説明

農水稲用殺菌剤組成物及びその使用方法

【課題】 複数の病害を同時に防除することは、散布回数の低減が図れ、農作業の省力化に寄与するものである。そのため異なる病害に対して効果を有する化合物を数種類混合することにより、それぞれの化合物の特長を失うことなく複数の病害を同時に防除し得る組成物の開発が強く望まれている。
【解決手段】 イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを含有する農園芸用殺菌剤組成物が、それぞれの活性化合物の特長を相殺することなく相乗的な効果を発揮し、各種病害に対して優れた防除効果を有することを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた殺菌活性を示す農園芸用殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イソプロチオランがいもち病に対して、グアニジン系殺菌剤のイミノクタジン酢酸塩又はイミノクタジンアルベシル酸塩が果樹・農園芸で問題となっている各種病害に対して殺菌効果を示すことが知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。しかし、これらの薬剤を単独で病害防除に使用した場合、対象病害が限られている、効果が不足している、薬害の懸念があるなどの理由により、複数の病害を同時に防除することは実用的に困難である。
【非特許文献1】農薬ハンドブック2005年版(2005年.社団法人日本植物防疫協会発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の病害を同時に防除することは、散布回数の低減が図れ、農作業の省力化に寄与するものである。そのため異なる病害に対して効果を有する化合物を数種類混合することにより、それぞれの化合物の特長を失うことなく複数の病害を同時に防除し得る組成物の開発が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを含有する農園芸用殺菌剤組成物が、それぞれの活性化合物の特長を相殺することなく相乗的な効果を発揮し、各種病害に対して優れた防除効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
[1] イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物、
[2] クアニジン系殺菌剤がイミノクタジン酢酸塩及びイミノクタジンアルベシル酸塩から選択される[1]に記載の農園芸用殺菌剤組成物、
[3][1]又は[2]に記載の農園芸用殺菌剤組成物の有効量を対象植物又は土壌に処理することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物の使用方法、および、
[4]イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを同時期に対象植物又は土壌に処理することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物の使用方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、優れた殺菌効果を有し、複数病害の同時防除を可能とし、防除回数を減少させることができる。相乗的な効果が認められるため面積当りの施用薬量を減少させることもできる。また、感受性菌ばかりでなく低感受性の病原菌に対しても有効である。従って、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は農作業の省力化、環境への低負荷化及び食物の安定生産に大きな貢献をし得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、前記したように、イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを含有するものであり、種々の植物病害に対して各々単独で使用する場合に比べて幅広い殺菌スペクトラムを有するとともに相乗的な防除効果を有し、特に水稲、果樹、及び野菜類の病害防除に適している。
【0008】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の使用対象病害としては糸状菌類病害、細菌類病害、ウイルス病病害等が挙げられる。糸状菌類病害としては、例えば、不完全菌類による病害(例えば、ボトリチス(Botrytis)
属病害、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属病害、フザリウム(Fusarium)属病害、セプトリア(Septoria)属病害、サルコスポラ(Cercospora)属病害、シュードサルコスポレラ(Pseudocercosporella)属病害、リンコスポリウム(Rhynchosporium)属病害、ピリキュラリア(Pyricularia)属病害、アルタナリア(Alternaria)属病害等);担子菌類による病害(例えば、ヘミレイア(Hemileia)属病害、リゾクトニア(Rhizoctonia)属病害、ウスティラゴ(Ustilago)属病害、ティフラ(Typhula)属病害、プッキニア(Puccinia)属病害等);子のう菌類による病害(例えば、ベンチュリア(Venturia)属病害、ポドスフェラ(Podosphaera)属病害、レプトスファエリア(Leptosphaeria)属病害、ブルメリア(Blumeria)属病害、エリシフェ(Erysiphe)属病害、ミクロドキュウム(Microdochium)属病害、スクレロチニア(Sclerotinia)属病害、ゲウマノマイセス(Gaeumannomyces)属病害、モニリニア(Monilinia)属病害、ウンシヌラ(Unsinula)属病害等);その他の菌類による病害(例えば、アスコクイタ(Ascochyta)属病害、フォマ(Phoma)属病害、ピシウム(Pythium)属病害、コルティシウム(Corticium)属病害、ピレノフォラ(Pyrenophora)属病害等)等が挙げられる。細菌類病害としては、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属病害、ザントモナス(Xanthomonas)属病害、エルウィニア(Erwinia)属病害等が挙げられる。ウイルス病病害としては、例えば、タバコモザイクウイルス等による病害等が挙げられる。
