説明

農薬組成物

【課題】農薬殺虫剤による防除効果を維持させる農薬組成物を提供する。
【解決手段】(A)呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤、(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル、であり、(A):(B):(C)=0.1〜70:1:1〜4の含有量比率で含有する農薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防除効果が維持される農薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤と殺虫剤を組み合わせた農薬組成物としては、様々な特許が出願されているが、防除効果の維持面で十分なものはあまり知られていない。ここでいう防除効果の維持とは、防除効果が薬剤感受性等の低下等の影響で低下した防除効果を、感受性低下前の状況まで回復させること、また、効果的な農薬組成物により、防除効果が保持されることをいう。
このような特許のなかでも特許文献1には、ベンゾイルピリジン誘導体またはその塩にエトキシル化脂肪族アミン、シリコン系界面活性剤、クエン酸エステル型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルスルホコハク酸塩及びアルキルポリグルコシドからなる群から選択される少なくとも1種とを含有する殺菌剤組成物が、防除効果を安定化することが示されているが、ベンゾイルピリジン誘導体またはその塩に限定されている。また使用している界面活性剤についても具体的な優れた組成が示されていない。
【0003】
また、特許文献2には、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤と樹脂酸系界面活性剤又は第四級アンモニウム塩系界面活性剤を含有する農薬用効力維持剤組成物が開示されているが、各種殺虫剤との混合で、凝集が生じたり、また、効力維持の面では不十分であった。
【0004】
また、特許文献3には、殺虫活性成分のO,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエートと非イオン性界面活性剤および/または陰イオン性界面活性剤とを含有する固形殺虫組成物が開示されており、陰イオン性として界面活性剤ジアルキルコハク酸塩、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルが例示されているが、殺虫活性成分とジアルキルコハク酸塩とポリオキシエチレンアルキルエーテルとの組成物に関して開示はされていない。
【0005】
また、特許文献4には、殺虫活性成分として環状ケトエノール化合物を有効成分する殺虫組成物が開示されており、組成物の一成分の界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸が例示されていのみであり、ジアルキルスルホコハク酸の効力維持に関する記載はない。
【0006】
一方、特許文献5に、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを、2つの界面活性剤の合計含有量が45〜85質量%、並びに流動点降下用成分を5〜40質量%で含有し、且つ該界面活性剤及び該流動点降下用成分の合計含量が50質量%以上含むアジュバント組成物が開示されている。該組成物は、各種農薬有効成分と共に用い、農薬有効成分を作物表面に均一に付着させることができるアジュバント組成物である。農薬有効成分として、各種殺虫剤の適用が可能であり、薬剤の均一付着性が達成されること、殺虫剤のコテツフロアブルと共に用いられると作物への付着量が増し、防除効果が安定化することが記載されている。しかしながら、該組成物と他の殺虫剤を用いた防除効果に関する、具体的な試験データは開示されていない。また、該組成物と他の殺虫剤を用いるこことにより、その防除効果が顕著に増し、防除効果が維持されるとの記載はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−31163
【特許文献2】特開平8−151302
【特許文献3】特開平9−268108
【特許文献4】特開2001−377760
【特許文献5】WO2008/111482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
農園芸用殺虫剤散布の防除効果の維持は、薬剤散布量の低減による環境負荷の軽減、さらには効率的な農薬殺虫剤による防除に顕著に貢献する。しかしながら、農園芸用殺虫剤の防除効果を効率的に引き出す具体的な農園芸用殺虫剤と界面活性剤の農薬組成物は示されていない。
そこで、本発明では、農園芸用殺虫剤による作物への散布で防除効果が維持した農園芸用殺虫剤と界面活性剤との組み合わせの農薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく検討した結果、
(A)呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤、
(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、
(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル、
であり、(A):(B):(C)=0.1〜70:1:1〜4の含有量比率で含有する農薬組成物を用いることで、対象害虫の防除効果を維持させることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明は、
