説明

迅速応答起動時のハイブリッドウォッベ制御

【課題】ガスタービンの起動時間を最小限に抑えるための方法及び装置を提供すること。
【解決手段】一態様では、本発明は、ガスタービン(10)の移行を制御する方法に関する。本方法は、ガスタービン(10)を増大した負荷で駆動させる要求を受信することを含む。増大した負荷は、要求受信時のガスタービン(10)で駆動される負荷よりも大きい。本方法はさらに、ガスタービン(10)の燃焼器(20)内で点火される燃料の温度が、増大した負荷を駆動するために燃焼器(20)に導入される燃料の目標温度よりも低いか否かを判断することを含む。本方法はまた、この判断に応答して、燃料の温度が目標温度よりも低いときに、ガスタービン(10)の燃焼器(20)への添加剤の導入を制御して、増大した負荷での駆動へのガスタービン(10)の実質的に連続した移行を促進するための燃料と添加剤を含む燃料の組合せの適当なウォッベ指数を達成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスタービンの起動時間を最小限に抑えるための方法及び装置に関し、具体的には、タービンのローディング時の遅延を最小限に抑えて、燃料をガスタービンに供給する前に加熱できるようにするため、ガスタービンに供給される燃料のウォッベ指数を制御するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用タービンはガス燃焼式のものが多く、電気エネルギーを発生させるための発電プラントに設けられた発電機のような負荷を駆動するのに常用される。かかるガスタービンは、特定の範囲の燃料を燃焼させるとともに、かかる燃料を燃料温度のような特定の条件下で燃焼させるように設計される。燃料組成及び燃料温度は、燃料の体積基準での熱量を示すウォッベ指数として知られる項の計算に使用される。ウォッベ指数と同様に、無負荷からベース負荷までの燃料流量の範囲も、燃焼器での燃料ステージングつまりモード、さらにノズルサイジングのような他の詳細を決定するのに用いられる。
【0003】
連続運転が期待される負荷でのプラント効率を高めるため、燃料を特定の温度に加熱してもよい。温度が上昇すると同じ圧力で燃料の体積は増大するので、燃料を加熱するとウォッベ指数は低下する。設計範囲外のウォッベ指数でのタービンの運転は、不都合な音響共鳴を生じることがあり、そのためタービンハードウェアの損傷、燃焼器内での火炎の消失を招くおそれがある。こうした場合、燃焼温度を上げると、かかる燃焼モードに入って燃料が確実に所要のウォッベ指数をもつように制御できる。燃料温度が所要の範囲に上昇していないと、システムは許容温度に達するまで所与の負荷に留めておかなければならない。
【0004】
ガスタービンは、その運転の要求がなされてすぐに発電機のような大きな負荷を駆動することが求められることが多い。ガスタービンは、運転の要求に迅速に応答して、ガスタービンが出力電力を全く発生しないアイドルモード(オフモード)から、ガスタービンがオペレータの要求によって完全な負荷を駆動する全負荷モードへと迅速に移行することが期待される。しかし、多くのガスタービン設備は、燃焼器に供給される燃料の加温を、その設備自体の温排ガス又はボトミングサイクルからの流れに依拠している。排ガスがその標準運転温度に達するには時間がかかるので、ガスタービンの起動の開始直後に燃焼器に最初に供給される燃料は、ガスタービンについて設計された燃料の目標温度よりも低い。目標温度未満の燃料を導入すると、所望範囲外のウォッベ指数を生じ、ガスタービンを損傷しかねない燃焼ダイナミックスを招くおそれがある。また、起動してすぐに大きな負荷を駆動するように迅速な応答がガスタービンに必要とされる場合、その特定の負荷の要求を満たす妥当な温度まで燃料を適切に予熱する十分な時間はない。そのため、ガスタービンは、その目標温度未満の燃料を燃焼させざるをえず、損傷のリスクや、起動時の遅延が起こるが、駆動すべき負荷に応じた選択肢ではないことがある。
【0005】
