説明

迅速に再通行可能な車線表示を製造するための結合剤

本発明は、その適用後に従来技術のものと比べて短い待ち時間で再通行可能な車線(例えば路面)標示用の新規調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線表示、例えば路面表示のための新規の調製物を含み、当該調製物はその適用後に、従来技術のものに比べて短縮された待ち時間で、再度通行できるものである。
【0002】
近年の車線表示には、多くの要求が課されている。このような系にはまず、道路表面に容易に塗布できることと同時に高い貯蔵安定性、また表示の寿命が長いことが求められる。また迅速な施工性、特に表示が付された車線面が、いち早く再度通行可能になることも重要となる。大規模なインフラ構造で重要となるのは、表示の施工後に当該道路区間が、できるだけ早く通行者に開放できるようになることである。車線表示を敷設するためには、表示を付す通行区間を、表示材料及び/又はその接着剤が完全に乾燥及び/又は硬化するまで通行止めする必要があり、このため表示は早すぎる通行により損なわれることも、駄目になることもない。通行止めされた通行区間は、望ましくない遅延と、それによるコスト、また事故の危険性をももたらす。
【0003】
従来技術による表示用組成物を車線面に塗布してから、再度通行可能になるまでの時間の長さは、周辺温度と、車線面の状態によるところが大きい。この時間は、少なくとも5分間である。この時間はまた、15分を越えることもある。このような待ち時間は、道路交通が遅くなることにつながり、これにより自動車運転者にとって前記遅延に起因する相当の障害が引き起こされ、事故の危険性が生じ、車線表示の製造者及び使用者をできるだけ囲いで区切る必要がある。
【0004】
従来技術
塗布から車線表示が通行可能になるまでの待ち時間の短縮は、かなり前から開発の目的である。車線表示の材料としては現在、例えば溶剤ベースの着色剤、水性着色剤、熱可塑性着色剤、反応性樹脂ベースの着色剤、並びにレディメイドの接着バンドが使用される。前記接着バンドの欠点は、製造コストが高く、適用コストも高いことである。表示の寿命が長いことも求められるため、表示態様についての自由度は、例えばガラス球に限定されている。
【0005】
公知の解決法としては、車線表示に比較的大量のガラスビーズを施与して遮蔽膜を形成することであり、これによって車線表示は、実質的にすぐ通行可能になる。しかしながらこの技術は満足のいくものではない。と言うのもまず、車線表示の供給量を、ガラスビーズの供給量よりも少なくする必要があり、これにより潜在的な摩擦問題が生じ、また車線上でのガラスビーズ損失が相当発生するからである。ガラスビーズは第一義的には、反射を改善するために、車線表示に混入される。
【0006】
公知の解決法は、低密度であるため比較的速く乾燥する、揮発性有機溶剤中の溶液から施与することである。しかしながらこのような系からは、非常に薄い層しか得られず、この層は調製物の自由度、例えばガラスビーズの組み込みを制限し、またその寿命も著しく制限される。また特に揮発性の溶剤、例えばアセトン、揮発性ケトン誘導体、トルエン、又はアセテートを用いる場合には、使用者の健康に対する危険性も上昇する。さらに、蒸発による有機溶剤の損失は、表面乾燥の点だけでも、環境にとって、また表示の品質にとって不利となる。皮張りによって、被覆内部では不充分な乾燥にしかつながらず、このため接着性喪失、凝集力低減、変形、又はガラスビーズの不充分な組み込みが生じる。このため、ガラスビーズを用いる量を少なくするか、又はガラスビーズ割合が高く、その比率が望ましくないものを用いるしかない。しかしながらこのことによりここでも潜在的な摩擦問題が生じる。
【0007】
乾燥速度については特に、水性の系(例えばEP 1 505 127に記載のもの)が、非常に有利である。この系は毒性的な観点を除けば、溶剤ベースの系が有する前記あらゆる欠点を克服していない。このような系ではさらに、乾燥時間が明らかに長い。
【0008】
溶融状態で車線面に施与された熱可塑性被覆は、それ自体で速い硬化速度に、よって迅速な再通行性に最適化可能である。このような被覆の使用には、さらなる方法工程が必要となるという大きな欠点があり、適用可能にするために、まず生成物を例えば200℃で溶融させる必要がある。このことは、高温が原因で潜在的に危険なだけではなく、熱可塑性系の摩耗傾向自体が高まり、また熱負荷耐性も減少する。熱可塑性の系はしばしば、例えば反応性樹脂ベースの、架橋下で反応させる系よりも、明らかに寿命が短い。