「(1)(A)呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤、
(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、及び
(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル
(A):(B):(C)=0.1〜70:1:1〜4の含有量比率で含有する農薬組成物
(2)前記ジアルキルスルホコハク酸塩がビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩である(1)に記載の農薬組成物
(3)前記呼吸阻害系殺虫剤が、トルフェンピラド(一般名、4−クロロ−3−エチル−1−メチル−N−[4−(p−トリルオキシ)ベンジル]ピラゾール−5−カルボキサイド)、エマメクチン安息香酸塩(一般名、エマメクチンB1a安息香酸塩、エマメクチンB1b安息香酸塩)、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イルメチルカーボネートである(1)または(2)に記載の農薬組成物
(4)前記有機リン系殺虫剤が、ダイアジノン(一般名、(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオフォスフェート)、アセフェート(一般名、O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート)、MEP(一般名、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート)である(1)または(2)に記載の農薬組成物
(5)前記昆虫生長制御剤系殺虫剤が、クロマフェノジド(一般名、2’−tert−ブチル−5−メチル−2’−(3,5−キシロイル)クロマン−6−カルボヒドラジド)、メトキシフェノジド(一般名、N−tert−ブチル−N’−(3−メトキシ−o−トルオイル)−3,5−キシロヒドラジド)、ノバルロン(一般名、(RS)−1−[3−クロロ−4−(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメトキシエトキシ)フェニル]−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)ウレア)である(1)または(2)に記載の農薬組成物
(6)(1)〜(5)のいずれか一項に記載の農薬組成物に水を添加し、前記(A)呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤が50〜3000ppm、前記(B)ジアルキルスルホコハク酸塩が20〜1000ppm、前記(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテルが40〜2000ppmに希釈されて得られる農薬組成物散布液」に関する。

【発明の効果】
【0011】
本発明の農薬組成物は、これを対象作物に散布することで、農園芸用殺虫剤の効果の維持をもたらし、効率的な農薬防除に貢献する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の農薬組成物、その農薬組成物を散布する方法、殺虫効果を維持させる防除方法についてより詳しく説明する。
【0013】
本発明の農薬組成物の必須成分は、
(A)呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤、
(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、
(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル、
であり、(A):(B):(C)=0.1〜70:1:1〜4の比率で含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の農薬組成物が含有する殺虫剤の効果を維持するためには、(A)前記の農園芸用殺虫剤成分、(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテルが含有され、その含有量比率が(A):(B):(C)=1〜70:1:1〜4の範囲である必要がある。ここで言う含有量はそれぞれ成分の質量を指し、質量含有比率である。この範囲内での使用により、本発明に係る農薬組成物は、殺虫活性物質の薬理活性作用が十分に引き出され、既存の殺虫剤製剤と比較して、顕著に殺虫効果が維持される。前記(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、及び(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテルの比率が少なくなると、これら界面活性剤成分により促進されると考えられる殺虫防除効果の維持は得られない。また、前記(B)成分及び(C)成分の比率が高すぎると、作物表面での流亡や葉焼け等の薬害を生じる恐れがあり、十分な防除効果や作物の健全な生育を妨げる可能性が高くなる。
防除効果を更に高めるためには前記各成分の含有量比率が(A):(B):(C)=0.1〜60:1:1.5〜3.0が好ましく、更に含有量比率が(A):(B):(C)=0.5〜40:1:1.8〜2.5がより好ましい。
また農薬殺虫剤を散布する際に希釈水に入れて使用することが主であるため、上述した農薬組成物の含有比率で個別に、(A)農園芸用殺虫剤成分、(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテルを希釈水にそれぞれ(A):(B):(C)=0.1〜70:1:1〜4の範囲で加え、混合することで、農薬組成物散布液を作製できるが、この場合の各々の成分の割合が前記範囲を満たす限りこのような農薬組成物散布液も本発明の農薬組成物としてみなせる。
