説明

迅速に硬化するリン酸カルシウムセメント

【課題】硬組織の修復用途を含む様々な用途での使用が見出される、高強度のリン酸カルシウム生成物に迅速に硬化する組成物(例えば、ペーストまたはクレー)を製造するための方法の提供。
【解決手段】カルシウム源およびリン酸源と、それに加えて、一価カチオンのリン酸二水素塩とを含む乾燥反応物が硬化流体と一緒にされた混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する参照)
本出願は米国特許出願第10/850,985号(2004年5月20日出願)の一部継続出願である(その開示は参考として本明細書中に援用される)。
【背景技術】
【0002】
(序論)
背景
固体のリン酸カルシウム生成物にその後に硬化することができる流動性のペースト様物質を形成するために乾燥成分および液体を組み合わせることによって調製されるリン酸カルシウムセメントは、整形外科および歯科の分野における構造材料としての使用に大きな有望性を有している。例えば、流動性の材料を海綿質骨の空隙に注入し、様々な生理学的負荷に耐えることができる固体のリン酸カルシウム無機質生成物にその材料を硬化させることは望ましい。固体のリン酸カルシウム無機質生成物に硬化する材料は、天然骨の無機質相を十分に再現することができ、かつ、再構成を受けやすく、これらはそのような生成物を整形外科および関連した分野での使用のために極めて魅力的にしているので、そのような材料は特に注目されている。
【0003】
非常に多数の異なるリン酸カルシウムセメント配合物が開発されている一方で、さらにより進歩した配合物の開発が引き続き求められている。特に注目されるのは、強固な材料に迅速に硬化する配合物の開発である。本発明はそのような配合物を提供する。
【0004】
関連する参考文献
注目される米国特許には下記が含まれる:特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23および特許文献24。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,375,935号明細書
【特許文献2】米国特許第6,139,578号明細書
【特許文献3】米国特許第6,027,742号明細書
【特許文献4】米国特許第6,005,162号明細書
【特許文献5】米国特許第5,997,624号明細書
【特許文献6】米国特許第5,976,234号明細書
【特許文献7】米国特許第5,968,253号明細書
【特許文献8】米国特許第5,962,028号明細書
【特許文献9】米国特許第5,954,867号明細書
【特許文献10】米国特許第5,900,254号明細書
【特許文献11】米国特許第5,697,981号明細書
【特許文献12】米国特許第5,695,729号明細書
【特許文献13】米国特許第5,679,294号明細書
【特許文献14】米国特許第5,580,623号明細書
【特許文献15】米国特許第5,545,254号明細書
【特許文献16】米国特許第5,525,148号明細書
【特許文献17】米国特許第5,281,265号明細書
【特許文献18】米国特許第5,092,888号明細書
【特許文献19】米国特許第5,013,323号明細書
【特許文献20】米国特許第4,990,163号明細書
【特許文献21】米国特許第4,497,075号明細書
【特許文献22】米国特許第4,429,691号明細書
【特許文献23】米国特許第4,161,511号明細書
【特許文献24】米国特許第4,160,012号明細書
【発明の開示】
【0006】
(発明の要約)
高強度のリン酸カルシウム生成物に迅速に硬化する組成物(例えば、ペーストまたはクレー)を製造するための方法が提供される。本発明の方法において、カルシウム源およびリン酸源と、それに加えて、一価カチオンのリン酸二水素塩とを含む乾燥反応物が硬化流体と一緒にされ、一緒にされた反応物が、硬化可能な組成物を製造するために混合される。本発明の特徴の1つは、セメントが高強度の生成物組成物に迅速に硬化することである。そのような硬化可能な組成物自体、ならびに、そのような硬化可能な組成物を調製するためのキットもまた提供される。本発明の方法および本発明の方法によって製造される組成物は、硬組織の修復用途を含む様々な用途での使用が見出される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(具体的な実施形態の説明)
高強度のリン酸カルシウム生成物に迅速に硬化する組成物(例えば、ペーストまたはクレー)を製造するための方法が提供される。本発明の方法において、カルシウム源およびリン酸源と、それに加えて、一価カチオンのリン酸二水素塩とを含む乾燥反応物が硬化流体と一緒にされ、一緒にされた反応物が、硬化可能な組成物を製造するために混合される。本発明の特徴の1つが、セメントが高強度の生成物組成物に迅速に硬化することである。そのような硬化可能な組成物自体、ならびに、そのような硬化可能な組成物を調製するためのキットもまた提供される。本発明の方法および本発明の方法によって製造される組成物は、硬組織の修復用途を含む様々な用途での使用が見出される。
【0008】
本発明をさらに記載する前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されず、そのため、当然のことではあるが、変化し得ることを理解しなければならない。本明細書中で使用される用語法は、特定の実施形態を記載するという目的のためだけであり、また、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定であることが意図されないこともまた理解しなければならない。
【0009】
ある範囲の値が示される場合、その範囲の上限および下限の間での間に存在する各値(文脈が明確にそうでないことを示さない限り、下限の1位数の1/10まで)、および、その言及された範囲における任意の他の言及された値または間に存在する値が本発明に含まれることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限がそのより小さい範囲において独立して含まれる場合があり、これらもまた本発明に含まれ、これらは、言及された範囲における何らかの具体的に除外される範囲に従う。言及された範囲がその限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を含まない範囲もまた本発明に含まれる。
【0010】
本明細書中に列挙される方法は、列挙された事象順だけでなく、論理的に可能である列挙された事象の任意の順で行うことができる。
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である任意の方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が次に記載される。
【0011】
本明細書中で述べられる刊行物はすべて、その刊行物が関連で引用される方法および/または材料を開示および記載するために参考として本明細書中に援用される。
【0012】
本明細書中および添付された特許請求の範囲において使用される場合、単数形態の「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数の参照体を包含する。特許請求の範囲は、任意の随意的要素を含まないように起草され得ることにはさらに留意される。そのため、この一文は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連して「単に」および「のみ」などのような排他的用語法の使用、または、「否定」的限定の使用のための前提となる根拠として役立つことが意図される。
【0013】
本明細書中で議論される刊行物は、本出願の出願日よりも前におけるそれらの開示についてだけ提供される。本明細書中のいかなる事項も、本発明がそのような刊行物に先行する資格が先行発明によってないことの許諾として解釈してはならない。さらに、提供された発行日は、独力で確認する必要があるかもしれない実際の発行日と異なる場合がある。
【0014】