【0009】
反応性樹脂系の硬化を促進させるきっかけは、樹脂系(例えばEP 0 871 678に記載のもの)で、不飽和ポリエステルを用いることである。EP 0 871 676には、他のポリマー、例えばポリオレフィン又はポリメタクリレートがベースのポリエステルから、さらに容易に抽出可能な陽子を有する同じ不飽和二環式基の変換が、記載されている。しかしながらこの結果は、あらゆる場合において、塗布後に非常に早い皮張りにつながり、厚さがほんの数センチの層を硬化させるためにも数時間かかり、このため、前記ポリマーを含有する車線表示の迅速な再通行性は、実現できない。
【0010】
WO 98/40424では、不飽和エチレン性化合物中の不飽和ポリエステルをベースとする、又はメタクリルモノマー中のメタクリルコポリマーをベースとする、二成分系及び三成分系の調製物が提案されており、当該調製物は塩化ジベンゾイルペルオキシドと、ジベンゾイルペルオキシドとから得られる混合物により、第三級芳香族アミンの存在下で硬化される。それ自体公知の調製物の特に早い硬化は、両方の開始剤の組み合わせに起因する。ここで不利なのは、ハロゲン含有化合物、より正確には塩素含有化合物を必ず使わねばならないことである。これには常に危険が内在しており、後の分解時には、毒性的に憂慮される有機ハロゲン性の、より正確には塩化芳香族の分解生成物が放出される。
【0011】
さらなる欠点は、この調製物が迅速性を示す温度範囲は狭く、また不飽和エチレン性化合物のUV耐性が悪いことである。
【0012】
よって、表示が付与されたばかりの道路に道路交通を再度受け入れるまでの待ち時間を短縮するための上記解決法はいずれも、以下の点で不充分である:車線表示用組成物の製造者及び使用者の安全性及び健康の点、また環境のため、車線表示の耐久性の点、及び日中及び夜間の車線表示の視認性の点で、不充分である。
【0013】
本発明の課題
本発明の課題は、車線面表示のための新規の調製物を提供することであり、当該調製物は、従来技術に比してより迅速に、又は少なくとも同等に早く硬化し、表示のいち早い再通行性を、車線面への塗布後に5分未満で可能にするものである。このことは、周辺温度に拘わらず、5〜50℃の範囲の温度で可能になるべきである。
【0014】
特別な課題は、従来技術に比して寿命の長い、若しくは少なくとも同じくらい寿命の長い車線表示を、良好な逆反射特性、日中及び夜間における良好な視認性、安定した高い白色度、及び良好なグリップ力(濡れた車線上でも)で可能にする、反応性樹脂を提供することである。
【0015】
さらなる課題は、車線面への適用と、再通行までの時間の長さが、塗布厚(400μm〜2000μmであるのが望ましい)に拘わらず、5分未満、好ましくは2分未満と測定されるべきことにある。ここで、新たに敷設された車線表示は当初から、従来技術に相当するグリップ力を有するべきである。
【0016】
さらなる課題は、迅速に再通行可能な車線表示のための反応性樹脂を提供することであり、当該樹脂は、従来技術に比して毒性及び環境的な側面ではほとんど問題を起こさないものである。
【0017】
さらなる課題は、車線表示として適用可能な2成分系を提供することであり、当該系はすぐに使用でき、柔軟に調製でき、また比較的長い間、貯蔵安定性であるのが望ましい。
【0018】
明示されていないその他の課題は、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び実施例の全体の脈絡から明らかである。
【0019】
課題の解決手段
上記課題は、新規の車線表示系の提供によって、より正確には、(メタ)アクリレートベースの新規かつ柔軟な常温塗装用プラスチックの提供によって解決される。
【0020】
とりわけ、従来技術に比してより迅速な、又は少なくとも同等の硬化速度若しくは再通行性という上記課題は、非常に良好な光学特性、例えば白色度、日中や夜間の視認性、及び反射特性、並びに長い寿命と同時に、新規な反応性樹脂の提供によって解決され、当該樹脂は、常温塗装用プラスチックの主成分として使用され、かつ以下の組成を有するものである:
架橋剤、好ましくはジメタクリレートの群から選択される架橋剤、20〜30質量%、
モノマー、好ましくは(メタ)アクリレート及び/又は(メタ)アクリレートと共重合可能な成分、30〜40質量%、
ウレタン(メタ)アクリレート 10〜20質量%、
プレポリマー 15〜25質量%、及び
促進剤 0〜5質量%。
【0021】