【0009】
糸状菌類病害の具体的病害としては、例えば、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、イネ紋枯病(Rhizoctonia solani)、イネごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、イネ苗立ち枯れ病(Rhizopus chinensis,Pythium graminicola,Fusarium a v e n a c e u m,Fusarium solani,Mucor sp.,Phoma sp.,Tricoderma sp.)、イネ馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、オオムギ及びコムギ等のうどんこ病(Blumeria graminis)、ナス等のうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、キュウリ等のうどんこ病(Sphaerotheca cucurbitae)、アズキ等のうどんこ病(Erysiphe pisi)及び他の宿主植物のうどんこ病、オオムギ及びコムギ等の眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、コムギ等の黒穂病(Urocystis agropyri)、オオムギ及びコムギ等の雪腐病(Microdochium nivalis,Pythium iwayamai,Typhla ishikariensis,Typhla incarnata,Sclerotinia borealis)、オオムギ及びコムギ等の赤かび病(Fusarium graminearum,Fusarium avenaceum,Fusarium culmorum,Microdochium nivalis)、オオムギ及びコムギ等のさび病(Puccinia recondita,Puccinia striiformis,Puccinia graminis)、オオムギ及びコムギ等の立枯病(Gaeumannomyces graminis)、エンバクの冠さび病(Puccinia coronata)、及び他の植物のさび病、キュウリ、イチゴ等の灰色かび病(Botrytis cinerea)、トマト、キャベツ等の菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、ジャガイモ、トマト等の疫病(Phytophthora infestans)及び他の植物の疫病、キュウリべと病(Pseudoperonospora cubensis)、ブドウべと病(Plasmopara viticola)等の種々の植物のべと病、リンゴ黒星病(Venturia inaequalis)、リンゴ斑点落葉病(Alternaria mali)、ナシ黒斑病(Alternaria kikuchiana)、カンキツ黒点病(Diaporthe citri)、カンキツそうか病(Elsinoe fawcetti)、テンサイ褐斑病(Cercospora beticola)、ラッカセイ褐斑病( Cercospora a r a c h i d I c o l a)、ラッカセイ黒渋病(Cercospora personata)、コムギ葉枯れ病(Septoria tritici)、コムギふ枯れ病(Leptosphaeria nodorum)、オオムギ網斑病(Pyrenophora teres)、オオムギ斑葉病(Pyrenophora graminea)、オオムギ雲形病(Rhynchosporium secalis)、コムギ裸黒穂病(Ustilago nuda)、コムギなまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、シバの葉腐病(Rhizoctonia solani)、シバのダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)等が挙げられる。
【0010】
細菌類病害の具体的病害としては、Pseudomonas属による、例えば、キュウリ斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv.lachrymans)、トマト青枯病(R a l s t o n I a s
o l a n a c e a r u m)及びイネ籾枯細菌病(B u r k h o l d e r I a g l u m a e);Xanthomonas属による、例えば、キャベツ黒腐病(Xanthomonas campestris)、イネ白葉枯病(Xanthomonas oryzae)及びカンキツかいよう病(Xanthomonas c
a m p e s t r I s p v.citri);Erwinia属による、例えば、キャベツ軟腐病(Erwinia carotovora)等が挙げられる。
【0011】
