基づいて、演算ルールに従って予測温度Hを設定する。本実施形態では、予測温度設定部16は、例えば、現在温度Tデータと、10秒間隔ごとに測定された過去5分間分について30点の過去温度Sデータと、を記憶しておく。予測温度Hを演算するための演算ルールは、例えば、ある時間での予測のベース温度となる基準温度(C)+時間当たりの温度傾斜(D)×増幅用パラメータ(E)の計算式からなる。なお、予測温度の演算は、例えば、最小二乗法等、その他近似直線を求める計算式を利用してもよい。
【0025】
本実施形態では、基準温度Cは、例えば、5分前から現在までの5分間の平均温度が利用される。なお、基準温度Cは、現在温度Tでも良いし、例えば、1分前から現在までの1分間の平均温度A等でもよい。温度傾斜Dは、予測に用いる温度変化率であり、例えば、記憶されている現在温度及び過去5分間の過去温度を利用して、10秒当たりの温度傾斜が算出される。本実施形態では、温度傾斜Dは、例えば、1分前から現在までの1分間の1分前平均温度Aと、5分前から4分前までの1分間の5分前平均温度Bと、を算出し、それを時間で割り算して求められる。すなわち、10秒当たりの温度傾斜D=(B−A)/30の計算式で算出される。なお、温度傾斜Dは、1秒当たりの温度傾斜でもよい。また、温度傾斜の計算方法は上記に限らず周知の近似直線等の求め方による任意の計算方法でもよい。増幅用パラメータEは、予め設定されており、予測する所定時間後の未来まで一定の割合で温度が変化すると仮定して温度傾斜Dに掛け算する時間成分を考慮したパラメータである。
【0026】
図7に示すように、増幅用パラメータEは、制御する時間帯によって異なる値で設定される。さらに、増幅用パラメータEは、それぞれの時間帯において、実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かによっても異なる値で設定している。具体的には、増幅用パラメータEは、太陽光の影響を受けてハウス室内の温度が上昇傾向に予想される午前の時間帯では、実際のハウス室内の温度が上昇する場合には、温度傾斜Dを大きく増幅するように比較的大きな値M(例えば、90)で設定される。よって、予測温度Hも高い温度値で算出される。一方、増幅用パラメータEは、午前の時間帯で、予想に反して実際のハウス室内の温度が下降する場合には、温度傾斜Dを増幅しない、すなわち0(例えば、0×M=0としてもよい)の値で設定される。よって、予測温度Hは、過去5分間の平均温度Cの値がそのまま設定される。さらに、増幅用パラメータEは、外気の影響を受けてハウス室内の温度が下降傾向に予想される午後の時間帯では、実際のハウス室内の温度が下降する場合には、温度傾斜Dを大きく増幅するように比較的大きな値M(例えば、90)で設定される。よって、予測温度Hは低い温度値で算出される。一方、増幅用パラメータEは、午後の時間帯で、予想に反して実際のハウス室内の温度が上昇する場合には、温度傾斜Dを増幅しない、すなわち0(例えば、0×M=0としてもよい)の値で設定される。よって、予測温度Hは、過去5分間の平均温度Cの値がそのまま設定される。このように、本実施形態では、制御を行う時間帯に対応して増幅用パラメータEの値を変更させることにより、予測温度演算ルールが変更される。これにより、時間帯を考慮して補正しながら予測温度の算出を行って、開閉装置の制御の精度を向上しうる。なお、増幅用パラメータEは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって実際のハウス室内の温度変化が下降の場合や、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0に限らず比較的小さな数値(例えば、0.1×M(90)=9)で増幅するように設定してもよい。また、増幅用パラメータEの値は、栽培農作物の種類、季節、ハウスの大きさ等の条件に対応して任意に設定してもよい。
【0027】
さらに、予測温度設定部16は、現在及び過去温度T、Sからハウス室内の温度変化が上昇か、下降かを判定する。温度変化の判定は、例えば、1分前平均温度Aと5分間の平均温度Cとの差により判定する。なお、温度変化の判定は、例えば、温度傾斜Dの正負で判定したり、現在温度と任意の過去の温度の差で判定してもよい。
【0028】
なお、予測温度設定部16は、図4に示すように、例えば、記憶部30と、演算処理部32と、を含むコンピュータ又は電子回路等から構成される。記憶部30は、例えば、メモリ等からなり、動作プログラム及び、目標温度F、現在温度T、10秒ごとに測定した過去5分間分の30点の過去温度S、各演算ルールや計算式、増幅用パラメータE等を記憶する。さらに、記憶部30は、各算出結果の平均温度A、B、Cや、温度傾斜D、予測温度Hを記憶しておく。演算処理部32は、例えば、コンピュータのCPU又は電子回路の組み合わせ等から構成されており、タイマ部14の計時タイミングに従って各制御処理を行うとともに、平均温度A、B、C、温度傾斜D、予測温度Hを算出する。さらに、演算処理部32は、タイマ部から現在時刻がどの時間帯に属しているか、又はハウス室内の温度変化が上昇か下降かの判定処理を行う。
