説明

農業用温室の加温装置

【課題】構造がシンプルで省エネルギー及び低コストな農業用温室の加温装置を提供する。
【解決手段】筐体1内の上下に設置された貯水タンク2、3の間には空調変換エリア5が備わる。空調変換エリア5内であって、筐体1内の上下に設置された貯水タンク2、3を接続する複数の熱交換パイプ6は、下部の貯水タンク3内に充填された液体が、下部の貯水タンク3内に内蔵されたヒーター4により加温され、その熱が熱交換パイプ6を介して、上部の貯水タンク2へと伝わる。熱交換パイプ6からの放熱作用により暖気が充満する空調変換エリア5内を、外部からの冷気が通過することで、送風口10より温風を排気させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルハウス等の農業用温室内を所望の温度に保持するための加温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビニルハウス内の加温装置は、例えば暖房設備としてボイラーを用い、ボイラーからの熱を、ビニルハウス内に敷設した熱風ホースから送風してビニルハウス内を加温する方法がとられていた。しかしボイラーは灯油を燃料にして温風を生成させ、これをビニルハウス内に循環させて暖房を行うため、地球温暖化の一因だと言われているCO2の排出量が高い。ゆえに一層の省エネルギー化が求められていた。また、灯油の価格は需給バランスや原油価格に左右されるため、稼働コストが一定しない問題があった。
【0003】
また、冷房設備としては、クーラーからの冷風を冷風ホースを介してビニルハウス内に送風されていた。しかし、従来のクーラーは、一般に熱源機としての室外機、利用側機器としての室内機、及びこれらを接続する冷媒配管から成る。室外機は圧縮機や熱源側熱交換器、室内機は利用側熱交換器や絞り装置を有し、上記の圧縮機、熱源側熱交換器、絞り装置、利用側熱交換器等が配管接続されて冷凍サイクルが構成される。しかし近年、環境保護の観点から、この冷凍サイクルに充填される冷媒の種類によってはオゾン破壊を促す危険性がある深刻な問題もあった。
【0004】
さらに、上記の暖房設備また冷房設備とも、送風のためのパイプを埋設及び敷設するための大がかりな工事を必要とし、設備、メンテナンス、稼働コストが高いという問題点を有している。
【0005】
一方、農業、園芸用温室などの暖房熱源として電気ヒーターを使用する装置が開発されている。(特許文献1参照)
【0006】
特許文献1に記載される装置は、農業用温室に電気ヒーターを設け、この電気ヒーターを温度センサで制御する。この装置は、温室内の温度が低下すると電気ヒーターに通電して温室内を加温する。この装置は、電気ヒーターで温室を加温するので、消費電力が極めて大きく、ランニングコストが著しく高くなる欠点がある。
【0007】
ランニングコストは、深夜電力を利用して低減できる。深夜電力は消費電力が小さくなる夜間に停止できない発電所の余剰電力を有効に利用する。とくに、近年の日本における発電所は、原子力発電や火力発電の割合が大きい。これらの発電所にあっては、夜間においても発電機を停止できず、また発電機の出力の低減量も制限される。したがって、夜間に消費電力が小さくなっても、発電機の出力を消費電力に制御できず、発電電力が消費電力よりも大きくなって、発電された電力を有効に利用できないのが実情である。また、発電機は、出力を小さくすると発電効率が悪くなることから、夜間に出力を小さく制御すると、発電効率が悪くなって、発電コストが高くなる。深夜電力の有効利用はこの弊害を解消する。
【0008】
しかしながら、深夜電力で電気ヒーターに通電する特許文献1の装置は、深夜電力を効率よく利用できない。それは、温室の温度を検出して電気ヒーターをオンオフし、所定の温度に保持するからである。
