説明

農薬処理装置

【課題】より確実に残留農薬量を抑えることが可能な農薬処理装置を提供する。
【解決手段】帯電微粒子水を発生させて植物に付着した農薬の分解処理及び親水化処理をするミスト発生部11と、植物に残留した農薬量を推定又は測定する農薬検出部Fと、農薬検出部Fから得られる農薬量に応じてミスト発生部11を制御する制御部CPを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等に付着した農薬を処理する農薬処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜等の食物に付着した農薬を除去する農薬処理装置として、例えば特許文献1に示すように、でOH(ヒドロキシル)ラジカルを発生させることで、食物に付着している農薬を酸化分解により減らすものが知られている。
【0003】
また、特許文献1の農薬処理装置は、冷蔵庫の食物を貯蔵する貯蔵室内でOHラジカルを発生させるものであるため、予め規制値以下となっていた残留農薬量を更に減少させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−101840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、野菜等の食物に付着した残留農薬量によっては例えばその食物の出荷が制限される場合がある。このため、出荷制限を解除するべく、例えば農薬を処理(分解や親水化)するOHラジカル等を発生させる上記の農薬処理装置が有効となっている。
【0006】
しかしながら、上記の農薬処理装置は、冷蔵庫の貯蔵室内にOHラジカルを発生させるものであるため、栽培中や出荷前の食物に対しては考慮されていない。また、単にOHラジカル等を発生させるだけでは食物等の対象物の残留農薬量が分からず、発生量等の制御が行うことができず、確実に農薬量が処理して農薬量を抑えられているのかわからない虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より確実に残留農薬量を抑えることが可能な農薬処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の農薬処理装置は、帯電微粒子水、空気イオン、オゾン、紫外線の少なくとも1つを発生させて対象物に付着した農薬の分解処理及び農薬の親水化処理の少なくとも一方を行う農薬処理手段と、前記対象物に残留した農薬量を推定又は測定する残留量検出手段と、前記残留量検出手段から得られる前記農薬量に応じて前記農薬処理手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また上記構成において、農薬処理手段は、少なくとも帯電微粒子水を用いて前記対象物の農薬の分解処理及び農薬の親水化処理の少なくとも一方を行うことが好ましい。
また上記構成において、制御手段は、前記残留量検出手段によって推定又は測定された残留した農薬量が所定位置以下となるまで前記農薬処理手段を制御することが好ましい。
【0010】
また上記構成において、残留量検出手段は、農薬の散布量、前記農薬散布からの経過日数及び農薬の種類から残留した農薬量を推定するものであり、前記制御手段は、前記残留量検出手段から得られる推定した前記農薬量に応じて前記農薬処理手段を制御することが好ましい。
【0011】
また上記構成において、残留量検出手段は、質量分析装置で構成されることが好ましい。
また上記構成において、農薬処理手段によって農薬の分解処理及び親水化処理の少なくとも一方を行った後に、前記対象物を水洗いする水洗手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より確実に残留農薬量を抑えることが可能な農薬処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の農薬処理装置について説明するための概略構成図である。
【図2】農薬処理装置のミスト発生部について説明するための概略構成図である。
【図3】農薬処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】帯電微粒子水の農薬分解効果を確認するための実験について説明するための説明図である。
【図5】(a)(b)は、クロルピリホスの分解効果について説明するためのチャート図である。
【図6】(a)(b)は、フェノルカルブの分解効果について説明するためのチャート図である。
【図7】(a)(b)は、ダイアジノンの分解効果について説明するためのチャート図である。
【図8】第2実施形態の農薬処理装置について説明するための概略構成図である。
