説明

迅速な法医学的DNA分析法

本発明は、増幅および質量分析を使用し、分子量を決定し、増幅産物の塩基組成を計算し、その分子量をデータベースにインデックスされた理論的アンプリコンの分子量と比較することによる迅速な高分解能のDNA法医学的分析およびSTRタイピングのための、方法およびプライマー対を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の声明
本出願は、それぞれ参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、2007年2月23日出願の米国仮特許出願第60/891,479号、および2007年6月1日出願の米国仮特許出願第60/941,641号に対する優先権を主張する、特許協力条約の下における国際出願である。
【0002】
政府支援の声明
本発明は、NIJ助成金2006−DN−BX−K011の下において、米国政府支援により行われた。米国政府は、本発明において特定の権限を有する。
【0003】
配列表
本出願は、電子形式での配列表とともに出願されている。配列表は、2008年2月22日に作成された、サイズ24KbのDIBIS0091WOSEQ.txtという表題のファイルとして提供される。電子形式での配列表の情報は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
技術分野
本発明は、遺伝地図作成、ならびに法医学的試験および実父確定検査を含む、遺伝的同一性試験の分野に関連する。本発明は、特に、DNAのタンデム反復領域を使用するDNA分析における増幅および質量分析の使用に関連する。本発明は、質量分析を使用する迅速で正確な法医学的分析により、DNAの情報領域を特徴付けることを可能とする。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
DNA分析による人物特定の工程は、法医学検査の共通の目的である。本明細書において使用されるように、「法医学的」は、例えば、後に裁判所で使用される犯罪または事故現場において発見した証拠の研究である。「法医科学」は、例えば、刑事事件および裁判における裁判所で使用するための公平な科学的証拠を提供する、特に、刑事または民事司法制度における法体制に対する対象の問題を解決するために使用される任意の科学である。法医科学は、主に化学および生物学を含む総合的分野であるが、例えば、物理学、地質学、心理学および社会学も利用する分野でもある。ヒト科学捜査である法医学的DNAタイピングの一態様の目的は、法医学的試料、例えば、犯罪現場からの証拠または個体からのDNA試料から得たDNAの同一性または遺伝子型を判断することである。そのようなDNA鑑定の典型的なソースとしては、髪、骨、歯、ならびに唾液、精液および血液等の体液を含む。しばしば、多数の人、人骨および/または生体試料の迅速同定の必要性が存在する。そのような人骨または試料は、例えば、戦争に関連する犠牲者、航空機の墜落、およびテロ行為に関連する場合がある。
【0006】
ヒトゲノムによく見られ、個体間で高度なばらつきを示す、タンデムDNA反復領域は、ヒト科学捜査および個体識別鑑定、遺伝地図作成、および連鎖分析連鎖解析を含む、いくつかの分野において使用される。様々な種類のDNA反復領域は、真核生物のゲノム内に存在し、それらのコア反復領域の長さに基づいて分類することができる。単純配列反復(SSR)、またはマイクロサテライトとも称される短鎖タンデム反復(STR)は、長さ2〜6個のヌクレオチドのコア単位を有する反復領域である。特定のSTR遺伝子座に関して、集団の個体は、これらのコア反復単位の数が異なる。
【0007】
STRタイピングは、反復数が異なる、ヒト個体群における対立遺伝子の集合を提示する複数のSTR DNA遺伝子座の増幅を伴う。一般に、そのような増幅反応の産物は、蛍光検出法を使用するポリアクリルアミドゲルまたはキャピラリー電気泳動、およびその後に行われる、増幅産物の長さに基づく異なる対立遺伝子間での識別によって分析される。典型的なSTRタイピング分析は、遺伝的に連結していない複数のSTR遺伝子座を使用するため、集団対立遺伝子頻度が各遺伝子座に対して特徴付けられている任意のSTRプロファイルと無作為に一致する可能性を予測するために、積法則を適用することができ(Holt CL,et.al.(2000)Forensic Sci.Int.112(2−3):91−109(非特許文献1);Holland MM,et.al.(2003)Croat.Med.J.44(3):264−72(非特許文献2))、ヒト個体において無作為に一致する可能性が低くても極めて高い識別能力がもたらされる。STR反復の短さ、および集団における個体のいくつかの反復における高度なばらつきのため、STRタイピングは、十分な核DNAを利用できるヒト科学捜査における基準となっている。
【0008】
いくつかのテトラヌクレオチドSTRおよびSTRタイピングの方法は、ヒト科学捜査における適用に対して探求されている。共通集合の遺伝子座を含む、異なるSTR遺伝子座を標的とする市販のSTRタイピングキットが入手可能である。FBI研究所は、統合DNAインデックスシステム(Combined DNA Index System:CODIS)として周知の国家法医学的DNAデータベースに含まれる、13の全国的に承認されたコアSTR遺伝子座を確立している。13のCODISコア遺伝子座は、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、VWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、およびD21S11である。これらの遺伝子座の配列情報は、STRBaseから利用可能である。これらのCODIS13遺伝子座に対する報告された対立遺伝子の反復単位数の範囲は、それぞれ、6〜16、15〜51.2、3〜14、6〜13、10〜24、9〜20、7〜16、6〜15、8〜19、5〜15、5〜15、7〜27、および24〜38である(Butler,JM,2001 Forensic DNA Typing Academic Press(非特許文献3))。13のすべてのこれらのコアSTR遺伝子座の対立遺伝子情報とともに、プロファイルが利用可能な場合、無作為に一致する可能性の平均は、無関係の個体間において、1兆分の1より低い。DNA塩基配列決定法によるSTRタイピングは、時間的制約があり、労働集約的であるため、あまり望ましくない。
【0009】
13の区別できるCODIS対立遺伝子から得られる統合された情報が、10億分の1の統計的有意性に対する個体のDNAシグニチャを一意的に同定するための十分な情報を提供するため、STRマーカーを使用するSTRタイピングは、ヒト法医学的な「究極の判断基準」となっている。通常、増幅および電気泳動的大きさの判断を使用して個々の対立遺伝子を解析する、標準的または従来のSTRタイピング方法には、一定の制限が存在する。低いSTRコピー数では、対立遺伝子の1つが検出されないためにヘテロ接合性個体がホモ接合体とタイプされている、対立遺伝子「脱落」を見ることは稀ではない。さらに、高度に分解されたか、または低コピーDNA試料の場合、マーカーの全体は、DNAプロファイルを抽出する少数のSTRを残して脱落する場合がある。特定の場合においては、例えば、大規模な災害の犠牲者同定など、様々なDNAの量と質の多数の試料が存在し得、その多くは、部分的STRプロファイルのみを生成する。場合によっては、部分的プロファイルを使用して、可能性がある被疑者または同一性を含むか、または除外することができるが、従来のSTRタイピング方法は、部分的プロファイルの場合、時折、利用可能な遺伝子座で十分な分解能を提供しない。そのため、法医学的共同体内において、一連の不完全なSTRマーカーを作成する分解したDNA試料、および一連の完全なSTRの検出が不可能な別の試料から付加的情報を得ることができるように、STRタイピング方法の分解能を増加させる必要性が存在する。
【0010】
迅速性、および高性能タイピングの手順を自動化する能力等の増幅に基づく技術の利点を維持しながら、対立遺伝子の塩基配列多型を決定することにより、いくつかの共通STR遺伝子座に対して観察された対立遺伝子変異を増加させることができる技術が有用である。そのため、標準技術と比較して高度な分解能を提供するSTRタイピング方法の必要性が存在する。また、大規模な災害または戦争等の場合、同時または短期間で生成される多数の試料の分析を可能にするために、高性能試料処理を行うことができる自動化された基盤を開発する必要性が存在する。
【0011】
質量分析は、高い質量精度を含む、分析される分子に関する詳細な情報を提供する。それは、簡単に自動化することができる工程でもある。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)は、自動試料処理を行うことができる基盤を提供し、STR対立遺伝子間の配列多型を解析することができる(Ecker et.al.(2006)JALA.11:341−51(非特許文献4))。
【0012】
マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI TOF MS)は、STR、SNP、およびY染色体マーカーを分析するために使用されてきた(Butler,J.;Becker,C.H.Science and Technology Research Report to NIJ 2001,NCJ 188292,October;Monforte,J.A.;Becker,C.H.Nat Med 1997,3,360−362(非特許文献5);Taranenko,N.I.;Golovlev,V.V.;Allman,S.L.;Taranenko,N.V.;Chen,C.H.;Hong,J.;Chang,L.Y.Rapid Commun Mass Spectrom 1998,12,413−418(非特許文献6);Butler,J.M.;Li,J.;Shaler,T.A.;Monforte,J.A.;Becker,C.H.Int J Legal Med 1999,112,45−49(非特許文献7);Ross,P.L.;Belgrader,P.Anal Chem 1997,69,3966−3972(非特許文献8))。MALDI TOF MSを使用して、日常的に必要な質量精度および分解能を得るためには、アンプリコン(amplicon)の大きさは100塩基対未満でなければならず、しばしば、酵素消化およびネスト化線形増幅等の戦略を必要とする。MALDI方法では、PCRアンプリコンは、質量分光分析の前に徹底的に脱塩し、適切なマトリクスで共結晶化しなければならない。挙げた報告におけるSTRおよびSNP分析に使用された縮小スキームおよび浄化スキームは、PCRアンプリコンの1つの鎖のみを質量分光分析する結果となった。アンプリコンの1つの鎖のみの質量を測定することにより、明確な塩基組成を決定することは困難であり得、対立遺伝子の長さのみが得られる。縮小スキームを使用しても、12〜60ダルトン(Da)の質量測定誤差が、15000〜25000Daのサイズ範囲にある産物に対して見られる。これは、800〜2400ppmの質量測定誤差に相当する。一報告において3個のSTR遺伝子座の多重化が成功しているが、MALDIに特有である低い質量精度および質量分解能のため、STRの多重化は困難であり、日常的なものではない。対立遺伝子バランスの問題は、MALDI−TOF−MSに基づくアッセイに関して対処されていない。
【0013】
米国特許第6,764,822号(特許文献1)および同第6,090,558号(特許文献2)は、質量分析(MS)を使用するSTRタイピングの方法に関する。STR対立遺伝子を解析するためのエレクトロスプレーイオン化(ESI)−MSの使用が報告されている(Hannis and Muddiman,2001,Rapid Commun.Mass.Spectrom.15(5):348−50(非特許文献9);Hannis et.al,2000,Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis,Manipulation and Sequencing,3926:1017−2661(非特許文献10))。ESI−MSは、自動試料処理を行うことができる基盤、および配列多型を解析することができる分析を提供する(Ecker et.al.(2006)JALA.11:341−51(非特許文献4))。
【0014】
いくつかのグループは、高分解能エレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI−FT−ICR MS)を使用したPCR産物の検出に関して記載している。少なくとも1つのヌクレオチドの数の知識を併用した正確な質量の正確な測定により、約100塩基対のPCR二重鎖産物に対する全塩基組成の計算が可能となった(Aaserud et al.,J.Am.Soc.Mass Spec.,1996,7,1266−1269(非特許文献11);Muddiman et al.,Anal.Chem.,1997,69,1543−1549(非特許文献12);Wunschel et al.,Anal.Chem.,1998,70,1203−1207(非特許文献13);Muddiman et al.,Rev.Anal.Chem.,1998,17,1−68(非特許文献14))。エレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン抵抗(ESI−FT−ICR)MSは、平均分子量によって、二本鎖の500塩基対のPCR産物の質量を決定するために使用することができる(Hurst et al.,Rapid Commun Mass Spec.1996,10,377−382(非特許文献15))。
【0015】
増幅断片内に包含される相当量の変異をスキャンすることができ、さらに、迅速で自動化が可能であり、広範囲に及ぶ手動データ解釈の負担なく当該情報を提供することができる、配列決定によって得られる分解能のレベルに接近するDNA法医学的マーカーの分析のための方法および組成に関して、満たされていない要求が存在する。好ましくは、そのような方法は、分析を行うために、試料内の潜在的に情報を有する部位に関する推測的知識を要しない。そのような方法は、例えば、配列または塩基組成のわずかな相違に基づいて同等または同じ長さの対立遺伝子の識別を可能にすることができる配列多型の分解能を可能にすることによって、解析されたDNAの場合や比較的低量のDNAでの法医学的分析のために、相当の解析能力を提供することができることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,764,822号
【特許文献2】米国特許第6,090,558号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Holt CL,et.al.(2000)Forensic Sci.Int.112(2−3):91−109
【非特許文献2】Holland MM,et.al.(2003)Croat.Med.J.44(3):264−72
【非特許文献3】Butler,JM,2001 Forensic DNA Typing Academic Press
【非特許文献4】Ecker et.al.(2006)JALA.11:341−51
【非特許文献5】Butler,J.;Becker,C.H.Science and Technology Research Report to NIJ 2001,NCJ 188292,October;Monforte,J.A.;Becker,C.H.Nat Med 1997,3,360−362
【非特許文献6】Taranenko,N.I.;Golovlev,V.V.;Allman,S.L.;Taranenko,N.V.;Chen,C.H.;Hong,J.;Chang,L.Y.Rapid Commun Mass Spectrom 1998,12,413−418
【非特許文献7】Butler,J.M.;Li,J.;Shaler,T.A.;Monforte,J.A.;Becker,C.H.Int J Legal Med 1999,112,45−49
【非特許文献8】Ross,P.L.;Belgrader,P.Anal Chem 1997,69,3966−3972
【非特許文献9】Hannis and Muddiman,2001,Rapid Commun.Mass.Spectrom.15(5):348−50
【非特許文献10】Hannis et.al,2000,Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis,Manipulation and Sequencing,3926:1017−2661
【非特許文献11】Aaserud et al.,J.Am.Soc.Mass Spec.,1996,7,1266−1269
【非特許文献12】Muddiman et al.,Anal.Chem.,1997,69,1543−1549
【非特許文献13】Wunschel et al.,Anal.Chem.,1998,70,1203−1207
【非特許文献14】Muddiman et al.,Rev.Anal.Chem.,1998,17,1−68
【非特許文献15】Hurst et al.,Rapid Commun Mass Spec.1996,10,377−382
【発明の概要】
【0018】
本明細書において提供される方法、組成、およびキットは、明確な塩基組成(すなわち、A、G、CおよびTの数)を産出するために十分な精度を有するDNA法医学的マーカーを「量る」ための質量分析の使用に基づく、法医学的分析および個体識別鑑定を対象とし、これは、個体に対するDNAプロファイルを得るために使用することができる。重要なことに、これらの塩基組成プロファイルは、STRから得られた既存の法医学的データベース、または別の法医学的マーカープロファイルに対して参照することができる。本開示は、高性能の方法で、塩基組成によって測定された長さ、および配列多型に基づいて、STR遺伝子座を使用してヒト法医学的DNA試料を解析することができる方法、プライマー対組成およびキットを提供する。
【0019】
本発明は、DNAの法医学的分析の方法を対象とする。一部の実施形態においては、該方法は、個体識別鑑定を含む。一部の実施形態においては、それらは、STRタイピングを含む。本明細書において提供した方法は、従来の増幅に基づくSTRタイピングと異なる場合がある。例えば、本明細書において提供した方法は、質量によって決定された大きさに基づいて、STR遺伝子座に対して、対立遺伝子指定を割り当てる能力を提供する。加えて、本明細書において提供した方法は、質量、または遺伝子座内の付加的対立遺伝子をカバーしていない塩基組成によって測定された遺伝子座ヌクレオチド配列から情報を得ることによって、ホモ接合性と考えられる対立遺伝子をさらに解析することができる。
【0020】
一部の実施形態においては、該方法は、それぞれ、長さが13〜40核酸塩基である順方向および逆方向プライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマー対により、試料からの核酸を増幅するステップであって、順方向プライマーが、核酸の第1の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計され、逆方向プライマーが、核酸の第2の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計され、第1および第2の保存配列領域が、STR遺伝子座を含む介在可変核酸領域に隣接し、該増幅ステップが、長さが約45〜約200ヌクレオチドである少なくとも1つの増幅産物を生成する、ステップと、質量分析を使用して、該少なくとも1つの増幅産物の少なくとも1つの鎖の分子量を決定するステップと、決定された分子量を、それぞれ、該オリゴヌクレオチドプライマー対と、該STR遺伝子座に対応する参照対立遺伝子に対してインデックスされた複数のSTRを同定するアンプリコンの複数の分子量を含む分子量データベースと比較するステップであって、決定された分子量と分子量データベースに含まれる分子量との間の一致が、該試料におけるSTR対立遺伝子を同定するステップとを含む。
【0021】
別の実施形態においては、該方法は、決定された分子量を使用して、少なくとも1つの増幅産物の少なくとも1つの鎖の塩基組成を計算するステップと、計算された塩基組成を、それぞれ、該オリゴヌクレオチドプライマー対と、該STR遺伝子座に対応する参照対立遺伝子に対してインデックスされたSTRを同定するアンプリコンの複数の塩基組成を含む塩基組成データベースと比較するステップであって、計算された塩基組成と塩基組成データベースに含まれる塩基組成との間の一致が、該試料におけるSTR対立遺伝子を同定するステップとをさらに含む。
【0022】
好ましい実施形態においては、該方法は、それぞれ、長さが13〜40核酸塩基である順方向および逆方向プライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマー対により、試料から核酸を増幅するステップであって、順方向プライマーが、該核酸の第1の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計され、逆方向プライマーが、該核酸の第2の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計され、第1および第2の保存配列領域は、STR遺伝子座を含む介在可変核酸領域に隣接し、該増幅ステップが、長さが約45〜約200ヌクレオチドである少なくとも1つの増幅産物を生成するステップと、質量分析を使用して、該少なくとも1つの増幅産物の少なくとも1つの鎖の分子量を決定するステップと、決定された分子量を使用して、該少なくとも1つの増幅産物の少なくとも1つの鎖の塩基組成を計算するステップと、計算された塩基組成を、それぞれ、該オリゴヌクレオチドプライマー対と、該STR遺伝子座に対応する参照対立遺伝子に対してインデックスされたSTRを同定するアンプリコンの複数の塩基組成を含む塩基組成データベースと比較するステップであって、計算された塩基組成と塩基組成データベースに含まれる塩基組成との間の一致が、該試料におけるSTR対立遺伝子を同定するステップとを含む。好ましい態様においては、該核酸は、DNAを含み、分子量の決定および塩基組成の計算およびデータベースの比較は、増幅産物の両方の鎖上で行われる。該方法は、質量分析および/または塩基組成によって決定されたSTRを同定するアンプリコンの長さに基づいて、STR遺伝子座に対して、対立遺伝子コール、または反復数を割り当てる付加的ステップを任意で含むこともできる。
【0023】
別の実施形態においては、上記のステップでSTRを同定する塩基組成との一致が得られない場合、該方法は、決定された分子量を使用して、少なくとも1つの増幅産物の塩基組成を計算するステップであって、計算された塩基組成が該STR遺伝子座のこれまで未知であった対立遺伝子を同定するステップと、計算された塩基組成を、データベースにおいて、該オリゴヌクレオチドプライマー対、これまで未知であった対立遺伝子、決定された分子量および試料に対してインデックスするステップとをさらに含むことができる。
【0024】
一実施形態においては、可変核酸領域は、核酸配列において異なる。一態様においては、可変核酸領域は、同じ数の反復単位を含む該STR遺伝子座の2つ以上の対立遺伝子間の核酸配列において異なる。別の態様においては、可変核酸領域は、該STR遺伝子座の2つ以上の同じ長さの対立遺伝子間の核酸配列において異なる。一態様においては、核酸配列における変異は、従来の増幅に基づくSTRタイピング方法によって解析可能ではない。
【0025】