【特許文献1】実開昭60−111647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のこのような問題点を解消するためになされたものである。本発明の目的は、省エネルギー及び低コストな農業用温室の加温装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の農業用温室の加温装置は、間に空調変換エリア5を設けて上下に離して配設される上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3とを複数の熱交換パイプ6で連結してなる熱交換器18と、下部の貯水タンク3に内蔵されて下部の貯水タンク3に充填される循環液を加温するヒーター4と、空調変換エリア5に農業用温室内の空気を強制送風する送風ファン9と、ヒーター4に接続されてヒーター4の通電時間を深夜電力に設定しているタイマ20とを備え、タイマ20でもって深夜電力でヒーター4に通電し、通電されるヒーター4で下部の貯水タンク3の循環液を加温し、加温された循環液を熱交換パイプ6を介して上部の貯水タンク2に循環させ、送風ファン9でもって農業用温室の空気を空調変換エリア5に強制送風し、強制送風される空気を熱交換パイプ6で加温して、農業用温室内を加温することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の農業用温室の加温装置は、熱交換器18を筐体1に収納していることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、本発明の第3の農業用温室の加温装置は、上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3の全長がほぼ等しいことを特徴とする。
【0013】
さらにまた、本発明の第4の農業用温室の加温装置は、熱交換パイプ6に所定の間隔で複数のフィン7を設けていることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、本発明の第5の農業用温室の加温装置は、空調変換エリア5の排出側に冷温風切換弁13を設けており、この冷温風切換弁13でもって、空調変換エリア5を通過した空気を上又は下に切り換えることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、本発明の第6の農業用温室の加温装置は、上部の貯水タンク2の上方と下部の貯水タンク3の下方に、空調変換エリア5に連結する吸入ダクト16を設けており、この吸入ダクト16に吸入された空気を空調変換エリア5に通過させて農業用温室に排出することを特徴とする。
【0016】
さらにまた、本発明の第7の農業用温室の加温装置は、複数の熱交換器18を並列に連結すると共に、各々の熱交換器18の上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3は縦に細長いタンクで、この細長いタンクからなる上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3を互いに平行な姿勢に配置して並列に連結していることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、本発明の第8の農業用温室の加温装置は、上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3に蓄えられる液体が水又はオイルであることを特徴とする。
【0018】
さらにまた、本発明の第9の農業用温室の加温装置は、下部の貯水タンク3又は上部の貯水タンク2に地下水を供給する水ポンプ19を連結しており、この水ポンプ19が下部の貯水タンク3又は上部の貯水タンク2に地下水を供給して熱交換パイプ6を冷却し、空調変換エリア5に農業用温室の空気を強制送風して冷却するようにしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明によれば、夜間の余剰電力である深夜電力を有効利用することで、省エネルギーに農業用温室を加温できる特徴がある。とくに、本発明の農業用温室の加温装置は、深夜電力で通電される電気ヒーターで直接に温室を加温するのではなく、電気ヒーターで上部の貯水タンクと下部の貯水タンクの液体を加温し、加温された液体を介して農業用温室の空気を加温する。この加温装置は、深夜電力のエネルギーを液体に蓄え、液体に蓄えた熱エネルギーで温室を加温する。したがって、深夜電力が供給される時間帯、たとえば午後11時から午前7時までの間に供給される深夜電力を効率よく液体に蓄え、蓄えた熱エネルギーで温室を加温できる。液体に蓄えた熱エネルギーは、深夜電力の供給が停止される午前7時以降にも温室を加温できる。したがって、冬季に温室の温度が上昇する朝まで連続して加温できる。また、夜間の余剰電力を有効利用して、温室を効率よく加温することから、発電所を含む全体的な省エネルギー効果は極めて大きい。さらに、上部の貯水タンクと下部の貯水タンクに循環される液体の温度は、電気ヒーターの温度に比較して低温であることから、温室内の植物に局部的に高温に加温することなく、温室全体の植物を適温に加温できる特徴がある。
