説明

農業用塩化ビニル系樹脂フィルム

【課題】ハウス展張前の外観、屋外での展張によって引き起こされる物性低下、防塵性低下が少なく、耐久性を向上させた農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂フィルムの片面または両面に、一般式(I)で表されるトリアルコキシシリケート単量体0.1〜15重量%含有するフッ素を実質的に含まないアクリル系重合体[A]99.5〜50重量部とアクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体[B]0〜30重量部とフッ化ビニリデン系樹脂[C]0.5〜50重量部の3成分を主成分とする組成物の被膜がエイジング処理を経て形成されてなる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに関する。更に詳しくは、屋外での展張によって引き起こされる耐候性、防塵性の低下などの好ましくない劣化現象に対して、耐久性の改良された農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有用植物を栽培している農家では、収益性向上を目的として、有用植物をハウス(温室)、またはトンネル内で促進栽培や抑制栽培する方法が、広く採用されるようになった。このハウス(温室)またはトンネルの被覆資材としては、ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、硬質および軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、ガラス等が使用されている。なかでも軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、他の合成樹脂フィルムに比較して、光線透過性、保温性、機械的強度、耐久性、作業性を総合して最も優れているので、広く使用されている。
しかしながら、ハウスまたはトンネルの被覆資材として使用される合成樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂をも含めて、被覆材としての使用を開始して1年も経過すると、太陽光線、特に紫外線などにより影響をうけて外観の劣化や、フィルムの柔軟性の低下などの経時変化をおこす。更に、最近の改良された農業技術、特に経済性、省力化を指向した農業技術は、被覆資材に、従来にもました苛酷な条件にも耐える性質を、要求するようになってきている。
従って、耐候性を向上させる目的で基材の塩化ビニル系樹脂に、有機リン酸エステル酸エステル又は、有機リン酸金属塩を添加配合し、フィルム化する技術が広く採用されている。一方、農業用に使用される塩化ビニル系樹脂フィルムは、展張使用される地域、場所等による影響によって、使用を開始してから2年も経過すると、ハウスまたはトンネルの外側の面の防塵性が著しく低下し、使用に耐えられなくなる。
上記欠点を排除する方法として、農業用の塩化ビニル系樹脂フィルムの表面を、下記のような特定の樹脂や塗料で被覆する方法が提案されている。(I)アクリル系樹脂を塗布する方法(特許文献1、特許文献2等)(II)接着層を介してフッ素樹脂を塗布する方法(特許文献3、特許文献4、特許文献5等)(III)フッ素樹脂とアクリル系樹脂の混合物を塗布する方法(特許文献6、特許文献7、特許文献8等)
しかし(I)では、基材の可塑剤等の成形品表面へのブリード・アウトを防止するのに充分でなく、(II)では、可塑剤等が接着層に移行する影響で、接着層を介してもフッ素樹脂と基材の固着一体化は、実用的に充分なものではなかった。これらの改良として(III)が提案されたが、基材とフッ素樹脂混合物との界面接着が不充分である上に、コスト高となるのを免れない。
【0003】
【特許文献1】特公昭46−29639号公報
【特許文献2】特公昭50−28117号公報
【特許文献3】特開昭56−86748号公報
【特許文献4】特開昭57−8155号公報
【特許文献5】特開昭57−12646号公報
【特許文献6】特開昭63−21143号公報
【特許文献7】特開昭46−65161号公報
【特許文献8】特公昭63−236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、かかる状況にあって、ハウス展張前の外観、屋外での展張によって引き起こされる物性低下、防塵性低下が少なく、耐久性を向上させた農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することを目的として、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。本発明の大きな特徴は、特殊なアクリル系重合体を主成分とする組成物の被膜が、エイジング処理を経て形成されてなる。本発明者等は、種々の被膜を研究するうちに、重合体の選択とともに、被膜形成後のエイジング処理が被膜の性能を変化させることに気づき、種々検討を行った。その結果、本発明の特殊なアクリル系重合体を用いるとともに、エイジング処理を施した被膜を有する農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを得ることにより、本発明の効果を達成することを見出し本発明に達したのである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして、本発明の要旨とするところは、塩化ビニル系樹脂フィルムの片面または両面に、一般式(I)で表されるトリアルコキシシリケート単量体0.1〜15重量%含有するフッ素を実質的に含まないアクリル系重合体[A]99.5〜50重量部とアクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体[B]0〜30重量部とフッ化ビニリデン系樹脂[C]0.5〜50重量部の3成分を主成分とする組成物の被膜がエイジング処理を経て形成されてなる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに存する。
