説明

農業用ポリオレフィン系多層フィルム

【課題】長期間屋外に展張しても波長変換効果を持続し、かつ、当該蛍光物質が良好に分散したポリオレフィン系樹脂からなる農業用フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも外層、中間層、内層を有する3層以上の積層構造を有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用多層フィルムであって、フィルム全層中のポリオレフィン系樹脂組成物に対して特定な蛍光物質を0.1〜5重量%含有し、中間層中の蛍光物質含有率(重量%)をX、内層中の蛍光物質含有率(重量%)をY、外層中の蛍光物質含有率(重量%)をZとしたとき、X>Y、かつX>Zであることを特徴とする農業用多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長成分として少なくとも600〜700nmの可視光成分を放射することのできる特定の蛍光物質を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用多層フィルムに関する。本発明の農業用多層フィルムは、透明性が良好で、波長変換効率が高く、波長変換効果の持続性に優れる。
【背景技術】
【0002】
近年、国内農業人口は高齢化に伴い減少の一途を辿っており、農業生産の新たな担い手が、安定的な所得を得る仕組みが求められている。食料安全保障の観点からも、農業生産方法を改善し、単位面積あたりの収量を増やし、安定的かつ効率的に農業生産可能な仕組みを構築する必要性に迫られている。
【0003】
樹脂フィルム等を使用した施設園芸による栽培形態は、露地栽培と比較して、農業所得を安定的に得られる為、様々な作物の栽培形態に合わせて進化してきた。単位面積当たりの収量増には、作業効率上や栽培環境管理上の観点から、農業用ハウスの大型化が効果的であり、このような大型ハウスをフィルムで覆うためのフィルム展張作業は多くの人手を要するようになってきている。しかしながら、農業従事者の数は年々減少すると共に高齢化が進行しており、毎年の展張作業に人手を確保することは容易ではない状況にある。この様な状況に鑑み、農業用ハウスに使用されるハウス展張用フィルムとして、展張作業が容易で極力張り替えまでの使用期間の長いフィルム、言いかえれば、2年以上の長寿命を有し、長期間にわたり当初性能を保持できる高性能な農業用被覆資材の開発が求められてきている。
【0004】
また、品質リスクを低減しながら単位面積当たりの収量を増加する方法として、曇天時、補光により光合成に必要な光量を補う方法が注目されてきている。例えば、栽培上の日照不足を補うための照明装置として、白熱電球、蛍光灯、高圧ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)などが用いられることもあるが、これらの照明装置は、太陽光と比較すると照度が低い事が多く、照度を得る為には多量のエネルギーを必要とし、経済効率が悪くなるデメリットがあった。更に、光源からの光は局所的照射となる為、照射効果を栽培面積全体の植物体に及ぼす事が困難であった。一方、栽培作物全体を照射しようと照射装置の数を多くするとその装置自体の影響で非効率となり問題となっていた。
【0005】
このような電気エネルギーコストの問題や局所照射の問題を解決する手段として、例えば特開平7−123870号公報の様な波長変換フィルムが提案されている。これら波長変換フィルムは、蛍光物質を用いて、短波長のエネルギーの高い光を、長波長の光、特に光合成時に光受容体が吸収するような光に変換する事により、栽培性改良を狙ったものである。中でも、600〜700nmの赤色光を増光する検討例が多く、波長変換により積み増しされる光量は、補光装置を用いた場合に比較すると極端に小さいが、照射面積は逆に補光装置を用いた場合よりも著しく大きくなるために、植物体全体で見た場合の使用効果の大小は、いかに波長変換効率を高く且つ長く持続させるかに依存する。しかしながら従来技術を用いた波長変換フィルムは、商品化されたものであっても、波長変換効果が十分でない上、4ヶ月程度で波長変換効果が消失し、フィルム単価が高いわりに効果が持続しない事が問題となっていた。その他、特開2007−135583号公報にも同様の波長変換資材が提案されているが、実施例で使用されているペリレン系波長変換物質は実際は効果持続性が低い上に、ポリエステル系の樹脂には相容するものの、ポリオレフィン系樹脂には相溶せず、幅広フィルムが作成できない等実用上の問題があった。
【0006】
また、近紫外線をより長波長の蛍光に変換する物質として式(1)で表される蛍光物質を農業用フィルムに使用することが検討されているが、当該蛍光物質は、その構造からして樹脂、特にポリオレフィン系樹脂中での分散性が劣り、それが透明性不良、コスト増大要因となる為、その改善が課題となっていた。この点を改善するため、例えば、分散性の劣る顔料を均一分散化する方法として、一般に、マイクロカプセル化する方法があるが、コスト的に非常に不利になるばかりでなく、溶融樹脂中のせん断によりカプセルが破壊される為、通常の樹脂加工装置では添加することが困難であり、一般工業製品に実際的に使用可能な分散方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−123870号公報
【特許文献2】特開2007−135583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、波長成分として少なくとも600〜700nmの可視光成分を含む光を放射することのできる特定の蛍光物質を配合した農業用ポリオレフィン系フィルムについて検討したところ、長期間屋外に曝露すると波長変換効果は持続せず、その原因が、蛍光物質がフィルムから抽出されて抜け出ることによるものであり、蛍光物質が抽出された後はボイドが形成されていることを確認した。また、当該蛍光物質はそれ自体としてポリオレフィン系樹脂への分散性に劣り、透明性が低下するという問題があり、これを追加的な工程を要さずに解決する方法は未だ見出されていない。そこで、本発明者らは、長期間屋外に展張しても波長変換効果を持続し、かつ、当該蛍光物質が良好に分散したポリオレフィン系樹脂からなる農業用フィルムを提供することを目的として検討したところ、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、式(1)で表される蛍光物質を0.1〜5重量%含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用多層フィルムにおいて、各層における当該蛍光物質を添加する量を調整して、中間層への配合量を高めることにより、波長変換効果の持続性を高めるものである。


(式中、R1〜R2は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
また、式(1)の蛍光物質のポリオレフィン系樹脂との分散性を高めるべく鋭意検討したところ、当該蛍光物質を無機フィラーと組み合わせて配合することにより分散性が良好となり、透明性も向上することも見出された。
【0010】
しかして、本発明は、
(1)少なくとも外層、中間層、内層を有する3層以上の積層構造を有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用多層フィルムであって、フィルム全層中のポリオレフィン系樹脂組成物に対して式(1)で表される蛍光物質を0.1〜5重量%含有し、中間層中の蛍光物質含有率(重量%)をX、内層中の蛍光物質含有率(重量%)をY、外層中の蛍光物質含有率(重量%)をZとしたとき、X>Y、かつX>Zであることを特徴とする農業用多層フィルム、
【化1】

(式中、R1〜R2は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
(2)フィルム全層中の蛍光物質の添加量の80%以上が中間層に含有されていることを特徴とする(1)に記載の農業用多層フィルム、
(3)外層および内層には蛍光物質を含有せず、中間層のみに蛍光物質を含有することを特徴とする(1)に記載の農業用多層フィルム、
(4)少なくとも中間層に無機フィラーが含有されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1に記載に農業用多層フィルム、
(5)無機フィラーがハイドロタルサイト類及び/またはその焼成体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1に記載の農業用多層フィルム、及び
(6)少なくとも中間層に分散剤が含有されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1に記載の農業用多層フィルム。
との構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の農業用多層フィルムは、透明性が良好で、波長変換効率が高く、波長変換効果の持続性に優れることから、高い栽培性改良効果を長期間得ることができる為、非常に好ましい。本発明の農業用資材は、ハウス、トンネル、マルチング用、袋掛用等の農業用フィルム及びネット等として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】レフランプを使用した分光放射計による500〜700nmでの測定結果のグラフ
【図2】レフランプを使用した分光放射計による測定結果(400〜700nmでの積算値及び640nmでの値)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の農業用多層フィルムは、下記式(1)で表される蛍光物質を含有したポリオレフィン系樹脂組成物よりなる事を特徴とする。
【化1】

(式中、R1〜R2は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
中でも、R1、R2はメチル基であるのが好ましい。
【0015】
式(1)の化合物は公知の方法で合成する事が出来るが、例えば、Chemistry Letters 2000、P1426「Synthesis and Nonlinear Optical Properties of
p-(Dimethylamino)benzylidene Dyes Containing Different Acceptors」等に記載の方法でも合成する事が出来る。その際、副生物として、下記式(2)の化合物を生成する事がある。
【化2】

【0016】
(式中、R8〜R9は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す)
