説明

農業用木製ハウス

【課題】単位長さのスギ集成材を接合した木製アーチ梁の強度を上げ、これを主骨格とする木製ハウスの強度を確保し、安価、長寿命、大型化を図る。
【解決手段】予め曲げ加工した単位長さの弓形スギ集成材を接合金具で繋いだアーチ状梁2に取着ワイヤー3で引張力を加えて強度を上げたR梁の両端を、アースアンカー4に固定して並列に架設し、隣接R梁2間に筋交いワイヤーを張着し、最外側のR梁2の頂部から支えワイヤーを、長手方向外側のアースアンカーに張着して、スギ材とワイヤーの構造体を構成し、該構造体のR梁に母屋材を横架し、妻面に間柱とぬきで粗い木格子を形成し、該母屋の略全面に、および出入口を除く妻面の木格子に夫々透光性フッ素系樹脂膜6を展着し、そして、一方の妻に出入口とゲートを形成してなる農業用木製ハウス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用木製ハウス、詳しくは、木材とワイヤーのハイブリット構造体を有する農業用木製ハウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用簡易ハウスとしてビニールハウスが汎用されている。ビニールハウスは天候等に左右されず、ハウス内が温室のような環境になるので、種々の農作物、野菜や花卉類の栽培に好都合であり、盛んに用いられている。通常、直径20mm前後の鉄パイプを用い、これを門型に形成したパイプ枠体の複数本を並列に、順次直接土中に突き刺して固定する。そして、これらのパイプ枠体群にビニールシートを被覆してビニールハウスを構築している。パイプは細く、ビニールシートは風に弱いので、ビニールハウスは寿命が短い。屋根材のビニールシートは1年毎に取り替える必要がある。この取替えのため、1年毎に大量の産業廃棄物が発生し、この処理のための負担は大きいものがある。
【0003】
今までのビニールハウスは、構造的にも建面積を大きくするのは無理で、農業用機械を入れて作業するには支障があった。そのため、パイプの直径を太くとり、屋根を上弦材と下弦材をラチス材で結合した構造にするなど種々の試みがなされている。パイプの直径が太くなれば中央に支柱を立設し、土台をコンクリート固定するなど安直性は減少し、本格的鉄骨構造に近づくことになる。安直性を確保しながら大型化や耐久性の向上が求められているのが現状である。
【0004】
農業施設の形状は台風、雪、雨、霜、雹その他の自然災害に強いアーチ構造が望ましい。アーチ構造は風の抵抗は大変少なく,積雪の心配もない。真夏の高温時でも空気容量が大きいため、施設内の温度上昇も緩やかになる。逆に、冬は急に温度が下がらないため作業管理が楽になる。
【0005】
これに対し、木材を使った従来の工法では、鉄骨アーチ構造に匹敵する木骨アーチ構造の構築は考えられなかった。翻って、国内林業の最近の衰微はひどく、林業者の生活を圧迫しているのが現状である。スギやヒノキは、間伐を行い的確な管理を行うべきところ放置され、ために山は荒れ、偶に出た間伐材も中々利用されない。この間伐材に付加価値をつけることによって、木の利用価値を増すことができれば、国内農林水産業の活性化を図ることができるのは自明である。
【0006】
先行技術を見るに、一例として特許文献1と特許文献2挙げるが、その他多くの特許文献がパイプや鉄骨構造であり、木材を農業ハウスや農業アーチ構造に採用したものは見られない。
【特許文献1】特開2001−327223
【特許文献2】特開2000−217444
