説明

農薬粒剤

【課題】本発明は、種々の水溶性および非水溶性の農薬活性成分の製剤からの溶出を制御することにより、作物に対する薬害の回避が可能となり、また、長期にわたり薬効を保つことができ、さらには、コスト的にも安価な徐放性農薬粒剤を得るにある。
【解決手段】a)農薬活性成分、b)SiO含有量が50%以上であり、粒径が3〜12μmであり、かつ比表面積が300m/g以下であるセピオライト、c)結合剤、並びにd)界面活性剤を含有することを特徴とする構成要件とで、徐放性農薬粒剤を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セピオライトを用いる徐放性農薬粒剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
散布した農薬製剤から農薬活性成分を徐々に溶出させる技術は、作物に対する薬害の軽減および残効性の向上などの面から農業上有用である。そして、徐放性を有する製剤またはその製造法については、これまでにいくつかの方法が知られている。例えば、
(1)農薬活性成分を含む核を熱可塑性樹脂被膜で被覆する方法(特許文献1参照)
(2)徐放性を高めるためにゲル化能を有する水溶性高分子のような樹脂を使用する方法(特許文献2参照)
(3)吸着性担体(酸性白土、ホワイトカーボンなど)を使用する方法(特許文献3参照)
(4)活性炭とパラフィンワックスを使用する方法(特許文献4参照)
(5)アルコール型ワックスを使用する方法(特許文献5参照)
(6)2価以上の無機金属塩(例 Al、Cr、Co、Cu、Fe、Mg、Zn塩)を使用する方法(特許文献6参照)
(7)水溶性有機酸塩及び吸着性担体(ベントナイトなど)を使用する方法(特許文献7参照)
(8)撥水剤(ワックス)とカルボキシメチルセルロースを使用する方法(特許文献8参照)
(9)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩を使用する方法(特許文献9参照)
(10)水溶性セルロースエーテルとキチンを使用する方法(特許文献10参照)
(11)非晶質シリカを使用する方法(特許文献11参照)
(12)水不溶性アルギン酸塩を使用する方法(特許文献12参照)
(13)α化デンプンを使用する方法(特許文献13参照)などが報告されている。
【0003】
しかし、上記方法では常に徐放効果が十分とはいえず、短期間に農薬活性成分が溶出することにより作物に対する薬害の軽減および残効性の向上という面では必ずしも満足できるものではなかった。また逆に、農薬活性成分がいつまでも担体に保持されることにより溶出が抑制されて生物効果不足となるという欠点もあった。
【0004】
本発明で使用するセピオライトは、農薬組成物として広く一般的に使用されている。例えば、
(14)水性懸濁製剤の物理性安定化剤(特許文献14)
(15)水和剤、顆粒水和剤の再分散性改良剤(特許文献15)
(16)セピオライトおよび塩基性ホワイトカーボンによる顆粒水和剤の水中分散性および懸濁性の向上(特許文献16)
(17)バリダマイシンやα−不飽和アミン酸の安定化剤(特許文献17、18)
(18)フェロモン剤の吸着剤(特許文献19)としての使用などが報告されている。
しかしながら、農薬製剤から農薬活性成分を徐々に溶出させるために、セピオライトを用いることはこれまでに知られていない。
【0005】
【特許文献1】特公平01−5002号公報
【特許文献2】特開昭58−219103号公報
【特許文献3】特開昭58−8003号公報
【特許文献4】特開昭63−35504号公報
【特許文献5】特開平11−292706号公報
【特許文献6】特公平6−76282号公報
【特許文献7】特開平8−175903号公報
【特許文献8】特開2001−233706号公報
【特許文献9】特開2006−241002号公報
【特許文献10】特開2006−131673号公報
【特許文献11】特開平8−143402号公報
【特許文献12】特開平8−40804号公報
【特許文献13】再公表2004−89091号公報
【特許文献14】特開平8−333203号公報
【特許文献15】特開2001−294501号公報
【特許文献16】特開2003−286105号公報
【特許文献17】特開昭62−4209号公報
【特許文献18】特開平5−65202号公報
【特許文献19】特開2001−72506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、農薬活性成分の性状に係わりなく常に農薬活性成分の溶出を制御することができる農薬粒剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、SiO含有量が50%以上であり、粒径が3〜12μmであり、かつ比表面積が300m/g以下であるセピオライトを用いると優れた徐放効果を示すこと、並びに結合剤としてポリビニルアルコールまたは結晶セルロースのいずれかを用いると農薬活性成分の徐放効果がより優れたものになることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の内容をその要旨とするものである。
(1)a)農薬活性成分、b)SiO含有量が50%以上であり、粒径が3〜12μmであり、かつ比表面積が300m/g以下であるセピオライト、c)結合剤、並びにd)界面活性剤を含有することを特徴とする徐放性農薬粒剤。
