説明

農業用フィルムの穴開け加工方法

【課題】切り取られるべき不要なフィルム片が、フィルム走行中に不意にちぎれることがなく、確実に不要なフィルム片を回収することができる農業用フィルムの穴開け加工方法を提供すること。
【解決手段】走行するフィルム1にレーザービームLBを照射し、所定の穴形状となるように前記レーザービームLBを走査することにより、前記フィルム1の走行方向に沿って連続して穴開け加工を行う農業用フィルムの穴開け加工方法であって、前記レーザービームLBを、前記フィルム1に形成される加工ラインの出発点と終了点とを一致させず、該出発点と終了点との間隔を2mm以下になるように走査した後、前記加工ラインによって形成される不要なフィルム片を引きちぎって除去することを特徴とする農業用フィルムの穴開け加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムの穴開け加工方法に関し、詳しくは、切り取られるべき不要なフィルム片が、フィルム走行中に不意にちぎれることがなく、確実に不要なフィルム片を回収することができる農業用フィルムの穴開け加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチフィルム等の農業用フィルムには、定植穴、水抜き穴、ガス抜き穴等の穴が開設されているものがある(特許文献1)。
【0003】
従来、このような穴をフィルムに加工する穴開け加工は、加工する穴と同一形状の加工刃を用いて機械的に打ち抜き加工するものが一般的である。しかし、打ち抜き加工では、加工できる穴の形状、大きさが加工刃のものに限定されてしまうため、穴の形状、大きさを自由に変えられない、複雑な形状に加工することが難しい等の欠点を有している。
【0004】
このため、本発明者は、フィルムにレーザービームを照射することにより穴開けを行うレーザー加工による方法を試みている。レーザー加工によれば、穴の形状、大きさを自由に変えることができ、複雑な形状の加工も容易である。
【特許文献1】特開平10−98951号公報(フィルムに植生穴を有する点)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルムに対してレーザービームを照射して穴開け加工を行う場合、生産性を考慮して、所定速度で走行するフィルムにレーザービームを照射することによって、その走行中にフィルムの走行方向に沿って連続して穴開け加工を行うことが望まれる。
【0006】
通常、レーザー加工は、例えば丸穴を開ける場合、レーザービームをフィルム上に円が形成されるように走査しながら行われる。このとき、図5に示すように、レーザービームの出発点100Aと終了点100Bとを一致させることにより、レーザービームによってフィルムが加工ライン100によって円形状に切り取られることにより丸穴が加工されることが理想的である。
【0007】
しかしながら、レーザービームは、径がμオーダーのスポット光であるため、走行するフィルム上においてレーザービームの出発点100Aと終了点100Bとが完全に一致するように走査させることが難しい。これは、レーザービームの走査機構自体は機械的な精度を確保することができても、走行中のフィルムは、フィルムの伸び、走行時のスリップや蛇行、フィルムのバタつき等の発生によって、レーザービームによって加工される加工ラインがフィルム表面で常に同一の軌跡を描くとは限らないことが原因であると考えられる。
【0008】
このため、製造されるフィルムには、フィルム片がきれいに切り取られて丸穴が開口する場所と、フィルム片が完全に切り取られずにかろうじて繋がったままとなる場所とが混在してしまう問題があった。切り取られずに繋がったままのフィルム片が発生すると、いつどの段階でちぎれるかわからないので、フィルム片の回収手段を設けることも困難となるばかりでなく、走行途中で不意にちぎれてしまうと、フィルムの搬送機構に絡まったり、ゴミとしてフィルム本体に付着したり、周囲に散乱したりする等の問題を発生させてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、切り取られるべき不要なフィルム片が、フィルム走行中に不意にちぎれることがなく、確実に不要なフィルム片を回収することができる農業用フィルムの穴開け加工方法を提供することを課題とする。
【0010】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
(請求項1)
走行するフィルムにレーザービームを照射し、所定の穴形状となるように前記レーザービームを走査することにより、前記フィルムの走行方向に沿って連続して穴開け加工を行う農業用フィルムの穴開け加工方法であって、