【0029】
開閉制御部18は、温度センサ12や予測温度設定部16から送られる現在温度、予測温度に基づいて開閉装置104を開閉制御する開閉制御手段である。本実施形態では、開閉制御部18は、現在温度により開閉制御する現在温度開閉制御部24と、予測温度により開閉制御する予測開閉制御部26と、を含む。開閉制御部18では、予測開閉制御部26により予測制御する温度域Jを目標温度Fに応じて予め設定しておき、現在温度Tが温度域Jの範囲外の場合には現在温度開閉制御部24による制御を行ない、現在温度Tが温度域Jの範囲内の場合には予測開閉制御部26による制御を行う。温度域Jは、例えば、時間帯で異なるように設定されており、目標温度Fに加算減算することによりその温度域Jの上限値Jaと下限値Jbが設定される。本実施形態では、図8に示すように、太陽光の影響を受けてハウス室内の温度が上昇傾向に予想される午前の時間帯の場合は、上限値Jaが目標温度F+3.0℃、下限値Jbが目標温度F−3.0℃で設定される。すなわち、目標温度Fが例えば25℃とすると、温度域Jは、22〜28℃の範囲に設定される。一方、外気の影響を受けてハウス室内の温度が下降傾向に予想される午後の時間帯の場合は、上限値Jaが目標温度F+5.0℃、下限値Jbが目標温度F−0.0℃で設定される。すなわち、目標温度Fが例えば25℃とすると、温度域Jは25〜30℃の範囲に設定される。なお、上限値、下限値の値は栽培農作物の種類、季節、ハウスの大きさ等の条件に対応して任意に設定してもよい。
【0030】
現在温度開閉制御部24は、予測開閉制御部26に先立って、現在温度Tと、温度域Jと、を比較判定して開閉制御を行う第1の制御手段である。現在温度開閉制御部24は、現在温度Tが温度域Jaの上限値よりも高い場合には、開閉装置104に全開させるように開閉装置へ動作信号を送る。なお、すでに開閉装置がすでに全開状態の場合にはそのまま維持する。現在温度開閉制御部24は、現在温度Tが温度域Jの下限値Jbよりも低い場合には、開閉装置104を完全閉鎖させるように制御する。なお、開閉装置がすでに閉じている場合にはそのまま維持する。
【0031】
予測開閉制御部26は、予測温度Hと、予め設定された制御用温度Kと、を高低比較判定して開閉装置104の開閉制御を行う第2の制御手段である。本実施形態では、制御用温度Kは、例えば、目標温度Fに所定の値を加算減算して得られる。図9に示すように、制御用温度Kは、制御を行う時間帯に対応して異なる値で設定される。さらに、制御用温度Kは、それぞれの時間帯において実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かによっても異なる値で設定される。例えば、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される午前の時間帯で、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F+1.5℃(例えば、26.5℃)で設定される。午前の時間帯で予想に反して実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F−1.5℃(例えば、23.5℃)で設定される。一方、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される午後の時間帯で、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F+5.0℃(例えば、30℃)で設定される。午後の時間帯で、予想に反してハウス室内の温度変化が上昇の場合には、制御用温度Kは目標温度F+1.0℃(例えば、26℃)で設定される。すなわち、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定されている。
【0032】
