説明

農業用光反射シート

【課題】本発明は、光反射性能に優れ、埃や汚れがつきにくく長期間使用可能であり、加えて遮光性が高いことからシート下の雑草の発育を抑制することを可能とする農業用光反射シートに関する。
【解決手法】フィラーを20〜60重量%含有する熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に、着色した織布または不織布から選ばれる遮光材(B)を積層貼合した複合フィルムからなる農業用光反射シートであって、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の反射率R1が70〜100%、正反射率R3が0.1〜4.0%であり、かつ農業用光反射シートの光線透過率が0〜10%である農業用光反射シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、りんご、もも、ぶどう、なし等の園芸作物を栽培する際に、その根本周囲の地面を覆うように使用することで、太陽光を反射し、果実の色づきを促進する農業用光反射シートに関するものである。本発明の農業用光反射シートを用いた場合は、果実の色づきにむらが生じにくく、シート自体にごみ・汚れがつきにくく、更に設置した地面の雑草防止効果や地温抑制効果が高い。
【背景技術】
【0002】
栽培果実の色づきを促進するための農業用光反射シートとしては、例えば、金属箔をポリウレタンシート等の基材に張り合わせて構成された金属光沢のあるシートがよく知られており(例えば特許文献1)、使用されている。
【0003】
しかしながら、これらの金属箔は正反射率が高く、拡散反射率が低いため、入射光を広範囲に反射することができず、果実全体へ満遍なく光をあてる効果が低く、果実の色づきにむらを生じやすいものであった。加えて、長期間使用による金属箔の劣化も激しく、長期の使用に支障があった。
【0004】
近年は農業用資材として、不織布を基材として光反射性の樹脂層を設けた光反射性マルチシート(例えば、特許文献2)や、光線透過率が50%以下の白色フィルムと補強材からなる遮光シート(例えば、特許文献3)が提案されている。しかしこれらのシートはいずれも遮光を目的とするものであり、本発明の分野である農業用光反射シートに応用した場合には、光反射性能が低く所期の目的達成には不十分であり、また白色フィルムが帯電防止性を有していないためにごみが付着しやすく、長期間使用により汚れが堆積して光反射性が低下するといった欠点があった。
【特許文献1】特開平6−143474号公報
【特許文献2】特開2003−333940号公報
【特許文献3】国際公開第2003/018306号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に光の拡散反射性に優れ、かつ埃や汚れがつきにくく、長期間の使用が可能であり、加えて遮光性が高いことから、シート下の雑草の発育を抑制することを可能とする、農業用光反射シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、フィラーを20〜60重量%含有する熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に、着色した織布または不織布から選ばれる遮光材(B)を積層貼合した複合フィルムからなる農業用光反射シートであって、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の反射率R1が70〜100%、正反射率R3が0.1〜4.0%であり、かつ農業用光反射シートの光線透過率が0〜10%である農業用光反射シートにおいて、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、その表面の0.1mm2あたりの山数が1〜6の範囲であることが好ましく、その空孔率が25〜60%であることが好ましく、その面積延伸倍率が30〜80倍であることが好ましく、その表面固有抵抗値が1.0×1012Ω以下であり、かつその表面の水接触角が、60°以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を構成する熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、遮光材(B)を構成する織布または不織布が着色されており、そのマクベス濃度が1.2以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の農業用光反射シートは、光反射性能が高く、特に広範囲にわたって光を拡散反射するため、むらの無い果実の色づきを促進するために有用であり、また光線透過率も低いことから下草発育防止効果も高く農業用シートとしてきわめて有用である。加えて撥水性を有し、かつ帯電防止性もあることから汚れ付着機能も高く、長期間使用しても性能低下しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において、本発明の農業用フィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
【0010】
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、主に光反射の機能を有するものであり、フィラーを含有し且つ延伸されたフィルムであって、特定の光学物性を有するものである。効率よく光を拡散反射することでむらの無い果実の色づきを実現するものである。
【0011】
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に用いられる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。基材フィルムに使用する熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートや同モノマーに更に共重合可能な成分を加えて得た共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
これらの中でも、耐水性、撥水性、耐薬品性や生産コスト等の観点から、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、中でもプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン,4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。立体規則性は特に制限されず、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。また、共重合体は2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