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、木材を基本骨格構造として採用し、これと金属部材を組み合わせることにより、農業用施設としてビニールハウスや鉄骨構造のアーチ構造物に匹敵する性能を有し、安価で寿命も長く、そして大型化も図れる農業用木製ハウスを実現することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、予め曲げ加工した単位長さの木製集成材を接合金具で繋ぎ合わせてアーチ形状梁材を形成し、該梁材の弧の内側等間隔に取着した複数個の掛着金具間に強度増加用ワイヤーを張着することにより更に内部応力を加えたアーチ形状のR梁を形成し、該R梁の両端部をアースアンカー部材に固定して地上に並列に架設し、隣接する該R梁の掛着金具間を筋交いワイヤーでX状に張着して、屋根全体にワイヤー網目を形成し、最外側位置のR梁の頂部から夫々2本の支え用ワイヤーを、長手方向外側対称の地上位置に埋設したアースアンカー部材に張着して木材、接合金具、ワイヤーおよびコンクリートによる構造体を構成し、該構造体を形成する前記R梁の上面にこれと直交して母屋材を多数取着すると共に、妻に間柱とぬきの木格子を形成し、該母屋材の天窓を除く略全面に、および出入口を除く妻の木格子に夫々透光性樹脂シートを展着し、そして、一方の妻に出入口とゲートを形成してなる農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記R梁が、スギおよびまたはヒノキの板材を断面形状方形の集成材に加工し、該集成材を予め曲げ加工して単位材の短R梁を形成し、該短R梁を突き合わせた該短R梁のジョイント部を接合金具で順次繋ぎ合わせてアーチ形状に形成し、該アーチ形状の内側等間隔(両端位置を含む)に掛着金具を複数個取着し、該掛着金具の隣接同士およびまたは1個置きに強度増強用のワイヤーを2重に張着して、更に内部応力を加えて前記R梁の強度を増すと共に所定のアーチ形状に形成し、そしてアースアンカー固定用のスチールカバーを両末端に冠着して構成されたものである請求項1記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記接合金具が、溝型鋼の解放縁外方につばを付設したものと類似の形状を備え、溝底中央に1個とつばの両側に複数対のボルト孔を穿設してなり、一対の前記接合金具が形成する溝で前記短R梁のジョイント部を挟み、該つばの穿設孔にボルトを挿通してボルト締めして短R梁を接合して所定の前記R梁を形成し、そして中央穿設孔にワイヤー掛着ボルトを挿通螺着することができるものである請求項1、または2記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記掛着金具間に所定要領により張着する筋交いワイヤーが、隣接するR梁の直近の掛着金具同士を互い違いに張着してX状に交差するようにし、このX状交差を順次構造体の全面に及ぼしたものである請求項1、2または3記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記掛着金具が、前記R梁の下側所定位置に螺着したボルトの頭部に、回動自在に分配具を取着し、該分配具の対向位置にワイヤー張着具を取着してなるものおよびまたは頭部環を備えるものである請求項1、2、3または4記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記R梁の両端部を固定する前記アースアンカー部材が、地中に打設した鉄筋コンクリート基礎の上に構築した鉄筋コンクリート構造物で、該鉄筋コンクリート構造物の地上突出部に前記R梁の両端のスチールカバー部を固着し、前記R梁の末端掛着金具から鉄筋コンクリート基礎まで2本の地中用ワイヤーを張設して補強し、更に別の地中用ワイヤーを前記鉄筋コンクリート構造物から地中に張設して支えとして構成した請求項1、2、3、4または5記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記R梁頭頂部から張設の支え用ワイヤーを固定するアースアンカー部材が、前記構造体の妻面の外側で、前記R梁端部固定用アースアンカー部材の延長線上、かつ対称位置に配置され、地上突出部の基礎天端のワイヤー掛着環に前記支え用ワイヤーを張着するように構成されたものである請求項1、2、3、4、5または6記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記透光性樹脂シートが、フッ素系樹脂シートである請求項1、2、3、4、5、6または7記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項1記載の農業用木製ハウスが、透光性アクリル波板製ひさし板と側溝を付設してなる請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の農業用木製ハウスであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
