説明

農業用フィルム

【課題】フィルムの置かれる環境やフィルムの種類によらず、正確な数字が示された農業用フィルムを提供する。
【解決手段】フィルム表面に、フィルム長さ方向に沿って端部からのフィルム長さを示す記号を刻印を施し、刻印により形成された凹部2にインクが付与されており、前記凹部2の深さが、前記インクにより形成されたインク塗膜の厚さよりも大きくした農業用フィルム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムに関する。さらに詳しくは、フィルム表面に記号が刻印された農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウス施設を利用した植物栽培が盛んに行われており、その被覆材として農業用フィルムが多用されている。たとえば、特許文献1には、フィルムの表面または裏面にフィルム長さに沿って端部からのフィルム長さを示す数字を設けた農業用フィルムが開示されている。かかる農業用フィルムによれば、一度に使用したフィルムの使用量や切り残されたフィルム残量が容易に把握できるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−204597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の農業用フィルムは、たとえばフィルム表面にインクジェットプリンタを使用して印字することを想定しており、農業用フィルムの置かれる環境により印字したインクが流れ落ちる、流れ落ちたインクがフィルムの接触面に転写される結果、たとえば不正確なフィルム残量が別箇所に印字されてしまう場合があるという問題がある。また、そもそもインク乗りが悪く印字が困難な特定のフィルムには適用できない、などの問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、フィルム表面に記号を刻印することにより、フィルムの置かれる環境やフィルムの種類によらず、正確な数字が示された農業用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の農業用フィルムは、フィルム表面に、フィルム長さ方向に沿って端部からのフィルム長さを示す記号を刻印を施したことを特徴とする。当該農業用フィルムは、フィルム長さを示す記号が印字ではなく刻印により施されているため、フィルムの置かれる環境やフィルムの種類によらず、正確な数字が示された農業用フィルムを提供することが可能である。また、フィルム表面にインクが付与されていないため、フィルム同士の接触面にインクが転写されることもない。
【0007】
前記農業用フィルムがポリエチレン製であることが好ましい。当該農業用フィルムは、従来のインク乗りの悪いポリエチレンフィルムであっても使用できるため、特にポリエチレン製フィルムにおいてフィルム長さを表示することが可能であるとの効果を奏する。
【0008】
前記刻印により形成された凹部にインクが付与されてなることが好ましく、前記凹部の深さが、前記インクにより形成されたインク塗膜の厚さよりも大きいことが好ましい。当該農業用フィルムは、刻印により形成された凹部にインクが付与されているため、たとえば農業用フィルムが透明の場合やその他の色彩が付与されている場合であっても、それとは異なる色を付与することで、記号の視認性を高めることができる。また、凹部の深さよりも、凹部に付与されたインクにより形成されたインク塗膜の厚さが小さいため、フィルムの接触面にインクが転写されることもない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルム表面に記号を刻印することにより、フィルムの置かれる環境やフィルムの種類によらず、正確な数字が示された農業用フィルムを提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の農業用フィルムの一実施形態(実施の形態1)にかかる農業用フィルムの斜視図
【図2】本発明の農業用フィルムの一実施形態(実施の形態1)にかかる農業用フィルムの端面図
【図3】本発明の農業用フィルムの一実施形態(実施の形態2)にかかる農業用フィルムの端面図
【図4】本発明の農業用フィルムの一実施形態(実施の形態3)にかかる農業用フィルムの端面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
本実施の形態の農業用フィルム1は、図1および図2に示されるように、農業用フィルム1表面に、フィルム長さ方向に沿って端部からのフィルム長さを示す記号を刻印を施されてなる。図1において、300との記号は、フィルムの残り長さが300メートルであることを示している。かかる300との記号は刻印により設けられてなる。
【0012】
本実施の形態における農業用フィルムとは、広く農業に使用される農業用フィルムすべてを指す。たとえば、ハウス栽培用フィルム、トンネル栽培用フィルムをいう。これら農業用フィルムの材質については特に限定されず、たとえばポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸共重合体フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルムなどがあげられる。これら農業用フィルムのうち、たとえばポリエチレンフィルムやエチレン−酢酸共重合体フィルムは、従来インクを用いて印字した場合にインク乗りが悪く、記号を付与することが困難であったか、付与できたとしても、農業用フィルムの保存環境によりインクが流れ落ちたり、農業用フィルムの接触面に転写されるなどの問題を生じるものであった。実施の形態の農業用フィルム1は、インクを印字するのではなく、記号が刻印された構成を有しているため、かかる問題を生じることはない。本実施の形態では、ポリエチレン製の農業用フィルム1を使用している。
【0013】