ウイルス病病害の具体的病害としては、タバコモザイク病(Tobacco mosaic virus)等が挙げられる。
【0012】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物を使用できる植物としては特に限定されるものではないが、例えば、穀類(例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、オートムギ、トウモロコシ、高粱等)、豆類(例えば、大豆、小豆、そら豆、えんどう豆、落花生等)、果樹・果実類(例えば、リンゴ、柑橘類、梨、ブドウ、桃、梅、桜桃、クルミ、アーモンド、バナナ、イチゴ等)、野菜類(例えば、キャベツ、トマト、ほうれん草、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン等)、根菜類(例えば、ニンジン、馬鈴薯、サツマイモ、大根、蓮根、かぶ等)、加工用作物類(例えば、綿、麻、コウゾ、ミツマタ、菜種、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、オリーブ、ゴム、コーヒー、タバコ、茶等)、瓜類(例えば、カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン等)、牧草類(例えば、オーチャードグラス、ソルガム、チモシー、クローバー、アルファルファ等)、芝類(例えば、高麗芝、ベントグラス等)、香料等用作物類(例えば、ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、胡椒、しょうが等)等が挙げられる。
【0013】
また、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、IPM(総合的有害生物管理)において活用することもできる。IPMには、例えば遺伝子組み換え作物(例えば、除草剤耐性作物、殺虫性タンパク産生遺伝子を組み込んだ害虫耐性作物、病害に対する抵抗性誘導物質産生遺伝子を組み込んだ病害耐性作物、食味向上作物、保存性向上作物、収量向上作物等)の導入、昆虫性フェロモン(例えば、ハマキガ類、ヨトウガ類の交信攪乱剤等)等のフェロモン剤の活用、天敵昆虫等の活用、化学農薬等の活用等が含まれ、これらを併用して有害生物を総合的に防除するものである。本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、前記化学農薬として活用することができる。
【0014】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、有効成分に他の成分を加えずそのまま用いても良いが、通常は農薬製剤上の常法に従い使用上都合の良い剤型に製剤して使用することが好ましい。
即ち、イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを、適当な不活性担体に、又は必要に応じて補助剤と一緒に適当な割合で配合して溶解、分離、懸濁、混合、含浸、吸着若しくは付着させて適宜の剤型、例えば、懸濁剤、乳剤、液剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤、粉剤、錠剤、パック剤等に製剤して使用することができる。
【0015】
本発明で使用できる不活性担体は固体又は液体の何れであっても良い。固体の担体になりうる材料としては、例えば、ダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣;粉砕合成樹脂等の合成重合体;粘土類(例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(例えば、タルク、ピロフィライト等)、シリカ類{例えば、珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン(含水微粉珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。)}、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム等の無機鉱物性粉末;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体;硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料;堆肥等を挙げることができ、これらは単独で若しくは二種以上の混合物の形で使用することができる。
【0016】
液体の担体になりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するものの他、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうるものから選択され、例えば代表例として次に挙げる担体を例示できる。これらは単独で若しくは2種以上の混合物の形で使用され、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ケロシン、鉱油等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩素化ベンゼン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、ジイソプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレ−ト等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等)、ジメチルスルホキシド類等を挙げることができる。
【0017】