【0015】
本発明の農薬組成物では、呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤が使用できる。具体的には以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の農薬組成物の呼吸阻害系殺虫剤は、害虫の電子伝達系I , II, IIIを阻害し殺虫効果を示すものであり、クロルフェナピル(一般名、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)―1−エトキシメチル−5−トリフルオロメチルピロール−3−カルボニトリル)、トルフェンピラド(一般名、4−クロロ−3−エチル−1−メチル−N−[4−(p−トリルオキシ)ベンジル]ピラゾール−5−カルボキサイド)、エマメクチン安息香酸塩(一般名、エマメクチンB1a安息香酸塩、エマメクチンB1b安息香酸塩)、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イルメチルカーボネート等が挙げられる。当該呼吸阻害系殺虫剤は、それぞれの殺虫活性成分を用いることができる。若しくは、市販品として入手可能な農園芸用殺虫剤製剤をそのまま使用してもよい。農園芸用殺虫剤製剤として特に好ましい製剤型としては、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、乳剤、マイクロカプセル剤等 が挙げられる。
また、前記農薬組成物は、コナガ、ネギアザミウマ、ハスモンヨトウの防除効果試験において、同量の有効成分で該農薬単体より優れた防除効果を示し、防除効果を維持させることができる。
【0017】
本発明の農薬組成物の有機リン系殺虫剤としては、ダイアジノン(一般名、(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオフォスフェート)、アセフェート(一般名、O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート)、MEP(一般名、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート)等が挙げられる。当該有機リン系殺虫剤は、それぞれの殺虫活性成分を用いることができる。若しくは、市販品として入手可能な農園芸用殺虫剤製剤をそのまま使用することができる。農園芸用殺虫剤製剤として特に好ましい製剤型としては、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、乳剤、マイクロカプセル剤等 が挙げられる。
【0018】
本発明の農薬組成物の昆虫生長制御剤系殺虫剤は、昆虫の生長や変態や脱皮を撹乱や阻害することにより害虫の密度を低下させることにより防除効果を示すものであり、クロマフェノジド(一般名、2’−tert−ブチル−5−メチル−2’−(3,5−キシロイル)クロマン−6−カルボヒドラジド)、メトキシフェノジド(一般名、N−tert−ブチル−N’−(3−メトキシ−o−トルオイル)−3,5−キシロヒドラジド)、ノバルロン(一般名、(RS)−1−[3−クロロ−4−(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメトキシエトキシ)フェニル]−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)ウレア)等が挙げられる。当該昆虫生長制御剤系殺虫剤は、それぞれの殺虫活性成分を用いることができる。若しくは、市販品として入手可能な農園芸用殺虫剤製剤をそのまま使用することができる。農園芸用殺虫剤製剤として特に好ましい製剤型としては、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、乳剤、マイクロカプセル剤等 が挙げられる。
本発明の農薬組成物において、農園芸用殺虫成分(A)として前記昆虫生長制御剤系殺虫剤(A3)を用いる場合、より好ましくは昆虫生長制御剤系殺虫剤(A3):ジアルキルスルホコハク酸塩(B):ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)が(A3):(B):(C)=0.1〜20:1:1〜4の含有量比率であることが好ましい。更に好ましくは、(A3):(B):(C)=0.2〜4:1:1.5〜3の含有量比率である。
【0019】
本発明に係る農薬組成物において、農園芸用殺虫剤成分(A)として呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤がより好ましい。更に農園芸用殺虫剤成分(A)として呼吸阻害系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤がより好ましい。その場合、当該農園芸用殺虫剤(A):ジアルキルスルホコハク酸塩(B):ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)が(A):(B):(C)=1〜70:1:1〜4の含有量比率であることが好ましい。
【0020】