その場合、式(1) / 式(2)の割合が、60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であることがポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点から好ましい。
【0017】
本発明の農業用多層フィルムにおいては、フィルム全層中のポリオレフィン系樹脂組成物に対して式(1)で表される蛍光物質を0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%含有する。
【0018】
本発明の農業用多層フィルムは、少なくとも外層、中間層、内層を有する3層以上の積層構造を有する。ここで、外層とは、ハウスの外張り用フィルムとして使用する場合はハウス外面に相当する。また、本発明の農業用多層フィルムは、外層と中間層、内層と中間層の間に更に層を有していてもよい。
【0019】
本発明の農業用多層フィルムにおいては、フィルム全層中のポリオレフィン系樹脂組成物に対して式(1)で表される蛍光物質を0.1〜5重量%含有し、中間層中の蛍光物質含有率(重量%)をX、内層中の蛍光物質含有率(重量%)をY、外層中の蛍光物質含有率(重量%)をZとしたとき、X>Y、かつX>Zであることが好ましい。また、本発明においては、フィルム全層中の蛍光物質の添加量の80%以上が中間層に含有されていることが更に好ましい。更に、本発明においては、外層および内層には蛍光物質を含有せず、中間層のみに蛍光物質を含有することが一層好ましい。当該蛍光物質を、多層フィルム中でこのように含有させることにより、蛍光物質の抽出によるフィルム外への抜け出しを抑えることができ、波長変換効果の持続性を高めることができる。
【0020】
また、本発明においては、少なくとも中間層に無機フィラーが含有されていることが好ましい。式(1)で表わされる蛍光物質は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が低いため、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルム中での分散性が劣り、その結果として、透明性が低下して、波長変換効率が悪いという問題があった。本発明者らは、分散性の低下が蛍光物質の構造に由来する高い凝集力に起因しているのではないかと考え、種々検討したところ、無機フィラーを蛍光物質と組み合わせて添加することにより、ポリオレフィン系樹脂組成物中での蛍光物質の分散性を向上できることを見出した。
【0021】
本発明の農業用多層フィルムに添加することができる無機フィラーは一種又は二種以上で組み合わせて用いることができる。用いることの出来る無機フィラーは本発明の効果を阻害しない範囲で、成分:Si,Al,Mg,Ca,Liから選ばれた少なくとも1つの原子を含有する無機化合物を用いることが出来る。例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ゼオライト、ハイドロタルサイト類化合物、リチウム・アルミニウム複合水酸化物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合炭酸塩化合物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合珪酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合水酸化物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合硫酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合炭酸塩化合物、複数種アニオンを含有する金属複合水酸化物塩等が挙げられる。これらは結晶水を脱水したものであってもよい。
【0022】
上記無機フィラーは天然物であってもよく、また合成品であってもよい。また、上記無機フィラーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能であるが、中でも、フィルムにおける蛍光物質との反応性を抑制する観点から、ハイドロタルサイト類化合物やその焼成品を好ましく使用することが出来る。ここで、ハイドロタルサイト類とは、一般式M2+1-xAl3+x(OH-)2(A1n-)x/n・mH2Oで表される化合物である。上記一般式において、M2+はMg2+、Ca2+及びZn2+からなる群から選ばれた2価の金属イオンを示し、A1n-はn価のアニオン、xは、0<x<0.5の範囲にある数、mは、0≦m≦2の範囲にある数、nは、1≦n≦3の範囲にある数を示す。その他の無機フィラーを使用する場合にも、加工温度を下げることにより、蛍光物質との反応性を抑制することが可能であるが、低温での樹脂成形によってメルトフラクチャー等の加工外観不良を生じやすく、樹脂組成を適切に選択する必要がある。
【0023】
上記無機フィラーの入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができ、例えば、ハイドロタルサイト類およびその焼成品としては、DHT4A(協和化学株式会社製)、MHTPD(協和化学株式会社製)、アルカマイザー(協和化学株式会社製)、HT−P(堺化学株式会社製)等を好ましく使用することが出来る。一方、リチウム・アルミニウム複合水酸化物としては、ミズカラック(水澤化学工業株式会社製)等が挙げられる。アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合珪酸塩化合物としては、オプティマ−LSA(戸田工業株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
また、上記無機フィラーは、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
【0025】
上記無機フィラーは、単独または2種以上組み合わせて使用することが出来る。その平均粒子径は好ましくは、0.05〜15μm、より好ましくは0.1〜10μmの範囲である。無機フィラーの平均粒子径が上記範囲より小さいと、樹脂中での分散性が劣りブツ(無機物の2次凝集物)が生成してフィルム外観が悪化すると共に、樹脂との混練時の粉立ちが激しくハンドリング性が劣る。逆に、赤外線吸収剤(保温剤)の平均粒子径が上記範囲より大きいと、透明性で劣り、押出し機ブレーカースクリーン部で目詰まりが生じ、生産性が悪化する。
【0026】
上記無機フィラーの含有量は、フィルム全層中のポリオレフィン系樹脂100重量%に対し好ましくは0.1重量%以上50重量%以下、更に好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。含有量が上記範囲未満では分散性改良効果が低く、上記範囲を超えると透明性低下等問題がある。本発明において、無機フィラーは蛍光物質と組み合わせて添加することから、少なくとも中間層に添加するものであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で他の層にも添加することができる。なお、含有量が20重量%程度以上になると、蛍光物質と無機フィラーとの反応による発泡が発生し得るが、フィルム成形温度を下げることにより反応を抑制することが可能である。この場合には、低温での樹脂成形による不具合(メルトフラクチャー等の加工外観不良の発生)を生じないように、ポリオレフィン系樹脂組成物中の組成を適切に選択する必要がある。
また、本発明においては、ハイドロタルサイト類化合物やその焼成品を、フィルム全層中のポリオレフィン系樹脂100重量%に対し1〜5重量%を少なくとも中間層に含有させると、上記の成形条件や樹脂組成の制約もなく、波長変換効率の優れた多層フィルムを得ることができ、特に好ましい。
【0027】
本発明の農業用多層フィルムにおいては、少なくとも中間層に分散剤を含有させることにより、蛍光物質の分散性をより向上させることができる。本発明の農業用多層フィルムに添加することができる分散剤には、界面活性剤(フッ素系界面活性剤を含む)、防霧剤、金属の有機酸塩、変性ワックス等が挙げられる。
【0028】
上記界面活性剤としては、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を始めとする、多価アルコールと高級脂肪酸類とから成る多価アルコール部分エステル系のもの、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好適である。このような防曇剤の具体例としては、例えば非イオン系界面活性剤、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンとアルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステルなどのソルビタン系界面活性剤やグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノパルミテート・モノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレートあるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等などのグリセリン系界面活性剤やポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのポリエチレングリコール系界面活性剤やその他トリメチロールプロパンモノステアレートなどのトリメチロールプロパン系界面活性剤やペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物;ソルビタン/グリセリンの縮合物と脂肪酸とのエステル、ソルビタン/アルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステル;ジグリセリンジオレートナトリウムラウリルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミン塩酸塩、ラウリン酸ラウリルアミドエチルリン酸塩、トリエチルセチルアンモニウムイオダイド、オレイルアミノジエチルアミン塩酸塩、ドデシルピリジニウム塩などやそれらの異性体を含むものなどを挙げることができる。
【0029】
上記フッ素系界面活性剤としては、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物としては、例えば、アニオン系含フッ素界面活性剤、カチオン系含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン系含フッ素界面活性剤、含フッ素オリゴマーなどがあげられる。
【0030】