【図9】別例の農薬処理装置について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の農薬処理装置10は、ラジカルを含む帯電微粒子水(微粒子)を噴霧するミスト発生部11と、植物Pに付着した農薬の残留量を測定又は推定により検出する農薬検出部Fとを備える。
【0015】
ミスト発生部11は、ミスト発生部11から放出される帯電微粒子の少なくとも一部を循環させる連結筒部12と連結される。
連結筒部12は、複数のホース又は複数のパイプ又はこれらの組合せである第1〜第3連結筒部12a〜12cによって構成される。第1連結筒部12aは、その基端がミスト発生部11の放出口(図示略)と接続されるとともに、第1連結筒部12aの先端がポンプ部13と接続される。このポンプ部13には、第2連結筒部12bの基端が接続されるとともに、第2連結筒部12bの先端が例えば空調機からなる温度湿度調整部14と接続される。温度湿度調整部14には、第3連結筒部12cの基端が接続されるとともに、第3連結筒部12cの先端が前記ミスト発生部11の取込口(図示略)と接続される。
【0016】
また、連結筒部12(第1連結筒部12a)には複数の放出口12dが本実施形態では植物Pの個数と同数個形成されている。これにより、ミスト発生部11にて生成された帯電微粒子水が植物Pに噴霧されるようになっている。
【0017】
次に、ミスト発生部11について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、ミスト発生部11は、箱状の筐体(図示略)内部に主体を成す静電霧化部20を備えている。この静電霧化部20を構成する支持枠21は、PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂、PPS樹脂等の絶縁性樹脂材料を用いて形成されるとともに、略円筒状の筒部21aにて主体が構成されている。そして、筒部21aの基端部(図2において下端部)には、外周側に突出する円環状の固定フランジ部21bが一体に形成されている。また、筒部21aの内周面には、支持枠21の内部空間を霧化空間S1と密閉空間S2とに分割する隔壁21cが一体に形成されるとともに、この隔壁21cの径方向の中央部には、霧化空間S1と密閉空間S2とを連通する連通孔21dが形成されている。さらに、筒部21aにおいて、霧化空間S1の外周を囲う部位には、霧化空間S1と筒部21aの外部空間とを連通する複数の空気流入孔21eが形成されている。また、筒部21aの先端面(図2において上端面)には、リング状の対向電極22が例えばインサート成形等により一体に設けられている。この対向電極22の中央部の開口は、ミスト放出口22aとなっている。
【0018】
筒部21aの内部には、導電性を有する金属製の放電電極23が配置されている。放電電極23は、筒部21aの軸方向に沿って延びる略円柱状をなすとともに、同放電電極23の先端側の部位は、先端に向かうにつれて縮径された円錐形状をなしている。また、放電電極23は、その先端部に球状の放電部23aを有する一方で、その基端部に径方向外側に延設された円環状のフランジ部23bを有する。
【0019】
そして、放電電極23は、先端部の放電部23aが霧化空間S1内に配置されるように、隔壁21cの連通孔21dを貫通した状態で、筒部21aの内部に配置されている。また、放電電極23のフランジ部23bは、密閉空間S2内に配置されるとともに、隔壁21cにおける連通孔21dの外周部分に当接している。このように配置された放電電極23と対向電極22との間には間隔が設けられている。また、放電電極23の基端部には、高電圧を印加するための高電圧印加板24が接続されている。高電圧印加板24は、筒部21aの外部にまで延出されるとともに高圧電源回路HV(図3参照)に接続されている。
【0020】
密閉空間S2内には、放電電極23の基端面と当接するように冷却用絶縁板25が収容されている。冷却用絶縁板25は、熱伝導性及び耐電性の高いアルミナ(酸化アルミニウム)や窒化アルミニウム等にて形成されている。
【0021】
また、密閉空間S2内には、放電電極23との間に冷却用絶縁板25が介在されるようにペルチェモジュール26が配置されている。ペルチェモジュール26は、厚さ方向に互いに対向して配置される一対の回路基板27,28間にBiTe系の複数の熱電素子29を配置して構成されている。回路基板27,28は、熱伝導性の高い絶縁板(例えばアルミナ、窒化アルミニウム等)に回路が形成されたプリント基板であり、回路は一対の回路基板27,28の対外に対向する面にそれぞれ形成されている。また、この回路によって複数の熱電素子29が電気的に接続されている。さらに、熱電素子29は、ペルチェ入力リード線30を介してペルチェ用電源PS(図3参照)に接続されている。このようなペルチェモジュール26は、ペルチェ入力リード線30を介して複数の熱電素子29に通電されると、冷却用絶縁板25に当接された一方の回路基板27から、他方の回路基板27に向けて熱が移動するようになっている。
