説明

農業用フィルム

【課題】本発明は、ヒンダードアミン系光安定剤を用いたとしても黄変及び臭気の発生が抑制され、且つ優れた耐候性及び耐薬剤性を有する農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の農業用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂、下記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。


(式中、R1は、水素原子、−CH2CH2COOC1225、又は−CH2CH2COOC1429である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の栽培施設に使用される農業用フィルムに関し、特に、黄変及び臭気の発生が抑制され且つ優れた耐候性及び耐薬剤性を有する農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作物を栽培する手段として、農業用ハウスを用いたハウス栽培が盛んに行なわれている。上記ハウス栽培においては、農業用ハウスによって、ハウス内を農作物の生育に適した条件にしたり、風雨から農作物を守ったり、石や埃などの飛来物による農作物の損傷を防いだりすることができる。
【0003】
農業用ハウスは、ハウスの骨組みに農業用フィルムを展張して被覆することにより形成され、ここで用いられる農業用フィルムとしては、従来、ポリ塩化ビニルフィルムが多く用いられてきた。また、近年では、環境への安全性の配慮から、ポリエチレン系樹脂フィルムやエチレン酢酸ビニル共重合体フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルムが農業用フィルムとして多く使用されるようになっている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂フィルムは、光や熱などの劣化因子に対して脆弱な側面を有しており、十分な耐候性を有していなかった。すなわち、ポリオレフィン系樹脂フィルムを屋外などの光や熱に曝される環境下で長期間に亘って使用すると、ポリオレフィン系樹脂フィルムに含まれているポリオレフィン系樹脂が経時的に劣化して、ポリオレフィン系樹脂フィルムの伸びや引張強度などの機械的物性が低下する問題があった。
【0005】
そこで、従来のポリオレフィン系樹脂フィルムでは、分子中にトリアジン骨格を有するヒンダードアミン系光安定剤を用いることにより、耐候性を向上させている。このようなヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、BASFジャパンから販売されている製品名TINUVIN(登録商標)NOR 371、CHIMASSORB(登録商標)944などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4167522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のヒンダードアミン系光安定剤を用いたポリオレフィン系樹脂フィルムでは、光や熱の影響により経時的に黄色に変色する場合があった。黄変したポリオレフィン系樹脂フィルムは、外観性が損なわれるだけでなく、光の透過率が低下するために農作物の成育を遅れさせる。
【0008】
また、従来のヒンダードアミン系光安定剤を用いたポリオレフィン系樹脂フィルムは、ヒンダードアミン系光安定剤に由来する独特の臭気を発生する場合もあった。
【0009】
さらに、従来のヒンダードアミン系光安定剤を用いたポリオレフィン系樹脂フィルムでは、肥料や農薬などと接触すると、ヒンダードアミン系光安定剤によってポリオレフィン系樹脂の酸化劣化が促進され、ポリオレフィン系樹脂フィルムの伸びや引張強度などの機械的物性が低下する場合があった。このような耐薬剤性が低いポリオレフィン系樹脂フィルムは、栽培施設内で肥料や農薬などの薬剤を使用する環境下で長期間に亘って使用することができない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ヒンダードアミン系光安定剤を用いたとしても黄変及び臭気の発生が抑制され、且つ優れた耐候性及び耐薬剤性を有する農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の農業用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂、及び下記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。
【化1】



(式中、R1は、水素原子、−CH2CH2COOC1225、又は−CH2CH2COOC1429である。)
【発明の効果】
【0012】
上記一般式(I)で示される基を少なくとも一個有するヒンダードアミン系光安定剤を紫外線吸収剤と組み合わせて用いていることにより、農業用フィルムに含まれているポリオレフィン系樹脂の劣化を高く抑制することができると共に、光や熱の影響によって農業用フィルムが経時的に黄色に変色するのも高く抑制することができる。したがって、本発明の農業用フィルムは、屋外などの光や熱に曝される環境下で長期間に亘って使用しても、ポリオレフィン系樹脂フィルムの伸びや引張強度などの機械的物性の低下が抑制されて優れた耐候性を有し、さらに黄変の発生も高く抑制されて優れた透明性を維持することができる。
【0013】
また、上記一般式(I)で示される基を少なくとも一個有するヒンダードアミン系光安定剤は、これを含む農業用フィルムが肥料や農薬などの薬剤に曝される環境下で使用されても、農業用フィルムに含まれるポリオレフィン系樹脂の酸化劣化を促進させる恐れもない。したがって、上記ヒンダードアミン系光安定剤を用いることにより、肥料や農薬などの薬剤を使用する環境下で長期間に亘って使用しても、農業用フィルムの伸びや引張強度などの機械的物性の低下も高く抑制することができ、耐薬剤性に優れる農業用フィルムを提供することも可能となる。
【0014】
さらに、上記ヒンダードアミン系光安定剤は臭気をほとんど有しておらず、したがってこのようなヒンダードアミン系光安定剤を含む本発明の農業用フィルムも臭気の発生が高く抑制されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ヒンダードアミン系光安定剤]
本発明の農業用フィルムに用いられるヒンダードアミン系光安定剤は、下記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有する。
【化2】


(式中、R1は、水素原子、−CH2CH2COOC1225、又は−CH2CH2COOC1429である。)
【0016】
ヒンダードアミン系光安定剤が上記一般式(I)で示される基を複数有する場合、上記一般式(I)で示される基は同じであってもよく、異なっていてもよい。なかでも、R1が水素原子である上記一般式(I)で示される基のみを少なくとも一個有するヒンダードアミン系光安定剤を用いるか、R1が−CH2CH2COOC1225である上記一般式(I)で示される基及びR1が−CH2CH2COOC1429である上記一般式(I)で示される基をそれぞれ少なくとも一個有するヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが好ましい。なかでも、黄変及び臭気の発生を抑制し、耐候性及び耐薬剤性に優れる農業用フィルムを提供できることから、R1が水素原子である上記一般式(I)で示される基のみを少なくとも一個有するヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが特に好ましい。
【0017】
ヒンダードアミン系光安定剤は、1分子中に上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有し、主鎖がポリオレフィン系樹脂からなるのが好ましい。
【0018】