本発明をさらに記載することにおいて、本発明の方法が最初に記載され、その後、本発明の方法によって製造される組成物、組成物を調製する際に使用されるキット、および、硬組織修復(例えば、骨修復)の方法において本発明の組成物を使用するための方法が記載される。
【0015】
(方法)
本発明の方法において、カルシウム源およびリン酸源と、それに加えて、一価カチオンのリン酸二水素塩とを含む乾燥反応物が、流体環境に浸されたときでさえ、高強度のリン酸カルシウム含有生成物に迅速に硬化する硬化可能な(例えば、流動性の)組成物を製造するために十分な条件のもとで硬化流体と一緒にされる。
【0016】
本発明の方法において、乾燥反応物はカルシウム源およびリン酸源を含む。乾燥反応物は、典型的には、粒子状の組成物(例えば、粉末)であり、この場合、粒子状組成物の成分の粒子サイズは、典型的には約1ミクロン〜約1000ミクロンの範囲であり、通常的には約1ミクロン〜約500ミクロンの範囲であり、より通常的には約1ミクロン〜約200ミクロンの範囲である。
【0017】
上記で述べられたように、乾燥反応物はカルシウム源およびリン酸源を含む。カルシウム源およびリン酸源を1つだけの化合物として存在させることができ、または、2つ以上の化合物として存在させることができる。そのため、乾燥反応物に存在する1つだけの化合物はカルシウム源およびリン酸源であり得る。あるいは、2つ以上の化合物を乾燥反応物に存在させることができ、この場合、そのような化合物は、カルシウム、または、リン酸、または、カルシウムおよびリン酸を含む化合物であり得る。乾燥反応物に存在させることができる目的とするリン酸カルシウム源には、DCPD(リン酸二カルシウム二水和物、ブルッシャイトまたはCaHPO・2HO)、ACP(無定型リン酸カルシウムまたはCa(POO)、DCP(リン酸二カルシウム、モネタイトまたはCaHPO)、リン酸三カルシウムα−(Ca(POおよびβ−Ca(POの両方を含む)、リン酸四カルシウム(Ca(POO)などが含まれる。目的とするカルシウム源には、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化カルシウム(CaO)および水酸化カルシウム(Ca(OH))などが含まれるが、これらに限定されない。目的とするリン酸源には、リン酸(HPO)および可溶性のリン酸塩などが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
特定の実施形態において、セメントの乾燥反応物部分または乾燥反応物成分は、同時係属中の米国特許出願第10/900,029号(その開示は参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、平均粒子サイズ(Horiba LA−300レーザー回折粒子サイズ測定装置(Windows(登録商標)95用のバージョン3.30のソフトウエア)(Irvine、CA)を使用して測定されたとき)が約8μm未満であり、狭い粒子サイズ分布を有する、カルシウムおよび/またはリン酸塩の乾燥反応物を含む。そのため、セメントの乾燥反応物成分(1つまたは複数の異なった乾燥反応物を含むことができる)は、約8μm未満の平均粒子サイズおよび狭い粒子サイズ分布を有する反応物を含む。このような反応物の平均粒子サイズは変化してもよく、代表的な実施形態では約1μm〜約7μm(例えば、約1μm〜約5μmを含めて、約1μm〜約6μmなど)の範囲であり、この場合、特定の実施形態における平均粒子サイズは、約1μm、約2μm、約3μmおよび約4μmであってもよく、この場合、特定の実施形態では、平均粒子サイズは約3μmである。
【0019】
本発明のセメント組成物のこの特定の反応物はさらに、反応物が狭い粒子サイズ分布を有するという点でさらに特徴づけられる。狭い粒子サイズ分布によって、この特定の反応物集団を構成する粒子の標準偏差(Horiba LA−300レーザー回折粒子サイズ測定装置(Windows(登録商標)95用のバージョン3.30のソフトウエア)(Irvine、CA)を使用して測定されたとき))が約4.0μmを越えず、また、特定の代表的な実施形態では約3.0μmを越えず、約2.0μmを越えないことを含めて、約2.5μmを越えないことが意味される。
【0020】
本発明のセメント組成物のこの特定の反応物はさらに、モード(Horiba LA−300レーザー回折粒子サイズ測定装置(Windows(登録商標)95用のバージョン3.30のソフトウエア)(Irvine、CA)を使用して測定されたとき))が約8.0μmを越えず、また、特定の代表的な実施形態では約6.0μmを越えず、約3.0μmを越えないことを含めて、約5μmを越えないという点でさらに特徴づけられる。
【0021】
特定の実施形態において、上記で記載された第1の反応物は、組成物の乾燥成分の100%までを構成するように組成物の乾燥反応物全体を構成する。
【0022】
特定の実施形態において、乾燥反応物は、第1の反応物成分の平均粒子サイズよりも少なくとも2倍大きい平均粒子サイズを有する第2の反応物を含むことによってさらに特徴づけられ、この場合、この第2の反応物の平均粒子サイズは、(Horiba LA−300レーザー回折粒子サイズ測定装置(Windows(登録商標)95用のバージョン3.30のソフトウエア)(Irvine、CA)を使用して測定されたとき)少なくとも約9μm、少なくとも約10μm、少なくとも約20μm、少なくとも約25μm、少なくとも約30μmまたはそれ以上であり得る。
【0023】
特定の実施形態において、乾燥反応物組成物の第1の反応物成分の量は、存在し得る他の反応物成分(例えば、上記で記載されるような第2の反応物成分など)の総量よりも大きい。このような実施形態において、乾燥反応物の総重量に対する第1の反応物成分の質量比は、約9.5〜約8.5を含めて、約1〜約10の範囲(例えば、約9〜約6(例えば、約9〜約7など)の範囲)であり得る。
【0024】
特定の代表的な実施形態において、第1の反応物成分は、カルシウム対リン酸比が、約1.33〜約1.67を含めて、約1.0〜約2.0の範囲(例えば、1.5など)を有するリン酸カルシウム化合物である。特定の実施形態において、リン酸カルシウム化合物は各種のリン酸三カルシウム(例えば、α−リン酸三カルシウムおよびβ−リン酸三カルシウムなど)であり、この場合、特定の代表的な実施形態において、リン酸三カルシウムはα−リン酸三カルシウムである。
【0025】
上記で示されたように、本発明の特徴の1つが、乾燥反応物がさらに一価カチオンのリン酸二水素塩を含むことである。一価カチオンのリン酸二水素塩によって、リン酸二水素アニオンと一価カチオン(例えば、K+、Na+など)との塩が意味され、この場合、塩は1個または複数個の水和した水分子を含んでもよく、または、水和した水分子を含まなくてもよく、例えば、無水物、一水和物、二水和物などであり得る。本発明のセメントに存在する一価カチオンのリン酸二水素塩は下記の式によって記述することができる:
PO・(HO)
(式中、
は一価カチオン(例えば、K+、Na+など)であり、かつ
nは0〜2の整数である)。
【0026】
特定の代表的な実施形態において、塩は、ナトリウムのリン酸二水素塩、例えば、重リン酸ナトリウム(すなわち、一塩基性リン酸ナトリウム、NaHPO)またはその一水和物(NaHPO・HO)もしくは二水和物(NaHPO・2HO)などである。
【0027】
乾燥反応物に存在する一価カチオンのリン酸二水素塩の量は変化し得るが、典型的には、下記においてより詳しく記載されるように、迅速に硬化する高強度獲得組成物を提供するために十分な量で存在する。代表的な実施形態において、塩は、乾燥反応物の総重量の約0.5wt%〜約2.0wt%を含めて、約0.10wt%〜約10wt%(例えば、約0.2wt%〜約5.0wt%など)の範囲の量で存在する。
【0028】