このような熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に25〜80重量%で使用することがよく、30〜70重量%で使用することが好ましい。熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)における熱可塑性樹脂の含有量が25重量%以上であれば、後述する熱可塑性樹脂延伸フィルムの延伸成形時に表面にキズが生じにくい傾向があり、80重量%以下であれば、光拡散反射に寄与する充分な空孔数が得られやすい傾向がある。
【0013】
<フィラー>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に熱可塑性樹脂とともに用いられるフィラーとしては、各種の無機フィラーまたは有機フィラーを使用することができる。
無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土等を例示することができる。また、上記無機フィラーを種々の表面処理剤により表面処理した表面処理品も例示できる。中でも重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム及びそれらの表面処理品、クレー、珪藻土を使用すれば安価で延伸時の空孔形成性がよいために好ましい。さらに好ましいのは、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムの種々の表面処理剤による表面処理品である。表面処理剤としては、例えば樹脂酸、脂肪酸、有機酸、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、石油樹脂酸、これらのナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩、または、これらの脂肪酸エステル、樹脂酸エステル、ワックス、パラフィン等が好ましく、非イオン系界面活性剤、ジエン系ポリマー、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、燐酸系カップリング剤等も好ましい。硫酸エステル型陰イオン界面活性剤としては、例えば長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、硫酸化油等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられ、スルホン酸型陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。また、脂肪酸としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘベン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が挙げられ、有機酸としては、例えばマレイン酸、ソルビン酸等が挙げられ、ジエン系ポリマーとしては、例えばポリブタジエン、イソプレンなどが挙げられ、非イオン系界面活性剤としてはポリエチレングリコールエステル型界面活性剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は1種類または2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの表面処理剤を用いた無機フィラーの表面処理方法としては、例えば、特開平5−43815号公報、特開平5−139728号公報、特開平7−300568号公報、特開平10−176079号公報、特開平11−256144号公報、特開平11−349846号公報、特開2001−158863号公報、特開2002−220547号公報、特開2002−363443号公報などに記載の方法が使用できる。
【0014】
有機フィラーとしては、用いる熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移点よりも高い融点またはガラス転移点(例えば、120〜300℃)を有するものが使用される。例えば熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であれば有機フィラーとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、環状オレフィン単独重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリエチレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等を例示することができる。中でも、使用する熱可塑性樹脂に非相溶性の有機フィラーを使用することが空孔形成の点で好ましい。
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)には、無機フィラーまたは有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、無機フィラーと有機フィラーを混合して使用してもよい。
【0015】
後述する熱可塑性樹脂フィルムの延伸成形により、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)中に発生させる空孔サイズの調整のため、上記無機フィラーの平均粒径、または有機フィラーの平均分散粒径は好ましくはそれぞれが0.05〜2.0μmの範囲、より好ましくはそれぞれが0.1〜1.5μmの範囲のものを使用する。平均粒径または平均分散粒径が0.05μm以上のフィラーを用いれば、所望の空孔がより得られやすくなる傾向がある。また、平均粒径または平均分散粒径が2.0μm以下のフィラーを用いれば、空孔サイズがより均一になる傾向がある。
【0016】
本発明に用いうる無機フィラーの平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(株式会社日機装製、商品名)により測定した累積で50%にあたる粒子径(累積50%粒径)の測定(マイクロトラック法)や、比表面積からの換算(例えば(株)島津製作所製の粉体比表面積測定装置SS−100を使用し比表面積を測定して換算する)や、電子顕微鏡による一次粒径の観察(例えば粒子100個の平均値を平均粒径とする)などにより求めることができる。本発明では電子顕微鏡により無機フィラーの一次粒子100個を観察し、その粒径(長径)の平均値を平均粒径とする方法を用いた。
【0017】
本発明に用いうる有機フィラーの平均分散粒径は、例えば、有機フィラーが溶融混練により熱可塑性樹脂中に分散した状態での樹脂フィルム断面を、電子顕微鏡により分散粒子の少なくとも10個を観察して、その粒径(長径)の平均値として求めることができる。