ガスタービンが起動時に十分加熱されていない燃料を燃焼させるというシナリオを回避するため、ガスタービンを含む設備には、起動時にガスタービンに供給される前に燃料を加熱する独立型ボイラーも備えるものもある。しかし、上述のような大きな負荷の迅速応答起動の要求を満たすため、ガスタービンが運転されていないときも、補助ボイラーを常時点火状態に維持し、スタンバイしておかなければならない。かかるボイラーを常時スタンバイに連続して維持するには、多大な量のエネルギーが消費され、コストがかかり、不経済である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、第1の負荷状態から、第1の負荷状態よりも駆動される負荷が大きい第2の負荷状態にガスタービンが移行する際の燃料効果を最小限に抑えるための方法及び装置が、当技術分野で必要とされている。かかる方法及び装置は、燃料の温度をガスタービンの負荷の変動を満たす十分な温度まで上昇させることができる時点まで、少なくとも一時的に燃料のウォッベ指数を適宜調節することができる。この方法及び装置は、燃料の組成に基づいて燃料のウォッベ指数を適宜調節することができ、ウォッベ指数のこのような調節を適宜燃料の加熱と並行して行うこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の概要は、本明細書に記載するシステム及び/又は方法の幾つかの態様の基本的な理解を図るための簡単な概要である。この概要は、本明細書に記載するシステム及び/又は方法の包括的な概説ではない。主要/重要な要素を特定する、或いはかかるシステム及び/又は方法の範囲を詳細に描写することを意図するものではない。唯一の目的は、以下に提示するより詳細な説明の前置きとして、幾つかの概念を簡単に提示することである。
【0008】
一態様では、本発明は、ガスタービンの移行を制御する方法を提供する。本方法は、ガスタービンを増大した負荷で駆動させる要求を受信することを含む。増大した負荷は、要求受信時のガスタービンで駆動される負荷よりも大きい。本方法はさらに、ガスタービンの燃焼器内で点火される燃料の温度が、増大した負荷を駆動するために燃焼器に導入される燃料の目標温度よりも低いか否かを判断することを含む。本方法はまた、この判断に応答して、燃料の温度が目標温度よりも低いときに、ガスタービンの燃焼器への添加剤の導入を制御して、増大した負荷での駆動へのガスタービンの実質的に連続した移行を促進するための燃料と添加剤を含む燃料の組合せの適当なウォッベ指数を達成するすることを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、負荷を駆動するためのガスタービンを提供する。ガスタービンは、ガスタービンに導入される空気の圧力を高める圧縮機と、ガスタービンの運転中に燃料燃料を燃焼させる燃焼器と、燃焼器の下流に配置され、ガスタービンを流れる高温ガスで駆動されるタービンとを備える。ガスタービンは、ガスタービンが初期負荷での駆動から増大した負荷での駆動へと移行する際にガスタービンの運転を制御するコントローラをさらに備える。コントローラは、要求受信時のガスタービンで駆動される初期負荷よりも大きい増大した負荷でガスタービンを駆動させる要求を受信する受信部を含む。コントローラは、ガスタービンの燃焼器内で点火される燃料の温度が、増大した負荷を駆動するために燃焼器に導入される燃料の目標温度よりも低いか否かを判断する比較部をさらに含む。コントローラの演算部は、燃料の温度が目標温度よりも低いときに、ガスタービンの燃焼器への添加剤の導入を制御して、増大した負荷での駆動へのガスタービンの実質的に連続した移行を促進するための燃料と添加剤を含む燃料の組合せの適当なウォッベ指数を達成する。燃料の組合せは燃料と添加剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガスタービンの起動時間を最小限に抑えて負荷要求を満たすように運転できるガスタービン及び制御システムを示す概略図である。
【図2】ガスタービンのローディング時の遅延を含む例示的なタイミング図であり、ガスタービンのローディング、燃料温度及びウォッベ指数を示す。
【図3】本発明の一態様に係るガスタービンのほぼ連続的なローディングを示す例示的なタイミング図であり、ガスタービンのローディング、燃料温度及びウォッベ指数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、幾つかの部材及び部材の配置の物理的形態を取ることができ、それらの実施形態を本明細書で詳細に説明するとともに、図面に示す。
【0012】
本明細書で、単に便宜のため特定の専門用語を使用するが、それが本発明を限定するものとして解釈すべきではない。本明細書で使用する相対的用語は、図面を参照することによって最も良く理解される。図面中、同様の符号は同様又は類似のものを特定するために使用される。さらに、図面中、特定の特徴をある程度概略的な形で示すことがある。
【0013】
