説明

農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム

【課題】防曇性の低下という劣化現象が大幅に改善された農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムの提供。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂100重量部に、無機フィラーを0.1〜30重量部配合してなるフィルム層を少なくとも一層含む基体ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面又は両面に、シリカゾル及び/又はアルミナゾルと疎水性熱可塑性樹脂からなるバインダーを主成分とする防曇剤組成物に由来する被膜層が形成されてなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムに関するものである。更に詳しくは、防曇性の持続
性に優れた農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農業用作物を半促成または抑制栽培して、その市場性、生産性を高める
ため、農業用塩化ビニルフィルムやポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、及びポリオレフィン系樹脂を主体とした特殊フィルムなどの農業用被覆材に
よる被覆下に有用作物を栽培する、いわゆるハウス栽培やトンネル栽培が盛んに
行われている。
【0003】
なかでも、ポリオレフィン系樹脂を主体とした特殊フィルムは、フィルム中に
可塑剤を含まず化学的構造も安定しているため、長期の使用にも光線透過性は殆
ど変わらず、焼却しても有害ガスの発生がなく、安価であることなどから近年盛
んに利用されるようになってきている。
【0004】
ハウスまたはトンネルの被覆資材として使用されるフィルムには、フィルムの
内側表面に付着した凝縮水を、栽培作物に落下させることなく、フィルム内面に
沿って流下させるといういわゆる「防曇性」を有することが要求される。
【0005】
従来、農業用途において、ポリオレフィン系フィルムに防曇性を付与する方法
として、液状の防曇剤または防曇剤を含有する溶液を塗布する方法、あるいは防
曇剤を練り込む方法などが提案されており、実用化されている。
【0006】
塗布する方法では、ポリオレフィン系樹脂など疎水性樹脂表面に防曇剤を塗布
し、親水性を付与するものであるが、この方法では短期間の防曇性には優れるも
のの、防曇剤が水滴によって流出し易く、防曇持続性が甚だ不十分なものしか得
られていない。
【0007】
また、防曇剤を練り込む方法においては、練り込まれた防曇剤が樹脂表面へブ
リードアウトすることにより、防曇性を発現させるものであるが、この方法では
フィルムからの防曇剤のブリードアウトが速く、該フィルムをハウスに展張後1
年も経過すると防曇性の効果が薄れるため、防曇持続性の改良検討が行われてい
る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、防曇性の低下という劣化現象が大幅に改善された農業用ポリ
オレフィン系樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨とするところは、ポリオレフィン系樹脂100重量部に、
無機フィラーを0.1〜30重量部配合してなるフィルム層を少なくとも一層含
む基体フィルムの片面又は両面に、シリカゾル及び/又はアルミナゾルと疎水性
熱可塑性樹脂を主成分とする防曇剤組成物に由来する被膜層が形成されてなる農
業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに存する。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合
体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体であり、具体的には
例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレ
ン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン
−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等があげられる。これら
のうち、密度が0.890〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−
オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸
ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好
ましい。
【0012】
本発明に係わる農業用フィルムに配合する無機フィラーとしては、一般に用い
られる各種の化合物があげられ、特に、カルシウム、マグネシウム、アルミニウ
ム等の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩及び、その複合物が好ましい。具体
的には、クレー(カオリンクレー、ソフタクレー、バードクレー、焼成クレー、
ロウ石クレー)、タルク(滑石、フレンチチョーク)、アスベスト(クリソタイ