【0022】
また、支持枠21の固定フランジ部21bは放熱部材31に固定されている。この放熱部材31は、熱電素子29への通電により放電電極23側の回路基板27から放熱部材31側に回路基板28に向けて搬送された熱を効率良く外気に放出するためのものである。放熱部材31は、高熱伝導性を有するアルミナや窒化アルミニウム等にて形成されるとともに、一対の回路基板27,28のうち冷却用絶縁板25に当接していない方の回路基板28(図2おいて下側の回路基板28)に当接している。
【0023】
また、隔壁21cの連通孔21dと放電電極23との間が封止部材32によって封止されており、この封止部材32と放熱部材31とによって密閉空間S2が密閉状態に維持されている。
【0024】
図3に示す制御部CPは、マイコンを備えている。そして、前記ペルチェ用電源PSは、制御部CPに電気的に接続されるとともに、制御部CPからの制御信号によって制御される。また、高圧電源回路HVは、制御部CPに電気的に接続されるとともに、制御部CPからの制御信号により制御される。更に、高圧電源電圧検出回路35は、高圧電源回路HVが放電電極23に印加する電圧値を検出するとともに、検出した電圧値に応じた高圧電圧信号を制御部CPに出力する。また、放電電流検出回路36は、高圧電源回路HVによって放電電極23に高電圧が印加されたときに生じる放電電流を検出し、検出した放電電流に応じた放電電流信号を制御部CPに出力する。
【0025】
制御部CPは、高圧電源回路HVのオン・オフを制御するだけでなく、高圧電源電圧検出回路35から入力された高圧電圧信号及び放電電流検出回路36から入力された放電電流信号に基づいて生成した放電電圧調整信号を高圧電源回路HVに出力する。そして、高圧電源回路HVのオン・オフを制御するためのON/OFF制御信号のみではなく、放電電流調整信号に基づき高圧電源回路HVが駆動されることにより安定して静電霧化できる電圧が高圧電源回路HVから放電電極23に印加されるようになっている。
【0026】
図2及び図3に示すように、上記のように構成されたミスト発生部11では、ペルチェ用電源PSによる熱電素子29への通電により放電電極23側の回路基板27から放熱部材31側の回路基板27へ熱が移動される。この熱移動に伴って冷却用絶縁板25を介して放電電極23が冷却される。すると、放電電極23の周囲の空気が冷却されて空気中の水分が結露して放電電極23の表面に付着する。そして、放電電極23の特に放電部23aの表面に水が保持された状態で、放電電極23がマイナス電極となって電荷が集中するように放電電極23と対向電極22との間に高圧電源回路HVによって高電圧が印加される。すると、静電気力により放電部23aに保持された水が対向電極22側に引き上げられてテイラーコーンと称される形状を形成する。そして、放電部23aに保持された水は、大きなエネルギーを受けてレイリー分裂を繰り返し、ミストとしての帯電微粒子水を大量に発生させるとともに、発生された帯電微粒子水は、対向電極22のミスト放出口22aを通って霧化空間S1の外に放出される。
【0027】
ここで、図3に示すように、農薬検出部Fは、例えば推定により植物Pの農薬量を検出する場合、タッチパネルやボタン等の入力部を備え、この入力部により使用者は、農薬の散布量、散布からの経過日数、農薬の種類を入力又は選択可能となっている。農薬検出部Fは、散布した農薬量、散布からの経過日数、農薬の種類が入力又は選択されると、それらの情報から植物Pに残留した農薬量を推定するとともに、その推定結果を制御部CPに出力する。
【0028】
農薬検出部Fは、例えば実際の測定により植物Pの農薬量を検出する場合、質量分析装置などを用いて構成する。より具体的には、揮発した農薬の雰囲気を分析して測定したり、植物Pの一部をサンプリング測定したりすることで実際の農薬量を検出する。
【0029】
そして農薬検出部Fは、前記ミスト発生部11の制御部CPと電気的に接続され、植物Pの推定又は実際の測定することでその結果(情報)を制御部CPに出力する。
制御部CPは、帯電微粒子水を発生させる際、前記推定又は実際の測定によって検出された検出結果(情報)に応じて帯電微粒子水の濃度や発生時間を調整する。このミスト発生部11により発生する帯電微粒子水は、OHラジカル(ヒドロキシラジカル)といったラジカルが含まれており、植物Pに付着している農薬の分解や親水化を促進させるとともに、カビ菌等の菌の増殖を抑える効果がある。
【0030】
ここで、ミスト発生部11から発生される帯電微粒子水による農薬分解効果及び農薬の親水化効果について説明する。