本発明の農薬組成物はジアルキルスルホコハク酸塩(B)を含有する。ジアルキルスルホコハク酸塩のアルキル基は、コハク酸のエステル基であり疎水性官能基として機能するものであれば、特に限定されるものではない。当該アルキル基としては、C〜C12の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基が好ましい。例えばへキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基又は2−エチルヘキシル基等を挙げることができる。当該アルキル基はコハク酸エステルとして同一種類であっても、異種組み合せてあっても良い。またジアルキルスルホコハク酸塩の塩としては無機塩であれば限定されないが、ナトリウム塩がより好ましい。
この中でも湿潤性の高いジ(C〜C12分岐アルキル)スルホコハク酸ナトリウムが好ましく、更にその中でもビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムが好ましい。使用するジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの不純物が多いものは、当該農薬組成物の殺虫効力向上効果が劣ること、また、散布作物への薬害が懸念されることから、純度は高いものが好ましく、65%以上が好ましい。
本発明におけるジアルキルスルホコハク酸塩(B)は、市販品として入手することができ、これらをそのまま用いることができる。代表的なものとしては、ラピゾールRTMA90(商品名、日本油脂株式会社製、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム90%含有,メタノール3.7%含有)、エアロールRTMCT−1L(商品名、東邦化学株式会社製ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム70%含有)、ニューカルゲンEP−70G(商品名、竹本油脂株式会社製,ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム70%含有)等が挙げられる。
【0021】
本発明に係る農薬組成物は、アニオン系界面活性剤である前記ジアルキルスルホコハク酸塩(B)と、ノニオン系界面系活性剤であるポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)を混用することを特徴とする。当該ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)は、アルキル鎖がC11〜C15の範囲のものであれば使用でき、炭素数が1種類のものであっても、2種以上の混合物であっても良い。例えばC11〜C15のアルキル鎖をもつものの混合物、C12〜C14のアルキル鎖をもつものの混合物、若しくはC13のアルキル鎖をもつもの単独使用、等を具体例として挙げることができる。当該農薬組成物における顕著な殺虫防除効果を達成するためには、当該ノニオン系界面活性剤のアルキル鎖長が影響を与える。これらのなかでC12−C14のアルキル鎖をもつものの混合物による当該ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C’)が、殺虫作用を向上させるのに好ましい。またポリオキシエチレン鎖の重合度も界面活性剤の油−水の特性値を示すHLB(Hydrophile―Lipophile Balance)への影響が大きく、重要な因子である。重合度は各種あり、2以上であれば何れも使用しうる。その中でも対象作物への付着性に優れる重合度は3以上であり、より好ましくは3〜12程度である。また、場合によっては、7以上のものが好ましく、さらに好ましくは7〜12である。
本発明におけるポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)は市販品として入手可能であり、これらをそのまま使用することができる。代表的なものとしては、ペグノールRTMT−3(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレン重合度=3)、ペグノールRTMST−5(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレン重合度=5)、ペグノールRTMST−7(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレン重合度=7)、ペグノールRTMST−9(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレン重合度=9)、ペグノールRTMST−12(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレン重合度=12)等が挙げられる。この中でもポリオキシエチレンの重合度が7以上のペグノールRTMST−7、ペグノールRTMST−9、ペグノールRTMST−12が好ましい。尚、上記したペグノールRTMはポリオキシエチレンアルキル(C12〜C14の混合)エーテルである。
当該ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)は、前記アニオン系界面活性剤である前記ジアルキルスルホコハク酸塩(B)を組み合わせて用いられるものである。当該ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)の含有量は、前記ジアルキルスルホコハク酸塩(B)を基準として、(B):(C)=1:1〜4の範囲で用いられる。より好ましくは(B):(C)=1:1.5〜3であり、更に好ましくは(B):(C)=1:1.8〜2.5である。
【0022】