後述する熱可塑性樹脂フィルムの延伸成形により、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)中に発生させる空孔量の調整のため、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)中への上記フィラーの配合量は20〜60重量%の範囲であり、好ましくは21〜50重量%の範囲であり、より好ましくは22〜40重量%の範囲にする。フィラーの配合量が20重量%以上であれば、充分な空孔数が得られやすくなる傾向がある。また、フィラーの配合量が75重量%以下であれば、表面にキズがより生じにくくなる傾向がある。
【0018】
<添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)には、必要により、蛍光増白剤、熱安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を配合してもよい。熱安定剤としては、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の安定剤を0.001〜1重量%、光安定剤としては、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤を0.001〜1重量%、無機フィラーの分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を0.01〜4重量%配合してもよい。
【0019】
<成形>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の成形方法としては、一般的な押出成形に、1軸延伸や2軸延伸を組み合わせた方法が使用できる。
【0020】
<積層>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、単層であっても、ベース層と表面層の2層構造であっても、ベース層の両面に表面層が存在する3層構造であっても、ベース層と表面層との間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造であっても良い。
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を2層以上の多層構造とする積層方法としては、2機以上のスクリュ−型押出機を接続した多層TダイやIダイを使用して、ベース層と表面層の溶融原料をダイ内部で積層して共押出する方法、ベース層をいったん成形したのち、表面層の溶融原料を直接又は易接着層を介して押し出し、ベース層上に貼合(溶融ラミネート)して設ける方法、ベース層と表面層を個別に成形したのち、接着層を介して貼合(ドライラミネート)して設ける方法等が挙げられる。
【0021】
<延伸>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、1軸延伸乃至2軸延伸されたものである。延伸成形の具体例としてはスクリュ−型押出機を接続した単層または多層のTダイやIダイを使用して、溶融樹脂をシート状に押し出した後、ロ−ル群の周速差を利用した縦延伸で1軸延伸する方法、さらにこの後にテンターオーブンを使用した横延伸を組み合わせた逐次2軸延伸方法や、テンターオーブンとリニアモ−タ−の組み合わせによる同時2軸延伸方法、スクリュ−型押出機に接続された単層または多層のOダイを使用して溶融樹脂を筒状に押し出した後、空気を吹き込むインフレーション成形方法などが挙げられる。
【0022】
延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度、ガラス転移点より2〜60℃高い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは95〜165℃、ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点:約70℃)のときは100〜130℃が好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は上記の積層方法と延伸方法を組み合わせた方法で得ることができる。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)中に発生させる空孔の量や大きさを調整するために、該フィルムの面積延伸倍率は、好ましくは30〜80倍の範囲であり、より好ましくは35〜60倍である。面積延伸倍率が30〜80倍の範囲内であれば、微細な空孔が充分に得られやすく、反射率の低下も抑えやすい。
本発明における面積延伸倍率とは、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の縦延伸倍率と横延伸倍率の積であって、特にフィルム(A)中の最も延伸軸数の多い層のものを採用する。
【0024】
本発明において熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)中に発生させる空孔の単位体積あたりの量は、「空孔率」として表記され、下記式(1)にしたがって計算される値を意味する。熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の空孔率は、好ましくは25〜60%の範囲とし、より好ましくは30〜58%とする。空孔率が25〜60%の範囲内であれば、反射率の低下も抑えやすい。同式中、ρ0はフィルム(A)の真密度を表し、ρはフィルム(A)の密度(JIS−P−8118)を表す。フィルム(A)の真密度ρ0は、延伸前の樹脂組成が多量の空気を含むものでない限り、その密度と等しい。
【0025】
【数1】

【0026】
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)が多層構造である場合、個々の層の延伸軸数は、2層構造では1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/2軸、3層構造では1軸/1軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/2軸であっても良く、それ以上の層構造の場合も、延伸軸数は任意に組み合わされる。
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)が多層構造であり、それぞれの層が異なる延伸軸数を有するとしても、延伸前の樹脂組成物の密度と層構成比率(坪量比)、および延伸後の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の密度が分かれば、式(1)にて一義的に算出できる。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、好ましくはポリオレフィン系樹脂30〜80重量%、フィラー20〜70重量%を含み、より好ましくはポリオレフィン系樹脂50〜70重量%、フィラー30〜50重量%を含む。