本発明者は、上記農薬処理装置10の農薬分解効果を調査するべく実験を行った。その実験について以下に説明する。
【0031】
図4に示すように、メタノールに溶解した農薬をシャーレ41に入れ、そのシャーレ41内のメタノールを約20分程度揮発させる。
そして、シャーレ41を70L(リットル)のボックス42内に入れて、そのボックス42内に農薬処理装置10のミスト発生部11で発生される帯電微粒子水を噴霧する。
【0032】
帯電微粒子水を噴霧してから24時間後、シャーレ41内の残留物をメタノールで回収する。その後、回収したメタノールをガスクロマトグラフィーにより定量して、農薬の減少率を算出した。ここでいう減少率は、1−(帯電微粒子水処理後の農薬量/ブランク農薬量)で算出している。
【0033】
その結果、減少率はシペルメトリン(C2219ClNO)が7%、クロルピリホス(C11ClNOPS)が95%、フェノブカルブ(C1217NO)が95%、ダイアジノン(C1221PS)が79%となった。
【0034】
また、上記以外にもメタミドホス(CNOPS)やジクロルボス(CClP)についても農薬分解効果を調査するべく実験を行った。
メタミドホス1ppmのメタノール溶液をシャーレ41に入れ、メタノールが揮発してからそのシャーレ41を350mm×350mm×400mmのボックス42内に入れる。そして、そのボックス42内に農薬処理装置10のミスト発生部11で発生される帯電微粒子水を4時間噴霧する。帯電微粒子水を噴霧開始してから4時間経過後、シャーレ41にエタノールを入れて回収する。その後、その回収したエタノールをLC/MS/MS(液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計)にて定量して、メタミドホスの減少率を算出すると、92.3%となった。
【0035】
ジクロルボス0.1ppmの標準溶液をシャーレ41に入れて秤量してからそのシャーレ41を350mm×350mm×400mmのボックス42内に入れる。ジクロルボス0.1ppmの標準溶液をシャーレ41に入れて秤量した状態を初期重量とする。そして、そのボックス42内に農薬処理装置10のミスト発生部11で発生される帯電微粒子水を4時間噴霧する。帯電微粒子水を噴霧開始してから4時間経過後、シャーレ41に水を加えて初期重量に調整する。その後、加えた水を回収し、回収した水(水溶液)をLC/MS/MS(液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計)にて定量して、ジクロルボスの減少率を算出すると、77.1%となった。
(分解物の分析検討)
続いて、本発明者は、上記農薬処理装置10から噴霧される帯電微粒子水によって農薬分解されたか否かを調査するべく、前述したクロルピリホス、フェノブカルブ及びダイアジノンの3種の農薬についてFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)で分析した。その分析結果を図5〜図7に示す。図5〜図7では横軸が波数を示し、縦軸が吸光度を示す。
【0036】
クロルピリホスに帯電微粒子水を噴霧してから4時間後にそのクロルピリホスの化学構造変化があるか否かをFT−IRで分析した。その結果を図5(b)に示す。帯電微粒子水噴霧前(図5(a)参照)と比較して、840cm−1付近(P=S伸縮振動)の吸光度のピークが変化したため、帯電微粒子水をクロルピリホスに噴霧することで化学構造が変化したことがわかる。このため、農薬の親水化を確認することができた。
【0037】
また、フェノルカルブに帯電微粒子水を噴霧してから3時間後にそのフェノルカルブの化学構造変化があるか否かをFT−IRで分析した。その結果を図6(b)に示す。帯電微粒子水噴霧前(図6(a)参照)と比較して、カルボン散基のピークである1725〜1700cm−1間での吸光度が変化したため、帯電微粒子水をフェノルカルブに噴霧することで化学構造が変化したことがわかる。これはウレタンの加水分解の可能性を示している。このため、農薬の親水化を確認することができた。
【0038】
また、ダイアジノンに帯電微粒子水を噴霧してから3時間後にそのダイアジノンの化学構造変化があるか否かをFT−IRで分析した。その結果を図7(b)に示す。帯電微粒子水噴霧前(図7(a)参照)と比較して、アミド基のピークである1670〜1630cm−1間での吸光度が変化したため、帯電微粒子水をダイアジノンに噴霧することで化学構造が変化したことがわかる。これは、エーテルの加水分解の可能性を示している。このため、農薬の親水化を確認することができた。
【0039】
次に、農薬処理装置10の一動作例(作用)について説明する。