最初に図1を参照すると、本発明は、電気エネルギーを生成するための発電機34のような負荷を駆動するガスタービン10の制御方法及びシステム17に関する。図に示すように、ガスタービンは概略的に表しており、本発明の発明概念を説明するため、特定の構成要素のみを示している。この概略図は、すべての寸法及び構造を示しているものと解釈すべきではない。ガスタービン10は、圧縮機の入口14から圧縮機の出口へと空気が圧縮機を移動する際に空気の圧力を高める圧縮機12を含む。圧縮機12は、高速で回転して空気をガスタービン10へと送るファンブレード18の列を支持するハブ16を含む。燃焼器20は、燃料を燃焼器内へと導入する燃料噴射器又はノズルを含む燃料送出デバイス22を含む。かかる燃料は、燃料供給源からガスタービン10に供給される。当業者には自明であろうが、燃料は、燃料供給源からガスタービン10への経路を移動し、結果的にタービン内で燃焼器へと送られる。したがって、かかるルーティング経路の詳細を示す必要はない。経路に沿って、弁26などの燃料流量コントローラを調節して、燃焼器20への燃料流量の1種以上の値(例えば、送出量)を制御することができる。適当な弁26の例としては、ソレノイド弁、並びに中央制御装置25によって制御することができる他のあらゆるタイプの電気作動式弁を挙げることができる。燃料に加えて、酸素及び後述する添加剤を組合せて、燃焼器20のための燃料の組合せを形成することができる。
【0014】
ガスタービン10に戻ると、タービンは、ガスタービン10内を移動する高温ガスによって回転し、燃焼器20の下流に配置された1以上のタービン30を収容するタービン部28をさらに含む。出力軸32は、回転力をタービン30から負荷に伝達するため、タービン30と負荷とを動作可能に連結するのに適している。負荷は、図1では、電力の発電機34として示してある。圧縮機12と同様に、タービン30は、ブレード29の列を支持するハブ27を含み、移動する空気がブレード29に当たってタービン30、ひいては出力軸32を回転させる。図に示すタービンは例示にすぎず、その構造、構成、配置などは変更し得る。
【0015】
次に制御装置17について説明すると、この装置は、両矢印線で概略的に示すように、ガスタービン10に動作可能に接続される。一般に、概略的な矢印線は動作可能な接続を表す。制御システム17の一部として中央処理装置25も図1に示してあるが、これは、ガスタービン10が複数の運転モード間で移行する移行期間中を含むガスタービン10の運転を制御するための、適当な電子ハードウェアと、適宜ソフトウェアとの組合せによって形成することができる。例えば、ガスタービン10は、ガスタービン10が負荷を駆動していない、又は初期負荷を駆動しているオフラインモードから、ガスタービン10がその定格負荷容量の一部を駆動している部分負荷モードへ、又はガスタービン10がその定格負荷の約100%を駆動している全負荷モードへの間で移行することができる。部分負荷モード又は全負荷モードのガスタービン10によって駆動される負荷は、移行の開始点となる無負荷モード又は初期負荷モードのガスタービン10によって駆動される負荷よりも大きい。ガスタービン10に対する負荷の量は、発電機34又は他のタイプの負荷を要求どおりに駆動するために、ガスタービン10が発生させる必要がある出力電力に対応することができる。
【0016】
中央制御装置25が実行することができる段階は、集合的に論理回路を形成する別個のアナログ及び/又はデジタル回路群によって適宜実施することができ、中央制御装置25と連通しているコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータ実行可能命令を実行するマイクロプロセッサなどのプログラム可能デジタルコントローラによって、少なくとも部分的に適宜実施することができ、或いはそれらのあらゆる組合せによって実施することができる。コンピュータ可読媒体の例としては、EEPROM、EPROMなどのフラッシュメモリ、ハードディスクドライブなどの固体又は磁気記憶装置、或いは、コンピュータ実行可能命令を電子形式で格納することができる中央制御装置25と連通している他のあらゆる光学、磁気、電子などの記憶装置が挙げられるが、それらに限定されない。
【0017】
中央制御装置25は、キーボード38、表示画面40などの任意の入力デバイスを備えたユーザインターフェース36、ある負荷の駆動から増大した負荷の駆動へとガスタービンの運転の移行を要求する信号を制御システム17に入力する外部作用を可能にする他のあらゆるタイプのインターフェース、又はそれらのあらゆる組合せを含むことができる。それに応答して、ガスタービンの出力電力を適宜に増加させて、ガスタービン10に増大した負荷を駆動させることができる。負荷移行に対するかかる要求としては、ガスタービン10が非活動状態である、即ち出力電力がゼロであるスタンバイ又はアイドル状態から、ガスタービン10を始動させる要求を挙げることができ、一般的に、移行は起動と呼ばれる。或いは、かかる状態のガスタービン10に対して、非ゼロである第1の負荷の駆動から(例えば、部分負荷モードから)、第1の負荷よりも大きい高負荷の駆動(例えば、全負荷モード)への移行を要求することができる。