予測開閉制御部26は、予測温度Hと制御用温度Kとの比較の前に、実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かを判定する。温度変化の判定は、例えば、1分前から現在までの1分間の平均温度Aと、1分前の温度又は前回開閉装置を開閉制御したときの温度と、の高低比較で行う。なお、温度変化の判定は、現在温度と任意の過去の温度との比較や、上述の予測温度設定部16での判定結果や温度傾斜D等を利用して判定してもよい。そして、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が上昇の場合であって予測温度Hの方が制御用温度Kより高い場合には、開閉装置104を所定幅(例えば、10%)だけ開くように制御する。また、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が上昇の場合であって予測温度Hの方が制御用温度Kより低い場合にはそのまま維持する。一方、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が下降の場合であって予測温度の方が制御用温度より高い場合には開閉装置104をそのまま維持する。また、予測開閉制御部26は、ハウス室内の温度変化が下降の場合であって、予測温度Hの方が制御用温度Kより低い場合には開閉装置104を所定幅(例えば、10%)だけ閉じるように制御する。予測開閉制御部26は、所定幅の開閉制御を行った後には、一定時間(例えば、1分間)の制御停止インターバルを確保する。予測開閉制御部26は、インターバル中は開閉装置の開閉制御は行なわず、そのままの開口状態を保持する。これにより、過剰な開閉動作を防止して適切な開閉幅を保持しながら高精度な温度制御を行なえる。さらに、予測開閉制御部26は、開閉制御を行った際の温度(前回開閉温度)を記憶する。この前回開閉温度は、上述のように温度変化の判定に利用される。
【0033】
なお、開閉制御部18は、図4に示すように、例えば、記憶部40と、演算処理部42と、開閉動作指令部44と、を含むコンピュータ又は電子回路等から構成され、それらにより現在温度開閉制御部24と予測開閉制御部26とを実現している。記憶部40は、例えば、メモリ等からなり、動作プログラム及び、目標温度F、現在温度T、過去温度S、予測温度H、温度域Jの上限値Ja及び下限値Jb、制御用温度K、1分前平均温度A、開閉装置が前回開閉動作した時の温度、開閉装置を開閉させる際の1回の動作で開閉させる所定幅等を記憶する。演算処理部42は、例えば、コンピュータのCPU又は電子回路の組み合わせ等から構成されており、タイマ部14の計時タイミングに従って各制御処理を行うとともに、目標温度へ加算減算することによる温度域Jの上限値及び下限値の計算や制御用温度Kの計算を行う。さらに、演算処理部32は、タイマ部14からの現在時刻がどの時間帯に属しているかの判定、温度変化が上昇か下降かの判定、現在温度Tが温度域J内かどうかの判定、予測温度Hと制御用温度Kとの比較判定等の各判定処理を行い、その判定結果を開閉動作指令部44に送る。なお、本実施形態では、予測温度設定部16と開閉制御部18とを別々の構成で説明したが、それぞれの記憶部30、40を共通させて構成させてもよいし、記憶部30、40及び演算処理部32、42を共通して1つのコンピュータ上で構成することとしてもよい。
【0034】
制御盤20には、例えば、目標温度F、増幅用パラメータE、時間帯の分割、温度域Jの上限値及び下限値、制御用温度K、開閉装置を開閉させる際の1回の動作で開閉させる所定幅等の、制御のための予め設定された各種の設定用パラメータを入力、変更設定できる設定入力部22が設けられている。制御盤20には、これらのパラメータ等を表示して確認できるメータやディスプレイ等が設けられていても良い。
【0035】
なお、本実施形態では、増幅用パラメータE、温度域J、制御用温度K等の各設定値において、時間帯の分割を午前と午後との2つの場合で説明したが、時間帯の分割方法はこれに限らない。例えば、1日を6時間間隔で、すなわち0時から6時、6時から12時、12時から18時、18時から24時(0時)の4つの時間帯に分けたり、朝昼夜の3分割で分けても良く、その他任意の時間帯で分割して設定してもよい。時間帯の分割は、太陽の影響や季節、栽培農作物等の条件に対応して適宜設定すると良い。また、増幅用パラメータE、制御用温度K等の各設定値について、ハウス室内の温度変化が上昇か下降かの2パターンに限らず、多段階に境界を設定して複数のパターンに分けて設定することとしてもよい。また、本実施形態に係る制御システムと雨センサによる開閉制御を組み合わせて使用しても良い。雨センサが降雨を検出した際に、開閉装置を完全閉鎖するように制御すると好適に農作物を栽培できる。
【0036】