【0006】
【化1】



(式中のR1は水素又はメチル基、R2は直接結合又は2価の有機残基、R3はアルキル基である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、基体フィルムとその表面に形成された特定のアクリル系樹脂被膜組成物に由来する被膜により耐久性および、防塵性が飛躍的に向上し、農業用被覆資材としての利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本説明を詳細に説明する。
1.塩化ビニル系樹脂
本発明において塩化ビニル系樹脂とは、ポリ塩化ビニルのほか、塩化ビニルが主成分を占める共重合体をいう。塩化ビニルと共重合しうる単量体化合物としては、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等があげられる。これら塩化ビニル系樹脂は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の従来公知の製造法のうち、いずれの方法によって製造されたものであってもよい。
上記基体となる塩化ビニル系樹脂には、柔軟性を付与するために、この樹脂100重量部に対して、20〜60重量部の可塑剤が配合される。可塑剤の配合量を上記範囲にすることにより、目的の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに、優れた柔軟性と機械的性質を付与させることができる。可塑剤としては、例えば、ジーn−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体;ジオクチルフタレート等のイソフタル酸誘導体;ジーn−ブチルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸誘導体;ジ−n−ブチルマレート等のマレイン酸誘導体;トリーnーブチルシトレート等のクエン酸誘導体;モノブチルイタコネート等のイタコン酸誘導体;ブチルオレエート等のオレイン酸誘導体;グリセリンモノリシノレート等のリシノール酸誘導体;その他、エポキシ化大油、エポキシ樹脂系可塑剤等があげられる。また、樹脂フィルムに柔軟性を付与するために、上述の可塑剤に限られるものでなく、例えば熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル等を使用することもできる。
【0009】
本発明に係わる塩化ビニル系樹脂フイルム組成物には、融点が60℃以上の脂肪酸アマイド系粘着防止剤を配合することが好ましい。
特に、融点140〜146℃のメチレンビスステアリン酸アマイド、融点156〜160℃のエチレンビスラウリン酸アマイド、融点116〜120℃のN,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、融点143〜144℃のN,N’−ジステアリルアピン酸アマイド、融点155〜165℃のN,N’−ジステアリルテレフタル酸アマイド、融点125〜135℃のN,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドの少なくとも一種を配合することが好ましい。
配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.1〜2重量部の範囲とすることが好ましい。この範囲より少ないときは、巻き上げ、巻き下げ作業性が充分に優れたものとならず、また、多いときは、フイルム化した後に添加された物が噴き出したり、防曇性を阻害するという問題がおこり、好ましくない。上記範囲のうち0.2〜1.5重量部の範囲が特に好ましい。更に、好ましくは、0.2〜1.0重量部の範囲である。
【0010】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムには、上記塩化ビニル系樹脂に、有機リン酸エステル又は有機リン酸金属塩が配合されることが好ましい。有機リン酸エステルとしては、トリイソプロピルフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等があるが中でもトリクレジルホスフェート、およびトリキシレニルホスフェートが特に好ましい。
上記の有機リン酸エステルは、単独さらに複合物にしても使用できる。例えば、有機リン酸エステルと有機亜リン酸エステルの複合物があげられ、有機リン酸エステルには、ジフェニルホスフェートのようなホスホネート系化合物も含まれる。有機リン酸金属塩としては、一般式(II)又は(III)で示されるものがあげられる。
【0011】
【化2】



【0012】
【化3】



【0013】
(式中、Mは、亜鉛、カルシウム、バリウム、マグネシウム、コバルト又は、ストロンチウムを意味する。また、R2〜R6は各々、アルキル、アリーリ、アリールアルキル、アルキルアリール又はエーテル結合を有するアルキル基を意味する。)
2〜R6で表されるアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、アミン、ネオペンチル、イソアミル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、デシル、イソデシル、ラウリル、トリデシル、C12〜C13混合アルキル、ステアリル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、4−メチルシクロヘキシル基等をあげることができる。
アリール基の例としては、フェニル、ナフチル基等をあげることができる。アリールアルキル基の例としては、ベンジル、β−フェニルエチル、α−フェニルプロピル、β−フェニルプロピル基等をあげることができる。アリールアルキル基の例としては、ベンジル、β−フェニルエチル、α−フェニルプロピル、β−フェニルプロピル基等をあげることができる。アルキルアリール基の例としては、トリル、キシリル、エチルフェニル、ブチルフェニル、第3ブチルフェニル、オクチルフェニル、イソオクチルフェニル、第3オクチルフェニル、ノニルフェニル、2,4−ジ−第3ブチルフェニル基等があげられる。
