説明

農業用ハウス資材

【課題】保温性、遮熱性および吸湿性を備えているため、結露が防止され、かつ透光性や耐久性に優れた農業用ハウス内資材を提供する。
【解決手段】本発明の農業用ハウス資材は、繊維布帛の片面側にコーティング樹脂を介して中空微粒子が保持されており、繊維布帛の少なくとも片面側の表面部に中空微粒子が付着していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内の環境を改善するための農業用ハウス資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用ハウス内の環境を改善することを目的として、冬季には暖房機、夏季にはクーラーや細霧冷房機等を用いて温度管理を行っている。しかしながら、近年、暖房機等に使用される燃料が高騰している。従って、農業用ハウス内部に配されて、冬季における保温および夏季における遮熱温湿を行い、該ハウス内の温度を調整するための、高い保温性および遮熱性を有するフィルムや不織布などが提案されている。
【0003】
農業用ハウス内において、保温や遮熱温室を行うための手段のひとつに、カーテン資材を使用することが挙げられる。このようなカーテン資材としては、ハウス内での結露防止の観点から、織り布や不織布が使用されている。
【0004】
しかしながら、不織布等の繊維からなるカーテン資材は透光性が低いという傾向がある。そのため、作物に日光を十分に当てるためには、昼間はカーテンを開くという煩雑な作業が必要である。また、不織布等の繊維資材は、通気性に優れ表面積が広いため、結露を防止する観点からは好ましいものであるが、通気性が良すぎるために保温性や遮熱性に劣るという欠点がある。
【0005】
一方、フィルムからなるカーテン資材は透光性が高く、冬季においてもカーテンの開閉作業が不要である。加えて、通気性が高すぎないため、保温性や遮熱性が高いという利点がある。しかしながら、フィルムからなるカーテン資材は、ハウス内の水分を吸収することが困難であり、結露しやすいという問題がある。そのため、作物へ水滴が適下することにより、作物に病気が発生したり害虫が発生したりするという不具合が生じる場合があった。また、フィルムからなる資材は水を透さないため、カーテン資材の内面に水が凝縮し水溜りを生じる、いわゆる金魚鉢現象が起こることがあるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、特許文献1には、微細孔を多数有するフィルムが提案されている。このフィルムは、透光性を保持したまま、透湿性(通気性)、防塵性、防滴付着性を具備しており、加えて、保温性や遮熱性、防水防虫性を有している。しかしながら、特許文献1のフィルムを無加温のハウスに用いた場合は、気温の低下に伴う湿度の上昇に起因して、透湿性、保温性が低下し、結果として結露が生じて水滴が適下しやすくなるという問題があった。一方、暖房機を備えているハウスにて特許文献1に記載されたフィルムを用いると、暖房機を用いて温度管理をおこなうことで結露による水滴の落下を防止することができる。しかしながら、この場合には、フィルム中の微細孔に存在する水分も気化してしまうため、結果として通気性が向上しすぎ、かえって保温性が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−312443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、農業用ハウス内の環境を改善するために、保温性、遮熱性および吸湿性を備えているため、結露が防止され、かつ透光性や耐久性に優れた農業用ハウス資材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
(1)繊維布帛の片面側にコーティング樹脂を介して中空微粒子が保持されている農業用ハウス資材であって、繊維布帛の少なくとも片面側の表面部に中空微粒子が付着していることを特徴とする農業用ハウス資材。
(2)繊維布帛を構成する繊維間の空隙に中空微粒子が存在していることを特徴とする(1)の農業用ハウス資材。
(3)コーティング樹脂が発泡されていることを特徴とする(1)または(2)の農業用ハウス資材。
(4)中空微粒子が熱膨張性を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの農業用ハウス資材。