制御部CPは、農薬検出部Fにて植物Pの農薬量が検出されると、その農薬量に応じてミスト発生部11を制御して帯電微粒子水を発生させる。発生された帯電微粒子水は、植物Pの個数(本数)に応じて形成された連結筒部12の放出口12dから植物Pに噴霧されるようになっている。そして、制御部CPは、農薬検出部Fから所定のタイミングで出力される検出結果(農薬量)を随時監視して、その検出される検出結果である農薬量が所定値以下となるまでミスト発生部11を駆動させて帯電微粒子水を発生させる。
【0040】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)帯電微粒子水を発生させて植物Pに付着した農薬の分解処理及び親水化処理をするミスト発生部11と、植物Pに残留した農薬量を推定又は測定する農薬検出部Fと、農薬検出部Fから得られる農薬量に応じてミスト発生部11を制御する制御部CPを備える。このように、農薬検出部Fを備えることで植物Pに残留した農薬量を推定又は測定することができる。このため、この測定結果に応じて制御部CPによってミスト発生部11を制御することで、帯電微粒子の発生量や発生時間を調整して確実に農薬の分解処理及び親水化処理をすることができ、残留農薬量を抑えることができる。
【0041】
(2)ミスト発生部11は、少なくとも帯電微粒子水を用いて植物Pの農薬の分解処理及び農薬の親水化処理を行うため、帯電微粒子水に含むOHラジカルによってカビ菌等の発生を抑えることができる。
【0042】
(3)制御部CPは、農薬検出部Fによって推定又は測定された残留した農薬量が所定位置以下となるまで前記ミスト発生部11を制御するため、より確実に残留した農薬量を抑えることができる。
【0043】
(4)ミスト発生部11は、ミスト発生部11で発生される静電微粒子水が移動可能な長尺状の連結筒部12が連結される。そして連結筒部12には、その内部と外部とを連通する連通口としての放出口12dが連結筒部12の長手方向に複数形成される。このような構成により、例えば一般的に一方向に長く配置した状態で栽培される植物Pに対して1つの装置10で効率よく静電微粒子水(微粒子)を供給することができる。
【0044】
(5)連結筒部12には、この連結筒部12内部の温度調整を行う温度湿度調整部14が設けられるため、帯電微粒子水の発生を安定して行うことができる。
(6)熱電素子29を用いて放電電極23に水の補給を行っているため、タンクから水を放電電極23に供給する場合に必須となるタンク内の水の補給といった手間を省くことができる。
【0045】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図8に従って説明する。尚、第1実施形態と同じ部材については同じ符号を付して図面及び説明の全て又は一部を割愛する。
【0046】
本実施形態の農薬処理装置10は、第1実施形態と比較して植物Pに対してミスト発生部11の一を相対的に変更することが異なる。
具体的には、農薬処理装置10は、植物Pの配置方向に沿って設けられるスライド機構51と、このスライド機構51上に配置されて前記植物Pの配置方向に移動可能とされるミスト発生部11とを備える。スライド機構51は、例えば図示しない載置面に載置されるガイドレール51aと、このガイドレール51a上に移動可能に取り付けられてベース板51bとを備えている。スライド機構51を構成するベース板51bの上面には前記ミスト発生部11が設置されている。
【0047】
次に、農薬処理装置10の一動作例(作用)について説明する。
制御部CPは、農薬検出部Fにて植物Pの農薬量が検出されると、その農薬量に応じてミスト発生部11を制御して帯電微粒子水を発生させる。発生された帯電微粒子水は、植物Pに向かって直接噴霧されて供給されるようになっている。そして、制御部CPは、農薬検出部Fから所定のタイミングで出力される検出結果(農薬量)を随時監視して、その検出される検出結果である農薬量が所定値以下となるまでミスト発生部11を駆動させて帯電微粒子水を発生させる。
【0048】
このとき、制御部CPは、図示しない駆動源を駆動させてベース板51bをスライド機構51のガイドレール51a上でスライド移動させてミスト発生部11を移動させるようになっている。
【0049】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。本実施形態では第1実施形態の(1)〜(3)、(5)、(6)の効果に加えて以下の効果を奏することができるようになっている。
【0050】
(1)植物Pに対するミスト発生部11の帯電微粒子水の噴射位置を相対的に変更するスライド機構51を備える。このように、スライド機構51は、複数配置される植物Pの配置方向にミスト発生部11を移動させるように構成される。このように相対的に移動することでラジカルを含む帯電微粒子水を効率よく付与することができ、病気抑制効果を高めることができる。