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)が多層構造であって、ベース層及び表面層がそれぞれフィラーを含有する場合は、ベース層はポリオレフィン系樹脂40〜85重量%、フィラー15〜60重量%を含み、表面層がポリオレフィン系樹脂25〜75重量%、フィラー25〜75重量%を含むのが好ましい。
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)中に含有させるフィラーが総計75重量%以下であれば、樹脂延伸フィルムの強度が高く、実地使用に十分に耐えるものが得られやすい傾向がある。フィラー含有量が20重量%以上であれば、十分に空孔が発生するため、該空孔に起因する光反射性が得られやすい傾向がある。
【0028】
得られた延伸フィルムは、必要により熱処理(アニ−リング処理)を行い、結晶化の促進による延伸応力の緩和を行うことで、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の熱収縮率低減(寸法安定性向上)を図ることもできる。
【0029】
<帯電防止層の形成>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は汚れ防止のために、その表面固有抵抗値を1.0×1012Ω以下とすることが好ましい。所望の表面固有抵抗値を達成するためには、本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に帯電防止層を設けることが好ましい。
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に設けうる帯電防止層は、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の表面に(光反射性に影響しない)無色の帯電防止剤を塗布により設ける方法、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の内部にブリードしにくい高分子型帯電防止剤を練り込む方法、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の裏面側に共役系、或いは無機系の帯電防止剤を塗布により設ける方法、等により形成することができる。
これらの中でも、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の表面に無色の帯電防止層を形成する方法としては、下記の通り、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の表面への酸化処理と帯電防止剤の塗工の組み合わせが例示できる。
【0030】
<酸化処理>
表面酸化処理としては、フィルムに一般的に使用されるコロナ放電処理、フレ−ム処理、プラズマ処理、グロ−放電処理、オゾン処理などを単独または組み合わせて使用できる。これらのうちで好ましくはコロナ処理、フレ−ム処理であり、コロナ処理の場合、処理量は片面あたり600〜12,000J/m2(10〜200W・分/m2)、好ましくは1,200〜9,000J/m2(20〜150W・分/m2)が用いられる。
【0031】
<帯電防止層>
本発明では、農業用光反射シートの汚れ防止の目的から、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の少なくとも片面に、好ましくは両面に、塗布によりほぼ無色の帯電防止層を設けることが好ましい。用いる帯電防止剤は主として下記のプライマー、帯電防止ポリマーより選ばれたものであり、単独あるいは2成分以上の混合物である。フィルム(A)との密着性向上と帯電防止性向上の観点から、帯電防止剤として好ましいものはプライマーと帯電防止ポリマーとの組み合わせである。
【0032】
<プライマー>
プライマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物及びポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、オキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体及びポリアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコ−ル、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂、またポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリプロピレン及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の水分散性樹脂等が用いられる。
これらの内で好ましくは、ポリエチレンイミン系重合体、ウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステルであり、より好ましくはポリエチレンイミン系重合体であり、更に好ましくは重合度が20〜3,000のポリエチレンイミン、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加体、ないしはこれらが炭素数1〜24のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化シクロアルキル、ハロゲン化ベンジル基によって変性された変性ポリエチレンイミンである。
【0033】
<帯電防止ポリマー>
帯電防止ポリマーとしては、カチオン系、アニオン系、両性系等の高分子型ものが挙げられ、カチオン系としては、四級アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するポリマー、窒素含有アクリル系ポリマー、四級アンモニウム塩構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマー、またアニオン系としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体ないしはそのアルカリ金属塩、エチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩ないしはエチレン−メタクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、また両性系としては、ベタイン構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマーなどが挙げられ、特に四級アンモニウム塩構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマーが好ましい。