次に、本実施形態に係る農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ビニルハウスの温度制御方法について説明する。図2に示すように、まず、温度センサからの測定温度に基づいて予測温度設定部において将来的に予測される予測温度を設定する。本実施形態では、ステップS10では、例えば、10秒間隔ごとに温度センサ12でハウス室内の温度を測定する。ステップ12では、温度センサからの温度データについて10秒ごとに記憶していく。よって、ステップS12では、10秒ごとに現在の温度データと、過去に一定期間遡った(例えば5分間分)の温度データが順次更新される。次に、ステップ14では、現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度が設定される。詳細には、図5に示すように、例えば、ステップS30で、1分前から現在までの1分間の第1平均温度Aを算出する。ステップS32では、5分前から4分前までの1分間の第2平均温度Bを算出する。ステップS34では、5分前から現在までの5分間の平均温度Cを算出する。ステップS36では、温度傾斜Dを(B−A)/30の計算式で算出する。ステップS38では、実際のハウス室内の温度変化が上昇か下降かを判定し、ステップS40では、タイマ部が計った現在の時刻が午前、午後のどちらの時間帯に属するか判定する。ステップS42では、前ステップ(S38、S40)までの温度変化と時間帯の判定結果により、増幅用パラメータEの値が選択される。ステップS44では、演算ルールで定められている計算式C+D×Eで予測温度Hを算出する。
【0037】
予測温度設定部16で予測温度が設定されると開閉制御部18では、図2に示すように、ステップS16で、予測温度Hによる制御に先立って、現在温度開閉制御部24で現在温度Tと目標温度Fに対応して予め定められた温度域Jとの比較判定により開閉制御が行なわれる。具体的には、例えば、図6に示すように、ステップS50では、現在時刻が午前、午後のいずれの時間帯に属しているか判定する。ステップS52で、時間帯に対応して下限値Jbを設定する。例えば、図9に示すように、前ステップS50の判定で、時間帯が午前であれば下限値Jbは目標温度F−3.0℃、時間帯が午後であれば下限値Jbは目標温度F+0.0℃で設定される。ステップS54では、現在温度開閉制御部24は、現在温度Tと下限値Jbとを高低比較する。このステップS54で現在温度Tが下限値Jbより低い場合(T<Jb)には、ステップS56に進み、現在温度開閉制御部24は、開閉装置に連続的に閉め動作するように制御信号を送り、開閉装置を完全に閉じる。なお、既に開閉装置を閉じている場合にはその状態を維持する。ステップS54で現在温度Tが下限値Jbより高い場合(T≧Jb)には、ステップS58に進み、時間帯に対応して上限値Jaを設定する。ステップS58では、例えば、図9に示すように、前ステップS50の判定で、時間帯が午前であれば上限値Jaは目標温度F+3.0℃、時間帯が午後であれば上限値Jaは目標温度F+5.0℃で設定される。ステップS60では、現在温度開閉制御部24は、現在温度Tと上限値Jaとを高低比較する。このステップS60で現在温度Tが上限値Jaより高い場合(T>Ja)には、ステップS62に進み、現在温度開閉制御部24は、開閉装置に連続的に開け動作するように制御信号を送り、開閉装置を完全に開ける。なお、既に開閉装置を完全に開いている場合にはその状態を維持する。ステップS60で現在温度Tが上限値Jaより低い場合(T≦Ja)には、現在温度Tが温度域Jの範囲内であるとして、次の予測開閉制御部26による制御(ステップS18)に進む。
【0038】
図2に示すように、ステップS18では、予測開閉制御部26により、予測温度Hと予め設定された制御用温度Kとを比較判定して、開閉装置の開閉制御を行う。具体的には、図7に示すように、ステップS64では、後述のステップS74で設定される制御停止インターバル中かどうか判定する。インターバル中でない場合には、ステップS66に進み、ハウス室内の温度が上昇か下降かを判定する。インターバル中の場合には、ステップS84で設定時間が経過しているか否かを判定し、時間が経過してなければスタートに戻り、時間が経過している場合には、ステップS86でインターバルの設定が解除される。ステップS66で温度変化が上昇の場合には、ステップS68に進み、上述のステップS50(図6参照)での時間帯の判定に基づいて、制御用温度Kを設定する。例えば、時間帯が午前の場合には、制御用温度Kは目標温度F+1.5℃で設定され、時間帯が午後の場合には、制御用温度Kは目標温度F+5.0℃で設定される。ステップS70では、予測開閉制御部26は、上述のステップS14で設定された予測温度Hと、前ステップS68で設定された制御用温度Kと、を高低比較する。予測温度Hが制御用温度Kよりも高い場合には、ステップS72に進み、開閉装置を所定幅(例えば、10%)だけ開くように制御する。なお、既に開閉装置が全開の場合にはそのまま維持する。ステップS74では、一定時間(例えば、1分間)の制御停止インターバル時間が設定される。