説明

農業用被覆材

【課題】植物の生育にとって有害な高温の発生原因である赤外線を遮蔽でき、従来の赤外線吸収フィルムに比べて、フィルム自体が高温にならずに、フィルムの耐久性が向上し、植物の光合成にとって有用な可視光領域の光を透過でき、抗菌性に優れ、特定の波長を透過可能な果実袋にも用いることができる農業用被覆材の提供。
【解決手段】平板状粒子を含有し、熱線最大反射率が、20%以上である農業用被覆材とする。該平板状粒子を全粒子中に60個数%以上有する態様、該平板状粒子が、銀からなる銀平板粒子である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業分野で使われる農作物、機械、装置などを被覆する材料であって、例えば農業用ハウス、トンネル、マルチフィルム、ハウス内カーテン、果実袋などに好適に用いられる農業用被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
農産物には、最適生育温度があり、温度が低すぎても、温度が高すぎても、収量が低く、品質の低い、商品価値のない農産物しかできない。例えば、トマトの場合、最低限界温度が5℃、夜間気温が8℃〜13℃、昼間気温が20℃〜25℃、最高限界温度が35℃であると報告されている。
低温に対しては、農業用被覆材で農産物を被覆し、暖められた空気や農業資材から放射される熱線を大気中に逃がさないような工夫をしている。それでも温度が足らない場合には、化石燃料を燃焼させることで昇温を行い、生育温度を確保している。
一方、高温に対しては、農業用ハウス等の場合、ハウス用フィルムを一部開けるなどの工夫を行うことで対応しているが、それでも対応しきれない場合には、冷房装置を使用したり、霧状の水を噴霧することで温度上昇を抑制している。
温度変化の中で、特に高温側の問題が最近注目されてきている。例えば、トマトの場合には、日本国内において、7月や8月のような気温が高くなる時期には、気温が上昇するために、ハウス内での栽培を行うことができない状況にある。そのため、年間を通じた栽培を行っているオランダなどのトマトのハウス栽培と比較して、日本国内での単位面積あたりの収量が低い原因の一つとなっていると考えられる。この高温期にも、現実的なコストで栽培が可能であれば、年間収量が単純計算で20%増加すると考えられる。
【0003】
そこで、これまでに様々な対策が考えられてきた。例えば、水を霧状に噴霧することで気温を下げる方法、寒冷紗を用いる方法、遮光素材を使用する方法、農業用被覆材を被覆する方法などがある。
前記水を霧状に噴霧する方法は、噴霧直後には気温が急速に低下する特徴があるものの、噴霧後直ちに温度が上昇する問題点がある。噴霧を繰返し行うことで、温度低下を維持することは可能であるが、ハウス内の湿度が上昇すると共にその効果は急激に減少する問題点がある。また、不必要に植物体に水滴が付着することは、植物にとって有害な細菌の増殖を促進し、植物病の発生を促してしまう問題点があった。更に、噴霧を行うための装置も必要であり、湿度の上昇は、作業者にとって負担の大きい環境でもある。
前記寒冷紗や遮光素材を用いる方法は、太陽光線をさえぎることで、気温の上昇を抑制する方法であるが、植物にとって有益な波長をも遮ってしまう。このことを回避するために、例えば、農業用ハウスに展開させた被覆材を全体的にもしくは部分的にはがす作業を行っているが、作業者の負担は大きいものであった。
【0004】
このような背景から、気温が上昇する主原因である赤外線を制御する方法が検討されている。例えば、農業用被覆材を用いる方法が挙げられる。この方法としては、赤外線を制御する方法が最も一般的であり、赤外線を吸収する素材を用いる方法と、赤外線を反射する素材を用いる方法とがある。
前記赤外線を吸収する素材を用いる方法としては、例えばアルミニウム、マグネシウム等の赤外線を吸収する化合物を含有させた農業用フィルムが提案されている(特許文献1参照)。また、有機化合物のフタロシアニンをフィルムに含有させることで赤外線を吸収する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、これらの提案では、農業用被覆材そのものが高温になることから、その耐久性が低下するという問題点があった。更に、熱線吸収型の場合には、吸収した熱量の約30%を再放出するという問題もある。
【0005】
前記赤外線を反射する素材を用いる方法としては、例えば、グラファイトを含む赤外線反射フィルムが提案されている(特許文献3参照)。しかし、この提案では、植物の生育に必要な可視光の透過率が悪くなるという問題がある。
また、フィルムにホログラム層を導入することで、赤外線を反射するフィルムが提案されている(特許文献4参照)。しかし、この提案では、ホログラム層を導入するためのコストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、外気温度低下時の農業用施設内温度の維持に対する開発も行われている。例えば、農業用ハウスの場合には、被覆フィルムを二重又は三重にすることでハウス内部の温度低下の抑制が行われている。また、赤外線反射フィルムを用いて、ハウス内部の構造体や植物から放出された熱を、ハウスを被覆しているフィルムを用いて反射及び吸収させることで、ハウス内部の温度の低下を抑制する試みがなされている。最も一般的に行われているのは、化石燃料を燃焼させることでハウス内の温度低下を抑制させる方法である。しかし、この方法では、COを発生させることから、植物の成長を若干促進させる効果があるものの、近年問題となっている地球温暖化に逆行し、また、燃料コストの農作物生産コストへの上乗せによって、コストの高い農産物となってしまうという問題がある。
【0007】
ところで、金属Ag薄膜は、その反射率の高さから、熱線反射材として一般に使用されているが、可視光や熱線だけでなく電波も反射してしまうため、可視光透過性及び電波透過性が低いことが問題となっていた。可視光透過性を上げるために、AgとZnO多層膜を利用したLow−Eガラス(旭硝子株式会社製)は、広く建物に採用されているが、Low−Eガラスは、ガラス表面に金属Ag薄膜が形成されているため、電波透過性が低いという問題があった。
【0008】
前記課題を解決するため、例えば電波透過性を付与した島状Ag粒子付きガラスが提案されている。蒸着により製膜したAg薄膜をアニールすることにより、粒状Agを形成したガラスが提案されている(特許文献5参照)。しかし、この提案では、アニールにより粒状Agを形成しているため、粒子サイズや形状、面積率を制御することが難しく、熱線の反射波長や帯域の制御や可視光透過率の向上が難しいという問題があった。
また、赤外線遮蔽フィルタとして、銀平板粒子を用いたフィルタが提案されている(特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、及び特許文献10参照)。しかし、これらの提案は、いずれもプラズマディスプレイパネルに用いることを意図したものであり、また、赤外域の波長光の吸収能を向上させるために体積の小さな粒子を用いており、熱線を遮蔽する材料(熱線を反射する材料)として銀平板粒子を用いるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3804987号公報
【特許文献2】特開平7−274738号公報
【特許文献3】特開2004−204086号公報
【特許文献4】特開平7−274738号公報
【特許文献5】特許第3454422号公報
【特許文献6】特開2007−108536号公報
【特許文献7】特開2007−178915号公報
【特許文献8】特開2007−138249号公報
【特許文献9】特開2007−138250号公報