補助剤としては次に例示する界面活性剤、分散安定化、粘着及び/又は結合助剤、流動性改良剤、解こう剤、消泡剤、防腐剤等を挙げることができ、これらの補助剤を目的に応じて使用することができる。補助剤は、単独で用いてもよく、ある場合は二種以上の補助剤を併用してもよく、又ある場合には全く補助剤を使用しなくてもよい。
界面活性剤は、例えば有効成分化合物の乳化、分散、可溶化及び/又は湿潤の目的のために使用することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルアリールスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸縮合物、リグニンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等が挙げられる。
分散安定化、粘着及び/又は結合助剤は、有効成分化合物の分散安定化を目的として、また粒子成形のための粘着及び/又は結合助剤として使用することができる。分散安定化、粘着及び/又は結合助剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、糠油、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0018】
流動性改良剤は、固体製品の流動性改良のために使用することができる。流動性改良剤としては、例えば、ワックス、ステアリン酸塩、燐酸アルキルエステル等が挙げられる。解こう剤は、懸濁性製品の分散解こう剤として使用することができる。解こう剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸縮合物、縮合燐酸塩等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、パラクロロメタキシレノール、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
更に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物には、必要に応じて機能性展着剤、ピペロニルブトキサイド等の代謝分解阻害剤等の活性増強剤、プロピレングリコール等の凍結防止剤、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の酸化防止剤、紫外線吸収剤等その他の添加剤等も加えることができる。
【0019】
本発明の殺菌剤組成物において、イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上は、その合計量(有効成分量)が、該殺菌剤組成物100重量部中に、0.1〜95重量部、好ましくは1〜70重量部、の割合となるように配合されていればよい。
該有効成分量は、該殺菌性組成物の製剤形態、適用方法、使用環境、およびその他の条件を考慮して適宜選択することができる。例えば、該殺菌剤組成物が水和剤形態である場合には5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%であり、該該殺菌剤組成物が粉剤形態である場合には0.1〜5.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%である。
【0020】
本発明の殺菌剤組成物において、イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上との配合比は、重量比で1:100〜1000:1の範囲であり、好ましくは1:10〜100:1の範囲である。
【0021】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物を対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体に使用することによって、植物病害から作物を保護することができる。本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、該農園芸用殺菌剤組成物の有効量を用いて対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体を処理することにより使用される。対象植物、対象植物の種子、土壌又は栽培担体の「処理」には、農園芸用殺菌剤組成物の散布、塗布、対象植物が生育している土壌に対する散布、灌注等が含まれる。
【0022】
具体的には、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は種々の植物病害を防除するためにそのまま、又は水等で適宜希釈し、若しくは懸濁させた形で使用すれば良く、例えば果樹、穀類、野菜等において発生する植物病害に対しては植物の茎葉部に散布する他に、種子の薬剤への浸漬、種子粉衣、カルパー処理等の種子処理;土壌全層混和、作条施用、床土混和、セル苗処理、植え穴処理、株元処理、トップドレス、イネの箱処理、水面施用等、土壌又は栽培担体等に農園芸用殺菌剤組成物の有効量を施用して根から吸収させて使用することもできる。加えて、養液(水耕)栽培における養液への施用、くん煙あるいは樹幹注入等による使用もすることができる。
【0023】
植物の茎葉部への散布方法としては、乳剤、フロアブル剤等の液体製剤又は水和剤もしくは顆粒水和剤等の固形製剤を水で適宜希釈し、散布する方法、粉剤を散布する方法又はくん煙等が挙げられる。
【0024】
種子処理の方法としては、例えば、液状又は固体状の製剤を希釈又は希釈せずして液体状態にて種子を浸漬して薬剤を浸透させる方法、固形製剤又は液状製剤を種子と混和、粉衣処理して種子の表面に付着させる方法、樹脂、ポリマー等の付着性の担体と混和して種子にコーティングする方法、植え付けと同時に種子付近に散布する方法等が挙げられる。当該種子処理を行う「種子」とは、植物の繁殖に用いられる栽培初期の植物体を意味し、例えば、種子の他、球根、塊茎、種芋、株芽、むかご、鱗茎又は挿し木栽培等を挙げることができる。