本発明の農薬組成物には、以下の他の界面活性剤も混合することができる。例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合物、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフエート、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらのその他の界面活性剤は通常0〜20質量%程度の範囲で使用するのが好ましい。併用が好ましい場合もあり、その場合は通常上記範囲内で添加すればよく、より好ましくは5〜10質量%である。
【0023】
本発明の農薬組成物は、水を添加した希釈液を調製して、農薬組成物散布液として散布施用される。水により希釈して農薬組成物散布液を調製する場合には、作物の種類、気候、土壌、作物の生育ステージ、対象害虫の発生状況等により、散布水量を決める。決定した散布水量の希釈水に、本発明の農薬組成物を加え、農薬組成物散布液を作製することができる。
本発明の農薬組成物散布液は、通常3〜1000L/1000mの液量で調製される。ここに希釈水含有前の農薬組成物を添加した際に、任意の濃度で調整はできるが、殺虫防除効果の維持を安定化するためには、呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤、、より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤(A)が10〜3000ppm、前記ジアルキルスルホコハク酸塩(B)が10〜200ppm、前記ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)が10〜800ppmの各成分の含有量範囲に農薬組成物散布液を調整して、散布施用することが望ましい。
【0024】
本発明の農薬組成物散布液の調製方法としては、水を張ったタンクに、呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤(A)、ジアルキルスルホコハク酸塩(B)、ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)、及び任意の成分をそれぞれ、又は同時にタンクに入れ、常温もしくは加温し、混合することで所望の農薬組成物散布液を得る。若しくはアニオン系界面活性剤であるアルキルスルホコハク酸塩(B)とノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル(C)、及び任意の成分を予め混合して、これに前記農園芸用殺虫剤(A)を添加して調製しても良い。
【0025】
本発明の農薬組成物散布液は、そのまま通常の散布機を用いる散布方法で散布することができる。散布方法としては動噴散布、ブームスプレーヤ散布、スピードスプレーヤ散布及び無人ヘリコプター散布が挙げられる。
本発明の農薬組成物とその農薬組成物散布液は、用いた農園芸用殺虫剤が農薬登録を取得している作物へ適応することができる。例えば、稲、麦等の穀類、キャベツ、じゃがいも、大豆、キュウリ、ナス等の野菜類、茶、リンゴ、イチゴ、柑橘等の果樹類等に使用が可能である。
【0026】
殺虫剤の防除効果の維持を妨げることがなければ、本発明の農薬組成物に以下の殺菌農薬有効成分を含有する製剤を混用して使用することができる。例えば「社団法人 日本植物防疫協会 農薬要覧2006 平成18年10月19日発行」に記載されているものが使用することができ、1種もしくは2種以上の組み合わせで農薬登録の範疇での使用方法とともに使用することができる。
【0027】
殺虫剤の防除効果の維持を妨げることがなければ、本発明の農薬組成物に以下の殺菌農薬有効成分を含有する製剤を混用して使用することができる。例えば「社団法人 日本植物防疫協会 農薬要覧2006 平成18年10月19日発行」に記載されているものが使用することができ、1種もしくは2種以上の組み合わせで農薬登録の範疇での使用方法とともに使用することができる。それら農薬製剤の有効成分としては、殺菌剤では、殺菌剤としては、アシベンゾランSメチル、アゾキシストロビン、アンバム、硫黄、イソプロチオラン、イプコナゾール、イプロジオン、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、イミベンコナゾール、エクロメゾール、オキサジキシル、オキシテトラサイクリン、オキスポコナゾールフマル酸塩、オキソリニック酸、カスガマイシン、カルプロパミド、キノメチオナート、キャプタン、クレソキシムメチル、クロロネブ、シアゾファミド、ジエトフェンカルブ、ジクロシメット、ジクロメジン、ジチアノン、ジネブ、ジフェノコナゾール、シフルフェナミド、ジフルメトリム、シプロコナゾール、シプロジニル、シメコナゾール、ジメトモルフ、シモキサニル、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナスCAB−02、ジラム、水和硫黄、ストレプトマイシン、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、チアジアジン、チアジニル、チアベンダゾール、チウラム、チオファネートメチル、チフルザミド、テクロフタラム、テトラコナゾール、テブコナゾール、銅、トリアジメホン、トリアジン、トリコデルマ・アトロビリデ、トリシクラゾール、トリフルミゾール、トリフロキシストロビン、トリホリン、トルクルホスメチル、バチルスズブチリス、バリダマイシン、ビテルタノール、ヒドロキシイソキサゾール、ピラゾホス、ピリフェノックス、ピリメタニル、ピロキロン、ファモキサドン、フェナリモル、フェノキサニル、フェリムゾン、フェンブコナゾール、フェンヘキサミド、フサライド、フラメトピル、フルアジナム、フルオルイミド、フルジオキソニル、フルスルファミド、フルトラニル、プロシミドン、プロパモカルブ塩酸塩、プロピコナゾール、プロピネブ、プロベナゾール、ヘキサコナゾール、ベノミル、ペフラゾエート、ペンシクロン、ボスカリド、ホセチル、ポリカーバメート、マンゼブ、マンネブ、ミクロブタニル、ミルディオマイシン、メタスルホカルブ、メトミノストロビン、メパニピリム、有機銅、硫酸亜鉛、硫酸銅、エジフェンホス、イプロベンホス、クロロタロニル等が挙げられ、作物や害虫に併せて適切に選択することができる。