別の実施形態においては、該方法は、試料がSTR遺伝子座においてヘテロ接合性であることを決定するステップを含む。一態様においては、試料は、STR遺伝子座に対してホモ接合性であると既に特徴付けられている。別の態様においては、決定されたヘテロ接合性は、従来の増幅に基づくSTRタイピング方法によって解析可能ではない。
【0026】
別の実施形態においては、特定されたSTR対立遺伝子は、少なくとも1つのSNPを含む。一態様においては、STR遺伝子座はD5S818であり、SNPは、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、GからTまたはAからCへの変化を含む。別の態様においては、STR遺伝子座はD8S1179であり、SNPは、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、GからAまたはTからCへの変化を含む。別の態様においては、STR遺伝子座はvWAであり、SNPは、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、GからT、AからG、CからT、またはAからCへの変化を含む。別の態様においては、STR遺伝子座はD13S317であり、SNPは、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、AからTへの変化を含む。別の態様においては、STR遺伝子座はD7S820であり、SNPは、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、TからAへの変化を含む。しかしながら、任意のSTR遺伝子座の任意の対立遺伝子における任意のSNPは、本明細書に提供する方法およびプライマー対を使用して同定され得る。
【0027】
一実施形態においては、該方法は、VWA、TPOX、TH01、FGA、D21S11、D18S51、D16S539、D13S317、D8S1179、D7S820、D5S818、D3S、およびCSF1POから成る群より選択されるSTR遺伝子座に隣接する保存領域にハイブリタイズするように設計されている少なくとも1つの追加のオリゴヌクレオチドプライマー対の順方向および逆方向プライマーである少なくとも1つの追加のオリゴヌクレオチドプライマー対を使用して、ステップを反復することをさらに含む。一態様においては、該少なくとも1つの追加のオリゴヌクレオチドプライマー対により該ステップを反復することは、第1のオリゴヌクレオチドプライマー対により該ステップを行うことと同時に行われる。一態様においては、該ステップを反復することは、多重反応において行われる。
【0028】
別の実施形態においては、該方法は、少なくとも1つの追加のオリゴヌクレオチドプライマー対により増幅ステップを反復することをさらに含み、ここで、該少なくとも1つの追加のプライマーの少なくとも1つは、AMEL遺伝子座の保存領域にハイブリダイズするように設計される。一態様においては、該増幅ステップを反復することは、該第1のオリゴヌクレオチドプライマー対により該増幅ステップを行うことと同時に行われる。一態様においては、該増幅ステップを反復することは、多重反応において行われる。
【0029】
一実施形態においては、質量分析は、エレクトロスプレー質量分析(ESI−MS)である。別の実施形態においては、ESI−MSは、MS−TOFおよびFTCIR−MSより選択される。
【0030】
本明細書において提供される方法で使用されるオリゴヌクレオチドプライマー対を含む化合物も、本明細書において提供される。実験的またはコンピュータによって、本明細書において提供される方法により生成される増幅産物(アンプリコン)およびSTRタイピングアンプリコンまたはSTRを同定するアンプリコンも提供される。該オリゴヌクレオチドプライマー対等の該化合物を含むキットも提供される。
【0031】
一実施形態においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、長さが約45〜約200ヌクレオチドであり、それぞれ、長さが13〜40核酸塩基である順方向および逆方向プライマーを含み、順方向プライマーは、核酸の第1の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計され、逆方向プライマーは、該核酸の第2の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計され、第1および第2の保存配列領域は、STR遺伝子座を含む介在可変核酸領域に隣接する。
【0032】
一実施形態においては、STR遺伝子座は、VWA、TPOX、TH01、FGA、D21S11、D18S51、D16S539、D13S317、D8S1179、D7S820、D5S818、D3S、およびCSF1POから成る群より選択される。しかしながら、本明細書において提供されるプライマーは、任意のSTR遺伝子座に隣接する保存領域にハイブリダイズするように設計することができる。実施形態においては、プライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0033】
一実施形態においては、プライマー対は、SEQ ID NO:1:52, 2:53, 3:54, 4:55, 5:56, 5:57, 5:58, 5:59, 6:56, 6:57, 6:58, 6:59, 7:60, 8:61, 9:61, 8:62, 9:63, 9:64, 9:65, 9:66, 10:67, 11:68, 12:69, 13:70, 14:71, 15:72, 15:73, 16:72, 16:73, 17:74, 18:75, 19:76, 20:77, 21:78, 22:79, 23:80, 24:81, 25:82, 26:83, 27:84, 28:85, 29:86. 30:87, 31:88, 32:89, 32:90, 33:91, 34:90, 34:92, 35:93, 36:94, 37:95, 38:96, 39:97, 40:98, 41:99, 42:100, 42:101, 43:102, 44:103, 45:103, 46:104, 46:103, 47:104, 109:117, 110:118, 111:119, 112:120, 113:121, 114:122, 115:123, or 116:124で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーに対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。
【0034】
一実施形態においては、STR遺伝子座は、TH01である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:8:61、9:61、8:62、9:63、9:64、9:65、9:66、または10:67で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:10:67で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:10:67で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。一実施形態においては、TH01を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0035】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、TPOXである。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:5:56、5:57、5:58、5:59、6:56、6:57、6:58、6:59、または7:60で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:7:60で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:7:60で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、TPOXを標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0036】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D8S1179である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:28:85、29:86、30:87、または31:88で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:31:88で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。別の態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:31:88で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、D8S1179を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0037】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D5S818である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:36:94、37:95、38:96、39:97、および40:98で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:40:98で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。別の態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:40:98で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、D5S818を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0038】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、CSF1POである。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:43:102、44:103、45:103、46:104、46:103、または47:104で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:47:104で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。別の態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:47:104で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、CSF1POを標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0039】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D7S820である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:32:89、32:90、33:91、34:90、34:92、または35:93で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:35:93で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。別の態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:35:93で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、D7S820を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0040】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D13S317である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:22:79、23:80、24:81、25:82、26:83、または27:84で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:27:84で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。別の態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:27:84で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、D13S317を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0041】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D16S539である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:17:74、18:75、19:76、20:77、または21:78で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:21:78で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。別の態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:21:78で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、D16S539を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0042】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、vWAである。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:1:52、2:53、3:54、または4:55で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:4:55で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。別の態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:4:55で表されるオリゴヌクレオチドプライマー対である。ある一つの実施形態においては、vWAを標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0043】
一実施形態においては、STR遺伝子座は、FGAである。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:11:68、111:119、112:120、または12:69で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。ある一つの実施形態においては、FGAを標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0044】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D21S11である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:13:70、109:117、110:118、または14:71で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。ある一つの実施形態においては、D21S11を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0045】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D18S51である。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:15:72、15:73、113:121、114:122、16:72、または16:73で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。ある一つの実施形態においては、D18S51を標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0046】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D3Sである。一態様においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、SEQ ID NO:41:99、42:100、115:123、116:124、または42:101で表されるプライマーの対の配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む。ある一つの実施形態においては、D3Sを標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0047】
一部の実施形態においては、プライマーは、性決定に使用されるアメロゲニン(AMEL)内の保存配列領域にハイブリダイズする。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:48:105、49:106、50:107、および51:108のいずれか1つ以上で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対し、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%の配列同一性を有する。ある一つの実施形態においては、AMELを標的とするプライマー対は、精製されたプライマー対である。
【0048】
一実施形態においては、オリゴヌクレオチドプライマー対は、少なくとも1つの改変された核酸塩基を含む。一態様においては、改変された核酸塩基は、質量改変核酸塩基である。一態様においては、質量改変核酸塩基は、5−ヨード−Cである。別の態様においては、質量改変核酸塩基は、分子量改変タグを含む。一態様においては、改変された核酸塩基は、ユニバーサル核酸塩基である。一態様においては、ユニバーサル核酸塩基は、イノシンである。
【0049】
別の実施形態においては、順方向プライマーおよび逆方向プライマーのうち少なくとも1つは、その5’末端に非鋳型T残基を含む。
【0050】
別の実施形態においては、順方向プライマーおよび逆方向プライマーのうち少なくとも1つは、その5’末端にGまたはC残基を含む。
【0051】
一実施形態においては、キットは、本明細書において提供されるオリゴヌクレオチドプライマー対および少なくとも1つの追加のプライマー対を含み、少なくとも1つの追加のプライマー対のそれぞれは、VWA、TPOX、TH01、FGA、D21S11、D18S51、D16S539、D13S317、D8S1179、D7S820、D5S818、D3S、またはCSF1POより選択されるSTR遺伝子座を含む核酸の介在可変核酸領域に隣接する核酸の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計された順方向および逆方向プライマーを含む。一態様においては、該キットは、AMEL遺伝子座に隣接する配列内において、または配列に対してハイブリダイズするように設計された別の追加のオリゴヌクレオチドプライマー対をさらに含む。
【0052】
一実施形態においては、キットは、それぞれ、長さが約45〜約200ヌクレオチドである増幅産物を生成するように設計されており、順方向および逆方向プライマーを含む、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマー対を含む法医学的分析用キットを含み、該少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマー対の第1の対は、核酸の第1の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計された第1の順方向プライマー、および該核酸の第2の保存配列領域内でハイブリダイズするように設計された第1の逆方向プライマーを含み、第1および第2の保存配列領域は、STR遺伝子座を含む介在可変核酸領域に隣接し、該STRはvWRであり、該少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマー対の第2の対は、AMEL遺伝子座に隣接する配列内において、または配列に対してハイブリダイズするように設計される。一態様においては、該キットは、TPOX、TH01、D8S1179およびD5S818より選択されるSTR遺伝子座に隣接する保存配列領域にハイブリダイズするように設計された少なくとも1つの追加のプライマー対をさらに含む。別の態様においては、該キットは、CSF1PO、D7S820、D13S317、およびD16S539より選択されるSTR遺伝子座に隣接する保存配列領域にハイブリダイズするように設計された少なくとも1つの追加のプライマー対をさらに含む。
【0053】
追加の実施形態においては、本明細書に記載されるキットおよび方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うためのすべての構成要素を含むか、または使用する。これらの構成要素は、各核酸塩基に対するデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、耐熱性DNAポリメラーゼおよびPCRを行う際に有用な緩衝剤を含むが、これらに限定されない。ある一つの実施形態においては、少なくとも1つのdNTPは、質量改変されている。ある一つの実施形態においては、該質量改変dNTPは、13Cに富むdGTPである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1a】本明細書において提供されるプライマー選択およびSTRタイピング方法の例を示すフローチャートである。
【図1b】FBIの13種のコアCODIS STR遺伝子座、および性識別のために使用されるアメロゲニン(AMEL)の説明図である。各遺伝子座の名称は、それが見られる染色体の中心に描かれる。参照対立遺伝子は、GenBankより、遺伝子座に対して利用可能である。
【図2】TH01遺伝子座に対するSTRタイピングプライマー対の選択を図示した例を示す。プライマー対は、ここで反復領域として指定され、この例では、STR反復領域を表す可変領域に近接するか、または極めて接近する領域にハイブリダイズするように選択される。
【図3】TH01遺伝子座の保存領域にハイブリダイズするように設計されたプライマー対に対して構成されたデータベースの例である。特徴付けられた対立遺伝子は、GenBankから得られた。各対立遺伝子に対して、STRを同定するアンプリコンは、対立遺伝子に対する反復遺伝子座、および対のプライマーが結合する隣接配列を含む配列を構成することによって、コンピュータにより生成された。