【特許文献10】特開2007−154292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、植物の生育にとって有害な高温の発生原因である赤外線を遮蔽でき、従来の赤外線吸収フィルムに比べて、フィルム自体が高温にならずに、フィルムの耐久性が向上し、植物の光合成にとって有用な可視光領域の光を透過でき、抗菌性に優れ、特定の波長を透過可能な果実袋にも用いることができる農業用被覆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、平板状粒子を含有する農業用被覆材が、植物の生育にとって有害な高温の発生原因である赤外線を遮蔽でき、従来の赤外線吸収フィルムに比べて、フィルム自体が高温にならずに、フィルムの耐久性が向上し、植物の光合成にとって有用な可視光領域の光を透過させることができることを知見した。
また、銀を主成分とする平板状粒子を含有する農業用被覆材が、優れた抗菌性を有し、例えば、農業用被覆材に藻などの生物が付着することによる、農業用被覆材の透明性が失われ、農業用被覆材内部の植物の生育が阻害する影響を少なくできることを知見した。
更に、平板状粒子を含有する農業用被覆材は、透過又は反射波長の制御が容易であることから、果実の生育や果実袋に応用することで、果実の成長を促進したり、果実の色付きをよくできることを知見した。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 平板状粒子を含有し、
熱線最大反射率が、20%以上であることを特徴とする農業用被覆材である。
<2> 平板状粒子を全粒子中に60個数%以上有する前記<1>に記載の農業用被覆材である。
<3> 平板状粒子が、銀からなる銀平板粒子である前記<1>から<2>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<4> 基板と、該基板上に平板状粒子含有層とを有し、平板状粒子の主平面が、前記基板平面に対して0°〜±30°の範囲で面配向している前記<1>から<3>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<5> 農業用被覆材を上から見た時の基板の面積Aに対する平板状粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕が、15%以上である前記<4>に記載の農業用被覆材である。
<6> 波長400nm以上700nm未満の透過率が60%以上である前記<1>から<5>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<7> 波長700nm以上の赤外線を40%以上遮蔽する前記<1>から<6>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<8> 波長700nm以上の透過率が、波長400nm以上700nm未満の透過率より小さい前記<1>から<7>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<9> 波長600nm以上700nm未満の透過率Rと、波長700nm以上800nm以下の透過率FRとの比(R/FR)が1〜4である前記<1>から<8>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<10> 農業用被覆材の素材が、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びガラスから選択される少なくとも1種である前記<1>から<9>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<11> 農業用ハウス、トンネル、マルチフィルム、ハウス内カーテン、及び果実袋から選択される少なくとも1種に使用される前記<1>から<10>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
<12> 高等植物、及び藻類から選択される光合成生物の生育に用いられる前記<1>から<11>のいずれかに記載の農業用被覆材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、植物の生育にとって有害な高温の発生原因である赤外線を遮蔽でき、従来の赤外線吸収フィルムに比べて、フィルム自体が高温にならずに、フィルムの耐久性が向上し、植物の光合成にとって有用な可視光領域の光を透過でき、抗菌性に優れ、特定の波長を透過可能な果実袋にも用いることができる農業用被覆材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、平板状粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、略円盤形状の平板粒子を示す。
【図1B】図1Bは、平板状粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、略六角形状の平板粒子を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の農業用被覆材において、平板状粒子を含む平板状粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、最も理想的な存在状態を示す。
【図2B】図2Bは、本発明の農業用被覆材において、平板状粒子を含む平板状粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、基板の平面と平板状粒子の平面とのなす角度(θ)を説明する図を示す。
【図2C】図2Cは、本発明の農業用被覆材において、平板状粒子を含む平板状粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、平板状粒子含有層の農業用被覆材の深さ方向における存在領域を示す図である。
【図3】図3は、実施例1の農業用被覆材のSEM観察写真である。
【図4】図4は、モデルハウス内温度への影響による赤外線遮蔽能を評価した結果を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例に用いた種々のフィルムの400nm〜700nmの可視光線の透過率と30分間後のモデルハウス内の温度との関係を図示したグラフである。
【図6】図6は、照射時間に対するトマトの葉の葉面温度との関係を図示したグラフである。
【図7】図7は、フィルムの透過率に対して、30分間後のトマト葉面の温度との関係を図示したグラフである。
【図8】図8は、実施例に用いた種々のフィルム表面に付着した藻体数をカウントした結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の農業用被覆材は、平板状粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0016】
前記農業用被覆材とは、農業分野で使われる農作物、機械、装置などを被覆する材料を意味する。被覆する場合には、対象物に直接接していてもよいし、ある距離を隔てて被覆していてもよい(即ち、覆っていてもよい)。
前記農業用被覆材としては、フィルム状又は固形状であればよく、フィルム状のものとしては、熱可塑性樹脂から得られたフィルムなどが挙げられる。前記固体状のものとしては、ガラスなどが挙げられる。本発明では、流体状材料は、含まれないが、例えば、二枚のフィルム間に液体状物を挟み込み、フィルムをコーティングしたものは、本発明の範疇に入るものとしている。