【0025】
土壌又は栽培担体への施用方法としては、例えば、液体製剤を水に希釈又は希釈せずして植物体の株元又は育苗用苗床等に施用する方法、粒剤を植物体の株元又は育苗のための苗床等に散布する方法、播種前又は移植前に粉剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤等を散布し土壌全体と混和する方法、播種前又は植物体を植える前に植え穴、作条等に粉剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤等を散布する方法等が挙げられる。上記の「土壌」又は「栽培担体」とは、作物を栽培するための支持体、特に根を生えさせる支持体を示すものであり、材質は特に制限されないが、植物が生育しうる材質であれば良く、いわゆる土壌、育苗マット、水等であっても良く、具体的な素材としては例えば、砂、軽石、バーミキュライト、珪藻土、寒天、ゲル状物質、高分子物質、ロックウール、グラスウール、木材チップ、バーク、紙等であっても良い。
【0026】
水稲の育苗箱への施用方法において、剤型は、例えば播種時施用、緑化期施用、移植時施用などの施用時期により異なる場合もあるが、粉剤、顆粒水和剤、粒剤等の剤型で施用すれば良い。培土との混和によっても施用することができ、培土と粉剤、顆粒水和剤又は粒剤等との混和、例えば、床土混和、覆土混和、培土全体への混和等することができ、単に、培土と各種製剤を交互に層状にして施用してもよい。
【0027】
水田への施用方法としては、ジャンボ剤、パック剤、粒剤、粉剤、顆粒水和剤等の固形製剤;フロアブル、乳剤等の液体状製剤を、通常は、湛水状態の水田に散布する。その他、田植え時には、適当な製剤をそのまま又は肥料等に混和して土壌に散布、注入することもできる。また、水口や灌漑装置等の水田への水の流入元に乳剤、フロアブル等の薬液を利用することにより、水の供給に伴い省力的に施用することもできる。
【0028】
畑作物においては、本発明の農園芸用殺菌剤組成物を用いて、播種から育苗期、生育期において、種子又は植物体に近接する栽培担体等の処理を行うことができる。畑に直接播種する植物においては、種子への直接処理の他、栽培中の植物の株元への処理が好適である。粒剤を用いて散布処理又は水に希釈又は希釈しない薬剤を液状にて潅注処理を行うことができる。粒剤を播種前の栽培担体と混和させた後、播種するのも好ましい処理である。
【0029】
移植を行う栽培植物の播種、育苗期の処理としては、種子への直接処理の他、育苗用苗床への、液状とした薬剤の潅注処理又は粒剤の散布処理が好ましい。また、定植時に粒剤を植え穴に施用したり、移植場所近辺の栽培担体に混和したりすることも好ましい処理である。
【0030】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は通常の剤型、例えば乳剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、液剤、粒剤、粉剤、薫煙剤等の剤型に製剤して使用すればよく、その施用量は、有効成分の配合割合、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、防除対象有害生物、対象作物等により異なるが、通常1アール当たり有効成分として約0.1g〜1000gの範囲から適宜選択して施用すれば良く、好ましくは約1g〜500gの範囲が良い。種子への処理においては種子との比較で、種子100gに対して、有効成分として約0.01g〜50gの範囲で使用することが可能であり、好ましくは有効成分として約0.1g〜10gの範囲である。乳剤、水和剤等を水等で希釈して施用する場合、その施用濃度は通常約0.00001〜0.1%であり、粒剤、粉剤あるいは種子に処理する場合の液剤等は、通常希釈することなくそのまま施用すれば良い。
【0031】
また、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分であるイソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種は各々単独で同時期に使用することにより、予め有効成分が混合された農園芸用殺菌剤組成物と同様の殺菌スペクトラムの拡大効果や相乗効果を発揮させることができる。
即ち、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分であるイソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上を各々単独で製剤化したものやその希釈液を、使用の現場において処理時に混用して施用してもよく、更に、別々に同時期にこれらを用いて植物に処理してもよい。なお、各々単独で別々に施用する場合、同時に施用してもよく、約7日程度の間隔を設けてもよいが、いずれか一方の有効成分が植物又は栽培担体に残存している時期に他方の有効成分を施用することが好ましく、上記の「同時期」とは、そのように両者が処理されている時期の少なくとも一部が重複することを含む概念であり、必ずしも全く同時に施用作業を行う必要はない。このような、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分であるイソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上の有効量を用いて、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分であるイソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上を各々単独で植物又は栽培担体を同時期に処理する植物病害の防除方法も、本発明の1つである。本発明の農園芸用殺菌剤組成物の有効成分であるイソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上の有効量としては、上述した農園芸用殺菌剤組成物におけるのと同様である。