さらには別の助剤、例えば安定剤、阻害剤、制御剤、又はワックスが含まれていてよい。
【0022】
上記反応性樹脂をベースとして、任意で常温塗装用プラスチック全体の2〜3つの成分のうちの1つを構成する調製物が製造される。これらの調製物は、本発明によれば以下の成分を含有する:
本発明による反応性樹脂 15〜45質量%、
1種又は数種の開始剤を含有する混合物 1〜5質量%、
無機顔料、好ましくは二酸化チタン 7〜15質量%、
さらなる鉱物性充填材 50〜60質量%。
【0023】
意外なことに、本発明による反応性樹脂を含有する常温塗装用プラスチックを適用して得られる車線表示は、迅速に硬化し、早くも5分後に、好ましくは2分後に、再び通行が可能な強度、下地接着性、変形安定性、摩耗耐性を有する。これはつまり、道路交通での適用時に、本発明による系を使用すれば、表示を付すべき車線区間を、コストと時間をかけて通行止めにする必要が、もはやなくなるということである。
【0024】
意外なことに、車線表示の再通行性までのこの短い早期硬化時間は、適用にとって重要な5〜50℃、好ましくは1〜60℃という温度範囲では、温度によって影響を受けないことが判明した。
【0025】
再通行性という用語、若しくは同義で用いる「再度通行可能なこと」とは、車線表示の負荷(例えば車両による再通行の形での負荷)と理解される。再通行性が得られるまでの時間は、車線表示の塗布から、摩耗、車線面に対する、若しくは埋め込まれたガラスビーズに対する接着性の喪失、又は表示の変形といった点で全く変化が見られなくなる時点までの時間である。形態安定性、及び接着安定性の測定は、DIN EN 1542 99に従って、DAfStb-RiLi 01に合わせて行う。
【0026】
さらには意外なことに、車線表示の再通行性までのこれらの短い早期硬化時間は、塗布厚(400μm〜2000μmの範囲)に影響されないことが判明した。本発明による常温塗装用プラスチックの塗布厚は、400〜2000μm、好ましくは500〜1000μm、特に好ましくは600〜800μmである。
【0027】
さらには、これらの成分はさらなる助剤、例えば湿潤剤及び/又は分散剤、グリップ性(滑り止め)充填材、及び剥離防止剤を含むことができる。反射性改善のために添加されるガラスビーズもまた、常温塗装用プラスチックのこれらの成分中に既に含まれていてよい。ガラスビーズは代替的にはまた、第二成分の構成要素であってよく、好ましくは、車線表示の塗布メカニズムに応じて、第三成分としてガラスビーズを塗布することができる。この処置の場合(例えば近年の2ノズル式の表示塗布用車両によって適用される)、2つの成分のうちの第一成分を塗布した直後に、この第一成分にビーズを直接吹き付ける。この処置の利点は、表示母材に埋め込まれたガラスビーズの一部のみが、他の2つの成分の構成要素によって濡れ、最適な反射特性が得られることである。しかしながら、この技術を適用する際には特に、ガラスビーズの非常に良好な埋め込み、及びこれに相応して、ガラスビーズ表面に対する表示母材若しくは車線表示調製物の良好な接着性が重要となる。意外なことに、本発明による反応性樹脂若しくは当該反応性樹脂を含有する常温塗装用プラスチックは、少なくとも従来技術の基準でこれらの要求特性を満たすことが判明した。路面用表示に要求される特性は、DIN EN 1436で厳密に規定されている。
【0028】
必要となる特性をさらに改善させるためには、ガラスビーズを接着改善剤と一緒に塗布するか、又はガラスビーズを接着改善剤で事前に処理することができる。よって本発明による常温塗装用プラスチックの逆反射特性、及び日中若しくは夜間における視認性は、従来技術のものと少なくとも同等である。これと同じことが、寿命、特にガラスビーズの埋め込みについて言える。
【0029】
常温塗装用プラスチックの第二成分は、開始剤を含有する。重合開始剤としてはとりわけ、過酸化物又はアゾ化合物が用いられる。場合により、様々な開始剤の混合物を使用することが有利であり得る。好適には、ハロゲン不含の過酸化物、例えばジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、ジ(t−ブチル)ペルオキシド(DTBP)、ジ(t−アミル)ペルオキシド(DTAP)、t−ブチルペルオキシ(2−エチルヘキシル)カ−ボネート(TBPEHC)、及び高温分解性の他の過酸化物を、ラジカル開始剤として使用する。例えば車線表示に適用するための反応性樹脂は、特に好ましくはジラウロイルペルオキシド、又はジベンゾイルペルオキシドである。第二成分中の過酸化物には通常、希釈剤、例えばジブチルフタレートのようなフタレート、オイル、又は他の可塑剤が加えられている。本発明による常温塗装用プラスチックは、第一成分と第二成分、並びに任意の第三成分で全体として、開始剤、又は開始剤と希釈剤との混合物を、0.1〜7質量%、好ましくは0.5〜6質量%、極めて特に好ましくは1〜5質量%、含有する。