前記フィルム状の場合には、農業用被覆材の素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
また、前記農業用被覆材としては、基板と、該基板上に平板状粒子を含有する平板状粒子含有層とを有し、必要に応じてその他の部材を有してなるものが好ましい。
【0017】
<平板状粒子>
前記平板状粒子としては、形状、材料などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記形状としては三角平板状、六角平板状、又はこれらの角が取れた略円盤状の平板状粒子が好ましい。
【0018】
前記平板状粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば銀、アルミニウム、マグネシウム、スズ、金、銅、又はこれらの合金、シリカ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、銀、金、銅、又はこれらの合金からなる平板状粒子が好ましく、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、銀が特に好ましい。
以下、平板状粒子の代表例としての平板状粒子について説明する。
【0019】
前記平板状粒子としては、2つの主平面からなる粒子(図1A及び図1B参照)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略六角形状、略円盤形状、略三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、略六角形状、略円盤形状であることが特に好ましい。
前記略円盤形状としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で平板状粒子を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記略六角形状としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で平板状粒子を主平面の上方から観察した際に、略六角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
前記略六角形状又は略円盤形状の平板状粒子の割合は、金属粒子の全個数に対して、60個数%以上であることが好ましく、65個数%以上がより好ましく、70個数%以上が更に好ましい。前記平板状粒子の割合が、60個数%未満であると、可視光線透過率が低くなってしまうことがある。
【0021】
前記平板状粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70nm〜500nmが好ましく、100nm〜400nmがより好ましい。前記平均粒子径が、70nm未満であると、平板状粒子の吸収の寄与が反射より大きくなるため十分な熱線反射能が得られなくなることがあり、500nmを超えると、基板の透明性が損なわれてしまうことがある。
ここで、前記平均粒子径とは、TEMで粒子を観察して得た像から任意に選んだ200個の平板粒子の主平面直径(最大長さ)の平均値を意味する。
前記平板状粒子含有層中に平均粒子径が異なる2種以上の平板状粒子を含有することができ、この場合、平板状粒子の平均粒子径のピークが2つ以上、即ち2つの平均粒子径を有していてもよい。
【0022】
前記平板状粒子の粒度分布における変動係数は、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。前記変動係数が、30%を超えると、農業用被覆材における熱線の反射波長域がブロードになってしまうことがある。
ここで、前記平板状粒子の粒度分布における変動係数は、例えば前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の平板状粒子の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径)で割った値(%)である
【0023】
前記平板状粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光域長波長側から近赤外光領域での反射率が高くなる点から、2以上であることが好ましく、2〜50であることがより好ましく、4〜40が更に好ましい。前記アスペクト比が、2未満であると、反射率が小さくなることがある。
前記アスペクト比は、平板状粒子の平均粒子径(L)を平板状粒子の平均粒子厚み(d)で除算した値(L/d)を意味する。平均粒子厚みは、平板状粒子の主平面間距離に相当し、例えば、図1A及び図1Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に平板状粒子を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
【0024】
前記平板状粒子の前記農業用被覆材における含有量は、0.01g/m〜1g/mであることが好ましく、0.02g/m〜0.5g/mであることがより好ましい。
【0025】
<平板状粒子の製造方法>
前記平板状粒子の製造方法としては、略六角形状又は略円盤形状を合成し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形又は三角形状の平板状粒子を合成後、例えば硝酸、亜硫酸ナトリウム、Br、Cl等のハロゲンイオンなどの銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、又は加熱によるエージング処理を行うことにより、六角形又は三角形状の平板状粒子の角を鈍らせて、略六角形状又は略円盤形状の平板状粒子を得てもよい。
なお、前記平板状粒子の製造方法としては、前記の他、予めフイルムやガラス等の透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に金属粒子(例えばAg)を結晶成長させてもよい。
【0026】
前記平板状粒子は、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。前記更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
【0027】
前記平板状粒子は、可視光域透明性を更に高めるために、可視光域透明性が高い高屈折率材料で被覆されてもよい。
前記高屈折率材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばTiO、BaTiO、ZnO、SnO、ZrO、NbOなどが挙げられる。
【0028】
前記被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Langmuir、2000年、16巻、p.2731−2735に報告されているようにテトラブトキシチタンを加水分解することにより銀の平板状粒子の表面にTiO層を形成する方法であってもよい。
【0029】
また、前記平板状粒子に直接高屈折率金属酸化物層シェルを形成することが困難な場合は、前記の通り平板状粒子を合成した後、適宜SiOやポリマーのシェル層を形成し、更に、このシェル層上に前記金属酸化物層を形成してもよい。TiOを高屈折率金属酸化物層の材料として用いる場合には、TiOが光触媒活性を有することから、平板状粒子を分散するマトリクスを劣化させてしまう懸念があるため、目的に応じて平板状粒子にTiO層を形成した後、適宜SiO層を形成してもよい。
【0030】
前記平板状粒子は、該平板状粒子を構成する銀などの金属の酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が平板状粒子の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiOなどの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