【0020】
さらに本発明の農業用温室の加温装置は、上部の貯水タンクと下部の貯水タンクとを熱交換パイプで連結して熱交換器とし、この熱交換器の熱交換パイプに温室内の空気を強制送風して温室を加温する構造とするので、全体の構造を簡単にして製造コストを低減できる特徴もある。
【0021】
また本発明によれば、発熱が電気式であり燃焼を伴っていないため、安全で耐久性に優れる。また運転保守やメンテナンスも容易であり、汚染された排気が発生しない環境にやさしい効果を奏する。
【0022】
第4発明によれば、複数の貯水タンク及び多数のフィンを備えた熱交換パイプを備える。これにより短時間で温風または冷風を排気させることができる効果を奏する。
【0023】
また、第5発明によれば、本装置により発生した温風は下部側から、また冷風は上部側から排気できる。また、農業用温室内の温度は、温室内の地面側から温室内の屋根側へ移動するに従って上昇する。つまり、温室内の低温領域に温風が、また温室内の高温領域に冷風が排気されることにより、温室内の温度差を効率よく低減させることができる効果を奏する。
【0024】
また、第6発明によれば、外気の取り込み方向を広く、また外気量を多くできるため、より均一な熱交換空調が実現できる効果を奏する。
【0025】
第7発明によれば、複数の熱交換器を並列に連結するので、並列に連結する熱交換器の数を調節することにより、熱交換量をコントロールできる。よって広い温室には、多数の熱交換器を並列に連結し、小さい温室にあっては熱交換器の並列連結数を少なくして、広い温室から狭い温室まで、最適な温度に加温できる。
【0026】
第8発明によれば、液体にオイルを使用すれば、熱交換器内の腐食を防止して、長期間に渡って故障しないように使用できる効果を奏する。また水を使用すれば冷媒を安価に利用できる。
【0027】
第9発明によれば、地下水を利用して温室を冷房できる。地下水は水道水に比べ、1年を通じて水温が一定しており、約15〜18℃と夏期の温室内の温度に比べて相当に低い。冷たい地下水を熱交換器18に供給して熱交換パイプを冷却し、冷却された熱交換パイプに温室の空気を強制送風して、夏期の暑い温室を涼しく冷房できる。この使用状態は、電気ヒーターの通電を停止し、下部の貯水タンクと上部の貯水タンクに地下水を循環すること実現できることから、装置を改造することなく、そのままの構造で使用して、温室を冷房できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための農業用温室の加温装置を例示するものであって、本発明は農業用温室の加温装置を以下のものに特定しない。さらに、本明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」、及び「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。なお農業用温室の加温装置とは、その名称に限らず加温装置に限られず冷房装置も含む意味で使用する。
【実施例1】
【0029】
(暖房)
図1に、本発明の一実施例による農業用温室の加温装置の斜視図を示す。この農業用温室の加温装置は、冷房用と暖房用との両方に使用できるが、実施例1では寒冷時等に使用する暖房用としての装置を、図1に基づき説明する。
【0030】
実施例1の暖房装置は、略直方体の筐体1に熱交換器18と送風ファン9を内蔵する。筐体1内の上部及び下部には、上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3が設置される。貯水タンクは、アルミニウムや鉄等の熱伝導性の高い金属からなる。また、その形状は細長い略箱状であり、貯水タンクの内部は液体を蓄えられるよう空洞になっている。この貯水タンクを、便宜上、筐体1の上部に設置される上部の貯水タンク2と、筐体1の下部に設置される下部の貯水タンク3とに名称分けする。実施例1では上部の貯水タンク2、下部の貯水タンク3とも、その幅方向に対して並列に連続して複数設置されている。また、各上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3は、長手方向において略平行に隙間なく設置されている。