【0018】
別の例として、オペレータは、発電機34で発生させる出力電力などの運転設定を入力したり、ガスタービン10の所望の角速度を直接入力したり、ガスタービン10で発生させる所望の気流速度を直接入力したりすることができる。代替実施形態によれば、ガスタービン10を増大した負荷で駆動させる要求は、適宜、所定の条件を検知したことに応答して制御システム17と自動的に連通するようと動作可能に接続したセンサ(図示なし)からのもの、又は他のあらゆる信号源からのものであり得る。
【0019】
ガスタービン10に向かって移動する燃料に戻ると、ガスタービン10に供給される燃料の温度を検知し、検知した温度を示す信号を制御システム17に送信する温度センサ44が設けられる。温度センサ44が送信する信号は、図1に示すような熱交換器58による加熱前の、又は加熱後の燃料の温度を示すものであることができる。ただし、どの位置で燃料の温度が検知されるかに関わらず、送信される信号は、燃焼器20に導入される燃料の温度を示すものである。
【0020】
制御システム17には、燃料の温度を中央制御装置25が利用可能な目標温度と比較するための比較器50が設けられる。比較器50は、図に示すような加算ノード、又は、温度センサ44が判断した燃料の温度を目標温度と比較する、またそれら温度の差を適宜計算する他のあらゆる適当なデバイスであることができる。例えば、比較器50は、詳細に後述するように、適当なウォッベ指数を作成してガスタービン10が高負荷をほぼ連続的に駆動できるようにするため、燃料の温度が燃焼器20に導入すべき燃料の目標温度よりも低いか否かを判断することができる。
【0021】
目標温度は、中央制御装置25が通信することができるコンピュータ可読媒体から適宜検索することができる。例えば、目標温度は、コンピュータ可読媒体が格納している高負荷の様々な値に対応する、目標温度のルックアップテーブルから検索することができる。他の実施形態によれば、高負荷の様々な値に対応する目標温度は、高負荷、実験データ、又はコンピュータ可読媒体が格納している他のあらゆる適当なデータの様々な値に対して、目標温度を関連付ける曲線から得ることができる。さらに他の実施形態では、目標温度を手動で入力することができる。
【0022】
燃料温度と目標温度との比較結果は、燃料温度と目標温度との温度差を、燃料に加えて燃焼器20に導入すべき添加剤の流量又は量と関連付ける、ウォッベ指数調節相関(adjustment correlation)52に入力することができる。本明細書では、燃料と添加剤の組合せを燃料の組合せと呼ぶ。比較器50によって判断された温度差に対応する添加剤の流量は、図3を参照して記載するように、高負荷を駆動するようにガスタービンのほぼ連続的な移行を促進する適当なウォッベ指数を有する燃料の組合せを作り出すため、燃焼器に導入することができる添加剤の流量である。
【0023】
ウォッベ指数は、異なる温度における異なる燃料ガスの体積エネルギー含量の比較を考慮に入れた値である。同様のウォッベ指数を有する燃料は、ガスタービン10で燃焼させたときに同様に機能するものと予測することができる。ウォッベ指数の一例の定義は、一般的に修正ウォッベ指数と呼ばれ、相対燃料熱量を相対密度で除したものとして一般に定義され、ガスタービンの運転において顕著な劣化がない場合、典型的には各燃料についての定義値から±5%の偏差が容認できる。関連するウォッベ指数を決定するのに他の基準を利用できることを理解されたい。一例に戻ると、ウォッベ指数の例は次式の通りである。
【0024】
【数1】

しかし、ウォッベ指数が規定値から±5%をはるかに超えて著しく変動する場合、容認できないレベルの燃焼ダイナミックスを招くおそれがある。即ち、燃焼ダイナミックスはウォッベ指数に応じて変わることが確定している。したがって、ウォッベ指数が規定値から高いレベルで変動する作動は、ハードウェアの疲労、燃焼システムの部品寿命の低減、及び発電機能停止の可能性をもたらす場合がある。
【0025】