【図4】すべてがTPOX STR遺伝子座を標的とする、数字(表5にも記載されている)で列挙されたプライマー対を使用し、試料(Seracareの血液試料N31773)に対する本明細書において提供される方法を用いて生成された質量分析データの例である。見られる二対立遺伝子パターンは、異なるプライマー対間で一致し、各対が、試料における対立遺伝子の分子を解析できたことを示唆している。
【図5】試料(Seracare血液試料N31773)における1つの対立遺伝子に対する本明細書において提供されるプライマー対を使用して、STR遺伝子座D13S317に関して見出された対立遺伝子変異の例を示す。図は、参照対立遺伝子12と直接一致する1つの対立遺伝子を示す。別の対立遺伝子に対して、アンプリコンの塩基組成を計算し、試料、プライマー対、および遺伝子座に対してインデックスされたデータベースに追加した。
【図6】Seracare血液試料N31773に対して行われた初回STRプライマー試験の要約である。
【図7】表5にも列挙されている、示されたプライマー対によるSeracare血液試料N31773に対するプライマー対の初回試験の間に実施された、PCR増幅反応の4%アガロースゲル分離の写真である。
【図8】本明細書において提供される方法による、PCR増幅およびESI−MSを使用した、示されたAFDIL血斑試料(試料番号は、一列目に記載される)のSTRタイピングの要約である。各欄の数は、特定のSTR遺伝子座に対する特定の試料における各対立遺伝子に対して作成された対立遺伝子コールを指す。数は、正式名称と対応し、対立遺伝子における反復単位の数を示す。該方法によって同定されたSNPは、塩基の変化とともに、括弧で記載される。例えば、T残基からA残基への変化であるSNPは、(T→A)として示される。1つの数のみが記載される試料は、同じ長さの2つの対立遺伝子を有する。
【図9】vWA STR遺伝子座からアンプリコンを生成するプライマー対1184によって、図8のAFDIL血液試料(I−0066)のうち1つのSTRタイピングの説明の例である。
【図10a】Qiagen多重緩衝剤、および元のプライマー対を使用した多重化によって生成された、アンプリコンの約50%アデニル化を表す分裂アデニル化ピークを示す。
【図10b】5’末端上のCまたはG残基を含む新規プライマー対による分割アデニル化ピークの損失を示す。
【図11】図11aおよび11bは、表7に記載されるプライマー対による、6重STR反応1および2の例をそれぞれ示す。実施例11に記載されるように、すべての対立遺伝子は、両方の多重反応を使用して解析された。
【図12】図8に示されるAFDIL試料および表7に記載される多重反応混合物を使用して解析された対立遺伝子の結果を示す。対立遺伝子およびSNPは、図8に示される通りである。
【図13a】表7に記載されるプライマー対、および25の新規AFDIL試料(一列目に示される)をタイピングするための、本明細書において提供される方法を使用した多重反応の結果を示す。同定された対立遺伝子およびSNPは、図8に示される通りである。すべての対立遺伝子の数(反復単位の数を示す)は、従来の増幅に基づくSTRタイピングのタイピング結果と一致した。
【図13b】表7に記載されるプライマー対、および22の新規FBI試料(一列目に示される)をタイピングするための、本明細書において提供される方法を使用した多重反応の結果を示す。同定された対立遺伝子およびSNPは、図8に示される通りである。
【図13c】図13aおよび13bの結果を要約した表である。
【図14】NIST試料のSTRタイピングの結果を示す。白人および黒人の試料を示す。多型対立遺伝子は、下部の説明文で示されるように、セルの色によって示される。各SNPの性質は、塩基対立遺伝子コールの隣にある文字指定によって示される。
【図15】NIST試料のSTRタイピングの結果を示す。ヒスパニック系の試料を示す。多型対立遺伝子は、下部の説明文で示されるように、セルの色によって示される。各SNPの性質は、塩基対立遺伝子コールの隣にある文字表示によって示される。
【図16】例としてD13S317を使用した、上に概説されるSTR対立遺伝子データベースに対する参照対立遺伝子エントリを生成する工程を示す。
【図17】対立遺伝子ラダーの非存在下における対立遺伝子データベースの使用を示す。正確な対立遺伝子の割り当ては、産物の質量の直接測定、および続く産物の塩基組成の計算によって行うことができる。参照対立遺伝子に対する対立遺伝子における配列多型は、順方向および逆方向鎖の両方の質量の変化をもたらす。産物の塩基組成の計算により、多型が明らかとなる。その後、多型対立遺伝子をデータベースに戻すことができる。多型の位置は、対立遺伝子が配列決定されない限り、不明のままである。また、2つの消去多型性が存在する場合(例えば、同じアンプリコン内のA→G SNPおよびG→A SNP)、ESI−TOF−MSアッセイは、多型性を登録しない。
【図18】PCRアンプリコンにおいて明確なSNP割り当てを行うための質量タグの使用を示す。上記の例は、Ibisプライマー対2818で増幅された、遺伝子座D8S1179、対立遺伝子14を示す。A)天然dNTPで増幅する場合、対立遺伝子14からのG→AおよびT→C変異は、質量が非常に近いアンプリコン(各産物の鎖において約1Daの差異)を生成する。B)3つのPCR産物のそれぞれに対する順方向鎖質量の拡大図である。塩基対立遺伝子14産物からSNPが明確に検出されるが、G→AおよびT→C産物の順方向鎖に対する質量の間に1Daの差異しかなく、SNPの正確な同一性を、2つの可能性の間において潜在的に不明瞭としている。C)dGTPの代わりに13Cに富むdGTPで増幅する場合、対立遺伝子14からのG→AおよびT→C変異は、各SNP変異の割り当てを明確にする、11Da近くの差異があるアンプリコンを生成する。D)13Cに富むdGTPで増幅された3つのPCR産物のそれぞれに対する順方向鎖質量の拡大図である。塩基対立遺伝子14産物からSNPが明確に検出され、SNPに関与する塩基交換の割り当てが明確である。塩基性対立遺伝子14の産物は、約26DaによってG→A SNPから、約15DaによってT→C SNPから分離される。2つのSNP変異は、約11Daによって分離される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
実施形態の説明
本明細書において使用されるように、「試料」は、本明細書において提供される方法によって分析することが可能な任意のものを指す。好ましい実施形態においては、試料は、該方法による分析が可能な1つもしくは複数の核酸を含むか、または疑いのある1つもしくは複数の核酸である。該試料は、DNAを含むことが好ましい。試料は、法医学的試料であり得、例えば、犯罪現場、血液、血液染色、精液、精液染色、骨、歯、髪、唾液、尿、糞便、指の爪、筋組織、たばこ、切手、封筒、ふけ、指紋、および私物品からの証拠を含むことができる。一部の実施形態においては、試料は、2つ以上の対象物および個体からの核酸を含む、「混合」試料である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される方法は、試料を精製するステップまたは試料由来の核酸を精製するステップを含む。一部の実施形態においては、試料は、精製された核酸またはDNAである。
【0056】
本明細書において使用されるように、「反復DNA配列」、「タンデム反復遺伝子座」、「タンデムDNA反復」および「サテライトDNA」は、真核生物のゲノムに存在する反復DNA配列を指す。「VNTR」(可変ヌクレオチドタンデム反復)または「ミニサテライト」は、長さ約10〜100個の連結したヌクレオチドである中型の反復単位を指す。「短鎖タンデム反復」、「STR」、「単純配列反復」、「SSR」および「マイクロサテライト」は、長さ2〜6個のヌクレオチドのコア単位を有するタンデムDNA反復領域を指す。STRは、コア反復単位におけるヌクレオチドの数によって特徴付けられる。ジヌクレオチド、トリヌクレオチド、およびテトラヌクレオチドSTRは、それぞれ2、3、および4のコア反復単位を有するSTRを表す。
【0057】
「STRマーカー」とも称される「STR遺伝子座」は、短鎖タンデム反復の領域が位置する染色体上の特定の場所を指す。STR遺伝子座で見られる特定の配列変異(反復単位および配列多型の数)は、「STR対立遺伝子」と称される。しばしば、いかなる集団内にも、1つのSTR遺伝子座に対して複数のSTR対立遺伝子が存在する。個体は、既定のSTR遺伝子座に対して2つ以上のSTR対立遺伝子(母系および父系の各染色体上に1つ)を有することができる。そのような個体は、特定のSTR遺伝子座において「ヘテロ接合性」であると考えられる。両方の染色体上に同一の対立遺伝子を有する個体は、「ホモ接合性」であると考えられる。そのような遺伝子座の個体の変異は、対立遺伝子と称される。特定のSTR遺伝子座に対して、集団における個体は、これらのコア反復単位の数が異なる。特定のSTR遺伝子座における対立遺伝子は、そのSTR遺伝子座に対応すると考えられる。
【0058】
本明細書において使用されるように、「同じ長さのSTR対立遺伝子」または「同じ長さの対立遺伝子」は、STR遺伝子座における連結したヌクレオチドの共通の数または配列の長さを共有する2つ以上の対立遺伝子を指すために使用される。同じ長さの対立遺伝子は、塩基組成または配列が異なる場合がある。「配列の長さ」は、既定の核酸、核酸配列またはそのような配列の一部または領域に対する、連結したヌクレオチドの数を指す。
【0059】
特定のSTR遺伝子座に関して、一般的な対立遺伝子変異と1つもしくは複数の塩基対が異なるミクロ変異型対立遺伝子が、同定されている。これらの変異は、ヌクレオチド挿入、欠失またはヌクレオチド塩基の変化の形態であり得る。そのような1つの変異である「単一ヌクレオチド多型性」または「SNP」は、参照配列または共通配列と比較して、単一のヌクレオチド変化を指す。一部の実施形態においては、本明細書において提供される方法は、1つもしくは複数のSNPに基づいて対立遺伝子を識別することができ、STR遺伝子座におけるSNPを同定することができる。
【0060】
STR遺伝子座およびSTR対立遺伝子に対する一般的な命名法は、国際法医血液遺伝学会(International Society of Forensic Haemogenetics:ISFH)(Bar et al,.Int.Journal of Legal Medicine,1997,107,159−160)によって作成される。対立遺伝子は、コア反復単位の数に基づいて命名される。例えば、特定のSTR遺伝子座に対して12と表示された対立遺伝子は、12の反復単位を有する。不完全な反復単位は、整数に続く小数点、例えば、12.2で表示される。
【0061】
本明細書において使用されるように、「法医学的DNAタイピング」は、個体、核酸、試料、または証拠の任意の1つもしくは複数の遺伝子座の遺伝子型を決定するための法医学的方法を指す。「STRタイピング」は、1つもしくは複数のSTR遺伝子座の遺伝子型を決定する方法を使用する、法医学的DNAタイピングまたはDNAタイピングを指す。STRタイピングは、科学捜査、個体識別鑑定、実父確定試験、および別の人物同定の手段といった目的のために使用することができる。しばしば、STRタイピングは、検査される各遺伝子座に対する反復数が異なる、ヒト個体群における対立遺伝子の集合を示す複数のSTR DNA遺伝子座の増幅を伴う。
【0062】
本明細書において使用されるように、「従来のSTRタイピング」または「標準STRタイピング」は、STRタイピングのために使用される最も一般的に利用可能な方法を指す。具体的には、「従来の増幅に基づくSTRタイピング」および「標準的な増幅に基づくSTRタイピング」は、STR遺伝子座が増幅によって同定され、大きさ、または配列の長さに基づいて、対立遺伝子表示を割り当てることによって解析される、最も一般的な方法を指す。しばしば、そのような増幅反応の産物は、蛍光検出法を使用する電気泳動、およびその後の、増幅産物の長さに基づく異なる対立遺伝子間での識別によって分析される。本明細書において提供される方法は、従来の増幅に基づくSTRタイピングと区別することができる。例えば、本明細書において提供される方法は、質量によって決定された大きさに基づいて、STR遺伝子座に対して対立遺伝子表示を割り当てる能力を提供する。加えて、本明細書において提供される方法は、質量、または遺伝子座内の付加的対立遺伝子をカバーしていない塩基組成によって測定された遺伝子座ヌクレオチド配列からの情報を得ることによって、明らかにホモ接合性の対立遺伝子をさらに解析することができる。STRタイピングにおける「対立遺伝子コール」は、個体、核酸または試料に対するSTRタイピング方法によって同定される遺伝子型、STR型または特定の対立遺伝子を指す。
【0063】
本明細書において使用されるように、「プライマー」、「プライマー対」または「オリゴヌクレオチドプライマー対」は、標的核酸内の保存配列領域にハイブリダイズするように設計されるオリゴヌクレオチドであり、該保存配列領域は、2つ以上の核酸、対立遺伝子、または個体間で保存される。プライマー対は、一対のプライマーであるため、順方向および逆方向プライマーを含む。一部の実施形態においては、該保存配列領域(および、そのためにハイブリダイズされたプライマー)は、2つ以上の対立遺伝子または個体間で異なる介在可変核酸領域に隣接する。増幅後、該プライマー対は、2つ以上の個体または核酸間で塩基組成変動を含む増幅産物(アンプリコンとも称される)を産出する。塩基組成の変動は、アンプリコンおよびそれらの塩基組成の特質に基づいて、1つもしくは複数の個体、または1つもしくは複数の個体の遺伝子型の同定を可能にする。好ましい実施形態においては、プライマー対は、STR遺伝子座に直接隣接するか、ほぼ隣接する領域にハイブリダイズするように設計される。しかしながら、本明細書において提供されるプライマーの一部の変異は、所望の配列の効果的な増幅を提供する目的を果たすことが明らかである。そのような変異は、例えば、プライマーからの1つまたはいくつかの塩基の追加または削除、および/またはSTR遺伝子座または可変領域に対するプライマーの位置の変更を含むことができる。
【0064】
本発明の一部の実施形態においては、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチドプライマー対は、精製することができる。本明細書において使用されるように、「精製されたオリゴヌクレオチドプライマー対」、「精製されたプライマー対」または「精製された」は、特定の配列および特定の数の連結したヌクレオシドを有するように、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドプライマー対を意味する。この用語は、それぞれ、無作為に生成された配列を有する、同じ長さの複数の化合物の混合物を産出するために、無作為に生成されるヌクレオチドを明確に除外することを意味する。
【0065】
プライマー対は、分子量分析が可能なアンプリコンを生成するように設計される。標準的プライマー対命名法は、本明細書において使用され、参照配列、ハイブリダイゼーション座標、および別の同定情報の命名を含む。例えば、プライマー対番号2823に対する順方向プライマーは、VWA_M25858_1651_1681_Fと名付けられる。このプライマーの参照配列(名称において引用される)は、GenBankアクセッション番号:M25858である。番号の範囲「1651_1681」は、プライマーが、参照配列のこれらのヌクレオチド位置にハイブリダイズすることを示す。「F」は、この特定のプライマーは、対の順方向プライマーであることを意味する。プライマー名の始まりは、遺伝子座、遺伝子、またはプライマーが標的とするため、その中でハイブリダイズする別の核酸領域または特徴を指す。プライマー対番号2823の順方向プライマーの場合、名称は、特定のヒトSTRであるVWAを標的とすることを示す。しかしながら、プライマー対は、2つ以上の核酸、または2つ以上の個体由来の核酸にハイブリダイズするように選択され設計される。そのため、使用される命名法は、参照配列を提供するためのみに使用され、プライマーが、参照配列のみにハイブリダイズし、増幅産物を生成することを示すわけではない。さらに、プライマー対のプライマーメンバーの配列は、参照配列の保存領域に相補的である必要なない。むしろ、配列は、これらの保存された結合配列での複数の核酸の中で「最良適合」するように設計される。したがって、プライマー対のプライマーメンバーは、参照配列核酸を含む、核酸の保存領域との実質的な相補性を有する。
【0066】
本明細書において使用されるように、「実質的な相補性」という用語は、プライマー対のプライマーメンバーが、個体由来の核酸の保存された結合配列との、約70%〜100%、または約80〜100%、または約90〜100%、または約95〜100%、または約99〜100%の相補性を含むことを意味する。同様に、本明細書において提供されるプライマー対は、表5に開示されるプライマー対に対する、約70%〜100%、または約80〜100%、または約90〜100%、または約95〜100%の同一性、または約99〜100%の配列同一性を含むことができる。相補性および同一性のこれらの範囲は、挙げられる範囲の数内に包含されるすべての整数または小数点以下を含む数を含む。例えば、75.667%、82%、91.2435%および97%の相補性または配列同一性(これらに、限定されない)は、すべて、上記に挙げられる70%〜100%の範囲内に該当するすべての数であるため、この記載の一部を成す。一部の実施形態においては、任意のオリゴヌクレオチドプライマー対は、プライマー対が所望のSTRを同定するアンプリコンに対応する増幅産物を生成する能力を有する場合、表5の任意のプライマー対の対応するメンバーに対する70%未満の配列相同性を有する1つまたは両方のプライマーを有することができる。
【0067】
一部の実施形態においては、オリゴヌクレオチドプライマーは、長さが13〜40核酸塩基である(13〜35個の連結したヌクレオチド残基)。これらの実施形態は、長さ13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40個の核酸塩基のオリゴヌクレオチドプライマー、またはその中の任意の範囲を含む。本発明は、より長いか、またはより短いプライマーの両方を使用することを意図する。さらに、該プライマーは、類縁集団、リガンド、増幅される核酸に相補的ではない核酸の領域、標識等(これらに限定されない)を含む、1つもしくは複数の別の所望の部分に連結することもできる。別の実施形態においては、任意のオリゴヌクレオチドプライマー対は、プライマー対が、所望のSTRを同定するアンプリコンに対応する増幅産物を生成する能力を有する場合、40個の核酸塩基より大きい長さの1つまたは両方のプライマーを有することができる。
【0068】
本明細書において使用されるように、「可変領域」という用語は、一部の実施形態においては、本明細書に記載されるプライマー対がハイブリダイズする保存領域の間にある領域を記載するために使用される。本明細書に記載されるプライマーは、標的にハイブリダイズする場合、可変領域に隣接するように設計することができる。可変領域は、少なくとも2つの対立遺伝子、少なくとも2つの個体由来の核酸、または少なくとも2つの核酸が、可変領域に隣接する配列領域と結合される、すなわち、結合する場合、そのような可変領域に隣接するプライマーによって生成されるアンプリコンの塩基組成を決定することによって、互いを分離することができるように、2つ以上の個体または対立遺伝子の間に区別できる塩基組成を有する。一実施形態においては、可変領域は、STR遺伝子座を含む。一態様においては、可変領域は、同じ数であるため、同じ長さであるヌクレオチドを含む2つの区別できる対立遺伝子から生成される2つ以上のアンプリコンの間に区別できる塩基組成を含む。一態様においては、可変領域の塩基組成は、2つ以上の対立遺伝子の間で、長さではなく、配列のみが異なる。
【0069】
本明細書において使用されるように、「アンプリコン」および「増幅産物」という用語は、本明細書に記載されるプライマー対および方法を使用して、生成されるか、または生成が可能な核酸を指す。特に、「STRタイピングアンプリコン」とも称される「STRを同定するアンプリコン」、「STRタイピング増幅産物」および「STRを同定する増幅産物」は、STR遺伝子座での個々の核酸に対して遺伝子型を決定する(または、特定の対立遺伝子を特定する)ために使用することができるアンプリコンである。一部の実施形態においては、STRタイピングアンプリコンは、電子PCRおよびプライマー対の電子表示を使用するコンピュータによる方法を使用して生成される。コンピュータによる方法を使用して生成されるアンプリコンは、データベースにデータを投入するために使用することができる。アンプリコンは、好ましくは、二本鎖DNAであるが、RNAおよび/またはDNA:RNAであり得る。アンプリコンは、保存領域/プライマー対および介在可変領域の配列を含む。本明細書において論じられるように、プライマー対は、2つ以上の対立遺伝子からアンプリコンを生成するように設計される。いかなるアンプリコンの塩基組成も、プライマー対、プライマー対の相補体、保存領域およびアンプリコンを生成するように増幅された核酸由来の可変領域を含む。当業者にとって当然のことながら、任意のアンプリコンへの設計されたプライマー対配列の組み込みは、プライマー結合部位にある天然配列、およびその相補体を置換する。プライマーを使用した標的領域の増幅後、プライマー配列を含む得られたアンプリコンは、分子量データを生成する。プライマー結合部位に任意の天然配列を有するアンプリコン、またはその相補体は、それらの低い存在度のため検出不可能である。それは、任意の特定のプライマー対を使用して1つもしくは複数の対立遺伝子から1つもしくは複数の核酸を同定する場合に考慮される。アンプリコンは、質量分析に適応する長さをさらに含む。STRを同定するアンプリコン(STRタイピングアンプリコン)は、好ましくは、STR対立遺伝子の同一性に特有の塩基組成シグニチャを生成する。
【0070】
好ましくは、アンプリコンは、約45〜約200個の連続する核酸塩基を含む(すなわち、約45〜約200個の連結したヌクレオシド)。当業者にとって当然のことながら、この範囲は、明確に、長さ45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 101, 102, 103, 104, 105, 106, 107, 108, 109, 110, 111, 112, 113, 114, 115, 116, 117, 118, 119, 120, 121, 122, 123, 124, 125, 126, 127, 128, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 136, 137, 138, 139, 140, 141, 142, 143, 144, 145, 146, 147, 148, 149, 150, 151, 152, 153, 154, 155, 156, 157, 158, 159, 160, 161, 162, 163, 164, 165, 166, 167, 168, 169, 170, 171, 172, 173, 174, 175, 176, 177, 178, 179, 180, 181, 182, 183, 184, 185, 186, 187, 188, 189, 190, 191, 192, 193, 194, 195, 196, 197, 198, 199,および200個の核酸塩基の化合物を表す。さらに、当業者にとって当然のことながら、上述の範囲は、アンプリコンの長さに対する絶対的制限ではなく、その代わりに好ましい長さの範囲を表す。この範囲に該当しないアンプリコンの長さも、アンプリコンが、本明細書において開示される塩基組成シグニチャに対して計算可能である限り、本明細書に含まれる。本明細書において使用されるように、「約」という用語は、±10%を包含することを意味する。例えば、約200個のヌクレオチドは、180〜220個のヌクレオチドを包含する範囲を指す。