【0031】
前記平板状粒子は、分散性付与を目的として、N元素、S元素、P元素を含む低分子量分散剤、例えば4級アンモニウム塩、アミン類、高分子量分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0032】
<農業用被覆材の製造方法>
前記農業用被覆材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板上に、平板状粒子を有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等による塗布や、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法が挙げられる。
また、平板状粒子の基板表面への吸着性や面配向性を高めるために、静電的な相互作用を利用して、面配向させる方法であってもよい。具体的には、平板状粒子の表面が負に帯電している場合(例えば、クエン酸等の負帯電性の媒質に分散した状態)は、基板の表面を正に帯電(例えば、アミノ基等で基板表面を修飾)させておき、静電的に面配向性を高めることにより、面配向させる方法であってもよい。また、平板状粒子の表面が親水性である場合は、基板の表面をブロックコポリマーやμコンタクトスタンプ法などにより、親疎水の海島構造を形成しておき、親疎水性相互作用を利用して面配向性と平板状粒子の粒子間距離とを制御してもよい。
なお、面配向を促進するために、平板状粒子を塗布後、カレンダーローラーやラミローラー等の圧着ローラーを通すことにより促進させてもよい。
【0033】
前記農業用被覆材としては、基板と、該基板上に平板状粒子含有層とを有し、必要に応じてその他の部材を有してなるものが好ましい。
【0034】
<平板状粒子含有層>
前記平板状粒子含有層は、平板状粒子を含有し、基板上に形成されるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記平板状粒子含有層は、平板状粒子含有組成物を基板上に塗布することにより形成することができる。前記塗布としては、例えばスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコート、ダイコートなどが挙げられる。
【0035】
<基板>
前記基板としては、光学的に透明な基板であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、又は近赤外線域の透過率が高いものが挙げられる。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白板ガラス、青板ガラス等のガラス材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、などが挙げられる。
【0036】
<その他の部材>
<<保護層>>
本発明の農業用被覆材において、基板との密着性を向上させたり、機械強度的に保護するため、保護層を有することが好ましい。
前記保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バインダー、界面活性剤、及び粘度調整剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0037】
−バインダー−
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光透明性や日射透明性が高い方が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なお、バインダーが熱線を吸収すると、平板状粒子による反射効果が弱まってしまうことから、熱線源と平板状粒子との間に中間層を形成する場合は、780nm〜1,500nmの領域に吸収を持たない材料を選択したり、保護層の厚みを薄くすることが好ましい。
【0038】
[面配向]
本発明の農業用被覆材において、平板状粒子は、その主平面が基板の表面に対して所定の範囲で面配向することを一態様とする。
前記平板状粒子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射率を高める点で基板平面に対して略水平に偏在していることが好ましい。
前記面配向としては、平板状粒子の主平面と、基板の表面とが、所定の範囲内で略平行になっている態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、面配向の角度は、0°〜±30°が好ましく、0°〜±20°がより好ましく、0°〜±5°が更に好ましい。
【0039】
ここで、図2A〜図2Cは、本発明の農業用被覆材において、平板状粒子を含む平板状粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。図2Aは、平板状粒子含有層2中における平板状粒子3の最も理想的な存在状態を示す。図2Bは、基板1の平面と平板状粒子3の平面とのなす角度(±θ)を説明する図である。図2Cは、平板状粒子含有層2の農業用被覆材の深さ方向における存在領域を示すものである。
図2Bにおいて、基板1の表面と、平板状粒子3の主平面又は主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、農業用被覆材の断面を観察した際、図2Bに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に、図2Aは、基板1の表面と平板状粒子3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態を示す。基板1の表面に対する平板状粒子3の主平面の面配向の角度、即ち図2Bにおけるθが±30°を超えると、農業用被覆材の所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまうことがある。
【0040】
[面配向の評価]
前記基板の表面に対して平板状粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における基板及び平板状粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、農業用被覆材を、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いて農業用被覆材の断面サンプル又は断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0041】
前記農業用被覆材において、平板状粒子を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプル又は断面切片サンプルを作製してもよい。また、農業用被覆材において平板状粒子を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプル又は断面切片サンプルを作製してもよい。
【0042】
前記の通り作製した断面サンプル又は断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて基板の表面に対して平板状粒子の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、平板状粒子の形状と傾角(図2Bの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0043】