添加剤を含まない燃料の温度が適当なウォッベ指数を確立するのに十分である場合、ガスタービン10を高負荷へとほぼ連続的に移行させられるようにするために添加剤は必要ない。他方では、燃料の温度が目標温度未満であり、それによって、燃焼器20に単独で導入される燃料のウォッベ指数がガスタービンのウォッベ指数の設計公差内に収まらない場合、制御システム17は、弁56又は他の流体流量コントローラを作動させて、燃焼器20への添加剤の導入を制御することができる。制御システム17は、高負荷へと移行させるのに適当なウォッベ指数を確立するため、燃料の組合せにおける燃料と添加剤の比を調節することができる。この比は、例えば、供給源54とガスタービン10との間の制御弁56を操作することで、添加剤の送出値(例えば、流量)を変えることによって調節することができる。この調節は特定の燃料ステージング向けであってもよい。
【0026】
添加剤はあらゆる不活性ガスであることができ、その例としては窒素が挙げられる。他の不活性ガスを使用できることを理解すべきである。さらにまた、添加剤は、ウォッベ指数に影響を及ぼす他のタイプのガスであることができる。例えば、大幅に異なるウォッベ指数を有する別の可燃ガスを使用して、ウォッベを所望のように全体的に制御することができる。
【0027】
図1は、混合器60によって燃焼器20の外部で添加剤を燃料と組合せて、燃料の組合せが形成されることを示す。この燃料の組合せは、次に、混合気としてタービンに、結果として燃焼器20に導入することができる。しかし、代替実施形態によれば、添加剤は、燃料とは別個に、又は燃焼器と外部の混合器60との間の任意の位置で、燃焼器20に適宜注入することができる。
【0028】
制御システム17はまた、熱交換器58、バイパス弁、燃料制御弁26、又は、より高い出力電力に対する要求を満たすのに必要な出力電力を発生させるため、必要なときに燃料の加熱を制御する、若しくは少なくとも開始する他のデバイスと適宜連通することができる。
【0029】
高負荷を駆動するというガスタービン10に対する要求を制御システム17が受信すると、制御システムは、過渡作動を開始して、高負荷に適応するようにガスタービン10の出力電力を調節する。明瞭にするため、高負荷への移行の一例を、休止状態からガスタービン10がその全定格負荷を駆動する全負荷状態へのガスタービン10の起動として記載する。図2は、共通の時間スケールに応じて変わる、ガスタービンのローディング(GT負荷)曲線のプロット、燃料温度曲線のプロット、及びウォッベ指数曲線のプロットを示す。燃料加熱は、GT負荷によって開始されて、L1まで増加する。時間t1でL1に達する前は、燃料加熱がないことがあるが、それは、それらの負荷における燃料ステージングに対して正しいウォッベが与えられないことがあるためである。時間t1でGT負荷がL1に達すると、負荷は一定になるが、燃料温度は上昇し、ウォッベは減少し続ける。温度/ウォッベの要件がt2で満たされると、ローディングはL1からL2へと継続する。
【0030】
図2は、ガスタービンのローディング曲線及び燃料温度曲線を示し、これらは両方とも共通の時間スケールに応じて変わる。図2に示すように、時間t0で、高負荷を駆動するようにガスタービン10を移行させる要求が、制御システム17によって受信される。時間t1の前には燃料は加熱されていないので、温度センサ44(図1)が検知する燃料源24(図1)からの燃料の温度は、図2の燃料温度曲線に示すように、燃料の室温に近い。時間t1で制御システム17によって加熱を開始することができ、それによって、図2の燃料温度曲線の傾斜線75に示すように、t1後、燃料温度は上昇し続ける。
【0031】
ガスタービン10の作動及び初期ローディングは、制御システム17が要求を受信したほぼ直後に始まることができる。ガスタービン10の初期ローディングは、図2に示すガスタービンのローディング曲線の傾斜線70によって表される。時間t0とt1の間で活性であるこの初期燃焼モードでは、加熱されていなくても、燃料の温度は、時間t0から時間t1までのガスタービン10の安定作動(即ち、ガスタービン10が対象とする許容可能なウォッベ指数の範囲内にあるウォッベ指数を有する燃料を燃焼させることによる、燃焼ダイナミックスが最小限である作動)を可能にするウォッベ指数を確立するのに十分である。ガスタービン10の安定作動によって、ガスタービン10に起こる燃焼ダイナミックスが最小限に抑えられ、それによって、かかる動力学からガスタービン10が受ける損傷が最小限に抑えられる。
【0032】