【0071】
本明細書において使用されるように、「分子量」という用語は、質量分析を使用して決定される化合物の質量を指す。本明細書においては、化合物は、好ましくは、核酸、より好ましくは、二本鎖核酸、さらにより好ましくは、二本鎖DNA核酸であり、最も好ましくは、アンプリコンである。核酸が二本鎖である場合、分子量は、両方の鎖に対して決定される。ここで、鎖は、質量分析計に導入される前に分離されるか、または質量分析計によって分離されるかのいずれかである(例えば、エレクトロスプレーイオン化は、ハイブリダイズした鎖を分離する)。各鎖の分子量は、質量分析計によって測定される。
【0072】
本明細書において使用されるように、「塩基組成」という用語は、アンプリコンの鎖におけるこれらの残基の線状配列を考慮せずに、アンプリコンを含む各残基の数を指す。アンプリコン残基は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、シチジン、(C)、(デオキシ)チミジン(T)、ウラシル(U)、イノシン(I)、5−ニトロインドールまたは3−ニトロピロール等のニトロインドール、dPまたはdK(Hill et al.)、5−ニトロインダゾールを含有する非環式ヌクレオシド類似体(Van Aerschot et al.,Nucleosides and Nucleotides,1995,14,1053−1056)プリン類似体1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−イミダゾール−4−カルボキサミド、2,6−ジアミノプリン、5−プロピニルウラシル、5−プロピニルシトシン、G−クランプを含むフェノキサジン、5−プロピニルデオキシ−シチジン、デオキシ−チミジンヌクレオチド、5−プロピニルシチジン、5−プロピニルウリジン、および7−デアザ−2’−デオキシアデノシン−5−三リン酸、5−ヨード−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、5−ブロモ−2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸、5−ヨード−2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸、5−ヒドロキシ−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、4−チオチミジン−5’−三リン酸、5−アザ−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、5−フルオロ−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、O6−メチル−2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸、N2−メチル−2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸、8−オキソ−2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸またはチオチミジン−5’−三リン酸を含む、それらの質量タグ改変バージョンを含む。一部の実施形態においては、質量改変核酸塩基は、15Nまたは13Cまたは15Nおよび13Cの両方を含む。好ましくは、本明細書において使用される非天然のヌクレオシドは、5−プロピニルウラシル、5−プロピニルシトシンおよびイノシンを含む。本明細書において、未改変DNAアンプリコンに対する塩基組成は、Aとして記録され、w、x、yおよびzは、それぞれ独立して、アンプリコンにおけるヌクレオシド残基の数を表す整数である。改変されたヌクレオシドを含むアンプリコンに対する塩基組成は、同様に、アンプリコンにおける天然の改変されたヌクレオシドの数を示すように記録される。塩基組成は、以下に記載されるように、アンプリコンの分子量測定から計算される。その後、いかなるアンプリコンに対する計算された塩基組成も、塩基組成のデータベースと比較される。一実施形態においては、データベースは、STRタイピングアンプリコンの塩基組成を含む。計算された塩基組成と単一のデータベースエントリとの間の一致は、個体の標的核酸または遺伝子型の同一性を明らかにする。
【0073】
本明細書において使用されるように、「塩基組成シグニチャ」という用語は、任意の1つの特定のアンプリコンによって生成される塩基組成を指す。
【0074】
本明細書において使用されるように、「データベース」という用語は、塩基組成または分子量データの集合を指すために使用される。データベースにおける塩基組成および/または分子量データは、特定の個体(対象)、対立遺伝子、または参照対立遺伝子および特定のSTRを同定するアンプリコンおよびプライマー対に対してもインデックスされる。一実施形態においては、データは、特定のSTR遺伝子座に対してインデックスされる。本明細書において使用されるように、「参照対立遺伝子」は、特定の塩基組成、長さ、分子量、大きさおよび/または遺伝子型を有することを以前に決定されている、データベースに含まれる対立遺伝子である。参照対立遺伝子は、本明細書において提供されるプライマー対およびアンプリコンに対してインデックスすることができる。データベースにおいて報告される塩基組成データは、各プライマーを使用して各対立遺伝子または個体に対して生成されるアンプリコンにおける各ヌクレオシドの数を含む。データベースは、実験に基づいたデータを投入することができる。データベースにデータを投入するこの態様においては、特定の対立遺伝子を有するか、特定の個体からの核酸が選択され、アンプリコンを生成するためにプライマー対が使用される。アンプリコンの分子量は、質量分析計およびそれから計算された塩基組成を使用して決定される。データベースにおける任意のエントリは、塩基組成を、対立遺伝子または個体および使用したプライマー対と関連付けるために作成される。データベースは、対立遺伝子または個々の核酸情報を含む別のデータベースを使用してデータを投入することもできる。例えば、GenBankデータベースを使用して、プライマー対の電子表示を使用した電子PCRを行うことが可能である。データベースは、FBIデータベース等の別のデータベースからデータを投入することができる。このコンピュータによる方法は、データベースに保存された任意またはすべての選択された対立遺伝子および/または個体に対する塩基組成を提供する。その後、情報は、上に記載される塩基組成データベースにデータを投入するために使用される。塩基組成データベースは、コンピュータによる、書面の表、参考書、集計表または一般的にデータベースに適した任意の形態であり得る。好ましくは、コンピュータによるものである。
【0075】
本明細書において使用されるように、「核酸塩基」という用語は、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む、当技術分野での使用における別の用語と同意の語である。本明細書において使用されるように、核酸塩基は、本明細書に記載されるように、天然の改変された残基を含む。
【0076】
本明細書において使用されるように、「ウォッブル塩基」は、DNAトリプレットの第3のヌクレオチド位置で見られるコドンの変異である。配列の保存領域における変異は、アミノ酸暗号における冗長のため、第3のヌクレオチド位置で、しばしば見られる。
【0077】
「相同性」、「相同」および「配列同一性」という用語は、同一性の程度を指す。部分的な相同性または完全な相同性がある場合がある。部分的な相同配列とは、別の配列との同一が100%未満の配列である。配列同一性の決定は、次の例において説明する。他の点では別の20個の核酸塩基のプライマーと同一であるが、2つの非同一の残基を有する、長さ20個の核酸塩基のプライマーは、20個のうち18個の同一の残基を有する(18/20=0.9または90%の配列同一性)。別の例においては、すべての残基が長さ20個の核酸塩基のプライマーの15個の核酸塩基のセグメントと同一の、長さ15個の核酸塩基のプライマーは、20個の核酸塩基プライマーとの15/20=0.75または75%の配列同一性を有する。本発明においては、配列同一性は、問合せ配列および対象配列が、両方とも記載され、5’から3’の方向に整列される場合、適切に決定されることを意図する。BLAST等の配列整列アルゴリズムは、2つの異なる整列方向に結果を返す。プラス/プラス方向では、クエリー配列および対象配列は、5’から3’の方向に整列される。一方、プラス/マイナス方向では、クエリー配列は、5’から3’の方向にあるが、対象配列は、3’から5’の方向にある。当然のことながら、本発明のプライマーに関して、配列同一性は、整列がプラス/プラスに指定される場合、適切に決定される。配列同一性は、増幅反応におけるハイブリダイゼーションおよびプライマー伸長に対して、アデニン、チミン、グアニンおよびシトシンの通常の核酸塩基と機能的に同様の様式で挙動する、代替または「改変された」核酸塩基を包含することもできる。限定されない例においては、5−プロピニルピリミジンプロピンCおよび/またはプロピンTが、1つのプライマーにおける1つもしくは複数のCまたはT残基を置換し、さもなくばこのプライマーの配列および長さが別のプライマーと同一である場合、これら2つのプライマーは、互いに100%の配列同一性を有する。別の限定されない例においては、イノシン(I)は、GまたはTの代替として使用され、効果的にC、AまたはU(ウラシル)にハイブリダイズすることができる。そのため、イノシンが、1つのプライマーにおける1つもしくは複数のC、AまたはU残基を置換し、さもなくばこのプライマーの配列および長さが別のプライマーと同一の場合、これら2つのプライマーは、互いに100%の配列同一性を有する。ハイブリダイゼーションおよび増幅反応に対して、機能的に同様の様式で挙動する、他のそのような改変された塩基、またはユニバーサル塩基が存在する場合があり、当然のことながら、それらの塩基は、配列同一性のこの定義に該当する。
【0078】
本明細書において使用されるように、「三角同定」は、核酸または個体の同定またはタイピングに必要なアンプリコンを生成するための、1つよりも多いプライマー対、2つ以上のプライマー対、3つ以上のプライマー対、または複数のプライマー対の使用を意味する。2つ以上のプライマー対は、個々のウェルまたは多重PCRアッセイにおいて使用することができる。「多重」アッセイにおいて、本明細書において提供される方法は、同時に2つ以上のプライマー対で行うことができる。代替として、PCR反応は、各ウェルに異なるプライマーを含む単一ウェルにおいて行うことができる。増幅後、アンプリコンは、後に分子量分析に使用される単一ウェルまたは容器にプールする。プールされたアンプリコンの組み合わせは、個々のアンプリコンの分子量の予測された範囲が、重複せず、シグナルの同定を複雑にしないように、選択することができる。三角同定は、消去プロセスとしての役割を果たし、第1のプライマー対は、不明の対立遺伝子が、対立遺伝子群の1つであるかもしれないことを識別する。次のプライマー対は、前のプライマー対により生成された可能性のサブセット間にある対立遺伝子の同一性をさらに高めるために、三角同定において使用される。三角同定は、対立遺伝子の同一性が決定されると完了する。三角同定工程は、偽陰性および偽陽性シグナルを低減させるためにも使用される。代替として、2つ以上のプライマー対を、多重アッセイにおいて使用する場合、アンプリコンの組み合わせは、同時に生成され、同時に分析することができ、複数の得られた分子量または塩基組成を、多重アッセイにおいて使用した異なるプライマー対に対してインデックスされる、データベースにおける複数のアンプリコンと比較する。
【0079】
アンプリコン、および質量および塩基組成を決定するためのESI−MSを使用した、核酸を含む試料のSTRタイピングを含む、無作為法医学的分析および個体識別鑑定を対象とする方法および組成物が、本明細書において提供される。本明細書における方法は、個体に対するDNAプロファイルを得るために、順々に使用することができる明確な塩基組成(すなわち、A、G、CおよびTの数)を産出するための相当な精度を提供する。重要なことに、これらの塩基組成プロファイルは、STRまたは別の法医学的マーカープロファイルから得られた既存の法医学的データベースに対して参考することができ、および/またはそのようなデータベースに追加することができる。本方法では、分子量および塩基組成を使用して特定の対立遺伝子を得るため、本明細書において提供される方法および組成は、従来の電気泳動的STRタイピング分析によって検出不可能となる、STR領域内のSNPを検出することが可能である。例えば、D5S818マーカーに対するすべての「対立遺伝子型13」は、同等ではなく、中には、GからT(G→T)のSNPを含有するものもあり、「通常の」対立遺伝子型13を含有する個体からそれらを区別する。同様に、この対立遺伝子に対してホモ接合性としてタイプされる個体は、実際に、対立遺伝子13および対立遺伝子13G/T_SNPを含有する対立遺伝子13を含有するヘテロ接合体であり得る。これらの種類の変化は、STR対立遺伝子を解析するための電気泳動による大きさの識別方法を使用する標準STRタイピング方法およびキットによって検出されない。
【0080】
好ましい実施形態においては、アンプリコンは、STRを同定するアンプリコンまたはSTRを同定する増幅産物である。この実施形態においては、プライマーは、増幅することができ、分子量の決定が可能なSTRタイピングアンプリコンを産出するために、試料から得られた、可変核酸配列領域に隣接する核酸の保存配列領域にハイブリダイズするように選択される。塩基組成は、アンプリコンにおける各ヌクレオチドの数を示す分子量から計算される。その後、アンプリコンの分子量または対応する塩基組成または塩基組成シグニチャは、対立遺伝子および/または個体に対してインデックスされる分子量または塩基組成シグニチャ、およびアンプリコンを生成するために使用されたプライマー対を含むデータベースと比較される。決定された分子量または計算された塩基組成と、データベースにおける分子量または塩基組成との一致は、試料由来の核酸を、データベースにおいてインデックスされた対立遺伝子または個体と関連付ける。場合によっては、試料または特定の対立遺伝子からの核酸は、2つ以上の個体または同一性と関連する。これらの場合、1つもしくは複数の追加のプライマー対は、1つもしくは複数の追加のアンプリコンを生成するために、後または同時のいずれかに使用される。1つもしくは複数の追加のアンプリコンの質量および塩基組成は、決定/計算され、本明細書において提供される方法は、結果をデータベースと比較するために使用され、さらに試料を特徴付け、好ましくは同定する。この種類の分析は、三角同定、または多重アッセイを使用して、本明細書に記載するように実行することができる。本方法は、迅速な高性能の分析を提供し、試料由来の核酸の同定のための核酸配列を必要としない。
【0081】
一実施形態においては、方法は、多重反応において、2つ以上のプライマー対で実行される。一態様においては、方法が、多重反応において実行される場合、高マグネシウム、例えば、3mM塩化マグネシウムを有するPCR試薬を使用することが有利である場合がある。当技術分野で周知のように、そのような試薬は、増幅産物のアデニル化を促進する。一実施形態においては、試料におけるごく少量の増幅産物のアデニル化、例えば、別の産物とわずかに異なる長さの少量の増幅産物の生成がある場合に生じることがある、分裂ピークの結果を最小化することが有利である。そのため、好ましい態様においては、完全またはほぼ完全なアデニル化を促進することが望ましい。一態様においては、プライマー対は、順方向および逆方向プライマーの1つまたは両方が、5’末端にCまたはG核酸塩基を含むように、完全なアデニル化を促進するように構成される。サイクル反応における温度は、例えば、約61℃のアニール温度を使用することによって、有効性を保持しながら、完全なアデニル化を促進するために調節することもできる。
【0082】
一部の実施形態においては、本明細書に記載するプライマーによって生成される、分子量の決定が可能なアンプリコンは、分子量決定の特定の方法に対応する長さの予測可能な断片を得るために、分子量決定の特定の方法に対応するか、または予測可能なフラグメンテーションパターンを提供する手段に対応する長さ、大きさまたは質量のいずれかである。アンプリコンの予測可能なフラグメンテーションパターンを提供するそのような手段は、例えば、制限酵素または開裂プライマーでの開裂を含むが、これらに限定されない。そのため、一部の実施形態においては、アンプリコンは、200核酸塩基より大きく、制限消化に続く分子量の決定が可能である。制限酵素および開裂プライマーを使用する方法は、当業者に周知である。
【0083】
一部の実施形態においては、アンプリコンは、分子生物学分野における当業者にとって慣用の方法である、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して得られる。一部の実施形態においては、PCRは、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して遂行され、ポリメラーゼ連鎖反応は、ポリメラーゼ酵素によって触媒され、その機能は、天然ポリメラーに対して改変される。一部の実施形態においては、改変されたポリメラーゼ酵素は、突出末端を有する消化産物を平滑末端消化産物に変換するために、突出末端を有する制限消化産物へのヌクレオチド残基の添加を触媒する、エキソ(−)Pfuポリメラーゼである。別の増幅方法は、リガーゼ連鎖反応(LCR)、低ストリンジェンシー単一プライマーPCR、および複数鎖置換増幅(SDA)等を使用することができる。これらの方法も、当業者に周知である(Michael,SF.,Biotechniques(1994),16:411−412およびDean et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2002),99,5261−5266)。
【0084】
PCR産物の質量分析(MS)に基づく検出は、複数の利点を有するBCSの決定のための手段を提供する。すべての増幅産物はその分子量によって同定されるため、MSは、本質的に、放射または蛍光標識の必要性がない並列検出スキームである。質量分析における分野の現状では、フェムトモル量未満の物質が、試料の分子含有量に関する情報を得るために容易に分析できる。物質の分子量の正確な評価は、試料の分子量が数百、または十万を超える原子質量単位(amu)またはダルトンであるかどうかに関わらず、即座に得ることができる。無傷の分子イオンは、試料を気相に変換する多様なイオン化技術の1つを使用して、増幅産物から生成することができる。これらのイオン化方法は、エレクトロスプレーイオン化(ES)、マトリクス補助レーザー脱離イオン化(MALDI)および高速原子衝撃(FAB)を含むが、これらに限定されない。例えば、核酸のMALDIにおける使用のためのマトリクスの例とともに、核酸のMALDIは、国際公開特許第WO98/54751号に記載されている。大きいDNAに対する分子量の正確な測定は、各鎖に対するPCR反応由来の陽イオンの内転(adduction)、天然存在度13Cおよび15N同位体由来の同位体ピークの分解能、および任意のイオンに対する荷電状態の割り当てによって制限される。陽イオンは、流れに対して直角の電場勾配の存在下において、PCR産物を含有する溶液を、酢酸アンモニウムを含有する溶液に接触させる、流水式チップを使用する直列透析によって除去される。後者2つの問題は、>100,000の分解能で作用し、同位体的に枯渇したヌクレオチド三リン酸をDNAに組み込むことによって対処される。器具の分解能も考慮される。10,000の分解能では、84merのPCR産物の[M−14H+]14の荷電状態からのモデル化されたシグナルは、十分に特徴付けられていなく、荷電状態または正確な質量の割り当ては、不可能である。33,000の分解能では、個々の同位体構成要素からのピークは、明らかである。100,000の分解能では、同位体ピークは、ベースラインまで解析され、イオンに対する荷電状態の割り当ては、単純である。[13C,15N]−除去三リン酸は、例えば、除去培地上に有機体を成長させ、ヌクレオチドを収集することによって得られる(Batey et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20,4515−4523)。
【0085】
無傷の核酸領域の質量測定は、適切であると考えられるが、タンデム質量分析(MS)技術は、分子の同一性または配列に関するより決定的な情報を提供することができる。タンデムMSは、分離および検出ステップの両方が質量分析に基づく、質量分析の2つ以上の段階の連結した使用を伴う。第1の段階は、さらなる構造的情報が得られる、試料のイオンまたは構成要素を選択するために使用する。その後、選択されたイオンは、例えば、黒体放射、赤外多光子解離、または衝突活性化を使用してセグメント化する。例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)によって生成されるイオンは、IR多光子解離を使用してセグメント化することができる。この活性化は、グリコシド結合およびリン酸骨格の解離を引き起こし、w−系列(内部開裂に続く無傷の3’末端および5’リン酸塩を有する)およびa−塩基系列(無傷の5’末端および3’フランを有する)と称される2系列の断片イオンを生成する。
【0086】
その後、質量分析の第2の段階は、産物イオンのこれらの得られた断片の質量を検出し測定するために使用する。そのようなイオン選択およびその後のセグメンテーション方法は、試料の分子配列を本質的に完全に解離するために、複数回行うことができる。
【0087】
同様な分子量の2つ以上の標的がある場合、または単一増幅反応が、2つ以上の参照標準と同じ質量を有する産物をもたらす場合、それらは、質量を改変する「タグ」を使用して区別することができる。そのようなオリゴヌクレオチドは、質量改変されたと考えられる。この実施形態においては、質量の区別を改善するために、未改変塩基と異なる分子量を有するヌクレオチド類似体または「タグ」は、増幅の間に組み込まれる(例えば、5−(トリフルオロメチル)デオキシチミジン三リン酸)。そのようなタグは、例えば、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO97/33000号に記載される。これは、任意の質量と一致する可能性のある塩基組成の数をさらに制限する。例えば、5−(トリフルオロメチル)デオキシチミジン三リン酸は、分離核酸増幅反応においてdTTPの代わりに使用することができる。従来の増幅産物とタグ付き産物の間の質量変化の測定は、各一本鎖におけるチミジンヌクレオチドの数を定量化するために使用する。鎖は相補的であるため、各鎖におけるアデノシンヌクレオチドの数も決定される。
【0088】
質量タグ法とは対照的に、好ましい実施形態においては、質量改変されたdNTPは、塩基対の組み合わせの数をさらに制限し、未改変dNTPを使用する場合に解析不可能なSNPを解析するためにも使用される。本特許出願の方法において13Cに富むdGTPが、どのように使用されるかは、図18を参照すること。
【0089】
別の増幅反応においては、各鎖のGおよびC残基の数は、例えば、シチジン類似体5−メチルシトシン(5−meC)または5−プロリニルシトシン(prolynylcytosine).プロピンCを使用して決定される。A/T反応およびG/C反応の組み合わせ、その後の分子量の決定は、特有の塩基組成を提供する。この方法を表1に要約する。
【0090】
(表1)

【0091】
表1に示される例においては、質量タグホスホロチオエートA(A)を使用して炭疽菌クラスタを区別した。炭疽菌(A1414)は、14072.26の平均分子量を有し、炭疽菌(A1314)は、14281.11の平均分子量を有し、ホスホロチオエートAは、ESI−TOF MSによって決定された、+16.06の平均分子量を有した。