[平板状粒子の存在範囲]
本発明の農業用被覆材において、図2Cに示すように、平板状粒子含有層2における平板状粒子3を構成する金属のプラズモン共鳴波長をλとし、平板状粒子含有層2における媒質の屈折率をnとするとき、前記平板状粒子含有層2が、農業用被覆材の水平面からの深さ方向において、(λ/n)/4の範囲で存在することが好ましい。この範囲外であると、農業用被覆材の表面と裏面のそれぞれの空気界面での反射波の位相が強めあう効果が小さくなってしまい、可視光透過率及び熱線最大反射率が低下してしまうことがある。
【0044】
前記平板状粒子含有層における平板状粒子を構成する金属のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、透明性を向上させる点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
前記平板状粒子含有層における媒質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子などの高分子、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物などが挙げられる。
前記媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
【0045】
[平板状粒子の面積率]
前記農業用被覆材を上から見た時の基板の面積Aに対する平板状粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕が、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えば農業用被覆材を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0046】
[平板状粒子の平均粒子間距離]
前記平板状粒子含有層における水平方向に隣接する平板状粒子の平均粒子間距離は、可視光線透過率及び熱線の最大反射率の点から平板状粒子の平均粒子径の1/10以上であることが好ましい。
前記平板状粒子の水平方向の平均粒子間距離が、前記平板状粒子の平均粒子径の1/10未満となると、熱線の最大反射率が低下してしまう。また、水平方向の平均粒子間距離は、可視光線透過率の点で、不均一(ランダム)であることが好ましい。ランダムでない場合、即ち、均一であると、可視光線の吸収が起こり、透過率が低下してしまうことがある。
【0047】
ここで、前記平板状粒子の水平方向の平均粒子間距離とは、隣り合う2つの粒子の粒子間距離の平均値を意味する。また、前記平均粒子間距離がランダムであるとは、「100個以上の平板状粒子が含まれるSEM画像を二値化した際の輝度値の2次元自己相関を取ったときに、原点以外に有意な極大点を持たない」ことを意味する。
【0048】
[隣接する平板状粒子含有層間距離]
本発明の農業用被覆材において、平板状粒子は、図2A〜図2Cに示すように、平板状粒子を含む平板状粒子含有層の形態で配置される。
前記平板状粒子含有層としては、図2A〜図2Cに示すように、単層で構成されてもよく、複数の平板状粒子含有層で構成されてもよい。複数の平板状粒子含有層で構成される場合、遮熱性能を付与したい波長帯域に応じた遮蔽性能を付与することが可能となる。
【0049】
本発明の農業用被覆材は、熱線最大反射率が、20%以上であり、40%以上が好ましく、50%〜99%であることが好ましい。前記熱線最大反射率が、20%未満であると、植物の成長が抑制されることがある。
ここで、前記熱線最大反射率は、例えば照度計、放射温度計、赤外線サーモグラフィーにより測定することができる。
本発明の農業用被覆材は、波長400nm以上700nm未満の透過率が60%以上であることが好ましく、70%〜99%であることがより好ましい。前記透過率が、60%未満であると、植物の光合成にとって有用な波長である400nm〜700nmの光量が不足し、植物の成長が阻害される可能性がある。
本発明の農業用被覆材は、波長700nm以上の赤外線を40%以上遮蔽することが好ましく、60%以上遮蔽することがより好ましく、70%〜99%遮蔽することがより好ましい。波長700nm以上の赤外線遮蔽率が40%未満であると、温度上昇により植物の成長が抑制されることがある。
本発明の農業用被覆材は、波長700nm以上の透過率が、波長400nm以上700nm未満の透過率より小さいことが、温度上昇を抑制する点で好ましい。
また、本発明の農業用被覆材は、波長600nm以上700nm未満の透過率Rと、波長700nm以上800nm以下の透過率FRとの比(R/FR)は、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。前記比(R/FR)が、1未満及び4を超えると、植物の成長が抑制されることがある。
ここで、前記農業用被覆材における透過率は、例えば分光光度計、照度計により測定することができる。
【0050】
−用途−
本発明の農業用被覆材は、以上の優れた特性を有しているので各種分野に幅広く用いられ、例えば農業用ハウス、マルチフィルム、トンネル、ハウス内のカーテン、スソ貼り用フィルム、腰巻用フィルム、果実袋、野菜などの包装材、運搬用車両の荷台を覆う素材などが挙げられる。これらの中でも、農業用ハウス、果実袋が特に好適である。
【0051】
前記農業用ハウスは、一枚のフィルムを用いてもよいし、複数枚のフィルムを用いてもよい。複数枚のフィルムを用いることで、別々の機能を持ったフィルムをハウスに展開させることで、作物にとってよりよい環境にすることができるからである。
前記農業用フィルムは、販売を目的とした農作物の栽培に従事する作業者が使用することもでき、また、家庭栽培を行う作業者が使用することもできるものとする。
【0052】
前記果実袋は、どのような果実に対しても用いることができ、例えばナシ、ビワ、ナシ、みかん、リンゴ、ぶどう、桃、プラムなどが好適である。
前記果実袋は、一枚袋であってもよく、また、2枚袋以上から構成されてもよいが、一枚袋もしくは2枚袋が好ましい。また、複数枚から構成された果実袋の場合、すべてを本発明の農業用被覆材で構成してもよく、また、本発明の農業被覆材と別の素材とで構成されていてもよい。例えば、本発明の農業用被覆材と紙との二種の素材からなる2枚袋から構成された果実袋を挙げることができる。例えば、外袋に紙からなる果実袋を配置し、果実の幼果期において太陽光線を遮断することで、後の鮮やかな着色の妨げとなる葉緑素の形成を抑制し、果実が成熟期に達すると、紙から構成された外袋を除去し、本発明の農業用被覆材を露出させることで、着色を促進する太陽光を果実に透過させ、かつ、高温障害の発生原因となる赤外線の透過量を適切に制御することで、高品質の果実を得ることができる。また、2枚袋以上の場合、内袋のみを結束する構造にすることもできる。この様にすることで、外袋を除袋する際の作業性が向上する。
【0053】
また、前記果実袋の底部は、開口構造になっていてもよく、閉口構造になってもよい。閉口構造になっていると、例えば、完熟した果実が枝からはずれた際に、果実袋内でとどまり、地面に落ちることなく収穫することができる。この様な果実として、マンゴーが知られている。また、開口構造の果実袋の場合には、通気性がよくなり、温度上昇を抑制することができると共に、果実袋内部で発生した水蒸気が果実袋内面に水滴が付着することが原因となる病害の発生を抑制したり、水滴付着の抑制により太陽光の透過率がよくなることで着色を促進させたりすることができる。
【0054】