アクリル系ないしはメタクリル系の帯電防止ポリマーの分子量は、重合温度、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。一般には得られる重合体の分子量は1,000〜1,000,000であるが、中でも1,000〜500,000の範囲が塗工容易性、耐水性の観点から好ましい。本発明の帯電防止剤は、必要に応じて以下の任意成分を含有してもよい。
【0034】
<任意成分>
任意成分1:架橋剤
帯電防止剤に架橋剤を添加することにより、プライマーや帯電防止剤同士が架橋され、さらに塗膜強度や耐水性を向上させることができる。架橋剤としては、グリシジルエーテル、グリシジルエステル等のエポキシ系化合物、エポキシ樹脂、イソシアネ−ト系、オキサゾリン系、ホルマリン系、ヒドラジド系等の水分散型樹脂が挙げられる。架橋剤の添加量は、通常、上記の帯電防止剤の溶媒を除いた固形成分100重量部に対して100重量部以下の範囲である。
【0035】
任意成分2:アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩
帯電防止剤には帯電防止効果をより向上させるため、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を添加しても良く、同塩としては水溶性の無機塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、その他のアルカリ性塩、及び塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、アンモニウム明礬等が挙げられる。金属塩の添加量は、通常、上記の帯電防止剤の溶媒を除いた固形成分100重量部に対して50重量部以下である。
【0036】
任意成分3:その他助剤
帯電防止剤には、更に、界面活性剤、消泡剤、水溶性或いは水分散性の微粉末物質その他の助剤を含ませることもできる。助剤の添加量は、通常、上記の帯電防止剤の溶媒を除いた固形成分100重量部に対して20重量部以下である。
上記帯電防止層の各成分は、水、或いはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の親水性溶剤に溶解ないしは分散させてから用いるものであるが、中でも水溶液の形態で用いるのが好ましい。溶液の固形分濃度は通常0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%程度である。
【0037】
<帯電防止層の形成>
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)上に帯電防止層を形成する方法としては、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)上に上記帯電防止剤を、ダイコーター、バーコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター等、またはこれらの組み合わせにより塗布し、必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て余分な水や親水性溶剤が除去して乾燥する方法が挙げられる。帯電防止剤の塗工量は乾燥後の固形分として片面あたり通常0.005〜5g/m2、好ましくは0.01〜2g/m2である。
【0038】
<熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の光学物性>
本発明に用いられる熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の、後述する方法で測定される反射率R1は70〜100%であり、好ましくは70〜95%である。熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の反射率R1が70%以上であれば、太陽光の入射光を効率よく反射することができ、本発明の農業用光反射シートの目的とする果実の色づきを効率的に達成できる。
フィルム(A)の後述する方法で測定される拡散反射率R2は、更にJIS−Z−8722条件記載の方法に従って光トラップを用いて、波長400〜700nmの範囲で測定した各波長の反射率の平均値を意味する。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の、後述する方法で算出される正反射率R3は0.1〜4%であり、好ましくは0.2〜2%である。光の反射率R1に占める拡散反射率R2の割合を極力増やすために、正反射率R3は小さいほど(ゼロに近いほど)好ましいが、粒径分布が極めて狭いフィラーなど、特殊な材料や製造方法を必要とするためコスト面から好ましくない。正反射率R3が4%を超えては拡散反射率R2の割合が低下し、果実の色づきにむらを生じやすいばかりか、太陽光反射によるハレーションが強くなりすぎるために、農作業者が眩しく感じるようになり好ましくない。
【0039】
<熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の表面の山数>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、表面近傍に形成される空孔により、表面に多数の微細な凹凸が形成される。該凹凸は拡散反射に寄与するものであり、その量は表面粗さの測定より山数として把握することができる。フィルム(A)は、後述する方法で測定される0.1mm2あたりの山数が1〜6であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。山数が1以上であれば所期の拡散反射率が得られやすい傾向がある。また、山数が6以下であれば光反射率を高い値に維持し、フィラー過多によるフィルム(A)強度低下を防ぎやすい傾向がある。
【0040】
<熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の表面固有抵抗値>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、後述する方法で測定される表面固有抵抗値が1.0×1012Ω以下であることが好ましく、1.0×1011Ω以下であることがより好ましい。1.0×1012Ω以下であれば、帯電防止性能が高いためホコリ等の付着を防ぎやすい傾向がある。
【0041】
<熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の水接触角>
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)は、後述する方法で測定される表面の水接触角が60°以上であることが好ましく、80°以上であることがより好ましい。水接触角が60°以上であれば十分な撥水性が得られやすく、水に対するなじみが良すぎることによる水汚れの拡がりを防ぎやすい傾向がある。
【0042】
遮光材(B)
本発明では遮光材(B)として、着色した織布または不織布から選ばれた材料を用いる。これらを貼合することで、本発明の農業用光反射シートに遮光性および引裂耐性等の耐久性を付与することができる。
【0043】
<織布>
本発明の遮光材(B)に用いうる織布としては、経糸と緯糸とを1本おきに交差させる平織法、経糸と緯糸が2本またはそれ以上連続して織られる綾織法、経糸と緯糸が5本以上から構成される朱子(しゅす)織法などが採用される。
織布を構成する経糸、緯糸の素材としては、ナイロン6、ナイロン6,6、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテフタレート、ポリアリレート、木綿、レーヨン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化エチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等の繊維が利用できる。経糸、緯糸の径は、それぞれ20〜150デニールで、同一径であっても、異なった径であっても良いが、同一径の方が平滑性の面から好ましい。
織布の坪量は、経糸、緯糸の密度、径、織り込み数に依存するが、通常は50〜200g/m2であり、好ましくは50〜100g/m2である。
【0044】
<不織布>
本発明の遮光材(B)に用いうる不織布としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維等から形成された不織布が挙げられ、いずれも好適に使用することができる。不織布の製造法としては、ケミカルボンド法、ファイバーボンド法、メルトブロー法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法等の一般的な製造法を採用することができる。
不織布の坪量は、使用する材料に依存するが、通常は20〜100g/m2であり、好ましくは20〜50g/m2である。坪量が20g/m2以上であれば、高い引裂耐性が得られやすい傾向があり、坪量が100g/m2以下であれば、コストを抑えることができるとともに、収納および運搬時の作業性が良くなる傾向がある。
【0045】
<遮光材(B)への遮光性付与>
本発明の用途においては、農業用光反射シートを介した光の裏抜けを防止し、該シート下の雑草の成長を抑制する目的から、遮光材(B)へ遮光性を付与する。遮光性付与には、着色した遮光材(B)を使用する。遮光材(B)の着色手法としては、一般的な着色手法が採用可能である。例えば、色材の練込及び/又は染色手法により着色した紡績糸または繊維を使用して、織布または不織布を製造する手法、或いは織布または不織布製造後にこれを染色あるいは印刷手法により着色する手法等が挙げられる。
これらの着色は黒色で行われることが好ましい。着色した遮光材(B)は、不透明度が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。不透明度はJIS−P−8149に準拠し、標準黒色板を裏当てして測定した視感反射率を、標準白色板を裏当てして測定した固有視感反射率にて除した値を百分率で算出したものである。
また着色した遮光材(B)の色濃度は、光反射濃度計「マクベス濃度計」(商品名、コルモーゲン社製(米国))にて測定されるマクベス濃度として1.2以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましい。
【0046】
農業用光反射シート
<積層貼合手法>
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)と、織布または不織布よりなる遮光材(B)との積層貼合し、本発明の農業用光反射シートを得る方法としては、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)上に、ホットメルト型接着剤あるいは溶剤系接着剤等の接着剤を、塗布、スプレー、散布、溶融押出ラミ等の手法により接着層として設け、これを介して貼合するドライラミネート等、または熱融着性フィルム、溶融押出フィルムを用いた溶融ラミネート等の通常の手法により行うことができる。ホットメルト型接着剤または溶剤系接着剤としては、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリブチラール系、ポリウレタン系などを例示できる。上記接着剤の塗工・貼合せは、ビート塗工、スロット塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、メイヤバー塗工等が好適に使用できる。
本発明の農業用光反射シートにおける熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の厚みは30〜1000μmが好ましく、40〜300μmがより好ましく、50〜150μmがさらに好ましい。また、本発明の農業用光反射シートにおける遮光材(B)の厚みは30〜1000μmが好ましく、40〜500μmがより好ましく、50〜250μmがさらに好ましい。
【0047】
<農業用光反射シートの光学物性>
本発明の農業用光反射シートは、後述する方法で測定される光線透過率が0〜10%の範囲である。0〜8%であることが好ましい。光線透過率が10%以下であれば、光の遮蔽性が高いため、反射シート直下の雑草の成長阻害性能も高くなる傾向がある。
【実施例】
【0048】
以下に実施例、比較例および試験例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適時変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、本実施例に使用した材料を後掲の表1にまとめて示す。
【0049】
[I]熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の製造
(製造例1)
プロピレン単独重合体(PP1)81重量%、高密度ポリエチレン(HDPE)3重量%、及び炭酸カルシウム16重量%を混合した組成物(A1)を、270℃の温度に設定した押出機にて溶融混練した後、これをダイよりシート状に押し出し、更に冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。次いで、このシートを150℃の温度にまで再度加熱した後、周速の異なるロール群を用いて縦方向5倍の延伸を行い、5倍縦延伸フィルム(ベース層)を得た。