【0030】
開始剤系がハロゲン不含であることにより、常温塗装用プラスチック全体のハロゲン不含性、ひいては車線表示のハロゲン不含性が、それ自体容易に実現できる。このため、本発明による表示は、従来技術に記載されているものに比べて迅速に再通行可能な系であり、また毒性及び環境的な側面からも好ましい。ハロゲン不含とは、常温塗装用プラスチック、及び当該プラスチックから製造される車線表示のハロゲン含分が、0.1質量%未満、好ましくは0.01質量%未満であると理解される。
【0031】
反応性樹脂のためのレドックス開始剤系の特別な実施態様は、過酸化物と促進剤、特にアミンとの組み合わせである。このアミンとしては例えば、第三級の芳香族置換アミン、例えば特にN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、又はN,N−ビス−(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンが挙げられる。本発明による反応性樹脂は、最大で7質量%、好ましくは最大5質量%、極めて特に好ましくは3質量%、促進剤を含有することができる。
【0032】
3成分系の代替的な実施態様では、促進剤は第二成分中、例えば希釈剤中に含まれており、開始剤、例えば過酸化物は、本発明による反応性樹脂の構成要素である。第三成分とは、ここでもガラスビーズ、及び場合により必要な接着改善剤である。
【0033】
本発明による反応性樹脂の構成要素として重要なのは、架橋剤である。特に、多官能性メタアクリレート、例えばアリル(メタ)アクリレートである。
【0034】
特に好ましいのは、ジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、又はトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。架橋剤の割合は従来技術に比べて明らかに高められており、13〜35質量%、好ましくは最少で20質量%であり、最大で30質量%である。意外なことに、この比較的高い架橋剤割合は、早期硬化の向上をもたらすのみならず、他の成分との組み合わせでも、本発明による樹脂を含有する車線表示の迅速な再通行性を可能にするものである。
【0035】
本発明による反応性樹脂のうち二番目に重要な構成要素は、ウレタン(メタ)アクリレートである。ウレタン(メタ)アクリレートとは、本発明の範囲では、ウレタン基によって相互に結合されている(メタ)アクリレート官能性を有する化合物と理解される。この化合物は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネート、及びヒドロキシ官能性が少なくとも2のポリオキシアルキレンとの反応によって得られる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの代わりに、オキシラン(例えばエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシド、又は相応するオリゴオキシラン若しくはポリオキシラン)と(メタ)アクリル酸とのエステルも使用できる。官能性が2超のウレタン(メタ)アクリレートについての概観は、DE 199 02 685に記載されている。ポリオール、イソシアネート、及びヒドロキシ官能性メタクリレートから製造され、市販で得られるものの例は、UCB Chemicals社のEBECRYL 210-5129である。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレートは反応性樹脂中で、温度にそれほど依存することなく、可撓性、引張強度、及び破断点伸びを向上させる。つまり意外にも、車線表示に2種類の影響がもたらされたことが判明したのである。表示の温度安定性が向上し、また特に意外なことに、架橋剤含分がより多いことによって、架橋度が比較的高いという欠点が、脆性及び車線面に対する接着性について解消されるか、又はそれどころか従来技術による常温塗装用プラスチックに比して改善されたのである。このためには反応性樹脂中で、交通記号用表示に対して、ウレタン(メタ)アクリレートの濃度が比較的高いことが必要となる。本発明による反応性樹脂は、5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%、上記ウレタン(メタ)アクリレートを含有する。
