説明

農薬組成物

【課題】
安全に使用でき、かつ各種の植物病害、特にいもち病に対し優れた防除効果を有する農薬組成物を提供する
【解決手段】
(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテル、(2)ポリカルボン酸塩、および(3)農薬活性成分を含有することを特徴とする農薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の2種の界面活性剤および農薬活性成分を含有する農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農園芸用作物を栽培するにあたり、雑草や有害生物の防除を目的としてさまざまな農薬組成物が使用されている。農薬組成物は、通常、農薬活性成分、及び該農薬活性成分の安定した効力発揮や効力増強を目的として界面活性成分を含有してなる。
【0003】
しかし、その防除効力が不十分であったり、薬剤耐性の病原菌の出現によりその使用が制限されたり、植物体に薬害や汚染を生じたり、あるいは人畜魚類に対する毒性や環境への影響があること等から、必ずしも満足すべき防除剤とは言い難いものが少なくない。
従って、安全に使用でき、雑草や有害生物に対する高い防除効果が発揮される農薬組成物の開発が望まれている。
【0004】
ところで、水稲の最重要病害にいもち病がある。いもち病に罹病した稲は生育が遅れたり、上米率が低下したり、茶米や死米が増加する。いもち病の防除時期は、葉いもち病を防除対象とする生育期中期と、穂いもち病を防除対象とする生育期後期に二分される。しかしながら、従来においては、育苗時に防除剤を施用することにより、葉いもち病を防除することができるが、穂いもち病までは防除することが困難であった。
【0005】
本発明に関連して、特許文献1には、いもち病予防効果を有する予防殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有することを特徴とするいもち病防除剤組成物が提案されている。
【特許文献1】特開2003−104820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、安全に使用でき、かつ、雑草や植物病害に対し優れた防除効果を有する農薬組成物を提供することを課題とする。特に、本発明は、安全に使用でき、かつ、各種の植物病害、特にいもち病(葉いもち病及び穂いもち病)に対して優れた防除効果を有する農薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、農薬活性成分および界面活性剤を含有する農薬組成物について鋭意研究を重ねた結果、界面活性剤として、(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテルと(2)ポリカルボン酸塩を含有する農薬組成物は、安全に使用でき、かつ、雑草や植物病害の防除、特に、いもち病(葉いもち病及び穂いもち病)に対して優れた防除効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテル、(2)ポリカルボン酸塩、および(3)農薬活性成分を含有することを特徴とする農薬組成物が提供される。
【0009】
本発明の農薬組成物においては、前記(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテルが、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルであるのが好ましい。
本発明の農薬組成物は水和剤であることが好ましい。
また、本発明の農薬組成物においては、前記(3)農薬活性成分が農園芸用殺菌活性成分であることが好ましく、チオファネートメチルおよびトリシクラゾールであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の農薬組成物は、安全に使用でき、かつ、雑草や植物病害に対し優れた防除効果を有する。特に、本発明の農薬組成物は、各種の植物病害、特にいもち病(葉いもち病及び穂いもち病)に対して優れた防除効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)農薬組成物
本発明の農薬組成物は、(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテル、(2)ポリカルボン酸塩、および(3)農薬活性成分を含有することを特徴とする。
【0012】
(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテル
本発明の農薬組成物に用いるポリオキシアルキレンアリールエーテルのポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、並びに、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンの組み合わせ等が挙げられる。
【0013】
ポリオキシアルキレンアリールエーテルのアリールとしては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;C8〜12アルキルフェニル基、ジC8〜C12アルキルフェニル基等のアルキルアリール基;ベンジルフェニル基、スチリルフェニル基、ジスチリルフェニル基、トリスチリルフェニル基等のアリールアリール基;等が挙げられる。
【0014】
ポリオキシアルキレンアリールエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレン(C8〜C12)アルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジ(C8〜C12)アルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(C8〜C12)アルキルフェニルエーテルホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0015】
本発明の農薬組成物においては、これらのポリオキシアルキレンアリールエーテルを1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルが特に好ましい。