主鎖を構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、炭素数が2〜10のα−オレフィンの単独重合体、炭素数が2〜10のα−オレフィンの二種類以上を共重合させてなる共重合体、炭素数が2〜10のα−オレフィンと、このα−オレフィンと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても二種類以上が併用されてもよい。なお、炭素数が2〜10のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂として、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレンを50重量%超えて含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。なかでも、黄変及び臭気の発生を抑制し、耐候性及び耐薬剤性に優れる農業用フィルムを提供できることから、ポリエチレン系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましく、分岐状低密度ポリエチレンが特に好ましい。また、分岐状低密度ポリエチレンは、1−オクテン含有量が1〜20重量%であるエチレン−1−オクテン共重合体であるのが好ましい。
【0020】
低密度ポリエチレンの密度は、0.90〜0.93g/cm3が好ましく、0.905〜0.925g/cm3がより好ましい。なお、本発明において低密度ポリエチレンの密度は、JIS K7112に準拠して測定されたものをいう。
【0021】
特に好ましいヒンダードアミン系光安定剤は下記構造を有し且つ主鎖が分岐状低密度ポリエチレンである。
【化3】



(式中、R1は上記一般式(I)と同じ定義である。)
【0022】
ヒンダードアミン系光安定剤の重量平均分子量Mwは、1,000以上が好ましく、4,000〜10,000がより好ましく、5,000〜8,000が特に好ましい。重量平均分子量Mwが1,000未満であるヒンダードアミン系光安定剤では、ブリードアウトして農業用フィルムを長期間に亘って使用できなくなる恐れがある。
【0023】
なお、本発明においてヒンダードアミン系光安定剤の重量平均分子量Mwの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた一般的な方法により測定することができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件で標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0024】
測定条件:
装置 :D5280 LCS M−PDA(株式会社島津製作所製)
カラム :Shim−pack GPC−80M(株式会社島津製作所製)
サンプル濃度:0.1g/l(テトラヒドロフランで希釈)
移動相溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :1ml/min
カラム温度 :40℃
【0025】
上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤を製造するには、下記一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物、ポリオレフィン系樹脂、有機過酸化物、及び触媒を含む原料組成物を100〜140℃に加熱することにより、下記一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物とポリオレフィン系樹脂とを反応させる方法が好ましく用いられる。
【化4】


(式(II)中、R1は上記一般式(I)と同じ定義である。)
【0026】
上記一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物は、市販品を用いることができる。例えば、R1が水素原子である一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物は、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンエイコサンであり、これはClariant社より製品名Hostavin(登録商標)N20として販売されている。
【0027】
また、R1が−CH2CH2COOC1225である一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物は、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキソ−7−オキサ−3.20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンエイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステルであり、R1が−CH2CH2COOC1429である一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物は、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキソ−7−オキサ−3.20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンエイコサン−20−プロパン酸テトラデシルエステルであり、R1が−CH2CH2COOC1225である一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物及びR1が−CH2CH2COOC1429である一般式(II)で示されるヒンダードアミン系光安定剤の前駆化合物は、これらの混合物としてClariant社より製品名Hostavin(登録商標)N24として販売されている。
【0028】
原料組成物における前駆化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.02〜5重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。
【0029】
有機過酸化物としては、例えば、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−アミルハイドロパーオキサイド、tert−ヘキシルハイドロパーオキサイド、tert−オクチルハイドロパーオキサイド、エチルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラリンハイドロパーオキサイド、及びクメン(イソプロピルベンゼン)ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。原料組成物における有機過酸化物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましい。
【0030】
触媒としては、バナジルアセチルアセトネート、バナジウム(III)アセチルアセトネート、コバルトカルボニル、酸化クロム(VI)、チタンテトラブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、モリブデンヘキサカルボニル、及び三酸化モリブデンなどが挙げられる。原料組成物における触媒の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。
【0031】
原料組成物は、溶媒を含んでいるのが好ましい。溶媒としては、アセトニトリル、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、CCl4、メタノール、エタノール、エチレングリコール、及びエチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
また、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤は、市販品を用いることもできる。例えば、R1が水素原子である上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤は、Clariant社製 Hostavin(登録商標)NOWとして販売されている。
【0033】
農業用フィルムにおける上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.01重量部未満であるとヒンダードアミン系光安定剤による十分な効果が得られない恐れがある。また、ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が5重量部を超えると農業用フィルムの初期透明性が低下する恐れがある。