(5)10kPa荷重時の厚みが250〜600μmであり、通気度が0cc/cm/secを超え15cc/cm/sec以下であり、保水率が100wt%以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの農業用ハウス資材。
(6)繊維布帛がバインダー成分を含有する長繊維不織布であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの農業用ハウス資材。
(7)繊維布帛の厚みが200〜600μm、目付けが30〜100g/m、見かけ密度が0.12〜0.30g/ccであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの農業用ハウス資材。
(8)(1)〜(7)いずれかの農業用ハウス資材を使用するに際し、繊維布帛における中空微粒子が保持されている面と反対側の面を、作物側に配して使用することを特徴とする農業用ハウス資材の使用方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の農業用ハウス資材は、繊維布帛を用いることにより、ハウス内の余分な湿気(水分)を吸収し結露を防止することができるため、作物等の水滴落下を防止することができる。繊維布帛の片面側に中空微粒子が保持されているため、資材全体として十分な厚みを有することができ、加えて保温性や遮熱性に優れるため、冷暖房費の低減を図ることができるという効果を奏することができる。また、コーティング樹脂を用いているため通気性を低減することができ、保温性や遮熱性がより向上され、かつ紫外線による劣化を抑制することができる。そして、コーティング樹脂と中空微粒子を併用することにより、摩耗による繊維布帛の破れを抑制することができ、耐久性を向上させることができる。従って、作物の生育環境を改善すること、すなわち、作物の病気や害虫発生を低減させ得る農業用ハウス資材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の農業用ハウス資材において、繊維布帛の片面側にコーティング樹脂を介して中空微粒子が保持されている面を示す概略図である。
【図2】本発明の農業用ハウス資材において、繊維布帛の片面側にコーティング樹脂を介して中空微粒子が保持されている面の反対面を示す概略図である。
【図3】本発明の農業用ハウス資材の断面図の概略である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0013】
本発明の農業用ハウス資材(以下、「資材」と略称する場合がある)は、繊維布帛の片面側にコーティング樹脂を介して中空微粒子が保持されている農業用ハウス資材であって、繊維布帛の少なくとも片面側の表面部に中空微粒子が付着している。
【0014】
本発明の農業用ハウス資材の構成について、図1〜図3を用いて詳しく述べる。
【0015】
図1は、本発明の資材において、繊維布帛1の片面側にコーティング樹脂3を介して中空微粒子2が保持されている面を示している。図2は、図1の面の反対面(裏面)を示している。図3は、農業用ハウス資材の断面図を示している。図1に示されるように、中空微粒子2同士は重なりあって繊維表面に付着していてもよい。また、図3に示されるように、繊維布帛1の片面側および繊維布帛1内部の繊維間空隙中に、中空微粒子2が保持されていてもよい。
【0016】
図2および図3に示すように、コーティング樹脂3は、繊維布帛1の裏面にまで染み出す(いわゆる、「裏抜け」という現象である)ものではない。コーティング樹脂3が裏抜けしてしまうと、裏面における繊維間の空隙が、コーティング樹脂によって埋められてしまうことにより、十分な空隙を保持しにくくなる。その結果、農業用ハウス内の余分な水分を保持する性能に劣る傾向となる。また、中空微粒子2も繊維布帛1の裏面の表面にまで到達するものではない。
【0017】
繊維布帛は、ハウス内の余分な水分を繊維間に保持したり、繊維自身に吸収したり、あるいは、繊維と中空微粒子の間や、中空微粒子同士の間に保持したりすることにより、結露による作物への水滴落下を防止する役割を担う。繊維布帛を構成する繊維は特に限定されず、ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂などからなる合成繊維や、綿などからなる天然繊維、レーヨンなどからなる再生繊維などが挙げられる。なかでも、コスト及び加工適性の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0018】