木材に曲がりの強度を加え長いスパン架設しても柱不要の最強の構造体を作ることができる。木材を曲げ加工して鉄製結合具でR梁を形成し、これらとワイヤーとのハイブリット工法による構造体は、木材単体の約10倍の強度となる。スギやヒノキの間伐材に付加価値を付することによって利用価値が増し、地域林業を活性化する。また、利用方法は千差万別であるが、大規模機械化農業は21世紀の日本の将来のスタートであるから、全く新しい施設が誕生し、想像を超えた所得の向上が図れる。用いる主建材は木材とワイヤーであるから、安全にリサイクルができる。更に、建設費、維持費ともに安価である。ビニールハウスは1年毎に屋根材を取り替え、大量の産業廃棄物をだすが、その必要はない。建設費は3年間使用すれば、ビニールハウスの経費を下回る。本農業用ハウスの保証期間15年、耐久命数25年が見込まれる。そして、本農業用ハウスは、アーチ構造であるため台風、雪、雨、霜、雹その他の自然災害に強い。風の抵抗は少なく、積雪の心配もない。真夏高温時でも空気容量が大きいため、施設内は緩やかな温度上昇となる。逆に冬は急に温度が下がらないため、作業管理が楽である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の農業用木製ハウスを具体化した最良の実施の形態について、以下図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の農業用木製ハウス(1)の基本構造部材であるR梁(2)の断面図、図2は農業用木製ハウス(1)の正面図、図3はその平面図、そして図4はその側面図である。本実施例では1モデルとして、R梁(2)の弧の形状は8本の短R梁(22)を接合金具(21)で順次結合して得たが、拡大縮小は適宜可能である。また、R梁(2)の弧の長さを6分割した弧の内側の位置5点と両端の2点との計7点間を隣接同士および1つ置きにワイヤー(3)を2重に張設して、R梁(2)の強度を増強した。R梁(2)は自重により架設中、両端間距離であるスパンを広げるなど変形の傾向がある。R梁(2)の天頂位置には天窓(11)が棟木方向(図面と直角方向)に形設して空気循環に供し、両端位置のR梁(2)の天頂部から張設する左右2本計4本の支え用ワイヤー(14)は、R梁(2)架設用のアースアンカー(4)とは別の、それらの延長線上にあるアースアンカー(4)に固定する。
【0020】
図3に見るように、本発明の農業用木製ハウス(1)は、R梁(2)を並列に12本架設し、隣接するR梁(2)同士を、筋交いワイヤー(13)でX状に張設し、筋交いワイヤー(13)の張設が全体として網目状になるようにして一体構造化した。そして、両端に位置するR梁(2)の天頂部夫々から2本の支え用ワイヤー(14)を、アースアンカー(4)の延長線上で妻面から離れた位置のアースアンカー(4)に張設し、棟木方向から加わる力例えば風力に対する抵抗力を増加した。図3の構成の建面積で、大規模農業が充分可能である。妻面に出入り口(15)を開設し、R梁状屋根を冠するゲート(16)を付設した。農業用以外の各種イベント等の使用に供することがあるからである。
【0021】