(2)結合剤がポリビニルアルコールまたは結晶セルロースのいずれかであることを特徴とする、(1)に記載の徐放性農薬粒剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の農薬粒剤は、種々の水溶性および非水溶性の農薬活性成分の溶出を制御できるため、作物に対する薬害の回避が可能であり、長期にわたり薬効を保つことができる。また、特殊な技術を必要とせず、容易に製造することができるためにコスト的にも安価な徐放性粒剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の徐放性農薬粒剤についてより詳細に説明する。
<(a)農薬活性成分について>
本発明で用いる農薬活性成分は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤および植物生長調節剤などの一般に農薬の活性成分として使用されるものであれば特に限定されず、農薬活性成分を1種または2種以上併用しても何らかまわない。このような農薬活性成分としては次のものが挙げられる。
例えば、殺虫剤として有機リン系(ダイアジノンなど)、カーバメート系、ピレスロイド系、ベンゾイルヒドラジド系、ネオニコチノイド系、トリアジン系、チオウレア系、オキサダイアジン系、フェニルピラゾール系、ネライストキシン系およびベンゾイルフェニル尿素系の殺虫剤、天然殺虫剤、生物農薬、殺ダニ剤および殺線虫剤などが挙げられる。
殺菌剤としては、例えば、無機銅類、有機銅類、無機硫黄剤、有機硫黄剤や、有機リン系、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系(フルトラニルなど)、トリアゾール系、イミダゾール系、ピペラジン系、メトキシアクリレート系、オキサゾリジンジオン系、ストロビルリン系、アニリノピリミジン系、ジチオラン系、キノキサリン系、アミノピリミジン系、フェニルピロール系、トリアジン系、シアノアセトアミド系、グアニジン系の殺菌剤、抗生物質系殺菌剤(カスガマイシンなど)、天然物殺菌剤および生物農薬などが挙げられる。
除草剤としては、例えば、フェノキシ酸系、カーバメート系、酸アミド系(ブタクロールなど)、アセトアニリド系、尿素系、スルホニル尿素系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系、ダイアジン系、ダイアゾール系、ビピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、イミダゾリノン系、脂肪酸系、有機リン系、アミノ酸系、ジフェニルエーテル系、ニトリル系、シクロヘキサンジオン系、フェニルフタルイミド系、シネオール系、インダンジオン系、ベンゾフラン系、トリアゾロピリミジン系、オキサジノン系、アリルトリアゾリノン系、イソウラゾール系、ピリミジニルチオフタリド系、トリアゾリノン系、無機除草剤、生物農薬などが挙げられる。
植物生長調節剤としては、例えば、エチレン系、オーキシン系、サイトカイニン系、ジベレリン系などが挙げられる。
なお、これらに含まれる個々の具体的な農薬活性成分は、例えば「農薬ハンドブック2005年版」(財団法人 日本植物防疫協会、平成17年10月11日発行)、「SHIBUYA INDEX 9th Edition」(平成13年12月15日発行)、「The Pesticide Manual Eleventh Edition」(British Crop Protection Council 発行)などに記載されている。
上記農薬活性成分の添加量は、農薬粒剤の全量に対して、通常0.01〜40重量部、好ましくは0.1〜30重量部である。
【0010】
<(b)セピオライトについて>
本発明の農薬粒剤は、SiO含有量が50%以上であり、粒径が3〜12μmであり、かつ比表面積が300m/g以下である三つの条件を同時に満たすセピオライトが必須成分である。
セピオライトは、天然に産出する粘度鉱物であり、その化学構造式はMgSi1230(OH)(OH8HOで示される。セピオライトは、タルクを互い違いに積み重ねた結晶構造をしており、繊維中に約5.6×11.0Åの内部トンネル(ゼオライト孔)を有していることが特徴である。これらのトンネルは粒子表面に開孔しており、このトンネルによって、特異的な吸着効果を付与させている。また、粒子長に沿って、多くのシラノール基が存在しており、これらもセピオライトの吸着効果に大きく寄与している。
液状の農薬活性成分は、セピオライトに吸着されることにより、その水中への溶出を抑制させることができる。また、固形の農薬活性成分は、粒剤より一度溶出した活性成分が、セピオライトに再度吸着され、結果、水中への溶出を抑制させることができる。
【0011】
セピオライトは、産地によって、物理性にある程度の偏差が認められるが、本発明において使用できるセピオライトは以下の条件を同時に満たす必要がある。
1)SiO含有量
SiO含有量が50%未満のものを用いると、シラノール基の含有量が少ないため、セピオライトの吸着効果が劣ってしまい、十分な徐放効果が得られない。よって、SiO含有量が50%以上のセピオライトを用いる必要がある。このうち、農薬活性成分の溶出をより強く抑制するには、SiO含有量が60%以上のものがより望ましい。