図2のローディング曲線に表されるガスタービン10に対する負荷は、この実施例ではガスタービン10にさらにローディングするように燃焼モードを移行させることが要求される時点に対応する時間t1における、第1の移行負荷L1まで徐々に増加する。例えば、ガスタービン10は、ガスタービン10が作動しているモードに応じて燃料を異なるように燃焼させる複数の燃焼器を適宜含む、複数の異なる燃焼モードで適宜運転できる。ガスタービン10に対する負荷を第1の移行負荷L1よりもさらに増加させるため、ガスタービン10は、時間t0から時間t1まで使用した初期燃焼モードとは異なる第2の燃焼モードへと移行しなければならない。第2の燃焼モードは、第1の移行負荷L1を上回る高負荷を駆動するのに十分な出力電力を発生させることができるが、初期燃焼モードで燃焼させた燃料のウォッベ指数とは異なる燃料のウォッベ指数を必要とする。第2の燃焼モードに対するこのウォッベ指数を確立するため、ガスタービン10及び熱交換器58(図1)からの熱排ガスガスを使用して、ボトミングサイクルからの蒸気若しくは他の媒体を使用することによって、又は他のあらゆるタイプのヒーターによって、燃料を加熱することで燃料の温度を上昇させる。図2の燃料温度曲線の傾斜線76から分かるように、時間t1とt2の間、燃料の温度は加熱によって上昇し続ける。燃料の温度は、第2の燃焼モードに対して確立しなければならないウォッベ指数に対応する、目標温度に達しなければならない。この目標温度は、図2の燃料温度曲線に破線78によって表される。
【0033】
しかし、燃料の温度を上昇させている間、第2の燃焼モードにおけるガスタービン10の安定作動を可能にするのに所要のウォッベ指数を確立するのに十分に燃料の温度を加熱することができるまで、第1の移行負荷L1を上回るガスタービン10の更なるローディングは遅延される。図2のローディング曲線の水平線72によって表されるように、時間t1とt2の間のガスタービン10に対する負荷はほぼ一定であることが分かる。燃料が加熱されるのを待つ間の遅延は長くなる場合があり、当該アセンブリが高負荷を駆動するという要求に対する迅速応答を必要とする場合は不具合である可能性がある。
【0034】
図2の燃料温度曲線における燃料温度が、時間t2で第2の燃焼モードに対するウォッベ指数を確立するのに必要な、破線78によって表される目標温度に達すると、第2の燃焼モードを開始することができ、第1の移行負荷L1を上回るガスタービン10のローディングを継続することができる。ガスタービン10のこの更なるローディングは、傾斜線74に示す。
【0035】
図2を参照して記載したような、ガスタービン10のローディング時の遅延を最小限に抑えるため、本発明は、燃料が適当に加熱されるのを待つ必要なしに、第2の燃焼モードに所要のウォッベ指数を確立する。したがって、図3を参照して記載する実施形態によるタービンのローディングは、ほぼ連続的で中断されないものであることができる。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態による、共通の時間スケールに応じて変わる、ガスタービンのローディング(GT負荷)曲線のプロット、燃料温度曲線のプロット、及びウォッベ指数曲線のプロットを示す。開始点がt0であることは図2と同様であり、つまり、時間t0で、高負荷を駆動するようにガスタービン10を移行させる要求が、制御システム17によって受信される。やはり、時間t0の前には燃料は加熱されておらず、したがって、温度センサ44(図1)が検知する燃料源24(図1)からの燃料の温度は、図3の燃料温度曲線で示すように、燃料の室温に近い。時間t0で制御システム17によって加熱を開始することができ、それによって、同じ曲線の傾斜した実線82で示すように、時間t0とt1の間で燃料温度は目標温度(図3の燃料温度曲線における破線80によって表される)に向かって上昇し始める。
【0037】
ガスタービン10(図1)の作動及び初期ローディングは、制御システム17(図1)が要求を受信したほぼ直後に始まることができる。ガスタービン10(図1)の初期ローディングは、図3に示すガスタービンのローディング曲線における時間t0とt1の間の傾斜線90によって表される。時間t0とt1の間で活性であるこの初期燃焼モードでは、加熱されていなくても、燃料の温度は、時間t0から時間t1までのガスタービン10の安定作動(即ち、ガスタービン10が対象とする許容可能なウォッベ指数の範囲内にあるウォッベ指数を有する燃料を燃焼させることによる、燃焼ダイナミックスが最小限である作動)を可能にするウォッベ指数を確立するのに十分である。
【0038】
図3のローディング曲線に表されるガスタービン10に対する負荷は、この実施例ではガスタービン10にさらにローディングするように燃焼モードを移行させることが要求されるローディング中の時点に対応する、時間t1における第1の移行負荷L1まで徐々に増加する。ガスタービン10に対する負荷を第1の移行負荷L1よりもさらに増加させるため、ガスタービン10は、時間t0から時間t1まで使用した初期燃焼モードとは異なる第2の燃焼モードへと移行しなければならない。第2の燃焼モードは、第1の移行負荷L1を上回る高負荷を駆動するのに十分な出力電力を発生させることができるが、初期燃焼モードで燃焼させた燃料のウォッベ指数とは異なる燃料のウォッベ指数を必要とする。