【0037】
反応性樹脂中に含まれるモノマーとは、以下の群から選択される化合物である:(メタ)アクリレート、例えば1〜40個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状、又は脂環式アルコールのアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート;5〜80個のC原子を有するエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、若しくはこれらの混合物のモノ(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシメチル(メタ)アクリレート、1−エトキシブチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート。
【0038】
モノマー混合物の構成要素として適しているのはまた、さらなる官能基を有する別のモノマー、例えばα,β−不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、若しくはイタコン酸;二価のアルコールとの、アクリル酸若しくはメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、若しくはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;アクリルアミド又はメタクリルアミド;又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。モノマー混合物のさらなる適切な構成要素は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、又はシリル官能性(メタ)アクリレートである。
【0039】
モノマー混合物は上記(メタ)アクリレートの他に、前記の(メタ)アクリレートとフリーラジカル重合により共重合可能な別の不飽和モノマーも有することができる。これに該当するのはとりわけ、1−アルケン又はスチレンである。前記ポリ(メタ)アクリレートは詳細には、割合や組成、その目的に応じて、所望の技術的機能という観点から選択される。
【0040】
ここで反応性樹脂のモノマー割合は、20〜50質量%、好ましくは30〜40質量%である。
【0041】
いわゆるMO−PO系では、上記モノマーの他に、ポリマー(本発明の範囲では、区別しやすいように「プレポリマー」と呼ぶ)、好ましくはポリエステル又はポリ(メタ)アクリレートも存在する。これらのプレポリマーは、重合特性、機械的特性、下地への接着性の改善、また樹脂に対する光学的要求を改善するために使用される。ここで反応性樹脂のプレポリマー割合は、10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%である。ポリエステルもポリ(メタ)アクリレートも、接着性改善のため、又は架橋反応における共重合のためのさらなる官能基を、例えば二重結合の形で有することができる。しかしながら、車線表示のより良好な色安定性という観点では好ましくは、このプレポリマーは二重結合を有さない。
【0042】
上記ポリ(メタ)アクリレートは一般的に、同じモノマー(例えば既に樹脂系中のモノマーのところで列挙したもの)から構成されている。これらは、溶液重合、エマルジョン重合、懸濁重合、バルク重合、又は沈殿重合によって得ることができ、純物質として系に添加される。
【0043】
上記ポリエステルは重縮合又は開環重合によってバルクで得られ、この適用のために公知の構成要素から構成されている。
【0044】
助剤及び添加剤としては、さらに制御剤、可塑剤、パラフィン、安定剤、阻害剤、ワックス、及び/又はオイルが使用できる。
【0045】
パラフィンは、空気中の酸素により重合が阻害されるのを防止するために添加される。このためには、様々な融点を有する多くのパラフィンが、様々な濃度で使用できる。
【0046】
制御剤としては、ラジカル重合から公知のあらゆる化合物が使用できる。好ましくはメルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタンを使用する。