前記果実袋の表面には、通気性を向上させる目的から、複数の穴を開けてもよい。果実袋の表面には、防虫効果のある農薬を塗布することもできる。例えば、有機リン系の農薬を塗布することが好ましい。果実の種類によっては、赤外線の照射により糖度を向上させることが可能なものがあるが、そのような場合でも、本発明の農業用被覆材は、後述する表1に示した様に、平板状銀粒子の直径や厚み、アスペクト比を適切に制御することで、最大反射波長、最大反射率を自由に制御することができ、適切な栽培法を提供することが可能である。
【0055】
本発明の農業用被覆材は、他の機能との併用を行うこともできる。例えば、前記農業用被覆材表面に水滴が付着しにくいように界面活性剤などをコーティングすることがあるが、このような処理を併用した被覆材とすることもできる。なお、前記農業用被覆材には、紫外線抑制機能を併せ持ってもよいものとする。この機能は、同一フィルム内に発現させてもよいし、複数枚のフィルムを併用して用いてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
−銀平板粒子の合成−
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
次に、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLにイオン交換水87.1mLを添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、前記種溶液を42.4mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液79.6mmLを10mL/minで攪拌しながら添加した。30分間攪拌した後、0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1mL添加し、7質量%ゼラチン水溶液を200g添加した。
この溶液に、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47Mの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた白色沈殿物混合液を添加した。前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.17MのNaOH水溶液72mLを添加した。このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加した。これを300分攪拌し、銀平板粒子分散液を得た。
この銀平板粒子分散液中には、平均粒子径230nmの六角形状の銀平板粒子(以下、Ag六角平板粒子と称する)が生成していることを確認した。また、原子間力顕微鏡(NanocuteII、セイコーインスツル社製)で、銀平板粒子の厚みを測定したところ、平均16nmであり、アスペクト比が14.3の銀平板粒子が生成していることが分かった。
【0058】
−平板状粒子含有層の作製−
前記銀平板粒子分散液16mLに1NのNaOHを0.75mL添加し、イオン交換水24mL添加し、遠心分離器(コクサン社製、H−200N、アンブルローターBN)で5,000rpmで5分間遠心分離を行い、六角形状の銀平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液を捨て、水を5mL添加し、沈殿した銀平板粒子を再分散させた。この分散液に2質量%の下記構造式で表される化合物W−1の水メタノール溶液を1.6mL添加し、塗布液を作製した。
【化1】

【0059】
この塗布液をワイヤー塗布バーNo.14を用いて、厚み200μmのポリ塩化ビニルフイルム(農業用ビニール)上に塗布し、乾燥させて、表面に銀平板粒子が固定されたフイルムを得た。
得られたポリ塩化ビニルフイルムに厚みが20nmになるようにカーボン薄膜を蒸着した後、SEM観察(日立製作所製、FE−SEM、S−4300、2kV、2万倍)した。結果を図3に示す。
図3の結果から、ポリ塩化ビニルフイルム上に銀平板粒子が凝集なく固定されていることが分かった。以上により、実施例1の農業用被覆材を作製した。
【0060】
次に、得られた銀平板粒子及び農業用被覆材について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
<<銀平板粒子の評価>>
−銀平板粒子の平均粒子径、変動係数−
銀平板粒子の平均粒子径は、観察したSEM画像から任意に抽出した200個の粒子の形状を、略六角形状又は略円盤形状の粒子をA、涙型などの不定形形状の粒子をBとして画像解析を行い、Aに該当する粒子100個の粒子径をデジタルノギスで測定し、その平均値を平均粒子径とし、粒子径の標準偏差を平均粒子径で割った変動係数(%)を求めた。
【0062】
−平均粒子厚み−
得られた銀平板粒子を含む分散液を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、銀平板粒子1個の厚みを、原子間力顕微鏡(AFM)(NanocuteII、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。
【0063】
−アスペクト比−
得られた銀平板粒子の平均粒子径及び平均粒子厚みから、平均粒子径を平均粒子厚みで除算して、アスペクト比を算出した。
【0064】
−面積率−
得られた各農業用被覆材について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得たSEM画像を2値化し、農業用被覆材を上から見た時の基板の面積Aに対する平板状粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕を求めた。
【0065】
−面配向(平板状粒子の傾き角)−
得られた各農業用被覆材をエポキシ樹脂で包埋処理した後、液体窒素で凍結した状態で剃刀で割断し、農業用被覆材の垂直方向断面試料を作製した。この垂直方向断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、100個の平板状粒子について、基板の水平面に対する傾角を平均値として算出した。
【0066】
<<農業用被覆材の評価>>
−可視光透過スペクトル及び熱線反射スペクトル−
得られた農業用被覆材の透過スペクトル及び反射スペクトルは、自動車用ガラスの評価規格であるJISに準じて評価した。
透過及び反射スペクトルは、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて評価した。評価には、絶対反射率測定ユニット(ARV−474、日本分光株式会社製)を用い、入射光は45°偏光板を通し、無偏光と見なせる入射光とした。
【0067】
−熱線最大反射率・可視光線透過率−
熱線最大反射率は、JIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に記載の方法で測定し、算定され、300nm〜2,100nmまで測定した後、各波長毎の反射率を各波長毎の直達日射光の分光強度により補正して値を熱線最大反射率とした。
また、可視光線透過率は、380nm〜780nmまで測定した各波長毎の透過率を、各波長毎の分光視感度により補正した値を可視光線透過率とした。
【0068】
−電波透過性−
表面抵抗測定装置(ロレスタ、三菱化学アナリテック株式会社製)を用いて、前記の通りに得た農業用被覆材の表面抵抗(Ω/□)を測定し、電波透過性とした。
前記農業用被覆材を評価した結果、可視光線透過率は71.5%であり、最大反射率波長は1,015nmであり、最大反射率は70%であった。
また、前記基板の電波透過性を評価するため、前記基板の表面抵抗を測定した結果、9.9×1012Ω/□であり、電波透過性を有することを確認した。
【0069】
(実施例2)