【0039】
図2を参照して記載した実施例では、燃料の温度を、燃料の所要のウォッベ指数を確立するように加熱することができるまで、更なるローディングは中断された。対照的に、図3を参照して記載した実施形態の制御システム17(図1)は、燃焼器内で適当なウォッベ指数を有する燃料の組合せを形成するため、適当な時点で燃焼器20(図1)への添加剤の導入を開始し制御して、適宜ガスタービン10のローディングを中断することなく、ガスタービン10がほぼ連続的に第2の燃焼モードへと移行できるようにする。燃焼器20への不活性ガス又は他の適当な添加剤の導入は、ある燃焼モードから別の燃焼モードへの移行時の遅延を最小限に抑えるように、且つ/又はある負荷から別の負荷へとガスタービン10に対する負荷を増加させる際の中断及び遅延を最小限に抑えるように時間設定することができる。また、初期燃焼ルーチンがまだ活性であるときなど、燃料のウォッベ指数を早く調節し過ぎて、初期燃焼ルーチンの間のガスタービン10の作動を不安定にしてしまうことなく、ガスタービン10の移行及び/又はローディングの間の遅延を最小限に抑えることもできる。この実施形態によれば、燃焼器20に導入される添加剤の流れを制御することによって、ウォッベ指数をほぼ一定に維持することができる。
【0040】
引き続き図3を参照すると、時間t1で、ガスタービン10に対する負荷が第1の移行負荷L1に近付いて、更なるローディングのための第2の燃焼モードが要求されると、制御システム17(図1)は、燃焼器20への添加剤の導入を開始する。時間とともに燃焼器20に入る添加剤の流れは、図3の燃料温度曲線に重なっている破線92によって表される。図に示すように、添加剤の流れは、ガスタービン10(図1)が第2の燃焼モードに移行してガスタービン10をローディングし続ける時間t1のあたりでピークになる。このピークは、燃料の目標温度と、ガスタービン10が第2の燃焼モードに移行することが要求された時点でセンサ44が検知する燃料温度との間の温度差が最大であることを表す。添加剤を導入して燃料の組合せを作り出すことによって、ガスタービン10の安定作動下で、ガスタービン10を第2の燃焼モードに移行させるのに適したウォッベ指数が確立される。またそれによって、第2の燃焼モードにおけるガスタービン10の安定作動に対するウォッベ指数を得るために燃料を加熱するのを待つ中断を最小限に抑えながら、ガスタービン10をほぼ連続的にローディングすることができる。ガスタービン10のローディングがほぼ連続的であることは、図3の線90及び91によって集合的に形成される、時間t0から時間t2まで延在する線がほぼ直線であることから分かる。図2の時間t1からt2までの負荷がほぼ一定であることを表す極めて水平な線72(図2)は、図3に示す実施形態における同じ期間には見られない。したがって、高負荷を駆動し、且つガスタービン10(図1)を高負荷(図2及び図3の負荷L2に表される高負荷)で完全にローディングするという要求に対する迅速応答に必要な時間は、図2の時間t3から図3の時間t2まで短縮される。
【0041】
さらに図3に表される実施形態によれば、制御システム17(図1)は、燃焼器20への添加剤の導入の制御と並行して、燃料の加熱を制御し続けることができる。したがって、燃料の温度が線80によって表される目標温度に近付くにつれて、図3の燃料温度曲線における傾斜線84は傾斜する。
【0042】
燃焼器20(図1)への添加剤の流れ及び/又は量は、目標温度と温度センサ44が検知した温度との間の差に少なくとも部分的に基づいて、制御システム17によって制御することができる。例えば、添加剤の流量は、目標温度と温度センサ44が検知した温度との間の差に比例するように、制御システム17によって制御することができる。したがって、温度差が大きければ大きいほど、燃焼器20への添加剤の流量は増加する。最終的に、図3の時間t2で示すように、燃料の温度が、添加剤がない状態で適当なウォッベ指数を維持するのに必要な目標温度に達すると、制御システム17は、燃焼器20(図1)への添加剤の流れを中止することができる。したがって、ガスタービン10の不安定作動、及びガスタービン10の完全なローディングに必要とされる時間が、複数の燃焼モードにわたって最小限に抑えられる。
【0043】