エーテル結合を有するアルキル基としては、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、5−メチルフルフリルおよびα−メチルフルフリル基、又は、メチル−、エチル−、イソプロピル−、ブチル−、イソブチル−、ヘキシル−、シクロヘキシル−、フェニルセロソルブ残基;メチル−、エチル−、イソプロピル−、ブチル−、イソブチルカルビトール残基;トリエチレングリコールモノメチルエーテル、−モノエチルエーテル、−モノブチルエーテル残基;グリセリン1、2−ジメチルエーテル、−モノエチルエーテル、−モノブチルエーテル残基;グリセリン1、2−ジメチルエーテル、−1,3−ジエチルエーテル、−1−エチル−2−プロピルエーテル残基;ノニルフェノキシポリエトキシエチル、ラウロキシポリエトキシエチル残基等があげられる。
又、Mで表される金属は、亜鉛、カルシウムおよびバリウムが特に好ましい。これら有機リン酸エステル又は有機リン酸金属塩は、1種又は2種以上配合することができる。本発明の農業用フィルムは、有機リン酸エステルおよび有機リン酸金属塩を併用するのが被膜の形成性、屋外展張性の点からも好ましい。
有機リン酸エステル又は有機リン酸金属塩の配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.1〜15重量部の範囲内、好ましくは、0.2〜10重量部の範囲内で選ばれ、更に、0.2〜8重量部が特に好ましい。配合量が0.1重量部未満では軟質塩化ビニル系樹脂フィルムの耐候性および防塵性は向上しない。配合量が15重量部より多いとフィルムの透明性が極度に劣ってしまうので好ましくない。
【0014】
本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムには、被膜の形成性、屋外展張性の点から紫外線吸収剤、光安定剤を併用することが好ましい。紫外線吸収剤としては、農業用塩化ビニルフィルムに通常配合されるものであれば何れでもよく、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、ハイドロキノン系、シアノアクリレート系等各種の紫外線吸収剤があげられる。
特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。具体的には、以下のようなものがあげられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシー4ーメトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベ ンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノン、ビス−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5,6−ジクロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ステアリルオキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−カルボン酸フェニル)ベンゾトリアゾールエチルエステル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−シクロヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’,5’−ジメチルフェニル)−5−カルボン酸ベンゾトリアゾール、ブチルエステル、2−(2’−ヒドロキシ−4’,5’−ジクロルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−エチルスルホベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−カルボン酸エステルベンゾトリアゾール、2−(2’−アセトキシ−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール。
上記紫外線吸収剤の基体フィルムへの配合量は、基体の塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.02〜8重量部の範囲が好ましい。0.02重量部未満では、農業用塩化
ビニル系樹脂フィルムの耐候性が、十分でなく、他方、8重量部より多いと、フィルム使用時に他の添加剤とともにフィルム表面に噴き出したりするという問題が起こり、好ましくない。上記範囲のうち、0.1〜3重量部の範囲が特に好ましい。
光安定剤としては、一般式(IV)で表される構造単位を一分子中に1個以上含有するヒンダードアミン系化合物が適当である。
【0015】
【化4】


(式中、R7 〜R10は炭素数1〜4のアルキル基、R11は水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。) 具体的には例えば一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物が代表的なものである。
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Rはリン又は、1〜4価のカルボン酸から誘導されるモノ〜テトラアシル基、mは1〜4の整数を各々示す。) 上記一般式(V)に含まれるものとしては具体的には例えば特公昭63−51458号公報に例示されている、4−シクロヘキシノイルオキシ−2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(o−クロロベンゾイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等があげられる。