図5は図1のA部詳細、そして図6は図1のB部詳細である。図5は、R梁(2)の天頂部にあるジョイント部(20)を示す。R梁(2)の強度増加用ワイヤー(3)を二系統張着したが、図5と図6に図示するワイヤー張着金具(31)を挟んで分岐するワイヤー(3)とその下を過ぎるワイヤー(3)とは別系統である。すなわち、R梁(2)をワイヤー(3)で均等に強度を増加した。R梁(2)に関連して、強度増加用ワイヤー(3)のほか、R梁(2)相互補強用筋交いワイヤー(13)、両端位置のR梁(2)の天頂部から棟木方向外側のアースアンカー(4)に張設したハウス全体の支えワイヤー(14)、およびR梁(2)強度増加用ワイヤー(3)を更に補強する地中ワイヤー(46)がある。R梁(2)の天頂部にあるジョイント部(20)は、天窓(11)を保持する構造が付加されるので、他のジョイント部(20)よりは複雑になる。ワイヤー張着金具(31)の中央孔とジョイント部(20)の中央孔に固定用ボルト(32)を挿通し、母屋材(5)とこれに鋲着した透光性樹脂シート(6)を貫通し、そしてその上部の天窓(11)の支持部に螺着して固定した。ワイヤー張着金具(31)のワイヤー掛着孔(33)には、ワイヤー(3)、同(13)および同(14)は締め具(34)を介して掛着する。長さを調節して線を均等に張る必要があるからである。一部が緩んでいたのでは引っ張り部材としての機能を果たせず、構造体として成り立たなくなるからである。
【0022】
図6は、R梁(2)と母屋材(5)が重なる部分にワイヤー張着金具(31)を取着した場合を示す。図6には、ワイヤー(3)のみが図示されているが、このワイヤー張着金具(31)にR梁(2)の筋交いワイヤー(13)も張着共用される。ワイヤー張着金具(31)の中央孔に環付きボルトを通して、R梁(2)の上面に装着した母屋材(5)を挿通し、その先端部を盲にして螺着し固定した。透光性樹脂シート(6)には、フッ素系のエフクリーン(登録商標)(6)を用いた。
【0023】
図7は、弓形短R梁(22)の両端にワイヤーと梁の取り合い金物(24)を取り付け、ワイヤーで引張力(F)を加えた状況を示す。短R梁(22)は、スギ板に構造用接着剤を塗り、その4枚を重ね合わせてRプレス機で予備的に曲げ加工した。従って、断面形状は略方形に近い形状となる。枚数を多くするほど梁の強度は増すが、梁の長さ等により枚数は決まる。予め曲げ加工した状態の弓形短R梁(22)を更に力Fで引っ張ると、弓形短R梁(22)に内部応力が発生してその強度が増し、木材でありながら鉄と変わらない強度となる。これが正にハイブリット工法の特色であり、少ない木材で安価、高強度、かつ大きな構造物が得られる。因みに、直径12mmのワイヤーを使って、1本あたり20トンないし35トンの強度を出せる。本実施例では、弓形短R梁(22)をこれらの集成材を所定曲率になるまで力(F)を加えた状態で使用した。力(F)が加えられると、弓形短R梁(22)の内面に力(F)に相当する圧縮力(図中の矢印)と、その外面に引張力(図中の矢印)が発生して力(F)と釣り合い、強度が増す。
【0024】
図8は、短R梁(22)を繋ぎ合わせる接合金具(21)のスケッチ図、図9は同じくそれらの納まり図、図10はR梁(2)と筋交い用ワイヤー(13)のスケッチ図、図11は同じくそれらの納まり図、そして図12は接合金具(21)の(1)平面図および(2)正面図である。接合金具(21)にはユニクロメッキ加工の鋼材(以下、スチールという)を用い、接合金具(21)の凹部を向かい合わせ、免震ゴム(25)介在の下にR梁(2)の上下面を挟み、つばに穿設された4個のボルト孔に六角ボルトを挿通してナットで締め、2本の短R梁22を結合した。8本の短R梁(22)が結合されて、1本のR梁(2)となる。なお、接合金具(21)は、R梁(2)の大きさにより短尺型と長尺型を使い分ける。短尺型の場合、突合わせた短R梁(2)のジョイント部を、溝に両側から挟み、4箇の孔を使いボルト締めして挟着結合する。R梁(2)上の母屋材(5)が横架された位置に、ワイヤー張着金具31を取り付けるときには環付きボルトを使う。環はワイヤー張着に直接用いる。母屋材5がない所にはより短い環付きボルトでよい。
【0025】