【0016】
本発明においては、ポリオキシアルキレンアリールエーテルとして、市販品をそのまま用いることができる。かかる市販品としては、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(Soprophor BSU、ローディア日華社製)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル(Soprophor 796/P、ローディア日華社製)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル(Antarox461/P、ローディア日華社製)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(ノナール109、東邦化学工業社製)等が挙げられる。
【0017】
(2)ポリカルボン酸塩
本発明の農薬組成物に用いるポリカルボン酸塩は、カルボン酸を構造単位とする分子量1,000〜50,000程度の重合体の塩である。例えば、(a)エチレン系不飽和モノカルボン酸重合物の塩、(b)エチレン系不飽和モノカルボン酸とエチレン系不飽和ジカルボン酸もしくはその無水物との共重合体の塩、(c)エチレン系不飽和モノカルボン酸又はエチレン系不飽和ジカルボン酸もしくはその無水物と、C2〜C6アルケンとの共重合体の塩、(d)エチレン系不飽和モノカルボン酸又はエチレン系不飽和ジカルボン酸もしくはその無水物と、芳香族ビニル化合物との共重合体の塩等が挙げられる。
【0018】
エチレン系不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。
エチレン系不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
C2〜C6アルケンとしては、エチレン、プロペン、ブチレン、イソブチレン、ジイソブチレン等が挙げられる。
また、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等が挙げられる。
【0019】
ポリカルボン酸塩としては、ポリカルボン酸の、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩;モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン等のアミン塩;及びアンモニウム塩;等が挙げられる。
【0020】
ポリカルボン酸塩の具体例としては、ポリアクリル酸の塩、アクリル酸とマレイン酸の共重合体の塩、イソブチレンと無水マレイン酸の共重合体の塩、アクリル酸とイタコン酸の共重合体の塩、メタアクリル酸とイタコン酸の共重合体の塩、マレイン酸とスチレンの共重合体の塩、マレイン酸とジイソブチレンの共重合体の塩等が挙げられる。
【0021】
本発明の農薬組成物においては、これらのポリカルボン酸塩を1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、マレイン酸とジイソブチレンの共重合体の塩が好ましい。
【0022】
本発明においては、ポリカルボン酸塩として、市販のポリカルボン酸塩をそのまま用いることができる。かかる市販のポリカルボン酸塩としては、イソブチレンと無水マレイン酸共重合体の塩(イソバン600SF35、クラレ社製)、イソブチレンと無水マレイン酸共重合体の塩(トキサノンGR31A、三洋化成社製)、ポリアクリル酸塩(ボイズ530、花王社製)、ポリアクリル酸アンモニウム(ボイズ532A、花王社製)、アクリル酸とマレイン酸の共重合体の塩(ボイズ520、ボイズ521、花王社製)、無水マレイン酸とジイソブチレンの共重合体の塩(Newkalgen−WG−5、竹本油脂社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明の農薬組成物における、前記(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテルと(2)ポリカルボン酸塩の含有重量比は、通常8:2〜3:7、好ましくは7:3〜5:5である。
【0024】
前記(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテルと(2)ポリカルボン酸塩の総使用量は、農薬組成物全体に対し、通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0025】
(3)農薬活性成分
本発明の農薬組成物は、農薬活性成分を含有する。
農薬活性成分としては、特に制約はなく、農園芸用殺菌活性成分、農園芸用殺虫活性成分、農園芸用殺ダニ活性成分、除草活性成分、植物成長調節活性成分等が挙げられる。
具体的には以下のものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
(殺菌活性成分)
1,2−ビス(3−メトキシカルボニル−2−チオウレイド)ベンゼン(一般名:チオファネートメチル)、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]ベンゾチアゾール(トリシクラゾール)、メチル1−(ブチルカルボニル)−2−ベンジミダゾール(一般名:ベノミル)、(E)−4−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−N−(1−イミダゾール−1−イル−2−プロポキシエチリデン−o−トルイジン(一般名:トリフルミゾール)、3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−P−トルイジン(一般名:フルアジナム)、メチル−(E)−2−メトキシイミノ[α−(o−トリルオキシ)−o−トリル]アセタート(一般名:クレソキシムメチル)。
【0027】
(殺虫活性成分)