【0047】
可塑剤としては好適には、エステル、ポリオール、オイル、低分子ポリエーテル、又はフタレートを使用する。
【0048】
さらには、車線表示用調製物に、着色剤、ガラスビーズ、微細充填材、粗大充填材、湿潤剤、分散剤、均展剤、紫外線安定剤、消泡剤、及びレオロジー添加剤が添加できる。
【0049】
車線表示又は平面表示として調製物を用いる領域では、助剤及び添加剤として、好適には着色剤を添加する。
【0050】
特に好適なのは、白、赤、青、緑、及び黄色の無機顔料であり、特に好適なのは白色顔料、例えば二酸化チタンである。
【0051】
ガラスビーズは好適には、車線表示用、及び平面表示用の調製物中で、反射剤として使用する。使用される市販のガラスビーズは、直径が10μm〜2000μmmであり、好適には50〜800μmである。ガラスビーズは、より良好な加工及び接着のため、接着改善剤を備えていてよい。ガラスビーズは好ましくは、シラン化されていてよい。
【0052】
さらに調製物には、1種又は複数種の鉱物性微細充填材及び粗大充填材を添加することができる。これらの鉱物は滑り止めとしても用いられ、このため特にグリップ性改善のため、及び車線表示のさらなる着色のために使用される。微細充填材は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、石英、石英粉末、沈降ケイ酸、熱分解法ケイ酸、顔料、及びクリストバライトの群から選択して使用する。粗大充填材としては、石英、クリストバライト、コランダム、及びケイ酸アルミニウムを使用する。
【0053】
同様に、慣用の紫外線安定剤が使用できる。紫外線安定剤は好適には、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チオキサントネート誘導体、ピペリジノールカルボン酸エステル誘導体、又はケイ皮酸エステル誘導体の群から選択されている。
【0054】
安定化剤若しくは阻害剤の群からは好適には、置換フェノール、ヒドロキノン誘導体、ホスフィン、及びホスフィットを使用する。
【0055】
任意で以下の成分も、車線表示用の調製物中に含まれていてよい:湿潤剤、分散剤、及び均展剤、好適には、アルコール、炭化水素、グリコール誘導体、グリコール酸エステルの誘導体、酢酸エステルの誘導体、ポリシロキサンの誘導体、ポリエーテル、ポリシロキサン、ポリカルボン酸、飽和及び不飽和のポリカルボン酸アミンアミドの群から選択して使用する。
【0056】
レオロジー添加剤として好適には、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、尿素誘導体、不飽和カルボン酸エステルの塩、酸性のリン酸誘導体のアルキルアンモニウム塩、ケトオキシム、p−トルエンスルホン酸のアミン塩、スルホン酸誘導体のアミン塩、並びにこれらの化合物の水溶液若しくは有機溶液、又はこれらの化合物の混合物を使用する。BET比表面積が10〜700nm2/gの熱分解法ケイ酸又は沈降ケイ酸(任意でシラン化されていてもよい)をベースとするレオロジー添加剤は、特に適していることが判明した。
【0057】
消泡剤は好適には、アルコール、炭化水素、パラフィンベースの鉱油、グリコール誘導体、グリコール酸エステルの誘導体、酢酸エステル、及びポリシロキサンの群から選択して使用する。
【0058】
これらの調製物自由度は、本発明による反応性樹脂、若しくは当該反応性樹脂を含有する本発明による常温塗装用プラスチックが、従来技術で確立された常温塗装用プラスチックと同じように調製可能であり、また添加可能であることを示している。よって、耐摩耗性、寿命の長さ、白色度、顔料着色、及びグリップ性は、従来技術の系と少なくとも同程度に良好である。しかしながら意外なことに、寿命の長さ、及び接着性は、ウレタン(メタ)アクリレートの前述の特別な機械的特性、及びさらなる接着性改善特性によって、従来技術で記載されたものよりも良好である。
【0059】
従来技術と少なくとも同等であることは、同じように反応性樹脂の貯蔵安定性についても当てはまる。
【0060】
系はまた、被覆される下地について、適切なモノマー、プレポリマー、及び/又は接着性改善剤の選択により最適化できる。本発明による系は、相応して変えることにより、アスファルト表面、コンクリート表面、又は天然石表面の表示に最適化できる。
【0061】