【0028】
また、本発明の農薬組成物に、更に以下の系統の殺虫剤も殺虫効果の維持を妨げないものであれば使用することができる。例を以下に示すがこれに限定されるものではない。ピレスロイド系殺虫剤のアクリナトリン、エトフェンプロックス、シクロプロトリン、シハロトリン、シフルトリン、シペルメトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルバリネート、ペルメトリン、カーバメイト系殺虫剤のアラニカルブ、オキサミル、カルボスルファン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ、メソミル、BPMC、NAC、ネオニコチノイド系殺虫剤のアセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサム、ニテンピラム、ネライストキシン系殺虫剤としてカルタップ、ベンスルタップ、チオシクラム、ベンデンジカルボキサミド系殺虫剤のクロラントラニリプロール、フルベンジアミド等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
実施例1
500mLビーカーにニューカルゲンEP−70G(商品名、竹本油脂株式会社製、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム70%含有)を8.3質量部及びペグノールRTMST−9(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル100%含有)を16.7質量部、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イルメチルカーボネート10.0%フロアブル 100質量部(2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イルメチルカーボネート10質量部)を加え混合し、本発明の農薬組成物を得た。
【0030】
実施例2
500mLビーカーにニューカルゲンEP−70G(商品名、竹本油脂株式会社製、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム70%含有)を8.3質量部及びペグノールRTMST−9(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル100%含有)を16.7質量部、ショットガンRTM(商品名、日本化薬株式会社製、ダイアジノン40%)100質量部(ダイアジノン40質量部)を加え混合し、本発明の農薬組成物を得た。
【0031】
実施例3
500mLビーカーにニューカルゲンEP−70G(商品名、竹本油脂株式会社製、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム70%含有)を5.0質量部及びペグノールRTMST−9(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル100%含有)を10.0質量部、ショットガンRTM(商品名、日本化薬株式会社製、ダイアジノン40%)100質量部(ダイアジノン40質量部)を加え混合し、本発明の農薬組成物を得た。
【0032】
実施例4
500mLビーカーにニューカルゲンEP−70G(商品名、竹本油脂株式会社製、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム70%含有)を8.3質量部及びペグノールRTMST−9(商品名、東邦化学株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル100%含有)を16.7質量部、マトリックRTMフロアブル(商品名、三井化学アグロ株式会社製、クロマフェノジド5%)100質量部(クロマフェノジド5質量部)を加え混合し、農薬組成物を得た。
【0033】
比較例1
2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イルメチルカーボネート10.0%フロアブル 2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イルメチルカーボネート10質量部)の農薬組成物
【0034】
比較例2
ショットガンRTM(商品名、日本化薬株式会社製、ダイアジノン40%)の農薬組成物。
【0035】
比較例3
マトリックRTMフロアブル(商品名、三井化学アグロ株式会社製、クロマフェノジド5%)の農薬組成物。
【0036】
試験例1:キャベツ コナガの防除試験
上記の実施例1ならびに比較例1で得られた農薬組成物について、以下の試験方法にて試験を実施した。
(1)供試作物と散布条件
作物:キャベツ 播種後、2ヶ月 ポット
区制・面積:1区:5株、2反復
散布水量:200L/10a相当
散布方法:実施例1の農薬組成物を125g及び比較例1の農薬組成物を100g、それぞれ、100Lのタンクに入れ、水を100Lの目盛りまで加え、十分に混合し、タンクから散布する量を取り出し、バッテリー動力噴霧器で散布した。
評価方法:各株に2齢のコナガ幼虫を10頭ずつ放虫し、薬剤処理後の虫を調査し、死虫率を調査した。

【0037】

【0038】