【0031】
また、下部の貯水タンク3は、ヒーター4を内蔵する。図1にヒーターの内蔵の様子を示すために、複数の下部の貯水タンク3の内、蓋が外された一の下部の貯水タンク3を示す。また、これらのヒーターの略配線図も示す。下部の貯水タンク3内には液体として水が充填されることを考慮すれば、ヒーター4はセラミックヒーター4が望ましい。これにより耐食性、耐候性が高まり、長期にわたる使用に耐えうる。図1に示すように各下部の貯水タンク3内に設置されたヒータ4はタイマ20が連結されている。このタイマ20に時間設定を施すことにより、深夜電力が供給される時間帯、たとえば午後11時から午前7時までの間は通電し、深夜電力を効率よく供給することができる。深夜電力の供給が停止される午前7時以降は通電を停止し、液体に蓄えた熱エネルギーを利用して温室を加温できる。
【0032】
さらに、各上部の貯水タンク2と下部の貯水タンク3とは上下に離して配置されて、その間には空調変換エリア5を設けている。この空調変換エリア5内には、上部の貯水タンク2の下面と下部の貯水タンク3の上面とを連結する熱交換パイプ6が、上部の貯水タンク2のほぼ全長手方向にわたって、所望の間隔をおいて複数設置されている。この熱交換パイプ6は貯水タンクと同様、熱伝導性の高い金属から構成される。上部の貯水タンク2及び熱交換パイプ6及び下部の貯水タンク3の内部空間は一体に連結されており、液体が充填されている。また、各上部の貯水タンク2の第1の側面にはパイプ15が設置され、同様に、各下部の貯水タンク3には第1の側面に対向する第2の側面側にパイプ15が設置される。各上下の貯水タンク2、3から延伸されたパイプ15は途中で一つにまとめられる。これにより排水、給水の管理が容易になる。実施例1では水ポンプ19で汲み上げられた地下水が、水ポンプ19に連結されたパイプ15を介して下部の貯水タンク2に給水される。また、上下の貯水タンク2、3に連結されたパイプ15には止水口(図示せず)が設置されており、この止水口を介して、給水もしくは排水できる構造となっている。
【0033】
さらにまた、上部の貯水タンク2の下面と下部の貯水タンク3の上面とに連接される熱交換パイプ6の外周には、熱交換パイプ6の下部から上部にわたって、ほぼ等間隔に且つ幅方向に対して平行に複数のフィン7が固定される。このフィン7もアルミニウム等の熱伝導性の高い金属から構成される。これにより伝熱面積が大きくなるため、空調変換エリア5内への放熱又は冷却が効率よく行われる。
【0034】
この空調変換エリア5の長手方向における対向した側面は開口している。この側面の内、第1の側面にはストレートヒータ8が網状に被覆されており、網目の開口部をストレートヒーター吸入口14とする。また、第1の側面と対向した第2の側面には送風ファン9が設置されている。さらに第2の側面から筐体1の外部側へ延接された送風口10が備えられている。送風口10は送風ファン9近傍で上下に二方向へ分かれ、上側の送風口を冷風用ダクト11、下側の送風口を温風用ダクト12と称す。これらのダクト11、12はビニル温室内へと延伸可能であり、また別個連結部材と連結させて、ビニル温室内へ排気を通気させることも可能である。
【0035】
冷気用ダクト11及び温風用ダクト12の二方向への分かれ目付近に、冷温風切換弁13が設置されている。この冷温風切換弁13は移動可能であり、排気の流れを冷気用ダクト11または温風用ダクト12のどちらか一方に制限させることができる。
【0036】
また、送風ファン9は空調変換エリア5内の空気を送風口10側へ排気する機能を備えており、つまり空気の流れは次のようになる。外気はストレートヒーター吸入口14を通過し、空調変換エリア5内に入る。外気は空調変換エリア5の第1の側面側から第2の側面側へ移動し、送風ファン9により吸気され、送風口10へ通気される。
【0037】
(空調変換システム)