ステップS70で、予測温度Tが制御用温度Kより低い場合には、ステップ76に進み、開閉装置を開閉動作させず現状を維持する。一方、前述のステップS66において、ハウス室内の温度変化が下降の場合には、ステップS78に進み、上述のステップS50(図6参照)での時間帯の判定に基づいて、制御用温度Kを設定する。例えば、時間帯が午前の場合には、制御用温度Kは目標温度−1.5℃で設定され、時間帯が午前の場合には、制御用温度Kは目標温度+1.0℃で設定される。ステップS80では、予測開閉制御部26は、上述のステップS14で設定された予測温度Hと、前ステップS78で設定された制御用温度Kと、を高低比較する。予測温度Hが制御用温度Kよりも高い場合には、ステップS82に進み、開閉装置を所定幅(例えば、10%)だけ閉じるように制御する。その後、ステップS74に進み、一定時間(例えば、1分間)の制御停止時間が設定される。上述のステップS80で、予測温度Tが制御用温度Kより低い場合には、開閉装置を開閉動作させず現状を維持する。このように本実施形態では、所定時間周期で、温度測定ステップ(S10)、温度記憶ステップ(S12)、予測温度設定ステップ(S14)、現在温度開閉制御ステップ(S16)、予測温度開閉制御ステップ(S18)、を含む制御を繰返しながら開閉装置の開閉制御を行う。このようにして、常時予測温度を設定しつつ、現在温度及び予測温度を参照して開閉装置を開閉制御しながら大容量空間であるハウス室内の温度制御を高精度に行うことができる。
【実施例】
【0039】
上記実施形態に係る制御システム10を農業用ハウスの開閉装置の制御システムとして設置し、上記温度制御方法により開閉装置の開閉制御を行った。図11のグラフは、2010年2月20日に測定を行った結果を示すグラフである。目標温度は25℃に設定されている。図11では、上段に9:00から11:00までの時間帯のグラフを示し、下段に16:00から17:30まで時間帯のグラフを示す。また、比較例として、別の日(2010年1月27日)に、背景技術で説明したような従来の開閉装置の制御方法、すなわち温度センサによる測定温度と設定温度との偏差値により開閉制御させる方法を行なった結果を、図12のグラフに示している。なお、図12では、上段に9:00から11:00までの時間帯のグラフを示し、下段に16:00から17:30まで時間帯のグラフを示す。
【0040】
本実施例と比較例とを比較すると、図11の本実施例のグラフでは、開閉装置は、ハウス室内の温度に応じて段階的に開閉幅を調整しながら制御されているのが分かる。温度変化を見ると、午前9:20〜10:00までの時間帯では、ハウス室内の温度が目標温度に近傍で維持されている。特に、9:50過ぎぐらいまではハウス室内の温度が目標温度を超えることなく目標温度に近い略一定な温度で高精度な制御を実現している。また、午後には16:30〜17:00ぐらいまでハウス室内を目標温度に近い温度で制御しており、特に16:50から17:10の時間帯は、目標温度に近似した温度でハウス室内の温度を制御しているのが分かる。一方、図12の従来のグラフでは、9:30過ぎぐらいでハウス室内の温度が目標温度より高くなって開閉装置を開く制御を行っているが、すでに目標温度を越えて開閉タイミングが遅れた制御となっている。さらに、10:00〜10:40の時間帯では、開閉装置は短時間で全開、完全閉鎖を繰返した大きな開閉動作を行っている。さらに、ハウス室内の温度変化も目標温度に対して短時間で上下変動しているのが分かる。このように、本実施例では、従来のものと比較してハウス室内の温度を高精度に制御しており、制御性に優れているのが分かる。
【0041】
以上説明した本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の農業用ハウスの開閉装置用制御システム及び開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法は、野菜、果物、花卉等その他の農作物を栽培する際に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
10 制御システム
12 温度センサ
14 タイマ部
16 予測温度設定部
18 開閉制御部
24 現在温度開閉制御部
26 予測開閉制御部
100 農業用ビニルハウス
104 開閉装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウスの屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置を自動制御する制御システムであり、
ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサと、
タイマ部と、
タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに温度センサで測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度を設定する予測温度設定部と、
タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部で設定した予測温度と予め設定した目標温度とを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部と、を備えたことを特徴とする農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項2】
タイマ部は、時刻を計る時計機能を有し、
予測温度設定部は、制御を行う時間帯に対応して予め定められた予測温度演算ルールが設定されており、
制御時の時刻が属する時間帯に対応して予測温度演算ルールに従って現在及び過去温度から予測温度を算出する請求項1記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項3】
予測温度演算ルールは、現在及び過去温度から算出される時間当たりの温度傾斜に掛け算させる増幅用パラメータを含み、
増幅用パラメータは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、大きな数値で設定され、
ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、0又は小さな数値で設定され、
ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0又は小さな数値で設定され、
ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、大きな数値で設定される請求項2記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項4】
予測開閉制御部は、予測温度と、時間帯に対応して目標温度を補正した制御用温度と、を比較して、開閉装置を所定幅だけ開閉制御させるようになっており、
制御用温度は、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、
ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定された請求項1ないし3のいずれかに記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項5】
予測開閉制御部では目標温度に応じて制御を行なわせる温度域が予め設定され、
予測開閉制御部による制御に先立って現在温度と該温度域とを比較判定し、現在温度が該温度域の上限値よりも高い場合には開閉装置を全開させるように制御し、現在温度が該温度域の下限値よりも低い場合には開閉装置を完全閉鎖させるように制御する現在温度開閉制御部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項6】
農業用ハウスにおいて屋根の一部を開閉する開閉装置を制御システムにより自動開閉制御してハウス室内の温度調整を行う温度制御方法であり、
ハウス室内に配置した温度センサにより温度を測定する温度測定ステップと、
温度測定ステップにて温度センサで測定した現在の温度と一定時間過去の温度を記憶する温度記憶ステップと、
温度記憶ステップで記憶した現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度を設定する予測温度設定ステップと、
予測温度設定ステップで設定した予測温度と予め設定された目標温度とを判定要素としてハウスの開閉装置の開閉制御を行う予測開閉制御ステップと、を含む制御を所定時間間隔ごとに繰返すことを特徴とする開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法。
【請求項1】
農業用ハウスの屋根の一部を開閉して該ハウス室内の換気及び温度調整を行わせる開閉装置を自動制御する制御システムであり、
ハウス室内に配置されハウス室内の温度を測定する温度センサと、
タイマ部と、
タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに温度センサで測定される現在温度と一定時間遡った過去温度とに基づいて将来的に予測される予測温度を設定する予測温度設定部と、
タイマ部が計時する所定時間間隔ごとに予測温度設定部で設定した予測温度と予め設定した目標温度とを判定要素として開閉装置を所定幅だけ開閉制御する予測開閉制御部と、を備えたことを特徴とする農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項2】