【0032】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、更に防除対象病害虫、防除適期の拡大のため、或いは薬量の低減をはかる目的で他の農園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、生物農薬等と混合して使用することも可能であり、また、使用場面に応じて除草剤、植物成長調節剤、肥料等と混合して使用することもできる。
【0033】
かかる目的で使用する他の農園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤としては、例えば、エチオン、トリクロルホン、メタミドホス、アセフェート、ジクロルボス、メビンホス、モノクロトホス、マラチオン、ジメトエート、ホルモチオン、メカルバム、バミドチオン、チオメトン、ジスルホトン、オキシデプロホス、ナレッド、メチルパラチオン、フェニトロチオン、シアノホス、プロパホス、フェンチオン、プロチオホス、プロフェノホス、イソフェンホス、テメホス、フェントエート、ジメチルビンホス、クロルフェビンホス、テトラクロルビンホス、ホキシム、イソキサチオン、ピラクロホス、メチダチオン、クロロピリホス、クロルピリホス・メチル、ピリダフェンチオン、ダイアジノン、ピリミホスメチル、ホサロン、ホスメット、ジオキサベンゾホス、キナルホス、テルブホス、エトプロホス、カズサホス、メスルフェンホスDPS(NK−0795)、ホスホカルブ、フェナミホス、イソアミドホス、ホスチアゼート、イサゾホス、エナプロホス、フェンチオン、ホスチエタン、ジクロフェンチオン、チオナジン、スルプロホス、フェンスルフォチオン、ジアミダホス、ピレトリン、アレスリン、プラレトリン、レスメトリン、ペルメトリン、テフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、デルタメトリン、アクリナトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、ハルフェンプロックス、シラフルオフェン、フルシトリネート、フルバリネート、メソミル、オキサミル、チオジカルブ、アルジカルブ、アラニカルブ、カルタップ、メトルカルブ、キシリカルブ、プロポキスル、フェノキシカルブ、フェノブカルブ、エチオフェンカルブ、フェノチオカルブ、ビフェナゼート、BPMC(2−セコンダリーブチルフェニル−N−メチルカーバメート)、カルバリル、ピリミカーブ、カルボフラン、カルボスルファン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ、アルドキシカルブ、ジアフェンチウロン、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、ヘキサフルムロン、ノバルロン、ルフェヌロン、フルフェノクスロン、クロルフルアズロン、酸化フェンブタスズ、水酸化トリシクロヘキシルスズ、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、メトプレン、ハイドロプレン、ビナパクリル、アミトラズ、ジコホル、ケルセン、クロルベンジレート、フェニソブロモレート、テトラジホン、ベンスルタップ、ベンゾメート、テブフェノジド、メトキシフェノジド、ピリダリル、メタフルミゾン、フルベンジアミド、クロマフェノジド、プロパルギット、アセキノシル、エンドスルファン、ジオフェノラン、クロルフェナピル、フェンピロキシメート、トルフェンピラド、フィプロニル、テブフェンピラド、トリアザメート、エトキサゾール、ヘキシチアゾクス、硫酸ニコチン、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリド、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフラン、フルアジナム、ピリプロキシフェン、ヒドラメチルノン、ピリミジフェン、ピリダベン、シロマジン、TPIC(トリプロピルイソシアヌレート)、ピメトロジン、クロフェンテジン、ブプロフェジン、チオシクラム、フェナザキン、キノメチオネート、インドキサカルブ、ポリナクチン複合体、ミルベメクチン、アバメクチン、エマメクチン・ベンゾエート、スピノサッド、BT(バチルス・チューリンゲンシス)、アザディラクチン、ロテノン、ヒドロキシプロピルデンプン、塩酸レバミゾール、メタム・ナトリウム、酒石酸モランテル、ダゾメット、トリクラミド、バストリア又はモナクロスポリウム・フィマトパガム等を挙げることができる。
【0034】