適用技術の点でも、本発明による系は柔軟に使用できる。本発明による反応性樹脂若しくは常温塗装用プラスチックは、射出法でも、押出成形法でも塗布できる。
【0062】
以下に記載の実施例は、本発明をより詳しく説明するためのものであるが、本願発明をここに開示された特徴に制限することは適切ではない。
【0063】
実施例
変形安定性、及び接着安定性の測定は、DAfStb-RiLi 01/DIN EN 1542 99、若しくはDIN EN 1436に従って行う。
【0064】
実施例1:多価ウレタンメタクリレートの製造(イソシアネート−MA)
還流冷却器、温度計、撹拌機、及び滴加漏斗を備える丸底フラスコ中に、Voranol(登録商標)CP 6055(DOW)0.2mol、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.4mol、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール500ppm(目的生成物の予定量に対して)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)0.46mol、及びジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)2×10-3molを装入し、1時間、室温で撹拌する。引き続き、混合物の温度を1時間以内に連続的に80℃に上昇させる。その後、温度を約5時間、80℃に維持して、イソシアネート基の含分を0.1%未満に低下させ、この混合物の上方には、窒素と酸素の混合体(酸素は約7体積%)が存在する。イソシアネート基の残量は、後反応時間を延長してもイソシアネート含分が0.1%未満に下がらない限りにおいて、化学量論的な量のHEMAと反応させる。引き続きこの混合物に、目的生成物の全質量に対して、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール500ppmを添加する。この反応の際にウレタンメタクリレートの混合物が得られ、この混合物は、後処理無しでさらなる反応に使用できる。
【0065】
実施例2
以下の組成を有する反応性樹脂を35質量部:
メチルメタクリレート 11.4
トリエチレングリコールジメタクリレート 13
ブチルジグリコールメタクリレート 21
1,4−ブタンジオールジメタクリレート 13
Degalan LP 64/12 * 3.5
Degalan LP 66/02 * 15
実施例1に記載のイソシアネート−MA 12
ジ−イソ−プロピル−パラ−トルイジン 2.5
ジメチル−パラ−トルイジン 0.3
パラフィン5603 1
ジブチルマレイネート 5
ヒドロキシプロピルメタクリレート 2
*それぞれ、Evonik Roehm GmbH社のもの。
【0066】
特性:
【表1】

【0067】
この組成は、二酸化チタン(TR 92)10質量部、微細充填材(Omyacarb 15 GU)54.6質量部、分散助剤(TEGO(登録商標)Dispers 670)0.3質量部、及びレオロジー添加剤(Byk 410)0.1質量部を用いて、分散させながら車線表示の色に調製したものである。
【0068】
ここで前記樹脂を装入し、レオロジー添加剤の一部を入れて5分間分散させ、次の工程で分散助剤を同様に5分間、そしてそれから二酸化チタン及び微細充填材をそれぞれ入れてさらに10分間、分散させる。最後に、残りの分散助剤を混入する。
【0069】
a.この常温塗装用プラスチック成形材料に、ジベンゾイルペルオキシド2%を撹拌しながら添加し、エアレスの射出機で23℃で、厚さ700μmで塗布する。反射体/グリップ剤としては450g/m2のMegalux 600-800 3:1 MKT18(Swarco社、コランダムを3:1の比で含有)を、事後的に撒く。
b.5℃で
c.40℃で
【0070】
常温塗装用プラスチックの調製物特性(ポットタイムと硬化時間)は、以下の表から読み取れる:
【表2】

【0071】
d.ジベンゾイルペルオキシドを4%、23℃で添加すると、ポットタイムは45秒、並びに硬化時間は2分である。
【0072】
5℃での硬化(BPO2%)(実施例2b)
ポットタイム 2分
O試験 4.5〜5分
ショアD 60
【0073】
23℃での硬化(BPO2%)
BPO4%
ポットタイム 50〜60秒 45秒
O試験 3〜3.5分 2分
ショアD 62
白色度 90.71 89.97
色度座標 X=0.3197 X=0.3204
Y=0.3368 Y=0.3389
【0074】