(E)−N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N−シアノ−N−メチルアセトアミジン(一般名:アセタミプリド)、(2)1−(6−クロル−3−ピリジルメチル)−N−ニトロ(イミダゾリジン−2−イリデン)アミン(一般名;イミダクロプリド)、N−tert−ブチル−N−(3,5−ジメチルベンゾイル)−3−メトキシ−2−メチルベンゾヒドラジッド(一般名:メトキシフェノジド)、1−ナフチル−N−メチルカーバメート(一般名:NAC)、1−(2,6−ジクロル−4−トリフルオロメチル)−3−シアノ−4−トリフルオロメチルスルフェニル−5−アミノピラゾール(一般名:フィプロニル)。
【0028】
(殺ダニ活性成分)
trans−5−(4−クロロフェニル)−N−シクロヘキシル−4−メチル−2−オキソチアゾリジン−3−カルボキサミド(一般名:ヘキシチアゾクス)、N−(4−tert−ブチルベンジル)−4−クロロ−3−エチル−1−メチルピラゾール−5−カルボキサミド(一般名:デブフェンピラド)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート(一般名:フェンプロパトリン)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル−N−(2−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)−D−バリナート(一般名:フルバリネート)。
【0029】
(除草活性成分)
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(一般名:DCMU)、(2)S−(4−クロロベンジル)−N,N―ジエチルチオカーバメート(一般名:ベンチオカーブ)。
【0030】
(植物成長調節活性成分)
N−(ジメチルアミノ)−スクシンアミド酸(一般名:ダミノジッド)。
【0031】
これらの農薬活性成分は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、これらの中でも、農薬活性成分として農園芸用殺菌活性成分を用いるのが好ましく、チオファネートメチル〔1,2−ビス(3−メトキシカルボニル−2−チオウレイド)ベンゼン〕、およびトリシクラゾール(5−メチル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]ベンゾチアゾール)を併用するのが特に好ましい。
【0032】
本発明の農薬組成物における農薬活性成分の含有量は、通常、0.01〜90重量%、好ましくは50〜85重量%である。
【0033】
農薬活性成分として、チオファネートメチルおよびトリシクラゾールを併用する場合、その含有重量比は、特に限定されないが、1:10〜10:1の範囲であるのが好ましい。本発明の農薬組成物においてこのような重量比でチオファネートメチルとトリシクラゾールを用いると、単に混合したときに得られる相加効果以上の優れた効果を得ることができる。
【0034】
本発明の農薬組成物は、使用目的等に応じて種々の製剤とすることができる。すなわち、農薬活性成分、ポリオキシアルキレンアリールエーテルおよびポリカルボン酸塩に、適当な担体および補助剤を配合して、常法に従い製剤形態にして用いることができる。かかる製剤形態としては、水和剤(WP)、乳剤、フロアブル剤、水溶剤、顆粒水和剤、液剤、エマルジョン剤、懸濁液剤、粉剤、泡沫剤、ペースト、粒剤、エアゾール、マイクロカプセル、種子用被覆剤、燻煙剤等が挙げられる。これらの中でも、いもち病防除剤として優れた防除効果を得ることができる上で水和剤が好ましい。
【0035】
水和剤は、例えば、農薬活性成分、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリカルボン酸塩、増量剤および所望により他の添加剤を混合し、微粉末とすることによって調製することができる。
【0036】
増量剤としては、例えば、タルク、クレー、ベントナイト、カオリナイトクレー、モンモリナイト、パイロフェライト、酸性白土、珪藻土、バーミキュライト、りん灰石、石膏、雲母、珪砂、炭酸カルシウム、軽石粉などの鉱石粉末;ホワイトカーボン(非晶質シリカ)、二酸化チタン等の合成品;結晶性セルロース、デンプン、木粉、コルク、コーヒー殻などの植物性粉末;ポリ塩化ビニル、石油樹脂などの高分子化合物;硫安、燐安、硝安、尿素、塩安、塩化カリウムなどの化学肥料;などが挙げられる。
これらの増量剤は、1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
増量剤の使用量は、農薬組成物全体に対して、通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0038】
他の添加剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、アラビアゴム、ポリビニルアセテート、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ等の各種補助剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等のような安定化剤;ポリオキシアルキレンアリールエーテルおよびポリカルボン酸塩以外の他の界面活性剤;等が挙げられる。
【0039】
水和剤の平均粒子径は、特に制約はないが、優れた取り扱い性および水希釈物性を得る観点から、10〜100μmであるのが好ましい。
【0040】
本発明の農薬組成物は、他の活性化合物、例えば殺虫剤、毒餌、殺菌剤、殺虫・殺ダニ剤、殺センチュウ剤、殺カビ剤、生長調整剤、除草剤または共力剤の一種または二種以上と併用してもよい。
【0041】
本発明に係る農薬組成物は、広範囲な植物病害の防除に利用できる。その代表例として、下記のものが挙げられる。
イネ いもち病 (Pyricularia oryzae)
紋枯病 (Rhizoctonia solani)
馬鹿苗病 (Gibberella fujikuroi)
ごま葉枯病 (Cochliobolus miyabeanus)
オオムギ 裸黒穂病 (Ustilago nuda)
コムギ 赤かび病 (Gibberella zeae)
赤さび病 (Puccinia recondita)
眼紋病 (Pseudocercosporella herpotrichoides)
【0042】
ふ枯病 (Leptosphaeria nodorum)
うどんこ病 (Erysiphe graminis f.sp.tritici)