具体的実施形態を上記に記載してきた。上述のデバイス及び方法は、本発明の総括的な範囲から逸脱することなく変更及び修正を組み込んでもよいことが、当業者には明白となるであろう。かかる修正及び改変をすべて本発明の範囲に含めるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(10)の移行を制御する方法であって、
要求受信時のガスタービン(10)で駆動される負荷よりも大きい増大した負荷でガスタービン(10)を駆動させる要求を受信するステップと、
ガスタービン(10)の燃焼器(20)内で点火される燃料の温度が、増大した負荷を駆動するため燃焼器(20)に導入される燃料の目標温度よりも低いか否かを判断するステップと、
燃料の温度が目標温度よりも低いときに、ガスタービン(10)の燃焼器(20)への添加剤の導入を制御して、増大した負荷での駆動へのガスタービン(10)の実質的に連続した移行を促進するための燃料と添加剤を含む燃料の組合せの適当なウォッベ指数を達成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
当該方法が、燃焼器(20)に導入される燃料の加熱を制御するステップをさらに含んでいて、加熱を制御するステップが燃焼器(20)への添加剤の導入を制御するステップと並行して実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
燃焼器(20)への添加剤の導入を制御するステップが、燃焼器(20)に導入される添加剤の流量を調節することを含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
要求受信時のガスタービン(10)で駆動される負荷がゼロであって、その間ガスタービン(10)が負荷を駆動しないアイドル状態に対応する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
燃焼器(20)に導入される燃料の温度が目標温度以上であるとき、燃焼器(20)への添加剤の導入を終了することをさらに含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
負荷を駆動するためのガスタービン(10)であって、
ガスタービン(10)に導入される空気の圧力を高める圧縮機(12)と、
ガスタービン(10)の運転中に、燃料燃料を燃焼させる燃焼器(20)と、
燃焼器(20)の下流に配置され、ガスタービン(10)を流れる高温ガスで駆動されるタービン(30)と、
ガスタービン(10)が初期負荷での駆動から増大した負荷での駆動へと移行する際にガスタービン(10)の作動を制御するコントローラと
を備えており、上記コントローラが、
要求受信時のガスタービン(10)で駆動される初期負荷よりも大きい増大した負荷でガスタービン(10)を駆動させる要求を受信する受信部と、
ガスタービン(10)の燃焼器(20)内で点火される燃料の温度が、増大した負荷を駆動するために燃焼器(20)に導入される燃料の目標温度よりも低いか否かを判断する比較部と、
燃料の温度が目標温度よりも低いときに、ガスタービン(10)の燃焼器(20)への添加剤の導入を制御して、増大した負荷での駆動へのガスタービン(10)の実質的に連続した移行を促進するための燃料と添加剤を含む燃料の組合せの適当なウォッベ指数を達成する演算部と
を備える、ガスタービン(10)。
【請求項7】
タービン(30)と動作可能に連結した出力軸(32)であって、発電機(34)のロータを回転させるため動作可能に接続できる出力軸(32)をさらに含む、請求項6記載のガスタービン(10)。
【請求項8】
前記適当なウォッベ指数が移行時に実質的に一定に保たれる、請求項6又は請求項7記載のガスタービン(10)。
【請求項9】
前記コントローラによる燃焼器(20)への添加剤の導入の制御が、燃焼器(20)への添加剤の流量の調節を含む、請求項6乃至請求項8のいずれか1項記載のガスタービン(10)。
【請求項10】
前記コントローラが、移行時の燃焼器(20)への添加剤の導入の制御と並行して燃料の加熱を制御する熱制御部をさらに含む、請求項6記載のガスタービン(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261454(P2010−261454A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104696(P2010−104696)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】