繊維布帛の厚みは、200〜600μmであることが好ましく、200〜400μmであることがより好ましい。繊維布帛の厚みが200μm未満であると、コーティング樹脂が布帛の反対面まで染み出してしまい、中空微粒子を繊維布帛の片面側に保持させることができない場合がある。一方、繊維布帛の厚みが600μmを超えると、得られる資材の収束性が低下し、取り扱い性に劣る傾向となる場合がある。
【0019】
繊維布帛の目付けは、30〜100g/mであることが好ましく、40〜70g/mであることがより好ましい。繊維布帛の目付けが30g/m未満であると、構成繊維が少なくなり、コーティング樹脂が裏面まで染み出してしまい、中空微粒子を繊維布帛の片面側に保持させることができない場合がある。加えて、機械特性が低下したり、繊維布帛上のコーティング樹脂に斑が生じたりする場合がある。一方、100g/mを超えると、コストアップとなったり、得られる資材が重くなりすぎ、実使用に際して不具合(例えば、資材を開閉するためのモーターに負荷がかかりすぎたりするなど)が生じる場合がある。加えて、繊維布帛の構成繊維量が多くなり、透光率が低下する場合がある。
【0020】
繊維布帛の見かけ密度は、0.12〜0.30g/ccであることが好ましい。見掛け密度が0.12g/cc未満であると、繊維布帛を構成する繊維間同士の空隙が多くなり、コーティング樹脂が裏面まで染み出してしまい、中空微粒子を、繊維布帛の片面側に保持させることができない場合がある。一方、0.30g/cc超えると、繊維間の空隙が小さすぎ、また厚みが薄くなりすぎ、コーティング樹脂や、中空微粒子を繊維間空隙に保持させることができない場合がある。さらに、見かけ密度と目付けのいずれもが低い場合には、コーティング樹脂の裏抜け問題がいっそう顕著になる。
【0021】
繊維布帛を構成する繊維の断面形状は、丸断面であってもよいし、異型断面であってもよく、特に限定されないが、扁平形状などの嵩高になりにくい形状であることが好ましい。
【0022】
繊維布帛を構成する繊維の繊度は、2〜10デシテックス程度がよい。
【0023】
繊維布帛の形態は、織物、編物または不織布であり、本発明の効果を発現させるものであれば特に限定されないが、程よい繊維間空隙を保持し得ることから、長繊維不織布であることが好ましい。
【0024】
繊維布帛が長繊維不織布である場合、強度の向上や耐久性を考慮して、バインダー成分を含んでいることが好ましい。バインダー成分を含んでいない場合は、不織布の強度が低下するため、長繊維不織布を作成する際の圧接工程における温度や圧力を高くしたり、構成繊維を太くしたりする必要がある。しかしながら、圧接工程における温度や圧力を高くすると繊維間空隙が少なくなり、コーティング樹脂が不織布に含浸されにくくなったり、保温性が低下したりする場合がある。このような問題を解決するために、圧力を低くすると長繊維不織布の強度が低下し、コーティング樹脂を形成する際のコーティング工程における工程通過性が低下する場合がある。一方、構成繊維を太くすると長繊維不織布を構成する繊維間同士の空隙が大きくなり、コーティング樹脂の裏抜けが発現するため、中空微粒子を繊維布帛の片面側に保持させることができない場合がある。
【0025】
ここで、長繊維不織布に含まれるバインダー成分とは、必要とする繊維布帛の機械的強度が達成されれば特に限定されないが、繊維を構成する成分のうち熱により溶融または軟化して熱接着成分として機能する低融点成分が挙げられる。具体的には、低融点成分と高融点成分とからなる複合繊維や、低融点成分の繊維を高融点成分の繊維からなる混繊が挙げられる。また、バインダー成分としては、いわゆる樹脂エマルジョンなどが挙げられる。
【0026】
繊維布帛には、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、艶消剤、顔料、防炎剤、消臭剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、抗菌剤、酸化防止剤、親水剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0027】
中空微粒子とは、外核と中空な中心部分からなる微粒子である。中空微粒子を繊維布帛の片面側に保持させることにより、得られる資材に十分な厚みを付与することができ、加えて、中空微粒子の内部に含有される気体により断熱効果が得られるため、保温性や遮熱性を向上させることができる。