上記の金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩を構成する金属種としては、Li,Na,K,Ca,Ba,Mg,Sr,Zn,Cd,Sn,Cs,Al,有機Snがあげられ、有機酸としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類があげられ、該カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−第三オクチルサリチル酸等の一価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシフタル酸、クロルフタル酸等の二価のカルボン酸あるいはこれらのモノエステル又はモノアマイド化合物、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の三価又は四価カルボン酸のジ又はトリエステル化合物などがあげられ、また該有機リン酸類としては、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステルなどがあげられ、また該フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチル第三オクチルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、第三ブチルフェノール、n−ブチルフェノール、ジイソブチルフェノール、イソアミルフェノール、ジアミルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクチルフェノール、イソオクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、第三オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノールフェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどがあげられる。
【0031】
本発明の農業用多層フィルムにおいては、少なくとも中間層に分散剤を含有させた場合、蛍光物質の分散性をより向上させることができる。好ましい分散剤の種類としては、パーフルオロアルキルポリエチレンオキシド付加反応物、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(2)ソルビタンステアリン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、モノグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート等があげられる。
分散剤を蛍光物質と一緒に添加すると、分散剤の種類、量及び添加層によっては、フィルム中での蛍光物質の分散状態が変わり、フィルムの隠蔽性が上がり、波長変換効果が減少してしまう等の原因により、拮抗作用が生じることが分かっているが(本発明者等による特願2009−273984参照)、分散剤をフィルム全層中の蛍光顔料に対して0.01〜2倍の量、好ましくは0.01〜1倍の量、更に好ましくは0.01〜0.5倍で配合すると、拮抗作用が生じず、かつ蛍光物質の分散性も向上することが可能である。
【0032】
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体、α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等との共重合体などがあげられ、例えば高密度、低密度または直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から好ましい。
【0033】
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を使用することが好ましい。
【0034】
これは、通常、メタロセンポリエチレンといわれているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、例えば下記の(A法)や(B法)により得られる。
【0035】
(A法)特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35005号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号の各公開公報、ヨーロッパ特許出願公開第420436号明細書、米国特許第5055438号明細書及び国際公開WO91/04247号明細書などに記載されている方法、即ちメタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、又は、例えば、国際公開WO92/01723号明細書等に開示されているような、メタロセン化合物と、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなる化合物からなる触媒、又は、更には、特開平5−295020号、特開平5−295022号などに記載されているような、メタロセン化合物を無機化合物に担持させた触媒などを使用して、主成分のエチレンと従成分の炭素数4〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.880〜0.930g/cm3 となるように共重合させる方法である。この重合方法としては、高圧イオン重合法、溶液法、スラリー法、気相法などを挙げることができる。これらの中では高圧イオン重合法で製造するのが好ましい。
【0036】
なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭56−18607号、特開昭58−25106号の各公報に記載されているが、圧力が100kg/cm 以上、好ましくは300〜1500kg/cm で、温度が125℃以上、好ましくは150〜200℃の反応条件下に高圧イオン重合法により製造されるものである。
【0037】
(B法)特開平6−9724号、特開平6−136195号、特開平6−136196号、特開平6−207057号の各公開公報に記載されているメタロセン触媒成分、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分、微粒子状担体、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分、イオン化イオン性化合物触媒成分を含む、オレフィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件でエチレンとα−オレフィン、具体的には炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.900〜0.930g/cm cm3となるように共重合させる方法。
【0038】
フィルムの良好な初期透明性及び透明持続性が得られる点では上記(A)法、(B)法に拘泥されることなく、メタロセン化合物を用いて重合されたポリオレフィン系樹脂、即ち、メタロセンポリエチレンを用いることが出来る。
【0039】
本発明で用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂は、酢酸ビニル含有量が10〜25重量%の範囲であり、好ましくは12〜20重量%の範囲である。酢酸ビニル含有量がこの範囲より小さいと、得られるフィルムが硬くなりハウスへの展張時にシワや弛みが出来やすく、防曇性に悪影響が出るため実用性に乏しく、また、酢酸ビニル含有量がこの範囲より大きいと、樹脂の融点が低いためハウス展張時に夏場の高温下でフィルムが弛み、風等でばたつきが起こり、ハウス構造体との擦れ等により破れが生じやすくなるため実用性に乏しい。
【0040】
本発明の農業用多層フィルムにおいては、外層、中間層及び内層をポリオレフィン系樹脂とすることが好ましいが、更に、低温成形に適した樹脂組成として、外層及び内層を、低密度ポリエチレン、中間層をエチレン酢酸ビニル共重合体とすることで、メルトフラクチャー等の加工時の外観不良を回避することが出来る。その場合、強度的な改善を目的として、外層及び内層に直鎖状低密度ポリエチレンを添加することも出来る。
【0041】
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂組成物に、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を配合することにより、長期耐候性、耐ブリードアウト性などに優れる農業用多層フィルムを得ることが出来る。前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、一般的農業用フィルムに用いられるヒンダードアミン系耐候剤と比較して、格段に長期耐候性を向上させる光安定剤としての効果を奏するばかりでなく、防曇性被膜を始めとする塗膜表面との密着性を向上する役割を果たす。
【0042】
本発明で使用できるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、エチレン(A)及び環状アミノビニル化合物(B)との共重合体、エチレン(A)と下記式(3)のビニル化合物の共重合体を使用することができる。該エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、多量添加することによりポリオレフィン系フィルムの表面性(水滴接触角等)を変えることができる。
【化3】

【0043】
上記式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。好ましくは、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基であり、R3は水素原子である。
【0044】
式(3)で表されるビニル化合物(B)は公知であり、公知の方法、例えば特公昭47−8539号、特開昭48−65180号公報等に記載された方法にて合成することができる。
式(3)で表されるビニル化合物(B)の代表例としては、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
【0045】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものとしては、そのエチレン(A)と環状アミノビニル化合物(B)との和に対する該(B)の割合が0.0005〜0.85モル%、より好ましくは0.001〜0.55モル%であるものが挙げられる。すなわち、本共重合体の好ましいものは、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマー(環状アミノビニル化合物(B))の含有量が少ない割に高い光安定性を有するものである。環状アミノビニル化合物(B)の濃度は0.0005モル%で充分に光安定化効果を発揮し、一方、0.85モル%を超えると実質的に不経済となる傾向にある。