前記レーザービームを、前記フィルムに形成される加工ラインの出発点と終了点とを一致させず、該出発点と終了点との間隔を2mm以下になるように走査した後、前記加工ラインによって形成される不要なフィルム片を引きちぎって除去することを特徴とする農業用フィルムの穴開け加工方法。
【0013】
(請求項2)
前記レーザービームは、出力10〜100WのCOガスレーザーによるレーザービームであることを特徴とする請求項1記載の農業用フィルムの穴開け加工方法。
【0014】
(請求項3)
前記レーザービームの走査速度は、100〜1000mm/secであることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用フィルムの穴開け加工方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、切り取られるべき不要なフィルム片が、フィルム走行中に不意にちぎれることがなく、確実に不要なフィルム片を回収することができる農業用フィルムの穴開け加工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る農業用フィルムの穴開け加工方法を説明するための概略図である。
【0018】
図中、1はフィルムであり、図示しない搬送機構によって、図示右から左方向に向けて所定速度で走行している。
【0019】
2はレーザー加工装置であり、走行しているフィルム1の表面に向けてレーザービームLBを照射すると共に、所定の穴形状となるようにレーザービームLBを走査し、フィルム1の走行方向に沿って連続して加工を行う。
【0020】
3はレーザー加工装置2によって加工されたフィルム片の除去装置であり、レーザー加工装置2よりも下流に配置されている。
【0021】
本発明において、レーザー加工装置2によって走行するフィルム1に所定の穴を加工する際、その一例を示すと、図2に示すように、レーザービームLBを出発点11Aから終了点11Bまで走査することによってフィルム1に形成される加工ライン11の該出発点11Aと終了点11Bとを一致させず、また、加工ライン11を交差もさせず、出発点11Aと終了点11Bとの間にレーザービームLBが照射されない未照射部位12を形成するようにレーザービームLBを走査する。
【0022】
これによって加工ライン11によって切断加工されるフィルム片13は、未照射部位12によってフィルム1と繋がったままの状態となる。
【0023】
このレーザービームLBの走査の出発点11Aと終了点11Bとの間隔a、即ち繋がったままの状態の距離は、2mm以下とされる。2mmよりも大きくなると、除去装置3においてフィルム片13を引きちぎって開口させることが困難となる。
【0024】
このような加工ライン11は、例えば図3に示すように、フィルム1の走行方向に沿って複数、連続的に形成することができる。
【0025】
このように本発明は、所定範囲の未照射部位12を形成することにより、レーザー加工だけではフィルム片13がフィルム1から確実に切り取られていない状態を作り出し、フィルム片13が走行中に不意にちぎれてしまうことのないようにする。これにより、後段の除去装置において、不要なフィルム片13を確実に回収することができ、フィルム片13が走行途中で不意にちぎれて搬送機構に絡まったり、周囲に散乱したり、フィルム1に付着したりする心配はない。すなわち、フィルム1への穴開けの確実性と、不要なフィルム片13の回収の確実性とを両立できるようになる。
【0026】
レーザービームLBによって加工ライン11を加工する際、レーザービームLBの走査方向、出発点と終了点の加工ライン11上の位置は特に問わない。
【0027】
また、加工ライン11の形状は、図2では円形状の丸穴を加工する場合を例示しているが、フィルム1に形成する穴形状に応じてレーザービームLBの走査態様を適宜変更するだけで容易に変更可能であり、例えば、三角形状、矩形状、楕円形状、星形状、その他の多角形状など任意である。
【0028】
本発明において、レーザービームLBは、出力10〜100WのCOガスレーザーによるものであることが好ましい。COガスレーザーは、レーザー出力を効率良く取り出すことができ、また、レーザービームLBの品質も高く、フィルム1を効率良く加工することができる。更に、出力が小さすぎるとフィルム1の切れが悪くなり、大きすぎると加工ライン11の断面が波打ち状となる等、動力コストに見合った効果が得られ難い。
【0029】
また、レーザービームLBにより加工ライン11を加工する際の走査速度は、遅いと加工ライン11の断面が波打ち状となり、速いとフィルム1の切れが悪くなるため、100〜1000mm/secの範囲であることが好ましい。
【0030】