上記のような農業用温室の暖房装置を使用して、外気からの吸気の温度を上昇させて排気する仕組みについて図1を基づいて説明する。実施例1では貯水タンクに充填される液体として地下水を一例に挙げる。下部の貯水タンク3内に充填された地下水は、ヒーター4により加温される。このヒーター4のエネルギー熱は午後11時から午前7時の間に蓄えられることが好ましい。これにより電気代が割安な深夜料金でまかなえるため低コストとなる。下部の貯水タンク3内の加温された温水は、この下部の貯水タンク3と連結されている熱交換パイプ6内及び上部の貯水タンク2内に移動する。この加温された上部の貯水タンク2は、空調変換エリア5内の熱を閉じこめる効果を生じる。つまり空調変換エリア5内の暖められた空気が、温度の低い外気と直接接触するのを防止する役目を果たし、空調変換エリア5内の暖気が保持され得る。また、温水の移動と同時に伝熱が下部の貯水タンク3、熱交換パイプ6及びフィン7、上部の貯水タンク2へとこの順で進む。一方、水温が下がり、冷水となった地下水は、密度の差により底面側へ移動する。すなわち冷水は下部の貯水タンク3へと移動し、ヒーター4により加温され、再び熱交換パイプ6を介して上部の貯水タンク2へと移動する。
【0038】
上記のような状態で、冷気である外気が、ストレートヒーター吸入口14から農業用温室の暖房装置内に吸い込まれる。この際、第1の側面に被覆されたストレートヒータ8の網目内を通気するため、吸気の上昇が期待できる。吸気はさらに空調変換エリア5内を通過し、送風ファン9側へと移動する。この際、吸気は空調変換エリア5内の、加温された複数の熱交換パイプ6及びフィン7により暖められる。この暖気は送風ファン9により送風口10へ通気され、さらに温風用ダクト12へ移動し、ビニル温室内へと排気される。
【0039】
また、実施例1では一対の上下貯水タンク2、3と、その間に介在する空調変換エリア5からなる熱交換器18を並列に複数連結する。よって並列に連結する熱交換器18の数を調節することにより、熱交換量をコントロールできる。また同様に、熱交換パイプ6は脱着可能であるため、熱交換パイプ6の数を調節することにより熱交換量をコントロールできる。すなわち、熱交換器18又は熱交換パイプ6の連結数を増減することで、広い温室から狭い温室まで、最適な温度に加温できる。
【実施例2】
【0040】
他の農業用温室の暖房装置の例を図2に示す。この農業用温室の暖房装置は、実施例1の農業用温室の暖房装置に加え、上部の貯水タンク2の上方と下部の貯水タンク3の下方に、さらに吸入ダクト16が接面されて備えられている。この吸入ダクト16は空調変換エリア5に連結されている。また、吸入ダクト16の第1の端部は開口しており、この開口した外部吸気口17から外気が取り込まれる。農業用温室の暖房装置内に取り込まれた外気は、ストレートヒーター吸入口14より空調変換エリア5内に通気され、加温される。この加温の構造は実施例1と同じであるので説明を省略する。加温された暖気は送風口10よりビニル温室内へと排気される。実施例2では吸入ダクト16を複数設けたが、筐体1の上面又は下面のいずれか一方にだけ備えても良い。
【実施例3】
【0041】
(冷房)
農業用温室の冷房装置の例を図1に基づき説明する。下部の貯水タンク3に付設されたパイプ15は地下水を供給する水ポンプ19に連結されており、地下水が下部の貯水タンク3内に常時給水されている。このパイプ15を介して給水された地下水は、下部の貯水タンク3内に蓄えられると同時に、熱交換パイプ6内を上昇し、さらに上部の貯水タンク2へと移動する。上部の貯水タンク2に付設されたパイプ15の止水口(図示せず)は開かれており、つまり常時外部へと排水されている。よって地下水の流れは、下部の貯水タンク3、熱交換パイプ6、上部の貯水タンク2、外部、の順に常に移動する。農業用温室の冷房装置を使用する場合、一般的に地下水の水温は外気温及び水道水よりも低い。よって地下水が移動することにより、熱交換パイプ6及びフィン7が冷却され、よって空調変換エリア5内も冷却される。従って空調変換エリア5に農業用温室の空気を強制送風して冷却された空気を、再び農業用温室内へ排気させることで、農業用温室内の温度を下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の農業用温室の加温装置は、家畜飼育家屋の加温装置や冷房装置に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1及び実施例3に係る農業用温室の加温装置の斜視図である。