環状アミノビニル化合物(B)の存在確認は、特開平4−80215号公報に記載されている通り、次のようにして行われる。13C−NMR(例えば日本電子製JNM−GSX270 Spectrometer)にて、公知の方法(例えば、化学同人発行「機器分析のてびき(1)」53〜56頁(1985)参照)に従い、文献記載のポリアクリル酸エチル(朝倉書店発行「高分子分析ハンドブック」969頁(1985)参照)及びエチレン−アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(Eur. Poly. J.25巻、4号、411〜418頁(1989)参照)の化学シフトを用いて、TMS基準における32.9ppmのピークを孤立したビニル化合物(B)の分岐点からα位にあるメチレン基によるものとし、35.7ppmのピークを連続した二つのビニル化合物(B)の分岐点に挟まれたメチレン基によるものと帰属した。これら二つのシグナルを用いて、エチレン(A)とビニル化合物(B)との共重合体においてビニル化合物(B)が孤立して存在する割合を、下記計算式によって算出することができる。
【数1】

【0046】
上記により見積もった側鎖にヒンダードアミン基を有するビニル化合物(B)由来の構造単位が2個以上連続せず、孤立して存在する割合が、共重合体中のビニル化合物(B)の総量に対して83%以上であることが好ましい。側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーが2個以上連続せず、孤立して存在する割合が83%未満であると、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマーの含量が少ない割に高い光安定性を有するという特徴が発揮されない場合がある。
【0047】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体のMFR(JIS−K6760(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値)は、0.1〜200g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1〜5g/10分である。MFRが上記範囲未満では、ポリオレフィン系樹脂とのなじみが悪く、ブレンドした場合、フィッシュアイやブツなどフィルム用途での可視欠点の原因となる。一方、MFRが上記範囲を超えると、分子量が大きい共重合体といえども拡散透失によるブリード、ブルーム現象が生起したり、得られる多層フィルムの強度が低下したりする原因となる。
【0048】
さらに、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、GPCを用い、単分散ポリスチレンにて検量線を作成し決定した、重量平均分子量と数平均分子量との比をもって表示されるMw/Mn(Q値)は3〜120の範囲にあることが望ましい。特に好ましい範囲は5〜20である。
【0049】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、所要単量体を共重合条件に付すことによって製造されるが、高圧法低密度ポリエチレン製造装置での製造が可能である。通常はラジカル重合で製造され、使用される触媒は遊離基発生開始剤、例えばジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、アゾ化合物等が有用である。
重合装置はエチレンの高圧ラジカル重合法で一般的に用いられている連続攪拌式槽型反応器又は連続式管型反応器等を使用することができる。重合圧力は1000〜5000kg/cm程度、重合温度は100〜400℃程度である。
【0050】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂組成物中における前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し2〜10重量部、好ましくは2〜8重量部である。この含有量が上記範囲未満では耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると経済性の点で好ましくない。
【0051】
本発明において、用いられる前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、コスト的な観点から、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。また、このエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、農業用として通常用いられる一種又は二種以上のヒンダードアミン系耐候剤と組み合わせて用いることができる。更に、エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を含有しない層に対して、通常用いられる一種又は二種以上のヒンダードアミン系耐候剤を用いることもできる。例えば内層と外層に含有させ、その他の層には農業用として通常配合されるヒンダードアミン系光安定剤を含有させることもできる。
【0052】
また、本発明の農業用多層フィルム中には、通常合成樹脂に使用される各種添加剤を併用することができる。それらの添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、耐候剤、上記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体以外のヒンダードアミン系化合物、赤外線吸収剤(保温剤)、防霧剤、充てん剤、金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩、ハイドロタルサイト化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、多価アルコール、ハロゲン酸素酸塩、硫黄系、フェノール系およびホスファイト系などの酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、アンチブロッキング剤、などがあげられる。
【0053】
本発明において使用可能なヒンダードアミン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物などがあげられる。
【0054】
本発明において使用可能な、農業用として通常用いられる市販のヒンダードアミン系化合物を例示すれば、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、TINUVIN NOR 371、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57、LA−900、T−1167L(以上、旭電化(株)製)、UV−3346、UV−3529、UV−3581、UV−3853(以上、サイテック社製)等が挙げられる。これらのピペリジン環含有ヒンダードアミン化合物は、一種又は二種以上で用いられる。
【0055】
上記ピペリジン環含有ヒンダードアミン系化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量%に対して、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。該含有量が0.001重量%未満では十分な効果が得られず、5重量%よりも多くても効果の向上がみられないばかりか、フィルムの物性を低下させるなどの悪影響を与える。
【0056】
本発明において用いられる前記ヒンダードアミン系化合物は、コスト的な観点から、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。例えば多層フィルムに防曇塗膜を形成する場合、塗膜に対する影響は、塗膜に接している層に添加された添加剤以外にも、他の層から移行、転写された添加剤からも及ぶことから、添加層は全層又は内外層が好ましいが、内層のみ、中間層のみ、外層のみ又はその任意の組み合わせでも構わない。
【0057】
上記紫外線吸収剤として、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’.5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−ト
リアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等のトリアジン類等があげられる。これらの紫外線吸収剤は、一種又は二種以上で用いられる。
【0058】
中でも、トリアジン型紫外線吸収剤は、紫外線カット効果の持続性の観点から好ましく使用できる。特に、トリアリールトリアジン型紫外線吸収剤が下記一般式(4)記載のトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤である場合、吸収波長がベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤よりも短波長にあるため、紫外線カットによる病虫害防除効果だけでなく、バラ等花き類栽培における花色発色(特に、アントシアニン系色素発現への阻害)に影響を及ぼさないので非常に好ましい。
【化4】

【0059】
(式中、R3〜R7は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
本発明で用いるフィルムにおいては、相溶性等の観点から更に好ましくは、前記式(4)におけるR3がオクチル基であり、R4〜R7がメチル基である場合と、前記式(4)におけるR3がヘキシル基であり、R4〜R7が水素原子であるものが挙げられる。
【0060】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量%に対し0.001重量%より多く2重量%未満、好ましくは0.01〜1重量%、更に好ましくは0.01〜0.8重量%である。含有量が上記範囲未満では耐候性改良効果が低く、上記範囲を超えると、ブリードアウトによる透明性低下等問題がある。
【0061】
本発明において一般式(4)で示される紫外線吸収剤を使用する場合は、コスト的な観点から、例えば多層フィルムに使用される場合、必ずしも多層フィルムの全層に含有されている必要はなく、少なくとも1層含有されていればよい。また、該一般式(4)で示される紫外線吸収剤は、一種又は二種以上のその他の紫外線吸収剤と組み合わせて用いることができる。
【0062】