【0034】
また、農業用フィルムは、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤の他に、上記一般式(I)で示される基を有していない他のヒンダードアミン系光安定剤を少量であれば含んでいてもよい。他のヒンダードアミン系光安定剤としては、従来公知のものが用いられ、例えば、BASFジャパン製 TINUVIN(登録商標)NOR371、及びCHIMASSORB(登録商標)944などの分子中にトリアジン骨格を有するヒンダードアミン系光安定剤が用いられる。
【0035】
農業用フィルムにおける他のヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.5重量部以下が好ましく、0.01〜0.5重量部がより好ましい。
【0036】
[紫外線吸収剤]
本発明の農業用フィルムは、紫外線吸収剤をさらに含む。紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等のベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ジ−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−t−オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等のベンゾトリアゾール系;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチル−フェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−アミルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド系;エチル−Α−シアノ−Β,Β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(P−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート系;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等のトリアジン系などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
なかでも、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いるのが好ましく、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノンを用いるのがより好ましい。上述した一般式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤とベンゾフェノン系紫外線吸収剤とを組合せて用いることにより、黄変の発生がより高く抑制されると共に、より優れた耐候性を有する農業用フィルムを提供することができる。
【0038】
農業用フィルムにおける紫外線吸収剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜1重量部がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.01重量部未満であると紫外線吸収剤による十分な効果が得られない恐れがある。また、紫外線吸収剤の含有量が5重量部を超えると農業用フィルムの初期透明性が低下する恐れがある。
【0039】
[酸化防止剤]
本発明の農業用フィルムは、酸化防止剤をさらに含んでいるのが好ましい。酸化防止剤を用いることにより、ポリオレフィン系樹脂の劣化を抑制し、農業用フィルムの耐候性や耐薬剤性をさらに向上させることができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤が挙げられ、なかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。酸化防止剤は、一種のみが用いられてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0040】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、及びオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
【0041】
なかでも、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、及びペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)がより好ましく挙げられる。これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤によれば、耐候性及び耐薬剤性に優れる農業用フィルムを提供することができる。
【0042】
農業用フィルムにおける酸化防止剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.01〜1重量部がより好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が0.01重量部未満であるとヒンダードフェノール系酸化防止剤による十分な効果が得られない恐れがある。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が5重量部を超えると農業用フィルムの初期透明性が低下する恐れがある。
【0043】
[赤外線吸収剤]
本発明の農業用フィルムは、赤外線吸収剤を含んでいるのが好ましい。赤外線吸収剤としては、層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物が好ましく挙げられる。このような複合水酸化物を用いることにより、黄変及び臭気の発生が高く抑制されるとともに保温性が付与された農業用フィルムを提供することができる。
【0044】
層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物として、具体的には、下記一般式(III)又は(IV)で示される化合物のうち少なくとも一種が挙げられる。

式(III):[{Mgy12+y21-xAlx(OH)2x+・[(A’)z1・(B)z2・bH2O]x-

(式(III)中、M2+はCa、Ni及びZnから選ばれる1種以上の2価金属イオンを示し、A'は珪素系、燐系、硼素系多量体酸素酸イオンの少なくとも1種であることを示し、BはA以外のアニオンの少なくとも1種を示し、x、y1、y2、z1、z2、bは下記条件を満足する;0<x≦0.5、y1+y2=1、y1≦1、y2<1、0<z1、0≦z2、0≦b<2)

式(IV):[{Liy12+y2}Al2(OH)6x+・[(A’)z1・(B)z2・bH2O]x-

(式(IV)中、G2+はMg、Ca、Ni及びZnから選ばれる1種以上の2価金属イオンを示し、A'は珪素系、燐系、硼素系多量体酸素酸イオンの少なくとも1種であることを示し、BはA'以外のアニオンの少なくとも1種を示し、y1、y2、x、z1、z2、bは下記条件を満足する;0<y1≦1、0≦y2≦1、0.5≦(y1+y2)≦1、x=y1+2y2、0<z1、0≦z2、0≦b<5)
【0045】
式(III)で表される複合水酸化物としては、例えば、商品名マグクリスタ(協和化学工業社製)等が挙げられる。また、式(IV)で表される複合水酸化物としては、例えば、商品名フジレイン(富士化学工業社製)等が挙げられる。なお式(III)及び(IV)の複合水酸化物は、WO 00/32515号公報、WO 97/00828号公報に記載の方法により製造することができる。
【0046】
本発明で用いられる複合水酸化物の層間に含まれる多量体酸素酸イオンとは、酸素酸が縮合してなるイオンであり、例えば、珪素系、燐系、硼素系などの酸素酸の縮合物が挙げられる。
【0047】
本発明で用いられる層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物(III)または(IV)において、アニオン種(A’)は珪素系、燐系、硼素系多量体酸素酸イオンの少なくとも1種であり、例えば、珪素系多量体酸素酸イオンとしては、Si252-、Si372-、Si492-、Si5112-などの(Sin2n+12-、(HSi25-、(HSi37-、(HSi49-などの(HSin2n+1-などが挙げられる(nは2以上の整数)。