実施例1において、銀平板粒子の合成工程で、0.17MのNaOH水溶液を0.83MのNaOH水溶液に代えた以外は、実施例1と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の農業用被覆材を作製した。
【0070】
(実施例3)
実施例1において、銀平板粒子の合成工程で、0.17MのNaOH水溶液を0.08MのNaOH水溶液に代えた以外は、実施例1と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の農業用被覆材を作製した。
【0071】
(実施例4)
実施例1において、銀平板粒子の合成工程で、0.17MのNaOH水溶液を添加しない以外は、実施例1と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の農業用被覆材を作製した。
【0072】
(実施例5)
実施例1において、銀平板粒子の合成工程で、イオン交換水87.1mLを添加せず、及び前記種溶液の添加量を42.4mLから127.6mLに変えた以外は、実施例1と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の農業用被覆材を作製した。
【0073】
(実施例6)
実施例5において、銀平板粒子の合成工程で、0.17MのNaOH水溶液を0.08MのNaOH水溶液に代えた以外は、実施例5と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の農業用被覆材を作製した。
【0074】
(実施例7)
実施例5において、銀平板粒子の合成工程で、0.17MのNaOH水溶液を添加しない以外は、実施例5と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の農業用被覆材を作製した。
【0075】
(実施例8)
実施例6において、銀平板粒子の合成工程で、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液を添加せず、及び前記種溶液の添加量を42.4mLから255.2mLに変えた以外は、実施例6と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の農業用被覆材を作製した。
【0076】
(実施例9)
実施例8において、銀平板粒子の合成工程で、0.17MのNaOH水溶液を添加しない以外は、実施例8と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例9の農業用被覆材を作製した。
【0077】
(実施例10)
実施例1において、銀平板粒子の合成工程で、種溶液の添加量を42.4mLから21.2mLに変えた以外は、実施例1と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例10の農業用被覆材を作製した。
【0078】
(実施例11)
実施例10において、0.17MのNaOH水溶液を0.83MのNaOH水溶液に代えた以外は、実施例10と同様にして、銀平板粒子を作製した。
次に、作製した銀平板粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例11の農業用被覆材を作製した。
【0079】
次に、作製した実施例2〜11の銀平板粒子、及び農業用被覆材について、実施例1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1−1】

【0081】
【表1−2】

※表中、可視光透過率(%)は、波長400nm以上700nm未満で測定した。
【0082】
(実施例12)
<銀平板粒子含有フィルムの赤外線遮蔽能−モデルハウス内温度への影響−>
表2に示すように、上記の方法によって調製した種々の銀平板粒子含有フィルム(No.1022−1、No.1022−2、No.1022−3)、比較としての寒冷紗、農業用ビニール、及び農業用ビニールと寒冷紗を2枚重ねたフィルムを準備した。
ここで、銀平板粒子含有フィルム(No.1022−1、No.1022−2、No.1022−3)については、銀平板粒子の作製方法としては、実施例6を用い、農業用ビニールへのコーティングは、実施例1の平板状粒子含有層の作製工程において、水の添加量を変えることによって行った(No.1022−1は5mL、No.1022−2は10mL、No.1022−3は15mL)。
【0083】
<透過率、700nm以上の反射率、700nm以上の透過率、及び600nm以上700nm未満の透過率Rと、波長700nm以上800nm以下の透過率FRとの比(R/FR)の測定>
前記透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社、V−670)を用いて測定した。測定条件は、以下の通りである。なお、波長範囲を設定して、700nm以上の反射率、700nm以上の透過率を測定した。結果を表2に示す。
・測定モード:%T
・測定範囲:2,500〜300nm、
・UV/VISバンド幅:5nm
・NIRバンド幅:20nm
・走査速度:1,000nm/min
【0084】
<透過後の光量の測定>
植物が成長する最小の光量は、光補償点で定義されている。この光量以下であると、COを放出するようになり、この状態が長時間続くと、植物は枯れる。おおむね、光補償点は、0.1キロルクス以上である。光飽和点は、この値以上の光量を照射すると、作物にとって光障害が発生する光量である。したがって、植物の成長には、光飽和点以下であることが必要である。光飽和点は、多くの植物では、10〜60キロルクスである。以上から、植物の成長に必要な光量は、0.1〜60キロルクスとなる。光源27キロルクスの光を使用し、それぞれのフィルムを透過した時の光量を調べた。結果を表2に示す。
【0085】
【表2−1】

【表2−2】

なお、表2に示した寒冷紗+農業用ビニールとは、農業用ビニール上に寒冷紗を重ね合わせたものである。
【0086】
−モデルハウスの作製及び評価−
次に、モデルハウスとして、160mm×180mm、高さ140mmの発泡スチロール製の容器の上面を切り取り、そこへ、表2に示した各フィルムを挿入することでモデルハウスを作製した。切り取った上面のサイズは、163mm×143mmであり、この面積はフィルムが受光する面積でもある。発泡スチロールの下部には、温度センサー(アズワン株式会社製、データロガー)を挿入する穴を開けた。この穴をくりぬいた発泡スチロールを二片に切断し、センサーのコードがはまるようにくり貫き、温度センサーをモデルハウス内に挿入後、この二片を挿入可能なように工夫することで、外気の熱がハウス内に可能な限り流入しないようにした。
上記モデルハウスに、表2に示した各フィルムをセットし、フィルム面から11cmの距離のところにハロゲンランプを設置した。ハロゲンランプの光量は2,500ルクスである。なお、フィルム面から、温度センサーまでの距離は、11cmであった。
モデルハウス内の温度は、ハロゲンランプのスイッチをオンにした時から計測を始めた。測定結果を、図4に示した。
図4の結果から、30分間でほぼモデルハウス内の温度が一定となることが分かった。この30分間後の温度抑制効果は、農業用ビニールが最も低く、銀平板粒子含有フィルムのNo.1022−1が最も高かった。農業用ビニールと比較すると、5.6℃の温度上昇抑制効果があった。
【0087】
図5には、実施例に用いた種々のフィルムの400nm〜700nmの可視光線の透過率と30分間後のモデルハウス内の温度との関係を図示した結果を示した。白抜きが比較フィルム、塗りつぶしが銀平板粒子含有フィルムである。図5の結果から、同じ光の透過率では、約4℃の温度上昇抑制効果があった。