【0092】
別の例においては、各鎖の測定された分子量は、それぞれ、30,000.115Daおよび31,000.115Daであり、dTおよびdA残基の測定された数は、(30、28)および(28、30)であるとする。分子量が、正確に100ppmである場合、各鎖に対して可能なdG+dCの7つの組み合わせが可能である。しかしながら、測定された分子量が、正確に10ppmである場合、dG+dCの組み合わせは2つのみであり、1ppmの精度では、各鎖に対して可能な塩基組成は、1つのみである。
【0093】
質量分析計からのシグナルは、レーダー信号処理等に広く使用される、最尤検出および分類アルゴリズムに入力することができる。処理は、観測されたシグナルおよび平均背景レベルに基づいて作成された対数尤度比を使用して、ベイズ識別器で終了することができる。背景シグナル強度は、推測され、後に控除されるシグニチャを形成するための整合フィルタとともに使用される。最尤処理は、整合フィルタおよびノイズが除去されたデータに対するノイズ共分散の累積合計の推測を使用する同様の方法でこの「ノイズが除去された」データに適用する。
【0094】
一部の実施形態においては、DNA分析は、法医学的試料、例えば、ヒトの唾液、髪、血液、または爪から得られるヒトDNAである。
【0095】
本明細書において提供される実施形態は、DNAの高度に保存された配列領域に結合するように設計されるプライマー対を含む。一部の実施形態においては、保存配列領域は、領域STR内で見られる可変部分等の介在可変領域に隣接し、理想的には、法医学的結論を提供するために十分な変動を提供し、分子量分析が可能な増幅産物を産出する。「高度に保存された」という用語は、配列領域が、約80〜100%、または約90〜100%、または約95〜100%の同一性、または約80〜99%、または約90〜99%、または約95〜99%の同一性を示すことを意味する。既定の増幅産物の分子量は、可変領域の変動によって法医学的結論を得る手段を提供する。そのため、プライマーの設計は、異なる個体のDNAにおける最適な変動を有する可変部分の選択を伴う。
【0096】
一部の実施形態においては、対の各メンバーは、SEQ ID NO:1:52、2:53、3:54、4:55、5:56、5:57、5:58、5:59、6:56、6:57、6:58、6:59、7:60、8:61、9:61、8:62、9:63、9:64、9:65、9:66、10:67、11:68、12:69、13:70、14:71、15:72、15:73、16:72、16:73、17:74、18:75、19:76、20:77、21:78、22:79、23:80、24:81、25:82、26:83、27:84、28:85、29:86、30:87、31:88、32:89、32:90、33:91、34:90、34:92、35:93、36:94、37:95、38:96、39:97、40:98、41:99、42:100、42:101、43:102、44:103、45:103、46:104、46:103、47:104、48:105、49:106、50:107、109:117、110:118、111:119、112:120、113:121、114:122、115:123、116:124、および51:108のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0097】
一部の実施形態においては、プライマー対がハイブリダイズするDNAの保存配列領域は、STR遺伝子座に隣接する。STR遺伝子座は、コアCODIS遺伝子座であることが好ましい。
【0098】
一実施形態においては、STR遺伝子座は、vWAを含む。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:1:52、2:53、3:54、および4:55のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0099】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、TPOXである。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:5:56、5:57、5:58、5:59、6:56、6:57、6:58、6:59、および7:60のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0100】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、TH01である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:8:61、9:61、8:62、9:63、9:64、9:65、9:66、および10:67のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0101】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、FGAである。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:11:68、111:119、112:120、および12:69のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0102】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D21S11である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:13:70、109:117、110:118、および14:71のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0103】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D18S51である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:15:72、15:73、16:72、113:121、114:122、および16:73のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0104】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D16S539である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:17:74、18:75、19:76、20:77、および21:78のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0105】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D13S317である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:22:79、23:80、24:81、25:82、26:83、および27:84のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0106】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D8S1179である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:28:85、29:86、30:87、および31:88のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0107】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D7S820である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:32:89、32:90、33:91、34:90、34:92、および35:93のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0108】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D5S818である。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:36:94、37:95、38:96、39:97、および40:98のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0109】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、D3Sである。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:41:99、42:100、115:123、116:124、および42:101のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0110】
別の実施形態においては、STR遺伝子座は、CSF1POである。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:43:102、44:103、45:103、46:104、46:103、47:104のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0111】
一部の実施形態においては、プライマーは、性決定に使用されるアメロゲニン(AMEL)内の保存配列領域にハイブリダイズする。一態様においては、プライマー対の各メンバーは、SEQ ID NO:48:105、49:106、50:107、および51:108のうちの任意の1つもしくは複数で表されるプライマー対の対応するメンバーの配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を有する。
【0112】
一実施形態においては、本方法は、複数のプライマー対を使用して行われる。一実施形態においては、プライマー対は、AMEL内の保存領域にハイブリダイズするように設計されたプライマー対、およびvWA STR遺伝子座に隣接する保存領域にハイブリダイズするように設計された別のプライマー対を含む。一態様においては、複数のプライマー対は、4つの追加のプライマー対をさらに含む。一態様においては、該4つの追加のプライマー対は、それぞれ、TPOX、TH01、D8S1179およびD5S818 STR遺伝子座に隣接する保存配列領域内でハイブリダイズするように設計される。別の態様においては、該4つの追加のプライマー対は、それぞれ、CSF1PO、D7S820、D13S317、およびD16S539 STR遺伝子座に隣接する保存配列領域内でハイブリダイズするように設計される。
【0113】
さらなる実施形態においては、プライマー対は、組み合わされ、多重反応において使用される。この多重の実施形態の一態様は、2つの6重反応において10の遺伝子座を分析するように構成される。この多重の実施形態の別の態様は、5つの3重反応、および3つの1重反応において14の遺伝子座を分析するように構成される。この態様の好ましい実施形態は、1つの3重反応においてD3S1358、vWAおよびD13S317を標的とするプライマー対、第2の3重反応においてD16S539、CSF1POおよびTH01を標的とするプライマー対、第3の3重反応においてTPOX、AMELおよびD8S1179を標的とするプライマー対、第4の3重反応においてAMEL、D7S820およびD5S818を標的とするプライマー対、第5の3重反応においてD16S536、vWAおよびD5S818を標的とするプライマー対、第1の1重反応においてD21S11を標的とするプライマー対、第2の1重反応においてFGAを標的とするプライマー対、および第3の1重反応においてD18S51を標的とするプライマー対で構成される。
【0114】
一実施形態においては、複数のプライマー対は、SEQ ID NO:4:55および51:108で表されるプライマー対を含む。一態様においては、該プライマー対は、4つの追加のプライマー対をさらに含む。一態様においては、4つの追加のプライマー対は、SEQ ID NO:7:60、10:67、31:88、および40:98で表されるプライマー対を含む。別の態様においては、4つの追加のプライマー対は、SEQ ID NO:47:104、35:93、27:84、および21:78で表されるプライマー対を含む。
【0115】
理想的には、プライマーハイブリダイゼーション部位は、プライマーのハイブリダイゼーションを容易にするために高度に保存されている。配列の保存のレベルが低いために、プライマーハイブリダイゼーションがそれほど効率的ではない場合、本明細書において提供されるプライマーは、ハイブリダイゼーションの効率性を改善するために化学的に改変することができる。例えば、種の間でのこれらの保存領域におけるいかなる変異(第3の位置で揺動するコドンのため)もDNAトリプレットの第3の位置で生じる可能性があるため、オリゴヌクレオチドプライマーは、この位置に対応するヌクレオチドが、本明細書において「ユニバーサル塩基」と称される、2つ以上のヌクレオチドと結合することができる塩基となるように、設計することができる。例えば、この「揺動」対合の下では、イノシン(I)は、U、CまたはAに、グアニン(G)は、UまたはCに、およびウリジン(U)は、UまたはCと結合する。ユニバーサル塩基の別の例では、5−ニトロインドールまたは3−ニトロピロールなどのニトロインドール(Loakes et al.,Nucleosides and Nucleotides,1995,14,1001−1003)、縮退ヌクレオチドdPまたはdK(Hill et al.)、5−ニトロインダゾールを含有する非環式ヌクレオシド類似体(Van Aerschot et al.,Nucleosides and Nucleotides,1995,14,1053−1056)またはプリン類似体1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−イミダゾール−4−カルボキサミド(Sala et al.,Nucl.Acids Res.,1996,24,3302−3306)を含む。
【0116】
別の実施形態においては、「揺動」塩基による多少弱い結合を補うために、オリゴヌクレオチドプライマーは、各トリプレットの第1および第2の位置が、未改変ヌクレオチドより高い親和性で結合するヌクレオチド類似体によって占められるように、設計される。これらの類似体の例としては、チミンと結合する2,6−ジアミノプリン、アデニンと結合するプロピンT(5−プロピニルウリジン)、Gと結合するG−クランプを含む、プロピンC(5−プロピニルシチジン)およびフェノキサジンを含むが、これらに限定されない。プロピニル化ピリミジンは、それぞれ、共同所有され、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,645,985号、同第5,830,653号および同第5,484,908号に記載される。プロピニル化プライマーは、米国特許第10/294,203号に特許請求され、共同所有され、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。フェノキサジンは、それぞれ、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,502,177号、同第5,763,588号、および同第6,005,096号に記載される。G−クランプは、それぞれ、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,007,992号および同第6,028,183号に記載される。そのため、別の実施形態においては、プライマー対は、5−プロピニルシチジンまたは5−プロピニルウリジン等の少なくとも1つの改変された核酸塩基を有する。
【0117】
本明細書において、任意の上述のプライマーによる、DNAの試料の増幅の工程によって生成される、単離されたDNAアンプリコンも提供される。
【0118】
本明細書において提供される方法、化合物および組成物が、特定のその実施形態に従い、具体的に記載されているが、以下の例は、本発明を説明するためのみに役立ち、本発明を限定することを意図するものではない。提供した例は、例示のみであり、当業者にとって当然のことながら、当業者は、別の技術を使用することができ、そのような異なる技術は、本発明の精神から逸脱するものではない(T.Maniatis et al.,Molecular Cloning.A.Laboratory Manual.CSH Lab.N.Y.(2001))。
【実施例】
【0119】
実施例1:核酸単離および増幅
一般的なゲノムDNA試料前処理プロトコル:
原試料は、Supor−200 0.2μmの膜シリンジフィルタ(VWR International)を使用して、ろ過した。試料は、0.45gの0.7mmのジルコニアビーズを前もって充填した1.5mlのエッペンドルフ型チューブに移し、その後、350μlのATL緩衝剤(Qiagen、バレンシア、CA)を添加した。試料は、Retsch Vibration Mill(Retsch)において、19l/秒の頻度で10分間ビーズ破砕した。遠心分離の後、試料を、Sブロックプレート(Qiagen、バレンシア、CA)に移動し、BioRobot8000核酸単離ロボット(Qiagen、バレンシア、CA)により、DNA単離を完了させた。
【0120】
血中DNAの単離
血中DNAは、メーカが推奨する手順(Qiagen QIAamp(登録商標)DNA Blood BioRobot(登録商標)MDxキット上での血液DNAの単離、Qiagen、バレンシア、CA)に従い、MDx Biorobotを使用して単離した。場合によっては、血液パンチからのDNAを、乾燥血斑に対するメーカが推奨するプロトコルを使用して、Qiagen QIAmp DNAミニキットで処理した。
【0121】
口腔スワブDNAの単離
メーカは、完全なロボットスワブプロトコルを支持しないため、後にMDxロボットのチューブホルダに搭載される14mlの丸底ファルコンチューブ中の400mlのPBS+400mlのQiagen AL緩衝剤+20μlのQiagenプロテアーゼ溶液に、各スワブをまず懸濁した後、血中DNA単離プロトコルを使用した。
【0122】
爪および髪からのDNAの単離
以下の手順は、Qiagen DNeasy(登録商標)組織キットと使用し、メーカが推奨する手順の改変を提示する。髪および爪を、消毒した鋏または剃刀で小切片に切り、1mlの超音波処理用洗浄緩衝剤(10mM TRIS−Cl、pH8.0+10mM EDTA+0.5%Tween−20)を添加した遠心管に配置した。溶液を20分の超音波処理に供し、残骸を除去し、その後、1ml超高純度二重脱イオン水で2回洗浄し、100μlのBuffer X1(10mM TRIS−Cl、pH8.0+10mM EDTA+100mM NaCl+40mM DTT+2%SDS+250:g/ml QiagenプロテイナーゼK)を添加した。その後、200μlのQiagen AL緩衝剤および210μlのイソプロパノールを添加し、溶液をボルテックスによって混合した後、試料を、55℃で1〜2時間インキュベートした。その後、試料を、2mlの採血管に配置されたQiagen DNeasy小型回転カラムに添加し、6000g(8000rpm)で1分間遠心分離にかけた。採血管および流水は、破棄した。スピンカラムは、新しい採血管に移動し、500μlの緩衝剤AW2を添加し、20,000g(14,000rpm)で3分間遠心分離にかけて膜を乾燥させた。溶出のために、50〜100μlの緩衝剤AEを、ピペットでDNeasy膜上に直接加え、室温で1分間インキュベートした後、遠心分離(6000g〜8000rpm)で溶出した。
【0123】
PCRによる増幅
DNAの増幅のための例示的なPCR手順は、以下の通りである。総体積が50μlの反応混合物は、1X GenAmp(登録商標)PCR緩衝剤II(Applied Biosystems)−10mM TRIS−Cl、pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl、400mMベタイン、200μMの各dNTP(Stratagene200415)、250nMの各プライマー、および2.5〜5単位のPfuエキソ(−)ポリメラーゼGold(Stratagene600163)、および少なくとも50pgの鋳型DNAを含有した。すべてのPCR溶液の混合は、HEPAろ過陽圧PCRフード下で行った。プログラム可能なPCRサイクルプロファイルの例は、以下の通りである。95℃で10分、その後、95℃で20秒、62℃で20秒、および72℃で30秒を8サイクル、但し、62℃のアニールステップは、8サイクルの各連続サイクルに対して1℃下げ、その後、95℃で20秒、55℃で20秒、および72℃で30秒を28サイクル、その後、4℃で保持する。多重反応に関して、好ましい実施形態においては、PCRは、1つのQiagen Multiplex PCRキット、およびその中にある、3mM MgClを含む緩衝剤(Qiagen、バレンシア、CA)を使用して行う。1ng鋳型DNAおよび200mMの各プライマーは、40μLの反応体積に対して使用する。例示的な多重反応に対するサイクル条件は、以下の通りである。
1−95℃で15分
2−95℃で30秒
3−61℃で2分(1〜3を35サイクル)
4−72℃で30秒
5−72℃で10分
6−60℃で30分
7−4℃で保持
【0124】
PCR反応の開発および最適化は、当業者にとって日常的なものであり、過度の実験をせずに遂行することができる。
【0125】
実施例2:核酸精製
市販されているZipTips(登録商標)を使用した、PCR混合物の半自動精製の手順
JiangおよびHofstadlerによって記載されるように(Y.Jiang and S.A.Hofstadler Anal.Biochem.2003,316,50−57)、増幅された核酸混合物は、陰イオン交換樹脂を含有する、市販されているピペットチップで精製することができる。ZipTips(登録商標)AX(Millipore Corp.、ベッドフォード、MA)の前処理に関して、以下のステップをプログラムし、96ウェルプレート(Marshall Bioscience)の個々のウェルの原液から取られた液体とともに、Evolution(商標)P3液体処理器(Perkin Elmer)によって行った。ZipTips(登録商標)AXのラックを搭載するステップ、15μlの10%NHOH/50%メタノールでZipTips(登録商標)AXを洗浄するステップ、15μlの水でZipTips(登録商標)AXを8回洗浄するステップ、15μlの100mMのNHOAcでZipTips(登録商標)AXを洗浄するステップ。
【0126】
PCR混合物の精製に関して、20μlの粗PCR産物は、BioHit(ヘルシンキ、フィンランド)多チャネルピペットを使用してMJ研究用プレートの個々のウェルに移した。96ウェルプレートの個々のウェルは、300μlの40mM NHHCOで充填した。96ウェルプレートの個々のウェルは、300μlの20%メタノールで充填した。MJ研究用プレートは、10μlの4%NHOHで充填した。2つの容器は、脱イオン水で充填した。すべてのプレートおよび容器は、所定の順序で、Evolution P3(EP3)(Perkin−Elmer、ボストン、MA)分注ステーションの水平部分に配置した。以下のステップをプログラムし、Evolution P3分注ステーションによって行った。EP3P50ヘッドへ20μlの空気を吸引するステップ、EP3P50ヘッドへZipTips(登録商標)AXの前処理されたラックを搭載するステップ、ZipTips(登録商標)AXから20μlのNHHCOを分注するステップ、PCR溶液の吸引/分注によって、ZipTips(登録商標)AXへPCR産物を18回搭載するステップ、15μlの40mM NHHCOで、結合核酸を含有するZipTips(登録商標)AXを8回洗浄するステップ、15μlの20%メタノールで、結合核酸を含有するZipTips(登録商標)AXを24回洗浄するステップ、15μlの4%NHOHで、吸引/分注によってZipTips(登録商標)AXから精製された核酸を18回溶出するステップ。ESI−MSによる分析のための最終調製に関して、各試料は、50mMピペリジンおよび50mMイミダゾールを含有する70%メタノールで、1:1の体積に希釈した。