レーザー加工装置2によって、未照射部位12でフィルム1と繋がった状態のフィルム片13を加工した後は、その下流に配置された除去装置3によって不要なフィルム片3を引きちぎってフィルム本体から除去する。
【0031】
この除去装置3による不要なフィルム片13の引きちぎり方法としては、フィルム片13を機械的に引きちぎる方法、空気で吹き飛ばして引きちぎる方法又は吸引して引きちぎる方法のいずれかを採用することができるが、これらに限定されない。
【0032】
以上の説明では、所定範囲の未照射部位12である引きちぎり箇所は1箇所である場合であるが、これに限定されず、2箇所以上であってもよい。
【0033】
また上記の態様では、繋がったままの状態の距離は2mm以下とされるが、下限は完全に切れて距離がゼロである場合を含む。本発明において好ましいのは、わずかでも繋がった状態にあることである。
【0034】
本発明において、使用できるフィルム1は農業用フィルムに使用されるものであれば特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく使用できる。中でも低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒型直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE:直鎖の炭素数が2〜8の範囲)等が挙げられる。
【0035】
また、フィルム1には、各種着色剤(黒、緑、白などの着色顔料)や各種安定剤などが添加されていてもよい。更に、単層フィルムはもちろん、多層フィルム(白層と黒層からなる2層フィルム等)や、フィルム幅方向に色違いがある配色フィルム(例えば幅方向に緑、黒、緑など)でも構わない。
【0036】
図4は、レーザー加工装置2による加工方法の他の例を示している。
【0037】
この場合は、レーザービームLBを出発点15Aから終了点15Bまで走査することによってフィルム1に形成される加工ライン15の該出発点15Aと終了点15Bとを交差させるようにしてレーザービームLBを走査する。
【0038】
これによって加工ライン15は必ず交差点15Cにおいて交差することになるので、フィルム片13は、レーザー加工によって確実に切り取られることが可能となる。従って、フィルム片13の回収手段をこの下方に配置させておけば、不要なフィルム片13が搬送機構に絡まったり、周囲に散乱したり、フィルム1に付着したりする心配なく、確実に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る農業用フィルムの穴開け加工方法を説明するための概略図
【図2】レーザー加工装置による加工方法を示す図
【図3】レーザー加工された後のフィルムを示す平面図
【図4】レーザー加工装置による加工方法の他の例を示す図
【図5】従来のレーザー加工装置による理想的な加工方法を示す図
【符号の説明】
【0040】
1:フィルム
11:加工ライン
11A:出発点
11B:終了点
12:未照射部位
13:フィルム片
2:レーザー加工装置
3:除去装置
LB:レーザービーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するフィルムにレーザービームを照射し、所定の穴形状となるように前記レーザービームを走査することにより、前記フィルムの走行方向に沿って連続して穴開け加工を行う農業用フィルムの穴開け加工方法であって、
前記レーザービームを、前記フィルムに形成される加工ラインの出発点と終了点とを一致させず、該出発点と終了点との間隔を2mm以下になるように走査した後、前記加工ラインによって形成される不要なフィルム片を引きちぎって除去することを特徴とする農業用フィルムの穴開け加工方法。
【請求項2】
前記レーザービームは、出力10〜100WのCOガスレーザーによるレーザービームであることを特徴とする請求項1記載の農業用フィルムの穴開け加工方法。
【請求項3】
前記レーザービームの走査速度は、100〜1000mm/secであることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用フィルムの穴開け加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−300904(P2007−300904A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135837(P2006−135837)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000100458)みかど化工株式会社 (8)