40℃での硬化(BPO2%)
ポットタイム 約40秒
O試験 2.5〜3分
ショアD 62
白色度 89.43
色度座標 X=0.3213
Y=0.3382。
【0075】
実施例aについて:
初期値は、DIN EN 1436に準拠
グリップ性 58SRT単位
夜間視認性(乾燥状態) 320[mcd/m2lx]
光密度計数Qd=305[mcd/m2lx]
【0076】
比較例
路面表示用の常温塗装用プラスチックとの比較例は、例えばWO 2008/022861にある。ここに記載された実施例では、5℃の温度で硬化時間が17〜20分;23℃では8分であり、45℃では9〜12分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線表示用の(メタ)アクリレートベースの反応性樹脂において、
前記反応性樹脂が、以下の物質:
架橋剤 20〜30質量%、
モノマー 30〜40質量%、
ウレタン(メタ)アクリレート 10〜20質量%、
プレポリマー 15〜25質量%、
促進剤 0〜5質量%、及び
任意で更なる助剤、
を有することを特徴とする、前記反応性樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の反応性樹脂において、
前記反応性樹脂がハロゲン不含であり、
前記反応性樹脂が、以下の物質:
ジメタクリレート 20〜30質量%、
(メタ)アクリレート、及び/又は(メタ)アクリレートと共重合可能な成分 30〜40質量%、
ウレタン(メタ)アクリレート 10〜20質量%、
ポリ(メタ)アクリレート 15〜25質量%、
促進剤 0〜5質量%、及び
任意で更なる助剤、
を有することを特徴とする、前記反応性樹脂。
【請求項3】
以下の成分:
請求項1又は2に記載の反応性樹脂 15〜45質量%、
1種又は数種の開始剤を含む混合物 1〜5質量%、
無機顔料、好ましくは二酸化チタン 7〜15質量%、及び
鉱物性充填材 50〜60質量%、
を有することを特徴とする、常温塗装用プラスチック。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の反応性樹脂を含有する請求項1に記載の常温塗装用プラスチックにおいて、
前記開始剤が過酸化物であり、前記促進剤がアミンであることを特徴とする、前記常温塗装用プラスチック。
【請求項5】
前記過酸化物が、ジラウロイルペルオキシド、及び/又はジベンゾイルペルオキシドであり、前記アミンが、第三級の芳香族置換アミンであることを特徴とする、請求項4に記載の常温塗装用プラスチック。
【請求項6】
前記過酸化物が、請求項1又は2に記載の反応性樹脂の構成要素であり、前記促進剤が、前記反応性樹脂の構成要素ではなく、常温塗装用プラスチックの別の成分であることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項に記載の常温塗装用プラスチック。
【請求項7】
前記成分を、車線面に塗布する前、又は塗布している間に混合することを特徴とする、請求項3から6までのいずれか1項に記載の常温塗装用プラスチック。
【請求項8】
前記常温塗装用プラスチックから成る車線表示が、車線面への塗布後5分、好ましくは2分で再通行可能になることを特徴とする、請求項3から7までのいずれか1項に記載の常温塗装用プラスチック。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の反応性樹脂を、迅速に再通行可能な車線表示の製造に用いる使用。
【請求項10】
請求項3から8までのいずれか1項に記載の常温塗装用プラスチックを、迅速に再通行可能な車線表示の製造に用いる使用。
【請求項11】
常温塗装用プラスチックを、迅速に再通行可能な車線表示の製造に用いる請求項10に記載の使用において、車線面に常温塗装用プラスチックを施与する前、施与の間、又は施与の直後にガラスビーズを加えることを特徴とする、前記使用。

【公表番号】特表2012−532971(P2012−532971A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519964(P2012−519964)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059381
【国際公開番号】WO2011/006767
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】