【0048】
また、燐系多量体酸素酸イオンとしては、P353-、P4124-などの(Pn3nn-(nは3以上の整数)、P274-、P3105-、あるいは(H2272-のように燐系多量体酸素酸イオンに水素が幾つか付加したものが挙げられる。硼素系としては、[B3(OH)4-、[B56(OH)4-、[B45(OH)42-などが挙げられる。
【0049】
(B)のアニオン種としては、(A’)以外の少なくとも1種のアニオンであれば特に限定されず、具体的には、塩素、臭素などのハロゲンイオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、珪素系、燐系、硼素系の単量体酸素酸イオン、シアン化鉄イオンなどの無機酸イオンや蟻酸イオン、酢酸イオン、テレフタル酸イオン、アルキルスルホン酸イオンなどの有機酸イオンが挙げられる。
【0050】
農業用フィルムの耐候性、熱安定性、透明性、保温性および加工性などの観点から、(A’)のアニオン種は珪素系多量体酸素酸イオンが、(B)のアニオン種は炭酸および/または硫酸イオンが好ましく用いられる。
【0051】
さらに、農業用フィルムの色相安定性の観点から、層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物としては、リチウムアルミニウムを基本骨格とする式(IV)で示される構造のものが特に好ましく用いられる。
【0052】
上記層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物は、樹脂中での分散性を更に向上させるために、分散剤で表面処理を施されていてもよい。分散剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸のカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ナトリウム塩等の金属石鹸、高級脂肪族アルコールとリン酸のエステルおよびその金属塩、ワックス類、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が例示できる。中でもステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム塩、ステアリルアルコールとリン酸のモノエステル、ジエステルおよびそのナトリウム塩などが好ましく挙げられる。
【0053】
分散剤の添加量は上記層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物100重量部に対し0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜6重量部がより好ましい。0.1重量部以下では分散性、熱安定性が悪化する恐れがあり、10重量部以上では余剰の分散剤がブリードアウトし、フィルムとした場合、表面外観を損なうなどの問題が生じ易くなる。
【0054】
上記層間に多量体酸素酸イオンを含む複合水酸化物の平均粒径は、0.05〜3μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましく、0.2〜1μmが特に好ましい。
【0055】
農業用フィルムにおける複合水酸化物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、1〜10重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。複合水酸化物の含有量が1重量部未満であると複合水酸化物による十分な効果が得られない恐れがある。また、複合水酸化物の含有量が10重量部を超えると農業用フィルムの初期透明性が低下する恐れがある。
【0056】
本発明の農業用フィルムは、その物性を阻害しない範囲内において、防霧剤、滑剤、及び顔料などの他の添加剤を含んでいてもよい。
【0057】
防霧剤としては、公知のものが用いられ、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。また、滑剤としては、公知のものが用いられ、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられる。
【0058】
農業用フィルムには、その表面に生じた結露水を水膜状にして円滑に下方に向かって流下させるために、農業用フィルムの物性を損なわない範囲において防曇剤を含有させてもよい。このような防曇剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、グリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ソルビトールグリセリンステアリン酸エステル等の多価アルコール飽和脂肪酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル等の多価アルコール不飽和脂肪酸エステル等が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0059】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明の農業用フィルムを構成しているポリオレフィン系樹脂としては、例えば、炭素数が2〜10のα−オレフィンの単独重合体、炭素数が2〜10のα−オレフィンの二種類以上を共重合させてなる共重合体、炭素数が2〜10のα−オレフィンと、このα−オレフィンと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても二種類以上が併用されてもよい。なお、炭素数が2〜10のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。なお、ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0060】
ポリオレフィン系樹脂として、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレンを50重量%超えて含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0061】
低密度ポリエチレンを用いることにより、伸びや引張強度などの機械的物性に優れ、耐候性が向上された農業用フィルムを提供することができる。低密度ポリエチレンの密度は、0.90〜0.93g/cm3が好ましく、0.905〜0.925g/cm3がより好ましい。低密度ポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレンであるのがより好ましい。
【0062】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることにより、農業用フィルムの耐薬剤性を向上させることができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の全量に対して、1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%が好ましい。酢酸ビニルの含有量が上記範囲内であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることにより、優れた耐薬剤性を有する農業用フィルムを提供することができる。
【0063】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、0.4〜4g/10分が好ましく、0.4〜1.5g/10分がより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが0.4g/10分未満では農業用フィルムの柔軟性が低下する恐れがあり、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが4g/10分を超えると農業用フィルムの透明性が低下する恐れがある。
【0064】
なお、本発明においてエチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定された値をいう。
【0065】