タイマ部は、時刻を計る時計機能を有し、
予測温度設定部は、制御を行う時間帯に対応して予め定められた予測温度演算ルールが設定されており、
制御時の時刻が属する時間帯に対応して予測温度演算ルールに従って現在及び過去温度から予測温度を算出する請求項1記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項3】
予測温度演算ルールは、現在及び過去温度から算出される時間当たりの温度傾斜に掛け算させる増幅用パラメータを含み、
増幅用パラメータは、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、大きな数値で設定され、
ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、0又は小さな数値で設定され、
ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が上昇の場合には、0又は小さな数値で設定され、
ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯であって、実際のハウス室内の温度変化が下降の場合には、大きな数値で設定される請求項2記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項4】
予測開閉制御部は、予測温度と、時間帯に対応して目標温度を補正した制御用温度と、を比較して、開閉装置を所定幅だけ開閉制御させるようになっており、
制御用温度は、ハウス室内の温度が上昇傾向に予想される時間帯では開閉装置を開き制御させやすいように比較的低い温度で設定され、
ハウス室内の温度が下降傾向に予想される時間帯では開閉装置を閉鎖制御させやすいように比較的高い温度で設定された請求項1ないし3のいずれかに記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項5】
予測開閉制御部では目標温度に応じて制御を行なわせる温度域が予め設定され、
予測開閉制御部による制御に先立って現在温度と該温度域とを比較判定し、現在温度が該温度域の上限値よりも高い場合には開閉装置を全開させるように制御し、現在温度が該温度域の下限値よりも低い場合には開閉装置を完全閉鎖させるように制御する現在温度開閉制御部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の農業用ハウスの開閉装置用制御システム。
【請求項6】
農業用ハウスにおいて屋根の一部を開閉する開閉装置を制御システムにより自動開閉制御してハウス室内の温度調整を行う温度制御方法であり、
ハウス室内に配置した温度センサにより温度を測定する温度測定ステップと、
温度測定ステップにて温度センサで測定した現在の温度と一定時間過去の温度を記憶する温度記憶ステップと、
温度記憶ステップで記憶した現在及び過去の温度に基づいて将来的な予測温度を設定する予測温度設定ステップと、
予測温度設定ステップで設定した予測温度と予め設定された目標温度とを判定要素としてハウスの開閉装置の開閉制御を行う予測開閉制御ステップと、を含む制御を所定時間間隔ごとに繰返すことを特徴とする開閉装置を利用した農業用ハウスの温度制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−205948(P2011−205948A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76072(P2010−76072)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、九州経済産業局、地域イノベーション創出研究開発事業「予測制御と空調システムを用いる農業用環境制御システムの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(597008773)テイラーズ熊本株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、九州経済産業局、地域イノベーション創出研究開発事業「予測制御と空調システムを用いる農業用環境制御システムの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(597008773)テイラーズ熊本株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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