2)粒径
セピオライトの粒径は、産地によって、約5μm(スペイン産)、約30μmおよび約50μm(いずれも中国産)などに分けられるが、本発明においては、粒径 3〜12μm(レーザー法:堀場LA−950にて測定)のものを用いる必要がある。12μmより大きな粒径のものを用いると、シラノール基による吸着力よりも、セピオライトの水中での膨潤性が優り、充分な徐放効果が得られなくなる。また、3μm未満のものを用いるとセピオライト粒子が細かすぎるため、セピオライトの特異的な吸着効果が得られない。
3)比表面積
比表面積が300m/g(BET法にて測定)よりも大きいセピオライトを用いた場合、セピオライトによる吸着性が著しく強くなり、有効成分の溶出が必要以上に抑制され、逆に効果面不足を起こすため、本発明には適さない。よって、本発明には、比表面積は300m/g以下の物理性を有するセピオライトを用いる必要がある。
【0012】
本発明においては、これら1)〜3)のいずれの条件も満たすように調製してもよいが、一般的には市販品を用いるのが簡便である。本発明で使用できるセピオライトの例としては、ミルコンS−15(昭和KDE株式会社製:SiO含有量 62.5%、粒径 10.9μm、比表面積250m/g)、ミルコンG−200(昭和KDE株式会社製:SiO含有量 53.0%、粒径 10.2μm、比表面積230m/g)などが挙げられる。
これらセピオライトの添加量は、特に限定されないが、通常0.1〜80重量部の範囲であり、好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは、3〜30重量部の範囲である。
【0013】
<(c)結合剤について>
本発明は、さらに結合剤を用いることで、より粒の硬度が強くなり、溶出制御効果がより向上する。このような結合剤としては、例えば次のものが挙げられる。
水溶性高分子としては、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、カルボキシメチルデンプン、デキストリン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、マンナン、ペクチン、トラガントガム、マンニット、ソルビトール、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、キサンタンガム、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、エチレン・プロピレンブロックポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、水溶性高分子以外のものとしては、エチルセルロース、結晶セルロース、コーンファイバー、キチン、キトサンなどが挙げられる。この中で、ポリビニルアルコールまたは結晶セルロースを用いると、農薬活性成分の徐放化効果がより優れたものとなる。
【0014】
本発明に用いられるポリビニルアルコールとしては、重合度が500〜2500、ケン化度が85モル%以上100モル%未満のものが望ましい。このようなポリビニルアルコールとしては、例えば、部分ケン化型の日本・酢ビ ポバール JP−05(日本酢ビ ポバール株式会社 平均重合度 500、ケン化度 87〜89モル%)、ゴーセノールGH−17(日本合成株式会社 平均重合度 1700、ケン化度 86.5〜89.0モル%)、あるいは完全ケン化型のクラレ ポバール PVA−103(株式会社クラレ 平均重合度 500、ケン化度 98.0〜99.0モル%)、ゴーセノールNH−18 (日本合成株式会社 平均重合度 1800、ケン化度 98.0〜99.0モル%)などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。このうち、農薬活性成分の溶出を強く抑制するには、重合度が1500〜2000、ケン化度が98モル%以上のものがより望ましい。
本発明で使用する結晶セルロースは、植物のパルプ繊維を原料とし、そのセルロース結晶領域を取り出して精製したものであり、例えばパルプから取り出した結晶領域をそのまま乾燥させたセオラスTG−101、セオラスTG−301(旭化成工業株式会社)、KCフロック W−100G(日本製紙ケミカル株式会社)、VIVAPUR 101(東亜化成株式会社)、結晶セルロースの表面を水溶性高分子で特殊コーティングしたセオラスRC−N81、セオラスRC−591(旭化成工業株式会社)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられるポリビニルアルコールまたは結晶セルロースの、製剤中への添加量は、0.2〜10部、好ましくは0.5〜8部、さらに好ましくは1〜5部である。
【0015】
<(d)界面活性剤について>
本発明では、製造時の排出性の向上や溶出制御効果の安定化のために界面活性剤が必須である。本発明に使用できる界面活性剤としては、次のようなものをあげることができる。
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、シリコーン系界面活性剤(ポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサンコポリマー)、アセチレングリコール系界面活性剤(2、4、7、9−テトラメチル−デシン−4,7−ジオールなど)などが挙げられる。