本発明の農業用フィルムを製造するには、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、及び必要に応じて酸化防止剤などの他の添加剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給し溶融混練して押出機から押出、インフレーション法、Tダイ押出法、カレンダー法などによって農業用フィルムを製造する方法が用いられる。
【0066】
農業用フィルムの厚みは、薄いと、農業用フィルムの機械的強度が低下することがあり、厚いと、農業用フィルムの裁断、接合、展張作業などが困難になり、取扱い性が低下することがあるので、10〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0067】
本発明の農業用フィルムを複数用い、これらを積層一体化することにより積層フィルムとして用いてもよい。好ましくは、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を含有する農業用フィルム(A)と、酢酸ビニル含有量が10〜35重量%であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を含有する農業用フィルム(B)と、酢酸ビニル含有量が1重量%以上10重量%未満であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を含有する農業用フィルム(C)とが、上記農業用フィルム(A)、上記農業用フィルム(B)及び上記農業用フィルム(C)の順で積層一体化されてなる農業用積層フィルムが挙げられる。
【0068】
エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体を含む上記農業用フィルム(A)は伸びや引張強度などの機械的物性に優れることから、上記農業用フィルム(A)を用いることにより農業用積層フィルムの耐候性をさらに向上させることができる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む上記農業用フィルム(B)及び(C)を用いることにより、農業用積層フィルムの耐薬剤性を向上させることができる。したがって、農業用積層フィルムを農業用ハウスなどへ実際に使用する際には、農業用フィルム(A)が屋外側となるようにし、農業用フィルム(C)が内側(植物側)となるようにして、農業用積層フィルムを配設するのが好ましい。
【0069】
農業用フィルム(A)を構成するエチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。これらのエチレン−α−オレフィン共重合体を含むフィルム(A)を用いることにより、農業用積層フィルムの伸びや引張強度などの機械的物性を向上させることができる。
【0070】
農業用フィルム(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、10〜35%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。農業用フィルム(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が少な過ぎると、農業用積層フィルムの耐薬剤性を十分に向上できない恐れがある。また、農業用フィルム(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が多過ぎると、農業用積層フィルムが柔らかくなり過ぎる恐れがある。
【0071】
また、農業用フィルム(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは、0.4〜4.0g/10分が好ましく、0.4〜2.0g/10分がより好ましい。農業用フィルム(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが、小さいと、農業用積層フィルムの製膜安定性が低下する恐れがある。また、農業用フィルム(B)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが大きいと、農業用積層フィルムの機械的強度が不十分となる恐れがある。
【0072】
農業用フィルム(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、1重量%以上10重量%未満が好ましく、3重量%以上10重量%未満がより好ましい。農業用フィルム(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が少な過ぎると、農業用積層フィルムの耐薬剤性を十分に向上できない恐れがある。また、農業用フィルム(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が多過ぎると、農業用積層フィルムが柔らかくなり過ぎたり、農業用積層フィルム同士がブロッキングを起こして、上記農業用積層フィルムの原反ロールの繰り出しが困難となる恐れがある。
【0073】
また、農業用フィルム(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは、0.4〜4.0g/10分が好ましく、0.4〜2.0g/10分がより好ましい。農業用フィルム(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが、小さいと、農業用積層フィルムの製膜安定性が低下する恐れがある。また、農業用フィルム(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが大きいと、農業用積層フィルムの機械的強度が不十分となる恐れがある。
【0074】
農業用フィルム(A)、(B)及び(C)は、上記一般式(I)で示される基を少なくとも一個有するヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤を含み、さらに必要に応じて酸化防止剤、赤外線吸収剤、防霧剤、滑剤、顔料、及び防曇剤を含んでいてもよい。なお、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、赤外線吸収剤、防霧剤、滑剤、顔料、及び防曇剤、並びにこれらの含有量などについては、上述した農業用フィルムにおいて説明した通りである。
【0075】
農業用フィルム(A)、(B)及び(C)は、酸化防止剤をさらに含んでいるのが好ましい。農業用フィルム(A)、(B)及び(C)が酸化防止剤を含んでいることにより、耐候性及び耐薬剤性がより向上された農業用積層フィルムを提供することができる。
【0076】
また、農業用フィルム(B)は赤外線吸収剤を含み、農業用フィルム(A)及び(C)は赤外線吸収剤を含んでいないのが好ましい。農業用フィルム(B)が赤外線吸収剤を含むことにより農業用積層フィルムに保温性を付与することができると共に、農業用フィルム(A)及び(C)が赤外線吸収剤を含んでいないことにより、農業用積層フィルムの耐薬品性や耐候性を向上させることができる。
【0077】
農業用フィルム(A)及び(C)のそれぞれの厚みは、10〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。また、農業用フィルム(B)の厚みは、50〜200μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
【0078】
農業用積層フィルムの製造方法は、例えば、第一押出機、第二押出機及び第三押出機が全て同一のダイに接続されてなる製造装置を用意し、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を第一押出機に供給し溶融混練して第一押出機から押出し、酢酸ビニル含有量が10〜35重量%であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を第二押出機に供給し溶融混練して第二押出機から押出し、さらに、酢酸ビニル含有量が1重量%以上10重量%未満であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を第三押出機に供給し溶融混練して第三押出機から押出し、第一〜第三押出機を共に接続させたダイに供給して、多層インフレーション法、多層Tダイ押出法、多層カレンダー法等によって、第一押出機から押出した農業用フィルム(A)、第二押出機から押出した農業用フィルム(B)、及び第三押出機から押出した農業用フィルム(C)をこれらの順で積層一体化させて農業用積層フィルムを製造する方法が用いられる。