ル、クロシドライド、アンモナイト、アンソフェライト、トレモライト、アクチ
ノライト)、マイカ、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、アタパルジャイ
ト、軽石粉、スレート粉、長石粉、ケイ灰石、フラースアース、トリポリ石、蛭
石、含水又は無水の沈降性ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等で代表され
るケイ酸塩、シリカ(石英粉、ケイ藻土、ケイ石粉、ヒドロゲル、エアロゲル)
、ハイドロタルサイト類(含水又は無水アルミニウム/マグネシウム塩基性炭酸
塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩:アルミニウム/Zn塩基性炭酸塩、硫酸塩、硝
酸塩、リン酸塩)、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化
亜鉛、酸化アルミ(含水又は無水)等の酸化物、炭酸カルシウム(重質炭カル、
軽質炭カル、膠質炭カル又は沈降性炭カル、胡粉、チョーク、ウィッチング、ア
ラレ石)、炭酸マグネシウム(沈降性、含水及び無水)等の炭酸塩、硫酸バリウ
ム(バライト粉)、沈降性硫酸バリウム、硫酸カルシウム(石コウ、軟石コウ又
は沈降性)、ブランフィクス等の硫酸塩、ライム(水酸化アルミ)、水酸化マグ
ネシウム等の水酸化物、カーボンブラック(ファーネス、チャンネル、ランプ、
サーマル、アセチレン)、グラファイト、炭素繊維、炭素球、無煙炭粉等の炭素
原子から成る物、銅、アルミニウム、ブロンズ、鉛、亜鉛、スチール等の金属の
粉末、繊維、ホイスカーあるいはワイヤー、又は繊維状、球状、発泡、フライア
ッシュ球、シラスバルーン等のガラス物質、バリウムフェライト、マグネタイト
、二硫化モリブデン、チタン酸カリ等があげられる。
【0013】
これらは、1種または2種以上を組合せて使用してもよい。
【0014】
これら無機フィラーの形状は各種形状でよく、形状は具体的には、球状、立方
状、板状、柱状、六角板状、紡錘状、針状、繊維状、薄片状等がある。
【0015】
また、無機フィラー粒子の大きさは特に制限されるものではないが、好ましく
は0.01〜10ミクロン程度である。
【0016】
無機フィラーの配合量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.
1〜30重量部の範囲内である。配合量が0.1重量部未満では、基体フィルム
との密着性が向上しない。他方、30重量部を越える場合には、フィルムの透明
性が悪化すると共に、防曇性も悪化する。従って、配合量は0.1〜30重量部
であり、好ましくは、0.5〜20重量部である。
【0017】
更に、本発明の農業用フィルムには、必要に応じて樹脂用添加剤、例えば防曇
剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、熱安定剤、顔料、染料等の着
色剤、防霧剤、帯電防止剤等を通常の量で配合することができる。
【0018】
防曇剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系
界面活性剤等があげられる。これらのうち、非イオン系界面活性剤が望ましい。
【0019】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベン
ゾフェノン系、シアノアクリレート系、フェニルサリシレート系等の紫外線吸収
剤があげられる。中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤および/またはベンゾ
トリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0020】
光安定剤としては、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに通常配合される種
々の化合物を使用することができる。具体的には例えば4−アセトキシ−2,2
,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4
−ピペリジン)アジペート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペ
リジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート等のヒンダードアミン系
化合物があげられる。
【0021】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、
ジラウリルチオジプロピオネート等をあげることができる。
【0022】
滑剤ないし熱安定剤としては、例えばポリエチレンワックス、流動パラフィン
、ビスアマイド、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪族アルコール、ステア
リン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ジブチル錫
ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、有機リン酸金属塩、有機ホスファイト化
合物、フェノール類、β−ジケトン化合物等があげられる。
【0023】