本発明における農業用多層フィルムには、前記した無機フィラー以外に、外層及び/または内層に赤外線吸収剤(保温剤)(赤外線吸収能を有する無機微粒子)を含有させることができる。これら無機微粒子は一種又は二種以上で組み合わせて用いることができる。用いることの出来る無機微粒子は特に制限はないが、成分:Si,Al,Mg,Ca,Liから選ばれた少なくとも1つの原子を含有する無機化合物を用いることが出来る。例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ゼオライト、ハイドロタルサイト類化合物、リチウム・アルミニウム複合水酸化物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合炭酸塩化合物、アルミニウム・リチウム・マグネシウム複合珪酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合水酸化物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合硫酸塩化合物、マグネシウム・アルミニウム・珪素複合炭酸塩化合物、複数種アニオンを含有する金属複合水酸化物塩等が挙げられる。これらは結晶水を脱水したものであってもよい。
【0063】
上記赤外線吸収剤(保温剤)は天然物であってもよく、また合成品であってもよい。また、上記無機微粒子は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能である。
【0064】
上記赤外線吸収剤(保温剤)の入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができ、例えば、DHT4A(協和化学(株)製)、HT−P(堺化学(株)製)、オプティマ(戸田工業(株)製)やミズカラック(水澤化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0065】
また、上記赤外線吸収剤(保温剤)は、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
【0066】
上記赤外線吸収剤(保温剤)は、単独または2種以上組み合わせて使用することが出来る。その平均粒子径は好ましくは、0.05〜15μm、より好ましくは0.1〜10μmの範囲である。赤外線吸収剤(保温剤)の平均粒子径が上記範囲より小さいと、樹脂中での分散性が劣りブツ(無機物の2次凝集物)が生成してフィルム外観が悪化すると共に、樹脂との混練時の粉立ちが激しくハンドリング性が劣る。逆に、赤外線吸収剤(保温剤)の平均粒子径が上記範囲より大きいと、透明性で劣ったり押出し機ブレーカースクリーン部で目詰まりが生じたりして、生産性が悪化する。
【0067】
上記赤外線吸収剤(保温剤)は任意の層に添加することが出来るが、外層及び/または内層に添加する場合は、農業用ハウスの換気部分での巻き上げ部分で長期間凝縮水に接触した場合に水浸白濁することがあるので、外層及び/または内層の含有量は、水浸白濁が起こらない程度に任意に設定することができる。
【0068】
添加剤として使用される金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩を構成する金属種としては、Li,Na,K,Ca,Ba,Mg,Sr,Zn,Cd,Sn,Cs,Al,有機Snがあげられ、有機酸としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類があげられ、該カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ネオデカン酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−第三オクチルサリチル酸等の一価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オキシフタル酸、クロルフタル酸等の二価のカルボン酸あるいはこれらのモノエステル又はモノアマイド化合物、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の三価又は四価カルボン酸のジ又はトリエステル化合物などがあげられ、また該有機リン酸類としては、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステルなどがあげられ、また該フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチル第三オクチルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、第三ブチルフェノール、n−ブチルフェノール、ジイソブチルフェノール、イソアミルフェノール、ジアミルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクチルフェノール、イソオクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、第三オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノールフェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシ
ルフェノールなどがあげられる。
【0069】
上記充てん剤としては、フィルムのベタツキを抑制するために、あるいは保温性をさらに高めるために、例えばシリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カオリンクレー、マイカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、導電性酸化亜鉛、リン酸リチウムなどが用いられる。これらの充てん剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール) 、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール) 、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル) フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5. 5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、n−オクタデシル3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等があげられる。
【0071】
上記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられる。
【0072】
上記ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノ(ジノニルフェニル)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ (ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(C 12-15 混合アルキル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール) ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)( オクチル) ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等があげられる。
【0073】
上記着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0074】
本発明で使用可能なアンチブロッキング剤としては、無機系微粒子や有機系微粒子等を使用することが出来る。無機系微粒子の構成元素成分としてSi,Mg,Al,Li,Caの内から選ばれる少なくとも一つを含有する無機フィラーを使用することが出来る。中でも通常アンチブロッキング剤として使用することが出来る珪藻土、天然シリカ、合成シリカ、タルク、マイカ、ゼオライト等を好適に使用することが出来る。有機系微粒子としては、例えば熱可塑性樹脂を主成分としてなるポリマービーズを使用することが出来る。中でもアクリレート、メタクリレート、スチレン、ナイロンの重合体及び/又はこれら共重合体を好適に使用することが出来る。
【0075】
また、本発明の農業用多層フィルムに防曇効果を付与する目的で、式(1)の蛍光物質との拮抗作用を及ぼさない範囲であれば、界面活性剤(フッ素系界面活性剤を含む)を添加することができる。
【0076】
上記界面活性剤としては、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を始めとする、多価アルコールと高級脂肪酸類とから成る多価アルコール部分エステル系のもの、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好適である。このような防曇剤の具体例としては、例えば非イオン系界面活性剤、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンとアルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステルなどのソルビタン系界面活性剤やグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノパルミテート・モノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレートあるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等などのグリセリン系界面活性剤やポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのポリエチレングリコール系界面活性剤やその他トリメチロールプロパンモノステアレートなどのトリメチロールプロパン系界面活性剤やペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物;ソルビタン/グリセリンの縮合物と脂肪酸とのエステル、ソルビタン/アルキレングリコールの
縮合物と脂肪酸とのエステル;ジグリセリンジオレートナトリウムラウリルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミン塩酸塩、ラウリン酸ラウリルアミドエチルリン酸塩、トリエチルセチルアンモニウムイオダイド、オレイルアミノジエチルアミン塩酸塩、ドデシルピリジニウム塩などやそれらの異性体を含むものなどを挙げることができる。
【0077】
上記フッ素系界面活性剤としては、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物としては、例えば、アニオン系含フッ素界面活性剤、カチオン系含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン系含フッ素界面活性剤、含フッ素オリゴマーなどがあげられる。