【0016】
また、陰イオン性界面活性剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルホスフェート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど)、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられる。
また、陽イオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などが挙げられる。
【0017】
また、両性界面活性剤としては、ジアルキルアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタインなどが挙げられる。
本発明で使用できる界面活性剤としてはこれらの例示に限られるものではなく、1種または2種以上を併用してもかまわない。
この中で、陰イオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびジアルキルスルホサクシネートを用いると、造粒性が改善され、徐放化の効果も高くなる。
これらの界面活性剤は、1種類あるいは2種類以上を併用してよく、そして界面活性剤の製剤中への添加量は、一般的に製剤全体の0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0018】
本発明の農薬粒剤は、上記の必須成分のほかに、必要に応じて、セピオライト以外の担体、溶剤、酸化防止剤、紫外線防止剤などの安定化剤、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、p−クロロ−m−キシレノール、p−オキシ安息香酸ブチルなどの防腐防バイ剤、クエン酸、炭酸マグネシウム、などのpH調整剤などをあげることができる。
本試験で用いることができる担体としては、例えば次のものを挙げることができる。すなわち、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ジークライト、セリサイト、酸性白土、珪石、ケイソウ土、軽石、ゼオライト、バーミキュライト、アタパルジャイト、シラスバルーンを粉砕したガラス質粉末、ホワイトカーボン、モミガラ、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、などの単糖類、二糖類、多糖類、尿素、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、ベントナイトなどが挙げられる。
【0019】
本発明における農薬粒剤は、例えば、農薬の製剤化において通常用いられる造粒法によって得ることができる。
造粒法としては、押出造粒法、転動造粒法、転動流動造粒法、流動層造粒法、攪拌混合造粒法、圧縮造粒法および打錠法などを挙げることができる。円柱状の造粒物を得る場合は、押出造粒法が好ましく、また球状の造粒物を得る場合は、転動造粒法および撹拌混合造粒法が好ましい。
押出造粒法においては、まず農薬活性成分と界面活性剤、さらに必要に応じて、結合剤、各種の補助剤、固体担体を添加して、ジュースミキサー、ハンマーミル、レディゲミキサーまたはリボンミキサーなどを用いて均一に混合する。この混合物に水を添加して双腕ニーダーまたはリボンミキサーなどを用いて混練する。
次に、この混合物をバスケット型造粒機、スクリュー式造粒機などの押出造粒機を用いて造粒する。造粒時の押出し穴径(スクリーン径)は通常0.3〜5mm、好ましくは0.5〜2mmの範囲である。得られた造粒物をマルメライザーなどで整粒した後、流動層乾燥機やベッド式乾燥機などを用いて乾燥させ、次いで篩別することにより本発明で用いられる農薬粒剤が得られる。
また、農薬活性成分を添加せずに上記の方法で粒剤を調製した後、農薬活性成分を含浸させる、スプレー等で吹き付ける、などして調製してもよい。
本発明における農薬粒剤は、田面水中にそのまま散布して使用するか、あるいは畑にそのまま均一散布すればよい。また、植穴処理剤あるいは箱処理剤としても使用することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例において「部」は、「重量部」の意味である。
[実施例1]
カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤)10部、ミルコンS−15 5部、結合剤としてデキストリン 5部、界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム 0.5部、担体としてクレー79.5部をハンマーミルで粉砕混合した。得られた粉体混合物に、水25%を加えて混練した。次にこの加水混練物を孔径1.2mmのバスケット型スクリーンをつけた押出造粒機で造粒した。得られた造粒物を整粒した後、流動層乾燥機で乾燥した。これを1700μm〜850μmで篩別して粒剤形態の本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
実施例2以下においては、混練時の水の量は適時調整した。
【0021】
[実施例2]