【0127】
イオン交換樹脂電磁ビーズを使用する質量分析のためのPCR産物の溶液捕捉精製
以下の手順は、共同所有され、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、2004年9月17日出願の公開米国特許出願第US2005−0130196号に開示される。電磁ビーズに連結されたイオン交換樹脂での核酸の溶液捕捉に関して、25マイクロリットルのBioCloneアミン終端超電磁ビーズの2.5mg/ml懸濁液は、約10pMの典型的なPCR増幅産物を含有する25〜50マイクロリットルのPCRまたはRT−PCR反応物に添加する。懸濁液は、液体を除去し、その後、電磁ビーズを分離する磁性分離器を使用した後、ボルテックス、ピペットでの取り出し、または振とうによって約5分間混合する。その後、増幅産物を含有する電磁ビーズは、50mM重炭酸アンモニウム/50%メタノールまたは100mM重炭酸アンモニウム/50%メタノールで3回洗浄し、その後、50%メタノールで3回さらに洗浄する。結合PCRアンプリコンは、較正基準を含むこともできる、25mMピペリジン、25mMイミダゾール、35%メタノールを含有するエレクトロスプレー適合の溶出緩衝剤で溶出する。この手順ステップは、マルチウェルプレート中で、および液体処理器、例えば、Evolution(商標)P3液体処理器を使用して、および/またはロボットアームの制御の下で行うことができる。この条件において溶出された核酸は、ESI−MSによる分析が可能である。液体処理器を使用する、単一96ウェルプレートにおける試料の精製に要する時間は約5分である。
【0128】
実施例3:質量分析
使用したESI−FTICR質量分析計は、能動的に遮蔽された7テスラ超電導磁石を使用する、Bruker Daltonics(ビルリカ、MA)のApexII70eエレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(ESI−FTICR−MS)である。能動的遮蔽は、超電導磁石からの縁を成す磁場の大部分を、比較的少ない容量へ制約する。そのため、CRTモニタ、ロボットの構成要素、および別の電子機器等の、浮遊磁場によって悪影響を受ける場合がある構成要素は、ESI−FTICR質量分析計に極めて接近して操作することができる。パルス配列制御およびデータ取得のすべての態様は、BrukerのXmassソフトウェアを実行する1.1GHz PentiumIIデータステーション上で行う。20μLの試料アリコートは、データステーションによって引き起こされたCTC HTS PAL自動サンプラ(LEAP Technologies、キャルボロ、NC)を使用して、96ウェルのマイクロタイタープレートから直接抽出する。試料は、75μL/時間の流速で、ESI源に直接注入する。イオンは、ガラス脱溶媒和キャピラリーの金属化された末端から約1.5cmに位置する軸外接地エレクトロスプレープローブを使用する、改変されたAnalytica(ブランフォード、CT)源において、エレクトロスプレーイオン化によって形成する。ガラスキャピラリーの気圧端は、データ取得の間、ESI針に対して6000Vでバイアスされる。乾燥N/Oの逆流を使用して、脱溶媒和工程を援助する。イオンは、質量分析されるトラップ内のイオンセルへの注入の前に、rf−only hexapole、スキマーコーン、および補助ゲート電極から成る外部イオン容器に蓄積する。
【0129】
スペクトル取得は、連続負荷サイクル方法で行い、それにより、トラップ内のイオンセルにおけるイオン検出と同時に、イオンは六重極イオン容器に蓄積する。イオンが、トラップ内のイオンセルに移動する、1.2msの移動イベントの後、イオンに、8000〜500m/zに対応する1.6msのチャープ励起を行う。データは、500〜5000(225K Hzのバンド幅にわたる1Mデータ点)のm/z範囲にわたって取得した。各スペクトルは、32の過渡信号を補助添加した結果である。過渡信号は、マグニチュード法フーリエ変換および内部質量基準を使用する事後較正の前に、一度、ゼロ充填する。ICR−2LSソフトウェアパッケージ(G.A.Anderson、J.E.Bruce(Pacific Northwest National Laboratory、ランドリッチ、WA、1995))は、質量スペクトルのノイズを除去し、DNAに対して改変された「平均化」フィッティング法(M.W.Senko,S.C.Beu,F.W.McLafferty,J.Am.Soc.Mass Spectrom.1995,6,229)を使用して、モノアイソトピック種の質量を計算するために使用する。この方法を使用して、モノアイソトピック分子量を計算する。
【0130】
使用されたESI−TOF質量分析計は、Bruker Daltonics MicroTOF(商標)に基づく。ESI源からのイオンは、直交イオン抽出し、検出の前にリフレクトロンに集中させる。このTOFは、上記のFTICRに対して説明したものと同じ自動試料処理および流体工学を備える。イオンは、FTICR ESI源と同じ軸外噴霧器およびガラスキャピラリーを備える標準MicroTOF(商標)ESI源において形成する。結果として、線源条件は、上述のものと同じである。外部イオン蓄積は、データ取得の間のイオン化負荷サイクルを改善するためにも使用する。TOF上での各検出イベントは、75μsにわたってデジタル化された75,000データ点を含む。
【0131】
試料送達スキームにより、試料アリコートを高流速でエレクトロスプレー源に急速に注入し、その後、ESI感度の改善のためにかなり低い流速でエレクトロスプレーすることが可能となる。試料を注入する前に、移送ラインおよび噴霧針を洗い流し、試料汚染/キャリーオーバーを回避するために、緩衝剤のボーラスを高流速で注入する。洗い流しステップの後、自動サンプラは、次の試料を注入し、流速は、低流に変換する。短い平衡遅延の後、データ取得を開始する。スペクトルが、補助添加されるにつれて、自動サンプラは、継続してシリンジを洗い流し、注射器および試料移送ラインを洗い流すための緩衝剤を補充する。概して、試料のキャリーオーバーを回避するために、2回のシリンジ洗浄および1回の注射器洗浄を要する。決められた選別プロトコルを行なう間、新しい試料混合物は、106秒ごとに注入する。より短い取得時間と併用する場合、1分当たり1スペクトルをほんの少し下回る割合で質量スペクトルの取得を容易にするシリンジ針用高速洗浄ステーションも実行した。
【0132】
原質量スペクトルは、内部質量基準で事後較正され、モノアイソトピック分子量に対してノイズを除去する。明瞭な塩基組成は、相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドの正確な質量測定から得られる。定量的結果は、ピーク高さを、1ウェルにつき500分子で各PCRウェルに存在する内部PCR較正基準と比較することによって得られる。較正方法は、共同所有され、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第60/545,425号において開示される。
【0133】
実施例4:分子量改変されたデオキシヌクレオチド三リン酸塩を使用する、増幅産物の塩基組成の新たな決定
4つの天然ヌクレオチドの分子量は、比較的狭い分子量の範囲(A=313.058、G=329.052、C=289.046、T=304.046、表2を参照)を有するため、塩基組成の割り当てにおける不明確性の持続する根源は、以下のように生じる場合がある。異なる塩基組成を有する2つの核酸鎖は、2つの鎖間での塩基組成の差異が、C←→T(+15.000)と組み合わせたG←→A(−15.994)である場合、約1Daの差異を有し得る。例えば、A27302121の塩基組成を有する1つの99mer核酸鎖は、30779.058の理論的分子量を有するが、A26312220の塩基組成を有する別の99mer核酸鎖は、30780.052の理論的分子量を有する。分子量における1Daの差異は、分子量測定の誤差内にあり得るため、4つの天然ヌクレオチドの比較的狭い分子量の範囲は、不確実性因子を与える。
【0134】
本例は、1つの質量タグ付ヌクレオチドおよび3つの天然ヌクレオチドを有する核酸の増幅により、この理論的な1Daの不確実性因子を排除するための手段を提供する。
【0135】
増幅反応、またはプライマー自体において、有効質量を4つのヌクレオチド(dNTP)の1つに添加することにより、C←→Tと組み合わせたG←→Aのイベント(表1)から発生する不明確性から生じる、得られた増幅産物の質量における有意差(有意に1Daより大きい)が発生する。そのため、同じ、5−ヨード−C←→T(−110.900)イベントと組み合わせたG←→A(−15.994)イベントにより、126.894の分子量の差異が発生する。塩基組成A27305−ヨード−C2121(33422.958)の分子量を、A26315−ヨード−C2220(33549.852)と比較する場合、理論的分子量の差異は、+126.894となる。分子量測定の誤差は、この分子量の差異に関して有意ではない。さらに、該99mer核酸の測定された分子量と一致する唯一の塩基組成は、A27305−ヨード−C2121である。対照的に、質量タグがない類似の増幅は、18の可能性のある塩基組成を有する。
【0136】
(表2)天然ヌクレオチドおよび質量改変されたヌクレオチド5−ヨード−Cの分子量および塩基転位から生じる分子量の差異

【0137】
実施例5:データ処理
増幅産物の質量スペクトルは、最尤処理、または、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第20040209260号において記載される、レーダー信号処理に広く使用されるもの等を使用して、独立に分析する。GenXと称されるこの処理装置は、まず、入力データに対して各塩基組成集合のための整合フィルタを実行することによって、各プライマーに対する質量分析計への入力の最尤の推測を行う。これは、各プライマーに対する検量体へのGenX反応を含む。
【0138】
該アルゴリズムは、パフォーマンス予測を強調し、天然由来有機体および環境汚染物といった複雑なバックグラウンドを伴う状態に関する、検出の可能性に対する偽陽性の可能性のプロットに至る。整合フィルタは、各病原体に対して使用される一連のプライマーを前提として、信号値の推測的予想から成る。ゲノム配列データベースは、質量塩基数整合フィルタを定義するために使用する。データベースは、周知の細菌性病原体の配列を含み、危険な有機体および良性のバックグラウンド有機体を含む。後者は、バックグラウンド有機体によって生成されるスペクトルの特徴を推測し控除するために使用する。周知のバックグラウンド有機体の最尤検出は、整合フィルタ、およびノイズ共分散の累積合計推定量を使用して行う。バックグラウンドシグナル強度は、推測され、その後控除される特徴を形成するために、整合フィルタとともに使用する。最尤処理は、有機体に対する整合フィルタ、およびノイズが除去されたデータに対するノイズ共分散の累積合計推定量を使用する同様の方法で、この「ノイズが除去された」データに適用する。
【0139】
各プライマーに対するアンプリコンを同定する病原体のすべての塩基組成の振幅を、較正し、1つの有機体当たりの最終最尤振幅推定量を、複数の単一プライマー推定量に基づいて作成する。すべてのシステムノイズのモデルは、この二段階最尤計算に組み込む。該処理装置は、スペクトルに含有される各塩基組成の分子数を報告する。適したプライマーセットに対応する増幅産物の量は、増幅反応の完了時に残るプライマーの量とともに報告する。
【0140】
当業者は、この実施例のシグナル処理法が、本明細書に記載されるSTR分析の方法の中で使用することができることを認識する。
【0141】
実施例6:同位体欠失dNTPを有する核酸の増幅
13Cおよび生体高分子における別の重同位体の天然存在度のため、正確な質量測定は、分子量が増えるにつれてより困難である。さらに、同位体分布の幅は、本質的に、高分子量でより広いため、正確なモノアイソトピック分子量測定を困難にする。単一のアンプリコンからのシグナルが、より多くの同位体ピークに拡大するにつれて、固有の感度損失も存在する。タンパク質のESI−MS分析でも、類似する問題が生じる。
【0142】
PCR反応での使用に対して適切な同位体欠失dNTPは、主な炭素源が、13C欠失グルコースおよび15N欠失硫酸アンモニウムである、同位体欠失培地で成長する細菌から生成することができる。一旦細菌を、臨界密度まで増殖させ、同位体欠失ゲノムDNAを抽出する。その後、DNAを、デオキシヌクレオチド三リン酸が酵素的に合成される元となるモノヌクレオチドに消化する。この方法により、わずかな費用で、同位体欠失試薬を製造することが可能となるはずである。この方法に対する原理証明は、近年、Tangおよび共同研究者らによって公開された(Tang et al.,Anal.Chem.,2002,74,226−231)。同位体欠失PCR産物を生成することによって、感度が3〜5倍改善されることが期待される(シグナルが、より少数の同位体ピーク上で拡大するため)。より重要なことには、この方法は、質量スペクトルで見られるスペクトルの混雑を軽減し、同様の質量またはm/zの種が、重複MSピークを生成する程度を低減させるはずである。
【0143】
実施例7:法医学的DNAタイピング/ヒト個体識別鑑定に対するプライマー対の設計
図1aは、プライマー設計を含む、STRアッセイの開発のための一般的方法を概説するフロー図である。プライマーは、この図に概説する手順に従って、13のコアCODIS遺伝子座およびアメロゲニン(図1bに示される)のそれぞれに対して設計した。対立遺伝子参照配列は、各STR遺伝子座に対して、公的に入手可能な短鎖タンデム反復インターネットデータベース(STRBase)から得られ、複数のプライマーは、各STR遺伝子座に対して設計した。複数のプライマーは、STR反復に隣接するか、または(極めて接近して)ほぼ隣接する保存配列領域にハイブリダイズするように設計した。例えば、表3は、TH01(HUMTH01とも称される)STR遺伝子座に隣接する保存領域内でハイブリダイズするように設計した(図2に示されるように)複数のプライマーを記載する。これらのプライマーは、表5にも記載する。表3は、対立遺伝子9をそれぞれのプライマー対で増幅する場合に予測したアンプリコンの長さ、および特徴付けられた対立遺伝子に基づくアンプリコンの予測した範囲を示す。
【0144】
(表3)HUMTH01 STR遺伝子座に対するプライマー対の選択

【0145】
図3においてTH01に対して例示するように、各STR遺伝子座に対する反復構造(反復配列の単位)は、その後、予測質量、および、可変領域(反復配列)および特徴付けた各対立遺伝子に対してプライマーがハイブリダイズする隣接配列を含む、STRを同定する予測アンプリコンの塩基組成を含むデータベースを構築するために使用した。塩基組成および分子量は、データベースにおけるプライマー対および対立遺伝子に対してインデックスした。
【0146】
表4は、対応するGenBankアクセッション番号とともに、13のCODIS STRおよびAMEL遺伝子座のそれぞれに対するプライマーを設計するために使用する参照対立遺伝子を示す。
【0147】
(表4)CODISSTR/AMELに対するプライマー対の設計のための参照対立遺伝子、および予測アンプリコンの長さ

【0148】
13のCODIS STR対立遺伝子およびAMELに対して設計されたプライマー対を表5に記載する。この表における順方向および逆方向プライマーの名称は、上述の標準的プライマー対の命名に従う。
【0149】
(表5)ヒトSTR DNA分析における使用のために設計したプライマー対







【0150】
実施例8:PCRおよび質量分析を使用する初回プライマー対試験
初回プライマー試験は、標準PCR反応および本明細書に記載した方法を使用して行った。一例においては、初回試験に関して、鋳型は、内部標準Seracare血液試料N31773由来の10〜20ngのDNAであった。50μL反応試料(1.5mM MgCl2、400mMベタイン、200μM各dNTP、250μM各プライマーおよび4単位のAmplitaq Gold(登録商標))を、54℃のアニール温度による35サイクル反応に供し、さらなる分析(図7に示す)のために選択した4%アガロースゲル上および好ましいプライマーにより解析した。
【0151】
プライマー有効性の初回検証の後、増幅産物の分子量を、FTICR−MSおよびTOF−MSの両方を使用して決定した。8つのTPOXプライマー対に対する分子量の決定の例を図4に示す。塩基組成は、本明細書において提供した方法を使用して分子量から計算した。分子量および塩基組成は、上述のコンピュータによって構築したプライマー対に対してインデックスした参照(事前に特徴付けられた)対立遺伝子のデータベースと比較した。対立遺伝子コール(STR型の同定)を、個別に各産物鎖を使用して作成し、両鎖を使用してコールを確証する。ほとんどの遺伝子座に対する対立遺伝子は、構築したデータベースから直接同定した。しかしながら、場合によっては、事前に特徴付けた対立遺伝子を使用して構築したデータベースにおいて、直接一致は見つからなかった。、STR対立遺伝子が単一ヌクレオチド多型性(SNP)等の配列多型を含み、事前に特徴付けたか、または公知の対立遺伝子と同じ配列の長さを有するが、特徴付けた対立遺伝子と比較して異なる塩基組成を含む対立遺伝子を、本明細書において提供した方法によって解析した場合に、この一致の欠如が生じた。特徴付けた対立遺伝子13と比較した、AからTへの(A→T)SNPを含んだD13S317遺伝子座由来の対立遺伝子に対する、そのような一例を図5に示す。初回にデータ投入したデータベースとの一致が存在しない場合、長さおよび塩基組成は、アンプリコンの両鎖由来の分子量およびデータベースに追加された情報を使用して得た。初回試験においては、図6に示すように、58のSTRプライマー対を、内部陽性対照試料を使用して分析した。対立遺伝子は、1つのプライマー対を除くすべてのプライマー対に対してマップした。FTCIR−MSおよびTOF−MSを使用して、同様の結果を得た。
【0152】
実施例9:種特異性、対照、感度、再現性および正確性試験
ヒトSTRを標的とするように作成したすべてのプライマー対に関して、グラム陽性およびグラム陰性菌、酵母を含む、複数のヒト以外のDNA源、および2つのヒト以外の哺乳類(ネコおよびイヌ)由来のDNA源から単離したDNAに対してアッセイを行うことにより、ヒトDNAに対する特異性を試験する。ヒトDNAの10倍までの過剰量のヒト以外のDNAを、ヒト標的プライミングまたは完全なデータ処理および分析の結果に干渉するその能力に対して試験する。血液および唾液から得た、複数の十分に特徴付けたDNA試料は、本明細書において提供した方法に対する陽性対照としての役割をし、核酸を有しない水は、陰性対照としての役割をする。
【0153】
感度限界は、鋳型として少なくとも5つの異なるドナーDNA試料を使用して、希釈・消滅(DTE)実験によって確立される。血液由来のDNA試料を、これらの研究に使用する。感度は、試験するすべての鋳型に関して、同じ鋳型に対する2回の再現性実験において完全で正確なプロファイルを産出するDNAの最も低いインプットとして定義する。確実な感度は、アッセイに対する絶対感度限界より2〜10倍のインプット鋳型の量として、保存的に定義する。感度は、Quantifilerアッセイ(Green,R.L.;Roinestad,I.C.;Boland,C.;Hennessy,L.K.J Forensic Sci 2005,50,809−825)によって決定される総DNA質量インプット(例えば、pg)に対して表す。再現性は、50回以上の3つの異なる鋳型の試験によって評価し、確実な範囲にあると判断したインプットDNA濃度で同等のタイピング結果を得る能力として定義する。
【0154】
アッセイは、FBIおよびAFDIL研究所によって供給された盲検試料のパネルにより、精度に対して試験されている。これらの研究所は、従来のSTRタイピング方法によって既にタイプされている試料を提供する。口腔スワブ、血液パンチ、またはDNA抽出物から成る試料は、本明細書において提供した方法によって分析する。最低でも50〜250の様々な試料を、この方法で分析する。
【0155】
実施例10a:AFDIL由来の25の血斑の予備分析
エレクトロスプレーTOF−MSを使用して、上述の方法および組成を使用するSTRタイピングに対して、AFDILから入手した25の盲検血液試料を使用した。試料は、血液ろ紙パンチとして提供した。1つの試料につき、3つのパンチを試験した。血液パンチは、乾燥血斑に対するプロトコルを使用して、Qiagen QIAmp(登録商標)DNAミニキットで処理した。12のコアCODIS STR遺伝子座およびAMELは、上記の方法を使用して分析した。vWA、TPOX、TH01、FGA、D18S51、D16S539、D13S317、D8S1179、D7S820、D5S818、およびD3S1358に対する2つの別々のプライマー対を、対立遺伝子コールの二重検証のために分析した。PCR産物を53塩基短縮する、D21S11用に再設計されたプライマー対を使用した。AMELに対して、1つのプライマーのみを使用した。結果を図8に要約する。1つの試料、I−0066に関する詳細な結果を図9に示す。図8に示すように、参照配列に対する複数のSNPは、25の試料において、複数のSTR遺伝子座に対して同定され、決められたSTRタイピングにおいて使用された一部の遺伝子座が、本質的に、配列において多型であることを証明した。従来のSTRタイピングPCR方法によってホモ接合性であると同定される個体由来のいくつかの試料は、多型性に基づいてヘテロ接合性であることが明らかとなった。表6は、25のAFDIL試料および1つの内部陽性対照(N31773)の、この分析において同定したSNPの結果を要約する。
【0156】
(表6)25のAFDIL試料において同定したSNP

D13S317対立遺伝子のほとんどは、参照(GenBank G09017)配列と比較して、A→T SNPを有する。対立遺伝子16は、A→T SNPを有さなかった。
**D5S818対立遺伝子のほとんどは、参照(GenBank G09017)配列と比較して、T→C SNPを有する。対立遺伝子17は、T→C SNPを有さなかった。
【0157】
図8および表6で説明したように、各25の盲検試料に関して、対立遺伝子表示(STR型)を、標準STR法を使用して事前に決定された長さの対立遺伝子データと一致した13のCODIS遺伝子座のうちの12に対して決定した。さらに、SNPが、標準的方法によって解析不可能であった多数の試料において解析されたという点において、本方法は、以前の方法より高い分解能を提供した。D21S11の型は、25の試料のうち15の試料に対して決定した。106の明らかなSNPを、特徴付けられた対立遺伝子に対して同定した。4つのSTR遺伝子座マーカー(D8S1179、D5S818、D13S317、およびvWA)の場合、特定の試料に対して、従来のSTRタイピングによってホモ接合性として以前に同定され、遺伝子座でヘテロ接合性であることが明らかとなったSNPが見られた。すべての場合において、SNPは、1228で見られるT→C SNPおよびG→A SNPを隠すプライマー対1227を例外として、各遺伝子座で使用した2つのプライマー対間で一致した。