同様に除草剤としては、例えば、グリホサート、スルホセート、グルホシネート、ビアラホス、ブタミホス、エスプロカルブ、プロスルホカルブ、ベンチオカーブ、ピリブチカルブ、アシュラム、リニュロン、ダイムロン、イソウロン、ベンスルフロンメチル、シクロスルファムロン、シノスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、アジムスルフロン、イマゾスルフロン、テニルクロール、アラクロール、プレチラクロール、クロメプロップ、エトベンザニド、メフェナセット、ペンディメタリン、ビフェノックス、アシフルオフェン、ラクトフェン、シハロホップブチル、アイオキシニル、ブロモブチド、アロキシジム、セトキシジム、ナプロパミド、インダノファン、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラフルフェンエチル、イマザピル、スルフェントラゾン、カフェンストロール、ベントキサゾン、オキサジアゾン、パラコート、ジクワット、ピリミノバック、シマジン、アトラジン、ジメタメトリン、トリアジフラム、ベンフレセート、フルチアセットメチル、キザロホップ・エチル、ベンタゾン又は過酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0035】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが発明の要旨を超えない限りそれらに限定されるものではない。実施例中、「%」は、特に断らない限り「質量%」を表す。
【実施例】
【0036】
[製剤例1]
イソプロチオラン 2.5部
イミノクタジン酢酸塩 1.5部
ポリブテンLVー100N粉末 0.2部
ディスクゾール600 0.3部
含水珪酸 1部
炭酸カルシウム 45部
クレー 49.5部
以上を均一に混合粉砕して粉剤とする。
【0037】
次に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の各々単剤および混合剤での試験例を示す。
【0038】
[試験例1]イネいもち病予防効果試験
所定濃度の薬液を調製し、ポットで栽培した4.8葉期のイネ(品種:金南風)にスプレーガンで茎葉散布した。乾燥後にイネいもち病菌(Pyricularia
oryzae)の胞子懸濁液を噴霧接種し、接種箱(20℃)に14時間投入後、室温に静置した。接種7日後に発病数を調査し、防除価を求めた。結果を第1表に示す。
【0039】
【数1】



【0040】
【表1】

【0041】
[試験例2]イネいもち病治療効果試験
ポットで栽培した4.8葉期のイネ(品種:金南風)にイネいもち病菌(Pyricularia
oryzae)の胞子懸濁液を噴霧接種し、接種箱(20℃)に14時間投入後、室温に静置した。乾燥後に所定濃度の薬液を調製し、スプレーガンで茎葉散布した。その後室温に静置した。処理6日後に病斑数を調査し、防除価を求めた。結果を第2表に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
[試験例3]イソプロチオラン・イミノクタジン酢酸塩粉剤のイネいもち病予防効果試験
ポットで栽培した5.8葉期のイネ(品種:金南風)に所定量の薬剤を粉剤散布装置で処理(3kg/10a相当)した。その後イネいもち病菌(Pyricularia
oryzae)の胞子懸濁液を噴霧接種し、接種箱(20℃)に14時間投入後、室温に静置した。接種7日後に発病数を調査し、防除価を求めた。結果を第3表に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
[試験例4]イソプロチオラン・イミノクタジン酢酸塩粉剤のイネいもち病治療効果試験
ポットで栽培した4.8葉期のイネ(品種:金南風)にイネいもち病菌(Pyricularia
oryzae)の胞子懸濁液を噴霧接種し、接種箱(20℃)に14時間投入後、室温に静置した。乾燥後に所定量の薬剤を粉剤散布装置で処理(3kg/10a相当)した。その後室温に静置した。処理6日後に病斑数を調査し、防除価を求めた。 結果を第4表に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
[試験例5]イソプロチオラン・イミノクタジン酢酸塩粉剤のイネごま葉枯病予防効果試験
ポットで栽培した5.8葉期のイネ(品種:金南風)に所定量の薬剤を粉剤散布装置で処理(3kg/10a相当)した。その後イネごま葉枯病菌(Cochliobolus
miyabeanus)の胞子懸濁液を噴霧接種し、接種箱(20℃)に14時間投入後、室温に静置した。接種7日後に発病数を調査し、防除価を求めた。結果を第5表に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
[試験例6]イソプロチオラン・イミノクタジン酢酸塩粉剤のイネごま葉枯病効果持続性試験
ポットで栽培した5.8葉期のイネ(品種:金南風)に所定量の薬剤を粉剤散布装置で処理(3kg/10a相当)した。その7日後、イネごま葉枯病菌(Cochliobolus
miyabeanus)の胞子懸濁液を噴霧接種し、接種箱(20℃)に14時間投入後、室温に静置した。接種7日後に発病数を調査し、防除価を求めた。結果を第5表に示す。
【0050】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項2】
グアニジン系殺菌剤がイミノクタジン酢酸塩及びイミノクタジンアルベシル酸塩から選択される請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の農園芸用殺菌剤組成物の有効量を対象植物又は土壌に処理することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物の使用方法。
【請求項4】
イソプロチオランとグアニジン系殺菌剤の1種又は2種以上とを同時期に対象植物又は土壌に処理することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物の使用方法。

【公開番号】特開2009−286711(P2009−286711A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139243(P2008−139243)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】