ヒンダードアミン系化合物の好ましい配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.2〜1.0重量部の範囲である。配合量が、余り少ないとフィルムの耐候性が十分に優れたものとならないので好ましくなく、余り多くしてもフィルムの耐候性は添加量に比例して向上することがなく、フィルム表面の噴き出しが起こり好ましくない。
【0018】
前記塩化ビニル系樹脂には、上記可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機リン酸エステル又は有機リン酸金属塩の他に、必要に応じて、成形用の合成樹脂に通常配合される公知の樹脂添加物、例えば、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、安定化助剤、帯電防止剤、防曇剤、無機フィラー、着色剤、防カビ剤、防藻剤等を配合することができる。
滑剤としては、例えば高級脂肪酸またはその金属塩類、各種パラフィン、高級アルコール類、天然ワックス類、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミド等が
あげられる。熱安定剤としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、二塩基性ステアリン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズメルカプタイド、βージケトン化合物あるいは、ジオクチルスズマレート系安定剤、ジオクチルスズラウレート系安定剤、ジオクチルスズメルカプタイド系安定剤等があげられる。
酸化防止剤としては、例えばフェノール系、チオジプロピオン酸エステル、脂肪族サルフャイドおよびジサルファイド系の酸化防止剤があげられ、具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネート等をあげることができる。
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等があげられる。防曇剤としては、非イオン系界面活性剤があげられ、具体的には、ソルビタン系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等の界面活性剤およびアルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物等があげられる。
無機フィラーとしては、例えばカルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩等およびその複合物があげられる。顔料あるいは染料としては、例えば酸化チタン、亜鉛華、鉛白、石膏、沈降性シリカ、カーボンブラック、ベンガラ、モリブデン赤、カドミウム黄、黄鉛、チタン黄、酸化クロム緑、群青等の無機顔料;パーマネント・レッド4R、ハンザ・イエロー10G、ベンジジンイエローGR、パーマネント・カーミンFB、フタロシアニン・ブルーB、フタロシアニン・グリーン等の有機顔料があげられる。
以上の各種樹脂添加物は、各々1種又は数種を組み合わせて使用することができる。上記各種樹脂添加物の添加量は、フィルムの性質を悪化させない範囲、通常は基体の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、10重量部以下の範囲で選ぶことができる。フィルムの基体となる塩化ビニル系樹脂に、前記可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機リン酸エステル又は有機リン酸金属塩、更に他の樹脂添加物を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーその他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法例えば溶融押出成形法(T−ダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー成形法、溶液流延法等によればよい。
【0019】
2.被膜成分
2−1.アクリル系重合体(A)
本発明のアクリル系重合体は、前記一般式(I)で表されるトリアルコキシシリケート単量体0.1〜15重量%を含有するアクリル系重合体である。
特に好ましくは、一般式(I)で表されるトリアルコキシシリケート単量体0.1〜15重量%のほか、アルキル(メタ)アクリレートモノマー1〜30重量%、メチルメタクリレート50〜95重量%、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー4〜30重量%、分子内に1個もしくは2個以上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸0〜20重量%、および残部がこれら化合物と共重合可能な他のビニル系モノマーを共重合して得られる共重合体である。
前記一般式(I)で示されるトリアルコキシシリケート単量体としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルビニルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシランおよびスチリルエチルトリメトキシシラン等などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルキル(メタ)アクリレートモノマー(アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル(以下同様))としては、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート等のアルキル基の炭素数が6〜20のアルキルアクリレートあるいは、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート等のアルキル基の炭素数が6〜20のアルキルメタクリレートがあげられる。これらは各々単独で用いても、2種以上の併用であってもよい。