様々なリン酸カルシウムセメントが当業者には知られており、そのようなセメントは、下記で記載されるように、水溶性の造影剤を含むことによって、本発明のセメントに容易に改変することができる。当業者に知られ、かつ、注目されるセメント組成物には、米国特許第6,027,742号、同第6,005,162号、同第5,997,624号、同第5,976,234号、同第5,968,253号、同第5,962,028号、同第5,954,867号、同第5,900,254号、同第5,697,981号、同第5,695,729号、同第5,679,294号、同第5,580,623号、同第5,545,254号、同第5,525,148号、同第5,281,265号、同第4,990,163号、同第4,497,075号および同第4,429,691号に記載されるセメント組成物が含まれるが、これらに限定されない(それらの開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0029】
乾燥反応物混合物における異種のカルシウム化合物および/またはリン酸塩化合物のそれぞれの比率または相対量は、硬化流体と一緒にされ、その後、硬化したとき、所望するリン酸カルシウム生成物を提供する比率または相対量である。多くの実施形態において、乾燥反応物におけるカルシウム対リン酸塩の全体的な比率(すなわち、乾燥反応物における異種のカルシウム化合物および/またはリン酸塩化合物のすべての全体的な比率)は約4:1〜0.5:1の範囲であり、通常的には約2:1〜1:1であり、より通常的には約1.9:1〜1.33:1である。
【0030】
本発明のセメント組成物の第2の成分は、上記で要約されたように、硬化流体である。硬化流体は、当業者に知られている様々な硬化流体のいずれかであり得る。硬化流体には、様々な生理学的に適合し得る流体が含まれ、これには、水(その精製された形態を含む)、アルカノール水溶液(例えば、グリセロール)(この場合、アルカノールは主要量で存在せず、好ましくは、約20体積パーセント未満である);pH緩衝化溶液またはpH非緩衝化溶液;アルカリ金属の水酸化物、酢酸塩、リン酸塩または炭酸塩の溶液(好ましくは、ナトリウムの水酸化物、酢酸塩、リン酸塩または炭酸塩の溶液、より好ましくはリン酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムの溶液、例えば、濃度が約0.01M〜約2M(例えば、約0.05M〜約0.5Mなど)の範囲にあり、pHが約6〜約11(例えば、約7〜約7.5を含めて約7〜約9など)の範囲にあるそのような溶液)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
特定の実施形態において特に注目されるのはケイ酸塩の硬化流体(すなわち、可溶性ケイ酸塩の溶液である硬化流体)である。可溶性ケイ酸塩の溶液によって、ケイ酸塩化合物が溶解および/または懸濁されている水溶液が意味される。ケイ酸塩化合物は、生理学的な適合性を有し、かつ、水に可溶性である任意の化合物が可能である。水に可溶性であることによって、少なくとも約1%(通常的には少なくとも約2%、より通常的には少なくとも約5%)の濃度が意味され、この場合、用いられたケイ酸塩の濃度は、典型的には、約0〜0.1%から20%(通常的には約0.01%〜5%から15%、より通常的には約5%から10%)の範囲である。
【0032】
注目される代表的なケイ酸塩には、各種のケイ酸ナトリウム、各種のケイ酸カリウム、各種のホウケイ酸塩、各種のケイ酸マグネシウム、各種のケイ酸アルミニウム、各種のケイ酸ジルコニウム、各種のケイ酸アルミニウムカリウム、各種のケイ酸アルミニウムマグネシウム、各種のケイ酸アルミニウムナトリウム、各種のメチルケイ酸ナトリウム、各種のメチルケイ酸カリウム、各種のブチルケイ酸ナトリウム、各種のプロピルケイ酸ナトリウム、各種のプロピルケイ酸リチウム、各種のケイ酸トリエタノールアンモニウム、各種のケイ酸テトラメタノールアミン、ヘキサフルオロケイ酸亜鉛、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸コバルト、ヘキサフルオロケイ酸鉄、ヘキサフルオロケイ酸カリウム、ヘキサフルオロケイ酸ニッケル、ヘキサフルオロケイ酸バリウム、ヘキサフルオロケイ酸ヒドロキシアンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムおよびフルオロケイ酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムの調製が米国特許第4,161,511号および同第4,160,012号に記載される(それらの開示は参考として本明細書中に援用される)。多くの実施形態において特に注目されるのはケイ酸ナトリウムの溶液であり、その場合、乾燥ケイ酸ナトリウム(NaSiO、NaSiおよびNaSi)の製造が、Faith、Keyes&Clark’s INDUSTRIAL CHEMICALS(1975)、pp755〜761に記載される。
【0033】
特定の実施形態において、溶液はさらに、米国特許出願第10/462,075号(その開示は参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、一定量のリン酸塩イオンを含むことができる。
【0034】
特定の実施形態において、乳化剤が配合において含められる。注目される乳化剤には、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンのポリマーまたはその共重合体、例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなど;非イオン性セルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなど;さらなるセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンなど;微生物発酵により製造される多糖、例えば、酵母グルカン、キサンタンガム、b−1,3−グルカン(直鎖型または分枝型であってもよい;例えば、カードラン、パラミロン、パチマン、スクレログルカン、ラミナラン)など;他の天然ポリマー、例えば、アラビアゴム、グァーゴム、カラギーナン、トラガカントゴム、ペクチン、デンプン、ゼラチン、カゼイン、デキストリン、セルロース;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸;アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;アミノ含有アクリル酸共重合体およびそれに由来する第四級化生成物;その他が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
特に注目される特定の実施形態において、乳化剤はセルロースエーテルであり、特に、非イオン性のセルロースエーテルであり、例えば、カルボキシメチルセルロースなどである。カルボキシメチルセルロースを、Sigma、Hercules、FlukaおよびNoviant(これらに限定されない)をはじめとする様々な市販元から得ることができる。特定の実施形態において、セルロースエーテルの平均分子量は少なくとも約1000ダルトン(例えば、少なくとも約5000ダルトンなど)であり、この場合、平均分子量は10,000ダルトン以上(例えば、50,000ダルトン以上、100,000ダルトン以上)もの大きさであってもよく、特定の実施形態では約5,000ダルトン〜約100,000ダルトン(例えば、約10,000ダルトン〜約50,000ダルトンなど)の範囲である。
【0036】
特定の実施形態でのセメントにおける乳化剤の割合は約0.01%(w/w)〜約10%(w/w)(例えば、約0.05%(w/w)〜約2.0%(w/w)など)の範囲である。
【0037】
用いられるとき、乳化剤は上記の液体成分および乾燥反応物成分の一方または両方に含めることができる。
【0038】
特定の実施形態において、本発明のセメント組成物には、米国特許出願公開第20020098245号(その開示は参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、様々な細胞のいずれかを接種することができる。
【0039】
加えて、特定の実施形態において、組成物は、脱灰された骨基質を含む。そのような脱灰された骨基質は、典型的には凍結乾燥形態またはゲル形態で得られ、埋め込みのしばらく前にセメント組成物と一緒にされる。様々な脱灰された骨基質が当業者には知られており、任意の好都合/好適な基質組成物を用いることができる。