以上のことから、銀平板粒子含有フィルムは、温度の上昇を抑制する効果があることが分かった。また、この効果は、赤外線を遮蔽することにより得られたものであると推定している。
【0088】
(実施例13)
<銀平板粒子含有フィルムのモデルハウス内でのトマトの葉の温度抑制効果>
実施例12と同じ発泡スチロールからなる容器を用い、その内部にトマトの葉を置き、その葉温を測定することで、銀平板粒子含有フィルムの赤外線遮蔽特性を調べた。
温度センサーの配置位置やトマトの葉の位置は、実施例12と全く同様にして実施した。
また、光源やその他の実験器具も実施例12と同じものを用いた。
図6に、照射時間に対するトマトの葉の葉面温度との関係を図示した。図6の結果から、30分間の光照射で、トマトの葉の温度上昇はほぼなくなった。なお、図6中「白抜き」が比較として用いた種々のフィルムを用いた時の結果、図6中「黒抜き」が銀平板粒子をコーティングしたフィルムである。
比較フィルムと比較して、銀平板粒子含有フィルムは、約4℃のトマト葉面の温度上昇を抑制することができた。
図7には、フィルムの透過率に対して、30分間後のトマト葉面の温度との関係を示したものを図示した。同一透過率では、銀平板粒子含有フィルムは、比較フィルムと比較して、約3℃〜4℃の温度上昇抑制効果があった。
以上の結果から、銀平板粒子含有フィルムは、温度の上昇を抑制する効果があることが分かった。また、この効果は、赤外線を遮蔽することにより得られたものであると推定している。
【0089】
(実施例14)
<銀平板粒子含有フィルムの抗菌性>
国立環境研究所から入手した珪藻(NIES−71)を500mLの三角フラスコ中で、下記組成のCSi培地を用いて、2,000ルクス、20℃、100rpmの振盪速度で培養した。この培養液から、50μL採取し、950μLのCSi培地を予め加えている2mLホモジナイズ用マイクロチューブ(TM−626S滅菌付、株式会社トミー精工製)に入れ、ビーズ式細胞破砕装置(Micro Smash MS−100、株式会社トミー精工製)にセットし、5500rpmで20秒間、ホモジナイズ操作を行った。ホモジナイズ処理を行った分散液を10μL採り、血球計数板を用いて、藻体数のカウントを行った。カウント数から1×10個/mLになるようにCSi培地を用いて藻の溶液を調製した。
なお、CSi培地の組成は以下の表3に示す通りである。
【表3−1】

表3−1は、CSi培地/1L中の組成を示す。
【表3−2】

表3−2は、PIVmetals/500mL中の組成を示す。
【0090】
次に、表2に示すNo.1〜3及びNo.5のフィルムを4cm×4cmに切断し、80質量%エタノール中に20分間浸漬した。このフィルムをクリーンベンチ内で乾燥させることで試験用フィルムを調製した。
得られた試験用フィルムを直径約8cmのアズノールシャーレ(アズワン株式会社)に2枚入れ、前記で調製した藻の溶液を20mL入れた。この状態で30分間静置した後、培養棚に移動させて、静置条件で培養を行った。なお、光量は4,000ルクス、温度は室温(約20℃〜23℃)で培養を行った。9日後、フィルムを取り出し、CSi培地で軽く洗浄を行った後、表面に付着した藻をセルスクレーバーで剥ぎ取った後、適度に希釈し、血球計数板上で藻体数をカウントした。結果を図8に示した。
図8の結果から、No.5の銀平板粒子含有していない農業用ビニールのみのフィルムへの付着数は、80×10個/cmであった。一方、No.1〜3の銀平板粒子を含有したフィルムは、10〜25×10個/cmとなり、銀平板粒子含有フィルムの方が大幅に藻体の増殖を抑制できた。その抑制効果は、最も高いもので、No.5の10倍の抑制効果があった。
以上の結果から、No.1〜3の銀平板粒子含有フィルムは、抗菌性を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の農業用被覆材は、高等植物、及び藻類から選択される光合成生物の生育に用いられ、例えば農業用ハウス、トンネル、マルチフィルム、ハウス内カーテン、果実袋などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0092】
1 基板
2 平板状粒子含有層
3 平板状粒子
θ 基板の平面と金属平板の平面とのなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状粒子を含有し、
熱線最大反射率が、20%以上であることを特徴とする農業用被覆材。
【請求項2】
平板状粒子を全粒子中に60個数%以上有する請求項1に記載の農業用被覆材。
【請求項3】
平板状粒子が、銀からなる銀平板粒子である請求項1から2のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項4】
基板と、該基板上に平板状粒子含有層とを有し、平板状粒子の主平面が、前記基板平面に対して0°〜±30°の範囲で面配向している請求項1から3のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項5】
農業用被覆材を上から見た時の基板の面積Aに対する平板状粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕が、15%以上である請求項4に記載の農業用被覆材。
【請求項6】
波長400nm以上700nm未満の透過率が60%以上である請求項1から5のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項7】
波長700nm以上の赤外線を40%以上遮蔽する請求項1から6のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項8】
波長700nm以上の透過率が、波長400nm以上700nm未満の透過率より小さい請求項1から7のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項9】
波長600nm以上700nm未満の透過率Rと、波長700nm以上800nm以下の透過率FRとの比(R/FR)が1〜4である請求項1から8のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項10】
農業用被覆材の素材が、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びガラスから選択される少なくとも1種である請求項1から9のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項11】
農業用ハウス、トンネル、マルチフィルム、ハウス内カーテン、及び果実袋から選択される少なくとも1種に使用される請求項1から10のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項12】
高等植物、及び藻類から選択される光合成生物の生育に用いられる請求項1から11のいずれかに記載の農業用被覆材。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1A】
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【図1B】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−217681(P2011−217681A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91182(P2010−91182)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】