【0079】
また、本発明の農業用フィルムは、その両面にポリオレフィン系樹脂のみからなるポリオレフィン系樹脂フィルムを積層一体化することにより農業用積層フィルムとして用いることもできる。このようにポリオレフィン系樹脂フィルムを用いることにより、農業用フィルムに含まれている光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び赤外線吸収剤などの添加剤が経時的に農業用積層フィルム表面にブリードアウトするのを高く抑制することができる。特に、ポリオレフィン系樹脂フィルムを用いることにより、農業用フィルムに含まれているヒンダードアミン系光安定剤や紫外線吸収剤が経時的に農業用積層フィルム表面にブリードアウトするのを抑制して、農業用積層フィルムが優れた耐候性や耐薬剤性を長期間に亘って維持することができる。
【0080】
農業用積層フィルムとして好ましくは、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体のみからなるポリオレフィン系樹脂フィルム(D)と、酢酸ビニル含有量が10〜35重量%であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を含有する農業用フィルム(E)と、酢酸ビニル含有量が1重量%以上10重量%未満であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体のみからなるポリオレフィン系樹脂フィルム(F)とが、上記ポリオレフィン系樹脂フィルム(D)、上記農業用フィルム(E)及び上記ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)の順で積層一体化されてなる農業用積層フィルムが挙げられる。
【0081】
エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体のみからなるポリオレフィン系樹脂フィルム(D)は伸びや引張強度などの機械的物性に優れることから、ポリオレフィン系樹脂フィルム(D)を用いることにより農業用積層フィルムの耐候性をさらに向上させることができる。また、農業用フィルム(E)にポリオレフィン系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用い、さらにエチレン−酢酸ビニル共重合体のみからなるポリオレフィン系樹脂フィルム(F)を用いることにより、農業用積層フィルムの耐薬剤性を向上させることができる。したがって、農業用積層フィルムを農業用ハウスなどへ実際に使用する際には、ポリオレフィン系樹脂フィルム(D)が屋外側となるようにし、ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)が内側(植物側)となるようにして、農業用積層フィルムを配設するのが好ましい。
【0082】
ポリオレフィン系樹脂フィルム(D)は、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体のみからなり、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び赤外線吸収剤などの添加剤を含まない。
【0083】
ポリオレフィン系樹脂フィルム(D)を構成するエチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。これらのエチレン−α−オレフィン共重合体を含むポリオレフィン系樹脂フィルム(D)を用いることにより、農業用積層フィルムに優れた耐候性を付与することができる。
【0084】
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.90〜0.93g/cm3が好ましく、0.905〜0.925g/cm3がより好ましい。なお、直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、JIS K7112に準拠して測定されたものをいう。
【0085】
農業用フィルム(E)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、10〜35%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。農業用フィルム(E)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が少な過ぎると、農業用積層フィルムの耐薬剤性を十分に向上できない恐れがある。また、農業用フィルム(E)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が多過ぎると、農業用積層フィルムが柔らかくなり過ぎる恐れがある。
【0086】
また、農業用フィルム(E)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは、0.4〜4.0g/10分が好ましく、0.4〜2.0g/10分がより好ましい。農業用フィルム(E)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが、小さいと、農業用積層フィルムの製膜安定性が低下する恐れがある。また、農業用フィルム(E)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが大きいと、農業用積層フィルムの機械的強度が不十分となる恐れがある。
【0087】
農業用フィルム(E)は、上記一般式(I)で示される基を少なくとも一個有するヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤を含み、さらに必要に応じて酸化防止剤、赤外線吸収剤、防霧剤、滑剤、顔料、及び防曇剤を含んでいてもよい。なお、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、赤外線吸収剤、防霧剤、滑剤、顔料、及び防曇剤、並びにこれらの含有量などについては、上述した農業用フィルムにおいて説明した通りである。
【0088】
農業用フィルム(E)は、酸化防止剤をさらに含んでいるのが好ましい。農業用フィルム(E)が酸化防止剤を含んでいることにより、黄変の発生がより高く抑制された農業用積層フィルムを提供することができる。
【0089】
また、農業用フィルム(E)は赤外線吸収剤をさらに含んでいるのが好ましい。農業用フィルム(E)が赤外線吸収剤を含むことにより農業用積層フィルムに保温性を付与することができる。
【0090】
ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)は、酢酸ビニル含有量が3重量%以上10重量%未満であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体のみからなり、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び赤外線吸収剤などの添加剤を含まない。
【0091】
ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、1重量%以上10重量%未満が好ましく、3重量%以上10重量%未満がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が少な過ぎると、農業用積層フィルムの耐薬剤性を十分に向上できない恐れがある。また、ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が多過ぎると、農業用積層フィルムが柔らかくなり過ぎたり、農業用積層フィルム同士がブロッキングを起こして、上記農業用積層フィルムの原反ロールの繰り出しが困難となる恐れがある。
【0092】