【0040】
上記の液体成分および乾燥反応物成分の一方または両方は、所望される場合、1つまたは複数のさらなる作用剤を含むことができ、例えば、画像化剤もしくは造影剤(例えば、バリウム含有剤)、または、本発明の方法によって調製された組成物が硬化して生成する生成物の性質を改変する活性な作用剤などを含むことができる。そのようなさらなる成分または作用剤には、有機高分子、例えば、タンパク質(数多くの性質を与える骨関連タンパク質、例えば、再吸収、血管形成、細胞の進入および増殖、石灰化、骨形成、破骨細胞および/または骨芽細胞の成長、その他を高める骨関連タンパク質など、この場合、注目される具体的なタンパク質には、オステオネクチン、骨シアロタンパク質(Bsp)、α−2HS−糖タンパク質、骨Glaタンパク質(Bgp)、基質Glaタンパク質、骨ホスホグリコタンパク質、骨リンタンパク質、骨プロテオグリカン、プロトリピド、骨形態形成タンパク質、軟骨誘導因子、血小板由来増殖因子および骨格増殖因子などが含まれるが、これらに限定されない);粒子状増量剤;無機の水溶性塩、例えば、NaCl、硫酸カルシウム;糖、例えば、スクロース、フルクトースおよびグルコース;医薬的に活性な薬剤(例えば、抗生物質)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の方法を実施することにおいて、好適な量の乾燥反応物(これは一価カチオンのリン酸二水素塩を含む)および硬化流体が、硬化可能な組成物を製造するために一緒にされる。すなわち、乾燥反応物対硬化流体の比率(すなわち、液体対固体の比率)が、「硬化可能な」組成物を提供するために選択され、この場合、「硬化可能な」組成物によって、第1の非固体(かつ同様に非気体)状態から硬化後の第2の固体状態になる組成物が意味される。多くの実施形態において、液体対固体の比率は、第1の非固体状態から第2の固体状態になる流動性の組成物を提供するように選ばれ、この場合、多くの実施形態において、流動性の組成物は、ミルクの粘度から塑像用粘土の粘度にまで及ぶ粘度を有する。そのため、本発明の方法において用いられる液体対固体の比率は、典型的には約0.2〜1.0の範囲であり、通常的には約0.3〜0.6の範囲である。多くの実施形態において特に注目されるのは、ペースト組成物を製造する方法であり、この場合、そのような方法において用いられる液体対固体の比率は、典型的には約0.25〜0.5の範囲であり、通常的には約0.3〜0.45の範囲である。
【0042】
上記で述べられたように、必要量の乾燥反応物、硬化流体および造影剤(これは乾燥反応物および硬化流体と別個であってもよく、あるいは、乾燥反応物および硬化流体の一方または両方に存在してもよい)が、生成物組成物を製造するために十分な条件のもとで一緒にされる。そのため、乾燥成分および液体成分が、典型的には、均質な組成物が乾燥成分および液体成分から製造されるように、様々な撹拌条件または混合条件のもとで一緒にされる。混合を、任意の好都合な手段を使用して達成することができ、そのような手段には、米国特許第6,005,162号に記載されるような手作業による混合、および、国際特許出願公開WO98/28068に記載されるような自動化された混合が含まれる(それらの開示は参考として本明細書中に援用される)。米国特許第5,980,482号に開示されるデバイスもまた注目される(その開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0043】
特定の実施形態において、単純な円筒状チューブを、貯蔵および充填のためのデバイスとして、また、混合および送達のためのデバイスとして、その両方で使用することができる。プラスチック製チューブまたは類似する閉じ込め構造体は、少なくとも2つの領域、区画または部分に分けられる。1つの領域または部分が、上記で記載されるような粉末の成分を含有する。少なくとも1つのさらなる区画が硬化流体を含有し、この場合、特定の実施形態では、例えば、硬化流体の異種の成分を使用前に別々で保つことが望ましい場合、ならびに/または、用いられる硬化流体におけるリン酸塩イオンおよびケイ酸塩イオンの量を決定する際において柔軟度を有することを望む場合、硬化流体成分のための2つ以上の区画が提供される。例えば、粉末を一方の区画に有し、硬化流体を他方の区画に有する2区画デバイスを有することができる。他の実施形態では、粉末を第1の区画に有し、ケイ酸塩溶液を第2の区画に有し、リン酸塩溶液を第3の区画に有する3区画デバイスを有することができる。さらに他の実施形態では、粉末を第1の区画に有し、成分イオンのどちらかまたは両方の1つの濃度での溶液を第2の区画に有し、成分イオンのどちらかまたは両方の第2の濃度での溶液を第3の区画に有するなどの多区画デバイスを有することができ、この場合、このタイプの実施形態は、セメントが使用される特定の適用に依存して、用いられる硬化流体を「それに合わせて調節する」ことを可能にする。さらに他の実施形態では、粉末を中央の区画に有し、硬化溶液を2つの外側の区画に有する3区画デバイスを有することができ、この場合、それぞれの硬化溶液は同じまたは異なっていてもよい。さらなる区画を、所望されるようなさらなる成分(例えば、水溶性の造影剤、セメント改質剤など)のために存在させることができる。
【0044】
2つ以上の区画は、充填されたセメントを調製している期間中に容易に除くことができる容易に取り外し可能なバリアによって互いに分離される。任意の好都合な取り外し可能なバリアをデバイスに存在させることができ、この場合、注目される代表的な取り外し可能なバリア手段が透析バッグクリップまたは類似する手段である。注目される別の代表的なバリア手段は、国際特許出願公開WO98/28068および米国特許第5,362,654号(これらの開示は参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、壊れやすいバリアである。混合する準備ができたとき、これらの領域(液体および粉末)の間のクリップまたは他のバリア手段が除かれ(例えば、クリップが外され)、内容物が簡単に手または他の技術によって一緒に練られる。上記工程は、無菌性のための第2の外側の被覆物を通して行うことができる(すなわち、上記の充填物要素は無菌性のための第2の外側の被覆物の中に存在する)。その後、外側の被覆物を除くことができ、チューブからの混合された内容物を、ぜん動作用を使用して貯蔵/混合物チューブの一方の端部から送達することができる。
【0045】
上記の充填はさらに、生成物組成物の使用/送達のときに用いられる1つまたは複数のさらなる成分(例えば、取り外し可能な送達要素、生成物セメントを付属する送達要素に移すための要素、所望する生成物組成物を製造するために成分を一緒にすることを助ける要素など)を含むように改変することができる。
【0046】
代表的な混合デバイスおよび混合方法論がさらに、米国特許第6,375,935号、ならびに、係属出願の米国特許出願第10/462,075号、同第10/629,321号、同第10/717,171号、同第10/661,356号および同第10/109,994号に記載される(これらの開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0047】
乾燥成分および液体成分を一緒にするか、または混合することが行われる環境の温度は、所望する硬化特性および強度特性を有する生成物を提供するために十分であり、典型的には約0℃〜50℃の範囲であり、通常的には約20℃〜30℃の範囲である。混合は、組成物が製造されるために十分な期間にわたって行われ、一般には約15秒〜120秒の範囲の期間にわたって行われ、通常的には約15秒〜100秒の期間、より通常的には約15秒〜60秒の期間にわたって行われる。
【0048】