さらに表面層として、プロピレン単独重合体(PP3)54重量%と、炭酸カルシウム46重量%を混合した組成物(A2)を別の押出機にて270℃で溶融混練した後、これをダイよりシート状に押出し、上記工程で得た5倍縦延伸フィルムの両面に積層して、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃の温度にまで冷却した後、オーブンにより155℃の温度にまで再加熱し、テンターを用いて横方向に7.5倍延伸し(面積延伸倍率:37.5倍)、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットして、3層構造(一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の厚み60μm(A2/A1/A2=15μm/30μm/15μm)の熱可塑性樹脂延伸フィルムで、総フィラー含有量31重量%、白色度96%、不透明度95%、空孔率41%、密度0.78g/cm3、反射率R1が80%、正反射率R3が0.3%、山数4.8の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を得た。
【0050】
さらに、このシートの両面に、印加エネルギー密度90W・分/m2にてコロナ放電処理を行い、ついでこのシートの両面に、ブチル変性ポリエチレンイミン、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびアルキル側鎖に第4級アンモニウム塩構造を有するアクリル酸アルキルエステル系重合体(商品名:サフトマーST−1100、三菱化学(株)製)を固形分換算でそれぞれ等量含む混合物よりなる水溶液を、ロールコーターを用いて、乾燥後の塗工量が片面あたり約0.1g/m2となるように塗工し、乾燥して帯電防止層を形成し、帯電防止性能を有する熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)であって、表面固有抵抗値1×1010Ω、水接触角92°の熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を得た。
【0051】
(製造例2、3)
各組成物の押出量を変更し、製造例1のフィルム厚みを表2に記載の数値に変更した以外は、製造例1と同様の手法で、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を製造した。得られたフィルム(A)の物性値を合わせて表2に示す。
【0052】
(製造例4、8)
テンターのレールパターンを変更し、製造例1の延伸倍率を表2に記載の数値に変更した以外は、製造例1と同様の手法で、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を製造した。得られたフィルム(A)の物性値を合わせて表2に示す。
【0053】
(製造例5〜7)
製造例1の組成物(A1)および組成物(A2)の原料組成比を表2に示す数値に変更した以外は、製造例1と同様の手法で、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を製造した。得られたフィルム(A)の物性値を合わせて表2に示す。
【0054】
(製造例9)
再公表特許第2003/018306号パンフレットの実施例1に記載された方法に準じて、白色フィルムを製造し、これを熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)とした。
即ち、プロピレン単独重合体(PP2;MFR=2.0g/10分、密度0.90g/cm3)92重量%、ポリブチレンテレフタレート(PBT;融点224℃)6重量%、酸化チタン2重量%を配合して押出機で溶融混練した後、これをダイよりシート状に押し出し、更に冷却装置により冷却して、厚み1.0mmの無延伸シートを形成した。
次いで、このシートを135℃の温度に設定した周速の異なるロール群(ロール延伸機)を用いて再度加熱した後、縦方向5倍の延伸を行い、5倍縦延伸フィルムを得た。
次いで、縦延伸フィルムをオーブンにより155℃の温度にまで再加熱し、テンター延伸機を用いて横方向(幅方向)に5倍延伸し(面積延伸倍率:25倍)、冷却し、耳部をスリットして、厚み40μmの白色フィルムを得て、これを熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)とした。物性を表2に示す。
【0055】
(製造例10)
製造例1の組成物(A2)の組成を表1に示す原料および表2に示す数値に変更し、酸化処理および帯電防止層塗工を行わない以外は、製造例1と同様の手法で、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を製造した。得られたフィルム(A)の物性値を合わせて表2に示す。
【0056】
(製造例11)
製造例1において、酸化処理および帯電防止層塗工を行わない以外は、製造例1と同様な手法で、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を製造した。得られたフィルム(A)の物性値を合わせて表2に示す。
【0057】
[II] 農業用光反射シートの製造
(実施例1)
製造例1で得た帯電防止性能を有する熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を用い、その片面に接着剤としてポリエステル系アンカーコート剤(商品名:AD−503、東洋モートン(株)製)を4g/m2(固型分の割合)塗布し、これに遮光材(B)として市販の黒色(着色)ポリエステル系スパンボンド不織布(商品名:マリックス90303KSO黒、ユニチカ(株)製、坪量30g/m2、基材厚み210μm、不透明度34%、マクベス濃度1.42)を積層貼合し圧着して、農業用光反射シートを得た。評価結果を表2に示す。
【0058】
(実施例2〜7)
実施例1における熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を、表2記載のフィルムに変更した以外は、製造例1と同様な方法で農業用光反射シートを得た。評価結果を表2に示す。
【0059】
(比較例1〜4)
実施例1における熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を、表2記載のフィルムに変更した以外は、製造例1と同様な方法で農業用光反射シートを得た。評価結果を表2に示す。
【0060】
(比較例5)