着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハ
ンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレ
ッド、キナクリドン、カーボンブラック等をあげることができる。
【0024】
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤があげられ、具体的には、通常の界面活
性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界
面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含
有する界面活性剤が好ましい。
【0025】
以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組合せて使用することが
できる。上記各種添加剤の配合量は、フィルムの性能を悪化させない範囲、通常
はオレフィン系樹脂100重量部当り5重量部以下の範囲で選ぶことができる。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂に、無機フィラー及び各種添加剤を配合するには、各々
必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーその
他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得ら
れた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば溶融押出し
成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー成形法等の従来か
ら知られている方法によればよい。
【0027】
本発明の基体フィルムは無機フィラーを含有するポリオレフィン系樹脂フィル
ム層のみからなる単層でもよいが、防塵性や柔軟性及び強度などの点から積層フ
ィルムとしてもよい。
【0028】
基体フィルムを積層フィルムとする場合は、少なくともポリエチレン又は酢酸
ビニル含有量10重量%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルム
と、酢酸ビニル含有量10〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体からな
るフィルムとからなる積層フィルムであることが好ましい。
【0029】
無機フィラーは、少なくとも一層に配合してあれば、特に規定はなく、全層に
配合してもよい。特に、無機フィラーを含有するポリオレフィン系樹脂からなる
フィルム層の両面に、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルム層を設けた基体フ
ィルムが好ましい。
【0030】
本発明に係るフィルムは、透明でも、梨地でも、半梨地でもよく、その用途は
農業用ハウス(温室)、トンネル等の被覆用に使用できるほか、マルチング用、
袋掛用等にも使用できる。
【0031】
また、フィルム厚みについては強度やコストの点で0.03〜0.3mmの範囲
のものが好ましく、0.05から0.2mmのものがより好ましい。
【0032】
基体フィルムの片面又は両面に被膜形成する防曇剤組成物は、シリカゾル及び
/又はアルミナゾルを主成分としており、これにシリカまたはアルミナのバイン
ダー成分が混入されている。
【0033】
シリカゾル及び/又はアルミナゾルは平均粒子径が5〜100mμの範囲のも
のが好ましい。平均粒子径が100mμを超えると塗膜が白く失透し易くまた、
5mμに満たないと防曇剤組成物の安定性に欠けるので好ましくない。これらは
、それぞれ単独で使用しても両者を組合せて使用してもよい。また、単独又は両
者を組合せて使用する際に平均粒子径の異なる2種以上のものを組合せて用いて
もよい。両者を組合せるときは、重量比でシリカゾル/アルミナゾルが95〜5
/5〜95(全体として100とする)の割合にすることが好ましい。
【0034】
シリカゾル及び/又はアルミナゾルは、通常市販されている水に分散された製
品そのもの、または通常市販されているシリカ粉末、アルミナ粉末を水に分散さ
せて水性ゾルとしたもの、いずれであってもよい。
【0035】
アルミナゾルは、高濃度で水に分散させようとすると、分散液の粘度が急激に
高まるといういわゆるチキソトロピー性を示し、均質な分散液が得にくいが、コ
ロイドミルの様な媒質剪断内部攪拌機を用いると、均質な分散液を得ることがで
きる。また、この分散液にシリカゾルを混合すると、分散液の粘度を降下させる
ことができる。
【0036】
他方のシリカゾルは、多くの場合粒子表面は陰電荷に帯電しているが、アルミ
ナゾルと組合せて用いるときは陰電荷に帯電しているものを用いるのは好ましく
ない。これは、シリカゾルとアルミナゾルとを混合すると、混合分散液は急激に
凝集し、ゲル化し、分散不良を生起する。従って、コロイダルシリカは、粒子表
面に陽電荷に帯電したものとするのがよい。
【0037】
バインダー成分として使用する疎水性熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂
、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩
化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチロー
ル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等があげられるが、防
曇被膜の耐水性及び防曇持続性の点で疎水性アクリル系樹脂が好適である。これ
らは1種または2種以上を組合せて使用してもよい。
【0038】
疎水性アクリル系樹脂とは、少なくとも合計70重量%のアクリル酸の或いは
メタクリル酸のアルキルエステル類〔以下これを(メタ)アクリル酸アルキルエ
ステル類と記す。〕、又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル類とアルケニル
ベンゼン類との単量体からな混合物及び0〜30重量%の共重合しうるα,β−
エチレン性不飽和単量体とを通常の重合条件に従って、例えば界面活性剤の存在
下に、重合させて得られる重合体又は共重合体である。
【0039】
防曇剤組成物の主成分であるシリカゾル及び/又はアルミナゾルは、その配合
量が固形分重量比でバインダー成分の0.5〜40倍の範囲にあることが好まし
い。40倍を超えるときは、防曇効果が配合量に比例して向上しないばかりでな
く、塗布後に形成される塗膜が白濁化し光線透過率を低下させる現象があらわれ
、また塗膜が粗雑で脆弱になり易くなる傾向がある。一方、0.5倍に満たない
ときは、十分な防曇効果を発揮し難くなる。
【0040】
防曇剤組成物には、バインダー成分同士を架橋させる架橋性化合物を併用して
もよい。こうすることにより防曇被膜の耐水性を向上させることができる。架橋
性化合物の使用量は、バインダー成分の固形分に対し0.1〜30重量%の範囲
、特に0.5〜10重量%の範囲が好ましい。
【0041】
更に、防曇剤組成物には、必要に応じ、消泡剤、滑剤、帯電防止剤、その他の
各種添加剤を混合することができる。
【0042】
本発明の防曇剤組成物は、通常液状で使用される。液状分散媒としては、水を
含む親和性ないし水混合性溶媒があり、水:メチルアルコール、エチルアルコー
ル、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類:エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類:ベンジルアルコール等の
環式アルコール類:セロソルブアセテート類:ケトン類等があげられる。
【0043】
これらは単独で用いても併用してもよいが、本発明で用いる防曇剤組成物の分
散安定性、フィルム表面に塗布した後の濡れ性、液状分散媒除去の難易、経済性
を勘案して決めるのが好ましい。
【0044】
また、基体フィルムの表面に形成される防曇剤組成物の被膜層は、固形分の付
着量として、一般に0.01〜10g/m2、特に0.1〜5g/m2の範囲である
ことが好ましい。
【0045】
基体フィルムの表面に防曇剤組成物の被膜層を形成するには、一般に各組成物
の溶液または分散液をドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコ
ート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、
ハケ塗り等それ自体公知の塗布方法を採用し塗布後乾燥すればよい。塗布後の乾
燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方
法を採用する場合、通常50〜250℃、好ましくは70〜200℃の温度範囲
で乾燥すればよい。加熱乾燥には熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等
適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用す
るのが有利である。
【0046】
基体フィルムと被膜組成物に由来する被膜との接着性が十分でない場合には、
基体フィルムの表面を予めアルコールまたは水で洗浄したり、プラズマ放電処理
、あるいはコロナ放電処理したり、他の塗料あるいはプライマーを下塗りする等
の前処理を施しておいてもよい。
【0047】
また、基体フィルムの片面又は両面への防曇剤組成物に由来する被膜層の形成
は、フィルムのハウス展張時の作業性を向上する事などを目的に基体フィルムの
片面に形成しても両面に形成してもよい。
【0048】
本発明に係る農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを実際に農業用に使用する
にあたっては、被膜が片面のみに形成されているときは、この被膜の設けられた
面を、ハウスまたはトンネルの外側となるようにして使用する。
【発明の効果】
【0049】
本発明に係る農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、基体フィルム中に無機
フィラーが配合されていることと、表面の防曇剤組成物に由来する被膜層との相
乗効果により、防曇持続効果が飛躍的に向上するので、農業用被覆資材としての
利用価値は極めて大きい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例にもとづいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を越