本発明の特定の実施形態において、振動が、少なくとも整形外科用セメントの調製と併せて使用される。整形外科用セメントの調製と併せて使用されるによって、振動が、セメントのセメント前駆体(例えば、液体試薬および固体試薬またはセメント成分)が、流動性のセメント生成物組成物を製造するために一緒にされる期間の期間中のある時点で用いられることが意味される。注目される多くの整形外科用セメントに関して、乾燥前駆体および液体前駆体(例えば、粉末および硬化流体)が、時間とともに固体物に硬化する流動性のセメント組成物生成物を製造するために一緒にされる。本発明の特定の実施形態において、振動は、振動性の力(例えば、音波的または機械的)を、例えば、前駆体を混合している期間中に、流動性組成物の前駆体に加えることによって用いられる。例えば、特定の代表的な実施形態において、振動を、流動性のセメント組成物が調製される容器または反応槽(例えば、シリンジ)に加えることができ、それにより、流動性のセメント組成物が調製されつつあるとき、流動性のセメント組成物に加えることができる。
【0049】
これらの代表的な実施形態において、セメントに加えられる振動性の力は、約0.1Hz〜約100,000Hz(例えば、約100Hz〜約5000Hzを含めて、約5Hz〜約50,000Hzなど)の範囲の振動数、および、約1オングストローム〜約5mm(例えば、約10ミクロン〜約500ミクロンを含めて、約1ミクロン〜約1mmなど)の範囲の振幅を有することができる。
【0050】
振動性の力は、調製時間の継続期間中にわたって、または、その一部分にわたってセメント成分に加えることができ、例えば、最初の成分が一緒にされている間に、または、添加剤が最初の成分の混合の生成物と一緒にされている間などにセメント成分に加えることができる。特定の代表的な実施形態において、振動は、約1秒から約5分に及ぶ継続期間にわたって、例えば、約15秒〜約30秒を含めて、約10秒から約1分に及ぶ継続期間にわたって加えられる。そのような実施形態がさらに米国特許出願第10/661,356号および同第10/797,907号に記載される(それらの開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0051】
上記で記載されたプロトコルは、下記においてより詳しく記載されるように、大きな強度を有するリン酸カルシウム無機質生成物に迅速に硬化することができる硬化可能な組成物をもたらす。
【0052】
(硬化可能な組成物)
上記に記載された方法によって製造される硬化可能な組成物は、生物学的に適合性で、多くの場合には再吸収可能かつ/または再構成可能な高強度の生成物に迅速に硬化する組成物であり、この場合、生成物は、最初の反応物には存在していないリン酸カルシウム分子(すなわち、最初の反応物の間での化学反応の生成物であるリン酸カルシウム分子)を含むことによって特徴づけられる。
【0053】
代表的な実施形態において、硬化可能な組成物は流動性である。用語「流動性」は、ペースト様の組成物、ならびに、より液体的である組成物を包含することが意味される。そのため、本発明の硬化可能な組成物の粘度時間(これは、混合された組成物が、混合後、注入により標準的なルアーロック接続具を通過する時間として定義される)が、典型的には約10分までの範囲であり、通常的には約7分までの範囲であり、例えば、約4分までの範囲などである。多くの実施形態において特に注目されるのは、約5分までの範囲の期間(例えば、約4分までの範囲の期間など)で注入される、注入可能な粘度を有するペースト組成物である。より長い期間にわたってペースト様であり続けるペーストは、体内に埋め込まれると、染み出る骨によって置き換わることができ、これにより、セメントが硬化する前に、セメントと骨との間での血液接触面が生じる。
【0054】
本発明によって製造される組成物はリン酸カルシウム無機質含有生成物に硬化する。「リン酸カルシウム無機質含有」生成物によって、1つまたは複数(通常の場合には主として1つ)のリン酸カルシウム無機質を含む固体の生成物が意味される。多くの実施形態において、リン酸カルシウム無機質は、生理学的部位に埋め込まれたとき、時間とともに再吸収可能であり、かつ、多くの場合には再構成可能であるように、一般には結晶性が悪いリン酸カルシウム無機質である。生成物におけるカルシウム対リン酸塩の比率は、生成物を製造するために用いられた特定の反応物およびその量に依存して変化させることができ、しかし、典型的には約2:1〜1.33:1の範囲であり、通常的には約1.8:1〜1.5:1の範囲であり、より通常的には約1.7:1〜1.6:1の範囲である。多くの実施形態において特に注目されるのは、炭酸塩置換型ヒドロキシアパタイト(すなわち、ダーライト)などを含むヒドロキシアパタイトおよびそのカルシウム不足アナログの両方をはじめとするアパタイト系生成物であり、この場合、そのようなアパタイト系生成物は約2.0:1〜1.33:1の範囲でのカルシウム対リン酸塩の比率を有する。本発明の組成物は、多くの実施形態において、ヒドロキシアパタイト系生成物に硬化することができる組成物であり、例えば、最終生成物の約2重量%〜約10重量%(通常的には約2重量%〜約8重量%)の炭酸塩置換を有する炭酸塩化ヒドロキシアパタイト(すなわち、ダーライト)などに硬化することができる組成物である。
【0055】
組成物が固まるか、または、「硬化する」ために要求される時間は変化し得る。硬化は、37℃の生理学的生理的食塩水のもとで沈められたセメントを用いて、改変されたGilmore Needle Test(ASTM C266−89)によって求められ、この場合、硬化は、組成物が、135ニュートンの力で加えられたニードルによるへこみに耐えるときの調製後の時間として定義される。本発明のセメントの硬化時間は約30秒〜20分の範囲であり得るが、特定の実施形態では約30秒〜約10分の範囲であり得る。多くの実施形態において、本発明の流動性組成物は臨床的に適切な時間で硬化する。臨床的に適切な時間によって、ペースト様組成物が約30分未満(通常的には約25分未満)で硬化することが意味され、この場合、組成物は、前駆体の液体セメント成分および乾燥セメント成分を一緒にするか、または混合した後の少なくとも約3分間(ときには少なくとも約5分間)は依然として流動性のままである。
【0056】
本発明の迅速に硬化する組成物の特徴の1つが、硬化値に関して、Gilmore Needle Test(ASTM C266−89)によって測定されたとき、高強度の生成物に迅速に硬化することである。より具体的には、本発明の組成物は、迅速強度獲得組成物と見ることができるように、大きな強度を迅速に獲得する。そのため、3分において、組成物は少なくとも約50ニュートンの硬化値(例えば、少なくとも約75ニュートンなど)を有し、この場合、硬化値は、100ニュートン、150ニュートン、175ニュートンまたはそれ以上(例えば、250ニュートン以上)もの大きさであり得る。6分において、組成物は少なくとも約250ニュートンの硬化値(例えば、少なくとも約275ニュートンなど)を有し、この場合、硬化値は、400ニュートン、450ニュートン、475ニュートンまたはそれ以上(例えば、500ニュートン以上)もの大きさであり得る。9分において、組成物は少なくとも約425ニュートンの硬化値(例えば、少なくとも約450ニュートンなど)を有し、この場合、硬化値は、600ニュートン、700ニュートン、725ニュートンまたはそれ以上もの大きさであり得る。12分において、組成物は少なくとも約600ニュートンの硬化値(例えば、少なくとも約650ニュートンなど)を有し、この場合、硬化値は、700ニュートン、750ニュートン、775ニュートンまたはそれ以上(例えば、1200ニュートン以上)もの大きさであり得る。
【0057】
本発明の組成物の特徴の1つが、組成物が固体の生成物に硬化している期間中に操作可能であることである。そのため、本発明の組成物は、最終生成物の性質に悪影響を及ぼすことなく、硬化プロセス期間中に操作することができる。例えば、硬化プロセス期間中において、最終生成物の性質に悪影響を及ぼすことなく、穴を組成物に開けて、ネジを入れることができる。
【0058】