【0051】
尚、本発明の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、農薬処理装置10から帯電微粒子水を噴霧する構成としたが、これに限らない。例えば、空気イオン(大気イオン)、オゾン、紫外線及び帯電微粒子水の少なくとも1つを食物に対して噴霧する構成であればよい。
【0052】
・上記各実施形態では、特に言及していないが、植物Pの収穫前や収穫後のいずれであっても農薬処理装置10を用いてよい。
・上記各実施形態では、静電霧化部20を構成する放電電極23に対して水を供給する液体供給手段として熱電素子29を用いたが、これに限らない。例えば、放電電極23に対して水を直接供給する構成を採用してもよい。また、例えば除湿に用いるゼオライトにより構成され、除湿したゼオライトをヒータで温め、ゼオライトから蒸発した水分を集めることで液体を取得してもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、特に言及していないが、図9に示すように、農薬処理手段としてのミスト発生部11による農薬の分解処理及び農薬の親水化処理の終了後に、前記対象物としての植物Pを水洗いする水洗手段60を備える構成を追加してもよい。このような構成とすることで、農薬処理装置10で、より確実に農薬を除去することが可能となる。なお、水洗手段としては、植物Pの収穫前や収穫後のいずれであってもよい。なお、水洗手段60の一例として、例えばスプリンクラー等の散水システムやシャワー装置をミスト発生部11の制御部CPと電気的に接続して、制御部CPによって制御する構成が考えられる。
【0054】
・上記第2実施形態では、植物Pに対してミスト発生部11を移動させる構成としたが、これに限らず、植物Pを移動させたり、植物P及びミスト発生部11の両方を移動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…農薬処理装置、11…ミスト発生部(農薬処理手段)、60…水洗手段、CP…制御部(制御手段)、F…農薬検出部(残留量検出手段)、P…植物(対象物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電微粒子水、空気イオン、オゾン、紫外線の少なくとも1つを発生させて対象物に付着した農薬の分解処理及び農薬の親水化処理の少なくとも一方を行う農薬処理手段と、
前記対象物に残留した農薬量を推定又は測定する残留量検出手段と、
前記残留量検出手段から得られる前記農薬量に応じて前記農薬処理手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする農薬処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の農薬処理装置において、
前記農薬処理手段は、少なくとも帯電微粒子水を用いて前記対象物の農薬の分解処理又は農薬の親水化処理をすることを特徴とする農薬処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の農薬処理装置において、
前記制御手段は、前記残留量検出手段によって推定又は測定された残留した農薬量が所定位置以下となるまで前記農薬処理手段を制御することを特徴とする農薬処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の農薬処理装置において、
前記残留量検出手段は、農薬の散布量、前記農薬散布からの経過日数及び農薬の種類から残留した農薬量を推定するものであり、
前記制御手段は、前記残留量検出手段から得られる推定した前記農薬量に応じて前記農薬処理手段を制御することを特徴とする農薬処理装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の農薬処理装置において、
前記残留量検出手段は、質量分析装置で構成されたことを特徴とする農薬処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の農薬処理装置において、
前記農薬処理手段によって農薬の分解処理及び親水化処理の少なくとも一方を行った後に、前記対象物を水洗いする水洗手段を備えたことを特徴とする農薬処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−46583(P2013−46583A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186215(P2011−186215)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】