【0028】
中空微粒子の材質は、特に限定されないが、アクリル樹脂がよい。特に、コーティング樹脂と同系である樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
中空微粒子のサイズは、特に限定されないが、粒径が30〜150μmの範囲であることが好ましく、50〜120μmの範囲がより好ましい。得られる資材が保持する空隙の割合や大きさを考慮すると、中空微粒子の粒径は、繊維布帛を構成する繊維の径よりも大きいことが好ましい。
【0030】
中空微粒子の中空率は、特に限定されないが、20〜80%であることが好ましい。
【0031】
繊維布帛に保持される中空微粒子の量は、コーティング樹脂と中空微粒子との質量比で、(コーティング樹脂)/(中空微粒子)=40/60〜95/5であることが好ましい。コーティング樹脂の割合が40質量%未満であると、得られる資材において通気性の抑制が困難になり、加えて、中空微粒子を、繊維布帛の片面側に保持させることができない場合がある。一方、コーティング樹脂の割合が95質量%を超えると、中空微粒子が少なくなり過ぎるため、中空微粒子間の空隙が小さくなり、断熱効果に劣る場合がある。
【0032】
中空微粒子を、コーティング樹脂を介して繊維布帛の片面側に付着させる方法は、特に限定されず、コーティング樹脂を繊維布帛の片面に塗布した後、該コーティング樹脂表面に中空微粒子を付着させる方法、コーティング樹脂に中空微粒子を混練させて得られた混練物を、繊維布帛の片面に塗布する方法などが挙げられる。
【0033】
中空微粒子は熱膨張性を有するものであることが好ましい。熱膨張性を有することにより、微粒子中の気体量が増加するため、断熱効果をより向上させることができる。中空微粒子を熱膨張させる手段としては、特に限定されず、通常の加熱手段などが挙げられる。
【0034】
本発明においては、コーティング樹脂を用いているため通気性を低減することができ、保温性や遮熱性が向上することができる。加えて、紫外線による劣化を抑制することができる。また、コーティング樹脂を用いることにより、中空微粒子を繊維布帛に保持させることができ、つまり、コーティング樹脂と中空微粒子を併用することができるため、摩耗による繊維布帛の破れを抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0035】
コーティング樹脂としては、本発明の効果を達成するものであれば、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0036】
コーティング樹脂は、保温性や遮熱性の向上の観点から、発泡されていることが好ましい。その発泡倍率は、体積比で、1.5〜4倍であることが好ましく、2〜3倍であることがより好ましい。発泡倍率を1.5倍以上とすることにより、断熱効果をより向上させることができる。一方、発泡倍率を4倍以下とすることにより、コーティング樹脂の表面状態を安定させること、つまり、コーティング樹脂を介して、中空微粒子を安定して繊維布帛の片面側に保持させることができる。
【0037】
なお、中空微粒子が熱膨張性を有するものである場合には、コーティング樹脂が発泡されていることが好ましい。発泡されていないコーティング樹脂に熱膨張性を有する中空微粒子を含有させると、コーティング樹脂中に、中空微粒子を安定して含有させることができず、得られる資材の表面状態が悪化する場合がある。
【0038】
本発明の農業用ハウス資材は、10kPa荷重時の厚みが250〜600μmであることが好ましく、300〜500μmであることがより好ましい。厚みが250μm未満であると、断熱効果が十分ではない場合がある。一方、600μmを超えると、得られる資材の収束性が低下し、ズレや歪みが生じるため非常に嵩高いものとなる。そして、該資材を収束後に拡げて使用すると、作物に日光が十分に当たらず、作物の生育に影響を及ぼす場合がある。
【0039】
本発明の農業用ハウス資材は、その通気度が0cc/cm/secを超え15cc/cm/sec以下であることが好ましく、2〜12cc/cm/secであることがより好ましい。通気度が0cc/cm/secであると余分な水分の蒸散が不可能となるため、ハウス内の温度低下に伴う結露により、作物に病気が発現するなどの悪影響がある場合がある。一方、15cc/cm/secを超えると資材の内外における温度差により生じる空気移動に起因して、断熱効果が低下してしまう場合がある。なお、本発明においては、コーティング樹脂を用いること、加えて、この樹脂を介して中空微粒子を布帛に付着させていることにより、通気度を上記の範囲内に制御することができる。