えない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1〜12、比較例1〜5
(1)基体フィルムの調製
三層インフレーション成形装置として三層ダイに100mmφ((株)プラ工研
製)を用い、押出機は外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を4
0mmφ((株)プラ技研製)として成形温度160℃、ブロー比2.0、引取速
度5m/分にて表−1及び表−2に示した成分からなる厚さ0.15mmの積層ま
たは単層フィルムを得た。
(2)防曇剤組成物被膜層の形成
表−1及び表−2に示した主成分とバインダー成分と架橋剤及び液状分散媒と
を配合して防曇剤組成物を得た。
【0052】
(1)で調製した基体フィルムの片面に、(積層フィルムの場合は内層の上に
)、上記の防曇剤組成物を#5バーコーターを用いて、各々塗布した。塗布した
フィルムを80℃のオーブン中に1分間保持して液状分散媒を揮散させた。得ら
れた各フィルムの被膜の量は約1g/m2であった。
【0053】
得られた各フィルムについて、次のような評価試験を行った。その結果を表−
3及び表−4に示した。
1)透明性試験
本発明で得られたフィルムの波長555ミリミクロンにおける平行光線透過率
を分光光度計(日立製作所製、330型)によって測定し、その値を示した。
2)防曇性試験
三重県一志郡の圃場に、間口5.4m、棟高3m、奥行15mのパイプハウス
6棟を構築し、各棟に上記フィルムの1種を防曇剤組成物被膜層の成形された面
がハウスの内側になるように被覆した。評価方法は、展張中のフィルム内側にし
た面に、水滴の付着する状況を経時的に肉眼で観察した。評価基準は、次の通り
である(平成元年12月試験開始)。
◎・・・フィルム表面(ハウス内側に面した方、以下同じ)に付着した水滴同士
が合体して薄膜状に広がり、この薄膜状部分の面積がフィルム表面の2/3以上
にわたるもの。
○・・・フィルム表面に付着した水滴同士の合体は認められるが、この薄膜状部
分の面積がフィルム表面の2/3未満、1/2以上のもの。
○x・・・フィルム表面に付着した水滴同士の合体は認められるが、この薄膜状
部分の面積がフィルム表面の1/2未満のもの。
△・・・フィルム表面に付着した水滴同士の合体は認められるが、薄膜状部分の
形状が認められないもの。
×・・・フィルム表面に付着した水滴同士の合体が認められないもの。
3)促進防曇性試験
500ccビーカーに300ccの水(50℃)を入れ、防曇剤組成物被膜層の形
成された面がビーカーの内側になるように検体フィルムにてビーカーを被覆した
のち、恒温水槽(50℃)にビーカーを地表面から10度傾斜させて低部から2
/3の部分まで水浸させ、25℃の恒温室に所定時間放置した後のフィルム面の
状況を肉眼観察した。フィルム面の水滴の流れ状態を前記防曇性試験と同じ基準
で評価した。
4)密着性試験
防曇剤組成物の被膜を形成した面にセロハンテープを接着し、このセロハンテ
ープを剥した時に、塗膜の剥離状況を肉眼で観察した。評価基準は、次の通りで
ある。
○ ・・・塗膜が全く剥離せず、完全に残ったもの。
○x・・・塗膜の2/3以上が剥離せず残ったもの。
△ ・・・塗膜の2/3以上が剥離したもの。
× ・・・塗膜が完全に剥離したもの。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体フィルムが、ポリエチレン又は酢酸ビニル含有量10重量%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルム層(A)と、酢酸ビニル含有量10〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルム層(B)を含んでおり、且つ、フィルム層(A)又は/及びフィルム層(B)にポリオレフィン系樹脂100重量部に無機フィラーが0.1〜30重量部配合されており、その基体フィルムの、片面又は両面に、シリカゾル及び/又はアルミナゾルと疎水性熱可塑性樹脂からなるバインダーを主成分とする防曇剤組成物に由来する被膜層が形成されてなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項2】
防曇剤組成物に由来する被膜のシリカゾル及び/又はアルミナゾルの配合量が、固形分重量比で疎水性熱可塑性樹脂の0.5〜40倍の範囲である請求項1記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項3】
疎水性熱可塑性樹脂が疎水性アクリル系樹脂である請求項1又は2記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。

【公開番号】特開2006−315409(P2006−315409A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167668(P2006−167668)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【分割の表示】特願平6−63074の分割
【原出願日】平成6年3月31日(1994.3.31)
【出願人】(000176774)三菱化学エムケーブイ株式会社 (29)
【Fターム(参考)】