このアルキル(メタ)アクリレートモノマーが30重量%より多い場合には、防塵性が低下するので好ましくない。メチルメタクリレートが50重量%より少ない場合には、フッ化ビニリデン系樹脂との相溶性が低下するために好ましくない。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2ーヒドロキシエチルアクリレート、2ーヒドロキシエチルメタクリレート、2ーヒドロキシプロピルアクリレート、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート、3ーヒドロキシプロピルアクリレート、3ーヒドロキシプロピルメタクリレート、2ーヒドロキシブチルアクリレート、2ーヒドロキシブチルメタクリレート、4ーヒドロキシブチルアクリレート、4ーヒドロキシブチルメタクリレート、2ーヒドロキシペンチルアクリレート、2ーヒドロキシペンチルメタクリレート、6ーヒドロキシヘキシルアクリレート、6ーヒドロキシヘキシルメタクリレート等があげられる。
このヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアクリル系樹脂中で占める割合が、4重量%より少ない場合は、有機溶媒との溶解性等を充分に発揮し得ず、他方、30重量%より多い場合にはコスト上昇に比べて得られる効果は大きくないので好ましくない。分子内に1個もしくは2個以上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アコニット酸、フマル酸、クロトン酸等があげられる。
上述の一般式(I)で示されるアルキル(メタ)アクリレートモノマー、メチルメタクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーおよびα,β−不飽和カルボン酸と共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート等のアルキル基の測鎖が1〜5のアルキルアクリレート;エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキル基の測鎖が1〜5のアルキルメタクリレート;エチレンスルホン酸のようなα,β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル類等がある。これら単量体は単独で用いても、又は2種以上の併用でもよい。
【0020】
2−1−2.アクリル系重合体[A]の重合
単量体を所定量配合して、有機溶剤とともに重合缶に仕込み、重合開始剤、必要に応じて分子量調節剤を加えて、攪拌しつつ加熱し、重合する。重合は、通常公知の方法、例えば懸濁重合法、溶液重合法などが採用される。この際、使用しうる重合開始剤としては、α,αーアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のラジカル生成触媒があげられ、分子量調節剤としては、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、β−メルカプトエタノール等があげられる。
重合に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジーn−プロピルケトン、ジーn−アミルケトンシクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類;テトラヒドロフラン等があり、これらは、1種もしくは2種以上混合して使用することができる。
上記被膜組成物には、これら成分の他に、補助的な成分、例えば酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤等配合することができる。有機溶剤に分散および/又は溶解して用いることができる。有機溶剤としては、例えば脂肪族炭化水素としてヘプタン、シクロヘキサン等;芳香族炭化水素としてベンゼン、トルエン、キシレン等;アルコール類としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ポリオキシエチレングリコール等:ハロゲン化炭化水素としてクロロホルム、四塩化炭化水素、クロロベンゼン等;エステル類としてメチルアセテート、アリルアセテート、エチルステアレート等;アミン類としてトリメチルアミン、ジフェニルアミン、ヘキサメチレンジアミン等;その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジエチレンジチオグリコール、ジアセトンアルコール、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキサイド等があり、これは単独もしくは2種以上の併用で使うことができる。
【0021】
2−2.含フッ素アクリル系重合体(B)
2−2−1.アクリル系単量体
アクリル系単量体とは、2−1記載のアクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル類を主体とした重合体であって、同様の重合方法によって得られる。
2−2−2.パーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体
パーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体とは、パーフルオロアルキル基を有するアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステル類であって、具体的には、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルメタクリレート、2−パーフルオロノニルエチルアクリレート、2−パーフルオロノニルエチルメタクリレート等があげられる。中でも特に、パーフルオロ基のフッ素の数が5以上のものが好ましい。これらは、各々単独で用いても、2種以上の併用であってもよい。