【0040】
本発明の農業用ハウス資材は、その保水率が100wt%以上であることが好ましく、120wt%以上であることがより好ましい。保水率が100wt%未満であると、蒸散により発生する余分な水分を十分に保持できず、作物へ水滴が滴下することにより、病気が発生したり害虫が発生したりする場合がある。なお、本発明において、繊維布帛を構成する繊維間、繊維布帛を構成する繊維と中空微粒子の間、または中空微粒子間にて形成される多数の空隙に、水分を十分に保持することができる。
【0041】
本発明の農業用ハウス資材は、展張されて使用に付されるものである。実使用に際して、中空微粒子がコーティング樹脂を介して繊維布帛が保持されている面と反対側の面が作物側となるように配されて、使用に供されることにより、蒸散によって発生する水分を、効率的に繊維布帛の有する空隙間に保持しやすいという利点がある。また、コーティング樹脂面側を外側にして配することにより、資材の耐久性が向上するという利点がある。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。なお、実施例における物性評価は以下の通りである。
【0043】
(1)目付け(g/m
試料を10cm×10cmのサイズに裁断し、天秤にて秤量した。1mあたりの質量に換算し目付けとした。なお、測定は10回行い、その平均値を採用した。
【0044】
(2)厚み(μm)
JIS L 1096に従って測定した。測定時の荷重を10kPaとした。なお、測定は10回行い、その平均値を採用した。
【0045】
(3)見かけ密度(g/cc)
上記(1)および(2)で求められた目付けと厚みを用いて、下記式にて算出した。
見かけ密度(g/cc)=(目付け)/(厚み)
【0046】
(4)通気度(cc/cm/sec)
得られた資材を15cm×15cmのサイズに裁断して試料とし、JIS L 1096の8.27.1Aに従って測定した。なお、測定は5回行い、その平均値を通気度とした。
【0047】
(5)保水率(wt%)
得られた資材1mあたり試料を3枚裁断し(サイズ:10cm×10cm)、標準状態での質量を測定した(m1)。これら3枚の試料を、室温で1分以上水中に浸漬した。試料を取り出して、1分以上吊り下げて余分な水を滴下させ、質量を測定した(m2)。下記式にて保水率を算出し、その平均値を採用した。
【0048】
保水率(wt%)={(m2−m1)/m1}×100
上記式中、m1は標準状態での質量(g)を示し、m2は水を滴下させた後の質量(g)を示す。
【0049】
実施例1
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:3.9デシテックス、繊維断面:丸断面)と、共重合ポリエステル繊維(繊度:2.8デシテックス、丸断面)から構成されるスパンボンド不織布(目付け:50g/m)を繊維布帛として用いた。両繊維の混繊率は、質量比で、(ポリエチレンテレフタレート繊維):(共重合ポリエステル繊維)=70:30であった。繊維布帛の厚みは282μmであり、見かけ密度は0.177g/ccであった。
【0050】
製泡剤の付与により、発泡させて体積を2倍としたコーティング樹脂としてのアクリル樹脂と中空微粒子(松本油脂製薬社製、「マツモトマイクロスフィアーF F−80」)を、65/35の質量比で混練し、上記の繊維布帛にコーティングし、本発明の農業用ハウス資材を得た。該資材の厚みは360μmであり、通気度は10cc/cm/secであり、保水率は190質量%であった。
【0051】
実施例2
芯部にポリエチレンテレフタレートが配され、鞘部に共重合ポリエステルが配され、芯部と鞘部の質量比が、芯部/鞘部=60/40である芯鞘型繊維(繊度:4.6デシテックス、繊維断面:6葉型)で構成されるスパンボンド不織布(目付け:60g/m)を繊維布帛として用いた以外は、実施例と同様にして農業用ハウス資材を得た。繊維布帛の厚みは304μmであり、見かけ密度は0.197g/ccであった。資材の厚みは375μmであり、通気度は8cc/cm/secであり、保水率は180wt%であった。
【0052】
実施例3