【0078】
本発明の農業用多層フィルムには、式(1)の蛍光物質とポリオレフィン系樹脂に、上述した成分が組み合わされてなり、更に下記の任意成分を、必要に応じて含有させることができる。任意成分とは、その他安定剤、耐衝撃性改善剤、架橋剤、充填剤、発泡剤、帯電防止剤、造核剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、難燃剤、その他の螢光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤などを挙げることができる。
【0079】
本発明の農業用多層フィルムに、各種添加剤を配合する方法として、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機その他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば、溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー加工、ロール加工、押出成型加工、ブロー成型、インフレーション成型、溶融流延法、加圧成型加工、ペースト加工、粉体成型等の方法を好適に使用することができる。
【0080】
式(1)で表される蛍光物質を含有する樹脂組成物が熱分解し、多層フィルムを成形する際に、発泡によるフィルムの強度低下、透明性低下を招くことがある。従って、樹脂温度として、230℃以下、好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下で成形するのがよい。例えば、160℃の成形温度では、メルトフラクチャー等の外観不良が問題になることがあるが、樹脂組成を適切に選択することにより、回避できる。
【0081】
本発明の農業用多層フィルムにおいては、無機微粒子及び/又は合成樹脂バインダーを主成分とする防曇剤組成物からなる層を多層フィルム上に形成することができる。該防曇剤組成物からなる層としては、例えば、特開2001−89751記載の防曇性被膜や、バインダー樹脂の無い特開2005−96430のタイプ、更に、特開2007−282625や特開2008−67645記載のような多層構造の防曇性被膜も好適に使用できる。更に、蒸着や効果微粒子デポジットと呼ばれるような乾式の塗布方法も適用可能である。
【0082】
無機微粒子は金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩等、金属複合水酸化物等、フィルム表面への親水性付与を阻害しない範囲で公知のものを使用することが出来る。
【0083】
無機微粒子は、湿式塗布の場合、無機質コロイド状物質を好ましく使用することができる。無機質コロイド状物質としては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、硫酸バリウム、アンチモン酸亜鉛等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、コロイダルシリカとコロイダルアルミナで、これらは、単独で用いても併用しても良い。これらのうち、光触媒作用の強い無機微粒子は、他の無機微粒子との併用により実質の添加濃度を減らすか、親水性を阻害しない範囲での表面処理を施すことにより、基材や合成樹脂バインダーへの影響を少なくする必要がある。
【0084】
上記無機質コロイド状物質は、乾燥時における無機質コロイドゾル同士や無機質コロイドゾルと合成樹脂バインダー間の接着性向上の為に、フィルム表面への親水性付与を阻害しない範囲で、表面処理を施すことが出来る。コロイダルシリカ表面への表面処理の方法としては、公知のものが使用できるが、中でもシランカップリング剤を始めとするシラン化合物を好適に用いることが出来る。
【0085】
本発明における合成樹脂バインダーに使用されるバインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂からなる多層フィルムとの相性から、特に、アクリル系樹脂、及び/又はウレタン系樹脂を用いることが好ましく、更に好ましくは後述する(a)親水性アクリル系樹脂からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるもの、(e)疎水性アクリル系樹脂と、ポリウレタンエマルジョンからなるもの、が以下に示す各々の特質から、好ましい。
【0086】
アクリル系樹脂としては、(a)親水性アクリル系樹脂からなるもの、(b)一分子内に疎水性分子鎖ブロックと親水性分子鎖ブロックとを含むブロック共重合体からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるものが挙げられるが、特に(a)が、初期の防曇濡れが早い点で好ましいが、流失しやすい傾向にあるので、架橋反応等で塗膜にある程度の耐水性を付与することが必要となる。一方(c)については、耐水性に優れており、防曇持続性に関しては好ましいが、疎水性アクリル系樹脂による表面疎水化を抑制する為に、バインダー樹脂と無機質コロイド状物質の比率を調整する必要がある。
【0087】
(a)の親水性アクリル系樹脂としては、水酸基含有ビニル単量体成分を主成分(好ましくは60重量%〜99.9重量%、更に好ましくは65重量%〜95重量%)とし、酸基含有ビニル単量体成分を0.1〜30重量%含有する共重合体、その部分中和物または完全中和物が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体成分としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類があげられ、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等があげられる。これらは単独重合体であってもよく、これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を主成分とし、これらと共重合しうる他の単量体との共重合体であってもよい。
【0088】
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類と共重合しうる酸基含有単量体としては、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類が挙げられ、特に好ましくは、カルボン酸に属する(メタ)アクリル酸である。
【0089】
その他の共重合体成分としては、たとえばスチレン、ビニルテルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酸化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等があげられる。これらに加え架橋部位を含有するモノマーを共重合させておき、適切な架橋剤を適切な架橋温度で反応させることにより、架橋密度を向上させ、耐水性を向上させることが出来る。
【0090】
(c)の疎水性アクリル系樹脂としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体を挙げることができる。
【0091】
疎水性アクリル系樹脂の製造に用いられるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0092】
疎水性アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、0〜40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
【0093】
アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい。
【0094】
アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
【0095】
疎水性アクリル系樹脂は、特に、ガラス転移温度が35〜80℃のものを用いるのが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、高すぎる場合、透明性のある均一な塗膜を得るのが困難となりやすい。
【0096】
疎水性アクリル系樹脂は水系エマルジョンとして用いるのが好ましい。各単量体を水系媒質中での重合によって得られた水系エマルジョンをそのまま使用しても良く、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したものでもよく、また上記のような重合によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマルジョンとしたものでもよい。
【0097】
一方、本発明に用いることができるウレタン系樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンの水性組成物、エマルジョンが挙げられるが、防曇性被膜と基材であるポリオレフィン系樹脂多層フィルムとの密着性、耐水性及び耐傷付き性の点でポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましく、更なる防曇性被膜の耐水性、耐傷付き性向上並びに防曇性を発現するまでの時間及び防曇持続性の点でシラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンがより好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0098】
シラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンとは分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有してなり、具体的には水相中にシラノール基含有ポリウレタン樹脂及び前記強塩基性第3級アミンが溶解しているもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系のもの(エマルジョン)をいう。
【0099】
ポリウレタン水性組成物は、その配合量を固形分重量比で疎水性アクリル系樹脂に対して0.01以上、2以下、更に好ましくは0.01以上1以下にすることが好ましい。0.01に満たないときには耐傷付き性の向上が見られにくく、また、防曇性を発現するまでの時間が長く、十分な防曇効果が発揮しにくい。また、多すぎるときは、耐傷付き性が配合量に比例して向上しにくいばかりでなく、塗布後に形成される塗膜が白濁化し光線透過率を低下させやすく、また、コスト面でも不利であり好ましくない。
【0100】