【0022】
2−2−3.配合
アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合割合は、通常前者が20〜99重量%の範囲であることが好ましい。アクリル系単量体がこの範囲より少ないと、形成被膜の基材との密着性が充分でなく、又この範囲より多いと、含フッ素アクリル系重合体としての機能を発揮しない。
2−2−4.含フッ素アクリル系樹脂(B)の重合
アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体を所定量配合して有機溶媒とともに重合缶に仕込み、重合開始剤、必要に応じて分子量調節剤を加えて、攪拌しつつ加熱し、重合する。重合方法は、2−1−2記載の方法と同様に重合される。
【0023】
2−3.フッ化ビニリデン系樹脂(C)
フッ化ビニリデン系樹脂(C)とは、フッ化ビニリデンの単独重合体、もしくは、フッ化ビニリデンと他のフッ素系不飽和単量体および/もしくはフッ素を含有しない共重合可能な単量体との共重合体、更にこれら重合体の一部を改質もしくは変成した重合体も包含される。
これらフッ化ビニリデン系樹脂は1種もしくは2種以上で用いることができ、又、他のフッ素を含有した樹脂、例えばテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロエチレン等を混合して用いても構わない。
【0024】
上記被膜組成物を塗布し塩化ビニル系樹脂フィルム表面に被膜を形成するには、成型品の形状に応じて公知の各種方法が適用される。例えば、溶液状態で被膜を形成する場合は、ドクターブレードコート法、グラビアロールコート法、エヤナイフコート法、リバースロールコート法、デイプコート法、カーテンロールコート法、スプレイコート法、ロッドコート法等の塗布方法が用いられる。
また、溶液状態とせず上記被膜組成物を単独の被膜として形成する場合は、共押出し法、押出しコーティング法、押出しラミネート法、ラミネート法が用いられる。被膜形成法としては、塗布方式を用いた場合の溶剤の乾燥方法としては、例えば自然乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等があるが、乾燥速度、安全性を勘案すれば熱風乾燥法が有利である。この場合の温度条件は、50℃〜200℃の範囲とし、時間は、10秒〜15分の間で選ぶのがよい。
【0025】
本発明の大きな特徴の一つは、前記特殊なアクリル系重合体を主成分とする組成物の被膜が、エイジング処理を経て形成されてなりたつ。本発明者等は、種々の被膜を研究するうちに、重合体の選択とともに、被膜形成後のエイジング処理が被膜の性能を変化させることに気づき、種々検討を行った。その結果、本発明の特殊なアクリル系重合体を用いるとともに、エイジング処理を施した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムとすることにより、本発明の効果を達成することを見出したのが本発明である。
エイジング処理とは、前記塗膜乾燥工程のような短時間高熱の加熱処理とは異なり、比較的低温において長期間加熱処理を行う処理である。具体的なエイジング条件としては、温度は30℃〜60℃の範囲とし、時間は、20時間〜200時間の範囲で選ぶのがよい。
【0026】
本発明において、基体フィルムの表面に形成させる被膜の厚さは、基体フィルムの1/10以下であるのが好ましい。被膜の厚さが基体フィルムの1/10より大であると、基体フィルムと被膜とでは屈曲性に差があるため、被膜が基体フィルムから剥離する等の現象が起こりやすく、また、被膜に亀裂が生じて基体フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
なお、上記被膜組成物を塗布する前に、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムの表面を予め、アルコールまたは水で洗浄したり、プラズマ放電処理、あるいはコロナ放電処理した
り、他の塗料あるいはプライマーを下塗りする等の前処理を施してもよい。本発明に係わる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを実際に農業用に使用するにあたっては、被膜が片面のみに形成されているときには、この被膜が設けられた側をハウスまたはトンネルの外側となるようにして展張する。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例にもとづいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜5)
I.基体フィルムの調整
ポリ塩化ビニル(平均重合度=1400) 100重量部
ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP) 45重量部
トリキシレニルホスフェート 5重量部
エポキシ樹脂 3重量部
バリウム−亜鉛系複合液状安定剤 1.5重量部
ステアリン酸バリウム 0.2重量部
ステアリン酸亜鉛 0.4重量部
ソルビタンラウレート 1.5重量部
2、4―ジヒドロキシベンゾフェノン 0.06重量部
よりなる樹脂組成物を準備し、該組成物を、スーパーミキサーで10分間攪拌混合したのち、180℃に加温したミルロール上で混練し、厚さ0.10mmの基体フィルムを作成した。
II.アクリル系重合体(A)の調整
温度計、攪拌機、環流冷却器および原材料添加用ノズルを備えた反応器に、メチルエチルケトン70重量部、トルエン30重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部および第1表に示した各単量体の混合物100重量物を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しつつ、70℃で3時間更に過酸化ベンゾイルを0.5重量部添加して反応を約3時間、同温度で継続してアクリル系重合体(A)を得た。