また、ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは、0.4〜4.0g/10分が好ましく、0.4〜2.0g/10分がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが、小さいと、農業用積層フィルムの製膜安定性が低下する恐れがある。また、ポリオレフィン系樹脂フィルム(F)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトが大きいと、農業用積層フィルムの機械的強度が不十分となる恐れがある。
【0093】
ポリオレフィン系樹脂フィルム(D)及び(F)のそれぞれの厚みは、10〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。また、農業用フィルム(E)の厚みは、50〜200μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
【0094】
農業用積層フィルムの製造方法は、例えば、第一押出機、第二押出機及び第三押出機が全て同一のダイに接続されてなる製造装置を用意し、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体のみを第一押出機に供給し溶融混練して第一押出機から押出し、酢酸ビニル含有量が10〜35重量%であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、上記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を第二押出機に供給し溶融混練して第二押出機から押出し、さらに、酢酸ビニル含有量が1重量%以上10重量%未満であり且つメルトフローレイト(MFR)が0.4〜4.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体のみを第三押出機に供給し溶融混練して第三押出機から押出し、第一〜第三押出機を共に接続させたダイに供給して、多層インフレーション法、多層Tダイ押出法、多層カレンダー法等によって、第一押出機から押出したポリオレフィン系樹脂フィルム(D)、第二押出機から押出した農業用フィルム(E)、及び第三押出機から押出したポリオレフィン系樹脂フィルム(F)をこれらの順で積層一体化させて農業用積層フィルムを製造する方法が用いられる。
【0095】
上述した農業用フィルム又は農業用積層フィルムは、いずれも防曇剤を含んでいてもよい。また、上述した農業用フィルム又は農業用積層フィルムに防曇剤を含有させる代わりに、農業用フィルム又は農業用積層フィルムの表面に防曇性被膜を形成してもよい。このような防曇性被膜としては、例えば、コロイダルシリカやコロイダルアルミナに代表される無機酸化ゾルのコーティング膜、界面活性剤を主成分とする液のコーティング膜、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、多糖類、ポリアクリル酸などの親水性樹脂を主成分とする膜が挙げられる。なお、コロイダルシリカやコロイダルアルミナを主成分とする無機酸化ゾルのコーティング膜には、必要に応じて、界面活性剤や親水性樹脂を添加してもよい。
【0096】
そして、農業用フィルムの表面に防曇性被膜を形成する方法としては、例えば、グラビアコーターなどを用いたロールコート法、バーコード法、ディップコート法、スプレー法、はけ塗り法などが挙げられる。
【0097】
農業用フィルム及び農業用積層フィルムの用途としては、例えば、温室ハウスなどの農業用ハウス、農業用トンネル、農業用カーテンなどにおける被覆資材が好ましく挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0099】
(実施例1)
エチレン−酢酸ビニル共重合体1(酢酸ビニル含有量5重量%、メルトフローレイト1.0g/10分:宇部丸善ポリエチレン株式会社製 VF105S)100重量部、R1が水素原子である上記一般式(I)で示される基を複数個有し且つ主鎖が分岐状低密度ポリエチレンからなるヒンダードアミン系光安定剤A(Clariant社製 製品名Hostavin(登録商標)NOW)0.7重量部、紫外線吸収剤(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン:BASFジャパン製 CHIMASSORB 81)0.1重量部、上記一般式(III)で示されるMg−Al系赤外線吸収剤A(協和化学工業株式会社製 DHT−4A)5重量部、及びフェノール系酸化防止剤A(2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール:川口化学工業株式会社製 BHT)0.01重量部を押出機に供給し、150℃にて溶融混練し、押出機の先端に取り付けたサーキュラ金型から円筒状に押出した上で空冷インフレーションフィルム成形によって農業用フィルム(厚み100μm)を得た。
【0100】
(実施例2〜4及び比較例1〜4)
エチレン−酢酸ビニル共重合体、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系酸化防止剤、及び赤外線吸収剤の種類及び配合量をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして農業用フィルムを作製した。
【0101】
なお、表1及び後記する表2におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体2、ヒンダードアミン系光安定剤B、ヒンダードアミン系光安定剤C、Li−Al系赤外線吸収剤B、及びフェノール系酸化防止剤Bは、それぞれ下記の通りである。また、ヒンダードアミン系光安定剤B及びヒンダードアミン系光安定剤Cは、上記一般式(I)で示される基を有していない。
エチレン−酢酸ビニル共重合体2(酢酸ビニル含有量5重量%、メルトフローレイト1.5g/10分:宇部丸善ポリエチレン株式会社製 VF105FS)
ヒンダードアミン系光安定剤B(BASFジャパン製 TINUVIN(登録商標)NOR371)
ヒンダードアミン系光安定剤C(ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1、3,5−トリアジン−2、4−ジイル}{(2、2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4ピペリジル)イミノ}}]、BASFジャパン製 CHIMASSORB(登録商標)944)
Li−Al系赤外線吸収剤B(上記一般式(IV)で示される化合物、水沢化学工業株式会社製 ミズカラックL)
フェノール系酸化防止剤B(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:BASFジャパン株式会社製 IRGANOX(登録商標)1010)
【0102】
(実施例5)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、エチレン−1−オクテン共重合体、密度0.92g/cm3、メルトフローレイト0.85g/10分、ダウ・ケミカル社製 製品名エリート5100)100重量部、R1が水素原子である上記一般式(I)で示される基を複数個有し且つ主鎖が分岐状低密度ポリエチレンからなるヒンダードアミン系光安定剤A(Clariant社製 製品名Hostavin(登録商標)NOW)0.7重量部、紫外線吸収剤(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン:BASFジャパン製 CHIMASSORB 81)0.1重量部、及びフェノール系酸化防止剤B(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:BASFジャパン株式会社製 IRGANOX1010)0.01重量部を第一押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体3(酢酸ビニル含有量15重量%、メルトフローレイト0.8g/10分:宇部丸善ポリエチレン株式会社製 VF115S)100重量部、ヒンダードアミン系光安定剤A0.7重量部、紫外線吸収剤(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン:BASFジャパン製 CHIMASSORB 81 )0.1重量部、Li−Al系赤外線吸収剤B(上記一般式(IV)で示される化合物、水沢化学工業株式会社製 ミズカラックL)8.5重量部、及びフェノール系酸化防止剤B(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:BASFジャパン株式会社製 