特定の実施形態において、本発明の硬化可能な組成物は、下記の段階に耐える組成物として特徴づけられる:(1)組成物を操作することができる作業段階(例えば、組成物を骨欠陥部位に送達することができる作業段階);(2)硬化段階、この段階では、組成物は、操作されることなく維持されなければならない;(3)「穴開け可能」段階、この段階では、ネジなどの金属製品を組成物に挿入または設置することができる;および(4)ねじ締め段階、この段階では、「穴開け可能」段階の期間中に組成物に設置されたネジを、組成物に悪影響を及ぼすことなく締めることができる。特定の実施形態において、作業段階は、成分を混合した後の約0.5分〜約5.0分(例えば、約0.5分〜約4.0分)の範囲である。特定の実施形態において、硬化段階は、構成成分を混合した後の約1分〜約15分(例えば、約1分〜約10分)の範囲である。特定の実施形態において、穴開け可能段階は、成分を混合した後の約5分〜約10分で開始され、成分を混合した後の約10分〜約15分またはそれ以上に延ばすことができる。特定の実施形態において、ねじ締め段階は、成分を混合した後の約10分〜約15分の範囲である。
【0059】
1つの代表的な実施形態において、作業段階は、成分を混合した後の約0分〜約2分(例えば、約0.5分〜約1分)の範囲である。この実施形態において、硬化段階が、成分を混合した後の約1分〜約5分の期間中に行われる。この実施形態において、穴開け可能段階が、成分を混合した後の約5分〜約10分の期間中に行われる。この実施形態において、ねじ締め段階が、成分を混合した後の約10分で開始される。
【0060】
別の代表的な実施形態において、作業段階は、成分を混合した後の約5分まで(通常的には、約3分を含めて、約4分まで)続く。この実施形態において、硬化段階が、成分を混合した後の約4分〜約10分の期間中に行われる。この実施形態において、穴開け可能段階が、成分を混合した後の約10分〜約15分の期間中に行われる。この実施形態にお
いて、ねじ締め段階が、成分を混合した後の約15分で開始される。
【0061】
流動性の組成物が硬化して生成する生成物の圧縮強度は、生成物を製造するために用いられた特定の成分に依存して大きく変化し得る。多くの実施形態において特に注目されるのは、生成物が少なくとも海綿質骨の構造的材料として役立つために十分な圧縮強度を有する生成物である。海綿質骨の構造的材料によって、少なくとも正常な生理学的条件のもとで圧縮性の骨が受ける生理学的な圧縮負荷に材料が耐えることができるように、海綿質骨構成材料として使用することができる材料が意味される。そのため、本発明の流動性のペースト様材料は、Morgan,EFら、1997、Mechanical Properties of Carbonated Apatite Bone Mineral Substitute:Strength,Fracture and Fatigue Behavior、J.Materials Science:Materials in Medicine、V.8、pp559〜570に記載されるアッセイによって測定されたとき、少なくとも約20MPa(通常的には少なくとも約40MPa、より通常的には少なくとも約50MPa)の圧縮強度を有する生成物に硬化する材料であり、この場合、最終的なアパタイト系生成物の圧縮強度は60MPa以上もの大きさである。ケイ酸塩を硬化流体に含むことにより、著しくより大きな圧縮強度をもたらす液体対固体のより低い比率を用いることが可能になる。100MPa〜200MPaもの大きい範囲にある圧縮強度を得ることができる。特定の実施形態において、得られた生成物は、実験の節(下記)において示される引張り強度アッセイによって測定されたとき、少なくとも約0.5MPaの引張り強度、例えば、少なくとも約5MPa、少なくとも約10MPaまたはそれ以上を含めて、少なくとも約1MPaなどの引張り強度、例えば、約0.5MPa〜約10MPaの引張り強度を有する。
【0062】
代表的な実施形態において、得られた生成物は長期間にわたって生体内で安定であり、この場合、このことによって、生成物が、例えば、生物に埋め込まれたとき、長期間にわたって、(骨芽細胞による再構成活性を除いて)生体内の条件のもとで溶解または分解しないことが意味される。これらの実施形態において、得られた生成物は、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約1年間またはそれ以上にわたって、例えば、2.5年間、5年間などにわたって安定であり得る。特定の実施形態において、得られた生成物は、水性環境に置かれたときのインビトロで長期間にわたって安定であり、この場合、このことによって、生成物が、例えば、水に浸されたとき、長期間にわたって水性環境において溶解または分解しないことが意味される。これらの実施形態において、得られた生成物は、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約1年間またはそれ以上にわたって、例えば、2.5年間、5年間などにわたって安定であり得る。
【0063】
代表的な実施形態において、本発明の組成物は流体環境(例えば、骨修復部位での生体内環境など)で硬化することができる。そのため、組成物は、湿った環境で、例えば、血液および他の生理学的流体で満たされる環境において硬化することができる。従って、組成物が使用期間中に投与される部位は、乾燥状態で維持される必要がない。
【0064】
(適用)
本発明の方法および本発明の方法によって製造される組成物は、上記で記載されたように、固体のリン酸カルシウム生成物に硬化することができる材料を目的とする生理学的部位に導入することが所望される用途での使用(例えば、歯科、頭蓋顎顔面および整形外科などの用途での使用)が見出される。整形外科用途では、本発明のセメントは、一般には、上記で記載されたように調製され、骨修復部位(例えば、海綿質骨および/または皮質骨を含む骨部位など)に導入される。本発明のシステムによって調製されたセメントが特に使用される整形外科用途には、哺乳動物宿主(特に、ヒト)における骨折の処置および/またはインプラント増強が含まれる。そのような骨折処置方法論において、骨折は最初に整復される。骨折を整復した後、本発明のシステムによって調製された流動性の構造的材料が、上記で記載された送達デバイスを使用して骨折領域における海綿質組織の中に導入される。本発明が使用される具体的な歯科適用、頭蓋顎顔面適用および整形外科適応には、米国特許第6,149,655号(その開示は参考として本明細書中に援用される)に記載される様々な適応が含まれるが、これらに限定されない。この米国特許に記載されるこれらの特定の用途に加えて、本発明のセメント組成物はまた、胸骨切開が行われている用途での使用が見出される。具体的には、本発明のセメントは胸骨切開の縫合プロセスにおいて使用され、この場合、骨フラグメントが再結合され、ワイヤで一緒に結ばれ、何らかの残るすき間に本発明のセメントが満たされる。さらに他の実施形態において、本発明の組成物は薬物送達での使用が見出され、この場合、本発明の組成物は、生理学的部位への投与の後、長く作用する薬物貯留体として作用することができる。例えば、米国特許第5,904,718号および同第5,968,253号を参照のこと(それらの開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0065】
特定の実施形態において、振動が、少なくとも標的骨部位の調製と併せて用いられる。本発明の方法において、標的骨部位は様々な異なる骨部位のいずれかであり得る。多くの実施形態において、標的骨部位は内部の標的骨部位(例えば、皮質壁によって囲まれた海綿質ドメインのような骨の内部領域)である。多くの場合、標的骨部位は、海綿質骨/セメントの複合構造体を生じさせるために整形外科用セメントを浸透させることが所望される海綿質組織から構成される。注目される代表的な海綿質骨標的部位には、椎体、コリース骨折、近位上腕骨骨折、脛骨プラトー骨折および踵骨骨折などに見出される部位が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