III.含フッ素アクリル系重合体(B)の調整
IIと同様の反応器に、メチルエチルケトン70重量部、トルエン30重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部および下記に示した単量体の混合物100重量部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しつつ、80℃で3時間更に過酸化ベンゾイルを0.5重量部添加して反応を約3時間、同温度で継続して含フッ素アクリル系重合体(B)を得た。
IV.被膜の形成
第3表に示した種類および量のアクリル系重合体(A)、含フッ素アクリル系重合体(B)およびフッ化ビニリデン系樹脂(C)を固形分が15重量%になるように酢酸エチルおよびメチルエチルケトンを加え、被膜組成物を得た。前記の方法で調整した基体フィルムの片面に、上記被覆組成物を、#10バーコーターを用いて、各々塗布した。塗布したフィルムを130℃のオーブン中にて1分間保持して、溶剤を揮散させた。得られた各フィルムの被膜の量は、約1.5g/m2であった。
【0028】
【表1】





【0029】
V.フィルムの評価
以下の方法においてフィルムの性能を評価し、その結果を第2表に示した。
(1)初期外観
フィルムの外観を肉眼で観察した。この評価基準は、次のとおりである。
◎・・・無色で透明性に優れるもの。
○・・・やや白色を呈するが、透明性を有するもの。
△・・・白色を呈し、半透明であるもの。
×・・・白濁し、失透しているもの。
(2)被膜の密着性
フィルムの被膜面に粘着テープを接着し、この粘着テープを剥がした時に、被膜の剥離状況を肉眼で観察した。この評価基準は、次の通りである。
◎・・・被膜が全く剥離せず、完全に残ったもの。
○・・・被膜の2/3以上が剥離せず残ったもの。
△・・・被膜の2/3以上が剥離したもの。
×・・・被膜が完全に剥離したもの。
【0030】
(3)屋外展張試験
9種のフィルムを、三重県一志郡の試験圃場に設置した屋根型ハウス(間口3m、奥行き5m、棟高1.5m、屋根勾配30度)に、被膜を設けた面をハウスの側にして被覆し、平成14年3月〜平成15年2月までの1年間展張試験を行った。展張したフィルムについて、屋外展張試験後の各性能を評価した。
i)フィルムの外観
外観を肉眼で観察した。評価基準は、次のとおりである。
◎・・・変色等の外観変化が認められないもの。
○・・・わずかな変色等の外観変化が一部認められるもの。
△・・・変色等の外観変化がかなり認められるもの。
×・・・全面に変色が認められるもの。
ii)防塵性
次式より算出した値を意味する。 (屋外展張後、経時的に回収したフィルムの光線透過率)÷(屋外展張前のフィルムの光線透過率*)×100
*波長555mμにおける直光線透過率(日立製作所製、EPS−2U型使用)
測定結果の表示は、次のとおりにした。
◎・・・展張後の光線透過率が展張前の90%以上のもの。
○・・・展張後の光線透過率が展張前の70〜89%の範囲のもの。
△・・・展張後の光線透過率が展張前の50〜69%の範囲のもの。
×・・・展張後の光線透過率が展張前の50%未満のもの。
【0031】
【表2】






【0032】
以上の実施例からも明らかなように本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、上記の構成を採用することにより、屋外に長期間展張されても物性の低下、防塵性の低下度合いが少ない農業用塩化ビニル系樹脂フィルムとすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂フィルムの片面または両面に、一般式(I)で表されるトリアルコキシシリケート単量体0.1〜15重量%含有するフッ素を実質的に含まないアクリル系重合体[A]99.5〜50重量部とアクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体[B]0〜30重量部とフッ化ビニリデン系樹脂[C]0.5〜50重量部の3成分を主成分とする組成物の被膜がエイジング処理を経て形成されてなる農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【化1】

(式中のR1は水素又はメチル基、R2は直接結合又は2価の有機残基、R3はアルキル基である。)
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂フィルムが、光安定剤を含有してなる請求項1の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項3】
塩化ビニル系樹脂フィルムが、融点が60℃以上の脂肪酸アマイド系粘着防止剤を含有してなる請求項1または請求項2記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項4】
該アクリル系重合体が、一般式(I)で表されるトリアルコキシシリケート単量体0.1〜15重量%のほか、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー4〜30重量%、分子内に1個もしくは2個以上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸0〜20重量%、および残部のこれら化合物と共重合可能な他のビニル系モノマーからなるアクリル系重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農業用塩化ビニル系樹脂フィルム。


【公開番号】特開2006−20552(P2006−20552A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200410(P2004−200410)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(504137956)MKVプラテック株式会社 (59)
【Fターム(参考)】