【0158】
実施例10b:NISTから事前に抽出した95の参照試料の予備分析
エレクトロスプレーTOF−MSを使用して、上述の方法および組成を使用するSTRタイピングに対して、NISTから事前に抽出した95の参照試料を使用した。13のコアCODIS STR遺伝子座およびAMELは、上述の方法を使用して分析した。抽出した試料の分析は、本明細書に記載した多重反応において行った。
【0159】
実施例11:多重STRタイピングプライマーおよび方法の作成
同じ反応で2つ以上のSTR遺伝子座を解析する同じ反応混合物において、同時に2つ以上のプライマー対を使用して、本明細書において提供した方法を行うことが可能な多重反応を開発した。多重化は、エレクトロスプレーMS−TOFを使用して行なった。初期研究で使用した2つ、3つ、4つおよび6つのプライマー対の組み合わせを、多重作成の初期段階で試験した。多重反応の改善のために、以下の条件を使用した。
2つの6重多重反応における10遺伝子アッセイ(本明細書に記載したFBIおよびAFDIL試料)
3mM Mg++を含むQiagen多重PCRキット
200mMの各プライマー
1反応当たり1ngの鋳型
40μL反応
サイクル条件:
1−95℃で15分
2−95℃で30秒
3−61℃で2分
4−72℃で30秒(2〜4を35サイクル)
5−72℃で4分
6−60℃で30分
7−4℃で保持
5つの3重および3つの1重反応における14遺伝子座アッセイ(本明細書に記載したNIST試料)
3mM Mg++を含むQiagen多重PCRキット
180ナノモル〜300ナノモルの各プライマー
1反応当たり1ngの鋳型
40μL反応
1−95℃で15分
2−95℃で30秒
3−61℃で2分
4−72℃で25秒(2〜4を40サイクル)
5−72℃で4分
6−60℃で30分
7−4℃で保持
【0160】
多重化に関して、PCR反応は、3mM MgClを含むQiagen多重反応緩衝剤を使用して行い、好ましいアニール温度として61℃を使用した。この高マグネシウム濃度(最適な多重化条件を提供する)は、初回試験において、上述の内部標準試料および本来のプライマー対を使用して得られた分裂(+Aおよび−A)ピークを示すデコンボリューションされたスペクトルの単一ピーク図を示す図10aに示される、鋳型より長い、いくつかのPCR増幅産物を生じさせることができる、増幅産物の3’末端に対する非鋳型アデニル化に有利に働く。高マグネシウム濃度が望ましいため、ショルダーピークまたは分裂ピークを回避するために、完全なアデニル化に有利に働くように5’末端にGまたはCのいずれかを含む8つのSTR遺伝子座(TH01、TPOX、D8S1179、D5S818、CSF1PO、D7S820、D13S317、およびD16S539)に対して、新規のプライマーを設計した(表5に示す)。サイクル反応最後のステップ6(60℃で30分)も、アデニル化に有利に働く。
【0161】
図10bは、完全なアデニル化に有利に働く、4つの新規に設計されたプライマー対(番号2856、2822、2818、2816)から成る4重反応(同時に使用される4つのプライマー対のセット)を使用して得られた、分裂ピークがない単一ピークスペクトルを示す。別の4つの新規に設計されたプライマー対(2815、2817、2819、および2820)を使用する第2の4重反応も試験し、同様の好ましい結果を提供した。そのため、それぞれ、4つの異なるSTR遺伝子座を解析できる2つの多重反応を作成した。
【0162】
それぞれ6つのプライマー対を有する多重反応を作成するために、2つの追加のプライマー対(2823−vWAおよび2824−AMEL、表5にも示される)を、各4重反応に添加した。表7は、これらの2つの共通プライマー対を共有する、2つの6重反応プライマー対の群(1および2)を示す。
【0163】
(表7)多重STRプライマー対

【0164】
図11aおよび図11bは、デコンボリューションされたスペクトル、対立遺伝子の割り当て、および本明細書において提供した方法および各6重反応に対する内部標準試料を使用して生成された対立遺伝子プロットを示す。
【0165】
14遺伝子座の多重反応は、以下の通りに構成した。
(表8)

【0166】
実施例12:盲検AFDIL試料を使用した多重STRタイピングプライマーの初回試験
上記の25の盲検AFDIL血液パンチ試料は、1反応当たり1ngの鋳型DNAでの多重化に対する上述の条件を使用した多重反応において、2群の6重プライマーを使用して試験した。結果を図12に要約する。
【0167】
示したように、表7に記載した多重プライマーで試験した遺伝子座に関し、1重タイピング反応で見られたすべてのSNPを含み、1重STRタイピングの間で事前に同定されたすべての対立遺伝子が確認された。1重反応において同定されなかったSNPはなかった。そのため、6重プライマー対アッセイでの結果は、1重アッセイと一致した。
【0168】
実施例13:多重プライマーセットを使用する25の新規AFDIL盲検試料のSTRタイピング
AFDIL由来の25の新規盲検血液パンチを、Qiagen血斑プロトコルを使用して上述のように精製した。qPCR、および6重の多重プライマー混合物および上述の方法を使用するSTRタイピングのために1反応当たり使用した1ngを使用して、DNAを定量化した。反応は、血液試料SC35495を陽性対照として、水を陰性対照として使用して、マルチウェルプレートにおいて行った。結果を図13aに要約する。図14に、1つの試料(AF−1)に対する例を示す。図13aに示されるように、AFDILは、すべての対立遺伝子(長さ)が多重化方法によって同定されたことを確認した。さらに、SNP(データベースにおける特徴付けられた対立遺伝子に対する)を、従来のSTRタイピングを使用して検出されなかった25の試料のうちの23の試料において、少なくとも1つの遺伝子座で同定した。
【0169】
実施例14:多重プライマーセットを使用する22の新規FBI盲検口腔スワブ試料のSTRタイピング
FBI由来の22の盲検口腔スワブ試料を、AFDIL試料に対して上述したように、2つの6重の多重プライマーを使用して試験した。試料は、二つ組とし、陰性対照は、水およびDNAを含有しないFBI−100とした。結果を図13bに要約する。完全なSTRプロファイル(試験した遺伝子座に対する)を、すべての試料において同定した。22の試料のうちの21の試料において、少なくとも1つのSNPが、参照データベースに対して見られた。結果は、対立遺伝子コールの検証のために、FBIに送付する。
【0170】
実施例15:多重プライマーセットでのSTRタイピングを使用した47の盲検試料において見られたSNP変異の概要
図13cは、これらの47の盲検試料(AFDIL/FBIより)に対する、SNPを有する対立遺伝子の数、SNPを含有する対立遺伝子コールの割合、および上述の方法を使用して解析された同じ長さのヘテロ接合性遺伝子座の数を示す。本明細書において提供した方法を使用した6重反応で試験したこれらの試料に対する結果から、決められたSTRタイピングにおいて使用した一部の遺伝子座は、配列(産物の塩基組成によって証明された)および長さにおいて本質的に多型であるため、本明細書において提供した方法を使用するSTRタイピングは、法医学的および別のDNA同定の適用に有用な迅速な自動方法により、分解能の付加的レベルを提供することが証明される。
【0171】
実施例16:NISTから得られた95の試料の結果
NISTから得られた95の試料において、多型は、13のコアCODIS遺伝子座のうちの10において見られた。合計364の多型対立遺伝子が、1330の遺伝子型割り当て(14遺伝子座でタイプされた95の試料)において検出された。13の区別できる変異対立遺伝子は、D21S11、vWAにおける13、D3S1358における11、D5S818における8つ、D8S1179における7つ、D13S317における6つ、D7S820における4つ、D18S51における3つ、FGAにおける2つ、D16S539における1つで同定された。表9は、参照対立遺伝子に対して存在するSNPでアノテーションされた多型対立遺伝子とともに、3集団群それぞれに対して見られた各対立遺伝子の頻度を示す。D3S1358に対する、95の試料において見られた対立遺伝子の60%は、参照対立遺伝子に対して多型であった。この遺伝子座に関して、各対立遺伝子の長さは、集団において次の3つの多型変異を有すると考えられる:1塩基対立遺伝子(参照の選択は、多少任意である)、1つのG→A SNPを有する対立遺伝子、2つのG→A SNPを有する対立遺伝子。この遺伝子座の配列を報告する2つの過去の研究によって、TCTAおよびTCTG反復を有する複雑な反復構造が報告されている。これらの研究のうちの1つにおいて、複数の同じ長さの対立遺伝子対が、D3S1358、vWAおよびFGAに関する異なる配列構造とともに報告されており、我々の結果と一致する。加えて、我々の結果は、D3S1358、vWAおよびD21S11における、複数の対立遺伝子の長さに関する、2つ以上の同じ長さの変異の存在を示す(我々は、これらの遺伝子座のそれぞれにおける複数の対立遺伝子長のそれぞれについて、3つの変異を観察した)。表9は、95のNIST試料と組み合わた、47のFBIおよびAFDIL試料における多型対立遺伝子に対する観察の全体的な頻度を示す。
【0172】
(表9)パート1.NIST由来の31人の白人、32人の黒人および32人のヒスパニック系の試料における、集団ごとの各対立遺伝子の観察頻度

【0173】
(表9)パート2.NIST由来の31人の白人、32人の黒人および32人のヒスパニック系の試料における、集団ごとの各対立遺伝子の観察頻度

【0174】
したがって、別の実施形態は、質量分析および/または塩基組成分析により対立遺伝子を分析することによって、STR遺伝子座に関する同じ長さに基づく対立遺伝子を有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。したがって、追加の実施形態は、表9に記載されるそれらの多型性を含むが、それらに限定されない、同じ長さに基づく対立遺伝子内で、従来の長さ/大きさに基づくSTR分析によって解析されない1つもしくは複数の単一ヌクレオチド多型性を検出することによって、STR遺伝子座に関する同じ長さに基づく対立遺伝子を有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。本明細書に記載した各SNPは、法医学的試料が属する、例えば、白人、黒人またはヒスパニック系の集団に関する情報を提供することが可能である。
【0175】
追加の実施形態においては、2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法は、従来の長さ/大きさに基づくSTR分析が該2つ以上の法医学的試料を解析しない場合に行うことができる。追加の実施形態は、1つもしくは複数のSTR遺伝子座増幅産物を生成するために1つもしくは複数のSTR遺伝子座を増幅するステップ、質量分析によってSTR遺伝子座増幅産物の質量測定を得るステップ、質量測定からSTR遺伝子座塩基組成を計算するステップ、法医学的DNA試料源を同定するために、2つ以上の試料のSTR遺伝子座塩基組成を、互いに比較する、および/または公知のDNA試料のSTR遺伝子座塩基組成のデータベースと比較するステップによって、2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。該方法は、対立遺伝子コールおよび/またはSNP表示を割り当てるステップをさらに含むことができる。
【0176】
別の実施形態は、D13S317遺伝子座に対して、A→TのSNPに基づく9の対立遺伝子コール、A→TのSNPに基づく10の対立遺伝子コール、A→TのSNPに基づく11の対立遺伝子コール、A→TのSNPに基づく12の対立遺伝子コール、A→TのSNPに基づく12の対立遺伝子コール、A→TのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、またはA→TのSNPに基づいて15の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0177】
別の実施形態は、D16S539遺伝子座に対して、T→CのSNPに基づく9の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0178】
別の実施形態は、D18S51遺伝子座に対して、T→CのSNPに基づく13.2の対立遺伝子コール、T→CのSNPに基づく15の対立遺伝子コール、またはT→CのSNPに基づく20の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0179】
別の実施形態は、D21S11遺伝子座に対して、A→GのSNPに基づく27の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく29の対立遺伝子コール、A→GのSNPに基づく29の対立遺伝子コール、A→GのSNPに基づく29.2の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく30の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく30.2の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく31の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく31.2の対立遺伝子コール、A→GのSNPに基づく32の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく32.2の対立遺伝子コール、T→AのSNPに基づく34.1の対立遺伝子コール、2A→2GのSNPに基づく36の対立遺伝子コール、または3A→3GのSNPに基づく37の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0180】
別の実施形態は、D3S1358遺伝子座に対して、G→AのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく14の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく15の対立遺伝子コール、2G→2AのSNPに基づく15の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく16の対立遺伝子コール、2G→2AのSNPに基づく16の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく17の対立遺伝子コール、2G→2AのSNPに基づく17の対立遺伝子コール、A→GのSNPに基づく17の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく18の対立遺伝子コール、または2G→2AのSNPに基づく18の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0181】
別の実施形態は、D5S818遺伝子座に対して、G→TのSNPに基づく8の対立遺伝子コール、G→TのSNPに基づく9の対立遺伝子コール、G→TのSNPに基づく10の対立遺伝子コール、G→TのSNPに基づく11の対立遺伝子コール、G→TのSNPに基づく12の対立遺伝子コール、G→TのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、G→CのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、またはG→TのSNPに基づく14の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0182】
別の実施形態は、D7S820遺伝子座に対して、T→AのSNPに基づく10の対立遺伝子コール、T→AのSNPに基づく11の対立遺伝子コール、T→AのSNPに基づく12の対立遺伝子コール、またはT→AのSNPに基づく13の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0183】
別の実施形態は、D8S1179遺伝子座に対して、A→GのSNPに基づく12の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、C→GのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく14の対立遺伝子コール、A→GのSNPに基づく15の対立遺伝子コール、A→GのSNPに基づく16の対立遺伝子コール、またはG→AのSNPに基づく17の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0184】
別の実施形態は、FGA遺伝子座に対して、G→AのSNPに基づく2612の対立遺伝子コール、またはT→CのSNPに基づく28の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0185】
別の実施形態は、vWA遺伝子座に対して、G→AおよびC→TのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、C→TのSNPに基づく13の対立遺伝子コール、T→CのSNPに基づく14の対立遺伝子コール、G→AおよびC→TのSNPに基づく14の対立遺伝子コール、A→Gおよび2C→2TのSNPに基づく14の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく15の対立遺伝子コール、A→GのSNPに基づく16の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく17の対立遺伝子コール、G→AのSNPに基づく18の対立遺伝子コール、2A→2GのSNPに基づく18の対立遺伝子コール、2A→2GのSNPに基づく19の対立遺伝子コール、T→AのSNPに基づく20の対立遺伝子コール、またはA→GのSNPに基づく20の対立遺伝子コールを有する2つ以上の法医学的DNA試料を識別する方法である。
【0186】
(表10)

NIST試料由来の対立遺伝子のサブセットは、検証のために配列した。これらの大部分は、SNPを検証、確認し、相対的位置を同定するために、塩基対立遺伝子−変異対立遺伝子対として行った。対立遺伝子配列によって、いずれの場合においても参照対立遺伝子に対する配列多型の存在を確認し、その位置の同定が可能となった。
【0187】
(表11)ESI−TOF−MSアッセイにおいて見られた多型の検証のための、NIST試料から配列決定した選択した対立遺伝子(太字)

【0188】
本明細書に記載した改変に加え、本発明の様々な改変は、当業者にとって、前述の説明から明らかである。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に該当することも意図される。本出願に挙げた各参考文献は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)それぞれ長さが13〜40核酸塩基である順方向および逆方向プライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマー対により試料由来の核酸を増幅するステップであって、順方向プライマーが、該核酸の第1の保存配列領域内でハイブリダイズするように構成され、逆方向プライマーが、該核酸の第2の保存配列領域内でハイブリダイズするように構成され、第1および第2の保存配列領域が、STR遺伝子座を含む可変核酸領域に隣接し、該増幅ステップが、長さが約45〜約200ヌクレオチドである少なくとも1つの増幅産物を生成する、ステップ、
(b)質量分析によって、少なくとも1つの増幅産物の少なくとも1つの鎖の分子量を決定するステップ、および、
(c)該分子量を、該オリゴヌクレオチドプライマー対、およびSTR遺伝子座に対応する参照対立遺伝子に対してインデックスされた、複数のSTRを同定する増幅産物の複数の分子量を含む分子量データベースと比較するステップであって、決定された分子量と分子量データベースに含まれる分子量との間の一致により、試料におけるSTR対立遺伝子が同定される、ステップ
を含む、STRタイピングのための方法。
【請求項2】
(d)決定された分子量を使用して、少なくとも1つの増幅産物の少なくとも1つの鎖の塩基組成を計算するステップ、および、
(e)計算された塩基組成を、前記オリゴヌクレオチドプライマー対、およびSTR遺伝子座に対応する参照対立遺伝子に対してインデックスされた、STRを同定する増幅産物の複数の塩基組成を含む塩基組成データベースと比較するステップであって、計算された塩基組成と塩基組成データベースに含まれる塩基組成との間の一致により、試料におけるSTR対立遺伝子が同定される、ステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(d)決定された分子量を使用して、少なくとも1つの増幅産物の少なくとも1つの鎖の塩基組成を計算するステップであって、計算された塩基組成が、STR遺伝子座のこれまで未知であった対立遺伝子を同定する、ステップ、および、
(e)計算された塩基組成を、データベースにおいて、前記オリゴヌクレオチドプライマー対、これまで未知であった対立遺伝子、決定された分子量、および試料に対してインデックスするステップ
をさらに含む、ステップ(c)で一致が同定されない場合における、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
可変核酸領域が核酸配列において異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
可変核酸領域が、同じ数の反復単位を含むSTR遺伝子座の2つ以上の対立遺伝子間の核酸配列において異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
可変核酸領域が、STR遺伝子座の2つ以上の同じ長さの対立遺伝子間の核酸配列において異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
核酸配列における変異が、従来の増幅に基づくSTRタイピング方法によって解析可能でない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(f)試料がSTR遺伝子座においてヘテロ接合性であることを決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
試料が、STR遺伝子座に関してホモ接合性であると既に特徴付けられている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
決定されたヘテロ接合性が、従来の増幅に基づくSTRタイピング方法によって解析可能でない、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
同定されたSTR対立遺伝子が少なくとも1つのSNPを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
STR遺伝子座がD5S818であり、少なくとも1つのSNPが、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、GからTまたはAからCへの変化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