IRGANOX1010)0.01重量部を第二押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体1(酢酸ビニル含有量5重量%、メルトフローレイト1.0g/10分:宇部丸善ポリエチレン株式会社製 VF105S)100重量部、R1が水素原子である上記一般式(I)で示される基を複数個有し且つ主鎖が分岐状低密度ポリエチレンからなるヒンダードアミン系光安定剤A(Clariant社製 製品名Hostavin(登録商標)NOW)0.7重量部、紫外線吸収剤(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン:BASFジャパン製 CHIMASSORB 81 )0.1重量部、及びフェノール系酸化防止剤B(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:BASFジャパン株式会社製 IRGANOX1010)0.01重量部を第三押出機に供給し、それぞれの押出機中で溶融混練させた後、第一〜三押出機から、農業用フィルム(A)、農業用フィルム(B)、及び農業用フィルム(C)がこの順で三層に積層一体化されてなる農業用積層フィルムを得た。なお、農業用積層フィルムの総厚みは100μmとし、農業用フィルム(A)、(B)及び(C)の厚さ比は20:60:20とした。
【0103】
(実施例6)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、エチレン−1−オクテン共重合体、密度0.92g/cm3、メルトフローレイト0.85g/10分、ダウ・ケミカル社製 製品名エリート5100)100重量部を第一押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体3(酢酸ビニル含有量15重量%、メルトフローレイト0.8g/10分:宇部丸善ポリエチレン株式会社製 VF115S)100重量部、ヒンダードアミン系光安定剤A1.2重量部、紫外線吸収剤(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン:BASFジャパン製 CHIMASSORB 81 )0.17重量部、Li−Al系赤外線吸収剤B(上記一般式(IV)で示される化合物、水沢化学工業株式会社製 ミズカラックL)8.5重量部、及びフェノール系酸化防止剤B(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:BASFジャパン株式会社製 IRGANOX1010)0.02重量部を第二押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体1(酢酸ビニル含有量5重量%、メルトフローレイト1.0g/10分:宇部丸善ポリエチレン株式会社製 VF105S)100重量部を第三押出機に供給し、それぞれの押出機中で溶融混練させた後、第一〜三押出機から、ポリオレフィン(PO)系樹脂フィルム(D)、農業用フィルム(E)、及びポリオレフィン(PO)系樹脂フィルム(F)がこの順で三層に積層一体化されてなる農業用積層フィルムを得た。なお、農業用積層フィルムの総厚みは100μmとし、ポリオレフィン系樹脂フィルム(D)、農業用フィルム(E)及びポリオレフィン系樹脂フィルム(F)の厚さ比は20:60:20とした。
【0104】
(実施例7〜9)
農業用フィルム(E)における、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系酸化防止剤、及び赤外線吸収剤の種類及び配合量をそれぞれ表2に示す通りに変更した以外は、実施例6と同様にして農業用積層フィルムを作製した。
【0105】
(評価)
上記で作製した農業用フィルム及び農業用積層フィルムについて、以下の手順に従って、黄変性、臭気性、透明性、保温性、耐候性、及び耐薬剤性を評価した。結果をまとめて表1及び2に示す。
【0106】
(黄変性)
農業用フィルム又は農業用積層フィルムを、温度40℃、相対湿度60%RHの環境下に1週間放置し、放置前と放置後の農業用フィルム又は農業用積層フィルムの色相(YI値)を色差測定器(SE2000、日本電色工業社製)により測定し、放置前後のYI値の差(ΔYI値)を求め、下記の基準により評価した。なお、ΔYI値が小さいほど、経時的な黄変の増大の程度が小さいことを示す。
◎:ΔYI値が1未満であった。
○:ΔYI値が1以上且つ3未満であった。
×:ΔYI値が3以上であった。
【0107】
(臭気性)
作製直後の農業用フィルム又は農業用積層フィルムを任意に抽出した成人10名のパネラーによって官能評価し、以下の基準で判定した。
◎:不快なにおいがないと評価した者が8名以上であった。
○:不快なにおいがないと評価した者が2名以上8名未満であった。
×:不快なにおいがないと評価した者が2名未満であった。
【0108】
(透明性)
作製直後の農業用フィルム又は農業用積層フィルムのヘーズ値(%)を、ヘーズ測定器(NDH2000、日本電色工業社製)により測定し、下記基準により透明性を評価した。
◎:ヘーズ値が15%未満であった。
○:ヘーズ値が15%以上且つ25%未満であった。
×:ヘーズ値が25%以上であった。
【0109】
(保温性)
赤外線分光光度計(日本分光社製 商品名「FT/IR−410」)を用いて農業用フィルム又は農業用積層フィルムの吸収スペクトルを測定し、各波数の赤外線吸収率に15℃の黒体輻射エネルギー吸収率を乗じて規格化し、400〜2000cm-1の波数範囲に亘って積算する。得られたエネルギー吸収率を総黒体輻射エネルギーで除して百分率とし保温指数とする。下記の基準で保温性の評価を行った。
◎:保温性が80%以上であった。
○:保温性が50%以上かつ80%未満であった。
×:保温性が50%未満であった。
【0110】
(耐候性)
サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター(スガ試験株式会社製)を用い、ブラックパネル温度60℃、相対湿度50%の環境下に、2000時間、農業用フィルム又は農業用積層フィルムを暴露した後、JIS K6781に準拠して、農業用フィルム又は農業用積層フィルムの破断点伸度を測定し、下記判断基準により耐候性を評価した。
◎・・・破断点伸度が600%以上であった。
○・・・破断点伸度が400%以上かつ600%未満であった。
×・・・破断点伸度が300%以上かつ400%未満であった。
【0111】
(耐薬剤性)
縦15cm×横15cmに裁断した農業用フィルム又は農業用積層フィルムを5wt%の亜硫酸水溶液に1日間浸漬した後、取り出して、サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター(スガ試験株式会社製)を用い、ブラックパネル温度60℃、相対湿度50%の環境下に、2000時間暴露した後、JIS K6781に準拠して、農業用フィルム又は農業用積層フィルムの破断点伸度を測定し、下記判断基準により促進耐候性を評価した。下記の基準で耐薬品性を評価した。
◎・・・残存破断点伸度が500%以上であった。
○・・・残存破断点伸度が350%以上かつ500%未満であった。
×・・・残存破断点伸度が200%以上かつ350%未満であった。
【0112】
【表1】


【0113】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂、下記一般式(I)で示される基を少なくとも1個有するヒンダードアミン系光安定剤、及び紫外線吸収剤を含有することを特徴とする農業用フィルム。
【化1】


(式中、R1は、水素原子、−CH2CH2COOC1225、又は−CH2CH2COOC1429である。)
【請求項2】
一般式(I)におけるR1が水素原子であることを特徴とする請求項1に記載の農業用フィルム。
【請求項3】
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用フィルム。

【公開番号】特開2012−161282(P2012−161282A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24163(P2011−24163)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】