図10と図11は、図8と図9に示す接合金具(21)の中央部にワイヤー張着用ボルト(32)を挿通してナットで締めて固定し、ワイヤー張着用ボルトの頭部に形設された環(35)に筋交い用ワイヤー(13)を掛着した状況を示したものである。図12(1)に接合金具(21)の平面図、図12(2)に正面図を夫々示す。
【0026】
図13は、農業用木製ハウス(1)の基礎部分の納まり図である。地下にコンクリートを打設してベース(42)とし、その上に鉄筋コンクリート基礎(41)を構築し、更にその上部に鉄筋コンクリート製アースアンカー(4)を構築した。基礎天端(43)は地上に突出状態とする。R梁(2)の端末部にはスチールカバー(23)が冠着され、スチールカバー(23)の端末は長手方向に直角な面が形成され、この直角面が免震ゴム(44)を介して基礎天端(43)に密着し、螺着される。螺着に使用するボルト孔は、鉄筋コンクリート基礎(41)の鉄筋に連結されているので、容易に脱着することはない。鉄筋コンクリート基礎(41)の上面両端にワイヤー掛着環(45)を取り付け、R梁(2)端末のワイヤー張着ボルト(32)の環(35)とワイヤー掛着環(45)の間に地中ワイヤー(47)を張設し、R梁(2)に強度を付与する張力が緩和するのを防止した。ワイヤーの調整は締め具(34)によってもできるが限度がある。母屋材(5)に展着した透光性エフクリーンシート(登録商標)(6)の下部に透光性アクリル波板製ひさし板(61)を、そしてその直下に側溝(12)を設け、水捌けをよくした。
【0027】
農業用木製ハウス(1)の妻面直近位置のR梁(2)の天頂部から地上に張設する支え用ワイヤー(14)を固定するアースアンカー(4)は、上述の鉄筋コンクリート製アースアンカー(4)の基礎天端(43)にワイヤー掛着環(45)を取り付けた構成となる。固定対象は支え用ワイヤー(14)だけであるが、農業用木製ハウス(1)の強度を保持する上で重要な部材である。
【0028】
図14は、ワイヤー張着用ボルト(35)、R梁(2)、母屋材(5)およびエフクリーンシート(登録商標)(6)の相互関係を示す説明図である。R梁(2)の下面に免震ゴム(25)を介してR梁受金具(26)を当て、その中央部に環付ボルト(35)を挿通し、免震ゴム(25)を介してアングル材(53)をR梁(2)の上面に載置し、アングル材(53)上に先端を出した環付ボルト(35)をナット締めし、固定する。このナット締めした位置は、母屋材(5)を重ね継ぎした位置に当たり、これに当たった母屋材(5)の下面の一部は削り取って空洞にする。母屋材(5)は重ね継ぎして使用するが、継ぎ目(51)に見るように、端部の一部を半分切り取り、互いの母屋材(5)が均等に重なるようにし、継ぎ目(51)の両側を六角ボルト(52)で締め、固定する。母屋材(5)の上面はエフクリーンシート(登録商標)(6)の展着をするため平滑にする必要がある。そのため、ボルト挿通孔の頭部は削り取って空洞にする。頭部空洞化した孔口から六角ボルト(52)を挿通し、アングル材(53)の下に出た先端をナット締めし、固定する。この際、ナットが外部に突出しても差し支えはない。環付ボルト(35)の頭部環には筋交いワイヤー(13)が掛着されている。
【0029】
エフクリーンシート(登録商標)(6)は、各種仕様があり、本実施例で使用したのは厚さ0.1mmであるから、シートではなく、薄膜であり、押さえ(63)、スチール垂木(62)およびビス(64)との密着性は確実で、雨漏れの心配はない。薄膜でも実体はあるので、エフクリーンシート(登録商標)(6)を実線で示した。
【0030】
図15は、並列するR梁(2)の相互間、棟木方向に母屋材(5)を横架する位置を決めるための説明図である。本例は農業用木製ハウスの1モデルの建坪として役300坪で計画し、R梁(2)に適するスパン長さを得た。R梁(2)適するスパン長さと、天頂までの高さの制約から、R梁(2)は扇形の弧となる。この扇形の中心角(シータ)を20等分した弧上の位置を、母屋材5の取着位置とした。
【0031】