STR遺伝子座がD8S1179であり、少なくとも1つのSNPが、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、GからAまたはTからCへの変化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
STR遺伝子座がvWAであり、少なくとも1つのSNPが、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、GからT、AからG、CからT、またはAからCへの変化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
STR遺伝子座がD13S317であり、少なくとも1つのSNPが、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、AからTへの変化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
STR遺伝子座がD7S820であり、少なくとも1つのSNPが、データベースに含まれる該STR遺伝子座に関する参照対立遺伝子と比較して、TからAへの変化を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
順方向プライマーおよび逆方向プライマーのうち少なくとも1つが、少なくとも1つの改変された核酸塩基を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項18】
STR遺伝子座がTH01である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:8:61、9:61、8:62、9:63、9:64、9:65、9:66、または10:67から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:10:67のオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:10:67である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
STR遺伝子座がTPOXである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:5:56、5:57、5:58、5:59、6:56、6:57、6:58、6:59、または7:60から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:7:60のオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:7:60である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
STR遺伝子座がD8S1179である、請求項1、2、または3のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:28:85、29:86、30:87、または31:88から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:31:88のオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:31:88である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
STR遺伝子座がD5S818である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:36:94、37:95、38:96、39:97、または40:98から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:40:98に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:40:98である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
STR遺伝子座がCSF1POである、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:43:102、44:103、45:103、46:104、46:103、または47:104から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:47:104に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:47:104である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
STR遺伝子座がD7S820である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:32:89、32:90、33:91、34:90、34:92、または35:93から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:35:93に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:35:93である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
STR遺伝子座がD13S317である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:22:79、23:80、24:81、25:82、26:83、または27:84から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:27:84に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:27:84である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
STR遺伝子座がD16S539である、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:17:74、18:75、19:76、20:77、または21:78から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:21:78に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:21:78である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
STR遺伝子座がvWAである、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:1:52、2:53、3:54、または4:55から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:4:55に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
オリゴヌクレオチドプライマー対がSEQ ID NO:4:55である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
STR遺伝子座がFGAである、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:11:68、111:119、112:120、または12:69から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
STR遺伝子座がD21S11である、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:13:70、109:117、110:118、または14:71から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
STR遺伝子座がD18S51である、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:15:72、15:73、113:121、114:122、16:72、または16:73から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
STR遺伝子座がD3Sである、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、SEQ ID NO:41:99、42:100、115:123、116:124、または42:101から成る群より選択されるプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
VWA、TPOX、TH01、FGA、D21S11、D18S51、D16S539、D13S317、D8S1179、D7S820、D5S818、D3S、およびCSF1POから成る群より選択されるSTR遺伝子座に隣接する保存領域にハイブリダイズするように構成された少なくとも1つの追加のオリゴヌクレオチドプライマー対を使用して、前記ステップを反復することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項63】
少なくとも1つの追加のオリゴヌクレオチドプライマー対により前記ステップを反復することが、第1のオリゴヌクレオチドプライマー対により前記ステップを行うことと同時に行われる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ステップを反復することが多重反応において行われる、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも1つの追加のオリゴヌクレオチドプライマー対により増幅ステップを反復することをさらに含む方法であって、該少なくとも1つの追加のプライマーのうち少なくとも1つが、AMEL遺伝子座の保存領域にハイブリダイズするように構成されている、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
増幅ステップを反復することが、第1のオリゴヌクレオチドプライマー対を用いて増幅ステップを行うことと同時に行われる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
増幅ステップを反復することが多重反応において行われる、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
少なくとも1つの改変された核酸塩基が、質量改変された核酸塩基である、請求項17に記載の方法。
【請求項69】
質量改変された核酸塩基が13Cに富むdGTPである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
質量改変された核酸塩基が5−ヨード−Cである、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
質量改変された核酸塩基が分子量改変タグを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
少なくとも1つの改変された核酸塩基のうち少なくとも1つがユニバーサル核酸塩基である、請求項17に記載の方法。
【請求項73】
ユニバーサル核酸塩基がイノシンである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
順方向プライマーおよび逆方向プライマーのうち少なくとも1つが、その5’末端に非鋳型T残基を含む、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
順方向プライマーおよび逆方向プライマーのうち少なくとも1つが、その5’末端にGまたはC残基を含む、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
質量分析がエレクトロスプレー質量分析(ESI−MS)である、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
ESI−MSがMS−TOFおよびFTICR−MSから成る群より選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
長さが約45〜約200ヌクレオチドである増幅産物を生成するように構成され、それぞれ長さが13〜40核酸塩基である順方向および逆方向プライマーを含む、精製されたオリゴヌクレオチドプライマー対であって、
順方向プライマーが、核酸の第1の保存領域内でハイブリダイズするように構成され、逆方向プライマーが、該核酸の第2の保存領域内でハイブリダイズするように構成され、
第1および第2の保存領域が、VWA、TPOX、TH01、FGA、D21S11、D18S51、D16S539、D13S317、D8S1179、D7S820、D5S818、D3S、およびCSF1POから成る群より選択されるSTR遺伝子座を含む可変核酸領域に隣接し、
該プライマー対が、SEQ ID NO:1:52、2:53、3:54、4:55、5:56、5:57、5:58、5:59、6:56、6:57、6:58、6:59、7:60、8:61、9:61、8:62、9:63、9:64、9:65、9:66、10:67、11:68、12:69、13:70、14:71、15:72、15:73、16:72、16:73、17:74、18:75、19:76、20:77、21:78、22:79、23:80、24:81、25:82、26:83、27:84、28:85、29:86、30:87、31:88、32:89、32:90、33:91、34:90、34:92、35:93、36:94、37:95、38:96、39:97、40:98、41:99、42:100、42:101、43:102、44:103、45:103、46:104、46:103、109:117、110:118、111:119、112:120、113:121、114:122、115:123、116:124、または47:104から成る群より選択されるオリゴヌクレオチドプライマー対に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、
精製されたオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項79】
SEQ ID NO:10:67に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項80】
プライマー対がSEQ ID NO:10:67である、請求項79に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項81】
SEQ ID NO:7:60に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項82】
プライマー対がSEQ ID NO:7:60である、請求項81に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項83】
SEQ ID NO:31:88に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項84】
プライマー対がSEQ ID NO:31:88である、請求項83に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項85】
SEQ ID NO:40:98に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項86】
プライマー対がSEQ ID NO:40:98である、請求項85に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項87】
SEQ ID NO:47:104に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項88】
プライマー対がSEQ ID NO:47:104である、請求項87に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項89】
SEQ ID NO:35:93に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項90】
プライマー対がSEQ ID NO:35:93である、請求項89に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項91】
SEQ ID NO:27:84に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項92】
プライマー対がSEQ ID NO:27:84である、請求項91に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項93】
SEQ ID NO:21:78に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項94】
プライマー対がSEQ ID NO:21:78である、請求項93に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項95】
SEQ ID NO:4:55に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項96】
プライマー対がSEQ ID NO:4:55である、請求項95に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項97】
少なくとも1つの改変された核酸塩基を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項98】
少なくとも1つの改変された核酸塩基が、質量改変された核酸塩基である、請求項97に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項99】
質量改変された核酸塩基が5−ヨード−Cである、請求項98に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項100】
質量改変された核酸塩基が分子量改変タグを含む、請求項98に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項101】
少なくとも1つの改変された核酸塩基のうち少なくとも1つがユニバーサル核酸塩基である、請求項97に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項102】
ユニバーサル核酸塩基がイノシンである、請求項101に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項103】
順方向プライマーおよび逆方向プライマーのうち少なくとも1つが、その5’末端に非鋳型T残基を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項104】
順方向プライマーおよび逆方向プライマーのうち少なくとも1つが、その5’末端にGまたはC残基を含む、請求項78に記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項105】
請求項78に記載のプライマー対、および、
VWA、TPOX、TH01、FGA、D21S11、D18S51、D16S539、D13S317、D8S1179、D7S820、D5S818、D3S、およびCSF1POから成る群より選択されるSTR遺伝子座を含む核酸の可変核酸領域に隣接する該核酸の保存領域内でハイブリダイズするように構成された順方向および逆方向プライマーを含む、少なくとも1つの追加のプライマー対
を含む、キット。
【請求項106】
AMEL遺伝子座内において、または、AMEL遺伝子座に隣接する領域に対してハイブリダイズするように構成されたオリゴヌクレオチドプライマー対をさらに含む、請求項105に記載のキット。
【請求項107】
長さが約45〜約200ヌクレオチドである1つまたは複数の増幅産物を生成するように構成されており、順方向および逆方向プライマーを含む、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマー対を含む法医学的分析用キットであって、該少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマー対の第1の対が、核酸の第1の保存領域内でハイブリダイズするように構成された第1の順方向プライマー、および該核酸の第2の保存領域内でハイブリダイズするように構成された第1の逆方向プライマーを含み、第1および第2の保存領域が、vWRを含む可変核酸領域に隣接し、該少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマー対の第2の対が、AMEL遺伝子座内において、またはAMEL遺伝子座に隣接する領域に対してハイブリダイズするように構成されている、キット。
【請求項108】
TPOX、TH01、D8S1179およびD5S818から成る群より選択されるSTR遺伝子座に隣接する保存領域にハイブリダイズするように構成された少なくとも1つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項107に記載のキット。
【請求項109】
CSF1PO、D7S820、D13S317、およびD16S539から成る群より選択されるSTR遺伝子座に隣接する保存配列領域にハイブリダイズするように構成された少なくとも1つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項107に記載のキット。
【請求項110】
多重反応が、10個の遺伝子座を標的とするプライマー対を含む2つの6重反応である、請求項67に記載の方法。
【請求項111】
10個の遺伝子座が、D5S818、D8S1179、TH01、TPOX、AMEL、vWA、CSF1PO、D13S317、D16S539およびD7S820である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
多重反応が5つの3重反応である、請求項67に記載の方法。
【請求項113】
14個の遺伝子座を標的とするプライマー対を含む、5つの3重反応および3つの1重反応をさらに含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
1重反応が、D21S11、FGAおよびD18S51を標的とするプライマー対を含む、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
3重反応が、TPOX、TH01、D8S1179、D5S818、vWA、AMEL、CSF1PO、D7S820、D13S317、D3S1358およびD16S539を標的とするプライマーを含む、請求項113に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−518835(P2010−518835A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550634(P2009−550634)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/054926
【国際公開番号】WO2008/104002
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508266579)アイビス バイオサイエンシズ インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】