本発明における防曇剤組成物を調製するときに、本発明の効果を阻害しない範囲で、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。
【0101】
陰イオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩等が挙げられる。
【0102】
陽イオン系界面活性剤としては、エタノールアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0103】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベンゾエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート等のジグリセリン脂肪酸エステル類;グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ジペンタエリスリトールモノパルミテート等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミテート・ハーフアジペート、ジグリセリンモノステアレート・ハーフグルタミン酸エステル等のソルビタン及びジグリセリン脂肪酸・2塩基酸エステル類;またはこれらとアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオンオキサイド等の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシプロピレンソルビタンモノステアレート等;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;シュガーエステル類等が挙げられる。
【0104】
高分子界面活性剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、セルロースエーテル類等が挙げられる。
【0105】
これら界面活性剤の添加は、バインダー樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、樹脂の固形分100重量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。
【0106】
本発明に係る防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、特にアクリル系樹脂同士を架橋させ、被膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、カルボジイミド系化合物、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。
【0107】
アミン化合物類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン;4−4’−ジアミノジヘニルメタン、m−フェニレンジアミン等の芳香族アミンが使用される。アジリジン化合物類としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス[1−(2−メチル)−アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)−アジリジニル]トリホスファトリアジン等が使用される。
【0108】
エポキシ化合物類としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応生成物、フェノール(又は置換フェノール)とホルムアルデヒドとの樹脂反応生成物とエピクロルヒドリンの反応により生成されるエポキシ化ノボラック樹脂、エピクロルヒドリン及び脂肪族多価アルコール例えばグリセロール、1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール又は類似の多価アルコール成分から生成される樹脂状反応生成物及び過酢酸を用いるエポキシ化により得られる樹脂等が使用される。エポキシ化合物類では、さらに三級アミン類や四級アンモニウム塩類を触媒として併用することができる。これら架橋剤は、その添加量がアクリル系樹脂固形分に対して0.1〜30重量%の範囲で使用することができる。
【0109】
本発明における防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。
【0110】
本発明における防曇剤組成物には、通常の塗料に配合することが出来る顔料、顔料分散剤、充填剤、沈降防止剤、たれ防止剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、密着性向上剤、防腐剤、防藻剤、防菌剤、防臭剤、紫外線吸収剤、耐候剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、カップリング剤その他各種添加剤を配合することが出来る。添加量は特に限定されず、本発明の効果に影響しない範囲で適宜選択すればよい。
【0111】
本発明における防曇剤組成物の配合方法は、特に限定されないが、均一混合されることが好ましく、配合時の温度及び混合方法は適宜適切な方法を選択することが出来る。
【0112】
また、基材である多層フィルムと防曇剤組成物からなる層との接着性が充分でない場合には、多層フィルムに表面処理を施しておいてもよい。多層フィルムの表面に施す処理の方法としては、コロナ放電処理、スパッタエッチング処理、ナトリウム処理、サンドブラスト処理等の方法が挙げられる。コロナ放電処理法は、針状あるいはナイフエッジ電極と対極間で放電を行わせ、その間に試料を入れて処理を行い、フィルム表面にアルデヒド、酸、アルコールパーオキサイド、ケトン、エーテル等の酸素を含む官能基を生成させる処理である。スパッタエッチング処理は、低気圧グロー放電を行っている電極間に試料を入れ、グロー放電によって生じた正イオンの衝撃によりフィルム上に多数の微細な突起を形成するものである。サンドブラスト処理は、フィルム面に微細な砂を吹きつけて、表面上に多数の微細な凹凸を形成するものである。これら表面処理の中では、塗布層との密着性、作業性、安全性、コスト等の点から、コロナ放電処理が好適である。
【0113】
本発明において、多層フィルムの最表面に防曇剤組成物からなる層を形成するには、公知の湿式、乾式の塗布方法を任意に選択することができるが、幅広塗工可能で、且つ塗工設備が簡易な湿式塗工が好ましく用いられる。湿式塗工の場合、一般に防曇剤組成物の溶液または分散液をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。
【0114】
塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃の、更に好ましくは70〜150℃の温度範囲で乾燥すればよい。乾燥温度が200℃より高い場合、短い乾燥時間であっても、基材内の蛍光物質の熱劣化を引き起こし、基材フィルムの融解や熱収縮等変形の問題が生じる可能性がある。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法、及び紫外線硬化法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
【0115】
湿式乾燥の場合、防曇剤組成物の塗工量は、特に限定されないが、乾燥時の単位面積あたりの塗工量として、好ましくは0.01〜10g/m、更に好ましくは0.1〜5g/mである。この範囲以下では良好な防曇性を得にくく、この範囲を超えると白化による透明性低下を引き起こす為、好ましくない。
【0116】
湿式乾燥の場合の防曇剤組成物からなる層(「防曇性被膜」ともいう。)の厚みは、多層フィルムの1/10以下を目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。防曇性被膜の合計厚さが多層フィルムの1/10より大であると、基材フィルムと被膜とでは屈曲性に差があるため、被膜が基材フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、被膜に亀裂が生じて多層フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
【0117】
本発明の農業用多層フィルムは、防曇性被膜に加え、それ以外の塗膜を形成することが出来る。例えば防曇性被膜をハウス内面に、防塵性塗膜をハウス外面に形成しても良い。その場合、ブロッキング防止効果が防塵性塗膜により更に向上する場合がある。
【0118】
本発明の農業用多層フィルムの厚みについては、強度やコストの点で0.01〜1mmの範囲のものが好ましく、0.05〜0.5mmのものがより好ましく、更に好ましくは0.05〜0.2mmである。この範囲未満では強度的に問題があり、この範囲を超えると成形が困難なうえ、展張作業性に問題がある。
【0119】
また、本発明の農業用多層フィルムは、3層フィルムを構成する層比としては、成形性や透明性及び強度の点から1/0.5/1〜1/5/1の範囲が好ましく、1/2/1〜1/4/1の範囲がより好ましい。また、外層と内層の比率としては、特に規定されるものではないが、得られるフィルムのカール性から同程度の比率とするのが好ましい。
【0120】
本発明に係る農業用多層フィルムを、実際に使用するにあたっては、防曇性被膜の設けられた側をハウス又はトンネルの内側となるようにして展張するのがよい。
【0121】
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、透明性が良好で、波長変換効率が高く、波長変換効果の持続性に優れる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を実施例、比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0123】
実施例1
以下の組成を有するポリオレフィン系三層フィルム(内層/中間層/外層の厚み比=1/3/1、総厚み:150μm)を三層インフレーション成形により調製した。
フィルムの主な構成は下記の通りとした。その他に特に記載しないが、農業用フィルムを構成するのに必要な添加剤(アンチブロッキング剤や酸化防止剤等の添加剤)は市販のものを通常量使用した。
【0124】
ハウス内外層:メタロセンPE=メタロセン触媒で製造したエチレン・αオレフィン共重合体(MFR:2g/10分、密度:0.912)
ハウス中間層:EVA=エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
蛍光物質として、SMART LIGHT RL1000(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)(式(1)において、R1=R2=メチル基である化合物)をフィルム全層中の樹脂組成物に対して1.5%となるように中間層のみに添加した。