紅色雪腐病 (Micronectriella nivalis)
インゲン 灰色かび病 (Botrytis cinerea)
菌核病 (Sclerotinia sclerotiorum)
アズキ 灰色かび病 (Botrytis cinerea)
菌核病 (Sclerotinia sclerotiorum)
ダイズ 菌核病 (Sclerotinia sclerotiorum)
ラッカセイ 褐斑病 (Mycosphaerella arachidis)
テンサイ 褐斑病 (Cercospora beticola)
キュウリ うどんこ病 (Sphaerotheca fuliginea)
菌核病 (Sclerotinia sclerotiorum)
灰色かび病 (Botrytis cinerea)
トマト 葉かび病 (Cladosporium fulvum)
灰色かび病 (Botrytis cinerea)
ナス 黒枯病 (Corynespora melongenae)
灰色かび病 (Botrytis cinerea)
タマネギ 灰色腐敗病 (Botrytis allii)
イチゴ うどんこ病 (Sohaerotheca humuli)
灰色かび病 (Botrytis cinerea)
リンゴ うどんこ病 (Podosphaera leucotricha)
黒星病 (Venturia inaequalis)
モニリア病 (Monilinia mali)
カキ 炭そ病 (Gloeosporium kaki)
モモ 灰星病 (Monilinia fructicola)
ブドウ うどんこ病 (Uncinula necator)
べと病 (Plasmopara viticola)
灰色かび病 (Botrytis cinerea)
ナシ 赤星病 (Gymnosporangium asiaticum)
黒斑病 (Alternaria kikuchiana)
チャ 輪斑病 (Pestalotia theae)
炭そ病 (Colletotrichum theae−sinensis)
カンキツ そうか病 (Elisinoe fawcetti)
青かび病 (Pennisillium italicum)
灰色かび病 (Botrytis cinerea)
西洋シバ 雪腐大粒菌核病 (Sclerotinia borealis)
【0043】
これらの中でも、本発明の農薬組成物は、イネいもち病(葉いもち病、穂いもち病)に特に優れた効果を有する。
【0044】
本発明の農薬組成物を農園芸用作物に施用する方法としては、農薬組成物をそのままで、或いは水等で適度に希釈して、植物体、種子、水面または土壌に施用する方法が挙げられる。
【0045】
例えば、農薬組成物を水和剤とした場合は、水で所定の濃度に希釈して、溶解液、懸濁液あるいは乳濁液として使用される。水和剤の施用濃度は、通常1〜1000ppm、好ましくは10〜250ppmである。
【0046】
農薬組成物の施用量は、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、防除対象病害、対象作物等により異なるが、通常1ヘクタール当たり、有効成分量にして1〜1,000g、好ましくは100〜600gである。
施用時期は、対象とする作物等により異なるが、例えば、イネいもち病に対する場合には、開花4週間前から開花時までである。
【0047】
本発明の農薬組成物によれば、種々の作物病害、特にイネいもち病に対して優れた防除効果を得ることができる。また、作物病害防除の適用期間も長い。従って、農薬組成物の施用時期の自由度が高い。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
カオリナイトクレー18.6重量部に、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルと沈降シリカの1:1(重量比)混合物(FPP−03102、日本乳化剤社製)3.0重量部、ポリカルボン酸塩(Newkalgen−WG−5、竹本油脂社製)1.0重量部、チオファネートメチル36.7重量部、およびトリシクラゾール40.7重量部を添加して、リボンブレンダー(1000W×3000L、3.8m、7.5kw、日曹エンジニアリング社製)にて、60分間混合した。
【0050】
得られた混合物を、高速衝撃式微粉砕機(コントラプレックス 250CW、本体側:11200rpm、トビラ側:2800rpm、粉砕能:約180kg/hr、細川ミクロン社製)にて粉砕した。次いで、この粉砕物を、再びリボンブレンダー(1150W×3500L、4.0m、5.5kw、日曹エンジニアリング社製)にて混合した。
【0051】
得られた混合物を、ジェットミル(ULMAX 18BU−9N、空気量:約10Nm/h、粉砕能:約90kg/hr、日曹エンジニアリング社製)にて再び粉砕後、リボンブレンダー(1000W×3000L、4.0m、7.5kw、日曹エンジニアリング社製)にて、60分間混合し、平均粒子径が6.58μmの農薬組成物(水和剤)を調製した(水和剤1)。
【0052】
(実施例2)
実施例1において、チオファネートメチル36.7重量部およびトリシクラゾール40.7重量部の代わりに、トリシクラゾール75.0重量部を用いて、実施例1と同様に農薬組成物(水和剤)を調製した(水和剤2)。
【0053】
(試験例1 イネいもち病防除効果確認試験)
実施例1、2で得られた水和剤1、2につき、イネいもち病に対する防除効果を調べるため、次のような試験を行った。
【0054】
イネ(種類;OM1490)の種を蒔き(180kg/ha)、イネを育て、葉いもち病または穂いもち病を発病させ、ここに、次のタイミングで、前記水和剤を下記表に示す投薬量で散布した。
*葉いもち病に対しては、葉の病害が20%となったとき
*穂いもち病に対しては、開花する7日前
【0055】
イネいもち病(葉いもち病および穂いもち病)に対する水和剤の防除効果を、病害(desease incidence)と、病害指数により評価した。
【0056】
a)葉いもち病
(i)病害(desease incidence)
病害は、水和剤の散布の1日前、散布の7日後、14日後、および21日後に、それぞれ葉いもち病に羅病した葉の数を調べ、次式(1)により算出した数値により評価した。その結果を下記第2表に示す。
【0057】
【数1】