実施例1において、ミルコンS−15 5部をミルコンG−200 5部に、結合剤をデキストリン 5部からカルボキシメチルセルロース 3部に、界面活性剤をラウリル硫酸ナトリウム 0.5部からポリアクリル酸ナトリウム 5部に、担体はクレー79.5部からベントナイト40部にタルク37部とし、実施例1と同様の操作で調製し、本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
[実施例3]
実施例1において、結合剤をデキストリン 5部から日本酢ビ ポバールJP−05(ポリビニルアルコール 平均重合度500 ケン化87〜89モル% 日本酢ビ ポバール株式会社)1.5部に、クレーを79.5部から83部とし、実施例1と同様の操作で調製し、本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
[実施例4]
実施例1において、結合剤をデキストリン 5部から結晶セルロース 5部とし、実施例1と同様の操作で調製し、本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
【0022】
[実施例5]
実施例3において、界面活性剤をラウリル硫酸ナトリウム0.5部からポリオキシアルキレンアルキルエーテル 0.5部とし、実施例3と同様の操作で調製し、本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
[実施例6]
実施例3において、界面活性剤をラウリル硫酸ナトリウム 0.5部からトデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2.5部に、クレーを83部から81部とし、実施例3と同様の操作で調製し、本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
[実施例7]
実施例6において、ミルコンS−15を5部から1部に、クレーを81部から85部に変えた以外は、実施例6と同様の操作で調製し、本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
[実施例8]
実施例6において、ミルコンS−15を5部から10部に、クレーを81部から76部に変えた以外は、実施例6と同様の操作で調製し、本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
【0023】
[実施例9]
ブタクロール(酸アミド系除草剤)10部をホワイトカーボン10部に吸油させたのち、ミルコンG−200 5部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム 0.5部、ポリカルボン酸金属塩 3部、担体としてクレー70.5部をハンマーミルで粉砕混合した。得られた粉体混合物に、結合剤として、ゴーセノールNH−18(ポリビニルアルコール 平均重合度1800 ケン化度98.0〜99.0モル% 日本合成株式会社) 1部および水25%を加えて混練した。次にこの加水混練物を実施例1と同様の操作で調製し、本発明の徐放性粒剤を得た。
[実施例10]
実施例9において、クレーを70.5部から68.5部に、ゴーセノールNH−18を1部から3部に変えた以外は、実施例9と同様の操作で調製し、本発明の徐放性粒剤を得た。
[実施例11]
実施例9において、クレーを70.5部から66.5部に、ゴーセノールNH−18を1部から5部に変えた以外は、実施例9と同様の操作で調製し、本発明の徐放性粒剤を得た。
【0024】
[実施例12]
ダイアジノン(有機リン系殺虫剤)10部をホワイトカーボン10部に給油させたのち、ミルコンG−200を5部、結合剤として結晶セルロース5部、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2.5部、担体としてクレー67.5部を添加し、実施例1と同様の操作で調製し、本発明の徐放性粒剤を得た。
[実施例13]
実施例12において、ミルコンG−200 5部をミルコンS−15 5部に変えた以外は、実施例12と同様の操作で調製し、本発明の徐放性粒剤を得た。
【0025】
[実施例14]
フルトラニル(酸アミド系殺菌剤) 5部、ミルコンS−15 5部、結合剤として結晶セルロース 5部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム 0.5部、ポリカルボン酸金属塩 3部、担体としてクレー81.5部を添加し、実施例1と同様の操作で調製し、本発明の徐放性粒剤を得た。
[実施例15]
実施例14において、界面活性剤をラウリル硫酸ナトリウム0.5部、ポリカルボン酸金属塩 3部からジオクチルスルホサクシネート 0.5部、ポリアクリル酸ナトリウム 3部に、担体をクレー81.5部から炭酸カルシウム 81.5部に変えた以外は、実施例14と同様の操作で調製し、本発明の徐放性粒剤を得た。
【0026】
[比較例1]
実施例1のデキストリン5部を除き、クレーを79.5部から84.5部に変えた以外は、実施例1と同様の操作で調製し、比較例1の徐放性粒剤を得た。
[比較例2]
実施例2のミルコンG−200 5部を除き、タルクを37部から42部に変えた以外は、実施例2と同様の操作で調製し、比較例2の徐放性粒剤を得た。