表1より、実施例1の農薬組成物は比較例1の農薬組成物に比較し、防除価は高く、優れた殺虫効果を示している。実施例1の農薬組成物が、呼吸阻害系殺虫剤の防除効果を維持させることが示された。
【0039】
試験例2:ネギ ネギアザミウマの防除試験
上記の実施例8、9ならびに比較例6で得られた農薬組成物について、以下の試験方法にて試験を実施した。
(1)供試作物と散布条件
作物:ネギ 播種後2ヶ月
区制・面積:1区:4m、2反復
散布水量:200L/10a相当
散布方法:実施例2を125g、実施例9を115g及び比較例6を100g それぞれ、100Lのタンクに入れ、水を100Lの目盛りまで加え、十分に混合し、タンクから散布する量を取り出し、バッテリー動力噴霧器で散布した。
評価方法:各区の中央10株につき、成虫、幼虫数を調査し、薬剤処理後3日目の補正密度指数を出し、補正密度指数から下記計算式によりの防除価を導いた。

防除価 = 100−補正密度指数

【0040】

【0041】
表2より、実施例2の農薬組成物、実施例3の農薬組成物は比較例2の農薬組成物に比較し、防除価は高く、優れた殺虫効果を示している。実施例2,3の農薬組成物が、有機リン系殺虫剤の防除効果を維持させることが示された。
【0042】
試験例3:キャベツ ハスモンヨトウの防除試験
上記の実施例4ならびに比較例3で得られた農薬組成物について、以下の試験方法にて試験を実施した。
(1)供試作物と散布条件
作物:キャベツ 播種後、2ヶ月 ポット
区制・面積:1区:5株、2反復
散布水量:200L/10a相当
散布方法:実施例4を125g及び比較例3を100g、それぞれ、100Lのタンクに入れ、水を100Lの目盛りまで加え、十分に混合し、タンクから散布する量を取り出し、バッテリー動力噴霧器で散布した。
評価方法:各株に2齢のハスモンヨトウ幼虫を10頭ずつ放虫し、薬剤処理後の虫を調査し、死虫率を調査した。
【0043】

【0044】
表3より、実施例4の農薬組成物は比較例3の農薬組成物に比較し、防除価は高く、優れた殺虫効果を示している。実施例7の農薬組成物が、昆虫生長制御剤系殺虫剤の防除効果を維持させることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤、
(B)ジアルキルスルホコハク酸塩、
(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテル、
であり、(A):(B):(C)=0.1〜70:1:1〜4の含有量比率で含有する農薬組成物。
【請求項2】
前記ジアルキルスルホコハク酸塩がビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩である請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項3】
前記呼吸阻害系殺虫剤が、トルフェンピラド(一般名、4−クロロ−3−エチル−1−メチル−N−[4−(p−トリルオキシ)ベンジル]ピラゾール−5−カルボキサイド)、エマメクチン安息香酸塩(一般名、エマメクチンB1a安息香酸塩、エマメクチンB1b安息香酸塩)、2−エチル−3,7−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメトキシ)フェノキシ)キノリン−4−イルメチルカーボネートである請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項4】
前記有機リン系殺虫剤が、ダイアジノン(一般名、(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオフォスフェート)、アセフェート(一般名、O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート)、MEP(一般名、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート)である請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項5】
前記昆虫生長制御剤系殺虫剤が、クロマフェノジド(一般名、2’−tert−ブチル−5−メチル−2’−(3,5−キシロイル)クロマン−6−カルボヒドラジド)、メトキシフェノジド(一般名、N−tert−ブチル−N’−(3−メトキシ−o−トルオイル)−3,5−キシロヒドラジド)、ノバルロン(一般名、(RS)−1−[3−クロロ−4−(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメトキシエトキシ)フェニル]−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)ウレア)である請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の農薬組成物に水を添加し、前記(A)呼吸阻害系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、昆虫生長制御剤系殺虫剤より選ばれる1種以上の農園芸用殺虫剤が50〜3000ppm、前記(B)ジアルキルスルホコハク酸塩が20〜1000ppm、前記(C)ポリオキシエチレンC11〜C15アルキルエーテルが40〜2000ppmに希釈されて得られる農薬組成物散布液。


【公開番号】特開2012−240931(P2012−240931A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109962(P2011−109962)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】