【0058】
【表1】

【0059】
(ii)病害指数
水和剤の散布の1日前、および散布の7日後、14日後、および21日後に、それぞれ50本のイネの上部の3枚の葉を調査した。そして、葉いもち病の病害指数を、下記式(2)により算出した。その結果を下記第3表に示す。
【0060】
【数2】

【0061】
式中、Nは調査した葉の総数を表し、nはスコア1に該当する葉いもち病の葉の枚数を表し、nはスコア3に該当する葉いもち病の葉の枚数を表し、nはスコア5に該当する葉いもち病の葉の枚数を表し、nはスコア7に該当する葉いもち病の葉の枚数を表し、nはスコア9に該当する葉いもち病の葉の枚数を表す。
【0062】
なお、葉いもち病のスコアは、
1:葉への影響が1%未満の場合
3:葉への影響が5%未満の場合
5:葉への影響が25%未満の場合
7:葉への影響が50%未満の場合
9:葉への影響が50%以上の場合
とした。
【0063】
【表2】

【0064】
b)穂いもち病
収穫7日前に、50個の花を調査し、穂いもち病に羅病した穂の数を調べた。そして、穂いもち病の病害を、下記式(3)により算出した。
【0065】
【数3】

【0066】
また、病害指数を、下記式(4)により算出した。その結果を合わせて下記第4表に示す。
【0067】
【数4】

【0068】
式中、Nは調査した花の総数を表し、nはスコア1に該当する穂いもち病の花の個数を表し、nはスコア2に該当する穂いもち病の花の個数を表し、nはスコア3に該当する穂いもち病の花の個数を表し、nはスコア4に該当する穂いもち病の花の個数を表し、nはスコア5に該当する穂いもち病の花の個数を表す。
【0069】
なお、穂いもち病のスコアは、
1:1,2個の小穂が影響を受けている場合
2:小穂への影響が30%未満の場合
3:小穂への影響が30%以上60%以下の場合
4:小穂への影響が60%を超える場合
5:円錐花序への影響が1以上の場合
とした。
【0070】
【表3】

【0071】
以上の結果から、実施例の水和剤は、病害がなく、葉いもち病および穂いもち病のいずれに対しても、優れた防除効果を有することがわかった。
【0072】
(試験例2 薬害試験)
水和剤の薬害を評価すべく、水和剤を散布した2日後、4日後および7日後のイネの状態を観察した。
イネに薬害が認められない場合を「1」、イネが枯死した場合を「9」として、1〜9の9段階で評価した。評価結果を下記第1表に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
本発明の農薬組成物は、従来の殺菌剤組成物等と同様、薬害は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテル、(2)ポリカルボン酸塩、および(3)農薬活性成分を含有することを特徴とする農薬組成物。
【請求項2】
前記(1)ポリオキシアルキレンアリールエーテルが、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項3】
水和剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項4】
前記(3)農薬活性成分が、農園芸用殺菌活性成分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農薬組成物。
【請求項5】
前記(3)農薬活性成分が、チオファネートメチルおよびトリシクラゾールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の農薬組成物。

【公開番号】特開2010−235448(P2010−235448A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204222(P2007−204222)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】