【図2】実施例2に係る農業用温室の加温装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1…筐体
2…上部の貯水タンク
3…下部の貯水タンク
4…ヒーター
5…空調変換エリア
6…熱交換パイプ
7…フィン
8…ストレートヒーター
9…送風ファン
10…送風口
11…冷風用ダクト
12…温風用ダクト
13…冷温風切換弁
14…ストレートヒーター吸入口
15…パイプ
16…吸入ダクト
17…外部吸気口
18…熱交換器
19…水ポンプ
20…タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間に空調変換エリア(5)を設けて上下に離して配設される上部の貯水タンク(2)と下部の貯水タンク(3)とを複数の熱交換パイプ(6)で連結してなる熱交換器(18)と、下部の貯水タンク(3)に内蔵されて下部の貯水タンク(3)に充填される循環液を加温するヒーター(4)と、空調変換エリア(5)に農業用温室内の空気を強制送風する送風ファン(9)と、ヒーター(4)に接続されてヒーター(4)の通電時間を深夜電力に設定しているタイマ(20)とを備え、
タイマ(20)でもって深夜電力でヒーター(4)に通電し、通電されるヒーター(4)で下部の貯水タンク(3)の循環液を加温し、加温された循環液を熱交換パイプ(6)を介して上部の貯水タンク(2)に循環させ、送風ファン(9)でもって農業用温室の空気を空調変換エリア(5)に強制送風し、強制送風される空気を熱交換パイプ(6)で加温して、農業用温室内を加温するようにしてなることを特徴とする農業用温室の加温装置。
【請求項2】
熱交換器(18)を筐体(1)に収納していることを特徴とする請求項1に記載される農業用温室の加温装置。
【請求項3】
上部の貯水タンク(2)と下部の貯水タンク(3)の全長がほぼ等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載される農業用温室の加温装置。
【請求項4】
熱交換パイプ(6)に所定の間隔で複数のフィン(7)を設けていることを特徴とする請求項1〜3いずれか一に記載される農業用温室の加温装置。
【請求項5】
空調変換エリア(5)の排出側に冷温風切換弁(13)を設けており、この冷温風切換弁(13)でもって、空調変換エリア(5)を通過した空気を上又は下に切り換えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載される農業用温室の加温装置。
【請求項6】
上部の貯水タンク(2)の上方と下部の貯水タンク(3)の下方に、空調変換エリア(5)に連結する吸入ダクト(16)を設けており、この吸入ダクト(16)に吸入された空気を空調変換エリア(5)に通過させて農業用温室に排出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載される農業用温室の加温装置。
【請求項7】
複数の熱交換器(18)を並列に連結すると共に、各々の熱交換器(18)の上部の貯水タンク(2)と下部の貯水タンク(3)は縦に細長いタンクで、この細長いタンクからなる上部の貯水タンク(2)と下部の貯水タンク(3)を互いに平行な姿勢に配置して並列に連結していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載される農業用温室の加温装置。
【請求項8】
上部の貯水タンク(2)と下部の貯水タンク(3)に蓄えられる液体が水又はオイルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載される農業用温室の加温装置。
【請求項9】
下部の貯水タンク(3)又は上部の貯水タンク(2)に地下水を供給する水ポンプ(19)を連結しており、この水ポンプ(19)が下部の貯水タンク(3)又は上部の貯水タンク(2)に地下水を供給して熱交換パイプ(6)を冷却し、空調変換エリア(5)に農業用温室の空気を強制送風して冷却するようにしてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載される農業用温室の加温装置。

【図1】
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【図2】
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