図16および図17は、母屋材(5)の横架に必要な金物部品の図面である。図16はR梁受け金具(26)の(1)平面図および(2)正面図、図17はスチール製アングル材(53)の(1)平面図、および(2)正面図および(3)スケッチ図である。アングル材(53)は、母屋材(5)の重ね継ぎと環付ボルト(32)の挿通の際、ボルト締めの基盤を与える。
【0032】
本発明の農業用木製ハウス(1)は、農業用として構築したが、他の種々の目的の施設として利用することができる。例えば各種エベント会場などにも供用できる。構造体としても耐久性があり、しかも安価である。そのためにはゲートが不可欠となる。ゲートにR梁状屋根を載置すれば全体として調和がとれる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の農業用木製ハウス(1)によれば、スギやヒノキの間伐材の利用価値が増し、地域林業が活性化する。新しい施設が誕生し、大規模機械化農業のスタートとなる。アーチ構造のため台風、雪、雨その他の自然災害に強い農業が可能となる。
【0034】
本発明の農業用木製ハウス(1)によれば、温暖な地域、寒冷地、強風や大雪の地域夫々に適応した設計ができるので、国中何処でも12ヶ月計画栽培ができる。農業生産者減少化の現在、大型機械導入と企業の農業参入の道を開き、より多くの生産を保証し、食料自給率向上に寄与する。また、露地栽培と違い大型ハウスは害虫や病気の被害が少ないので、農薬使用量が減少し、安全な農産物を市場に出荷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】農業用木製ハウス(1)の基本構成部材たるR梁(2)の断面図である。
【図2】農業用木製ハウス(1)の正面図である。
【図3】農業用木製ハウス(1)の平面図である。
【図4】農業用木製ハウス(1)の側面図である。
【図5】図1のA部詳細である。
【図6】図1のB部詳細である。
【図7】短R梁(22)の両端間に引張力(F)を加えた状況を示す説明図である。
【図8】短R梁(22)を繋ぎ合わせる接合金具(21)のスケッチ図である。
【図9】短R梁(22)を繋ぎ合わせる接合金具(21)の納まり図である。
【図10】R梁(2)と筋交い用ワイヤー(13)のスケッチ図である。
【図11】R梁(2)と筋交い用ワイヤー(13)の納まり図である。
【図12】接合金具(21)の、(1)平面図、および(2)正面図である。
【図13】農業用木製ハウス(1)の基礎部分の納まり図である。
【図14】ワイヤー張着用ボルト(35)、R梁(2)、母屋材(5)およびエフクリーンシート(登録商標)(6)の相互関係を示す説明図である。
【図15】並列するR梁(2)の相互間、棟木方向に母屋材(5)を横架する位置を決めるための説明図である。
【図16】R梁受け金具(26)の、(1)平面図、および(2)正面図である。
【図17】スチール製アングル材(53)の、(1)平面図、(2)正面図、および(3)スケッチ図である。
【符号の説明】
【0036】
1 農業用木製ハウス
2 R梁
3、13、14、47 ワイヤー
4 アースアンカー(R梁用)
5 母屋材
6 透光性樹脂シート
7 ボルト
9 ボルト孔
11 天窓
12 側溝
15 出入り口
16 R梁状屋根を載置するゲート
20 ジョイント部
21 短R梁接合金具
22 短R梁
23 スチールカバー
24 取合金物
25、44 免震ゴム
31 ワイヤー張着金具
32 ワイヤー張着用ボルト
33 ワイヤー張着金具のワイヤー掛着孔
34 ワイヤー締め具
35 ワイヤー張着用ボルト(32)の頭部環
41 コンクリート基礎
42 ベース
43 基礎天端
45 ワイヤー掛着環
61 アクリル波板製ひさし板
62 スチール垂木
63 エフクリーンシート押さえ
64 ビス
GL 地表面