実施例1における遮光材(B)を、市販の白色(自然色)ポリエステル系スパンボンド不織布(商品名:マリックス90303WSO白、ユニチカ(株)製、坪量30g/m2、基材厚み210μm、不透明度80%、マクベス濃度0.15)に変更した以外は、実施例1と同様な方法で農業用光反射シートを得た。評価結果を表2に示す。
【0061】
[III]評価例
(反射率R1、拡散反射率R2、正反射率R3)
JIS−K−7105に準拠し、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の光波長400〜700nmにおける反射率および拡散反射率を、分光光度計(型番:U−3310、(株)日立製作所製)を用いて測定し、各波長における数値を平均して反射率R1および拡散反射率R2とした。さらに正反射率は、各波長における反射率および拡散反射率から下記式にて計算し、各波長における数値を平均して正反射率R3とした。結果を表2に示す。
【0062】
【数2】

【0063】
(山数)
JIS−B−0601に準拠し、三次元粗さ測定装置(型番:SE−3AK、(株)小坂研究所製)および解析装置(型番:SPA−11、(株)小坂研究所製)を使用し、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)表面における標準面積0.1mm2中における山数(ピークアカウント,SPc)を測定した。結果を表2に示す。
【0064】
(接触角)
接触角測定器(型番:CA−D、協和界面科学(株)製)を使用し、純水を熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)表面に滴下して1分後の水接触角を測定した。この測定を10回行い(1回の測定毎に表面が濡れていない未測定のフィルムに交換)測定した接触角の平均値を求めた。当該値60°以上を合格レベルとした。結果を表2に示す。
【0065】
(表面固有抵抗)
JIS−K−6911に準拠し、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を23℃の温度、相対湿度50%の雰囲気下で2時間以上状態調節した後、該フィルム(A)表面(帯電防止剤塗布面)を絶縁計(型番:DSM−8103、東亜電波工業(株)社製)にて測定した。当該値1×1012Ω以下を合格レベルとした。結果を表2に示す。
【0066】
(光線透過率)
JIS−K−7105に準拠し、農業用光反射シートの光波長400〜700nmにおける光線透過率を、分光光度計(型番U−3310、(株)日立製作所製)を用いて測定して、数値を平均して光線透過率とした。結果を表2に示す。
【0067】
(汚れ性評価)
農業用光反射シートの各サンプルを10cm×10cmのサイズに打ち抜き後、同一条件にて2週間屋外に放置した後、再度拡散反射率を測定し、屋外放置前後の拡散反射率の低下割合(%)を持って汚れ性評価とした。その結果、実施例6や実施例7に比べて、実施例1〜5の方が拡散反射率の低下が少なく(20%未満)、より優れた汚れ防止効果を示した。
【0068】
(耐久性評価)
農業用光反射シートの各サンプル1m×10mのサイズを実際にりんご農園の地面上に敷設し、園内を農業用トラクターで往復し、シート上を走破する状況下において、シートに破れが発生しないかどうか耐久性を確認した。結果を表2に示す。
○:破れなし(良好)
×:破れあり(不良)
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の農業用光反射シートは、光反射性能が高く、特に広範囲にわたって光を拡散反射するため、むらの無い果実の色づきを促進するために有用であり、また光線透過率も低いことから下草発育防止効果も高く農業用シートとしてきわめて有用である。加えて撥水性を有し、かつ帯電防止性もあることから汚れ付着機能も高く、長期間使用しても性能低下しにくい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーを20〜60重量%含有する熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)に、着色した織布または不織布から選ばれる遮光材(B)を積層貼合した複合フィルムからなる農業用光反射シートであって、熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の反射率R1が70〜100%、正反射率R3が0.1〜4.0%であり、かつ農業用光反射シートの光線透過率が0〜10%である農業用光反射シート。
【請求項2】
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)表面の0.1mm2あたりの山数が1〜6であることを特徴とする請求項1に記載の農業用光反射シート。
【請求項3】
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の下記式(1)より算出される空孔率が25〜60%であることを特徴とする請求項1または2に記載の農業用光反射シート。
【数1】

(上式において、ρ0はフィルム(A)の真密度であり、ρはフィルム(A)の密度である)
【請求項4】
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の面積延伸倍率が30〜80倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の農業用光反射シート。
【請求項5】
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)の表面固有抵抗値が1.0×1012Ω以下であり、かつ熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)表面の水接触角が60°以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の農業用光反射シート。
【請求項6】
熱可塑性樹脂延伸フィルム(A)を構成する熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の農業用光反射シート。
【請求項7】
遮光材(B)のマクベス濃度が1.2以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の農業用光反射シート。

【公開番号】特開2008−271828(P2008−271828A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118066(P2007−118066)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】