これらの実施形態において、振動を、振動を標的骨部位調製において使用することの所望する結果に依存して、任意の好都合なプロトコルを使用して標的骨部位に加えることができる。例えば、特定の実施形態において、標的骨部位の調製は、骨髄および他の物質を骨部位から除くことを含むことができ、例えば、この方法は骨髄除去工程または血腫除去工程を含むことができ、この場合、標的部位における物質(例えば、骨髄、血腫)が、セメント組成物の送達の前および/または送達の期間中に除かれ、その結果、標的部位内へのセメントの浸透がさらに高まるようにされる。例えば、骨髄を、標的骨部位からの吸引によって除くことができる。より具体的には、セメントが反対側に導入される前に、または、セメントが反対側に導入されるとき、骨髄を標的部位の一方の側から吸引することができる。これらの実施形態において、振動性の力を、骨髄(例えば、脂肪髄)除去の速度および/または効率を高めるために、標的骨部位に加えることができる。
【0067】
これらの代表的な実施形態のいくつかにおいて、標的骨部位に加えられる振動性の力は、約1Hz〜約100,000Hz(例えば、約100Hz〜約1000Hzを含めて、約10Hz〜約10,000Hzなど)の範囲の振動数、および、約1オングストローム〜約5mm(例えば、約5ミクロン〜約50ミクロンを含めて、約1ミクロン〜約100ミクロンなど)の範囲の振幅を有することができる。特定の代表的な実施形態において、振動は、約0.1秒から約10分に及ぶ継続期間にわたって、例えば、約10秒〜約1分を含めて、約1秒から約5分に及ぶ継続期間にわたって加えられる。
【0068】
特定の実施形態において、振動が、標的部位へのセメントの送達と併せて用いられる。すなわち、振動性の力が標的部位(例えば、標的骨部位など)への送達時にセメント組成物に加えられる。言い換えれば、セメント組成物が標的骨部位に送達されつつあるとき、セメント組成物が振動させられる。
【0069】
セメント組成物は、任意の好都合なプロトコルを使用して振動させることができる一方で、多くの実施形態において、セメントは、セメントを標的骨部位に搬送しているセメント送達要素(例えば、ニードル)に振動性の力を加えることによって振動させられる。セメントに加えられる振動性の力の量(例えば、送達要素への適用によって加えられる振動性の力の量)は、典型的には、海綿質骨組織を介したセメントの非常に制御された浸透を提供するために十分である。「非常に制御された浸透」によって、振動が停止したとき、セメントがもはや海綿質組織の中にさらに移動せず、また、海綿質組織内へのセメントの何らかの移動がせいぜい約5秒間(例えば、約1秒〜約3秒以内)にわたって続くように、振動の停止と実質的に同時に停止することができる様式で海綿質骨組織を介したセメントの浸透が意味される。振動性の力が、セメントのための送達要素に振動性の力を加えることによってセメントに加えられる場合、送達要素は、多くの実施形態において、約1Hz〜100,000Hz(例えば、約100Hz〜約1,000Hzを含めて、約10vpm〜約10,000vpmなど)の範囲の振動数で、また、約1オングストローム〜約5.0mm(例えば、約5ミクロン〜約50ミクロンを含めて、約1ミクロン〜約100ミクロンなど)のいずれかの方向での大きさの距離で送達要素を移動させる力により振動させられる。
【0070】
これらの実施形態のいくつかの本発明の方法の特徴の1つが、セメントが、セメントに対する著しい背圧の使用を伴うことなく、非常に制御された浸透を提供する様式で送達されることである。そのため、送達期間中にセメントに加えられる何らかの圧力は約100psiを超えず、特定の実施形態では約1psi〜約1000psiの間である。これらの実施形態のいくつかにおいて、陰圧を標的送達部位において存在させることができ、この場合、そのような陰圧により、標的部位へのセメント組成物の進入が高められる。陰圧は、任意の好都合なプロトコル(例えば、上記で記載された標的部位調製プロトコル)を使用して生じさせることができる。陰圧が標的送達部位において存在する場合、その陰圧は、約10psi〜約100psiを含めて、約1psi〜100psiの範囲であり得る。
【0071】
送達部位の調製および/または部位へのセメントの送達における振動の使用がさらに、米国特許出願第10/661,356号および同第10/797,907号に記載される(それらの開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0072】
(キット)
本発明のセメントを含むキットもまた提供され、この場合、乾燥成分および液体成分をキットにおいて別個の容器に存在させることができ、または、これらの成分の一部を1つの容器に入れて一緒にすることができる(例えば、乾燥成分が第1の容器に存在し、液体成分が第2の容器に存在し、これらの容器を、米国特許第6,149,655号(その開示は参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、統合された形態で存在させてもよく、または、そのような形態で存在させなくてもよいキットなど)。特定の実施形態において、例えば、キットから調製される硬化流体の性質に関する柔軟度をキットに提供することを望む場合、キットは2つ以上の硬化流体を異なる濃度で含むことができる。例えば、キットは、それらのケイ酸塩成分および/またはリン酸塩成分に関して互いに異なる2つのさらなる異なるケイ酸カルシウム溶液を含むことができる。あるいは、キットは、濃度に関して互いに異なり、かつ、所望する硬化流体を得るために所望するようにキットの使用時に混合される2つ以上の異なる別個のリン酸塩溶液および/またはケイ酸塩溶液を含むことができる。上記で述べられたように、キットの成分は別個の容器に存在させることができる。あるいは、成分を、充填された要素として、例えば、上記で記載された要素などとして存在させることができる。
【0073】
セメント組成物に加えて、本発明のキットはさらに、数多くのさらなる試薬を含むことができ、例えば、細胞(上記で記載されるような細胞、組成物が接種されることになる場合)およびタンパク質試薬(上記で記載されるようなタンパク質試薬)などを含むことができる。
【0074】
本発明のキットはさらに、セメントの調製および/または送達において使用される1つまたは複数のさらなる成分を含むことができ、例えば、混合要素(例えば、スパチュラ、乳鉢、乳棒など)および送達要素(例えば、シリングなど)などを含むことができる。
【0075】
上記の成分に加えて、本発明のキットは、典型的には、本発明の方法を実施するためにキットの成分を使用するための説明書をさらに含む。本発明の方法を実施するための説明書は、一般には、好適な記録媒体に記録される。例えば、説明書は被印刷物(例えば、紙またはプラスチックなど)に印刷することができる。そのため、説明書は、包装添付物として、キットまたはその成分の容器のラベル書き(すなわち、包装または小分け包装に伴うラベル書き)などでキットに存在し得る。他の実施形態において、説明書は、好適なコンピューター読み取り可能な保存媒体(例えば、CD−ROM、ディスケットなど)に存在する電子的な保存データファイルとして存在する。さらに他の実施形態において、実際の説明書はキットに存在せず、しかし、離れた提供元から、例えば、インターネットを介して説明書を得るための手段が提供される。この実施形態の一例が、説明書を見ることができるウエブアドレス、および/または、説明書をダウンロードすることができるウエブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るためのこの手段は好適な被印刷物に記録される。
【0076】
下記の実施例は例示として提供され、限定として提供されない。
【0077】
(実験)
I.迅速硬化セメント配合物
A.序論
0.40の液体対粉末比を使用して薄いケイ酸ナトリウム(pH=11.0)と混合されたα−リン酸三カルシウムおよびリン酸二カルシウム無水物の混合物からなるセメント配合を調べた。調べられた具体的な配合は下記の通りであった:
B.セメント配合:
6.0g TCP 3082102
0.6g DCPA
0.17g MCPMまたはSPMA
2.71g NaSiO4(2.5vol%、0.40 l/s、pH11.0)

6.0g TCP 3082102
0.6g DCPA
0.19g SPMM
2.71g NaSiO4(2.5vol%、0.40 l/s、pH11.0)。
【0078】
C.結果
粉末形態で添加され、かつ、同じセメント系内で混合された異なるリン酸二水素塩の影響を、改変されたGilmoreニードル押込試験によって測定されるような早期強度獲得(硬化)に関して評価した。