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:3.3デシテックス、丸断面)から構成され、バインダー成分としてアクリル系エマルジョンを、固形分で13質量%の割合で含浸付与させたスパンボンド不織布(目付け:55g/m)を繊維布帛として用い、コーティング樹脂であるアクリル樹脂を2.5倍に発泡させた以外は、実施例1と同様にして、農業用ハウス資材を得た。繊維布帛の厚みは228μmであり、見かけ密度は0.241g/ccであった。該資材の厚みは334μmであり、通気度は11cc/cm/secあり、保水率は150wt%であった。
【0053】
上述のように、実施例1〜3にて得られた本発明の農業用ハウス資材は、保温性、遮熱性および吸湿性を備えているため、結露が防止され、かつ透光性や耐久性に優れていた。
【0054】
比較例1
農業用ハウス資材として市販されているポリオレフィン系フィルム(厚み:75μm)を用いて、保水率および通気度の測定をおこなった。通気度は、ほぼ0cc/cm/secであった。保水率は30wt%であったが、これは表面張力によりフィルム表面に残存している水によって算出された値であり、資材中に水が吸水されているものではなかった。
【0055】
(6)保温性
実施例1で得られた資材と、比較例1の資材を用いて、保温性の評価をおこなった。保温性評価は、以下の手法によりおこなった。
【0056】
得られた資材を試料とし、該試料を放射率が既知である2種類の板、すなわち、板Aおよび板Bの上に置いた状態で、放射率測定器(ジャパンセンサー社製、「TSS−5X」)を用いて、試料と板の放射率を、それぞれの板につき5箇所で測定した。測定値としては5箇所の平均値を採用した。
次いで、以下の式により、透過率τを求めた。
−τ(1−X)=Y−τ(1−X
ここで、Yは測定により求められた板Aの放射率を示し、Yは測定により求められた板Bの放射率を示す。また、Xは既知の板Aの放射率を示し、Xは既知の板Bの放射率を示す。
【0057】
そして、得られたτを以下の式に代入して、保温率を求めた。
(保温率)(%)=(1−τ)×100
【0058】
実施例1で得られた資材の保温率は85%であり、一方、比較例1にて用いられた資材の保温率は71%であった。つまり、本発明の農業用ハウス資材は、従来の資材と比較して、保温性に優れていることが明らかである。
【符号の説明】
【0059】
1 繊維布帛を構成する繊維
2 中空微粒子
3 コーティング樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布帛の片面側にコーティング樹脂を介して中空微粒子が保持されている農業用ハウス資材であって、繊維布帛の少なくとも片面側の表面部に中空微粒子が付着していることを特徴とする農業用ハウス資材。
【請求項2】
繊維布帛を構成する繊維間の空隙に中空微粒子が存在していることを特徴とする請求項1に記載の農業用ハウス資材。
【請求項3】
コーティング樹脂が発泡されていることを特徴とする請求項1または2に記載の農業用ハウス資材。
【請求項4】
中空微粒子が熱膨張性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農業用ハウス資材。
【請求項5】
10kPa荷重時の厚みが250〜600μmであり、通気度が0cc/cm/secを超え15cc/cm/sec以下であり、保水率が100wt%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の農業用ハウス資材。
【請求項6】
繊維布帛がバインダー成分を含有する長繊維不織布であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の農業用ハウス資材。
【請求項7】
繊維布帛の厚みが200〜600μm、目付けが30〜100g/m、見かけ密度が0.12〜0.30g/ccであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の農業用ハウス資材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の農業用ハウス資材を使用するに際し、繊維布帛における中空微粒子が保持されている面と反対側の面を、作物側に配して使用することを特徴とする農業用ハウス資材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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