農業用フィルム1の厚さは特に限定されることはなく、刻印により凹部2が形成されるためにはたとえば30μm以上の厚さを有していることが好ましい。農業用フィルム1の厚さが30μmよりも薄い場合、凹部2を形成できないか、凹部2を形成するためには刻印の程度を小さくする必要があり、技術的に困難である。また、刻印により形成された凹部2の深さが浅い場合、刻印された記号の視認性が低下する可能性がある。なお、凹部2を形成する必要がない場合においては、刻印により農業用フィルム1を貫通する貫通孔を形成してもよい。本実施の形態の農業用フィルム1は、厚さ50〜200μmであり、刻印後の凹部2の深さは3〜20μmである。
【0014】
刻印の方法としては特に限定されないが、たとえば手打ちのほか、ロール式刻印機、プレス式刻印機、チャック式刻印機、ドット式刻印機、レーザーマーカーなどを用いてもよい。本実施の形態では、レーザーマーカーにより刻印されている。
【0015】
刻印場所についても特に限定されず、図1に示されるような農業用フィルム1の側端近傍であってもよい。
【0016】
なお、農業用フィルム1の長さを示す記号は、本実施の形態のように数字で表す場合に限定されず、使用者が識別しうる記号であればどのような記号であってもよい。また、農業用フィルム1の長さを示す記号は、農業用フィルム1の残り長さを示す記号に限定されず、使用した農業用フィルム1の長さを示す記号であってもよいし、農業用フィルム1の残り長さと使用した農業用フィルム1の長さの両方を示してもよい。また、刻印する記号としては、農業用フィルム1の長さを示す記号以外であってもよく、たとえば「残り5メートル」などの文字情報を記号として表示してもよい。
【0017】
本実施の形態にかかる農業用フィルム1によれば、農業用フィルム1の長さを示す記号が印字ではなく刻印により施されているため、農業用フィルム1の置かれる環境や農業用フィルム1の種類によらず、正確な数字が示された農業用フィルム1を提供することが可能である。また、農業用フィルム1の表面にインクが付与されていないため、ロール状に捲回された農業用フィルム1同士の接触面にインクが転写されることもない。また、インク乗りの悪いポリエチレン製フィルムにおいても問題なく記号を刻印することができる。
【0018】
(実施の形態2)
本実施の形態にかかる農業用フィルム3は、図3に示されるように、刻印により貫通孔4が形成されてなる以外は、実施の形態1の農業用フィルム1と同じであるため、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0019】
本実施の形態では、刻印により貫通孔4が形成されているため、農業用フィルム3の厚さが薄い場合であっても適用可能である。また、農業用フィルムの厚さを考慮した刻印の強さを調整する必要もなく、利便性がよい。
【0020】
(実施の形態3)
本実施の形態にかかる農業用フィルム5は、図4に示されるように、刻印により形成された凹部2にインク6が付与されてなる以外は、実施の形態1の農業用フィルム1と同じであるため、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0021】
本実施の形態では、刻印により設けられた凹部2にインク6が付与されてなる。これにより、たとえば農業用フィルム5が透明である場合やある特定の色彩が付されている場合において、農業用フィルム5そのものとは異なる色彩のインク6を付与することにより、刻印された記号の視認性を高めることが可能となる。また、蛍光インクを付与した場合など、暗闇でも視認性を高めることができる。
【0022】
なお、本実施の形態で使用されるインク6は特に限定されず、本実施の形態においてインク6とは、顔料インク、染料インクを含める概念である。
【0023】
図4に示されるように、インク6は凹部2に付与されてなるが、その付与されたインク6が形成するインク塗膜の厚さは凹部2の深さよりも小さく、フィルム表面にインク6の塗膜表面が突出しないよう構成されてなる。これにより、農業用フィルム5が捲回された状態であってもインク6の塗膜表面が農業用フィルム5と密着することがないため、インク6が転写されることが防止される。
【0024】
インク6の塗布方法は特に限定されず、各種従来の塗布方法を採用することが可能である。また、インク6のほかに、たとえば金箔などの金属箔を使用してもよい。
【0025】
さらに、記号としてたとえば農業用フィルム5の残り量を表示する場合にあっては、残り量が少なくなるにしたがって、インク6の色を変えてもよい。これによりユーザーに対して農業用フィルム5の残り量が少なくなったことを視覚的に認識させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の農業用フィルムは、フィルム表面に記号が刻印された農業用フィルムであり、たとえばフィルムの残り量をユーザーが容易に把握することが可能である。また、インクが使用されていないか、使用されているとしてもフィルムの表面に突出していないため、当該フィルムと密着する他の部位にインクが転写されることがない。そのため、種々の農業用フィルム等に利用できる。
【符号の説明】
【0027】
1、3、5 農業用フィルム
2 凹部
4 貫通孔
6 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム表面に、フィルム長さ方向に沿って端部からのフィルム長さを示す記号を刻印を施したことを特徴とする農業用フィルム。
【請求項2】
ポリエチレン製である請求項1記載の農業用フィルム。
【請求項3】
前記刻印により形成された凹部にインクが付与されてなる請求項1または2記載の農業用フィルム。
【請求項4】
前記凹部の深さが、前記インクにより形成されたインク塗膜の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項3記載の農業用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196145(P2012−196145A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60436(P2011−60436)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】