【0079】
試験された塩には、下記が含まれた:
【0080】
【化1】

注:リン酸塩のモル数はSPMAによるMCPMの置換とほぼ等しい。
【0081】
一塩基性リン酸ナトリウム無水物(SPMA)および一塩基性リン酸ナトリウム一水和物(SPMM)の塩はともに、下記の硬化試験結果によって明らかにされるように、一塩基性リン酸カルシウム一水和物(MCPM)よりも優れていた。
【0082】
【化2】

II.カルボキシメチルセルロースを伴う迅速硬化セメント配合物
A.序論
市販のCallos注入セメント配合物(Skeletal Kinetics LLC、Cupertino、CA)に対するカルボキシメチルセルロースの添加の影響を観察した。
【0083】
B.配合物
1.注入配合物(CMCを伴う):
1g 40ミクロン〜100ミクロンのα−TCP
1g 100ミクロン〜200ミクロンのα−TCP
5g 3ミクロン〜4ミクロンのα−TCP
0.1g リン酸ナトリウム
0.015g CMC
1:100希釈のケイ酸ナトリウム(0.41 l/sで)
2.嵌入配合物(impact formulation)(CMCを伴う):
3g 100ミクロン〜200ミクロンのα−TCP
8g 3ミクロン〜4ミクロンのα−TCP
0.125g リン酸ナトリウム
0.03g CMC
1:50希釈のケイ酸ナトリウム(0.39 l/sで)。
【0084】
C.結果
1.注入試験(N=6)
注入試験を、示されたManninの11ゲージのニードルを用いてMerit Medallionの6ccシリンジによって行った。材料を使用説明書(IFU)に従って混合した:室温を19℃〜21℃に調節し、粉末および液体を1分間混合し、シリンジに満たし、ニードルを取り付け、混合後3分してInstron装置のもとで注入する。結果を下記の表1に示す。下記の表1において、「キット番号」は、使用されている粉末−液体硬化物のサンプル番号を示す。「開始体積(cc)」は、ルアー部の基部からシリンジ表面の体積マークまで測定されたシリンジ内のセメントの総量である。「終了体積(cc)」は、注入プロセスが完了した後におけるシリンジ内のセメント残留量である。「動的負荷(N)」は、材料を注入している期間中にシリンジのプランジャーに加えられた負荷のメジアン値である。この値はセメントの相対的な粘度および注入の容易さを示している。
【0085】
【表1】

2.侵入試験(N=6)
侵入試験を、侵入能を評価するために、多数のシリンジ直径によって行った。材料を使用説明書(IFU)に従って混合した:室温を19℃〜21℃に調節し、粉末および液体を1分間混合し、シリンジに満たし、ニードルを取り付け、混合後3分してInstron装置のもとで注入する。結果を下記の表2に示す。表2において、「ニードル」はニードル直径のゲージサイズおよびニードルの長さを示す。
【0086】
【表2】

3.硬化試験(N=6)
硬化試験を下記のように行った。材料をIFUに従って混合した:1分間混合し、硬化用鋳型に正しく満たし、混合後2.5分して32℃の浴に沈め、浴での示された時間で硬化値についてInstron装置のもとで試験する。結果を下記の表3に示す。表3において、「3分、6分、12分(N)」は、Instron装置を用いて試験される前の、硬化中の立方体を沈めるために必要とする示された時間である。
【0087】
【表3】

4.引張り強度試験(N=4)
引張り強度試験を下記のように行った。材料をIFUに従って混合した:1分間混合し、引張り用鋳型に正しく満たし、37℃の浴に24時間沈め、直径方向の引張り強度についてInstron装置のもとで試験する。結果を下記の表4に示す。
【0088】
【表4】

5.ドリル/ネジ試験(N=6)
ドリル/ネジ試験を下記のように行った。材料をIFUに従って混合した:1分間混合し、穴開け用立方体の鋳型に正しく満たし、32℃の浴に10分間沈め、1/8”のドリルビットを用いてセメントに穴を開け、一致する直径の自己穴開けネジでネジ締めする。結果を表5に示す。表5において、「穴開け」および「ネジ締め」は、試験期間中の機能的結果についての観測に基づく記述である。
【0089】
【表5】

6.混合の容易さ
混合の容易さを、上記キット(試験セクション1〜5において使用されたキット)のそれぞれを使用説明書に従って混合し、混合期間中および混合後の性状および粘稠度に注目することによって確認した。混合物の性状は、粉末および液体の重量を測定し、液体のpHレベルを測定し、硬化試験および注入試験において使用されたキットの液体:固体の比率を計算することによる保証された粘稠度であった。
【0090】
混合物の観測に基づく均質性は試験中を通して一定であった。キットは、CMCとのより高粘度の配合物のためにわずかにより高粘度であったが、クリーム様の様式で混合した。
【0091】
下記の表6において、「粉末(g)」はキットの1つにおいて測定された粉末成分のグラム単位での重量である。「液体(g)」はキットの1つにおいて測定された液体成分のグラム単位での重量である。「pH」は液体成分のpHレベルを示す。「L:S比」は液体/固体重量の計算された比率である。
【0092】
【表6】

7.破壊靭性についての切欠き感度試験
切欠き感度試験を下記のように行った。材料をIFUに従って混合した:1分間混合し、切欠き感度試験用の鋳型に正しく満たし、示された時間にわたって37℃の浴に沈める。2つのキットを使用して、1つの切欠き脆性用鋳型に完全に満たした。最大強度を保証するために、試料を37℃の浴で4日間固まらせ、その後、試験を行った。結果を下記の表7に示す。
【0093】
【表7】

8.まとめ
表8は、上記で概説されたそれぞれの試験パラメーターについての結果である。
【0094】
【表8】

D.結論
上記の結果は、注入配合物へのカルボキシメチルセルロースの添加がセメントの完全な注入を提供し、その一方で、セメントの他の機能が依然として元のCallosTM注入生成物と類似したままであることを明らかにしている。加えて、嵌入配合物に関しては、粉末が十分に混合することができ、かつ、カルボキシメチルセルロースを有しない嵌入配合物と比較して、より良好な取り扱い特性を有することを示す。
【0095】
大きな強度を有する組成物に迅速に硬化するリン酸カルシウムセメントが本発明によって提供されることが上記の結果および議論から明らかである。そのため、本発明はこの技術分野に対する著しい貢献を表す。
【0096】
本明細書において述べられたすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参考として援用されることが具体的かつ個々に示された場合と同じ程度に参考として本明細書中に援用される。
【0097】
本発明は今や十分に記載されているので、多くの変化および改変が、添付された特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対して行われ得ることが当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強固なリン酸カルシウム含有生成物に迅速に硬化するリン酸カルシウム組成物を製造する方法であって、該方法は以下の工程:
(a)硬化流体;および
(b)(i)カルシウム源およびリン酸源;および
(ii)一価カチオンのリン酸二水素塩
を含む乾燥反応物
を、該リン酸カルシウム組成物を製造するために十分な比率で一緒にする工程
を含む、方法。

【公開番号】特開2013−46799(P2013−46799A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−238229(P2012−238229)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2007−527520(P2007−527520)の分割
【原出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(504351873)スケルタル キネティクス エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】