F 引張力(○付き矢印)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め曲げ加工した単位長さの木製集成材を接合金具で繋ぎ合わせてアーチ形状の梁材を形成し、該梁材の内側等間隔に取着した複数個の掛着金具間に強度増加用の鉄線(以下、ワイヤーという)を張着して内部応力を加えたアーチ形状の梁材(以下、R梁という)を形成し、該R梁の両端部をアースアンカー部材に固定して地上に並列に架設し、隣接する該R梁の掛着金具間を筋交いワイヤーでX状に張着して全体にワイヤー網目を形成し、最外側位置のR梁の頂部から夫々2本の支え用ワイヤーを、長手方向外側対称位置に埋設したアースアンカー部材に張着して木材、接合金具およびワイヤーによる構造体を構成し、該構造体の前記R梁にこれと直交して母屋材を取着すると共に、妻に間柱とぬきの木格子を形成し、天窓を除く該母屋材の全面および出入口を除く妻の木格子に夫々透光性樹脂シートを展着し、そして、一方の妻に出入口とゲートを形成してなる農業用木製ハウス。
【請求項2】
前記R梁が、スギおよびまたはヒノキの板材を断面形状方形の集成材に加工し、該集成材を予め曲げ加工して単位材の短R梁を形成し、該短R梁を突き合わせた該短R梁の接合部(以下、ジョイント部という)を接合金具で順次繋ぎ合わせてアーチ形状に形成し、該アーチ形状の内側等間隔(両端位置を含む)にワイヤー掛着金具(以下、掛着金具という)を複数個取着し、該掛着金具の隣接同士およびまたは1個置きに強度増強用のワイヤーを2重に張着して、所定のアーチ形状に形成すると共に、更に内部応力を加えることによって前記R梁の強度を増し、そしてアースアンカー固定用のスチールカバーを両末端に冠着して構成されたものである請求項1記載の農業用木製ハウス。
【請求項3】
前記接合金具が、溝型鋼の解放縁外方につばを付設したものと類似の形状を備え、溝底中央に1個とつばの両側に複数対のボルト孔を穿設してなり、一対の前記接合金具が形成する溝で前記短R梁のジョイント部を挟み、該つばの穿設孔にボルトを挿通してボルト締めして短R梁を接合して前記R梁を形成し、そして中央穿設孔にワイヤー掛着環付きボルトを挿通螺着することができる請求項1または2記載の農業用木製ハウス。
【請求項4】
前記隣接R梁の掛着金具間に張着する筋交いワイヤーが、隣接するR梁の直近の掛着金具同士を互い違いに張着してX状に交差するようにし、このX状交差を順次構造体の全面に及ぼしたものである請求項1、2または3記載の農業用木製ハウス。
【請求項5】
前記掛着金具が、前記R梁の下側所定位置に螺着したボルトの頭部に、回動自在に分配具を取着し、該分配具の対向位置にワイヤー張着具を取着してなるものおよびまたは頭部環を備えるものである請求項1、2、3または4記載の農業用木製ハウス。
【請求項6】
前記R梁の両端部を固定する前記アースアンカー部材が、地中に打設した鉄筋コンクリート基礎の上に構築した鉄筋コンクリート構造物で、該鉄筋コンクリート構造物の地上突出部に前記R梁の両端のスチールカバー部を固着し、前記R梁の末端掛着金具から鉄筋コンクリート基礎まで2本の地中用ワイヤーを張設して補強し、更に別の地中用ワイヤーを前記鉄筋コンクリート構造物から地中に張設して支えとして構成した請求項1、2、3、4または5記載の農業用木製ハウス。
【請求項7】
前記R梁頭頂部のワイヤーを固定するアースアンカー部材が、前記構造体の妻面の外側で、前記R梁端部固定用アースアンカー部材の延長線上、かつ対称位置に配置され、地上突出部の基礎天端のワイヤー掛着環に支え用ワイヤーを張着するように構成されたものである請求項1、2、3、4、5または6記載の農業用木製ハウス。
【請求項8】
前記透光性樹脂シートが、フッ素系樹脂シートである請求項1、2、3、4、5、6または7記載の農業用木製ハウス。
【請求項9】
請求項1記載の農業用木製ハウスが、透光性アクリル波板製ひさし板と側溝を付設してなる請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の農業用木製ハウス。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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