[比較例3]
実施例1のラウリル硫酸ナトリウム 0.5部を除き、クレーを79.5部から80部に変えた以外は、実施例1と同様の操作で調製し、比較例3の徐放性粒剤を得た。
[比較例4]
実施例6のミルコンS−15 5部を、パンゲルS−9 5部に変えた以外は、実施例6と同様の操作で調製し、比較例4の徐放性粒剤を得た。
【0027】
[比較例5]
実施例6のミルコンS−15 5部を、ミルコンLS 5部に変えた以外は、実施例6と同様の操作で調製し、比較例5の徐放性粒剤を得た。
[比較例6]
実施例6のミルコンS−15 5部を、ミルコンMS−2−2 5部に変えた以外は、実施例6と同様の操作で調製し、比較例6の徐放性粒剤を得た。
[比較例7]
実施例6のミルコンS−15 5部を、ミルコンE 5部に変えた以外は、実施例6と同様の操作で調製し、比較例7の徐放性粒剤を得た。
[比較例8]
実施例10のミルコンG−200 5部をミルコンLS 5部に変えた以外は、実施例10と同様の操作で調製し、比較例8の徐放性粒剤を得た。
【0028】
[比較例9]
実施例12のミルコンG−200 5部を除き、クレーを67.5部から72.5部に変えた以外は、実施例12と同様の操作で調製し、比較例9の徐放性粒剤を得た。
[比較例10]
実施例15のミルコンS−15 5部をミルコンLS 5部に変えた以外は、実施例15と同様の操作で調製し、比較例10の徐放性粒剤を得た。
[比較例11]
カスガマイシン 10部、結合剤としてカルボキシメチルセルロース 3部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム 0.5部、担体としてクレー71.5部、さらにパラフィンワックス 15部を添加し、実施例1と同様の操作で調製し、比較例11の徐放性粒剤を得た。
[比較例12]
ブタクロール10部をホワイトカーボン10部に吸油させたのち、界面活性剤としてステアリルエーテルリン酸エステルカリウム塩 2部、担体としてクレー 75部を加え、ハンマーミルで粉砕混合した。得られた粉体混合物に、結合剤として、ゴーセノールNH−18(ポリビニルアルコール 平均重合度1800 ケン化度98.0〜99.0モル% 日本合成株式会社) 3部および水25%を加えて混練した。次にこの加水混練物を実施例1と同様の操作で調製し、比較例12の徐放性粒剤を得た。
【0029】
次に試験例により、本発明の農薬粒剤の有用性を示す。
[試験例]水中溶出率測定試験
1000ml容量の共栓付き三角フラスコに3度硬水1000mlを入れ、これに上記実施例、比較例で調製した徐放性粒剤100mgを投入し、この共栓付き三角フラスコを25℃恒温室で静置した。静置1日後、3日後、および7日後にそれぞれ試験液を5mlずつ採取した。試験液中の農薬活性成分濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)などにより定量し(分解物が生成した場合には、分解物も定量し、農薬活性成分濃度に換算して合算する)、溶出率を下記式により算出した。その試験結果を表1(実施例)および表2(比較例)に示す。
【0030】
【数1】


【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表1および表2に示された試験結果から明らかなように、比較例1〜3、および比較例5〜10の1日後の各農薬成分の溶出率が66〜100%であるのに対し、実施例1〜15は、1日後の各農薬活性成分の溶出率が8〜35%と溶出を抑えており、本発明の効果が顕著に示された。一方、SiO含有量が60.5%、粒径 15.1μm、比表面積が320m/gであるパンゲルS−9を用いた比較例4、および、農薬活性成分の徐放化に関する従来技術である、特許文献8および9を元に調製した、比較例11および比較例12は、いずれも溶出抑制効果が認められたが、その一方で、7日後まで各有効成分の溶出が強く抑制されており、生物効果不足が懸念される。しかし、実施例1〜15は、各有効成分の溶出率が3日後は15〜78%、7日後では98〜100%と経時的に溶出が上がっていく傾向が認められ、これにより生物効果も充分に発揮されるという点で、本発明の優位性が認められた。
また、実施例1(1日後 溶出率 26%)の結合剤をポリビニルアルコールおよび結晶セルロースにする(実施例3、4)ことにより、1日後の溶出が7%、15%とさらに強い溶出抑制効果を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)農薬活性成分、b)SiO含有量が50%以上であり、粒径が3〜12μmであり、かつ比表面積が300m/g以下であるセピオライト、c)結合剤、並びにd)界面活性剤を含有することを特徴とする徐放性農薬粒剤。
【請求項2】
結合剤がポリビニルアルコールまたは結晶セルロースのいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性農薬粒剤。

【公開番号】特開2010−18527(P2010−18527A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178571(P2008−178571)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】