また、無機フィラーとして、MHT−PD(Mg−Al系水酸化物炭酸塩)をフィルム全層中の樹脂組成物に対して15%となるように中間層のみに添加した。
上記のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、ダイス温度を190℃、押出機温度を180℃に設定して三層インフレーション成形を行った。
【0125】
比較例1
前記蛍光物質を、フィルム全層中の樹脂組成物に対して、内層1.5%、中間層1.5%、外層1.5%で添加した以外は、実施例1と同様にして、ポリオレフィン系三層フィルムを調製した。
【0126】
比較例2
前記蛍光物質を、フィルム全層中の樹脂組成物に対して、内層2.25%、外層2.25%で添加した以外は、実施例1と同様にして、ポリオレフィン系三層フィルムを調製した。
【0127】
実施例1、比較例1及び比較例2で調製した多層フィルムを、屋外に15カ月展張した後の450nmにおける全光線超過率を測定し、結果について以下の基準で判定した。なお、実施例1、比較例1及び2では、ハウスを密閉して試験フィルムを展張し、参考例1では密閉しない状態で展張した。
◎:65%以下、○:75%以下、×:75%より大
【0128】
【表1】

【0129】
表1から、蛍光物質を中間層のみに添加した実施例1の多層フィルムは、蛍光物質を全層に添加した場合(比較例1)、内外層に添加した場合(比較例2)に対して、波長変換効率の持続性が優れる。
【0130】
実施例2
以下の組成を有するポリオレフィン系三層フィルム(内層/中間層/外層の厚み比=1/3/1、総厚み:150μm)を三層インフレーション成形により調製した。
フィルムの主な構成は下記の通りとした。その他に特に記載しないが、農業用フィルムを構成するのに必要な添加剤(アンチブロッキング剤や酸化防止剤等の添加剤)は市販のものを通常量使用した。
ハウス内外層:メタロセンPE=メタロセン触媒で製造したエチレン・αオレフィン共重合体(MFR:2g/10分、密度:0.912)
ハウス中間層:EVA=エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
蛍光物質として、SMART LIGHT RL1000をフィルム全層中の樹脂組成物に対して1.25%となるように中間層のみに添加した。上記のポリオレフィン系樹脂組成物をダイス温度を190℃、押出機温度を180℃に設定して三層インフレーション成形を行った。
【0131】
実施例3
実施例2のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、無機フィラーとしてDHT−4A(Mg−Al系水酸化物炭酸塩)をフィルム全層中の樹脂組成物に対して2%となるように中間層のみに添加して、実施例2と同様の成形条件で多層フィルムを調製した。
【0132】
実施例4
実施例3のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、フッ素系界面活性剤(DS403N)をフィルム全層中の樹脂組成物に対して0.4%となるように中間層のみに添加して、実施例2と同様の成形条件で多層フィルムを調製した。
【0133】
実施例5
実施例2のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、SMART
LIGHT RL1000をフィルム全層中の樹脂組成物に対して2.5%となるように中間層のみに添加した。上記のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、ダイス温度を190℃、押出機温度を180℃に設定して三層インフレーション成形を行った。
【0134】
実施例6
実施例5のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、無機フィラーとしてDHT4A(Mg−Al系水酸化物炭酸塩)をフィルム全層中の樹脂組成物に対して2%となるように中間層のみに添加して、実施例5と同様の成形条件で多層フィルムを調製した。
【0135】
実施例7
実施例6のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、フッ素系界面活性剤(DS403N)をフィルム全層中の樹脂組成物に対して0.4%となるように中間層のみに添加して、実施例5と同様の成形条件で多層フィルムを調製した。
【0136】
実施例8
実施例7のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、SMART
LIGHT RL1000をフィルム全層中の樹脂組成物に対して0.63%となるように中間層のみに添加した以外は、実施例7と同様にして、多層フィルムを調製した。
【0137】
実施例9
実施例2のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、無機フィラーとしてMHT−PD(Mg−Al系水酸化物炭酸塩)をフィルム全層中の樹脂組成物に対して2%となるように中間層のみに添加し、また、DS403Nをフィルム全層中の樹脂組成物に対して0.4%となるように中間層のみに添加して、実施例2と同様の成形条件で多層フィルムを調製した。
【0138】
実施例10
ハウス内外層:LDPE(低温成形用PE樹脂;MFR:2.8g/10分、密度:0.925)
ハウス中間層:EVA=エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
蛍光物質として、SMART LIGHT RL1000をフィルム全層中の樹脂組成物に対して2.5%となるように中間層のみに添加し、無機フィラーとしてDHT4Aをフィルム全層中の樹脂組成物に対して12%となるように中間層のみに添加し、また、DS403Nをフィルム全層中の樹脂組成物に対して0.4%となるように中間層のみに添加したポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、ダイス温度を150℃、押出機温度を150℃に設定して三層インフレーション成形を行った。
【0139】
比較例3
実施例2のポリオレフィン系樹脂組成物の配合において、SMART
LIGHT RL1000を添加しない配合で、実施例2と同様の成形条件で多層フィルムを調製した。
【0140】
上記の実施例、比較例で得たポリオレフィン系三層フィルムについて、発泡を以下の基準で評価した。
発泡:発泡の有無を目視により観察した。
【0141】
また、これら多層フィルムについて、レフランプを使用した分光放射計により以下の方法で測定を行った。
レフランプを用いた分光放射計による測定:
光源をNational(現パナソニック)製写真用レフランプPRF−500W(フラッド500W)として、英弘精機株式会社製分光放射計MS−720にて測定し、1nm毎のデータとしてパソコン上に取り込んでデータを解析した。
【0142】
表2に各三層フィルムの発泡の評価結果を示す。また、実施例5、実施例7及び比較例3について、レフランプを使用した分光放射計による500〜700nmでの測定結果のグラフを図2に示す。また、実施例2〜10、比較例3及びブランク(光源のみ)についてレフランプを使用した分光放射計による測定で得られた結果を用いて、400〜700nmでの積算値と、640nmでの値をプロットしたグラフを図3に示す。ここで、400〜700nmの積算値は可視光領域でのフィルムの透過性を表し、この値が高いほど透明性に優れる。また、640nmの値は、蛍光物質により波長変換される光量の程度を表し、この値が高いほど波長変換効率が高いことを示している。また、これら400〜700nmの積算値と640nmの値も表2に示す。
【0143】
【表2】


【0144】
表2から実施例2〜10で得られた多層フィルムは、発泡、目視外観において良好であることが示される。また、図2及び3から、蛍光物質を中間層に含有させた三層フィルムは、波長変換効率が良好であり、蛍光物質と無機フィラーを、更に分散剤を組み合わせると、透明性が高くかつ波長変換効率にも優れるフィルムが得られることが示される。
【0145】
以上の結果より、本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、波長成分として少なくとも600〜700nmの可視光成分を放射することができ、透明性が良好で、波長変換効果の持続性にも優れることから、高い栽培性改良効果を長期間得ることができる為、非常に好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外層、中間層、内層を有する3層以上の積層構造を有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる農業用多層フィルムであって、フィルム全層中のポリオレフィン系樹脂組成物に対して式(1)で表される蛍光物質を0.1〜5重量%含有し、中間層中の蛍光物質含有率(重量%)をX、内層中の蛍光物質含有率(重量%)をY、外層中の蛍光物質含有率(重量%)をZとしたとき、X>Y、かつX>Zであることを特徴とする農業用多層フィルム。
【化1】

(式中、R1〜R2は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【請求項2】
フィルム全層中の蛍光物質の添加量の80%以上が中間層に含有されていることを特徴とする請求項1に記載の農業用多層フィルム。
【請求項3】
外層および内層には蛍光物質を含有せず、中間層のみに蛍光物質を含有することを特徴とする請求項1に記載の農業用多層フィルム。
【請求項4】
少なくとも中間層に無機フィラーが含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載に農業用多層フィルム。
【請求項5】
無機フィラーがハイドロタルサイト類及び/またはその焼成体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の農業用多層フィルム。
【請求項6】
少なくとも中間層に分散剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の農業用多層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−960(P2013−960A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133751(P2011−133751)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(504137956)MKVドリーム株式会社 (59)
【Fターム(参考)】